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M&Aの相場はいくら?自社の売却価格を自分で計算する方法と業種別の目安

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M&Aアドバイザリー・FA比較表(2026年版)

後継者がいない、あるいは事業の先行きを見据えて、自社の売却を考え始めたとき、多くの経営者がまず知りたいのは「自分の会社はいくらで売れるのか」という金額の目安です。仲介会社やアドバイザーに相談する前に、自分の手元の数字でおおよその水準を把握しておきたい、という方は少なくありません。

M&A(企業の合併・買収)に、株価のような決まった相場はありません。最終的な価格は売り手と買い手の交渉で決まるためです。ただし、純資産や利益といった自社の数字から、おおよその金額を自分で試算する方法はあります。

本記事では、自社の数字で売却価格を概算する簡易計算式(年買法)、価格が決まる仕組みと価格を左右する要素、業種別の目安、本格的な企業価値評価の手法、高く売るための要素、手数料・税金と手取り、正確な価格を知るための相談先までを、2026年10月時点の情報をもとに解説します。

自社の売却を検討する際の、最初の判断材料としてご活用ください。

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M&Aの相場はいくら?まず自分で概算する簡易計算式(年買法)

ここからは、自社の売却価格をおおよそ把握するための簡易計算式を解説します。手元に純資産と営業利益の数字があれば、その場で概算できます。

年買法の計算式と具体的な計算例

中小企業のM&Aでよく使われる簡易的な目安が、年買法(ねんばいほう。年倍法とも呼ばれます)です。会社の時価純資産に、数年分の利益を上乗せして売却価格の目安とする考え方です。

計算式は次のとおりです。

売却価格の目安 = 時価純資産 + 利益(営業利益または経常利益)× 数年分

時価純資産とは、会社の資産と負債を時価に直したうえで、資産から負債を差し引いた正味の価値です。これに、将来生み出す利益への期待分(営業権、いわゆる「のれん」)として、数年分の利益を上乗せします。

自社で概算するときは、上乗せする「利益」に、本業のもうけを示す営業利益(または経常利益)を使うと分かりやすくなります。公的資料では税引後利益や経常利益、後述の公的ツールでは営業利益に減価償却費を足し戻した金額が使われるなど、どの利益を用いるかは算定方法によって異なります。どれを使うかで概算額は変わるため、まずは手元の営業利益で試すのがおすすめです。

たとえば時価純資産が1億円、年間の営業利益が2,000万円の会社で考えてみます。上乗せする年数によって金額は変わり、公的な目安である1〜3年で計算すると、1年分なら1億2,000万円(1億円+2,000万円×1年)、3年分なら1億6,000万円(1億円+2,000万円×3年)が、売却価格の一つの目安になります。あくまで交渉の出発点となる概算で、実際の金額ではない点に注意してください。

年買法による売却価格の概算を示した図。売却価格の目安は、時価純資産に、営業利益などの利益を1〜3年分上乗せして求める。時価純資産1億円・営業利益2,000万円の会社の場合、1年分の上乗せで1億2,000万円、3年分で1億6,000万円が目安となる。

上乗せする利益の年数に幅があるのはなぜか

年買法で上乗せする利益の年数は、資料によって「1〜3年」「2〜5年」などと幅があります。これは、のれんをどの程度に見積もるかが会社の状況や交渉で変わるためで、決まった年数があるわけではありません。

公的な資料では、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」が、純資産に数年分の利益を加算する方法について次のように説明しています。

時価純資産法(又は簿価純資産法)により算定した純資産に、数年分の任意の利益を加算した金額を譲渡額とする場合もある。なお、加算対象とする利益の種類(税引後利益又は経常利益等)及び年数(通常1年~3年)は事例ごとに異なり、交渉によって決まるケースが多い。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料|中小企業庁

公的資料が示す加算年数は「通常1〜3年」で、後述する日本政策金融公庫の算出ツールでは2年分を使っています。実務で「2〜5年」と広めに語られることもありますが、これは業種や交渉次第で幅が出た結果であり、公的に確認できる目安は1〜3年程度です。年数によって概算額は大きく変わるため、自社で試算するときは複数の年数で計算し、幅をもって捉えるのが安全です。

