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ERPのRFP(提案依頼書)とは?記載項目一覧と書き方・記入例を解説

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ERP(統合基幹業務システム)比較表(2026年版)

基幹システムの刷新や新規導入では、複数のERPベンダーに提案を依頼し、機能や費用を横並びで比較するのが一般的な進め方です。その出発点になる書類がRFP(提案依頼書)です。

RFPの出来は、返ってくる提案の質を大きく左右します。要件を曖昧なまま依頼すると、各社の提案が噛み合わず比較できない、見積もりの前提がバラバラになる、といった事態に陥りがちです。とはいえRFPを作った経験がなく、何をどこまで書けばよいか見当がつかない担当者も少なくありません。

本記事では、ERP向けRFPに書く記載項目を一覧表と記入例でそのまま使える形で示し、作り方の5ステップ、ERP特有の要件の書き分け、提案の評価方法までを解説します。公的なひな型の入手先もあわせて紹介します。

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ERPのRFP(提案依頼書)とは

はじめに、記載項目に入る前の共通理解として、RFPの意味と似た書類との違いを押さえます。

RFPとは(提案依頼書の定義)

RFP(Request for Proposal/提案依頼書)とは、システム導入を外部のベンダーに委託する際に、導入の目的・現状の課題・求める要件・予算やスケジュールなどをまとめ、具体的な提案を依頼する文書です。

ERP導入では、会計・販売・在庫・人事などの業務が一つのシステムに統合されるため、関係する部門も要件も多岐にわたります。これらを文書で整理して各社に同じ条件で提示することで、返ってくる提案を横並びで比較できる状態をつくるのがRFPの役割です。

RFI・RFQとの違いと使い分け

RFPと混同されやすい書類に、RFI(情報提供依頼書)とRFQ(見積依頼書)があります。3つは目的と依頼する内容が異なり、プロジェクトの段階によって使い分けます。

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RFI・RFP・RFQの違いRFI(情報提供依頼書)RFP(提案依頼書)RFQ(見積依頼書)
目的候補を広く絞り込むための情報収集要件に対する具体的な提案を引き出す条件を固めた上での正確な見積もり取得
主に依頼する内容製品の概要・対応業務・導入実績・会社情報要件への対応方針・構成・体制・概算費用・スケジュール確定した仕様に対する詳細見積もり
使う段階候補の洗い出し段階比較・選定段階最終交渉・契約前

一般的には、RFIで候補を数社に絞り、RFPで各社の提案を比較し、最終候補にRFQで詳細見積もりを求める、という順で進みます。ERPのように検討が長期化しやすいプロジェクトでは、この順序を意識すると各段階で集める情報が整理され、比較の軸がぶれにくくなります。

なぜERP導入でRFPを作るのか

RFPを作らずに「いまの業務を効率化したい」とだけ伝えてしまうと、各社が想定する前提がバラバラになり、提案の範囲も見積もりの条件もそろいません。結果として、提案書を並べても何を基準に優劣を判断すればよいか分からなくなります。

RFPで要件を文書化する目的は、主に次の3点です。各社に同じ土俵で提案してもらい、社内の認識もそろえるための土台になります。

  • 提案を比較できる状態をつくる:同じ要件に対する各社の対応方針・費用・体制を横並びにできる
  • 社内の認識をそろえる:目的・優先順位・予算を文書にすることで、経営層・利用部門・情報システム部門の合意が取れる
  • 導入後の認識齟齬を防ぐ:要件と前提を明文化することで、契約後の「言った・言わない」を減らせる

ERPのRFPに書く記載項目一覧

ここからは、RFPにそのまま盛り込める記載項目を一覧で示します。下表の項目をRFPの目次として使えば、ERP導入で各社から比較できる提案を引き出すために必要な要素を一通りカバーできます。

