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リスクベースアプローチとは?ルールベースとの違い・進め方・分野別の使い方をわかりやすく解説

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監査やガイドライン、あるいは上司から「リスクベース・アプローチで対応してほしい」と言われたものの、それが何を指すのかを自分の言葉で説明できず、戸惑っていませんか。マネー・ローンダリング対策、品質管理、情報セキュリティ、医薬品の品質保証など、分野をまたいで使われる言葉だけに、調べても自分の業務に引きつけて理解しづらいのが実情です。

リスクベース・アプローチは、ごく単純化すれば「すべてに一律で対応するのではなく、リスクの大きさに応じて対策の強弱と優先順位を変える」という考え方です。限られた人員と予算を重要なリスクに集中させ、環境の変化にも機動的に対応するための枠組みとして、金融・品質・情報セキュリティ・AIなど幅広い領域で採用が広がっています。

本記事では、リスクベース・アプローチの定義とルールベース・アプローチとの違いを押さえたうえで、基本的な進め方(特定・評価・対応・モニタリング)、分野ごとの適用例と制度的根拠、そして形式対応に陥らないための注意点までを整理します。最後に、この考え方を実務で回すためのツールについても紹介します。

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リスクベース・アプローチとは

リスクベース・アプローチの定義

リスクベース・アプローチ(Risk-Based Approach)とは、組織が直面するリスクを特定・評価し、その大きさに応じて対策の強弱と優先順位を決める考え方です。あらかじめ決められた項目をすべて一律の水準で満たすのではなく、リスクが高い領域に資源を厚く配分し、低い領域は簡素にするという「メリハリ」が核心にあります。

この考え方は分野を問わず共通しますが、公式に定義している例として、マネー・ローンダリング対策の分野では金融庁が次のように説明しています。

マネロン・テロ資金供与対策におけるリスクベース・アプローチとは、金融機関等が、自らのマネロン・テロ資金供与リスクを特定・評価し、これをリスク許容度の範囲内に実効的に低減するため、当該リスクに見合った対策を講ずることをいう。

出典:マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン|金融庁

「リスクを特定・評価し、そのリスクに見合った対策を講ずる」という構造は、マネロン対策に限らず、品質管理や情報セキュリティなど他分野でも共通します。法令で義務づけられた業界に限らず、限られた人員と予算で自社のリスクに向き合うあらゆる組織にとっての、リスク管理の基本となる考え方です。

ルールベース・アプローチとの違い

リスクベース・アプローチの輪郭は、従来型の「ルールベース・アプローチ」と対比すると掴みやすくなります。ルールベース・アプローチは、あらかじめ定めた規則やチェック項目を、対象やリスクの大小にかかわらず一律に適用する進め方です。両者の違いを整理すると次のとおりです。

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観点対策の当て方資源の配分環境変化への対応向いている場面
ルールベース・アプローチ対象やリスクの大小にかかわらず、定めた規則・項目を一律に適用する全体に薄く広く配分されやすい規則を改定するまで対応が固定されやすい最低限満たすべき基準の担保、判断の均質化
リスクベース・アプローチリスクの大きさに応じて対策の強弱・頻度・深さを変える高リスク領域に重点配分し、低リスク領域は簡素化するリスク評価を更新することで新たな脅威や変化に機動的に対応できる資源が限られる中で実効性を高めたい場面、リスクが多様で変化する領域

両者は二者択一ではなく、最低限守るべき基準はルールとして一律に担保し、その上の対策の配分をリスクベースで決める、という併用が実務では一般的です。コンプライアンスベース(法規制や業界標準の遵守を基準にする考え方)も、ルールベースに近い対の概念として語られます。

なぜリスクベース・アプローチが求められるのか

ここからは、リスクベース・アプローチが広く求められるようになった理由と、導入によって得られるものを整理します。

最大の理由は、どの組織も、すべてのリスクに同じ労力を割けるだけの人員・予算・時間を持っていないことにあります。限られた資源を重要なリスクに集中させ、相対的に低いリスクは簡素に扱うことで、全体として実効性のあるリスク管理を成り立たせるのがリスクベース・アプローチの狙いです。規則を一律に満たすこと自体が目的化すると、本当に危険な領域への対応が手薄になりかねません。

もう一つの理由は、環境変化への追随です。あらかじめ固定した規則だけに頼ると、新たな手口や技術、事業の変化に規則の改定が追いつかない場面が生じます。リスク評価を定期的に見直し、その結果に応じて対策を組み替えることで、変化に機動的に対応できます。