無料で試せる公的な価格算出ツール

自社の数字でより具体的に試算したい場合は、日本政策金融公庫が提供する「譲渡価格算出ツール」を無料で利用できます。決算書の財務データを入力すると、譲渡価格の参考値が表示される仕組みです。このツールも、考え方は年買法と同じです。

譲渡価格(企業評価額)=時価純資産額+営業権(のれん)。本結果は、純資産額に負債性・資産性のないものを控除したものを時価純資産額、減価償却前営業利益の2年分を営業権として、算出しております。本結果はあくまで参考値であり、実際の成約時の価格を保証するものではございません。

出典:譲渡価格算出ツール(事業承継マッチング支援)|日本政策金融公庫

ここでの「減価償却前営業利益」とは、営業利益に減価償却費を足し戻した金額です。法人は2年分、個人事業は事業所得と減価償却費の合計の1年分を営業権として見込む設計になっています。公的機関が中立の立場で提供するツールのため、まず桁感をつかむ入口として使いやすい選択肢です。

M&Aの価格が決まる仕組みと価格を左右する要素

簡易計算式で概算をつかんだら、次にその金額がなぜ目安にすぎないのか、価格が実際にどう決まるのかを押さえておきます。仕組みを理解しておくと、相談先との話がかみ合いやすくなります。

価格は最終的に交渉とデューデリジェンスで決まる

M&Aに「明確な相場がない」と言われるのは、売り手と買い手が置かれた状況や期待する条件が一つずつ異なり、最終的な価格が当事者間の交渉で決まるためです。計算式ではじいた金額は、あくまで交渉の出発点にすぎません。

中小企業庁のガイドラインも、算定した金額がそのまま譲渡額になるわけではないことを次のように整理しています。

算出された金額が、必ずそのまま譲渡額となるわけではなく、交渉等の結果、(1)又は(2)で算出された金額に数年分の任意の利益(税引後利益又は経常利益等)を加算する場合等もあり、当事者同士が最終的に合意した金額が譲渡額となるという点は理解されたい。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料|中小企業庁

加えて、買い手は基本合意の後にデューデリジェンス(買収監査。対象会社の財務・法務などの実態を精査する手続き)を行います。その結果、簿外債務や想定外のリスクが見つかれば、価格が下方修正されることもあります。売り手が提示したい価格と、買い手が妥当と考える価格には開きがあるのが通常で、その差を埋めていく過程が価格交渉です。

価格を左右する主な要素

同じ業種・同じ利益規模でも、売却価格には差が出ます。価格を押し上げる主な要素としては、まず自己資本の厚みを示す純資産と、安定して利益を生み出す収益力が土台になります。そのうえで、優良な取引先や顧客基盤、技術やノウハウ、ブランドといった、貸借対照表に表れにくい無形の資産が評価されます。

さらに、買い手と組むことで見込める相乗効果(シナジー)の大きさや、その業種が成長市場にあるかどうかも価格に影響します。買い手にとって取り込む価値が大きいほど、提示される金額は高くなりやすい、という関係です。自社のどこに強みがあるかを棚卸ししておくと、交渉の材料になります。

【業種別】M&A価格相場の目安

ここからは、業種ごとの価格水準の目安を見ていきます。成長性や収益の安定性が高い業種ほど、上乗せされる利益の年数が大きくなりやすい傾向があります。

たとえば、継続的に収益が積み上がるストック型の業種や、人材・技術・ノウハウが競争力の源泉になるIT・ソフトウェアのような業種は、買い手が将来の収益を見込みやすく、上乗せの年数が大きくなりやすくなります。一方、労働集約的で参入障壁が低く、利益が立地や景気に左右されやすい飲食・小売のような業種は、年数が小さくなる傾向があります。

下の表の年数を、先ほどの年買法の「数年分」に当てはめれば、自社の業種に合わせた概算ができます。

年買法の公的な目安は利益の1〜3年分ですが、成長性の高い業種では実務上これを上回る年数が語られることもあります。買い手の立場でも、この業種別の水準は「提示された価格が妥当か」を判断する目安になります。

