「危機管理」「リスク管理」「リスクマネジメント」——リスク対策の担当を任されると、社内でいくつもの言葉が飛び交い、それぞれが何を指し、自分が何から手をつければよいのか整理しきれないまま時間だけが過ぎてしまいがちです。言葉の輪郭が曖昧なままでは、社内で説明することも、対策を組み立てる順番を決めることも難しくなります。
本記事では、まず危機管理とリスク管理(リスクマネジメント)の違いを、対象や実施のタイミングといった軸をそろえた対比表で整理します。そのうえで、平時にやるべきリスク対策の手順と、危機が実際に起きたときの対応手順、自社が想定すべきリスクの種類までを、公的な定義・規格にもとづいて解説します。
言葉の違いと進め方を押さえたうえで、洗い出したリスクを継続的に評価・記録していく手段まで見通せるように構成しました。自社のリスク対策を一から組み立てるための土台としてご活用ください。
目次
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危機管理とリスク管理(リスクマネジメント)の違いを一目で整理
ここからは、危機管理・リスク管理・BCPの三つが何を指し、どう違うのかを整理します。まず結論と対比表で全体像を示し、そのうえで各用語の定義を公的な出所とともに確認します。
はじめに一点だけ整理すると、「リスク管理」と「リスクマネジメント」は同じものを指す言葉です。したがって押さえるべきは、このリスクマネジメント(=リスク管理)と危機管理、そして関連して語られるBCPの関係になります。
結論|危機管理はリスク管理(広義)の一部にあたる
結論から示すと、広い意味でのリスクマネジメントは、平時の予防から、事態発生時の対応、そして復旧までの一連の時間軸を含む枠組みです。危機管理(クライシスマネジメント)は、そのうち「重大な事態が実際に起きた直後の対応」に焦点をあてた領域にあたります。このように、危機管理はリスクマネジメント(広義)の一部と位置づけられます。
この整理は、阪神・淡路大震災の教訓をふまえて制定されたJIS Q 2001(リスクマネジメントシステム構築のための指針)の考え方にもとづいています。同指針を解説した総務省の資料は、広義のリスクマネジメントを次のように説明しています。
阪神・淡路大震災の教訓を活かしたJISQ2001(リスクマネジメントシステム構築のための指針)の制定 ①事前の予防策(狭義のリスクマネジメント)、②事件事故(クライシス)発生直後の対応(危機管理)、③復旧の3つの時間軸に沿った対応のすべてを含む概念として広義の「リスクマネジメント」を定義した
出典:リスクマネジメントと危機管理 ~想定内と想定外:原点に戻って考える~(指田朝久)|総務省
一方で「危機管理がリスク管理を含む」と逆向きに説明されることもあります。これは、どちらの語を広い意味で使うかによって包含の向きが変わるためです。社内で用語をそろえる際は、本記事と公的資料の整理に合わせて「広義のリスクマネジメントの中に、予防・危機発生時の対応・復旧が位置づく」と統一しておくと、部門をまたいだ議論でも齟齬が生じにくくなります。

対比表|対象・タイミング・目的で見る違い
危機管理・リスク管理・BCP(事業継続計画)を、主な対象・実施のタイミング・目的・位置づけの軸で並べると、それぞれの守備範囲が見えてきます。
| 区分 / 比較項目 | 危機管理(クライシスマネジメント) | リスク管理(リスクマネジメント) | BCP(事業継続計画) |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 実際に起きた重大な事態(クライシス) | 目的の達成に影響する不確かさ (好ましい/好ましくない両方) | 重要な事業の中断をもたらす事象 |
| 実施のタイミング | 事態の発生直後〜対応 | 平時から継続的に | 平時に策定し、発生時に発動 |
| 主な目的 | 被害を最小限に抑える | リスクを洗い出し評価して備える | 重要事業を止めない/早期に復旧する |
| 位置づけ | 広義のリスクマネジメントに含まれる、発生後の対応領域 | 予防・対応・復旧を含む上位の枠組み(広義) | 事業継続に焦点をあてた計画 |
※各用語の定義は下記の公的資料・規格にもとづく整理です。組織によって用語の使い方に幅があるため、社内では定義をそろえたうえで運用してください。
用語の定義と出所
それぞれの言葉が公的な資料や規格でどう定義されているかを確認します。社内で説明するときの根拠として、出所とあわせて押さえておくと安心です。
