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回線冗長化とは?構成パターンと選び方を解説|何をどこまで二重化すべきか

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インターネット回線が止まると、クラウド会計やWeb会議、IP電話、店舗のPOSレジ、クリニックのオンライン資格確認まで、業務の多くが同時に止まります。クラウドサービスへの依存が高まるほど、1本の回線の障害が事業全体を止めるリスクも大きくなっています。

そこで検討されるのが、主回線に加えて副回線(バックアップ回線)を用意し、障害時に自動で切り替える「回線冗長化」です。ただ、ひとくちに冗長化といっても、プロバイダだけを二重化するのか、物理回線やONU・ルータまで二重化するのかで、防げる障害と残るリスクは変わります。「何を・どこまで二重化すべきか」が、最初に決めるべき点になります。

この記事では、二重化する範囲の段階ごとに「防げる障害」と「残る単一障害点」を一覧で整理し、マルチホーミングやVRRP、モバイル回線バックアップといった実現方式の違い、費用の目安、自社に合う構成の選び方までを解説します。回線冗長化を実現するサービスも、工事の要否や対応回線の観点で比較します。

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回線冗長化とは

回線冗長化とは、主回線(ふだん使うインターネット回線)に加えて副回線を用意し、主回線に障害が起きたときに副回線へ切り替えて通信を維持する仕組みです。英語の redundancy(冗長)は「余分」ではなく「予備を持たせて全体を止めない」という意味で使われます。

切り替えを人手で行う運用もありますが、障害に気づいて現場でケーブルを差し替えていては業務が止まってしまうため、障害を検知して自動で副回線へ切り替える「フェイルオーバー」が一般的です。主回線が復旧したら自動で元に戻す「フェイルバック」を備えた製品もあります。

回線冗長化が必要になる場面

回線が止まると困る度合いは、業務がどれだけ通信に依存しているかで決まります。たとえば小売・飲食店ではPOSレジやキャッシュレス決済、モバイルオーダーが使えなくなり、会計そのものが止まります。

オフィスではクラウド会計やWeb会議、IP電話、各種SaaSが使えなくなり、クリニックではオンライン資格確認や電子カルテの通信が途切れます。いずれも代替手段がすぐに用意できないため、短時間の回線断でも売上や信用に直結します。こうした業務を抱える事業者が、回線冗長化の主な検討者です。

混同しやすい用語の整理

冗長化とあわせて使われる言葉に「多重化」と「負荷分散」があります。多重化は冗長化とほぼ同義で使われることが多く、予備を持たせて可用性を高めることを指します。一方、負荷分散は複数の回線や機器に通信を振り分けて処理能力を上げることが主目的で、結果として一方が止まっても通信を続けられる冗長性を兼ねる構成もあります。

回線冗長化の文脈では、複数の通信事業者と契約して接続経路そのものを分ける考え方を「キャリアダイバーシティ」や「経路冗長」と呼びます。同じ経路・同じ事業者の設備に依存していると、その大元が止まったときに予備も一緒に止まるため、どこまで経路を分けるかが設計の重要点になります。

何をどこまで二重化するか|範囲の段階と残る単一障害点

回線冗長化でまず決めるのは、「何をどこまで二重化するか」です。インターネットに出るまでの経路は、ざっくり「プロバイダ(ISP)→ 物理回線 → ONU(回線終端装置)→ ルータ」という順でつながっています。このどこを二重化するかで、防げる障害と、二重化してもなお残る「単一障害点(そこが止まると全体が止まる箇所)」が変わります。

インターネットに出るまでの経路(プロバイダ→物理回線→ONU→ルータ)と、二重化する範囲の4段階(プロバイダのみ/回線も/ONUも/ルータも=完全二重化)を示した図解。段階が進むほど二重化する範囲が広がり、共用部分が単一障害点として残ることを表す。

以下は、二重化する範囲を段階別に整理した表です。下にいくほど二重化する範囲が広く、防げる障害も増えますが、費用と運用の手間も増えます。自社がどの障害まで備えるべきかを当てはめて読んでください。

