2020年の SolarWinds 事件や2021年の Log4j(Log4Shell)の脆弱性は、自社が開発・利用するソフトウェアに外部から取り込んだ部品が、そのままリスクの入り口になることを示しました。いまのソフトウェアは、数百から数千のオープンソース部品やコンテナイメージを組み合わせて作られており、そのどこか一つに脆弱性や悪意あるコードが紛れ込むと、製品全体に影響が及びます。
こうしたリスクに対応するのが「サプライチェーンセキュリティツール」です。顧客や取引先から SBOM(ソフトウェア部品表)の提出を求められたり、対策状況の確認を受けたりして、何を導入すればよいか調べ始める担当者も増えています。一方で「サプライチェーン」という言葉は、ソフトウェアの供給網を指す場合と、取引先を含む企業間の供給網を指す場合があり、検索して最初に戸惑いやすいところです。
本記事では、サプライチェーンセキュリティツールが何を守るものかを整理したうえで、2つの「サプライチェーン」の違い、ツールの種類と代表的な製品、主要な脅威、自社に合う選び方、費用感までを解説します。導入候補を絞るための検討材料としてご活用ください。
目次
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サプライチェーンセキュリティツールとは
サプライチェーンセキュリティツールとは、自社が開発・利用するソフトウェアのサプライチェーン、すなわちオープンソースの依存関係・コンテナイメージ・ビルド工程に紛れ込む脆弱性や悪意あるコードを検出し、管理するためのツールの総称です。ソースコードを書いた後の工程だけでなく、外部から取り込む部品や、それらをまとめてビルド・配布する仕組み全体を対象にします。
背景には、ソフトウェアの作られ方の変化があります。自社で書くコードは全体の一部にすぎず、多くはオープンソースのライブラリ、ベースとなるコンテナイメージ、システムパッケージから取り込まれます。取り込んだ部品に脆弱性や悪意あるコードが含まれていれば、自社のコードが健全でも製品は危険にさらされます。そこで、部品の一つひとつまで見えるようにし、危ないものを検出・遮断する仕組みが必要になります。
関連するフレームワーク・標準
ソフトウェアのサプライチェーン対策が業界標準になりつつある背景には、公的な枠組みの整備があります。起点の一つが、2021年5月12日に署名された米国の大統領令14028「Improving the Nation’s Cybersecurity」です。
この大統領令は、連邦政府に販売するソフトウェアの供給者に対し、安全なソフトウェア開発実践への準拠と、製品ごとの SBOM(ソフトウェア部品表)の提供を求めました。SBOM については、次のように定義しています。
the term “Software Bill of Materials” or “SBOM” means a formal record containing the details and supply chain relationships of various components used in building software.
(日本語訳: 「ソフトウェア部品表(SBOM)」とは、ソフトウェアの構築に用いられる各種コンポーネントの詳細とサプライチェーン上の関係を記録した正式な記録を意味する)
出典:Executive Order 14028, Improving the Nation’s Cybersecurity, Sec. 4|govinfo(連邦官報)
この大統領令が参照する安全開発実践の共通の物差しが、米国国立標準技術研究所(NIST)の「安全なソフトウェア開発フレームワーク(SSDF、NIST SP 800-218)」です。開発ライフサイクルに組み込める安全開発の推奨プラクティスを整理したもので、開発側だけでなく、調達側が供給者と対話するための共通語彙としても使われます。
あわせて、ビルドの来歴(プロブナンス)を段階的に担保する枠組みとして SLSA(Supply-chain Levels for Software Artifacts、「サルサ」と読む)があります。ビルドの保証レベルを L0 から L3 の4段階で定義し、上位の段階ほどビルド環境の改ざん耐性が高く、L2 以上では来歴が署名付きで検証できることを示す目安です。