リスクは、リスクマネジメントの国際規格であるISO 31000(日本産業規格ではJIS Q 31000:2019)で、次のように定義されています。損失だけでなく、好ましい影響も含む中立的な概念として扱われる点が特徴です。
リスク;目的に対する不確かさの影響(ISO31000)
出典:リスクマネジメントと危機管理 ~想定内と想定外:原点に戻って考える~(指田朝久)|総務省
Risk: Effect of uncertainty on objectives
リスクマネジメントは、同じくISO 31000で「リスクについて組織を指揮統制するための調整された活動」と定義されています。個別の対策の集まりではなく、組織として継続的にリスクへ対応していく活動全体を指します。
リスクマネジメント;リスクについて組織を指揮統制するための調整された活動(ISO31000)
出典:リスクマネジメントと危機管理 ~想定内と想定外:原点に戻って考える~(指田朝久)|総務省
一方の危機管理(クライシスマネジメント)には、規格による共通の定義はなく、辞書などでは事前の備えまで含めて広く説明されることもあります。本記事では、前掲の総務省資料・JIS Q 2001 の時間軸の区分に従い、重大な事態が実際に起きた後に、いかに被害を抑え、事業と信頼を守るかという発生後の対応領域として整理します。
危機管理・リスク管理・BCP(BCM)の関係
違いを押さえたうえで、実務でよく併せて語られるBCP(事業継続計画)とBCM(事業継続マネジメント)が、リスク管理・危機管理とどう関係するのかを整理します。
BCPは、内閣府の事業継続ガイドラインで次のように定義されています。危機管理が「起きた事態への対応」に軸足を置くのに対し、BCPは「重要な事業を止めない・早く戻す」という事業継続の観点から、方針・体制・手順をあらかじめ定めておく計画です。
大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。
出典:事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和5年3月)|内閣府
さらに、BCPを策定して終わりにせず、予算・資源の確保、事前対策、教育・訓練、点検、改善までを平常時から回していく活動は、BCM(事業継続マネジメント)と呼ばれます。計画そのものがBCP、それを継続的に運用する経営レベルの活動がBCMという関係です。
BCP 策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動は、事業継続マネジメント(Business Continuity Management、BCM)と呼ばれ、経営レベルの戦略的活動として位置付けられるものである。
出典:事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和5年3月)|内閣府
国際規格の面から見ると、平常時のリスクマネジメント全般はISO 31000、事業継続マネジメントはISO 22301が扱う、という役割分担があります。日常のリスクへの備えはリスク管理、事業を止めないための計画・運用はBCP/BCM、実際に起きた重大事態への対応は危機管理、と対応づけると整理しやすくなります。
平時にやるリスク対策の手順
ここからは、平時に取り組むリスク対策を具体的な手順に落とし込みます。リスクマネジメントの国際規格ISO 31000(JIS Q 31000:2019)は、リスクの特定・分析・評価から対応、モニタリングまでを一連のプロセスとして示しています。この流れに沿って、自社の作業計画に落とせる形で進めていきます。
参考資料としてプロセスの全体像を確認したい場合は、規格の目次・構成が公開されています。
1. リスクの洗い出し(特定)
最初のステップは、自社の目的の達成を妨げる、あるいは助ける可能性のあるリスクを幅広く洗い出すことです。ISO 31000では、リスクの特定・分析・評価をまとめてリスクアセスメントと呼び、その出発点にリスク特定を置いています。
部門ごとに業務を棚卸しし、「何が起きると、どの業務が止まるか」を具体的に書き出していくのが出発点です。自然災害や情報漏えいのように分かりやすいものだけでなく、取引先の倒産や主要担当者の離職といった、日常業務に潜むリスクも拾い上げることが、後の評価の精度を左右します。
2. 発生可能性と影響度で評価し、優先順位をつける