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二重化する範囲プロバイダ(ISP)のみ
1本の物理回線で複数ISPと契約
回線も二重化
別の物理回線+別ISP
ONUも二重化
回線ごとにONUを分ける
ルータも二重化(完全二重化)
VRRP等でルータも引き継ぐ
防げる障害ISP側の障害・メンテナンスISP障害に加え、片方の物理回線の断線・障害上記に加え、ONU(回線終端装置)の故障プロバイダ・回線・ONU・ルータのいずれの単体故障でも自動で引き継ぐ
残る単一障害点(まだ止まる要因)物理回線の断線・ONUの故障・ルータの故障(回線が1本のため回線障害で全滅)ONU・ルータを共用していればその故障。2回線が同じ経路・同じ事業者設備を通る場合は大元の障害で共倒れ2回線を束ねるルータ(集約点)の故障。同一経路・同一キャリアによる共倒れ2回線が同一経路・同一キャリアだと根本障害で共倒れ。設置拠点そのものの被災(地理的に離れた拠点での冗長化で対応)

※各段階のカバー範囲は代表的な構成に基づく整理です。実際に防げる障害は機器構成や契約内容で変わります。

この表で見落とされがちなのが、完全二重化しても残る「同一経路・同一キャリアの共倒れ」です。2本の回線を引いても、同じ通信ビルを経由していたり、同じ通信事業者の基幹設備を使っていたりすると、その大元の障害では両方が同時に止まります。機器だけでなく経路やキャリアを分けて初めて、冗長化の効果が十分に出ます。

物理回線をもう1本引くには工事や期間、固定費がかかります。そこで、工事なしで経路の違う副回線を足せる選択肢として、後述するモバイル回線(LTE)によるバックアップが使われます。特に単一〜数拠点の中小企業では、まず回線と経路を分けやすいモバイル回線バックアップから始める構成が現実的です。

回線冗長化の実現方式とその違い

ここからは、回線冗長化を実現する代表的な方式を整理します。方式によって「何を二重化する技術か」が異なり、先ほどの範囲の段階と対応しています。名前が似ていても対象が違うため、自社で二重化したい箇所に合うものを選ぶことが大切です。

工事なしで手軽に始めたい場合は、このあとのマルチホーミングの考え方と、後半で解説するモバイル回線バックアップを押さえれば十分です。ルータまで自前で二重化するVRRPなどの構成は、専門のベンダーに相談して組む領域になります。

主な実現方式の違い

以下は、よく挙がる方式を「何を二重化する技術か」で並べたものです。

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実現方式マルチホーミングリンクアグリゲーション(LAG)NICチーミング(LBFO)VRRPHSRPデュアルWAN/モバイル回線バックアップ
何を二重化するか接続経路(プロバイダ・回線)。複数のISPや回線で外部へ出る経路を複数持つ機器間の物理リンク。複数のLANケーブル(リンク)を1本の論理リンクに束ねるサーバ・端末のネットワークアダプタ(NIC)。1台の複数NICを束ねるルータ(デフォルトゲートウェイ)。複数ルータを1つの仮想ルータに見せるルータ(デフォルトゲートウェイ)。VRRPと同様の役割ルータの外側の回線。2つのWANや内蔵LTEで主回線・副回線を切り替える
位置づけ回線・プロバイダの冗長化の総称的な考え方。大規模ではBGPで経路制御するIEEE 802.1AX(旧IEEE 802.3ad)で標準化。回線そのものではなく機器間の帯域集約・冗長化別名 load balancing and failover。対象は機器のNICで、回線の冗長化とは層が異なるIETF標準(RFC 5798)。Master障害時にBackupへ自動で引き継ぐ。完全二重化のルータ冗長に対応Cisco独自プロトコル(RFC 2281・Informational=標準規格ではない)。Cisco環境で使われる1台のルータ・装置で主副を自動切替。工事なしで副回線を足しやすい(次項)

※各方式の定義は規格・各ベンダーの公開情報にもとづきます。

ルータの冗長化で使われるVRRPは、複数のルータを仮想的に1つに見せ、主となるルータが使えなくなったときに予備のルータが役割を引き継ぐ、オープンな標準プロトコルです。規格では次のように定義されています。

VRRP specifies an election protocol that dynamically assigns responsibility for a virtual router to one of the VRRP routers on a LAN.

