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クラウドセキュリティ導入の進め方|責任共有モデルと対策チェックリストで解説

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業務で使うシステムが SaaS を中心にクラウドへ移り、サーバーやストレージも IaaS・PaaS で動かす企業が増えています。一方で、設定の不備や権限管理の抜けを突かれた情報漏えいが相次ぎ、「クラウドだから提供事業者が守ってくれる」とは言い切れないことも知られてきました。

クラウドセキュリティの導入でつまずきやすいのは、「何から・どの順番で・何をやればよいか」という進め方が見えないことです。責任共有モデルで自社が守る範囲を押さえないまま個別のツールを検討しても、対策に抜けや重複が生まれます。

本記事では、クラウドセキュリティ導入の進め方を、自社が守る範囲の確認から運用定着までの手順で整理します。あわせて、総務省・IPA(情報処理推進機構)の公式ガイドラインに沿った対策チェックリスト、信頼できるサービスの見分け方、導入にかかる費用の目安、対策を担うツールの選び方まで解説します。自社のクラウド利用を点検し、社内での検討を進める材料としてご活用ください。

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責任共有モデルで自社が守る範囲を確認する

クラウドセキュリティの導入は、自社が守る範囲をはっきりさせることから始まります。クラウドでは、提供事業者と利用者が役割を分担してセキュリティを保つ「責任共有モデル」が前提になるためです。ここを押さえないと、何を対策すべきかの土台が定まりません。

責任共有モデルとは

責任共有モデルとは、クラウドサービスのセキュリティを、提供事業者と利用者がそれぞれの担当範囲で守る考え方です。総務省のガイドラインは、この考え方を次のように説明しています。

クラウドサービスの情報セキュリティを高めるためには、クラウドサービス事業者とクラウドサービス利用者が協力して、クラウドサービスに対する責任を共有する必要がある。この責任を共有するという考え方(責任共有モデルと呼ぶ)を多くのクラウドサービス事業者が採用している。

出典:クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン(2022年10月)|総務省

同ガイドラインは、SaaS では利用者アカウントや業務データの設定が利用者の責任になり、IaaS では OS を含めたソフトウェアの管理まで利用者が担うと整理しています。クラウドの形態が IaaS に近づくほど、自社が設定・管理する範囲は広がります。

SaaS・PaaS・IaaS 別に自社が守る範囲

総務省ガイドラインと IPA の手引きの区分をもとに、自社が守るべき対策項目ごとに、どのクラウド形態で自社の責任になるかを整理すると、おおまかには次のようになります。SaaS から IaaS に近づくほど、自社が設定・管理する範囲が広がります。

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対策項目ごとの責任範囲(SaaS/PaaS/IaaS別)利用者アカウント・アクセス権限の管理業務データの保護・公開範囲の設定アプリケーションの動作設定・保守OS・ミドルウェアの管理・更新ハードウェア・物理基盤
SaaS自社自社クラウド事業者クラウド事業者クラウド事業者
PaaS自社自社自社一部自社クラウド事業者
IaaS自社自社自社自社クラウド事業者

※総務省・IPA のガイドラインの区分をもとにした一般的な整理です。実際の責任範囲はクラウドの内容・利用条件ごとに異なるため、契約前に事業者の免責事項など責任分界の確認が必要です。

どの形態でも、利用者アカウントの管理・アクセス権限の設定・業務データの取り扱いは自社の責任に残ります。クラウドセキュリティの対策は、この「自社に残る範囲」に抜けを作らないことが出発点になります。

出典・参考資料(2件)

クラウドセキュリティ導入の進め方(6ステップ)

自社が守る範囲を押さえたら、次は導入の進め方です。ここでは、総務省ガイドラインが利用側に求める対策(組織体制・作業規則・設定管理・定期的な点検)と、IPA のチェックシートを踏まえ、導入前の整理から運用定着までを6つのステップで整理します。各ステップで「何を決める・何をやるか」まで具体化すると、対策の抜けや手戻りを防げます。

ステップ1. 導入前の整理(守る対象・体制・予算を決める)

最初に、どの業務でどのクラウドを使い、どんな情報を扱うかを洗い出すことから始めます。IPA の手引きも、導入前の確認として「どの業務で利用するか明確にする」「取扱う情報の重要度を確認する」ことを挙げています。あわせて、管理担当者・予算・承認フローなど、対策を進める体制を決めておきます。

ステップ2. 現状把握(設定・権限・アカウントを棚卸しする)