洗い出したリスクは、そのままでは数が多すぎて対応しきれません。そこで、「起こりやすさ(発生可能性)」と「起きたときの影響の大きさ(影響度)」の二つの軸で評価し、優先順位をつけます。
発生可能性と影響度をそれぞれ数段階で評価し、両者を掛け合わせてリスクの大きさを見える化する方法(リスクマップ・リスクマトリックス)が広く使われています。影響度が大きく発生可能性も高いリスクから優先的に対策を検討する、という順番が基本です。評価の基準を部門間でそろえておくと、全社で優先順位を比較できるようになります。
3. 対策の方向性を決める(回避・低減・移転・受容)
優先順位が決まったら、リスクごとに対応の方向性を選びます。一般的なリスクマネジメントでは、リスクへの対応を次の4つに分けて考える枠組みが広く使われています。
- 回避:リスクを生む活動そのものを行わない(例:撤退・取り扱い中止)
- 低減:発生可能性や影響度を下げる(例:バックアップ・多重化・教育)
- 移転:他者にリスクを移す(例:保険への加入・業務委託)
- 受容(保有):影響が小さいリスクなどを、対策せずに受け入れる
この4分類は実務や情報処理技術者試験でも標準的に使われている整理で、対応方針を関係者で共有するときに便利です。
また、ISO 31000(JIS Q 31000:2019)自体は、リスク対応の選択肢をより細かく、次のように挙げています。
- リスクの回避
- 機会を追求するためにリスクを取る・増やす
- リスク源の除去
- 起こりやすさを変える
- 結果を変える
- (契約・保険などによる)リスクの共有
- 情報に基づく意思決定によるリスクの保有
先の4分類は、これらを実務向けに束ねた整理と捉えると分かりやすくなります。
4. 対応体制とマニュアルを整備する
対応方針が決まったら、それを実行できる体制に落とし込みます。誰が意思決定し、誰が現場で動くのかという役割分担、緊急時の連絡ルート(連絡網)、そして事態のレベルに応じた対応手順をまとめたマニュアルを用意しておくことが求められます。
マニュアルは、事態の深刻度に応じて誰にどう報告を上げるか(エスカレーションのルール)まで具体的に定めておくことが重要です。判断を仰ぐ相手や連絡手段が曖昧なままだと、いざというときに初動が遅れる原因になります。
5. 訓練と定期的な見直しを行う
体制やマニュアルは、作って終わりにすると形骸化します。定期的に訓練(手順を確認する机上訓練や実地訓練)を実施して実際に機能するかを確かめ、組織変更や新規事業の開始、年次のタイミングなどに合わせて内容を見直していきます。
リスクの洗い出しから評価、対応、そして見直しまでを一度きりではなく継続的に回していくことが、リスク管理を実効性のあるものにします。この「回し続ける」という点が、後半で触れる管理の仕組み化とも関わってきます。
危機発生時の対応手順(初動〜復旧・再発防止)
平時の備えに続いて、実際に危機が起きたときの動き方を時系列で整理します。危機対応では、初動の速さと情報開示のあり方が、その後の被害の広がりと信頼の回復を大きく左右します。
初動対応|事実の把握と応急措置
発生直後にまず行うのは、何が・いつ・どこで・どの範囲で起きているのかという事実関係を、正確かつ迅速に把握することです。憶測で動くと対応を誤るため、確認できた事実とまだ不明な点を切り分けながら情報を集めることが重要です。
並行して、被害の拡大を防ぐための応急措置と、あらかじめ定めた連絡ルートに沿った報告を進めます。初動で被害を封じ込められるかどうかが、その後の対応の負担を大きく変えます。
情報共有と対外的な情報発信(情報開示)
社内では、対応にあたる関係者の間で状況をタイムリーに共有し、判断の食い違いを防ぎます。そのうえで、顧客・取引先・監督官庁・メディアといった関係者に対し、優先順位をつけて対外的に情報を発信することが求められます。
事実を隠したり小さく見せたりする対応は、後に発覚したときに信頼をさらに損ないます。分かっている事実と対応方針を、誠実かつ迅速に伝える姿勢が、危機対応では信頼の回復につながります。
復旧と再発防止
事態が収束に向かったら、中断した業務を復旧させ、通常運転に戻します。その後、なぜ危機が起きたのか、対応のどこに課題があったのかを検証し、再発防止策を平時のリスク対策に反映します。危機対応で得た教訓を次の備えに織り込むことで、リスク管理のサイクルが一巡します。
事例に学ぶ|初動対応と情報開示が明暗を分ける