The election process provides dynamic failover in the forwarding responsibility should the Master become unavailable.

(補助訳)VRRPは、LAN上のVRRPルータの1台に仮想ルータの役割を動的に割り当てる選出プロトコルを定める。(中略)この選出の仕組みにより、Master(主ルータ)が使えなくなった場合に転送の役割が動的にフェイルオーバーする。

出典:RFC 5798「Virtual Router Redundancy Protocol (VRRP) Version 3」|IETF

よく似た役割を持つHSRPはCiscoが定めた独自プロトコルで、その仕様を記録したRFC 2281には「いかなるインターネット標準をも規定するものではない(It does not specify an Internet standard of any kind)」と明記されています。VRRPは標準、HSRPはCisco独自という違いがあり、マルチベンダーで組むならVRRPが選ばれます。

リンクアグリゲーション(LAG)とNICチーミングは「回線冗長化の方法」として一緒に紹介されることがありますが、束ねる対象は前者が機器間の物理リンク、後者がサーバのNICで、インターネット回線そのものの冗長化とは層が異なります。社内LANやサーバ側の可用性を高める技術として理解しておくとよいでしょう。

出典・参考資料(4件)
  • 出典:Link Aggregation(IEEE 802.1AX-2020)|IEEE 802.1(リンク)
  • 出典:Network Interface Card (NIC) Teaming|Microsoft Learn(リンク)
  • 出典:RFC 5798(VRRP v3)/RFC 2281(Cisco HSRP)|IETF(RFC 2281)
  • 参考資料:回線の冗長化|ヤマハネットワーク製品(リンク)

モバイル回線バックアップ(工事なしで副回線を足す)

物理回線をもう1本引かずに副回線を用意する方法が、モバイル回線(LTE)によるバックアップです。ONUと既存ルータの間に専用の装置を挟む、あるいはLTEを内蔵したルータを使うことで、光回線の障害時に携帯キャリアの回線へ自動で切り替えます。

光回線とは別の携帯キャリア網を通るため、経路やキャリアを分けやすく、先ほど触れた「同一経路・同一キャリアの共倒れ」を避けやすいのが利点です。工事が不要で、既存のルータ設定を変えずに導入できる製品が多く、本回線の復旧後は自動で光回線へ戻ります。店舗やクリニック、拠点など、短時間でも通信を止めたくない現場で使われます。

ただし、モバイル回線は障害時のつなぎが基本で、サービスによっては通信量に上限が設けられています。Web会議や大容量のクラウド利用を平常時と同じ水準で続けたい場合は、別回線を引く本格的な冗長化とあわせて検討するとよいでしょう。具体的な製品は後半の「回線冗長化を実現するサービス」で紹介します。

アクティブ-スタンバイとアクティブ-アクティブの違い

副回線をふだんどう扱うかで、運用の形は「アクティブ-スタンバイ」と「アクティブ-アクティブ」に分かれます。どちらを選ぶかで、平常時の帯域の使い方とコストが変わります。

アクティブ-スタンバイは、主回線を通常使い、副回線は待機させておく構成です。主回線の障害時だけ副回線へ切り替えます。

待機のさせ方によって、常に通信できる状態で待たせる「ホットスタンバイ」(切り替えが速い)と、必要なときに起動する「コールドスタンバイ」(切り替えに時間がかかるが運用コストは低い)に分かれます。「active router/standby router」という考え方は、前述のHSRPの仕様にも表れています。

