国内のEC市場が成熟するなかで、海外の消費者にも自社の商品を売りたいと考える事業者が増えています。日本製品への需要は海外にも広がっており、越境EC(海外の消費者向けのインターネット販売)はその需要を取りに行く現実的な手段です。
とはいえ「メリット」で検索する多くの人は、頭のなかで「で、デメリット(コスト・手間・リスク)は実際どうなのか」と天秤にかけています。利点だけを並べられても判断には進めません。大切なのは、メリットとデメリットを同じ具体度で見比べ、自社の商材でも割に合うのかを見極めることです。
この記事では、越境ECを始めるメリットとデメリットを、具体例や数字とともに整理します。両者を並べて見比べられる対比表や、向いている事業者・商材の判断材料も示します。読み終えたときに「自社は越境ECに向いているか」「向いているなら何から準備すればよいか」が描けている状態を目指します。負担の大きい部分を外部に任せる選択肢もあわせて紹介します。
目次
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越境ECとは?国内ECとの違いを簡単に
越境ECとは、インターネットを通じて海外の消費者に商品を販売する取引を指します。国内ECが日本国内の顧客を対象にするのに対し、越境ECは国境を越えて海外の顧客へ売る点が根本的な違いです。
この違いから、国内ECにはない対応が増えます。現地の言語や通貨への対応、海外の消費者が使う決済手段の用意、国際配送と通関の手配、関税や各国の輸出入ルールへの対応などです。これらが後述のデメリット(負担)の中身にあたり、裏を返せばメリットと天秤にかける対象になります。まずはメリットから順に見ていきましょう。
越境ECを始めるメリット
ここからは、越境ECを始める主なメリットを4つに分けて解説します。それぞれ、どの国で・どんな商材が・どれくらいという具体とあわせて見ていきます。
①海外への販路拡大(新規市場・顧客の獲得)
最大のメリットは、国内にとどまっていた商圏を海外へ広げられることです。国内市場が人口減少で頭打ちになっても、海外にはより大きな需要が広がっています。
経済産業省の調査によると、中国の消費者が日本の事業者から越境ECで購入した額は2兆6,372億円(前年比8.5%増)、米国の消費者からは1兆5,978億円にのぼります(2024年。経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」2025年8月公表)。
これらは「海外の消費者が日本の事業者から買った額」であり、日本の事業者にとっては海外に開かれた販売機会の大きさを示します。国内で売上が頭打ちの商材でも、海外では新しい顧客に出会える可能性があります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省(リンク)
②低コスト・低ハードルで参入できる
海外へ進出する手段としては、現地に店舗や法人を構える方法もありますが、それらに比べて越境ECは少ない初期投資で始められます。実店舗の賃料や現地スタッフの採用が不要で、既存の国内EC運営の延長で海外販売に取り組めるためです。
出店方法によっては、初期費用を抑えてスモールスタートすることも可能です。海外のECモールへの出店や、初期・月額が0円の決済サービスを組み合わせれば、大きな先行投資をかけずに最初の一歩を踏み出せます。まず1か国・1商材から小さく試し、反応を見て広げていく進め方が取りやすいのも越境ECの特徴です。
③日本製品に海外の需要がある(ブランド価値)
「日本製」であること自体が、海外では付加価値になります。品質やデザイン、安全性への信頼から、日本の商品・ブランドを求める消費者が各国にいます。前述のとおり海外の消費者は日本の事業者から越境ECで年々多くを購入しており、この「日本ならでは」への需要が実際の売上として積み上がっています。
とくに化粧品・健康食品・日本酒などの食品、アニメやゲームに関連するキャラクター商品、伝統工芸品などは、海外の消費者から継続した需要があるジャンルとして知られています。自社の商材がこうした「日本ならでは」の魅力を持つ場合、海外での評価を売上につなげやすくなります。
④競合(ライバル)が少ない市場を狙える
国内では競合がひしめく商材でも、海外にはまだ同種の商品が十分に行き渡っていない市場も少なくありません。国内で売上が伸び悩む要因が「競合の多さ」にある場合、販売先を海外に移せば、相対的に競争の緩い市場で戦える余地が生まれます。