ただし、業種別の倍率には公的・中立な統計が存在せず、以下は民間で一般に言われている目安を整理したものです。実際の金額は個社の状況や交渉で大きく変わるため、あくまで桁感を把握するための参考としてご覧ください。

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業種別の価格目安IT・ソフトウェア製造業医療・介護建設小売・サービス飲食
営業利益の年数倍率(目安)3〜7年分1.5〜5年分2〜6年分1〜3年分0.5〜2年分0.3〜1年分
EV/EBITDA倍率(目安・参考)3〜7倍2〜6倍3〜6倍2〜5倍2〜5倍1〜3倍

※上記は民間で一般に言われている目安であり、公的な統計にもとづくものではありません。実際の価格は個社の状況・交渉により変動します。

表の右列にある「EV/EBITDA倍率」は、次の章で解説する企業価値評価で使われる指標です。この倍率の考え方自体は、中小企業庁の資料でも次のように示されています。

EV/EBITDA倍率法とは、譲渡代金(譲受代金)をEBITDA(簡易的に「営業利益+減価償却費」で算定をするケースが多く、「償却前利益」とも呼ばれる。)の何年分で回収できるのかを、類似上場会社から算出し、対象会社の株式価値を算定する手法であり(中略)中小企業は上場会社と比し、株式の流動性が低い点を考慮し、30%程度ディスカウント(非流動性ディスカウント)するケースもある。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料|中小企業庁

倍率そのものの数値は目安でも、こうした算定の考え方は公的資料で確認できます。業種別の数値をうのみにせず、仕組みを理解したうえで概算に使うことをおすすめします。

M&Aの企業価値評価3つの手法

年買法は簡易的な目安ですが、実際の取引では、より体系的な企業価値評価(バリュエーション)が行われます。日本公認会計士協会の「企業価値評価ガイドライン」は、評価のアプローチを3つに分類しています。

本ガイドラインでは、評価アプローチを下表のように三つに分類している。通常、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、コスト・アプローチに分類するが、コスト・アプローチに関しては、特に時価純資産法といった評価法とイメージが合致しにくいことから、代えてネットアセット・アプローチという呼称を採用した。

出典:企業価値評価ガイドライン(経営研究調査会研究報告第32号)|日本公認会計士協会

以下では、一般に使われる「コスト」「マーケット」「インカム」の呼称で、それぞれの考え方と向いている会社を見ていきます。

M&Aの企業価値評価の3つのアプローチを整理した図。コスト(時価純資産法)は純資産に注目して評価し資産が多い会社に向く。マーケット(類似会社比較法・EV/EBITDA倍率法)は似た上場会社と比べて相対評価し市場評価を反映する。インカム(DCF法)は将来のキャッシュフローを割引率で現在価値に換算し成長企業に向く。

コストアプローチ(時価純資産法)

コストアプローチは、会社の貸借対照表上の純資産に注目して価値を評価する方法です。資産と負債を時価に直して純資産を求める時価純資産法が代表的で、年買法の土台にもなっています。

計算の根拠が決算書の数字にあるため、客観性が高く分かりやすい一方、将来の収益力や無形資産の価値が反映されにくい点が弱みです。資産を多く持つ会社や、収益の予測が難しい会社の評価に向いています。

マーケットアプローチ(類似会社比較法・EV/EBITDA倍率法)

マーケットアプローチは、事業内容が似た上場会社や、過去の類似取引と比べて相対的に価値を評価する方法です。代表的な類似会社比較法では、前章で触れたEV/EBITDA倍率を使い、対象会社のEBITDA(営業利益+減価償却費)に類似会社の倍率を掛けて株式価値を算定します。

市場の評価を反映できる点が強みですが、中小企業は上場会社に比べて株式の流動性が低いため、前章の引用のとおり30%程度を割り引いて評価するケースもあります。比較対象となる類似会社を適切に選べるかどうかが、評価の精度を左右します。

インカムアプローチ(DCF法)