オープンソース依存関係の健全性を評価する指標としては、OpenSSF スコアカードもよく参照されます。
これらは米国発の枠組みですが、国内でも顧客や取引先から SBOM の提出やサプライチェーン対策の確認を求められる形で影響が広がっており、自社の対応状況を説明するときの共通の物差しになります。
出典・参考資料(3件)
2つの「サプライチェーン」の違い
「サプライチェーンセキュリティ」という言葉は、内容の異なる2つの意味で使われています。調べ始める前に、自社が対象にしたいのはどちらかを確かめておくと、必要なツールを迷わず選べます。
| 2つのサプライチェーンの違い | 守る対象 | 主なリスク | 主な手段 | 本記事の扱い |
|---|---|---|---|---|
| ソフトウェアの供給網 | 自社が使うオープンソース部品・ライブラリ・コンテナイメージ・ビルド工程 | 取り込んだ部品の脆弱性、悪意あるパッケージの混入、ビルド・配布の改ざん | SCA・SBOM・コンテナスキャン・マルウェア検出などの検査ツール | 主な対象(以降で解説) |
| 取引先を含む企業間の供給網 | 下請け・委託先・仕入先など、取引関係でつながる企業のセキュリティ対策状況 | 対策の手薄な取引先を踏み台にした侵入、委託先経由の情報漏えい | 取引先の評価・質問票の配布と回収、対策状況の可視化(取引先リスク管理) | 参考として違いを示す(詳しくは取引先リスク管理の記事へ) |
本記事が扱うのは、主に左側の「ソフトウェアの供給網」です。右側の「取引先を含む企業間の供給網」については、国内で経済産業省が「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」の構築を進めています。2026年3月27日に公表された制度構築方針では、次のように示されています。
サプライチェーンを構成する企業のセキュリティ対策状況を共通の基準で評価・可視化することで、委託元企業・委託先企業双方の負担を軽減しつつ、サプライチェーン全体のセキュリティ水準の底上げを図る仕組みとして本制度を位置付けます。
出典:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針|経済産業省
同制度は、セキュリティ対策の段階を★3・★4に区分し(★5は今後検討)、★3・★4について2026年度末頃の制度開始(申請受付の開始)を目指すとしています。対象は企業のIT基盤であり、取引先の評価や対策状況の可視化を担う仕組みです。自社のソフトウェア部品を検査するツールとは目的が異なります。
取引先・委託先のセキュリティ対策状況を評価・可視化したい場合は、以下の記事で委託先管理の動向とGRCツールの選び方を解説しています。自社が守りたいのがこちらの「企業間の供給網」であれば、あわせてご覧ください。
サプライチェーンセキュリティツールの種類と代表製品
ソフトウェアのサプライチェーンを守るツールは、何を検査するかによっていくつかの種類に分かれます。まず全体像を一覧で示し、その後で種類ごとに役割を解説します。1つの製品が複数の種類をまとめて備えていることも多く、下表の「代表的なツール例」は各種別の代表例です(順位や優劣を示すものではありません)。

| 種類 | SCA(ソフトウェア構成分析) | SBOM生成・管理 | コンテナ・イメージスキャン | 依存パッケージのマルウェア検出 | 署名・出所検証(SLSA) | SAST・DAST |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 何を検出・保護するか | 取り込んだオープンソース依存関係に含まれる既知の脆弱性やライセンスの問題 | ソフトウェアの部品構成を一覧化し、脆弱性開示時に影響範囲を素早く特定 | コンテナイメージの各層に含まれる脆弱性や設定の問題 | レジストリに紛れ込んだ悪意あるパッケージの検出と、インストール時点での遮断 | アーティファクトが正規のビルドで作られたことの検証と、来歴の担保 | 自社コードの脆弱性(SAST=静的解析)と、動作中のアプリの脆弱性(DAST=動的解析) |