とくに日本独自の商材は、現地に直接の競合が少ない傾向があります。たとえば日本の伝統工芸品や地域特産の食品、特定ジャンルの趣味用品などは、現地に似た商品が少なく、独自のポジションを築きやすい領域です。国内市場での立ち位置を、一度海外という別の土俵で捉え直してみましょう。
越境ECで需要を取り込んでいる商材・事例
メリットを具体的にイメージするために、海外需要を取り込んでいる商材の例を見てみましょう。日本酒では、旭酒造の「獺祭」がアメリカやフランスなど海外市場へ積極的に展開し、日本酒を世界に広めるブランドとして知られています。アニメ・ゲームなどのポップカルチャー領域では、Tokyo Otaku Mode が日本のキャラクター商品を世界の多くの国へ販売しています。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:「獺祭」の旭酒造、パリに出店 中国、米国など輸出市場拡大|日本経済新聞(リンク)
これらに共通するのは、「日本ならでは」の魅力があり、海外に明確な需要があることです。自社の商材がどの国の・どんな層に求められそうかを見極めることが、越境ECで成果を出す出発点になります。向いている商材の条件は、後の「向いている事業者・商材」で具体的に整理します。
越境ECのデメリット・始める前に知るべき負担とリスク
メリットの裏側には、国内ECにはない負担やリスクがあります。ここでは主なデメリットを5つに分け、どれくらいの手間・コストがかかるのかと、その対処の方向性をあわせて確認します。「対策すれば大丈夫」で済ませず、実際の負担感を掴んでおきましょう。
①配送・関税などのコスト負担
最も大きな負担が、国際配送費と関税です。国内なら数百円で送れる荷物も、海外では数千円単位になるのが一般的で、重量やサイズの大きい商品ほどコストがかさみます。
たとえば日本郵便のEMS(国際スピード郵便)の料金は、仕向地(地帯)と重量で変わります。米国(第4地帯)へ送る場合は500gまで3,900円、1kgまで5,300円、2kgまで7,900円、中国(第1地帯)なら500gまで1,450円、1kgまで2,200円、2kgまで3,400円です(2026年時点の料金表)。
同じ重量でも仕向地によって数倍の差が出るため、どの国に売るかで配送コストの前提は大きく変わります。
EMSは国際郵便のなかで最も速く届く分、料金は割高です。急がない軽量の荷物なら、EMSより安い小形包装物や国際eパケット、国際小包のSAL便・船便を選べば費用を抑えられます(そのぶん配達日数は長くなります)。
逆に急ぎ・高単価の商品では、EMSや民間クーリエ(FedEx・DHLなど)を使う選択肢もあります。利益率を見積もるときは、どの手段で・どの国にいくらかかるかを商品ごとに織り込むことが重要になります。
関税については、輸入時にかかる関税を売り手と買い手のどちらが負担するかが取引条件によって決まります。関税率は仕向国と品目によって幅があり、無税の品目もあれば十数%かかる品目もあります。まず前提として、日本の関税法では関税の納税義務者を次のように定めています。
関税を納める義務がある者(納税義務者)は、関税関係法令に別段の規定がある場合を除くほか、「貨物を輸入する者」であると規定されています。この場合の「貨物を輸入する者」とは、輸入取引により輸入される貨物については、原則として仕入書(インボイス)(又は船荷証券)に記載されている荷受人となります。
出典:関税の納税義務者|税関
この原則にもとづき、越境ECでは特に指定しなければ、商品が届く国の関税は原則として購入者(荷受人)が負担します。売り手が関税まで負担する条件(DDP)を選ぶこともできますが、その場合はコストを販売価格に上乗せする必要があります。どの国に・どの品目を売るかが決まったら、仕向国の関税率を事前に確認しておきましょう。
出典・参考資料(1件)
- 出典:関税の納税義務者(カスタムスアンサー1103)|税関(リンク)
②各国の法規制・商習慣への対応
販売する国ごとに、表示のルールや必要な手続き、輸入規制が異なります。たとえば化粧品や食品、中古品などは国によって輸出入の規制が分かれ、事前の登録や申告が必要になることがあります。EU向けの販売では付加価値税(VAT)の扱いにも注意が必要です。
これらは国ごとに個別に調べて対応する必要があり、進出先を増やすほど負担が積み上がります。まずは1か国に絞り、その国の規制を確実に押さえてから横展開するのが現実的です。
③決済手段・不正利用への対応