利用中のクラウドについて、アカウントの数・付与されている権限・公開範囲の設定・ログの取得状況を確認し、リスクを見える化します。この棚卸しで、使われていないアカウントや過剰な権限、意図せず公開されている設定が見つかることが少なくありません。

ステップ3. 要件定義(責任範囲に照らして必要な対策を絞る)

自社が守る範囲と現状把握の結果を突き合わせ、優先して埋めるべき対策を決めます。クラウドで自社に残る対策は「アカウントと権限の管理」「多要素認証による認証強化」「公開範囲や設定の監視」「ログの取得」に分かれるため、扱う情報の重要度に照らして、どこから着手するかを順位づけます。

たとえば機密情報を扱う SaaS では、認証強化とアクセス権限の見直しを優先します。すべてを一度に揃えようとせず、影響の大きい箇所から定義するのが現実的です。

ステップ4. サービス選定・比較(運用負荷まで含めて見る)

要件に合うサービスを比較します。機能の有無だけでなく、管理画面の使いやすさ・アラートの粒度・既存環境との連携・サポート体制まで確認すると、導入後の運用負荷を見誤りません。無料トライアルやデモがあれば、実際の運用イメージを確かめてから決めます。信頼性の見極め方は後述の「信頼できるクラウドサービス・対策ツールの見分け方」も参考にしてください。

ステップ5. 試験導入(小さく始めて範囲を広げる)

いきなり全社へ展開せず、一部の部門や特定の用途から試験的に導入します。試験導入では、アクセスログ・権限変更の記録・設定変更の履歴やアラートの発生状況を見て、過剰な権限や意図しない公開設定が残っていないかを確認します。

ここで出た課題をもとにルールや設定を調整し、問題がないことを確かめてから対象を広げると、現場の混乱を抑えられます。

ステップ6. 運用定着(ルール・権限・点検を回し続ける)

導入は運用に乗せて初めて効果が続きます。利用ルールを業務単位で具体化し、権限と認証を定期的に見直し、設定の点検を習慣にします。総務省ガイドラインも、利用側の対策として方針・体制の整備やノウハウの蓄積、定期的なチェックを挙げています。担当者が替わっても回る形にしておくことが、対策を形骸化させないポイントです。

出典・参考資料(2件)

対策メニューのチェックリスト

ここでは、導入の各ステップで実際に手を動かす対策を、抜け漏れなく点検できる一覧として整理します。IPA の手引きは、クラウドサービスの安全利用のために「選択するときの確認ポイント(6項目)」「運用するときの確認ポイント(4項目)」「セキュリティ管理のポイント(5項目)」の15項目を挙げています。これを自社で運用する際の対策に組み替えると、次の3つの柱になります。

ID・アカウントと認証の管理

クラウドで最初に守るべきは、誰がどの権限で使うかという入り口の管理です。利用者アカウントは必要な人だけに絞り、付与する権限を業務に必要な最小限にするのが基本で、退職者や使われなくなったアカウントは速やかに削除します。認証は ID・パスワードの使い回しを避け、電子証明書や多要素認証(複数の認証要素を組み合わせる方式)を併用すると、パスワードが漏れても突破されにくくなります。

多要素認証は、SMS・認証アプリ・生体認証・セキュリティキーなど方式によって安全性も使い勝手も変わります。二段階認証との違いや方式ごとの選び方まで押さえたい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。

通信・ログ・設定の保護

通信は暗号化(HTTPS や VPN など)で保護し、サービスに付帯するファイアウォール・侵入検知・脆弱性対応などの対策が公開されているかを確認します。あわせて、誰がいつ何をしたかを追えるようにログを取得・保管し、公開範囲やアクセス権限の設定を定期的に点検します。クラウドの情報漏えいは設定の見落としが原因になりやすいため、設定の点検は運用に組み込むことが重要です。

データの保護と法令・保存地域の確認

サービス停止やデータの消失・改ざんに備え、重要な情報は手元にもバックアップを確保します。契約面では、個人情報保護を想定して利用終了時のデータの取り扱い(返却・移行・完全消去)や一般的な契約条件を確認します。データがどの国・地域のサーバーに保存されるかも確認が必要で、国外保存の場合は個人情報保護法の「外国にある第三者への提供」や EU 域内の GDPR(一般データ保護規則)への対応を検討します。

バックアップは、取得していても攻撃によって無効化されることがあります。脆弱性診断とバックアップを手がける株式会社SYNCHRO の北口氏は、ランサムウェア被害時のバックアップの実態を次のように説明しています。