| 代表的なツール例 | Snyk、Black Duck、Trivy(OSS) | Syft(OSS)、Trivy(OSS)、Black Duck | Trivy(OSS)、Docker Scout、Sysdig Secure | Socket、Sonatype | Sigstore(cosign)、in-toto | Semgrep、Coverity(SAST)、OWASP ZAP(DAST) |
※上記は各種別の一般的な役割と代表的なツール例です。個別のツールの機能や対応範囲は各社情報をご確認ください。
これらのツールには、無償で使えるオープンソースのもの、月額課金の商用クラウドサービス、コンテナ基盤に付属する純正機能など、提供形態の異なるものが混在します。また、1つの製品が複数の種類の検査をまとめて備えていることも多く、後述する統合型のサービスなら、複数の検査を1つの画面で扱えます。ここからは、それぞれの種類が何を検査するのかを個別に見ていきます。
SCA(ソフトウェア構成分析/依存関係の脆弱性検査)
SCA(Software Composition Analysis)は、取り込んだオープンソースの依存関係を調べ、既知の脆弱性(CVE)やライセンスの問題を洗い出すツールです。直接使っているライブラリだけでなく、そのライブラリがさらに依存している間接的な部品(推移的依存)まで対象にします。
近年は、検出した脆弱性が実際にコードから呼び出され得るかを判定する「到達可能性分析」で、対応すべき脆弱性を絞り込む機能を備えるものもあります。数多く出る検出結果のうち、優先して直すべきものを見分けやすくする狙いです。
SBOM(ソフトウェア部品表)の生成・管理
SBOM は、ソフトウェアに含まれる部品(パッケージ・ライブラリ・バージョン・ライセンスとその関係)を機械が読める形で一覧化した記録です。部品が見えていれば、新たな脆弱性が公表されたときに「自社の製品は影響を受けるか、どこで使っているか」を素早く判定できます。
代表的なフォーマットに、Linux Foundation がホストする SPDX(国際標準 ISO/IEC 5962:2021)と、OWASP が主導し Ecma International が標準化した CycloneDX(ECMA-424)があります。SBOM 生成・管理ツールは、ビルドのたびに SBOM を自動生成し、これらのフォーマットで出力・管理できるようにします。
SBOM と組み合わせて使われる補足文書に VEX(Vulnerability Exploitability eXchange)があります。SBOM が「どの部品を含むか」を示すのに対し、VEX は「SBOM に挙がった脆弱性のうち、その製品で実際に影響があるものはどれか」を伝える文書です。対応が不要な脆弱性への対処の手間を減らすのに役立ちます。
出典・参考資料(2件)
コンテナ・イメージスキャン
コンテナイメージは、アプリケーションのコードと依存関係をまとめて本番環境に届ける入れ物です。ベースイメージ・追加したパッケージ・ビルドツールなど、各層に脆弱性が含まれることがあります。コンテナ・イメージスキャンは、これらの層を検査し、脆弱性や設定の問題を見つけます。
依存関係を追加したとき、イメージをビルドしたとき、レジストリに登録したとき、本番稼働後の継続的な監視など、複数のタイミングで検査できるものが一般的です。開発から運用までの各段階で、危ないイメージが本番に流れ込むのを防ぎます。
依存パッケージのマルウェア検出
脆弱性(うっかりの欠陥)とは別に、攻撃者が最初から悪意を持って公開したパッケージが混入するリスクがあります。名前の似たパッケージを登録して取り違えを狙うタイポスクワッティングや、正規パッケージの管理者アカウントを乗っ取って悪意あるコードを紛れ込ませる手口が代表例です。
このリスクに対しては、既知の脆弱性を探す SCA とは別に、悪意あるパッケージそのものを検出するツールが使われます。開発者の端末でパッケージを取り込むインストールの時点で遮断できるものもあります。
署名・出所検証(SLSA/来歴の担保)