海外の消費者に買ってもらうには、その国で使われている決済手段に対応することが欠かせません。日本で主流のクレジットカードやコンビニ決済が、進出先では主流でないこともあります。たとえば中国ではAlipay・WeChat Payなどのモバイル決済が広く使われ、米国ではクレジットカード・デビットカードに加えてPayPalやApple Payなどのデジタルウォレットが定着しています。
東南アジアはベトナムのMoMoなどデジタルウォレット(eウォレット)の普及が進む一方、国や年齢層によっては代金引換(COD)の比重が大きい市場もあります(たとえばシンガポールでは15〜24歳の最多決済がCODという調査もあります)。こうした現地の決済に対応できていないと、購入手前での離脱(カゴ落ち)につながります。
出典・参考資料(3件)
あわせて、海外取引ではクレジットカードの不正利用やチャージバック(売上の取消し)のリスクが国内より高まります。複数の国の決済手段にまとめて対応でき、不正検知の仕組みを備えた決済サービスを使うと、この負担を抑えられます。
④言語・顧客対応(CS)の負担
商品ページや問い合わせ対応には、現地の言語への対応が必要です。多言語化そのものに加え、時差のある国からの問い合わせやクレームに、言語を越えて対応する手間がかかります。
ただし、必要な語学力は過度に身構えなくてよい面もあります。要点を正確に伝える工夫でカバーできる部分が大きく、翻訳ツールや多言語カスタマーサポートの代行サービスを使えば、社内に専任の語学人材がいなくても運営できます。自社だけで抱えるのが難しい場合は、この領域を外部に任せる選択肢があります。
⑤返品対応の手間とコスト
見落とされがちなのが、海外からの返品にかかる負担です。国境を越えた返送は送料も手間も大きく、国内の返品と同じようには進みません。
Return Helper株式会社と株式会社NEXERの共同調査「越境ECの返品対応に関するアンケート」(2026年5月、越境ECに関わる業務経験がある全国の男女20名が回答)では、海外からの返品1件あたりの平均コスト(送料+手数料)で最も多かった回答は「3,000円〜5,000円未満」で40.0%でした。
国内ECの返品コストと比べても「高い」(「非常に高い」10.0%+「やや高い」40.0%)と答えた人が計50.0%と、半数にのぼっています。
サンプルは小規模ですが、越境特有の返品負担が実務で意識されていることがうかがえます。返品・返送や検品の代行サービスを使うことで、この手間を軽くする方法もあります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:越境ECの返品対応に関するアンケート(2026年5月実施)|Return Helper株式会社・株式会社NEXER(リンク)
【対比表】越境ECのメリット・デメリットを並べて見る
ここまでのメリットとデメリットを、観点ごとに並べて見比べられるように整理しました。自社の商材や体制に照らして、どちらの比重が大きいかを天秤にかける材料にしてください。
| 観点 | 販路・顧客 | 参入コスト | 競合環境 | 商材の強み | 決済・運用 | 言語・CS | 返品 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| メリット・負担を抑える手段 | 海外の新規市場・顧客を獲得できる(海外からの購入額は年々増加) | 実店舗・現地法人より低コストで、国内ECの延長で始められる | 日本独自の商材は競合の少ない市場を狙える | 「日本製」のブランド価値を付加価値にできる | 現地決済に対応すれば海外顧客が買いやすくなる | 翻訳ツールや代行で専任人材なしでも運営できる | 代行サービスで返品負担を抑えられる |
| デメリット(負担・リスク) | 国ごとに需要の見極めが必要で、売れる市場の調査に手間がかかる | 国際配送費・関税など国内ECにない費用が継続的にかかる | 現地の人気商品・価格との競争は別途発生する | 規制対象の商材(化粧品・食品など)は国別の手続きが必要 | 現地決済の導入、不正利用・チャージバックへの対応が必要 | 多言語対応・時差のある問い合わせ対応の手間がかかる | 海外返品は送料・手間が大きい(1件3,000〜5,000円未満が最多・40.0%) |
※「メリット・負担を抑える手段」の列には、純粋な利点(販路拡大・ブランド価値など)に加え、決済・言語・返品といった運用面の負担を抑える手段や対応後の状態も含めています。デメリット(負担・リスク)と同じ観点で見比べられるよう並べたものです。数値は本文中に記載の各調査にもとづきます(経済産業省 令和6年度調査、Return Helper×NEXER 調査)。
