クラウドサービスやSaaSの利用が広がり、社員が業務で使うアカウントやID、アクセス権限は増え続けています。入退社のたびに発行・変更・削除を手作業で回し、退職した社員のアカウントが消し忘れられたまま残っている、といった課題を抱える情報システム担当者も少なくありません。
こうした「誰が・どのシステムに・どこまでアクセスできるか」を整理する考え方が、アイデンティティ管理です。ただ、IAMやIDaaS、IGA、PAMといった近い言葉が並び、「ID管理」と何がどう違うのか分かりにくい、と感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、アイデンティティ管理とは何かを平易に解説します。あわせて、「ID管理」との違い、IAM・IDaaS・IGA・PAM・SSOといった用語の関係、なぜ今必要とされるのか、自社では何から始め、どのようなサービスをどう選べばよいのかまでを整理します。
目次
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アイデンティティ管理とは?
アイデンティティ管理とは、社員などの利用者のID(アカウント)と、そのIDに与えるアクセス権限を一元的に管理する仕組みです。「誰が・どのシステムに・どこまでアクセスできるか」を、入社から退職まで一貫して管理することを指します。
具体的には、社員番号やメールアドレス、所属部署、役職、各システムの利用権限といった情報をまとめて扱います。たとえば新しく入社した社員に必要なアカウントを発行し、異動があれば権限を見直し、退職時には速やかにアカウントを停止する、という一連の流れが対象です。
もう少し正確に整理すると、アイデンティティ(デジタルアイデンティティ)は「ある文脈の中で主体を一意に表す属性の集合」とされ、ID(identifier=識別子)は対象を一意に識別するためのデータを指します。アイデンティティは氏名・所属などの属性の集まり、IDはその中で対象を特定する符号、という関係にあります。
デジタルアイデンティティ:ある文脈の中で主体を一意に表す、1つの属性または属性の集合。
出典:NIST Special Publication 800-63-4『Digital Identity Guidelines』|米国国立標準技術研究所(Glossary、2025年)
(原文)digital identity: An attribute or set of attributes that uniquely describes a subject within a given context.
出典・参考資料(2件)
「アイデンティティ管理」「アイデンティティー管理」「ID管理」は同じもの?
結論からいえば、これらはほぼ同じ概念を指します。英語のIdentityをカタカナにする際の表記のゆれで、「アイデンティティー管理」と長音を入れる書き方もよく使われます。実務では「ID管理」と略されることも多く、製品資料や社内規程では「ID管理」の表記が一般的です。
言葉の違いを意識する必要があるのは、後述するIAM・IDaaS・IGAのように、扱う機能の範囲が異なるカテゴリを比べる場面です。「アイデンティティ管理」と「ID管理」のどちらで書かれていても、同じ対象を指していると考えて差し支えありません。
ID・アイデンティティ・アカウントの違い
混同しやすい「ID」「アイデンティティ」「アカウント」の3語を整理すると、次のように対応します。
| ID・アイデンティティ・アカウントの違い | アイデンティティ | ID(識別子) | アカウント |
|---|---|---|---|
| 意味 | ある人やモノを表す属性(氏名・所属・役職など)の集合 | 対象を一意に識別するためのデータ。アイデンティティを構成する要素の一つ | 特定のサービスを利用するための登録単位。IDとパスワード、権限の設定を含む |
| 具体例 | 氏名・所属部署・役職・メールアドレスなどをまとめた本人情報 | 社員番号・ユーザーID・ログインに使うメールアドレス | Google Workspaceのアカウント、勤怠システムのアカウント |
IDとアイデンティティは国際的な定義にもとづく区別で、アカウントは「サービスごとの管理単位」という一般的な実務上の理解です。アイデンティティ管理では、この3つをひとまとめに扱い、利用者ごとに整合した状態へ保ちます。
なぜ今アイデンティティ管理が必要なのか
ここからは、アイデンティティ管理が近年とくに重視される背景を整理します。多くは、情報システム担当者が日々直面している課題と直接つながっています。
重視される背景には、主に次のような変化があります。
- クラウド・SaaSの利用拡大:使うサービスが増えるほど社員一人あたりのアカウント数も増え、サービスごとに個別でIDを管理すると担当者の負担が大きくなります。
- 退職者アカウントの放置・過剰な権限:止め忘れたアカウントや、異動を重ねて積み上がった権限が、不正アクセスや情報漏洩の入り口になります。
- パスワードの使い回し:1つの認証情報が漏れただけで、複数のサービスへ被害が広がります。