署名・出所検証は、アーティファクト(ビルドで生成された成果物)が正規のビルドで作られ、途中で差し替えられていないことを暗号的に確かめる仕組みです。ビルドのパイプラインで自動的に署名し、デプロイ時に「信頼できる鍵で署名されたものだけを本番に通す」といった制御を行います。
前述の SLSA は、こうしたビルドの来歴をどこまで担保できているかを段階で示す枠組みです。署名・出所検証ツールは、この担保を実際のパイプラインに実装する役割を担います。
SAST・DAST(コード/実行時の脆弱性検査)
SAST(静的アプリケーションセキュリティテスト)は、自社が書いたソースコードを解析し、脆弱性につながる書き方を検出します。DAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)は、動作中のアプリに実際にリクエストを送って脆弱性を探します。
これらは厳密には自社コードを対象とするアプリケーションセキュリティの手法です。ただし、サプライチェーン対策の一連の検査と同じ画面でまとめて扱える製品も多く、開発工程全体の検査として一緒に導入されることがよくあります。
主要な脅威・攻撃タイプ
なぜこうしたツールが必要なのか、代表的な脅威と実際の事例で確認します。ソフトウェアのサプライチェーンを狙う攻撃は、取り込む部品・ビルドの仕組み・配布経路のそれぞれに向けられます。
| 主要な脅威・攻撃タイプ | 既知の脆弱性を持つOSSの取り込み | 悪意あるパッケージの混入 | ビルドシステムの侵害 | イメージ・レジストリの攻撃 |
|---|---|---|---|---|
| 主な手口 | 広く使われるライブラリの脆弱性が、それを使う無数のソフトに波及する | タイポスクワッティング、管理者アカウント乗っ取りによる悪意あるコードの公開 | ソースコードは正常でも、ビルド工程で成果物にコードを注入し正規署名で配布 | 改ざんしたイメージの登録、公式イメージの模倣、レジストリの認証悪用 |
| 代表的な事例 | Log4j(Log4Shell、2021年) | npm・PyPI での悪意あるパッケージの急増 | SolarWinds(SUNBURST、2020年) | コンテナ環境の拡大に伴い増加 |
2020年の SolarWinds 事件は、ビルド工程の侵害の代表例です。攻撃者が Orion 製品のビルド・更新に「SUNBURST」と呼ばれるバックドアを仕込み、正規の署名付きアップデートとして配布しました。
米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は緊急指令 ED 21-01 を発出し、影響を受けるバージョン(2019.4〜2020.2.1 HF1)への対応を求めました。SolarWinds 社が米証券取引委員会に提出した資料では、影響を受けた可能性のある顧客は18,000社未満とされています。
出典・参考資料(2件)
2021年に公表された Log4j の脆弱性(Log4Shell、CVE-2021-44228)は、取り込んだ OSS 依存関係に脆弱性が紛れ込むリスクの代表例です。広く使われる Java のログ出力ライブラリの単一の脆弱性が、世界中の無数のソフトウェアに波及しました。依存関係を把握し脆弱性を検査する SCA が必要な理由が、この事例に表れています。
悪意あるパッケージの混入も増えています。Sonatype の「10th Annual State of the Software Supply Chain Report」(2024年)によると、悪意あるオープンソースパッケージは前年比156%増となり、2019年の計測開始以降で累計704,102件が確認されたとしています。
出典・参考資料(2件)
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自社に合うツールの選び方
ツールの種類が分かったら、自社の状況に照らしてどこから検討するかを決めます。すべてを一度に導入する必要はなく、まず守りたい対象に対応する種類から選ぶのが現実的です。次の対応を出発点にすると、検討すべき種類を絞り込めます。