こうして並べると、デメリットの多く(配送・決済・言語・返品)は「対応の手間とコスト」であり、専用のサービスに任せることで軽減できる性質のものだと分かります。この点は後半の支援サービスの項でも触れます。
越境ECに向いている事業者・商材/向かない商材
メリットとデメリットを見比べたうえで、「結局うちは向いているのか」を判断するための観点を整理します。断定ではなく、自社に当てはめて確かめるためのチェックポイントとして使ってください。
越境ECに向いている商材の特徴
- 軽量・コンパクトで単価が高い:国際配送費の負担が相対的に小さく、利益を確保しやすい。
- 日本ならではの独自性がある:日本酒・化粧品・伝統工芸品・アニメ/ゲーム関連など、現地に代替が少なく「日本製」の価値が効く商材。
- デジタル商材・在庫リスクの低い商品:電子書籍やデジタルコンテンツなど、配送や在庫の制約が小さいもの。
- 国内で一定の販売実績がある:売れ筋が分かっている商品は、海外でも初動の仮説を立てやすい。
越境ECに向きにくい商材・注意したいケース
- 重くて単価の低い商品:送料が利益を圧迫しやすい。
- 賞味期限が短い・壊れやすい商品:輸送時間や破損リスクの影響を受けやすい。
- 規制が厳しい商材:食品・化粧品・医薬部外品などは国ごとの手続きが重く、事前の確認が欠かせない。
あわせて、海外通貨で売上を受け取る場合は為替変動の影響を受けます。利益率を見積もるときは為替が動く前提で余裕を持たせ、価格を見直すタイミングもあらかじめ決めておくと安心です。向き不向きは商材の性質だけでなく、どの国を狙うか・どこまで自社で対応するかによっても変わります。次の市場規模と、後半の始め方・支援サービスをあわせて検討してください。
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越境ECの市場規模と成長性
「やる価値があるのか」を、市場の数字からも確認しておきましょう。越境ECの市場は世界的に拡大が続いています。日本貿易振興機構(ジェトロ)の「世界貿易投資報告2025年版」によると、世界の越境EC市場規模は2024年に5,210億ドルに達し、2015年から約5倍に伸びています(出所:Euromonitor International)。
EC全体(BtoC-EC)でも、世界市場は2024年の6兆74億ドルから2028年には7兆8,860億ドルへ拡大すると予測されています(出所:eMarketer)。
日本から見た越境ECも伸びています。メリットの項で触れたとおり、中国・米国の消費者が日本の事業者から越境ECで購入した額は合わせて約4.2兆円にのぼります(2024年。経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」2025年8月公表)。日本国内のBtoC-EC市場規模が同年26.1兆円であることと比べても、海外需要の取り込みが無視できない規模であることが分かります。
出典・参考資料(2件)
越境ECの始め方と必要な準備
メリット・デメリットを踏まえて「やってみよう」と思えたら、次は始め方です。全体の流れは、大きく次の順で進みます。

- 販売する国・ターゲットを決める:自社商材に需要がありそうな国を1か国に絞って始める。
- 売る商品を選び、輸出ルールを確認する:需要のある商材を選び、その国へ輸出できる品目か・規制がないかを確かめる。
- 出店方法を決める:海外モール・自社サイト・保税区・代行などから自社に合う売り場を選ぶ(下記4タイプ)。
- 決済・物流を用意する:現地で使われる決済手段と、国際配送・通関の段取りを整える。
- 販売を開始し、改善する:公開後は売上や反応を見ながら商品・ページを改善する。
ここでは、このうち迷いやすい「出店方法の選択肢」と、知っておくと得する税制のポイントを押さえます。各ステップの具体的な進め方を順を追って確認したい方は、次の記事で7つのステップに分けて解説しています。
越境ECの出店方法4タイプ(自社EC/海外モール/保税区/代行)

- 自社ECサイトを構築する:ShopifyやMagento(Adobe Commerce)などで自社サイトを作る方法。ブランドの世界観を作り込め、顧客データを自社で持てる一方、集客は自力で行う必要がある。
- 海外のECモールに出店する:Amazon・eBay・天猫国際(Tmall Global)などに出店する方法。モールの集客力を活用でき、手軽に始めやすい一方、販売手数料がかかる。