北口氏
株式会社SYNCHRO 取締役CMO
北口氏
独自インタビューより

現状、ランサムウェア攻撃を受けた企業のうち、約8割近くでバックアップデータも潰されていると、警察からも発表されています。バックアップ経路は通常のネットワーク上にあるため、ランサムウェアを仕掛けてきた攻撃者にもたどり着けてしまうものがほとんどだからです。

バックアップそのものを守り、万一感染しても事業を止めないためには、予防・検知・復旧を組み合わせた備えが欠かせません。ランサムウェア対策の具体的な進め方は、以下の記事で整理しています。

上の3つの柱は、IPA の手引きが挙げる15項目のチェックシートに対応しています。導入時にそのまま点検できるよう、15項目を「選定」「運用」「セキュリティ管理」の区分ごとに整理すると次のとおりです。

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クラウドサービス安全利用チェックリスト(IPA 15項目)選定選定選定選定選定選定運用運用運用運用セキュリティ管理セキュリティ管理セキュリティ管理セキュリティ管理セキュリティ管理
確認項目どの業務で利用するか明確にするクラウドサービスの種類を選ぶ取扱う情報の重要度を確認するセキュリティのルールと矛盾しないようにするクラウド事業者の信頼性を確認するクラウドサービスの安全・信頼性を確認する管理担当者を決める利用者の範囲を決める利用者の認証を厳格に行うバックアップに責任を持つ付帯するセキュリティ対策を確認する利用者サポートの体制を確認する利用終了時のデータを確保する適用法令や契約条件を確認するデータ保存先の地理的所在地を確認する
確認のポイントどの業務で使い、どの情報を扱うか。業務の切り分けと運用ルールを決める業務に適したサービスを選び、得られるメリットを確認する漏えい・改ざん・消失・停止が起きた場合の影響を確認する自社ルールと矛盾しないか。社外に置けない情報がないか確認する財務情報・実績・情報セキュリティ方針や認証の取得状況を確認する稼働率・障害発生頻度・回復目標時間などの品質保証(SLA)を確認するサービスの特性を理解した管理担当者を社内に置く必要な人だけが使えるよう、利用者と権限を管理するパスワードの使い回しを避け、電子証明書や2段階認証を併用する停止・消失・改ざんに備え、重要情報を手元にも確保する通信の暗号化・ファイアウォール・侵入検知・脆弱性対応の公開状況を確認するヘルプデスクやFAQなど、使い方の支援があるか確認する終了時のデータ返却・移行・完全消去の条件を確認する個人情報保護を想定し、一般的な契約条件を確認する保存先の国・地域と、国外保存時の個人情報保護法・GDPR対応を確認する

※IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(2026年6月)のチェックシートをもとに整理しています。

出典・参考資料(1件)

信頼できるクラウドサービス・対策ツールの見分け方

サービスを比較する段階では、機能だけでなく「そのサービスが安全・信頼できるか」を見極める軸が必要です。IPA の手引きは、クラウドサービスを選ぶときに参考となる制度として次の4つを挙げています。公的な評価・認証・開示の仕組みを確認すると、公式サイトの訴求だけに頼らずに信頼性を判断できます。

  • ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度):政府が求めるセキュリティ要求を満たすクラウドサービスをあらかじめ評価・登録する制度です。もともと政府調達向けの制度のため、民間企業では必須ではありませんが、登録サービスは一定の水準を満たしている目安になります。
  • ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017):情報セキュリティマネジメントの ISMS(ISO/IEC 27001)認証に加えて、クラウドサービス固有の管理策が適切に導入・実施されていることを認証する仕組みです。
  • クラウド情報セキュリティ監査制度(CSマーク):事業者が基本的な情報セキュリティ対策を実施していることを監査し、その結果を CS マークの表示を通じて利用者に公開する制度です。
  • ASP・SaaS情報開示認定制度:安全性・信頼性の比較・評価・選択に必要な情報を、事業者が開示していることを認定する制度です。

このうち ISMS クラウドセキュリティ認証について、認定機関である情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)は次のように説明しています。

通常のISMS(JIS Q 27001)認証に加えて、クラウドサービス固有の管理策(ISO/IEC 27017)が適切に導入、実施されていることを、ISMSクラウドセキュリティ認証の認証基準(JIP-ISMS517)に基づき認証するものです。企業や一般ユーザが、安心してクラウドサービスを利用できることを目的としています。

出典:ISMSクラウドセキュリティ認証|情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)