アクティブ-アクティブは、複数の回線を平常時から同時に使い、通信を振り分けて負荷分散する構成です。帯域を無駄なく使えて、一方が止まっても残りで通信を続けられます。ただし、両系統を常用するため設計と運用はやや複雑になります。待機回線を遊ばせたくない場合や帯域を増やしたい場合はアクティブ-アクティブ、シンプルに障害時の予備を確保したい場合はアクティブ-スタンバイが向きます。

回線冗長化の導入・運用で注意すべき点

回線冗長化は、入れれば安心という性質のものではありません。導入前に押さえておきたい落とし穴を整理します。

最も多い見落としが、繰り返し触れてきた「同一経路・同一キャリアの共倒れ」です。2本の回線を引いても、同じ通信ビルを経由していたり同じ事業者の基幹網を使っていたりすると、その大元の障害で両方が同時に止まります。副回線は、主回線と経路・キャリアができるだけ重ならないものを選ぶ必要があります。モバイル回線バックアップが有効なのは、この点で経路を分けやすいためです。

切り替えが確実に動くかの確認も欠かせません。主回線の障害を検知する死活監視の仕組みと、人手を介さず自動で切り替わる設定が整っているかを確認します。製品によっては、切り替えの判定を監視間隔と失敗回数で設定するものがあり、設定次第で切り替わるまでの時間が変わります。

切り替えにかかる時間は製品によって公表されていないことも多いため、障害の発生から副回線で通信が戻るまでおよそ何秒かかるかは、導入前に必ず確認しておきたい指標です。切り替え中はレジや会計などの通信が一時的に止まるため、業務への影響を見積もる材料になります。

この障害検知そのもの(機器やサービスの停止をどう捉え、どう知らせるか)を自社で整えたい場合は、監視方式や通知手段、自動復旧の有無でツールを比較した以下の記事が参考になります。

切り替え時の挙動にも注意が必要です。副回線へ切り替わるとグローバルIPアドレスが変わる製品があり、IPアドレスを固定して使う閉域網VPNなどは副回線利用中に通信できなくなる場合があります。自社で使っているVPNや固定IP前提の通信が、切り替え後も使えるかを事前に確認しておきましょう。あわせて、導入後に誰が監視・保守を担うのか、運用体制とコストに見合う効果があるかも検討しておくと安心です。

回線冗長化にかかる費用の目安

回線冗長化の費用は、どの手段を選ぶかで大きく変わります。公開されている各社の料金から、代表的な目安を紹介します(いずれも2026年10月時点の各社公表情報。回線の通信費は別途かかる場合があります)。

副回線サービスを契約する形では、USEN NETWORKSの「USEN DUAL CONNECT」が初期費用33,000円、月額1,650円(USEN光とのセット時)からと公表しています(単体契約は月額2,200円、別途現場調査費用)。装置を購入する形では、アイオーデータのLTEルーター「UD-LT2」が40,260円(税込)の買い切りで、SIMと通信費は別という体系です。

複数回線を束ねるマルチWANルーターのPeplinkは製品購入型で、メーカーの日本向け公式価格は公表されておらず、機種・構成によって異なります。DualLink Guard・VOLANS・Cradlepointは、構成や契約に応じた個別見積りで、いずれも「要お問い合わせ」です。

要見積りのサービスについても、公表されている同種の副回線サービス(月額1,650円〜)や装置(本体で数万円程度)が、おおよその相場観の目安になります。一方、別回線をもう1本引いて完全二重化する構成は、回線の工事費・固定費に対応ルータの費用が加わるため、規模が大きくなります。

モバイル回線は使った通信量に応じた従量課金になる場合があり(たとえばUSEN DUAL CONNECTは用途外の通信が月1GBを超えると1GBあたり550円)、ふだんの利用量もあわせて確認するとよいでしょう。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:USEN DUAL CONNECT 料金|株式会社USEN NETWORKS(リンク)
  • 出典:UD-LT2 製品情報・価格|株式会社アイオーデータ(リンク)