- 保税区を活用する:中国などの保税区にまとめて在庫を置き、注文後に現地から発送する方法。配送が速く関税面の利点がある一方、一定の在庫・体制が必要。
- 代行・転送サービスを使う:自社サイトに仕組みを組み込むだけで、購入代行や国際配送を外部に委ねる方法。負担を抑えて始められる。
初めての場合は、初期費用と難易度が低い海外モールへの出店や、自社サイトに組み込む代行サービスから小さく試すのが現実的です。本格的にブランドを育てたい段階になれば、自社サイト構築へ広げていく進め方が取れます。出店方法ごとの費用や選び方をさらに詳しく比べたい場合は、越境ECプラットフォーム比較|モール型・自社EC型の違いと費用・選び方もあわせてご覧ください。
知っておきたい「輸出免税」(消費税がかからない)
越境ECならではの税制上の利点として、輸出免税があります。海外の消費者への販売は輸出取引にあたり、要件を満たせば消費税が免除されます。国税庁は輸出免税について次のように説明しています。
販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されます。
出典:No.6551 輸出取引の免税|国税庁
ただし、輸出免税の適用には課税事業者であることや、輸出の事実を証明する書類(輸出許可書など)を整理・保存することといった要件があります。「越境ECなら自動で消費税ゼロ」というわけではない点に注意し、自社が要件を満たすかは税理士など専門家に確認すると確実です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:No.6551 輸出取引の免税|国税庁(リンク)
越境ECの負担を外部に任せる — 越境EC支援サービスの選択肢
ここまで見てきたデメリットの多く——サイト構築・決済・物流/通関・多言語対応——は、自社だけで抱えずに支援サービスへ任せられます。支援の形は、自社サイトの構築、特定市場(中国など)の一括支援、決済、低負担でまるごと代行など、サービスによって得意領域が異なります。ここでは支援領域の異なる代表的なサービスを、得意分野ごとに紹介します。まず全体を比較表で見比べてください。
| サービス名 | Magento / Adobe Commerce 構築・リニューアル支援 | WeChatミニプログラムFor中国越境EC | KOMOJU(コモジュ) | WorldShopping BIZ |
|---|---|---|---|---|
| 支援形態 | 自社ECサイトの構築・リニューアル支援 | 中国市場に特化した一括支援(WeChatミニプログラム型店舗) | 越境対応の決済プラットフォーム | タグを「貼るだけ」の越境EC化・まるごと代行 |
| 主な対応範囲 | Magento(Adobe Commerce)での新規構築・リニューアル・保守運用 多言語・多通貨・複数ストア運用 BtoB受発注にも対応 | WeChat内のミニプログラム店舗構築 WeChat Pay決済・越境物流・現地CS代行までまとめて対応 | 国内外65種類以上の決済手段・20通貨に1つの統合APIで対応 不正検知・3Dセキュアを無償提供 | 既存ECにタグを貼るだけで越境EC化 海外注文受付・決済・国際配送・多言語CSを代行 |
| 対応市場・地域 | 海外向け全般 (台湾向け・中国向けの構築実績) | 中国(WeChat) | 中国・韓国・東南アジア・欧州ほか (各国の現地決済に対応) | 228の国と地域 |
| 料金モデル | 要お問い合わせ (構築内容により変動する個別見積もり) | 月額制(要お問い合わせ) | 初期・月額0円+決済手数料のみ (例: クレジットカード3.25%) | 初期33,000円+月額5,500円(税込・事業者負担) 購入代行手数料10%は購入者負担 |
| こんな事業者向け | 自社ブランドのサイトを作り込んで越境展開したい事業者 | 中国越境ECを決済・物流・CSまで含めて一括で始めたい事業者 | 決済まわりを一本化して海外対応を整えたい事業者 | 自社サイトを作り替えず、負担を抑えて始めたい中小事業者 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト |
1. Magento / Adobe Commerce 構築・リニューアル支援(株式会社マルウェブ)