認証や制度に加えて、稼働率・障害発生時の回復目標・計画停止の事前通知といったサービス品質保証(SLA)が示されているかも、運用を任せられるかの判断材料になります。

出典・参考資料(2件)

導入でつまずきやすい課題と回避策

クラウドセキュリティの導入では、同じようなつまずきが繰り返し起きています。IPA の手引きは、クラウドサービスをめぐる代表的な事故をいくつか挙げています。

たとえば、不正アクセスを契機に 5,000 件を超える個人情報が漏えいした事例があります。別の事例では、事業者側の作業ミスで 5,000 件超の顧客データが消失しました。サーバーの脆弱性を突かれ、480 万件超の個人情報とログイン情報が漏えいした事例もあります。

総務省ガイドラインは、こうした設定不備の要因を、人・組織、作業規則やマニュアル、設定管理、設定の方法論という観点で分類しています。共通要因としては、クラウドサービスの設定値に関する理解不足、委託先管理やシャドーIT(管理部門が把握していないクラウド利用)への対応不足、体系的な対策の不備などを挙げています。

導入時に起きやすい課題と回避策を整理すると、次のようになります。

  • 設定ミスによる意図しない公開:公開範囲やアクセス権限の初期設定を見落としたまま運用を始めると、情報が外部から見える状態になりがちです。設定項目を一覧化し、定期的に点検する運用で防ぎます。
  • 権限過多・アカウントの放置:必要以上の権限付与や退職者アカウントの放置は、不正アクセスの入り口になります。最小権限の原則と、アカウントの棚卸しを定例化します。
  • 複数クラウドの管理分散・シャドーIT:部門ごとに別々のクラウドを使うと、管理が分散して全体像が見えなくなります。利用するサービスを把握・可視化し、利用ルールを決めて申請・承認の流れに乗せます。
  • 現場に負担が出て定着しない:対策が厳しすぎると現場の手間が増え、形骸化します。業務単位でルールを具体化し、アラート対応の手順を簡潔に決めて、運用に無理のない形にします。

とくに設定の点検を手作業で続けるのが難しい場合は、SaaS やクラウドの設定不備を自動で検知するツール(SSPM・CSPM)で補う方法もあります。製品ごとの対応範囲や選び方は、以下の記事で比較しています。

出典・参考資料(2件)

クラウドセキュリティ導入にかかる費用の目安

費用は対策の進め方によって大きく変わります。おおまかには、自社の担当者が運用する自前運用、特定の対策をツールで導入するツール導入、運用そのものを外部に委託するマネージド(運用委託)の3つで考えると整理しやすくなります。

自前運用は、ツール費用に加えて、設定・監視・点検を担う担当者の人件費や工数が主なコストになります。金額は企業規模や対象範囲で差が大きく、一律の相場を示しにくい領域です。

ツール導入は、対策のカテゴリによって料金体系が異なります。アクセス制限や認証を担う ID 基盤(IDaaS)では、ユーザー1人あたり月額数百円程度からの月額課金が一般的で、利用人数に応じて費用が決まります。別途、初期費用がかかる場合もあります。

一方で、クラウドの設定監視(CSPM)や統合ログ管理(SIEM)などのカテゴリは、監視する対象の数や資産規模に応じた課金が中心で、公式に料金の桁を示していないことが多く、見積りで確認する前提になります。

マネージド(運用委託・監視代行)は、対象範囲や監視時間によって費用が変わり、料金を公開していないサービスが多いため、要件を伝えて見積りを取る形が基本です。いずれの進め方でも、費用は対策範囲と運用体制に連動するため、ステップ3の要件定義で優先順位を決めてから見積もると、過不足のない予算を組めます。

クラウドセキュリティ対策をツールで補うには

チェックリストで「自社だけでは埋めにくい」とわかった対策は、専用のツールで補えます。クラウドセキュリティのツールは、何を守るかによってカテゴリが分かれています。自社に足りているカテゴリから検討すると、過不足のない選定ができます。

対策を担うツールの分類

代表的なカテゴリを「何を守るためのものか」で整理すると、次のようになります。総務省ガイドラインも、クラウド利用状況を可視化する CASB や、設定を監視する CSPM、通信を集約する SASE などの導入検討を推奨しています。

