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シナリオプランニングの事例と進め方|シェル・自動車業界・南アフリカなど企業の活用例を解説

シナリオプランニングの事例と進め方のサムネイル画像
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経営管理システム比較表(2026年版)

地政学や技術、規制、気候といった変化が重なり、ひとつの将来予測だけで中期の経営計画を立てることが難しくなっています。こうしたなかで、複数の未来をあらかじめ描いて備えるシナリオプランニングに関心を持つ経営企画・経営層が増えています。

とはいえ「手法の説明は読んだが、自社でどう使えばよいかのイメージがわかない」という声は少なくありません。本記事では、ロイヤル・ダッチ・シェルや自動車業界、南アフリカの政権移行、日本の業界団体や自治体といった実際の事例を横断して紹介し、進め方の4ステップと失敗しないための勘所まで整理します。

他社や他業界がどんな不確実性にどんなシナリオを描き、何に役立てたのかを知れば、自社での第一歩が描けるようになります。最後に、描いたシナリオを予算やKPIに落として継続的に運用するための手段にも触れます。

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シナリオプランニングとは?目的と単一予測との違い

シナリオプランニングとは、起こりうる複数の未来を物語(シナリオ)として描き、それぞれの状況で自社がどう対応するかをあらかじめ考えておく戦略立案の手法です。ひとつの数値を当てにいく未来予測とは考え方が異なります。

目的は「将来を正確に当てること」ではありません。不確実性の高い環境のなかで、意思決定者が「自分たちはこうなるはずだ」と無意識に抱いている前提を揺さぶり、複数の可能性に目を向けられるようにすることにあります。だからこそ、後で紹介するシェルの事例でも、作ったシナリオそのものより経営陣の物の見方が変わったことが成果とされています。

単一の予測は、前提が外れた瞬間に計画ごと使えなくなります。これに対してシナリオプランニングは、複数の将来を前提に「どの未来が来ても次の一手を用意しておく」ための備えです。景気・技術・規制・地政学のように、自社でコントロールできず影響の大きい要素が絡むテーマほど効果を発揮します。

大まかには、外部環境の分析から複数のシナリオを描き、対応策に落とす流れで進めます(詳しい手順は後述します)。

出典・参考資料(1件)

シナリオプランニングの代表的な事例

ここからは、企業・業界・公共や団体という異なる場面でシナリオプランニングが実際にどう使われたのかを紹介します。まず5つの事例を、「直面した不確実性」「描いたシナリオ」「役立った点」の3つの観点で一覧にまとめます。

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ロイヤル・ダッチ・シェル(石油・1970年代)自動車業界(KPMGによる分析・2022年)南アフリカの政権移行(1991〜1992年)日本石材産業協会(2017年・2027年を想定)自治体・公共(LCS 2016年/別府市 2018年)
直面した不確実性石油価格と中東情勢の先行きEV化の進展速度・地政学・資源調達アパルトヘイト後の政治・経済の行方景気と人のつながりの変化2050年の社会像、地域資源をめぐる利害
描いたシナリオ価格高騰の可能性を含む複数の将来像バッテリー価格やEV普及率が分岐する複数の将来像ダチョウ/足の悪いアヒル/イカロス/フラミンゴの飛行の4つ春の祭典/歓喜の歌/運命/調和の幻想の4つ技術依存とローカル志向など対照的な社会像
役立った点1973年のオイルショックに競合より備えられ、対応を早められた普及が想定より進まない場合も含めた戦略の検討対立する立場が共通の未来像を描き、政策の方向性を共有できた「お墓が売れない社会でも必要とされる石材店とは」という気づき価値観の分岐を可視化し、関係者の対話・合意形成に活用できた

※各事例の詳細と出典は以下の各項で解説します。

ロイヤル・ダッチ・シェルのオイルショック対応(適応型の古典事例)

シナリオプランニングを経営で本格的に活用した先駆けとして最もよく知られるのが、石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルの事例です。同社は1965年ごろから長期の環境変化を考える計画活動を立ち上げ、未来学者ハーマン・カーンらが用いたシナリオ手法を取り入れました。

1972年、計画を主導したピエール・ワック(Pierre Wack)らは、経営陣に対して複数の将来シナリオを提示します。そのひとつが、安価な石油が続くという当時の常識に反して、石油価格が高騰する未来でした。翌1973年に第一次オイルショックが起こると、価格高騰のシナリオを検討していたシェルは、同じ事態に直面した競合各社より早く対応に動くことができました。