マネー・ローンダリング対策の分野では、金融庁がリスクベース・アプローチを「当然に実施していくべき事項(ミニマム・スタンダード)」と位置づけています。国際的にも、金融活動作業部会(FATF)の勧告において「第1の勧告」として勧告全体を貫く基本原則になっている、と金融庁は説明しています。特定の業界ではこのように、リスクベース・アプローチが実務上の前提になっています。

出典・参考資料(2件)

リスクベース・アプローチの進め方

リスクベース・アプローチは、分野を問わず「特定→評価→対応→モニタリング」という流れで進めます。最初からすべてを対象にせず、影響の大きい業務・資産から小さく始めて回すのが、実務では現実的です。

リスクベース・アプローチの基本的な進め方を示した図解。STEP1 特定(守るべき対象と脅威・不確実性を洗い出す)、STEP2 評価(発生可能性と影響度の2軸で大きさを見積もり優先順位を付ける)、STEP3 対応(低減・回避・移転・受容から選ぶ)、STEP4 モニタリング(対策の効果を監視し定期的にリスク評価を更新する)の4段階を矢印でつなぎ、モニタリングの結果をふまえて評価を見直し特定へ戻って循環させることを示している。

1. リスクの特定

最初に、自組織にどのようなリスクが存在するかを洗い出します。守るべき対象(情報資産・業務プロセス・顧客・取引・委託先など)を整理し、それぞれにどのような脅威や不確実性があるかを列挙します。ここで漏れが生じると後続の評価・対応すべてに影響するため、網羅的に拾うことが重要です。

2. リスクの評価

特定したリスクの大きさを評価し、優先順位を付けます。一般的には「発生可能性」と「影響度(重大度)」の2軸でリスクの大きさを見積もり、両者を掛け合わせる、あるいは組み合わせることでリスクレベルを算出します。マネロン対策では顧客の属性・取引の種類・国や地域といった観点が、情報セキュリティでは情報資産の重要性といった観点が評価軸になります。

評価結果はリスクマトリックス(マップ)などで可視化すると、どこに資源を集中すべきかが掴みやすくなります。

3. リスクへの対応

評価したリスクに対して、どう対処するかを決めます。対応の選択肢は、対策を講じて影響や発生可能性を下げる低減、リスクのある活動自体をやめる回避、保険や外部委託などで他者に移す移転(共有)、許容範囲内と判断して受け入れる受容に大別されます。高リスクには厚い対策を、低リスクには簡素な対応を、というメリハリをここで具体化します。

4. モニタリングと見直し

対応を実施したら終わりではなく、対策の進捗と効果を継続的に監視し、定期的にリスク評価を更新します。事業環境や脅威は変化するため、一度の評価を固定すると実態と乖離していきます。新たなリスクの出現や既存リスクの変化を捉えて評価をやり直し、対策を組み替える循環を回すことが、リスクベース・アプローチの実効性を支えます。

ISO 31000との関係

この「特定→評価→対応→モニタリング」という流れは、リスクマネジメントの国際的な指針であるISO 31000(リスクマネジメント-指針)が示すプロセスと対応します。ISO 31000:2018は第6章でリスクマネジメントのプロセスを定め、リスクアセスメント(リスク特定・リスク分析・リスク評価)、リスク対応、モニタリング及びレビューといった要素を体系化しています。

ISO 31000は認証を取得するための要求事項規格ではなく、組織が分野を問わず活用できる一般的な指針として位置づけられています。次章で挙げるISO 9001やISO/IEC 27001が特定の領域の規格であるのに対し、ISO 31000はそれらの土台となる分野横断の指針にあたります。

リスクを特定・分析・評価する一連の作業を「リスクアセスメント」、それを含む計画・対応・モニタリングまでの全体を「リスクマネジメント」と呼び分けるのが一般的です。

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分野別の適用例と制度的根拠

リスクベース・アプローチは多くの分野で採用されていますが、「リスクの大きさに応じて対応を変える」という共通の考え方の下で、分野ごとに根拠となる制度が異なります。まず全体像を整理し、続いて分野別に見ていきます。