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クラウドセキュリティ対策ツールのカテゴリID基盤(IDaaS)・アクセス制限CASBCSPMSIEM・ログ監視EDR・XDRSASE
主に守るものアカウント・認証・権限クラウド利用状況クラウドの設定ログ・イベント端末・複数レイヤ通信・アクセス経路
役割SSO・多要素認証・権限管理でなりすましや過剰権限を防ぐどのクラウドを誰が使っているかを可視化・統制する設定不備を継続的に検知し是正をうながす各所のログを集約し不審な挙動を検知する端末やクラウド横断の脅威を検知し対応する通信をセキュリティゲートウェイに集約して保護する

※各カテゴリの一般的な役割の整理です。製品ごとに対応範囲は異なります。

多くの企業でまず課題になりやすいのが、アカウント・認証・アクセス権限という入り口の管理です。ここを担う ID 基盤(IDaaS)は、複数のクラウドへのログインを一本化し、多要素認証やアクセス制限をまとめて適用できます。

ここでは入り口の対策として ID 基盤(IDaaS)を例に取り上げますが、CASB・CSPM・ログ監視など他のカテゴリも含めて、守る対象ごとに代表的なサービスを見比べて検討したい場合は、以下の比較記事が参考になります。

CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNO の公式サイト

CloudGate UNO は、株式会社インターナショナルシステムリサーチが自社開発するクラウド型の ID 基盤(IDaaS)です。一度の認証で複数のクラウドサービスへアクセスできるシングルサインオン(SSO)に、多要素認証・アクセス制限・ID 管理(プロビジョニング)を組み合わせ、クラウド利用の入り口をまとめて管理できます。

認証では、パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証に対応している点が特徴です。同社は FIDO アライアンスへ 2014 年から参画し、2019 年にパスワードレス認証の提供を開始しています。SMS やワンタイムパスワードを狙う攻撃が広がるなかで、フィッシングに強い認証方式を選べます。

プロビジョニングやアクセス制限、多要素認証は全プランに標準で搭載され、オンプレミスからクラウドへ移行して複数の SaaS を使う企業に向く構成です。

料金は、公式サイトによるとプランに応じてユーザー1人あたり月額440円〜660円(税込、2026年11月時点)で、別途初期費用がかかります。30日間の無料体験も用意されています。

出典・参考資料(1件)

認証方式の切り替えは、情報システム部門の運用負荷にも関わります。同サービスを提供する株式会社インターナショナルシステムリサーチの平澤氏は、導入現場で起きた変化を次のように挙げています。

平澤氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部マーケティング部
平澤氏
独自インタビューより

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。

まとめ

クラウドセキュリティの導入は、責任共有モデルで自社が守る範囲を確認することから始まります。そのうえで、導入前の整理・現状把握・要件定義・サービス選定・試験導入・運用定着というステップで進め、ID と認証の管理、通信・ログ・設定の保護、データと法令の確認を抜けなく点検していくのが基本の流れです。

公式ガイドラインに沿って対策を整理し、認証・制度で信頼できるサービスを見極め、足りないカテゴリはツールで補えば、限られた人員でも現実的に進められます。まずは自社のクラウド利用を棚卸しし、どの対策が不足しているかを確認するところから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. クラウドセキュリティとは何ですか?

A. クラウドセキュリティとは、SaaS・PaaS・IaaS などのクラウドサービスを安全に使うために、提供事業者と利用者が役割を分担して行う情報セキュリティ対策の総称です。アカウントや権限の管理、通信・データの保護、設定の点検などが含まれます。

クラウドでは「責任共有モデル」が前提となり、提供事業者に任せきりにはできず利用者側にも守るべき範囲が残る点が、自社設備だけで完結するオンプレミスとの違いです。

Q. クラウドセキュリティの導入は何から始めればよいですか?

A. クラウドセキュリティの導入は、責任共有モデルで自社が守る範囲を確認することから始めます。そのうえで、導入前の整理(守る対象・体制・予算を決める)→現状把握(設定・権限・アカウントの棚卸し)→要件定義→サービス選定・比較→試験導入→運用定着という6つのステップで進めると、対策の抜けや手戻りを防げます。すべてを一度に揃えようとせず、影響の大きい箇所から着手するのが現実的です。

Q. クラウドセキュリティ対策は具体的に何をすればよいですか?

A. クラウドセキュリティ対策は、(1) ID・アカウントと認証の管理、(2) 通信・ログ・設定の保護、(3) データの保護と法令・保存地域の確認、という3つの柱で点検するのが基本です。具体的には、権限の最小化と退職者・未使用アカウントの削除、多要素認証の併用、通信の暗号化、ログの取得・保管、公開範囲や権限の定期点検、重要データのバックアップなどが含まれます。