インカムアプローチは、会社が将来生み出すと期待される利益やキャッシュフローにもとづいて価値を評価する方法です。代表的なDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)では、事業計画から見込んだ将来のキャッシュフローを、一定の割引率で現在の価値に換算して合算します。

将来の成長性を価格に織り込めるため、成長企業の評価に適しています。一方で、将来予測や割引率の置き方によって結果が変わりやすく、事業計画の精度が問われる手法です。

自社の規模に合う手法の選び方

どの手法が適しているかは、会社の規模や成長段階で変わります。中堅・大企業の案件ではDCF法を主軸に据え、マーケットアプローチを参考に使うことが多い一方、中小企業では、年買法やEV/EBITDA倍率による簡便な試算で目安を出すのが現実的です。

実務では、複数の手法で算定した結果を見比べ、交渉の材料にします。1つの手法の数字だけを絶対視せず、複数の角度から妥当な水準を探る、という使い方になります。自社だけで精緻に評価するのは難しいため、最終的には専門家の算定を受けるのが確実です。

M&Aで会社を高く売るための要素とタイミング

同じ会社でも、売り方や準備の仕方によって最終的な価格は変わります。ここでは、価格を引き上げるために押さえておきたい要素と、交渉の進め方を解説します。

価格が上がる会社の特徴と事前の磨き上げ

買い手が高く評価するのは、譲り受けた後も安定して利益を生み続けると見込める会社です。そのため、売却を見据えた段階で収益を安定させ、利益率を改善しておくことが価格の底上げにつながります。

特に中小企業で評価を下げやすいのが、経営が社長個人に依存している状態です。社長がいなくても事業が回る体制を整え、属人化を解消しておくと、買い手は引き継ぎ後のリスクを低く見積もれます。財務書類を整理し、取引先との契約や許認可を明確にしておくことも、交渉を有利に進める準備になります。こうした準備には時間がかかるため、売却を考え始めた早い段階から取り組むのが有効です。

価格交渉の進め方

価格交渉の進め方には、1社ずつ個別に交渉する方式と、複数の買い手候補から条件を提示してもらう入札(オークション)方式があります。複数の候補を競わせることができれば、より良い条件を引き出しやすくなります。

一方で、買い手探しや条件のすり合わせには専門的な知識と交渉力が要ります。売り手が一人で進めると、相手の提示額が妥当かどうかを判断する物差しを持てず、不利な条件で合意してしまうおそれがあります。複数の買い手候補にアプローチし、交渉を主導してくれる専門家の支援を受けるのが、価格を守る現実的な方法です。

M&Aにかかる手数料・税金と手取りの目安

売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。仲介会社やアドバイザーへの手数料と、売却益にかかる税金を差し引いた金額が、最終的な手取りになります。ここでは、その内訳と通し試算の例を見ていきます。

手数料の種類

M&Aの支援機関に支払う手数料には、いくつかの種類があります。中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、支払う時点に応じて着手金(契約締結時)・中間金(基本合意など案件完了前の一定時点)・成功報酬(クロージングなど案件完了時)を挙げています。

このほか、仲介会社によっては相談料、デューデリジェンス費用、月額で支払うリテイナーフィー(顧問料にあたる費用)を設定する場合があります。また、小規模な案件では成功報酬に最低手数料が定められていることが多く、売却額が小さいほど、料率よりも最低手数料が効いてきます。手数料の体系は会社によって異なるため、契約前に内訳を確認しておくことが重要です。

なお、これらの手数料は、中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」専門家活用枠の補助対象になる場合があります。対象となるのは、M&A支援機関登録制度に登録された支援機関によるFA・仲介費用です。

出典・参考資料(1件)

レーマン方式の料率と計算例

成功報酬の算定には、取引金額の規模に応じて料率が変わるレーマン方式が広く使われています。中小企業庁のガイドラインも、一例として次の料率を示しています。

レーマン方式は、「基準となる価額」に応じて変動する各階層の「乗じる割合」を、各階層の「基準となる価額」に該当する各部分にそれぞれ乗じた金額を合算して、報酬を算定する手法であり、特にM&A専門業者において広く用いられている。