分野横断で見る「共通する考え方」と「制度的根拠」

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分野マネロン対策(AML/CFT)品質マネジメント(ISO9001)情報セキュリティ(ISMS)医薬品の品質管理(GxP)AIガバナンス
リスクベース・アプローチの現れ方顧客・取引・国地域のリスクを評価し、高リスク先に厳格な顧客管理を行うリスクと機会を特定し、工程や管理の重点を決める情報資産のリスクをアセスメントし、リスクに応じた管理策を選択する患者保護の観点から、リスクの大きさに見合う管理と文書化を行うAIの用途をリスクで分類し、規制・義務の強さを変える
主な制度的根拠金融庁 AML/CFTガイドライン、犯罪収益移転防止法、FATF勧告1ISO 9001:2015(序文0.3.3・第6.1章)ISO/IEC 27001(6.1.2・6.1.3)/金融分野はFISC安全対策基準ICH Q9(品質リスクマネジメント)、ISO 14971EU AI法のリスク4分類

マネロン対策(AML/CFT)

マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策は、リスクベース・アプローチが最も明確に制度へ組み込まれている分野です。考え方としてのリスクベース・アプローチを定義し、態勢整備を求めているのは金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」で、金融機関等が自らのリスクを特定・評価し、リスクに見合った対策を講ずることを求めています。

具体的には、高リスクと判断した顧客には厳格な顧客管理(EDD)を、低リスクの顧客には簡素な管理(SDD)を適用するといった運用がこれにあたります。

その土台となる法律が犯罪収益移転防止法(犯収法)です。犯収法は特定事業者に対し取引時確認(本人特定事項・取引目的などの確認)を義務付け、国家公安委員会が毎年公表する「犯罪収益移転危険度調査書」の内容を勘案した措置を講ずるよう求めています。

ただし犯収法の条文に「リスクベース・アプローチ」という用語そのものがあるわけではなく、リスクベース・アプローチを態勢の考え方として定義・要求しているのは前述の金融庁ガイドラインである点に注意が必要です。さらに国際的な基本原則として、FATF勧告1がリスク評価とリスクベース・アプローチの適用を各国・金融機関に求めています。

出典・参考資料(3件)

品質マネジメント(ISO9001)

品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001では、2015年版の大きな変更点として「リスクに基づく考え方(risk-based thinking)」が導入されました。それまで独立した要素だった「予防処置」を、リスクに基づく考え方としてシステム全体に統合したのが特徴です。

ISO 9001:2015では、序文(0.3.3)でこの考え方が説明され、第6.1章「リスク及び機会への取組み」で、品質マネジメントシステムに関わるリスクと機会を特定し、それに取り組むことが求められています。

規格は具体的なリスク評価手法までは指定しておらず、どの程度の厳格さで管理するかは、製品やプロセスの重要度に応じて組織が判断します。より包括的な仕組みが必要な場合は、前述のISO 31000を参照して運用を補強できます。

出典・参考資料(1件)

情報セキュリティ(ISMS)

情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格ISO/IEC 27001も、リスクベース・アプローチを前提としています。箇条6.1.2では、リスク基準を定めたうえで、情報セキュリティリスクのアセスメント(特定・分析・評価)を計画された間隔で一貫して実施することを求めています。箇条6.1.3では、その結果に応じた管理策を選択して対応すること(適用宣言書の作成を含む)を求めています。

すべての情報資産に同じ対策を施すのではなく、リスクに応じて管理策を選ぶ点がリスクベース・アプローチの現れです。

金融分野の情報システムに関しては、金融情報システムセンター(FISC)の「安全対策基準」が、第9版の改訂でリスクベース・アプローチを正式に取り入れました。FISCは改訂の概要で、金融情報システムに対してリスク評価を実施し、リスク特性に応じた安全対策基準を適用する枠組みを示しています。

リスクベースアプローチ導入に伴う改訂 ITガバナンスの下、金融情報システムに対してリスク評価を実施し、リスク特性に応じた安全対策基準を適用。

出典:安全対策基準(第9版)の改訂概要|金融情報システムセンター(FISC)

FISCの基準では、システムを「特定システム」と「通常システム」に分類し、最低限満たすべき基礎基準に加えて、リスクに応じて付加基準を選択的に適用する構成になっています。これも、一律ではなくリスク特性に応じて対策の強弱を変えるリスクベース・アプローチの実装例です。

出典・参考資料(2件)

医薬品の品質管理(GxP)

医薬品や医療機器の品質管理(GxP:製造・品質管理などの適正基準の総称)でも、リスクベース・アプローチが基本的な枠組みになっています。

品質リスクマネジメントの国際的な指針であるICH Q9は、2つの基本原則を掲げ、そのうちの一つで品質リスクマネジメントにかける労力・形式・文書化の程度は、リスクの大きさに見合ったものであるべき(commensurate with the level of risk)としています。