危機対応の重要性を示す事例として、しばしば取り上げられるのが1982年に米国で起きたタイレノール事件です。ジョンソン・エンド・ジョンソンの解熱鎮痛剤タイレノールに、製造後に何者かがシアン化合物を混入させ、シカゴ近郊で7名が死亡しました。
同社は、被害の疑いがある製品を3,100万本を超える規模で全国的に自主回収し、テレビや新聞などを通じて消費者へ強く注意を呼びかけました。この回収と情報発信には約1億ドル規模の損失をともなったとされますが、被害の拡大を防ぐことを最優先した迅速な対応でした。
事件後には、異物混入を防ぐ改ざん防止包装が導入され、米国では1983年に連邦異物混入禁止法が制定されています。素早い初動と誠実な情報開示が、危機のなかで信頼を守るうえで大きな意味を持つことを示す事例です。
出典・参考資料(2件)
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自社が想定すべきリスクの種類(チェックリスト)
リスクの洗い出しを進めるうえで、まず「どんな種類のリスクがあるのか」の見取り図があると着手しやすくなります。ここでは代表的なリスクを分類して示します。自社に当てはまるものがないか、チェックリストとして確認してみてください。
自社を取り巻く主なリスクの種類
内閣府の事業継続ガイドラインは、事業の中断をもたらす発生事象として、次のような幅広い事態を想定しています。
企業・組織の事業(特に製品・サービス供給)の中断をもたらす自然災害を対象としているが、大事故、感染症のまん延(パンデミック)、テロ等の事件、サプライチェーン途絶、サイバー攻撃など、事業の中断をもたらす可能性がある、あらゆる発生事象について適用可能である。
出典:事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-(令和5年3月)|内閣府
これらの「事業の中断をもたらすリスク」に加えて、企業の信頼や法令順守に関わるリスクも見落とせません。次の各項目について、自社に当てはまる具体的な場面があるかを一つずつ確認してみてください。
- 自然災害・大事故:地震・水害・火災、設備事故、停電による業務停止など
- 感染症のまん延:出社制限・人員不足による業務の縮小や停止
- 情報漏えい・サイバー攻撃:不正アクセス、ランサムウェア、退職者や委託先経由の持ち出し、クラウドの設定不備
- サプライチェーンの途絶:取引先・委託先の被災や倒産による供給停止、主要担当者の離職
- 製品・サービスの不具合やクレーム:大規模な回収・賠償に発展する事態
- 役員・従業員の不祥事:不正・横領、ハラスメント、コンプライアンス違反
このうち、製品クレームや役員・従業員の不祥事は、内閣府が挙げる「事業の中断」とは性質が異なり、企業の信頼(レピュテーション)や法令順守に関わるリスクです。事業継続の観点だけでなく、こうしたリスクも含めて幅広く洗い出しておくことが、抜け漏れのない備えにつながります。
リスクの分類(純粋リスクと投機的リスク)
リスクを性質で分けると、「純粋リスク」と「投機的リスク」に整理できます。純粋リスクは、火災や地震、事故のように損失しか生まないリスクです。一方の投機的リスクは、新規事業や投資、為替のように、損失と利益の両方が生じうるリスク(ビジネスリスク)を指します。
従来のリスク管理は純粋リスクへの備えが中心でしたが、近年は投機的リスクも含めて全社的に管理する考え方が広がっています。前述のとおり、ISO 31000がリスクを「好ましい影響も含む」中立的な概念として定義しているのも、この流れに沿ったものです。リスクの洗い出しでは、損失だけでなく投機的リスクも対象に含めておくと抜け漏れを防げます。
属人管理を脱してリスクを継続的に管理する方法(GRC/ERMツール)
ここまで見てきたリスクの洗い出し・評価・記録は、部門ごとにExcelやスプレッドシートで管理されていることが少なくありません。しかし、シートが担当者ごとにばらつく、更新が止まる、全社で横断的に見られないといった課題から、リスク管理を継続していくうちに属人化しやすいのが実情です。
そこで、リスク・コンプライアンス・内部統制を一つの仕組みの上で継続的に管理する手段があります。代表的なのが、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ツールや、全社的リスクマネジメント(ERM)ツールです。総務省の資料でも、リスクマネジメントが対応する領域として防災・BCP・ERM・コンプライアンスが図示されており、ERMは平時のリスク管理を支える受け皿の一つと位置づけられます。