自社ブランドのサイトを作り込んで越境展開したい事業者に向いた構築支援サービスです。株式会社マルウェブが、Magento(Adobe Commerce)を用いたECサイトの新規構築・リニューアルを、設計・開発から保守運用まで一貫して手がけます。多言語・多通貨に対応した海外向けの構成に加え、ブランド別・国別・商材別の複数ストア運用や、BtoBの受発注といった複雑な商流にも対応できます。
日本側のディレクションと海外拠点(ベトナム・上海)の開発体制を持ち、台湾向け・中国向けの構築実績があります。自社ECで本格的に世界観を作り込みたい場合の選択肢で、費用は構築内容により変わるため要問い合わせです。
2. WeChatミニプログラムFor中国越境EC(株式会社マルウェブ)

中国市場に絞って一括で始めたい事業者に向いたサービスです。中国で広く使われるWeChat(微信)内で動く「ミニプログラム」形式の店舗を、株式会社マルウェブがWeimob(微盟)との代理店契約に基づいて提供します。消費者は別アプリを入れずに、WeChat内でそのまま買い物ができます。
店舗の構築に加え、WeChat Payによる決済、越境物流や通関への対応、現地カスタマーサポートの代行までをまとめて任せられるのが特徴です。中国越境ECの立ち上げを、決済・物流・CSまで含めて一括で進めたい事業者に適しています。料金や契約条件は最新のものを問い合わせで確認してください。
3. KOMOJU(コモジュ)(株式会社KOMOJU)

決済から海外対応を整えたい事業者に向いた決済プラットフォームです。株式会社KOMOJUが提供するKOMOJU(コモジュ)は、国内外の多数の決済手段と複数の通貨に、1つの統合APIでまとめて対応できます。中国のAlipay・WeChat Payをはじめ、韓国・東南アジア・欧州などの現地決済手段を一括で導入できるため、複数の国に売る場合でも決済まわりを一本化できます。
ShopifyやWooCommerceなどの主要プラットフォームにノーコードで導入でき、始め方の負担が小さいのも利点です。前述のデメリット(現地決済への対応・不正利用のリスク)を軽くしたい場合に、まず検討したい選択肢です。
4. WorldShopping BIZ(株式会社ジグザグ)

できるだけ負担をかけずにまるごと外注したい事業者に向いたサービスです。株式会社ジグザグが提供するWorldShopping BIZは、既存の自社ECサイトに専用のタグを「貼るだけ」で越境EC化でき、海外からの注文受付・決済・国際配送・多言語での顧客対応までを代行します。自社サイトを大きく作り替えずに、海外販売を始められるのが特徴です。
料金は初期費用33,000円・月額5,500円(税込)で、事業者側に売上に応じた手数料は発生しません。購入代行手数料(商品代金+国内送料の10%)や海外配送手数料は海外の購入者が負担する仕組みのため、事業者は固定的な費用で始められます。物流・決済・言語対応をまとめて外部に委ねたい中小事業者の入口として検討しやすいサービスです。
ここで取り上げた4サービスは、支援領域ごとの代表例です。構築・運営代行・特化型まで含めた越境EC代行サービスを、費用相場や選び方の観点とあわせて比較検討したい場合は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
越境ECの最大のメリットは、国内で頭打ちになった商圏を海外の大きな需要に広げられることです。実店舗や現地法人より低コストで始められ、「日本製」のブランド価値を付加価値にできます。一方で、配送・関税のコスト、各国の法規制、決済・不正、言語・CS、返品といった国内ECにはない負担が伴います。
重要なのは、このメリットとデメリットを同じ具体度で天秤にかけ、自社の商材が向いているかを見極めることです。デメリットの多くは「対応の手間とコスト」であり、支援サービスに任せることで軽減できます。まずは1か国・1商材から小さく試し、自社に合う形で海外への一歩を進めてください。
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越境ECのよくある質問(FAQ)
Q. 越境ECとは何ですか?国内ECと何が違いますか?
A. 越境ECとは、インターネットを通じて海外の消費者に商品を販売する取引です。日本国内の顧客を対象とする国内ECと違い、国境を越えて海外の顧客へ売る点が根本的な違いです。
この違いから、現地の言語・通貨への対応、海外の消費者が使う決済手段の用意、国際配送と通関の手配、関税や各国の輸出入ルールへの対応など、国内ECにはない手間が増えます。これらが越境ECの負担(デメリット)の中身にあたります。