もう一つの原則は、品質へのリスク評価を科学的知見に基づいて行い、最終的には患者の保護につなげるという点です。

医療機器の分野では、ISO 14971がリスクマネジメントのプロセスを規定し、許容可能なリスクの水準を規格が一律に定めるのではなく、製造業者が客観的な基準を自ら設定することを求めています。許容できるリスクの線引きそのものを組織が判断する点に、リスクベース・アプローチの性格が表れています。

出典・参考資料(2件)

AIガバナンス

比較的新しい分野として、AIの統治(AIガバナンス)でもリスクベース・アプローチが採られています。代表例が欧州連合のAI法(AI Act)で、AIシステムをリスクの大きさで4つの区分に分類し、区分ごとに規制の強さを変えています。

具体的には、人々の安全や権利への明白な脅威となる許容できないリスクは禁止、健康・安全・基本的権利に重大なリスクを及ぼしうる用途は高リスクとして厳格な義務を課し、透明性の確保が必要な用途を限定的(透明性)リスク、それ以外を最小限またはリスクなしとして扱います。

すべてのAIを一律に規制するのではなく、用途のリスクに応じて義務の重さを変えるこの設計は、リスクベース・アプローチを法制度に適用した分かりやすい例といえます。

出典・参考資料(1件)

形式対応に陥らないための注意点

リスクベース・アプローチは柔軟性が利点である一方、運用を誤ると「形式を満たしただけ」「低リスクを口実にした手抜き」に陥りやすい面もあります。実効性を保つために押さえておきたい注意点を整理します。

  • 「低リスク=対応しなくてよい」ではない: リスクベース・アプローチは管理の総量を減らすための口実ではなく、資源の配分を最適化する考え方です。低リスクと判断した領域にも、簡素であれ必要な管理は残ります。ICH Q9も、労力・文書化の程度はリスクに「見合う」ものとしており、リスクが低いほど省略してよいという意味ではありません。
  • 評価の主観性を抑える: 発生可能性や影響度の見積もりは、担当者の経験や立場によってぶれやすい部分です。評価軸や基準をあらかじめ定め、複数の視点で確認するなど、判断の再現性を高める工夫が求められます。
  • 低頻度・高影響のリスクを見落とさない: めったに起きないが起きれば甚大な被害につながるリスクは、発生可能性だけを見ると過小評価されがちです。影響度の大きさを踏まえ、頻度の低さだけで切り捨てないようにします。
  • 判断の根拠を文書化し、説明責任を果たせるようにする: なぜそのリスクレベルと判断し、なぜその対策を選んだのか。監査や審査では、この判断の過程が問われます。評価の根拠を記録に残しておくことが、形式対応との違いを示す裏づけになります。
  • 一度の評価で固定しない: 事業環境や脅威は変化します。リスク評価を定期的に見直し、対策を組み替える循環を止めないことが、リスクベース・アプローチの実効性を維持する前提です。

リスクベース・アプローチを仕組みで回す(GRCツール・リスク管理ソリューション)

ここまで見てきた「リスクの特定→評価→対応→モニタリング」という循環は、対象が増えるほど表計算ソフトでの管理が限界を迎えます。リスクの洗い出し・評価・対応状況の記録・定期的な見直しを仕組みとして回すには、専用のツールが選択肢になります。

委託先・取引先のリスク管理は、この限界が特に表れやすい領域の一つです。多数の取引先のセキュリティ状況を把握する現場の実情について、次のような指摘があります。

藤本大氏
SecurityScorecard株式会社 代表取締役社長 兼 日本カントリーマネージャー
藤本大氏
独自インタビューより

従来、大手の製造業の企業様がグループ会社や取引先のサイバーセキュリティ状況を把握しようとすると、セキュリティのガイドラインを作って周知し、守れているかどうかは年に1回、設問数の多いアンケートを取る、というアンケート依存の管理手法しかありませんでした。グループ会社まではそれでやれていても、そこから先の取引先数百社・数千社をどう見ればいいのか、というところで手詰まりになっている企業様が非常に多い状況でした。

ツールは目的に応じて使い分けられます。全社のリスクを一元的に評価・可視化したいなら、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ツールや全社的リスクマネジメント(ERM)ツールが向きます。

委託先・取引先を重要度で分類して点検の深さを変えたいなら、第三者リスク管理(TPRM)ツールが適しています。情報セキュリティのリスクアセスメントを運用に乗せたいなら、ISMS運用支援ツールが選択肢になります。