- 監査・内部統制への対応:誰にどの権限があるかを説明でき、退職者のアカウントを確実に止めている状態が求められます。
さらに、社内ネットワークの内側だからといって無条件に信頼しない「ゼロトラスト」の考え方が広がるなか、アクセスのたびに「誰が」を確認する土台として、アイデンティティ管理の重要性が高まっています。
ゼロトラストの概念を実装するにあたり、最も重要と言えるのが ID 管理である。(中略)この管理が不適切な場合、例えば退職者のアカウントを悪用されて、機密ファイルが閲覧、持ち出しされるなど、重大なインシデントに繋がりかねない。一方で、昨今 SaaS サービスの利用拡大によりサービス個別で ID 管理を行うと、管理者の負担が非常に大きい。(中略)そのため ID 管理は可能な限り一元的に統制された状態で適切に行われるべきである。
出典:『ゼロトラスト移行のすゝめ』|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(2022年)
出典・参考資料(2件)
IAM・IDaaS・IGA・PAM・SSOの違いと関係
アイデンティティ管理の周辺には、似た略語が数多く登場します。どれが広い概念で、どれが具体的な道具・サービスなのかを、一枚の表で整理します。
| IAM・IDaaS・IGA・PAM・SSOの違い | IAM(アイデンティティ・アクセス管理) | IDaaS(Identity as a Service) | IGA(アイデンティティ・ガバナンス&管理) | PAM(特権アクセス管理) | SSO(シングルサインオン) |
|---|---|---|---|---|---|
| 位置づけ | ID・アクセス管理の全体を指す広い概念 | IAMをクラウドサービスとして提供する形態 | IAMのうちガバナンスを強化する領域 | 特権IDに特化した領域 | IAM/IDaaSを構成する一機能 |
| 主な役割 | 認証・認可・ID管理を統合的に扱う考え方と仕組み | SSO・多要素認証・ID管理をクラウドで提供 | 権限付与の妥当性・承認・棚卸し・監査対応 | 管理者権限など強い権限の付与・利用の制御と記録 | 一度の認証で複数のサービスを利用可能にする |
| 主に解決すること | ID/アクセス管理の全体設計 | 認証基盤の導入・運用負荷の軽減 | 過剰権限の是正・内部統制・監査対応 | 特権アカウントの不正利用リスク | パスワード管理の負担・使い回し |
| 提供形態 | 概念・仕組み | クラウドサービス(道具) | 仕組み・サービス | 仕組み・サービス | 機能 |
IAMがもっとも広い概念で、その中にID管理・認証・認可・アクセス制御が含まれます。IDaaSはIAMをクラウドで提供する形態、IGAは権限の妥当性や棚卸しに重きを置く領域、PAMは特権IDに絞った領域、SSOはIAMを構成する一機能という関係です。この包含関係を図にすると、次のように整理できます。

IDaaSやIGA、PAMといった区分は、業界で一般に使われる製品カテゴリの呼称で、標準規格が厳密に定義した用語ではありません。社外の顧客向けにIDとアクセスを管理する領域は、別途CIAM(顧客IDアクセス管理)と呼ばれます。
表の中で混同しやすいのが「認証」と「認可」です。認証は、本人であることを証明するプロセスを指します。認可は、本人確認を終えた利用者に対して、どのデータやシステムにどこまでアクセスを許可するかを決める判断です。ログインできること(認証)と、そのあと何ができるか(認可)は別の段階、と整理すると分かりやすくなります。
出典・参考資料(2件)
アイデンティティ管理で具体的に行うこと
ここからは、アイデンティティ管理で実際に行う作業を、構成要素ごとに整理します。大きくは、認証、認可・アクセス制御、IDライフサイクル管理、監査・ガバナンスの4つに分かれます。
- 認証:利用者が本人であることを確かめる段階。パスワードに加えて、多要素認証(MFA)やパスキー(FIDO2)でなりすましを防ぎます。
- 認可・アクセス制御:確認した利用者に、業務に必要な範囲だけ権限を与える段階。不要な権限を与えない「最小権限」の考え方にもとづきます。
- IDライフサイクル管理:入社・異動・退職に合わせて、アカウントを発行・変更・停止します。
- 監査・ガバナンス:誰にどの権限があるかを定期的に点検・記録し、内部統制や監査に備えます。
このうち認可・アクセス制御について、国際的な整理では、主体の属性・対象の属性・環境条件とポリシーにもとづいて許可・拒否を決める、という考え方(属性ベースのアクセス制御)が示されています。これらの作業を、次に述べるIDライフサイクル管理と、権限の棚卸し・記録で支えます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:NIST Special Publication 800-162『Guide to Attribute Based Access Control (ABAC)』|米国国立標準技術研究所(リンク)
ID(アイデンティティ)ライフサイクル管理