重要なのは、シェル自身がこの取り組みのねらいを「未来を正確に当てること」ではなく「不確実な未来に向き合う意思決定者の物の見方(メンタルモデル)を変えること」だと説明している点です。シナリオは当てるためではなく、前提を問い直し、備えを促すために使われました。

出典・参考資料(2件)

自動車業界のEV化・地政学シナリオ(業界事例)

より新しい事例として、自動車業界を題材にしたKPMGジャパンの分析があります。電動化(EV化)の進み方は、各国の政策・資源調達・エネルギー政策などによって大きく変わり、単一の予測が立てにくい領域です。

同分析では、2030年の欧州におけるEV化比率について、従来の見立てと異なるシナリオを複数のデータから試算しています。

これまで、市場における大方の見立てでは今後10年でバッテリー価格は大幅に減少するという見立てでした。しかし各国によるEV政策の強化により、バッテリー需要が供給量を超えたこと、そして今回の有事を機に調達における政策・戦略が大幅に変更されたこと、ドイツなどを中心にエネルギー政策も変換せざるを得ないことなどを受けて、EVの普及に関してさらにシナリオが複雑に分岐することになったと言えます。

複数のデータをボトムアップ型で積み上げて試算を行いましたが、これまで7割を超えると言われてきた比率が4割を切るというシナリオとなっています。

出典:有事を読むシナリオプランニング~自動車業界を例に|KPMGジャパン

「EVが急速に普及する」という前提だけで投資や開発を進めると、普及が想定より遅れた場合に計画が立ち行かなくなります。これは特定の一社の成果ではなく、第三者による分析・試算の例ですが、複数のシナリオを並べて数値で試算しておくことで、どの未来が来ても判断を誤りにくくなるという考え方を業界レベルで示しています。

南アフリカの政権移行シナリオ(変容型・社会の事例)

企業だけでなく、社会全体の進路を描くためにも使われます。代表例が、アパルトヘイト撤廃後の南アフリカで1991〜1992年に行われたモン・フルー(Mont Fleur)シナリオです。政治・経済・市民社会の立場の異なる関係者が集まり、ファシリテーターのアダム・カヘン(Adam Kahane)のもとで、移行後の10年を4つの物語として描きました。

4つのシナリオは、それぞれ次のような含意を持つ名前で呼ばれました。

  • ダチョウ(Ostrich):少数派だった白人政権が交渉による解決を避け、問題から目を背ける未来
  • 足の悪いアヒル(Lame Duck):権限の弱い政府のもとで移行が長引き、誰の期待にも応えられない未来
  • イカロス(Icarus):国民の支持を背に誕生した政府が、持続不能な大規模財政支出に走る未来
  • フラミンゴの飛行(Flight of the Flamingos):必要な条件を整え、社会の全員がゆっくりと共に上昇していく未来

このうち、全員が共に少しずつ上昇する「フラミンゴの飛行」が望ましい姿として共有され、持続不能な財政拡大(イカロス)を避ける方向性が、その後の経済政策の議論に影響を与えたとされています。立場の異なる当事者が同じテーブルで未来を描くことで、対立を越えて進路の共通認識をつくった、変容型(transformative)の代表例です。

出典・参考資料(1件)

日本石材産業協会の2027年シナリオ(業界団体の実務事例)

国内の業界団体による実務的な事例もあります。一般社団法人日本石材産業協会は2017年に「石材産業未来シナリオ2027」をまとめ、10年後の2027年を想定した4つのシナリオを描きました。

軸に選んだのは、横軸の「景気」(良くなる/悪くなる)と、縦軸の「社会や人のつながり」(希薄になる/強まる)です。この2軸の組み合わせから、「春の祭典」「歓喜の歌」「運命」「調和の幻想」という4つのシナリオが生まれました。たとえば景気が低迷し人のつながりが強まる「調和の幻想」では、石材業界への影響が次のように描かれています。

人との繋がりを大切にするため、お墓の良さも認められるが、景気の低迷から低価格の期限付きの墓が増える。供養は多様化し、散骨や樹木葬など維持費がかからない供養が多い。