| 自社の状況別・まず検討したいツール | 内製開発でオープンソースを多用している | コンテナ・Kubernetes を中心に運用している | 顧客・取引先から SBOM の提出を求められている | CI/CD に組み込んで自動で検査したい | まず無料で試してから判断したい |
|---|---|---|---|---|---|
| まず検討したいツールの種類 | SCA(依存関係の脆弱性検査)+ 依存パッケージのマルウェア検出 | コンテナ・イメージスキャン | SBOM の生成・管理(SPDX/CycloneDX 対応) | パイプライン連携のある SCA・コンテナスキャン | オープンソースのツール、または無料プランのある製品 |
複数の対象にまたがる場合は、SCA・SBOM・コンテナスキャン・マルウェア検出などを1つの画面でまとめて扱える統合型のツールを選ぶと、導入と運用の手間を抑えられます。
あわせて、既存の開発フロー(使っているリポジトリ・レジストリ・CI/CD)との連携可否、誤検知をどれだけ減らせるか、社内環境でスキャンを完結できるか(コードを外部に複製しない方式に対応しているか)も、運用のしやすさを左右する確認ポイントです。
費用感と始め方
費用は、無料で使えるオープンソースのツールから、月額で利用する有償のクラウドサービスまで幅があります。まず小さく試したい場合は、依存関係やコンテナイメージを検査できるオープンソースのツールや、有償製品の無料プランから始める方法があります。悪意あるパッケージのインストール時点での遮断を無料で提供するツールもあります。
有償のクラウドサービスは、利用人数・スキャン対象(リポジトリ数・コンテナイメージ数)・使える機能の範囲に応じてプランが分かれるのが一般的です。目安として、10名規模の利用で月額数百ドル(おおむね数万円)程度から始められる製品が多く、SBOM の出力や依存パッケージのマルウェア検出など、一部の機能は上位プランで提供されることがあります。
無料・オープンソースで検査の範囲や運用の手間を確かめたうえで、CI/CD への組み込みや複数種類の検査の一元管理が必要になった段階で、有償の統合型サービスを検討するのが進めやすい順序です。具体的な金額やプランの区分は各社の料金ページで確認してください。
サプライチェーン検査を一体で行えるツールの活用
ここまで見てきた SCA・SBOM・コンテナスキャン・マルウェア検出は、別々のツールで揃えることもできますが、1つのプラットフォームにまとまっていると、導入と運用の負担を抑えられます。
ここでは、その一例として、ソフトウェアのサプライチェーン検査を一体で行えるサービスを紹介します。下表は、このサービスが各種類の検査にどのプランで対応しているかを示した対応範囲の一覧です。
| 対応項目 | Aikido Security |
|---|---|
| SCA(依存関係の脆弱性検査) | ●全プランで対応・到達可能性分析つき |
| SBOM出力(SPDX・CycloneDX・CSV) | ●Basicプラン以上 |
| コンテナイメージ検査 | ●全プランで対応 |
| 依存パッケージのマルウェア検出 | ●Proプラン以上 |
| インストール時点の悪性パッケージ遮断 | ●Safe Chainは無料 |
| ライセンス検査 | ●依存関係・コンテナイメージ内を検査 |
| 無料プラン | ●Developerプラン(2ユーザーまで) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る |
※2026年9月時点の公式情報にもとづく対応範囲です。対応する検査や上限はプランにより異なります。金額・プランの詳細は各社の最新情報をご確認ください。
Aikido Security(株式会社AndGo)

Aikido Security は、ベルギーの Aikido Security BV が開発し、国内では株式会社AndGo が正規代理店として提供する、開発・運用向けのセキュリティ診断をひとまとめにしたクラウド型のツールです。
SCA(依存関係の脆弱性検査)、SAST(静的解析)、シークレット検出、クラウド設定の検査、コンテナイメージの検査、IaC(Infrastructure as Code)検査、DAST(動的検査)、依存パッケージのマルウェア検出などを、1つのプラットフォームで扱えます。