自社に合う冗長化レベル・手段の選び方

ここまでの内容を踏まえ、自社に合う構成を絞り込む順序を整理します。冗長化は「どのレベルまで二重化するか→副回線をどう用意するか(手段)→具体的な製品」の順で考えると迷いにくくなります。

はじめに、どのレベルまで二重化するかを決めることから始めます。「何をどこまで二重化するか」の表に自社を当てはめ、止まると困る業務から逆算すると、プロバイダだけでよいのか、回線やONU・ルータまで備えるべきかが見えてきます。短時間の停止も避けたい業務が多いほど、二重化する範囲を広げる判断になります。

次は、副回線をどう用意するかです。物理回線をもう1本引けるなら経路を分けた回線冗長化が有力ですが、工事や固定費、引き込みの可否がネックになる場合は、工事なしで経路を分けやすいモバイル回線バックアップが現実的な選択肢になります。拠点数が多い、複数回線を束ねて帯域も確保したいといった要件があれば、マルチWANルーターも候補になります。

最後は、具体的な製品・サービスの比較です。工事・設定の手間、対応する主回線・副回線の種類、切り替えの自動化、そして同一経路・同一キャリアを避けられるかを基準に比べるとよいでしょう。企業規模や拠点数、予算に照らして、過不足のない構成を選ぶことが失敗を防ぎます。次の章で、代表的なサービスを比較します。

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回線冗長化を実現するサービス

ここからは、回線冗長化を実現する代表的なサービス・製品を紹介します。工事不要で導入できるものが多いモバイル回線バックアップの装置・サービスを中心に(一部に設置工事が必要なものもあります)、複数回線を束ねるルータまで、提供形態や対応回線の異なる選択肢を取り上げます。自社が二重化したい範囲と、工事・費用の条件に合うものを選ぶ参考にしてください。

まず、各サービスの提供形態・主回線と副回線・切り替え方式・費用を一覧で比較します。

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サービス名DualLink GuardVOLANSUSEN DUAL CONNECTUD-LT2PeplinkCradlepoint
提供形態専用端末(購入)+サービス契約専用端末+サービス契約(セールスパートナー経由)サービス契約(機器レンタル込み)ルーター機器(買い切り)ルーター機器(購入)+クラウド管理ルーター機器+クラウド管理(NetCloud)
主回線光回線(ケーブルTV・ADSL・ISDN等も対応)利用者既設の光回線光回線(USEN光 plus/USEN NET等)固定回線(WAN)マルチWAN(光・DSL・ケーブル・LTE/5G・Starlink等)有線WAN・5G/LTE・衛星(LEO)をSD-WANで組み合わせ
副回線(対応キャリア)内蔵モバイル回線(LTE・クラウドSIM)
ドコモ・au・ソフトバンク(電波の強い回線を自動選択)
モバイルLTE(クラウドSIM)
マルチキャリア(キャリア名は非公表)
LTE
キャリア名は非公表
内蔵4G/LTE(SIMは別途)
ドコモ・au・ソフトバンク・楽天+MVNO(同時利用は1枚)
LTE/5G・衛星など複数回線
マルチキャリアSIM(別途用意)
5G/LTE・衛星
Dual SIM・eSIM(日本の対応キャリアは要確認)
切替方式自動(障害検知後、数秒以内に切替)
復旧後は自動で光回線に切戻し
自動(障害時にモバイルへ切替)
復旧後は自動で光回線に切戻し/切替時間は非公表
自動(通信切断を検知しLTEへ切替)
切替時間は非公表
自動(Ping監視で4Gへ切替)
復旧後は切戻し/切替時間は設定依存
WANフェイルオーバー/ロードバランス
SpeedFusionで回線ボンディング(対向機器が必要)
フェイルオーバー(Dual SIM Dual Standby)
SD-WAN/WANボンディング
対象範囲・工事要否拠点全体、または特定機器の通信のみ
工事不要(ONUとルーターの間に設置)
ルータ配下の拠点全体
工事不要(ONUと既設ルータの間に設置)
拠点の固定回線(障害時の低容量バックアップ)
設置・設定工事あり(現場調査は希望時)
ルーター配下の拠点
工事不要(機器を設置・設定)
拠点(Balance 310Xで約50〜500ユーザー)
Drop-inで既存機器を残して設置可
固定拠点・車両・遠隔拠点など
導入はSB C&Sの販売パートナー経由
初期・月額費用の目安要お問い合わせ(構成に応じた個別見積り)要お問い合わせ(パートナー経由の個別見積り)初期33,000円/月額1,650円〜(セット時・税込)
最低利用期間24か月
本体40,260円(税込)の買い切り
月額なし(SIM通信費は別途)
本体購入(Balance 310Xは販売店で60万円台〜)
月額なし(一部クラウド機能は別途有償)
要お問い合わせ(構成に応じた個別見積り)
詳細情報公式資料を見る公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