  • 5億円以下の部分 … 5%
  • 5億円超10億円以下の部分 … 4%
  • 10億円超50億円以下の部分 … 3%
  • 50億円超100億円以下の部分 … 2%
  • 100億円超の部分 … 1%
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁

この方式では、金額の階層ごとに異なる料率を掛けて合算します。たとえば譲渡価格が8億円の場合、5億円までの部分に5%(2,500万円)、5億円を超える3億円の部分に4%(1,200万円)を掛け、合計3,700万円が成功報酬になります。ただし料率や基準となる価額は支援機関ごとに異なり、これはあくまで一例です。

株式譲渡と事業譲渡で変わる税金

M&Aの手法によって、かかる税金の種類と負担する人が変わります。会社ごと売る株式譲渡では、株式を売ったオーナー個人に譲渡所得として課税されます。税率は国税庁のタックスアンサーで次のように示されています。

上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)… 20%(所得税15%、住民税5%)/一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)… 20%(所得税15%、住民税5%)。平成25年から令和29年までの各年分については、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付します。復興特別所得税額は、基準所得税額に2.1パーセントの税率を掛けて計算します。

出典:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁

中小企業の非上場株式は「一般株式等」にあたり、所得税15%・住民税5%に復興特別所得税(所得税額の2.1%)を加えると、合計で約20.315%になります。

一方、会社の一部の事業だけを売る事業譲渡では、売却益は会社(法人)の利益に含まれ、法人税が課されます。普通法人の法人税率は23.2%ですが、地方税なども含めた実効的な負担はおおむね3割程度になります。事業譲渡では、売る資産に消費税がかかる点にも注意が必要です。

出典・参考資料(1件)

売却額から手取りまでの通し試算

手数料と税金を踏まえると、手元に残る金額のイメージがつかめます。ここでは株式譲渡で譲渡価格が3億円、取得費や譲渡費用はゼロに近いと仮定し、譲渡価格をそのまま課税対象とみなして、おおまかに試算してみます(実際は譲渡価格から取得費・譲渡費用を差し引いた額に課税されます)。

まず、支援機関への成功報酬です。レーマン方式の最上位料率5%で計算すると1,500万円ですが、支援機関によっては最低手数料(数百万〜数千万円程度で会社により異なります)が定められており、ここでは2,000万円が適用されるとします。次に税金です。上記の仮定で譲渡益にかかる約20.315%の税額は、おおよそ6,000万円程度(3億円×約20.315%)になります。

この場合、譲渡価格3億円から手数料2,000万円と税金約6,000万円を差し引いた、約2億2,000万円前後が手取りの目安です。手数料率や経費、個別の税額は状況によって変わるため、正確な金額は専門家に試算してもらうのが確実です。売却額だけでなく、最終的に手元に残る金額まで見据えて検討することが大切です。

株式譲渡で譲渡価格3億円、取得費ゼロと仮定した手取りの通し試算の図。譲渡価格3億円から、支援機関への手数料2,000万円(最低手数料を適用した例)と、譲渡益に約20.315%かかる税金約6,000万円を差し引くと、手取りの目安は約2億2,000万円になる。

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自社の価格を正確に知り、高く売るための相談先

ここまでの概算で桁感がつかめたら、次のステップは、正確な企業価値の算定と、売主側に立った価格交渉を任せられる相談先を見つけることです。相談先には大きく2つの立場があり、違いを理解して選ぶことが大切です。

M&A仲介とFA(ファイナンシャルアドバイザー)の違い

M&Aの相談先は、契約する相手の数で「仲介」と「FA」に分かれます。中小企業庁のガイドラインは、両者を次のように定義しています。

仲介者とは、譲り渡し側・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する。FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する。

出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁

仲介は売り手と買い手の双方と契約し、両者の間に立って成立を目指します。中立に進められる反面、双方から手数料を受け取るため、売り手の価格を最大限に引き上げることと利益が一致しない場面もあります。一方、売り手だけと契約するFAは、売り手の利益だけを代弁して価格や条件の交渉にあたる立場です。少しでも高く売りたい、という売り手の目的に沿うのは、売主側に立つFAです。