ソフトウェアのサプライチェーン対策として必要な検査を一通り備えている点が特徴です。依存関係の脆弱性検査は全プランで利用でき、前述の到達可能性分析で対応すべき項目を絞り込みます。
SBOM は SPDX・CycloneDX・CSV の形式で出力でき(Basic プラン以上)、依存パッケージのマルウェア検出(Pro プラン以上)や、開発者の端末でのインストール時点での遮断(Safe Chain は無料)にも対応します。コンテナイメージの検査は全プランで利用可能です。
スキャンのたびにリポジトリを安全な仮想環境に複製して検査し、検査後にその環境ごと削除する設計で、コンプライアンス要件が厳しい場合は社内環境でスキャンを完結させる方式も選べます。無料プランから始められるため、まず依存関係やコンテナイメージの検査を試してから、必要に応じて機能を広げる進め方に向いています。
料金は、2ユーザーまで無料で使える Developer プランに加え、有償プランが用意されています。国内提供元の株式会社AndGo 経由では、月額5万円台(年間契約・利用者10人まで)から利用できます。本体公式の年額の参考価格は、ベーシックプランが 3,780 米ドル、プロプランが 7,560 米ドルです(いずれも2026年9月時点。為替や税により実際の請求額は変わります)。
自社のコードを外部の環境に預けて検査することへの懸念について、提供元の株式会社AndGoはインタビューで検査時のコードの扱いを次のように説明しています。

Aikido Securityは、コードスキャンの都度コンテナを起動し、お客さまのコードリポジトリを安全な仮想環境(コンテナ)に複製して検査し、検査後にその環境ごと削除する設計です。そのため、コード自体をAikido側が保持し続ける前提ではありません。また、よりコンプライアンスの厳しいお客様においては、お客様環境でスキャンを行う方式を選択いただくこともできます。この場合、コードのコピーは発生せず、スキャン自体を社内環境で完結させられます。
また、ソフトウェアのサプライチェーン対策とあわせて、脆弱性診断サービス全般の比較・検討も進めたい場合は、以下の記事で診断方法や費用相場、選び方を詳しく解説しています。導入を検討される方は、ぜひこちらもご覧ください。
まとめ
サプライチェーンセキュリティツールは、自社が使うオープンソース部品・コンテナイメージ・ビルド工程に紛れ込む脆弱性や悪意あるコードを検出・管理するためのツールです。SCA・SBOM・コンテナスキャン・マルウェア検出・署名/出所検証・SAST/DAST といった種類があります。
内製開発の有無、コンテナの利用、SBOM の提出要求、CI/CD への組み込み、無料で始めたいかといった自社の状況から、検討すべき種類を絞り込めます。取引先を含む企業間のサプライチェーンの管理は別系統の仕組みが担うため、目的に合わせて使い分けることが大切です。
まずは無料・オープンソースで範囲を確かめ、複数の検査を一元管理したい段階で統合型のサービスを検討すると、無理なく導入を進められます。
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よくある質問(FAQ)
Q. サプライチェーンセキュリティツールとは何ですか?
A. サプライチェーンセキュリティツールとは、自社が開発・利用するソフトウェアに取り込んだオープンソース部品・コンテナイメージ・ビルド工程を検査し、そこに紛れ込む脆弱性や悪意あるコードを検出・管理するツールの総称です。自社が書いたコードだけでなく、外部から取り込む部品や、それらをまとめて配布する仕組み全体を守る点が、従来のセキュリティ対策との違いです。
Q. サプライチェーンセキュリティツールのSCA・SBOM・コンテナスキャンは何が違うのですか?
A. SCAは取り込んだOSS依存関係の既知の脆弱性を検出し、SBOMは部品構成を一覧化して脆弱性開示時の影響範囲を追跡できるようにし、コンテナスキャンはコンテナイメージ内の各層の脆弱性を検査する、という検査対象と目的の違いがあります。3つは競合するものではなく役割が異なり、1つの製品がまとめて備えていることも多いため、自社が守りたい対象に合わせて必要な機能を選びます。