※各社の公開情報をもとに作成(2026年10月時点)。料金・仕様は変更される場合があります。

DualLink Guardのウェブサイト

DualLink Guardは、ONUと既存ルータの間に専用端末を挟むだけで導入できる、光回線のバックアップサービスです。光回線の障害やプロバイダ側の通信障害を24時間365日監視し、障害を検知すると端末内蔵のモバイル回線へ自動で切り替えます。光回線が復旧すると自動で元に戻ります。

副回線はクラウドSIMに対応したモバイル回線で、ドコモ・au・ソフトバンクの3キャリアからその場所で電波の強い回線を自動で選びます。既存ルータの設定変更が不要で、工事なしでケーブルを差し替えるだけで導入できる手軽さが特徴です。拠点全体を冗長化する構成に加え、POSレジなど特定の通信だけを冗長化する設置例も製品資料で示されています。費用は構成に応じた個別見積りです。

VOLANS(株式会社MAYAネットソリューションズ)

VOLANS(ヴォランス)のウェブサイト

株式会社MAYAネットソリューションズが2023年10月に提供を開始したVOLANSも、ONUと既存ルータの間に専用端末を置くタイプの光回線バックアップです。光回線の障害時にクラウドSIMのモバイル回線へ自動で切り替え、復旧後は自動で光回線に戻ります。

副回線はマルチキャリアのクラウドSIMで、下り最大150Mbps・上り最大50Mbpsに対応します。設定不要で導入できる一方、閉域網VPNや複数PPPoE(インターネットへの接続方式の一つ)はバックアップの対象外で、切り替え時にグローバルIPアドレスが変わる点が公式に案内されています。

固定IPや閉域VPNを使う環境では、事前に対象範囲を確認しておくとよいでしょう。費用はセールスパートナー経由の個別見積りです。

USEN DUAL CONNECT(株式会社USEN NETWORKS)

USEN DUAL CONNECTのウェブサイト

通信事業者が提供する副回線サービスを選びたい場合の選択肢が、株式会社USEN NETWORKSのUSEN DUAL CONNECTです。光回線の通信切断を自動で検知し、LTE回線へ切り替えて通信を維持します。USEN光とのセット運用のほか、単体での契約にも料金が用意されています。装置を挟むだけのタイプと違い、設置・設定の工事を伴う点は押さえておきましょう。

位置づけは、障害時に通信を確保するための低容量バックアップです。料金は初期費用33,000円、月額1,650円(USEN光 plus/USEN NETとのセット時、2026年10月時点)からで、最低利用期間は24か月です。用途外のLTE通信が月1GBを超えると従量課金になるため、常時の大容量通信ではなく障害時の予備という使い方に向きます。

UD-LT2(株式会社アイオーデータ)

UD-LT2(LTE/M2Mルーター)のウェブサイト

自社で機器を用意してコストを抑えたい場合に候補となるのが、アイオーデータのLTEルーター「UD-LT2」です。固定回線(WAN)と内蔵の4G/LTEを備え、メイン回線をPing監視して障害を検知すると4G回線へ自動で切り替える「リンクバックアップ」機能を持ちます。復旧後はメイン回線へ戻ります。