出典:石材産業未来シナリオ2027|一般社団法人日本石材産業協会

この取り組みを支援した企業の解説によれば、参加者からは「今までお墓を売ることだけで、使う人のことを考えたことなかった」という気づきが生まれたといいます。将来像を描く過程での対話が、墓石を売ることから、使う人や地域に必要とされる存在になることへと視点を広げるきっかけになった、という実務上の効果がうかがえます。

出典・参考資料(1件)

自治体・公共系の事例(低炭素社会戦略センター・別府市)

行政・公共の分野でも、長期の社会像や地域の課題を考えるためにシナリオプランニングが使われています。

科学技術振興機構(JST)の低炭素社会戦略センター(LCS)は、2016年に2050年の社会像として「バーチャルユートピア」と「ローカルフロンティア」の2つのシナリオを描きました。前者は高度な技術活用やロボットによる代替、在宅中心の働き方が進む社会、後者は手作りやスローライフが評価され、手間をかけることが贅沢とされる社会です。

両者とも低炭素化は同程度に実現するものの、社会の姿は大きく異なります。技術と価値観の分岐を描くことで、どの未来に向けて手を打つかを考える土台にしています。

また大分県別府市では、温泉・観光と地熱発電という利害が絡む地域課題について、2018年に3通りの将来シナリオを構築し、関係者間で意見を共有する対話の土台として活用した事例が、査読論文として報告されています。利害が対立しやすいテーマでも、複数の将来像を並べることが合意形成の出発点になることを示す例です。

出典・参考資料(2件)

シナリオプランニングの進め方(4ステップ)

事例を踏まえて、自社で進める場合の基本的な流れを4つのステップで整理します。紹介した事例の多くも、おおむねこの順序で将来像を組み立てています。

紹介した事例は特定の業界や社会の話に見えるかもしれませんが、一般の事業会社が中期経営計画を立てるときにも同じ手順で使えます。

たとえばメーカーなら、原材料価格や為替、主要市場の需要といった「影響が大きく読みにくい要素」を2つ選び、それらが高い場合・低い場合の組み合わせで複数の将来像を描く、という形で当てはめられます。所要期間や集めるメンバーの目安は記事末尾のよくある質問でも触れます。

シナリオプランニングの進め方を4つのステップで示した図解。ステップ1は環境分析(市場・技術・社会・規制など外部環境を幅広く洗い出す)、ステップ2は不確実性の特定(影響が大きく読みにくい要素を2つ選び縦軸・横軸に取る)、ステップ3はシナリオの描画(2軸の組み合わせごとに複数の未来を物語として描く)、ステップ4は対応策の立案(各シナリオの打ち手と近づく兆候を決めて行動に落とす)。

ステップ1. 環境分析(現状の認識)

市場動向・技術変化・社会環境・法規制など、自社を取り巻く外部環境を幅広く洗い出します。ここで集めた材料が後のシナリオの土台になるため、自社の業界だけでなく、隣接する領域や社会全体の動きまで視野を広げることが大切です。シェルがエネルギー以外の政治・経済動向まで見ていたように、分析の幅が将来像の豊かさを左右します。

ステップ2. 重要な不確実性の特定(2軸の設定)

洗い出した要素を、「影響が大きいか小さいか」「予測しやすいか不確実か」で仕分けます。このうち影響が大きく、かつ不確実性も高い要素がシナリオを分ける鍵になります。多くの場合、そうした要素を2つ選んで縦軸・横軸に取り、4つの象限をつくります。

日本石材産業協会が「景気」と「人のつながり」を2軸に取ったように、どの2軸を選ぶかで描けるシナリオが決まります。確度の高い前提(避けられない人口動態など)は全シナリオ共通の土台とし、軸には使わないのが一般的です。

重要な2つの不確実性を縦軸・横軸に取り4つの象限でシナリオを描く考え方を示した2×2マトリクス図。例として日本石材産業協会が横軸に景気(悪くなる/良くなる)、縦軸に社会や人のつながり(強まる/希薄になる)を取ったことを示す。景気が低迷し人のつながりが強まる象限が「調和の幻想」。この4象限から春の祭典・歓喜の歌・運命・調和の幻想の4シナリオが生まれた。