自社がどちらに相談すべきかは、価格の最大化を重視するか、円滑な成立を重視するかなど、何を優先するかで変わります。以下では、売主専属FAの一例と一般的なM&A仲介を、手数料の負担や立場という選び方の観点で整理します。

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相談先の比較売主専属FA(M&A Lead)一般的なM&A仲介
契約する相手売主のみ(片手)売主・買主の双方(両手)
手数料を払う人売主のみ売主・買主の双方
立場売主の利益の最大化を目指す双方の間に立ち成立を目指す
着手金・中間金0円会社により発生する場合あり
相談料無料無料の場合が多い
成功報酬譲渡対価×レーマン方式(5億円以下の部分5%〜)※最低手数料あり譲渡対価等×レーマン方式(会社により異なる)
詳細情報公式資料を見る公式サイトをご覧ください

※手数料・条件は2026年10月時点の各社公表情報にもとづく目安です。最新の条件は各社にご確認ください。

M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Lead(売主専門M&Aアドバイザリー)の公式サイト

M&A Leadは、売主(譲渡企業)だけと契約する、売主側専門のアドバイザリーです。買い手からは手数料を受け取らず、譲渡価格や従業員の雇用条件など、売り手側の条件の実現に向けて交渉する立場をとります。「少しでも高く、納得できる条件で売りたい」という売主の目的に専念できる点が特徴です。

買い手探しでは、自社の買い手リストに加えて、他社のアドバイザーや買い手側FA、地方銀行を中心とする金融機関のネットワークと連携し、複数の候補から条件提示を受ける進め方をとります。売却の手法(スキーム)の検討から企業価値の算定、条件交渉、最終契約の締結までを一貫して支援します。

料金は完全成功報酬制で、相談料・着手金・中間金・月額報酬はいずれも0円です。成功報酬は譲渡対価にレーマン方式の料率(5億円以下の部分で5%)を掛けて算定し、別途最低手数料が設定されています。譲渡の意思が固まっていない検討段階からの相談にも、全国オンラインで対応しています。後継者不在の事業承継から上場企業の子会社譲渡まで、幅広い成約事例を公開しています。

相談先は、ここで取り上げた売主側のFAのほかに、売り手と買い手の間に立つ仲介型や、大型案件に強いBig4系のファームなど、案件の規模や目的によって適した選択肢が分かれます。以下の記事では、M&Aアドバイザリー会社を仲介型・FA・Big4系まで案件規模別に比較・解説しています。自社に合う相談先を具体的に絞り込みたい方は、あわせてご覧ください。

まとめ

M&Aに決まった相場はありませんが、時価純資産に数年分の利益を上乗せする年買法を使えば、自社の売却価格の目安を自分で概算できます。日本政策金融公庫の無料ツールを使えば、決算書の数字から参考値を出すこともできます。

実際の価格は、企業価値評価と交渉を経て決まり、無形資産やシナジー、業種の成長性によって変わります。売却額から手数料と税金を差し引いた手取りまで見据えて、早めに準備を進めることが、納得できる条件での売却につながります。正確な価格の算定と交渉は、売主側に立つ専門家に相談するのが確実です。

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よくある質問(FAQ)

Q. 年買法(年倍法)とは何ですか?

A. 年買法とは、会社の時価純資産に数年分の利益を上乗せして売却価格の目安を求める、中小企業のM&Aで広く使われる簡易的な計算方法です。「時価純資産 + 利益 × 数年分」という式で概算でき、上乗せする利益の年数は、中小企業庁の資料では通常1〜3年とされています。年数は会社の状況や交渉によって変わるため、算出される金額はあくまで交渉の出発点となる目安です。

出典・参考資料(1件)

Q. 中小企業のM&Aの相場はどのくらいですか?

A. 中小企業のM&Aに決まった相場はありませんが、年買法(時価純資産+利益×1〜3年分)で概算すると、数千万円〜数億円規模になるケースが多いです。たとえば時価純資産が1億円、年間の利益が2,000万円の会社で利益の3年分を上乗せするなら、約1億6,000万円が一つの目安になります。ただし最終的な価格は、純資産や利益だけでなく、無形資産や買い手とのシナジー、交渉によって大きく変わります。