IPA の手引きには選定6項目・運用4項目・セキュリティ管理5項目の15項目チェックシートがあり、自社の確認リストとしてそのまま使えます。

出典・参考資料(1件)

Q. 信頼できるクラウドサービスはどう見分ければよいですか?

A. 信頼できるクラウドサービスは、ISMAP・ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017)・CSマーク・ASP・SaaS情報開示認定といった公的な評価・認証・開示の仕組みを満たしているかで見分けられます。公式サイトの訴求だけに頼らず、これらの制度への対応状況を確認すると信頼性を判断しやすくなります。

あわせて、稼働率や障害時の回復目標、計画停止の事前通知といったサービス品質保証(SLA)が示されているかも、運用を任せられるかの判断材料になります。

出典・参考資料(1件)

Q. クラウドセキュリティの導入にはどのくらい費用がかかりますか?

A. クラウドセキュリティの費用は、自前運用・ツール導入・マネージド(運用委託)のどれを選ぶかで大きく変わり、一律の相場を示しにくい領域です。たとえばアクセス制限や認証を担う ID 基盤(IDaaS)はユーザー1人あたり月額数百円程度からの月額課金が一般的です。

一方、クラウドの設定監視や統合ログ管理、運用委託は料金を公開していないサービスが多く、要件を伝えて見積りを取る前提になります。

Q. クラウドの設定ミスによる情報漏えいを防ぐにはどうすればよいですか?

A. 設定ミスによる情報漏えいは、公開範囲やアクセス権限の設定項目を一覧化し、定期的に点検する運用を組み込むことで防げます。クラウドの漏えいは初期設定の見落としが原因になりやすいため、設定の点検を担当者の記憶に頼らず運用に組み込むことが重要です。見落としが心配な場合は、クラウドの設定不備を継続的に検知する CSPM などのツールで補うと、より確実に抜けを防げます。

出典・参考資料(2件)

Q. 複数のクラウドサービスを別々に使っている場合、どう管理すればよいですか?

A. 複数のクラウドを部門ごとにばらばらに使っている場合は、まず利用中のサービスを洗い出して可視化し、申請・承認の流れに乗せて管理を一元化します。管理部門が把握していないシャドーIT(把握されていないクラウド利用)を放置すると全体像が見えず対策に抜けが生じます。

クラウド利用状況を可視化する CASB や、複数サービスへのログインを一本化する ID 基盤(IDaaS)を活用すると、分散した管理をまとめやすくなります。

Q. 専任のセキュリティ担当者がいなくてもクラウドセキュリティは導入できますか?

A. 専任担当者がいない企業でも、守る範囲を絞り、影響の大きい対策から段階的に進めれば導入できます。すべてを一度に揃えようとせず、まず ID・認証の管理など入り口の対策を固め、自社だけでは埋めにくい部分はツールや運用委託(マネージド)で補うのが現実的です。担当者が替わっても回るよう、利用ルールと定期点検を仕組みにしておくと、対策の形骸化を防げます。

Q. ISMAPに登録されていないクラウドサービスは使ってはいけないのですか?

A. ISMAP はもともと政府調達向けの評価・登録制度のため、民間企業の利用では必須ではありません。ただし登録サービスは政府が求めるセキュリティ水準を満たしている目安になります。未登録のサービスを選ぶ場合は、ISMSクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017)や CSマークなど他の認証・開示制度への対応、SLA や公式ガイドラインとの整合で信頼性を確認するとよいでしょう。

出典・参考資料(1件)

Q. CASB・CSPM・IDaaS など、どの対策ツールから導入すべきですか?

A. 対策ツールは、チェックリストで自社に足りないとわかったカテゴリから導入するのが基本で、多くの企業ではアカウント・認証・権限という入り口を担う ID 基盤(IDaaS)が最初の課題になりやすいです。CASB はクラウド利用状況の可視化、CSPM は設定不備の検知、SIEM・ログ監視はログの集約と不審な挙動の検知というように守る対象が異なります。

製品名から入らず「何を守りたいか」でカテゴリを選ぶと、過不足のない選定ができます。

Q. クラウドセキュリティ対策の効果はどう確認すればよいですか?

A. クラウドセキュリティ対策の効果は、設定不備の件数・過剰な権限や未使用アカウントの削減状況・ログで検知した不審な挙動への対応状況などを定期的に点検して確認します。導入して終わりにせず、権限と認証の見直しや設定の点検を運用に組み込み、試験導入で出た課題を反映しながら対象範囲を広げていくことで、対策を形骸化させずに続けられます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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