Q. ソフトウェアのサプライチェーンと、取引先を含む企業間のサプライチェーンはどう違いますか?
A. 前者は自社が使うOSS部品・コンテナ・ビルド工程を守る対象とし、後者は下請けや委託先など取引関係でつながる企業のセキュリティ対策状況を守る対象とする点が違います。本記事で扱うツール(SCA・SBOM・コンテナスキャンなど)は前者向けです。
後者は取引先の評価・可視化を担う別系統の仕組みで、国内では経済産業省がSCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)の構築を進めており、★3・★4について2026年度末頃の制度開始を目指すとしています。取引先の管理が目的の場合は、取引先リスク管理(GRCツール)の解説やサービスを確認してください。
出典・参考資料(1件)
Q. サプライチェーンセキュリティとアプリケーションセキュリティはどう違いますか?
A. アプリケーションセキュリティが自社で書いたコードの脆弱性に注目するのに対し、サプライチェーンセキュリティは外部から取り込む部品や、ビルド・配布に至る工程全体に注目する点が違います。現代のソフトウェアはコードの多くをOSSライブラリやベースイメージから取り込むため、自社コードの検査(SAST・DAST)だけでは守りきれず、両者を組み合わせて開発工程全体を検査するのが一般的です。
Q. サプライチェーン攻撃は従来のサイバー攻撃と何が違うのですか?
A. 従来の攻撃が標的の組織を直接狙うのに対し、サプライチェーン攻撃は標的が利用するソフトウェアの開発・配布経路や部品を侵害し、間接的に多数の利用者へ一度に到達する点が違います。上流の部品やビルドシステムを1か所侵害すれば下流の無数の組織に波及するため、2020年のSolarWinds事件のように被害が広範囲に及びます。
Q. SBOMとは何ですか?なぜ必要なのですか?
A. SBOM(ソフトウェア部品表)とは、ソフトウェアに含まれる部品・バージョン・ライセンスとその関係を機械が読める形で一覧化した記録で、新たな脆弱性が公表されたときに自社製品が影響を受けるかを素早く判定するために必要です。部品が見えていなければ影響調査に時間がかかるため、代表的なフォーマット(SPDX・CycloneDX)で出力・管理します。
米国では大統領令14028が連邦政府への納入ソフトにSBOMの提供を求めており、国内でも顧客・取引先から提出を求められる場面が増えています。
Q. サプライチェーンセキュリティツールは無料で始められますか?
A. 無料で始められます。依存関係やコンテナイメージを検査できるオープンソースのツールや、有償製品の無料プランから試せます。悪意あるパッケージのインストール時点での遮断を無料で提供するツールもあります。
まず無料・オープンソースで検査の範囲や運用の手間を確かめ、CI/CDへの組み込みや複数種類の検査の一元管理が必要になった段階で有償の統合型サービスを検討すると、無理なく進められます。
Q. サプライチェーンセキュリティツールはどれから導入すればよいですか?
A. 自社が最も守りたい対象に対応する種類から始めるのが現実的です。内製開発でOSSを多用するならSCAと依存パッケージのマルウェア検出、コンテナ中心ならコンテナ・イメージスキャン、SBOM提出を求められているならSBOMの生成・管理、というように自社の状況に対応づけて選びます。複数の対象にまたがる場合は、これらを1画面でまとめて扱える統合型のツールを選ぶと、導入と運用の手間を抑えられます。
Q. サプライチェーンセキュリティツールを選ぶとき、どのフレームワークを参考にすればよいですか?
A. 広く参照されるのは、ビルドの来歴を段階的に担保するSLSA、安全な開発実践を整理したNISTのSSDF(SP 800-218)、OSS依存関係の評価を行うOpenSSFスコアカードです。これらは顧客や調達先と対策状況を対話するときの共通の物差しになります。自社が求められている水準(SBOMの提供やビルドの来歴の担保など)に照らして、対応する検査を備えたツールかを確認すると選びやすくなります。
出典・参考資料(3件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