IDライフサイクル管理は、入社・異動・退職といった人の動きに合わせて、アカウントの状態を管理する作業です。一般的には、登録・有効化・更新・停止・削除といった段階に沿って、アカウントを発行し、権限を見直し、不要になったら速やかに止める、という流れで進めます。
入社時にアカウントと権限をまとめて用意することをプロビジョニング、退職時にまとめて停止・削除することをデプロビジョニングと呼びます。この一連の流れを人事情報と連動させて自動化できると、退職者アカウントの消し忘れや、手作業による設定漏れを減らせます。

管理対象の広がり:人のIDと非ヒューマンID
アイデンティティ管理の対象は、人のIDだけではありません。システム同士が連携するためのサービスアカウントやAPIキー、サーバーや端末などのデバイス、IoT機器、近年では生成AIを使うAIエージェントなど、人以外の主体(非ヒューマンID)も対象に含まれます。
アクセス制御の国際的な整理でも、アクセスを要求する主体は「人である利用者、またはデバイスなどの非人エンティティ」と位置づけられています。人のIDだけを管理していると、見落とされがちな非ヒューマンIDが権限を持ったまま放置され、攻撃の経路になりかねない点に注意が必要です。
主体(subject)とは、オブジェクトに対する操作の実行を要求する、人である利用者または非人エンティティ(NPE。たとえばデバイス)である。
出典:NIST Special Publication 800-162『Guide to Attribute Based Access Control (ABAC)』|米国国立標準技術研究所(2014年、2019年更新)
(原文)A subject is a human user or NPE, such as a device that issues access requests to perform operations on objects.
出典・参考資料(2件)
アイデンティティ管理は何から始めるか
ここからは、自社でアイデンティティ管理に取り組むときの進め方を整理します。すべてを一度に完璧にしようとせず、効果が出やすい順に段階的に進めるのが現実的です。
- 現状の棚卸し:どのSaaS・システムを、誰が、どの権限で使っているかを洗い出します。
- 認証基盤の統一:IDaaSやSSO、多要素認証を導入し、ログインと認証をまとめます。効果を社員が体感しやすく、最初の一歩に向いています。
- 人事情報との連携:入社・異動・退職に合わせて、アカウントの発行・変更・停止を自動化します。
- アクセス権のガバナンス:権限の棚卸しや承認の仕組みを整え、過剰な権限を是正します。
- 継続的なモニタリングと改善:運用を続けながら、設定ミスや権限の見直しを定期的に行います。
公的機関の資料でも、ゼロトラストに取り組む際はまずID統制から始めるべきとされています。最初にID基盤を整えておかないと、その後に導入するセキュリティ対策が、不適切なアクセスをそのまま通してしまうおそれがあるためです。
ゼロトラスト構成への以降は、まずは ID 統制から始めるべきである。ID 統制はゼロトラストの概念の中でも中核を担う要素であり、認証・認可を行う上でユーザーの識別は非常に重要なポイントである。(中略)ここで ID 基盤をきれいな状態にしておかなければ、その後のソリューション展開を行った際に不適切な通信を認証・認可してしまう可能性がある。
出典:『ゼロトラスト移行のすゝめ』|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(2022年)
出典・参考資料(1件)
- 出典:『ゼロトラスト移行のすゝめ』|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(リンク)
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アイデンティティ管理を支えるサービスと選び方
アイデンティティ管理を支えるサービスは、大きく2つの役割に分けて考えると整理しやすくなります。1つは認証・ログインを一元化するID基盤(IDaaS)、もう1つは増え続けるSaaSのアカウントを可視化・棚卸しし、入退社に合わせて発行・停止するSaaS管理ツールです。自社の課題が「ログインと認証の統合」なのか「SaaSアカウントの把握と棚卸し」なのかで、適した種類が変わります。
サービスを選ぶときに確認したいこと
まず、自社の課題が「認証・ログインの統合」なのか「SaaSアカウントの可視化・棚卸し」なのかを見極め、それに合う種類(前者ならID基盤/IDaaS、後者ならSaaS管理ツール)を選ぶことが出発点になります。そのうえで、次の観点を自社の状況に当てはめて比較すると選びやすくなります。
- 連携できるか:既存の人事システムや利用中のSaaSとつながるか。入退社に合わせた自動発行・停止を狙うなら、SCIM(システム間でID情報を同期する標準規格)などの連携方式に対応しているかを確認します。
- 運用負荷:日々の設定変更や棚卸しを、限られた担当人数でも無理なく回せるか。