ここからは、リスクベース・アプローチの考え方を実務で支える3つのサービスを、まず比較表で俯瞰します。

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サービス名VendorTrustLinkSecureNaviEnterprise Risk MT
主な対象リスク領域委託先・取引先リスク
(第三者リスク管理/TPRM)
情報セキュリティ
(ISMS/Pマークのリスクアセスメント)
全社リスク
(ISO 31000準拠のERM)
対応する工程(特定・評価・対応・モニタリング)委託先の特定・分類〜評価〜継続的な点検(モニタリング)情報資産の特定〜評価〜対応〜運用(内部監査・更新審査)リスクの特定・分析・評価〜対応状況のモニタリング
評価の仕組み委託業務の重要度・個人情報取扱区分で分類し、チェックシートを自動採点(配点設定・経年比較)情報資産から自動提案されたリスクを発生可能性と影響度から算定し、受容基準(既定5点)で対応要否を判定発生可能性と影響度(重大度)からリスクレベルを算出し、リスクマトリックスで可視化
提供元株式会社アトミテックSecureNavi株式会社株式会社GRCS
詳細情報公式資料を見るオンライン相談を予約サービス詳細を見る

※各サービスの対象領域・機能は2026年9月時点の各社公式情報にもとづく整理です。料金はいずれも非公開のため掲載していません。最新の対応範囲・料金は各社へお問い合わせください。

VendorTrustLinkのウェブサイト

株式会社アトミテックが提供する、委託先・取引先のリスク管理に特化したクラウドサービスです。委託先を委託業務の重要度や個人情報の取扱区分で分類し、重要なほど点検を手厚くするという、委託先管理におけるリスクベース・アプローチを支えます。

自社で設計したチェックシートを複数の委託先へ一括配信し、委託先が専用アカウントで回答した内容を自動採点して、経年比較やダッシュボードで可視化できます。担当者のリスク判断を支えるAIによる評価機能も備えます。

公式サイトでは、リスクマネジメントの国際ガイドラインであるISO 31000の考え方に沿って設計していると説明しています(ISO 31000は指針であり認証の対象ではないため、認証取得とは異なります)。料金は委託情報の件数などをもとにした個別見積りで、詳細は要問い合わせです。

2. SecureNavi(SecureNavi株式会社)

SecureNaviのウェブサイト

情報セキュリティ分野でリスクベース・アプローチを運用に乗せたい組織に向くのが、SecureNavi株式会社のSecureNaviです。ISMS(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークの取得・運用をクラウド上で一元管理するツールで、規程類やリスクアセスメントの記録をSaaS上に集約します。

情報資産を登録するとよくあるリスクが自動で提案され、発生可能性と影響度からリスク値を算定し、受容基準(既定は5点)を超えるリスクに対応の要否を判定するという流れをツール上に持ちます。リスクの特定から対応までを画面に沿って進められるため、専任のセキュリティ担当者を置きにくい組織でも運用しやすい設計です。内部監査のサポートや従業員向けのeラーニングにも対応します。料金は要問い合わせです。

3. Enterprise Risk MT(株式会社GRCS)

Enterprise Risk MTのウェブサイト

株式会社GRCSが提供するEnterprise Risk MT(ERMT)は、ISO 31000:2018に準拠した全社的リスクマネジメント(ERM)のクラウドサービスです。Salesforceプラットフォーム上に構築され、全社レベルでリスクを一元的に評価・管理したい組織に向いています。

リスクの特定・分析・評価を行うリスクアセスメント機能を備え、発生可能性と影響度からリスクレベルを算出して、リスクマトリックスで可視化します。対応策の実施状況をモニタリングする機能や、ヒヤリハット・インシデントを報告・分析する機能もあります。拠点やグループ会社といった単位でリスク管理を階層化・分掌化でき、取締役・監査役を含む権限区分に応じた表示制御も可能です。

スモールスタートが可能なライセンスモデルを採用しており、料金は要問い合わせです。

ここで取り上げたのは、委託先管理・情報セキュリティ・全社リスクという異なる領域の3サービスです。自社のリスク管理の対象に合うツールを、対応領域や機能で幅広く比較検討したい場合は、GRCツール全体を比較した以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

リスクベース・アプローチは、すべてに一律で対応するのではなく、リスクを特定・評価し、その大きさに応じて対策の強弱と優先順位を変える考え方です。限られた資源を重要なリスクに集中させ、環境変化にも機動的に対応できる点が、マネロン対策・品質管理・情報セキュリティ・医薬品GxP・AIガバナンスといった幅広い分野で採用される理由です。