ステップ3. 複数シナリオの描画

2軸の組み合わせごとに、その未来で何が起こり、自社や社会がどうなるかを具体的な物語として描きます。南アフリカの「ダチョウ」「フラミンゴの飛行」のように、各シナリオに内容を一言で思い出せる名前を付けると、関係者の間で共有しやすくなります。この段階では良し悪しを判断せず、どの未来も「起こりうるもの」として扱うのが要点です。

ステップ4. 対応策・アクションプランの立案

描いた各シナリオについて、「その未来が来たら何をするか」「どの未来でも共通して今やるべきことは何か」を考え、具体的な行動に落とし込みます。あわせて、どのシナリオに近づいているかを知らせる兆候(指標)を決めておくと、変化の初期に気づいて動けます。行動のリストアップ・優先順位付け・担当者の決定まで進めて、はじめてシナリオが実行につながります。

南アフリカの事例では、望ましい「フラミンゴの飛行」に近づけ、持続不能な「イカロス」を避けるという形で、描いたシナリオがその後の政策の方向づけに使われました。このように、対応策まで落とし込んで初めてシナリオが意思決定に生きます。

出典・参考資料(1件)

シナリオプランニングで失敗しないための勘所

手順どおりに進めても、使い方を誤るとシナリオが「作って終わり」になりがちです。実務での活用例から見えてくる勘所を3つ挙げます。

成果物ではなくインプットとして使い続ける。完成したシナリオ文書そのものが目的ではありません。ある実務解説では「シナリオ・プランニングはアウトプットではなくインプット」と表現されています。描いた将来像を、その後の意思決定や議論の材料として繰り返し使うことに本当の価値があります。

作る過程の対話を重視する。石材産業協会の例で「お墓を使う人のことを考えたことがなかった」という気づきが生まれたように、立場の異なるメンバーが公平に意見を出し合う対話そのものが、新しい視点をもたらします。結論を急がず、慣れ親しんだ前提を問い直す場として設計することが欠かせません。

定期的に見直す。外部環境は変わり続けるため、一度描いたシナリオも定期的に点検し、必要に応じて軸や内容を更新します。自社だけでなく業界全体を視野に入れ、多角的な視点で見直すことで、現実とのずれを早めに補正できます。

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描いたシナリオを数値計画・KPIに落として継続運用する

ここまで紹介した事例の多くは、中長期の戦略シナリオを言葉で描くところに力点がありました。ただし自動車業界の例のように、シナリオを「EV比率が何割になるか」といった数値の試算にまで落とし込むと、投資や事業計画の判断に直結します。

戦略を言葉で描く段階と、予算やKPIという数値で運用する段階とでは、扱う粒度が異なります。描いたシナリオを現場で活かし続けるには、複数の未来を数値に置き換え、実績と照らし合わせて見直していく仕組みが要ります。

この「予算を実績や環境変化に合わせて継続的に見直していく」進め方は、ローリングフォーキャストと呼ばれます。その考え方やメリット・運用のコツを押さえておくと、シナリオを数値で回し続けるイメージがつかみやすくなります。

複数パターンの予算作成や、前提を変えたときの業績への影響を試算するマルチシナリオ分析、着地見込みやKPIのモニタリングは、経営管理システムが得意とする領域です。ここでは、こうした「複数の将来シナリオを数値で並べて比較し、継続的に運用する」用途に対応するサービスを紹介します。

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サービス名Scale CloudAnaplanWorkday Adaptive PlanningBoardCCH Tagetik
マルチシナリオ・What-If分析●●●●△What-If分析に対応(複数シナリオの比較は公式に明示なし)
複数パターン予算・フォーキャスト●●●●●
着地見込み・KPIモニタリング●●●●●
提供形態・対象規模クラウド(SaaS)クラウド(SaaS)
大企業・グローバル中心
クラウド(SaaS)
あらゆる規模に対応
クラウド/オンプレミス
大企業向け
クラウド/オンプレミス
大企業・連結向け
料金月額15万円〜要お問い合わせ要お問い合わせ
(30日間の無料トライアルあり)
要お問い合わせ要お問い合わせ
詳細情報オンライン相談を予約サービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る

※上記は各社の公式サイト・開発元資料・国内パートナーの公開情報に基づく記載です(2026年10月時点)。機能の搭載有無や料金・提供形態は変更される場合があるため、最新情報は各社情報をご確認ください。