- サポート:導入時の初期設定や移行、導入後の問い合わせに日本語で対応してもらえるか。
- 拡張性:利用するSaaSや従業員が増えても、料金や機能の面で対応し続けられるか。
以下は、ここで紹介する2つのサービスの比較表です。両者は置き換え合うものではなく役割が異なるため、表の「×」は機能の不足ではなく「対象外(もう一方が担う領域)」を表します。自社の課題に近いほうを選ぶ目線でご覧ください。
| アイデンティティ管理を支えるサービスの比較 | CloudGate UNO | マネーフォワード Admina |
|---|---|---|
| 得意領域(役割) | 認証・ログインを一元化する ID基盤(IDaaS) | SaaSアカウントを可視化・棚卸しする SaaS管理ツール |
| 認証(SSO・多要素認証) | ◎SSO・多要素認証・パスキー(FIDO2) | ×提供なし(IdPと連携して利用) |
| IDライフサイクル管理 | ●プロビジョニング(全プラン標準) | ●退職者アカウントの検知・自動削除 |
| SaaSアカウントの可視化・棚卸し | ×SaaS管理は対象外 | ◎シャドーIT検知を標準搭載 |
| 月額費用 | 440円〜/ユーザー(税込) | 50ID以下: 無料/51ID以上: 1IDあたり月300円 |
| 提供形態・無料トライアル | クラウド型 30日間の無料トライアル | クラウド型 14日間の無料トライアル |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
上の表では月額費用の目安を示しましたが、初期費用やオプションまで含めた実際の料金を詳しく比べたい場合は、以下の記事で主要なID管理システムの料金を公式の料金ページにもとづいて一覧にしています。
1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

株式会社インターナショナルシステムリサーチが自社開発する、国産のID基盤(IDaaS)です。ゼロトラストの考え方にもとづき、シングルサインオン(SSO)、多要素認証、パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証、アクセス制限、ID管理を一体で提供します。
プロビジョニングやアクセス制限、パスキー対応の多要素認証は全プランに標準で搭載されています。端末・場所・時間の3つの軸でアクセスを細かく制限できる点も特徴で、2008年提供開始のCloudGateから続く運用実績を持ちます(公式サイト、2026年11月時点)。料金はStandard Plusが1ユーザーあたり月額440円(税込)からで、30日間の無料トライアルも用意されています。
認証基盤の統一が情報システム部門の運用にどう影響するかについて、同社は独自インタビューで次のように述べています。

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。
2. マネーフォワード Admina(マネーフォワードi株式会社)

「情シス向け業務OS」を掲げる、SaaS管理・IT資産管理のプラットフォームです。従業員を軸に、誰がどのSaaSを使っているかを可視化・棚卸しし、入退社に合わせたアカウントの発行・停止(オフボーディング)を一元管理できます。
Google WorkspaceやOktaといったID基盤(IdP)を従業員マスターと連携させ、退職者アカウントの検知・削除や、情報システム部門が把握していないSaaS(シャドーIT)の検知を行います。ログイン認証そのものを提供するSSO・多要素認証の製品ではなく、増え続けるSaaSアカウントの統制に強みを持つ点が特徴です。
公式サイトでは、退職アカウントの削除工数を8割削減したアジアクエスト株式会社の事例などが紹介されています。
ここでは代表的なサービスを2つ取り上げましたが、認証やID管理を一元化するID基盤(IDaaS)の導入を具体的に検討する段階では、主要サービスを横並びで比べたくなります。以下の記事では、IDaaSの選び方や主要サービスの比較、導入事例までを詳しく解説しています。
まとめ
アイデンティティ管理とは、社員などのIDとアクセス権限を一元的に管理する仕組みで、「ID管理」「アイデンティティー管理」とも呼ばれる同じ概念です。IAMが全体を指す広い概念で、IDaaSはそれをクラウドで提供する形態、IGAはガバナンス、PAMは特権ID、SSOは一機能、という関係で整理できます。
SaaSの増加や退職者アカウントの放置、監査・内部統制への対応を背景に、アイデンティティ管理の重要性は高まっています。取り組む際は、現状の棚卸しと認証基盤の統一から段階的に進めるのが現実的です。自社の課題が認証の統合なのか、SaaSアカウントの可視化・棚卸しなのかを見極めたうえで、連携性や運用負荷を基準にサービスを比較してみてください。
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アイデンティティ管理に関するよくある質問(FAQ)