GRCはガバナンス・リスク・コンプライアンスを幅広く束ねる考え方で、ERMはそのうち全社のリスクマネジメントに軸足を置いたものです。リスクの洗い出しと管理を主目的にするならERM型、コンプライアンスや内部統制まで含めて一元化したいならGRC型が、選び方の目安になります。
ここでは、洗い出したリスクを継続的に評価・記録していきたい場合に検討しやすいサービスを紹介します。
ここで取り上げる2つは守備範囲が異なります。全社のさまざまなリスクを一元的に管理したい場合は全社的リスクマネジメント(ERM)型、委託先・取引先を起点としたリスクの点検に課題が偏る場合は委託先リスク管理(TPRM)型が向いています。次の比較表で、対応範囲や機能を見比べてみてください。
| サービス名 | VendorTrustLink | Enterprise Risk MT(ERMT) |
|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社アトミテック | 株式会社GRCS |
| タイプ | 委託先リスク管理(TPRM)特化型 | 全社的リスクマネジメント(ERM) |
| 主な対象リスク | 委託先・取引先起因のリスク (情報漏えい・コンプライアンス違反など) | 全社の各種リスク (有価証券報告書のリスク開示、グループ・海外拠点を含む全社リスク) |
| 主な機能 | チェックシートの自動送付・回収・採点 委託先管理・契約情報管理 ダッシュボード・AIリスク判断支援 | リスクアセスメント(特定・分析・評価) リスク対応管理・インシデント管理 ダッシュボード・リスクマップ・Excelインポート |
| 導入形態 | クラウド(SaaS) | クラウド (Salesforce基盤。Salesforceライセンス不要) |
| 対象企業規模 | 中小〜大企業 (委託先管理が必要な企業全般) | 公式に明示なし (上場企業のリスク開示・グループ/海外拠点のガバナンスが主用途。スモールスタート可能) |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 月額費用 | 要問い合わせ (委託情報件数・アカウント数に応じた個別見積り) | 要問い合わせ (スモールスタートが可能なライセンスモデル) |
| 無料トライアル | あり(期間・条件は非公開) | 公表なし |
| 規格への対応 | ISO 31000の考え方に沿って設計 (認証ではありません) | ISO 31000:2018に準拠 (認証ではありません) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る |
1. VendorTrustLink(株式会社アトミテック)

VendorTrustLinkは、委託先・取引先のリスク管理に特化したクラウド型のサービスです。委託先へのチェックシートの送付・回収・採点・履歴管理を自動化し、情報漏えいやコンプライアンス違反といった委託先起因のリスクを、一元的に可視化できます。公式サイトは、リスクマネジメントの国際ガイドラインであるISO 31000の考え方に沿って設計されている旨を掲げています。
特徴は、Excelやスプレッドシートで属人的になりがちなチェックシート運用を、送付から自動採点・経年比較までまとめて仕組み化できる点にあります。委託先はメールの往復ではなく専用アカウントでプラットフォーム上に回答するため、依頼と回収の手間を抑えられます。
対象とするリスクとして、情報漏えい・反社会的勢力・ハラスメントなどを公式サイトが挙げています。委託先・取引先を起点としたリスク(サードパーティリスク)に絞って、平時から継続的に点検・記録したい企業に向いています。
料金は委託情報の件数などに応じた個別見積りで、詳細は要問い合わせです。
2. Enterprise Risk MT(ERMT)(株式会社GRCS)

上場企業の有価証券報告書におけるリスク情報の開示支援を目的に、株式会社GRCSが国内で開発した全社的リスクマネジメント(ERM)クラウドサービスがEnterprise Risk MT(ERMT)です。国際ガイドラインのISO 31000:2018に準拠していることを公式サイトが掲げています(認証取得ではなく「準拠」という位置づけです)。