ここで取り上げたのは、シナリオ運用に関わる機能に絞った少数の比較です。予実管理・連結会計・ERPなど経営管理システム全体を、タイプ別の選び方や料金まで含めて比較したい場合は、以下の記事で主要なサービスを幅広く整理しています。導入を本格的に検討される方はあわせてご覧ください。

Scale Cloud(株式会社Scale Cloud)

Scale Cloud(スケールクラウド)のウェブサイト

Scale Cloudは、財務数値(損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー)と事業のKPIを関連づけて一元管理し、予算の達成度とその再現性を高める経営管理クラウドです。経営層・管理部・事業部が同じ数字を見て、予算達成という共通の目標に向けて議論できる状態をつくることを掲げています。

各KPIの数値をもとにPLをシミュレーションでき、複数パターンでの予算作成と着地見込み(フォーキャスト)の更新がしやすい点が特徴です。描いたシナリオをKPIの前提として置き換えながら、予算への影響を見比べる使い方に向いています。料金は月額15万円からとされています(2026年9月時点の公式サイト表記)。

財務の結果だけでなく、その結果に至るプロセスを数値で押さえる必要があるのはなぜか。開発元の株式会社Scale Cloudは、KPIと財務数値を結びつける発想の背景を次のように説明しています。

広瀬氏
株式会社Scale Cloud 代表取締役
広瀬氏
独自インタビューより

従来の管理会計では、財務データを部門別や得意先別など様々な切り口で分析するのですが、それだけでは「この結果にどうやって至ったのか」というプロセスがまったくわからないです。事業の状況を正しく理解するためには、結果だけでなくそこに至るプロセスも含めて把握しなければ、どこに問題があるのか見えてこない。これが管理会計の限界だと感じていました。

Anaplan(Anaplan, Inc.)

Anaplanのウェブサイト

Anaplanは、自社を「シナリオプランニング・分析プラットフォーム」と位置づける計画基盤です。財務・営業・サプライチェーン・人事などの計画を同じ基盤でつなぐ「コネクテッドプランニング」を中核に据えています。

公式サイトでは、複数のシナリオを素早く展開してドライバー(前提となる要因)の影響を分析したり、市場動向や競合、地政学などに応じて調整した複数の予測を作成したりできると説明されています。大企業・グローバル企業での利用を中心に紹介されており、全社規模で複数シナリオを扱いたい場合の選択肢です。料金は公開されておらず、要お問い合わせとなっています。

Workday Adaptive Planning(Workday, Inc.)

Workday Adaptive Planningのウェブサイト

Workday が提供する、予算編成・予測・財務計画を自動化するクラウド型のEPM(経営管理)ソフトウェアです。財務計画に加え、人員計画やオペレーション計画も連携して扱えます。

公式サイトによれば、前提を変えたWhat-Ifシナリオを作成し、ベースの計画に影響を与えずに結果を比較できます。チームに共有する前に個人用のサンドボックスで試せる点も特徴です。承認した変更はベースの計画に反映でき、検討から合意までを同じ画面で進められます。あらゆる規模の組織に対応するとされ、料金は要お問い合わせ、30日間の無料トライアルが用意されています。

Board(ボード)(Board International SA)

Board(ボード)のウェブサイト

Boardは、財務計画(予算編成・予測)と業務計画を単一のプラットフォームに統合し、多次元分析やダッシュボードといったBI(ビジネスインテリジェンス)機能と、予算・計画・予測のEPM機能を一気通貫で扱える経営計画プラットフォームです。

公式サイトでは、異なる前提を置いたWhat-If分析とシナリオの作成・比較を組み合わせ、1つの環境のなかで複数のシナリオを作成・比較・更新できると説明されています。計画や予測のバージョンとシナリオを扱い、実績や時間の経過と比較できる点も特徴です。

料金は要お問い合わせです。

CCH Tagetik(Wolters Kluwer)

CCH Tagetikのウェブサイト

Wolters Kluwerが開発する統合型の経営管理(CPM)プラットフォームです。グループ会社・子会社・事業部門を横断して、予算管理・連結管理・レポーティング・分析をカバーします。国内ではSCSK株式会社などのパートナーが導入から保守・運用までを担います。

開発元の資料によれば、価格・数量・時間単価といったドライバーを変えると、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフローへの影響を即時に確認できます。人員データを使ったWhat-If分析や、計画の調整結果をシナリオとして損益計算書上に表示する機能も備えます。大企業・グローバル連結を見据えた基盤で、料金は要お問い合わせです。