Q. アイデンティティ管理とは何ですか?
A. アイデンティティ管理とは、社員などの利用者のID(アカウント)と、そのIDに与えるアクセス権限を一元的に管理する仕組みです。「誰が・どのシステムに・どこまでアクセスできるか」を、入社から退職まで一貫して管理することを指します。「ID管理」「アイデンティティー管理」も同じ概念を表す呼び方です。
Q. アイデンティティ管理とID管理・アイデンティティー管理は違うものですか?
A. アイデンティティ管理・アイデンティティー管理・ID管理は、いずれもほぼ同じ概念を指す言葉です。英語のIdentityをカタカナにする際の表記のゆれであり、製品資料や社内規程では「ID管理」と略されることも多くあります。言葉の違いを意識する必要があるのは、IAM・IDaaS・IGAのように扱う機能の範囲が異なるカテゴリを比べる場面です。
Q. IAM・IDaaS・IGAのうち、何から導入すべきですか?
A. 多くの企業は、まず認証基盤であるIDaaS(SSO・多要素認証)の導入から始めます。 ログインの一元化は効果を社員が体感しやすく、最初の一歩に向いているためです。権限の妥当性や棚卸しを強化するIGAは、IDaaSで認証基盤を整えたあと、監査対応や過剰権限が課題になった段階で足すのが一般的な進め方です。自社の優先課題がログインの一元化か、権限ガバナンスかに合わせて順番を決めるとよいでしょう。
Q. 中小企業でもアイデンティティ管理は必要ですか?
A. 中小企業こそアイデンティティ管理の効果が大きく、必要性は高いといえます。 情報システムの担当人員が限られる企業ほど、アカウントの発行や退職時の停止を自動化する恩恵が大きいためです。まずはIDaaSによるSSO・多要素認証の統一と、退職時のアカウント停止の自動化から始めると、情報漏洩のリスクと管理の手間を同時に下げられます。
Q. アイデンティティ管理の導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 導入する範囲によって異なりますが、おおよその目安として、基本的な認証基盤(IDaaS)の導入なら数か月、人事情報との連携やガバナンスまで含めると半年以上を見込みます。一度にすべてを完璧にしようとせず、優先度の高いSaaSのSSO・多要素認証から着手し、段階的に対象を広げていく進め方が定着しやすい形です。
Q. IDaaSを導入すれば、すべてのSaaSのアカウントが自動で管理されますか?
A. IDaaSで自動管理できるのは、主にSCIMなどの連携方式に対応した主要なSaaSに限られます。 連携に対応していないSaaSは個別の対応が必要になるため、対象を広くカバーしたい場合は、SaaSアカウントを可視化・棚卸しするSaaS管理ツールと組み合わせる方法があります。自社が使うSaaSが連携に対応しているかは、導入前に確認しておくと安心です。
Q. クラウドで提供されるアイデンティティ管理は、社内に置くID基盤よりセキュリティが劣りますか?
A. 一般には、適切に設計・運用すれば、クラウド型(IDaaS)のほうがかえってセキュリティを高められる場合が多いと言われます。クラウド事業者は継続的にセキュリティ機能へ投資しており、同水準を自社だけで維持するのは容易ではありません。ただし認証情報を一か所に集約する以上、多要素認証の必須化や特権アカウントの分離、条件付きアクセスの設計は欠かせません。
Q. アイデンティティ管理に多要素認証(MFA)が欠かせないのはなぜですか?
A. パスワードという単一の要素だけでは、漏洩や盗難によるなりすましを防ぎきれないためです。 パスワードに加えて、スマートフォンのアプリや生体認証など複数の要素で本人確認を行うことで、仮に1つの認証情報が漏れても不正なログインを防ぎやすくなります。とくにパスワードの使い回しは、1つの漏洩が複数のサービスへ被害を広げる要因となるため、MFAの併用が重要です。
Q. アイデンティティ管理はゼロトラストの実現に必須ですか?
A. アイデンティティ管理(ID統制)は、ゼロトラストを支える中核の基盤であり、取り組みの出発点になります。 社内ネットワークの内側でも無条件に信頼せず、アクセスのたびに「誰が」を確認するゼロトラストでは、利用者を正しく識別できる状態が前提になるためです。ただしゼロトラストはアイデンティティ管理だけで完成するものではなく、端末管理やネットワーク制御などと組み合わせて実現します。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。