対応キャリアはドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルと複数のMVNO(格安SIMを提供する事業者)で、SIMは別途用意します(同時に使えるSIMは1枚)。価格は40,260円(税込)の買い切りで、通信費は契約するSIM次第です。切り替えの速さは監視間隔と失敗回数の設定で決まる仕組みで、標準保証は3年です。

Peplink(Balance / SpeedFusion マルチ回線ルーター)のウェブサイト

複数の回線を束ねて使いたい、拠点ごとに柔軟な構成を組みたいという要件に向くのがPeplinkのマルチWANルーターです。光回線・LTE・複数SIM・衛星通信(Starlink)など複数の回線を接続し、デュアルWANのフェイルオーバーに加え、独自の「SpeedFusion」で回線を束ねる帯域確保や通信の安定化にも対応します。

既存のルータやファイアウォールを残したまま導入できる透過的な構成(Drop-in)も選べます。日本国内では複数の代理店が販売・サポートを提供しており、製品購入型のため費用は機種・構成によって異なります。SpeedFusionによる回線の束ね合わせには、対向側にPeplink製品が2台以上、または集約用のFusionHubが必要です。

Cradlepoint(Ericsson)

Cradlepoint(Ericsson Cradlepoint)のウェブサイト

クラウドで集中管理できるLTE/5Gルーターを探す場合の選択肢が、EricssonのCradlepointです。マルチキャリアのSIMからその場で使える回線を自動で選び、SD-WAN(拠点間の通信をソフトウェアで柔軟に制御する仕組み)の機能で回線の冗長化やフェイルオーバーを実現します。クラウド管理基盤「NetCloud」で、複数拠点の機器をまとめて管理できます。

日本国内では、SB C&S株式会社が2026年6月にEricssonと販売代理店契約を結び、販売パートナー経由で法人向けに提供しています。対象にはルーター本体に加え、NetCloudやプライベート5Gが含まれます。料金は構成に応じた個別見積りで、導入は代理店・販売パートナーを通じて行います。

まとめ

回線冗長化は、「何をどこまで二重化するか」を決めることから始まります。プロバイダ・回線・ONU・ルータのどこまで備えるかで、防げる障害と残る単一障害点が変わり、完全二重化しても2回線が同一経路・同一キャリアを通っていれば共倒れのリスクが残ります。副回線は経路・キャリアを分けて初めて効果が十分に出ます。

実現手段は、物理回線をもう1本引く方法のほか、工事なしで経路を分けやすいモバイル回線バックアップ、複数回線を束ねるマルチWANルーターなどがあります。止まると困る業務から必要な冗長化レベルを決め、工事・費用・切り替えの確実性で手段を選ぶとよいでしょう。自社に合った構成を選ぶために、まずは各サービスの資料を取り寄せて比較してみてください。

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よくあるご質問(FAQ)

Q. 回線冗長化とは何ですか?

A. 回線冗長化とは、ふだん使う主回線に加えて副回線(バックアップ回線)を用意し、主回線に障害が起きたときに副回線へ切り替えて通信を維持する仕組みです。切り替えは人手でも行えますが、障害を検知して自動で副回線へ切り替える「フェイルオーバー」が一般的で、主回線の復旧後に自動で元へ戻す「フェイルバック」を備えた製品もあります。

Q. 回線冗長化のマルチホーミングとは何ですか?

A. 回線冗長化におけるマルチホーミングとは、複数のISP(プロバイダ)や回線を使って、インターネットへ出る経路を複数持たせる考え方です。プロバイダ・回線の冗長化の総称的な位置づけで、大規模な構成ではBGPという仕組みで経路を制御します。

名前の似たリンクアグリゲーション(機器間のケーブルを束ねる)やNICチーミング(サーバのネットワークアダプタを束ねる)は、インターネット回線そのものではなく機器側を二重化する技術で、対象とする層が異なります。