実務で運用する際は、「低リスク=手抜き」に陥らないこと、評価の主観性を抑えること、判断の根拠を文書化して説明責任を果たせるようにすること、そして一度の評価で固定せず定期的に見直すことが要点になります。リスクの洗い出し・評価・対応状況の記録と見直しを仕組みとして回すには、GRCツール・第三者リスク管理ツール・ISMS運用支援ツールといった選択肢があります。

自社のリスク管理の対象と目的に合わせて、検討材料としてご活用ください。

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よくある質問(FAQ)

Q. リスクベース・アプローチとは何ですか?

A. リスクベース・アプローチとは、組織が直面するリスクを特定・評価し、その大きさに応じて対策の強弱と優先順位を変える考え方です。あらかじめ決めた項目を一律の水準で満たすのではなく、リスクが高い領域に資源を厚く配分し、低い領域は簡素にするという「メリハリ」が核心にあります。分野を問わず共通する考え方ですが、マネー・ローンダリング対策の分野では金融庁がガイドラインで公式に定義しています。

出典・参考資料(1件)

Q. リスクベース・アプローチとコンプライアンスベース・アプローチはどう違いますか?

A. リスクベース・アプローチは自組織のリスクの大きさに応じて対策を最適化する考え方で、コンプライアンスベース・アプローチは法規制や業界標準の遵守を基準に対策を決める考え方です。前者は資源を柔軟に配分でき環境変化に強い一方、後者は守るべき最低基準を明確に担保しやすいという違いがあります。

両者は二者択一ではなく、最低限守るべき基準はコンプライアンスベース(ルールベース)で一律に担保しつつ、その上の対策の配分をリスクベースで決める併用が、実務では一般的です。

Q. リスクベース・アプローチは何から始めればよいですか?

A. リスクベース・アプローチは、自組織が守るべき対象とそこに潜むリスクを洗い出す「リスクの特定」から始めます。続いて発生可能性と影響度の2軸で各リスクの大きさを評価して優先順位を付け、高リスクの領域から対策を決めていきます。

最初から全社・全領域の完璧な評価を目指すのではなく、重要な範囲を絞って「特定→評価→対応→見直し」の循環を小さく回し始めるのが現実的です。

Q. リスクベース・アプローチでは、リスクの高い・低いを何を基準に判断しますか?

A. リスクの高い・低いは、一般に「発生可能性(起こりやすさ)」と「影響度(起きたときの重大さ)」の2軸を掛け合わせて判断します。これに分野ごとの観点が加わり、マネロン対策では顧客の属性・取引の種類・国や地域が、情報セキュリティでは情報資産の重要性が評価軸になります。評価軸と基準をあらかじめ定め、複数の視点で確認すると、担当者による判断のぶれを抑えられます。

Q. リスクベース・アプローチで低リスクと判断した領域は、対応しなくてよいのですか?

A. いいえ、低リスクと判断した領域にも、簡素であっても必要な管理は残ります。リスクベース・アプローチは管理の総量を減らすための口実ではなく、資源の配分を最適化する考え方だからです。

品質リスクマネジメントの国際的な指針であるICH Q9も、管理にかける労力・文書化の程度はリスクに「見合う(commensurate with the level of risk)」ものとしており、リスクが低いほど省略してよいという意味ではありません。

出典・参考資料(1件)

Q. 中小企業や専任担当者がいない組織でも、リスクベース・アプローチは必要ですか?

A. リスクベース・アプローチは、むしろ人員や予算が限られる組織ほど有効な考え方です。すべてのリスクに均等に手をかける余裕がなくても、重要なリスクに絞って限られた資源を集中できるためです。重要な領域から小さく評価・対応を始め、専任担当者を置きにくい場合は、リスクの洗い出し・評価・記録を画面に沿って進められるリスクアセスメント支援ツールで運用を仕組み化する方法もあります。

Q. リスクアセスメントとリスクマネジメントは何が違いますか?

A. リスクアセスメントはリスクを特定・分析・評価する一連の作業を指し、リスクマネジメントはそれを含む計画・対応・モニタリングまでの全体を指します。リスクマネジメントの国際的な指針であるISO 31000でも、リスクアセスメント(リスク特定・リスク分析・リスク評価)は、リスク対応やモニタリング及びレビューと並ぶプロセスの構成要素として位置づけられています。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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