まとめ

シナリオプランニングは、将来を正確に当てる手法ではなく、複数の未来を前提に備え、意思決定者の前提を問い直すための手法です。シェルや自動車業界、南アフリカの政権移行、日本の業界団体や自治体まで、企業・社会・公共のさまざまな場面で、対立や不確実性のなかで進路を描くために使われてきました。

進め方は、環境分析から重要な不確実性を2軸に整理し、複数のシナリオを描いて対応策に落とす4ステップが基本です。そして、作って終わりにせず、対話を重ね、定期的に見直し続けることが成果につながります。描いたシナリオを予算やKPIという数値に落として運用する段では、経営管理システムが実務の支えになります。自社に合う進め方と手段を、本記事を出発点に検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. シナリオプランニングはPEST分析やSWOT分析とどう違いますか?

A. PEST分析やSWOT分析が現状や自社の強み・弱みを整理するフレームワークなのに対し、シナリオプランニングは起こりうる複数の未来を描いて備える手法である点が異なります。両者は対立するものではなく、むしろ組み合わせて使います。

進め方のステップ1「環境分析」で、PEST分析(政治・経済・社会・技術などの外部環境の整理)やSWOT分析を使って材料を洗い出し、そこから影響が大きく不確実性の高い要素を見極めて複数のシナリオづくりにつなげる、という関係にあります。

Q. シナリオプランニングでは、いくつのシナリオを作るのが適切ですか?

A. 影響が大きく不確実性の高い要素を2つの軸に取り、4つ程度のシナリオを描くのが一般的です。本記事で紹介した南アフリカの政権移行や日本石材産業協会の事例も、2軸の組み合わせから4つのシナリオを組み立てています。

数が多いほど網羅的に見えますが、増やしすぎると議論が拡散し、それぞれの将来像が記憶に残りにくくなります。関係者が内容を思い出せる程度の数に絞り、各シナリオに特徴をひと言で表す名前を付けておくと、実務で共有しやすくなります。

Q. シナリオプランニングでは、どのくらい先の未来を想定すればよいですか?

A. 想定する期間はテーマによって異なり、数年先から数十年先まで幅があります。本記事の事例でも、日本石材産業協会は10年後(2017年に2027年を想定)、自治体・公共系では2050年といった長期を描いています。目安としては、自社が立てる中期経営計画より一歩先の3〜10年程度に置くと、足元の計画と地続きで議論しやすくなります。技術や社会構造の大きな変化を扱うテーマほど、長めの時間軸が向いています。

Q. シナリオプランニングは社内の誰が参加して進めるのがよいですか?

A. 経営企画部門などが事務局となり、経営層や複数の事業部門など立場の異なるメンバーを集めて進めるのが効果的です。シナリオプランニングの価値は、作る過程での対話を通じて互いの前提を問い直すところにあります。

特定の部署だけで完結させると視点が偏りやすいため、普段は意見が交わりにくい部門の担当者も加えるとよいでしょう。議論が特定の立場に流れそうな場合は、外部のファシリテーターに進行を任せる方法もあります。

Q. シナリオプランニングは中小企業やスタートアップでも実施できますか?

A. シナリオプランニングは企業規模を問わず実施でき、少人数のチームでも取り組めます。高度なツールや大人数の専任チームが必須の手法ではなく、重要なのは立場の異なるメンバーが集まって将来を議論する場をつくることです。

まずは半日〜1日のワークショップで、自社にとって影響が大きく読みにくい変化を2つ選び、4つの将来像を描いてみるところから始められます。規模が小さいほど意思決定も速いため、描いたシナリオを実際の打ち手に移しやすい面もあります。

Q. 描いたシナリオは予算や事業計画にどう反映すればよいですか?

A. 各シナリオを複数パターンの予算や着地見込みとして数値に落とし込み、実績と照らしながら定期的に見直すことで事業計画に反映できます。

たとえば楽観・標準・悲観といった将来像ごとに売上やコストの前提を変えて予算を作成し、どの兆候が現れたらどのパターンに近づいているかを指標で追います。こうした運用を表計算ソフトだけで続けると手間がかかるため、専用のシステムを使う方法もあります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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