Q. 回線冗長化と負荷分散はどう違いますか?

A. 回線冗長化と負荷分散は、主な目的が異なり、冗長化は予備を持たせて障害時も通信を止めないこと、負荷分散は複数の回線や機器に通信を振り分けて処理能力を上げることを狙いとします。ただし両者は排他ではなく、平常時から複数回線を同時に使って負荷分散する構成(アクティブ-アクティブ)は、一方が止まっても残りで通信を続けられる冗長性を兼ねます。

Q. 回線を完全二重化しても通信が止まることはありますか?

A. 回線を完全二重化しても、2本の回線が同じ通信ビルを経由していたり同じ通信事業者の基幹設備を使っていたりすると、その大元の障害で両方が同時に止まることがあります(同一経路・同一キャリアの共倒れ)。

プロバイダ・回線・ONU・ルータの機器を二重化するだけでなく、経路やキャリアまで分けて初めて冗長化の効果が十分に出ます。光回線とは別の携帯キャリア網を使うモバイル回線バックアップは、この経路を分けやすい点で有効です。

Q. 回線冗長化は工事なしでも導入できますか?

A. 回線冗長化は、モバイル回線(LTE)によるバックアップを使えば、物理回線をもう1本引く工事をせずに副回線を足せます。ONUと既存ルータの間に専用装置を挟む、またはLTEを内蔵したルータを使う方式で、光回線の障害時に携帯キャリアの回線へ自動で切り替わり、復旧後は自動で光回線に戻ります。

既存のルータ設定を変えずに導入できる製品が多く、本記事で紹介したDualLink GuardやUSEN DUAL CONNECT、UD-LT2などがこの方式にあたります。

Q. 回線冗長化のVRRPとHSRPはどう違いますか?

A. VRRPとHSRPは、どちらもルータ(デフォルトゲートウェイ)を二重化して障害時に予備へ引き継ぐ役割は同じですが、VRRPはIETFの標準プロトコル(RFC 5798)、HSRPはCisco独自のプロトコルという違いがあります。

HSRPの仕様を記録したRFC 2281にも「いかなるインターネット標準をも規定するものではない」と明記されています。複数メーカーの機器を組み合わせて構成するなら、標準であるVRRPが選ばれます。

Q. 回線冗長化の費用はどのくらいかかりますか?

A. 回線冗長化の費用は、選ぶ手段によって大きく変わり、副回線サービスの契約なら月額1,000円台から、装置の買い切りなら数万円からが目安です(2026年10月時点の各社公表情報)。

たとえば副回線サービスのUSEN DUAL CONNECTは初期33,000円・月額1,650円〜(セット時・税込)、LTEルーターのUD-LT2は本体40,260円(税込)の買い切りです。複数回線を束ねるマルチWANルーターや個別見積りの製品はさらに幅があり、モバイル回線は使った通信量に応じた従量課金が加わる場合もあります。

Q. 回線冗長化は中小企業や単一拠点でも必要ですか?

A. 回線冗長化が中小企業や単一拠点に必要かどうかは、回線が止まったときに事業が止まってしまう業務を抱えているかどうかで判断するのが現実的です。

企業規模よりも、POSレジやキャッシュレス決済、オンライン資格確認、クラウド会計やWeb会議など、短時間の通信断でも売上・信用に直結する業務があるかが分かれ目になります。そうした業務があれば、小規模・単一拠点でも、工事不要で導入しやすいモバイル回線バックアップから検討する価値があります。

Q. 回線が切り替わるとき通信は途切れたりIPアドレスが変わったりしますか?

A. 回線が副回線へ切り替わるとき、切り替えの瞬間は通信が一時的に途切れることがあり、製品によってはグローバルIPアドレスも変わります。切り替わるまでの時間は、死活監視の間隔や失敗回数の設定で変わります。

IPアドレスが変わると、IPを固定して使う閉域網VPNなどは副回線の利用中に通信できなくなる場合があるため、自社で使っているVPNや固定IP前提の通信が切り替え後も使えるかを事前に確認しておくと安心です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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