Q. M&Aの相場は利益の何倍が目安ですか?

A. M&Aの相場は、年買法では利益の1〜3年分が公的資料の目安で、実務では業種や交渉次第でさらに幅が出ます。中小企業庁の資料は、加算する利益を税引後利益や経常利益などとし、その年数を「通常1〜3年」としています。

民間の記事では営業利益の「2〜5年分」と広めに語られることもありますが、これは業種や交渉で幅が出た結果であり、公的に確認できる目安は1〜3年程度です。業種ごとの傾向は本文の業種別の目安をご覧ください。

出典・参考資料(1件)

Q. 赤字の会社でもM&Aで売却できますか?いくらになりますか?

A. 赤字の会社でも、技術やノウハウ、優良な顧客基盤や取引先、人材、許認可といった無形の資産に買い手が価値を見いだせば、M&Aで売却できる可能性があります。この場合、利益を上乗せする年買法では価格をつけにくいため、純資産や無形資産の価値、買い手とのシナジーをもとに個別に評価・交渉して価格が決まります。事業の立て直しや黒字化の見込みも、買い手が価格を判断する材料になります。

Q. 中小企業のM&Aの平均額はいくらですか?

A. 中小企業のM&Aは、業種・規模・収益力・無形資産によって価格が大きく変わるため、目安になる「平均額」という考え方はなじみません。水準を知りたい場合は、平均値を探すよりも、年買法(時価純資産+利益×1〜3年分)で自社の数字を当てはめて概算するほうが現実的です。同じ売上規模でも、収益の安定性や経営者個人への依存度によって評価は変わります。

Q. 休眠会社(ペーパーカンパニー)のM&A相場はどのくらいですか?

A. 休眠会社の売買相場を示す公的な統計はありませんが、法人格そのものの価値に応じて、一般的に数十万円〜数百万円程度とされます。価格の源泉は、過去の赤字を繰り越して節税に使える繰越欠損金や、新規取得が難しい許認可の引き継ぎなどです。希少な許認可を持つ場合はこれを上回ることもありますが、事業や資産がないため、事業会社のような利益をベースにした評価にはなりません。

Q. 個人事業主もM&Aで事業を売却できますか?相場の目安は?

A. 個人事業主も、事業用の資産・負債や取引先・ノウハウをまとめて引き渡す「事業譲渡」の形でM&Aによる売却ができます。日本政策金融公庫の譲渡価格算出ツールでは、個人事業の参考価格を「時価純資産 + 事業所得と減価償却費の合計の1年分(営業権)」で算出しており、法人の2年分より短い年数が使われています。法人格がない分、属人的な信用や取引関係をどう引き継ぐかが価格に影響します。

出典・参考資料(1件)

Q. 会社を売ると手数料や税金を引いて手取りはいくら残りますか?

A. 会社の売却では、譲渡価格から支援機関への手数料(成功報酬など)と売却益にかかる税金を差し引いた金額が手取りになります。会社ごと売る株式譲渡では、オーナー個人の譲渡益に合計約20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)が課され、成功報酬はレーマン方式(5億円以下の部分で5%など)や最低手数料で計算されます。

たとえば譲渡価格が3億円なら、手数料と税金を引いた手取りはおおむね2億円強が目安です(内訳は本文の通し試算をご覧ください)。

出典・参考資料(2件)

Q. M&Aは仲介会社とFA(ファイナンシャルアドバイザー)のどちらに相談すべきですか?

A. 少しでも高く、納得できる条件で売りたい売り手には、売り手だけと契約して売り手の利益を代弁するFA(売主側FA)が向いています。中小企業庁の定義では、仲介者は売り手と買い手の双方と契約する立場、FAは一方(売り手または買い手)と契約する立場です。

仲介は双方の間に立って中立に話を進められる反面、双方から手数料を受け取るため、売り手の価格を最大化することと利益が一致しない場面もあります。価格の最大化を重視するか、円滑な成立を重視するかで選び分けるとよいです。

出典・参考資料(1件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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