リスクの特定・分析・評価といったリスクアセスメントから、対応策の実施状況のモニタリング、ヒヤリハットや実際のインシデントの報告・分析までを一つのツール上で扱えます。ダッシュボードやリスクマトリックス、リスクマップでリスクを可視化でき、部門・拠点ごとの階層的な管理にも対応します。
Salesforceのプラットフォーム上に構築されており、既存のSalesforceライセンスがなくても利用できるとされています。ウィザード形式でのExcelインポートを備え、公式サイトは「Excel管理からの脱却」を主な用途として掲げています。
スモールスタートが可能なライセンスモデルとされており、全社のリスクを一元的に管理していきたい企業に向いた選択肢です。料金は要問い合わせです。
ここで取り上げた2サービスのほかにも、GRC/ERMツールは対応できるリスクの範囲や対象の企業規模によって多くの選択肢があります。より幅広く比較して自社に合う仕組みを選びたい場合は、以下の記事でタイプ別の比較や選び方を詳しく解説しています。
まとめ
危機管理・リスク管理・BCPは、いずれもリスクへの備えに関わる考え方ですが、対象とタイミングが異なります。広い意味でのリスクマネジメントが平時の予防から復旧までを含む枠組みであり、危機管理はそのうち重大な事態が起きた直後の対応、BCPは重要な事業を止めないための計画にあたります。
実際の対策は、平時にリスクを洗い出して評価し、対応方針・体制・訓練へと落とし込み、危機が起きたときには迅速な初動と誠実な情報開示で被害と信頼の低下を抑える、という流れで進めます。まずは自社が想定すべきリスクを洗い出すところから始め、その管理を継続していく段階では、GRC/ERMツールのような仕組みの活用も検討してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. リスクマネジメント(リスク管理)とは何ですか?
A. リスクマネジメント(リスク管理)とは、リスクについて組織を指揮統制するための、平時から継続的に行う調整された活動を指します(ISO 31000)。個別の対策の寄せ集めではなく、リスクの洗い出し・評価から対応・見直しまでを組織として回していく活動全体を意味します。
重大な事態が実際に起きた直後の対応に焦点をあてる危機管理(クライシスマネジメント)は、この広い意味でのリスクマネジメントに含まれる一領域にあたります。
Q. リスク対策は何から始めればよいですか?
A. リスク対策は、平時に自社のリスクを洗い出し、発生可能性と影響度で評価して優先順位をつけるところから始めます。危機発生時の対応マニュアルや体制も、この洗い出したリスクをもとに整備するため、まず自社にどんなリスクがあるかを一覧にする作業が出発点になります。事業の中断を防ぐBCPや有事の危機管理体制は、その土台の上に組み立てると抜け漏れを防ぎやすくなります。
Q. リスク管理・危機管理は中小企業にも必要ですか?
A. 企業規模にかかわらず必要です。むしろ経営資源の限られる中小企業ほど、一つの災害や取引先の倒産、情報漏えいが事業の存続に直結しやすく、備えの重要性は高いといえます。人員や予算が限られる場合は、影響度と発生可能性の大きいリスクから優先順位をつけ、対応できる範囲から段階的に着手していくのが現実的です。
Q. リスクの洗い出しや評価は、Excelで管理し続けても問題ありませんか?
A. リスクの件数が増え、複数部門で継続的に更新・共有するようになると、Excelやスプレッドシートでの管理は属人化しやすくなります。シートが担当者ごとにばらつく、更新が止まる、全社で横断的に見られないといった課題が出てきた段階が、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ツールや全社的リスクマネジメント(ERM)ツールのような仕組みの導入を検討する目安です。
まずはExcelで着手し、運用が回り始めてから仕組み化を考える進め方でも問題ありません。
Q. リスクマネジメントで特に重要なことは何ですか?
A. リスクは起こりうるものと想定し、平時から継続的に洗い出し・評価・見直しを繰り返すことが最も重要です。対策は一度整えて終わりにすると形骸化するため、定期的な訓練や見直しで実効性を保ちます。そのうえで、危機が実際に起きたときには迅速な初動と誠実な情報開示で被害と信頼の低下を抑えることが、リスクマネジメントを機能させる鍵になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