Q. 越境ECの関税は誰が負担しますか?
A. 越境ECの関税は、特に指定しなければ原則として商品を受け取る海外の購入者(荷受人)が負担します。日本の関税法では、関税の納税義務者を原則として仕入書(インボイス)に記載された荷受人と定めているためです。
売り手が関税まで負担する取引条件(DDP)を選ぶこともできますが、その場合はコストを販売価格に上乗せする必要があります。関税率は仕向国と品目によって異なるため、どの国に・どの品目を売るかが決まったら事前に確認しておきましょう。
出典・参考資料(1件)
- 出典:関税の納税義務者(カスタムスアンサー1103)|税関(リンク)
Q. 越境ECに消費税はかかりますか?
A. 越境ECでの海外の消費者への販売は輸出取引にあたり、要件を満たせば消費税が免除されます(輸出免税)。国税庁も「販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されます」と説明しています。
ただし「越境ECなら自動で消費税ゼロ」というわけではなく、課税事業者であることや、輸出の事実を証明する書類(輸出許可書など)を整理・保存することといった要件があります。自社が要件を満たすかは税理士など専門家に確認すると確実です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:No.6551 輸出取引の免税|国税庁(リンク)
Q. 越境ECは個人や小規模事業者でも始められますか?
A. 越境ECは、法人でなくても個人や小規模事業者でも始められます。海外のECモールへの出店や、自社サイトにタグを貼るだけの代行サービスなど、少ない初期投資でスモールスタートできる手段が増えているためです。
まずは1か国・1商材から小さく試し、反応を見て広げていく進め方が取りやすいのが越境ECの特徴です。物流・決済・言語対応といった負担の大きい部分は支援サービスに任せられるため、社内のリソースが限られていても運営を始められます。
Q. 越境ECを始めるのに必要な英語力はどのくらいですか?
A. 越境ECに必要な英語力は、専任の語学人材がいなくても、要点を正確に伝えられる基礎的なレベルがあれば始められます。翻訳ツールや多言語カスタマーサポートの代行サービスを使えば、言語面の負担は大きく補えます。
大切なのは完璧な語学力よりも、商品の特徴や問い合わせへの回答を誤解なく相手に伝えることです。多言語対応を自社だけで抱えるのが難しい場合は、この領域を外部に委ねる選択肢があります。
Q. 越境ECを始めるベストなタイミングはいつですか?
A. 越境ECを始める目安は、国内向けのネットショップ運営がある程度安定し、売れ筋商品が見えてきたタイミングです。国内で一定の販売実績がある商品は、海外でも初動の仮説を立てやすいためです。
SNSで海外からのアクセスや問い合わせが増えてきたときも、海外需要が見込めるサインです。国内の運営基盤を土台に、まず1か国・1商材から小さく試すのが現実的です。
Q. 越境ECはいくらくらいから始められますか?
A. 越境ECは出店方法によって費用に幅がありますが、自社サイトにタグを貼る代行型なら初期費用数万円・月額数千円程度から始められます。たとえば本記事で紹介したWorldShopping BIZは初期費用33,000円・月額5,500円(税込)で、海外配送や購入代行の手数料は海外の購入者が負担する仕組みです。
一方、自社ECサイトをゼロから構築して本格的にブランドを育てる場合は、構築内容に応じて費用が大きく変わります。あわせて、国際配送費や関税など売るたびにかかる変動コストも利益計算に織り込んでおきましょう。
Q. 越境ECの物流・決済・言語対応を自社でできない場合はどうすればよいですか?
A. 越境ECのデメリットの多くは「対応の手間とコスト」で、サイト構築・決済・国際物流/通関・多言語の顧客対応といった領域は、それぞれ得意な支援サービスに任せて軽減できます。海外対応をすべて自社だけで抱える必要はありません。
支援の形はサービスごとに異なり、自社サイトの構築、中国など特定市場の一括支援、複数国の決済の一本化、タグを貼るだけの代行などがあります。自社の弱い部分を補うサービスを選ぶことで、少ない負担で海外販売を始められます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