記載項目何を書くか記入例(一文)
1. 提案依頼の概要RFPのタイトル、依頼元、提出期限、提出方法、問い合わせ窓口「提出期限は2026年◯月◯日、形式はPDF、質問は◯月◯日まで窓口(担当者メール)で受け付ける」
2. 導入の目的・背景なぜ刷新するのか、達成したい状態(To-Be)、経営課題との関係「部門ごとに分かれた販売・在庫・会計を統合し、月次決算を5営業日短縮する」
3. 現状の課題(As-Is)現行システム・運用の構成と、具体的に困っている点「受注はExcel、在庫は別システムで、二重入力と在庫差異が月15件ほど発生している」
4. 対象業務範囲・スコープ対象とする業務・モジュール、対象外とする範囲、利用拠点・ユーザー数「対象は販売・在庫・会計の3領域、5拠点・利用者80名。人事給与は今回対象外」
5. 機能要件業務ごとに必要な機能。必須要件と希望要件を分けて記載「受注時に与信限度額を自動チェックできること(必須)」
6. 非機能要件性能・可用性・セキュリティ・運用保守・拡張性など「月次バッチは営業時間外に完了し、稼働率99.5%以上を維持できること」
7. 既存システムとの連携要件連携が必要な外部システムと連携方式・頻度「ECサイトの受注データをAPIで1時間ごとに取り込めること」
8. データ移行要件移行対象データの種類・量・期間、クレンジングの要否「過去3年分の取引先・商品・在庫マスタを移行し、移行後に件数と残高を検証する」
9. スケジュール・体制希望する稼働時期、社内の推進体制、ベンダーに求める体制「2027年4月本稼働を希望。自社はプロジェクトリーダー1名と各部門担当を配置」
10. 予算・費用の提示条件概算予算の有無、費用の内訳(初期・保守・ライセンス)の提示形式「初期費用・月額費用・保守費用を分けて5年間の総所有コストで提示すること」
11. 提案依頼事項提案書に記載してほしい内容、デモ・PoC(概念実証)の要否、見積もりの前提「標準機能での対応可否とカスタマイズ範囲を機能要件ごとに明記すること」
12. 評価基準・選定プロセス評価の観点、選定スケジュール、プレゼンの有無「機能適合・費用・体制・実績の4観点で評価し、1次選考後にデモを実施する」
13. 情報開示範囲・秘密保持開示する情報の範囲、NDA(秘密保持契約)の締結条件「提案にあたり開示する社内資料は、別途締結するNDAの対象とする」

上記は、情報システムの開発・運用を外部委託する際の公的なひな型であるITコーディネータ協会「開発委託用RFP見本」の構成とも整合する項目立てです。項目セットの根拠として、次章で入手先を紹介します。

つまずきやすい項目の「悪い例→良い例」|ベンダーに伝わる書き方

項目名を埋めるだけでは、各社から比較できる提案は返ってきません。要件が抽象的だと、ベンダーは前提を各社各様に補って見積もるため、提案の範囲も金額もそろわなくなります。ここでは、つまずきやすい項目について、ベンダーが見積もれない「悪い例」と、見積もれる「良い例」を対比します。

機能要件:「効率化したい」ではなく、何を・どう処理したいかを書く

機能要件は、業務の動作レベルまで具体化すると、各社が標準機能で対応できるかを判断できます。

  • ❌ 悪い例:「在庫管理を効率化したい」——何をもって効率化とするかが不明で、各社が別の機能を想定して見積もる
  • ✅ 良い例:「複数倉庫の在庫を拠点横断でリアルタイムに引当てられ、引当済み在庫を他拠点の受注で二重に販売しない制御ができること(必須)」——対応可否と必要な設定・開発が判断できる

同じ要領で、会計なら「月次で費用を部門別・プロジェクト別に自動配賦し、配賦基準を期中に変更できること(必須)」、購買なら「発注金額に応じて承認者が変わる多段階承認を設定できること(希望)」のように書きます。業務ごとに、自社固有の処理を業務の動作レベルで、必須・希望の区分まで添えるのが要点です。

連携要件:対象システムと連携方式・頻度まで書く

連携は開発工数と費用に直結するため、相手・方式・頻度・データ量を示すと見積もりの前提がそろいます。

  • ❌ 悪い例:「既存システムと連携できること」——どのシステムと、どの方向に、どの頻度で連携するかが分からず、工数を見積もれない
  • ✅ 良い例:「ECサイト(Shopify)の受注データをAPI経由で1時間ごとに自動取り込みし、出荷実績を日次でECへ返すこと」——連携方式・方向・頻度が明確で、必要な開発が見える

予算・費用:総所有コストの提示形式を指定する

費用の内訳と期間をそろえて依頼しないと、初期費用だけが安く見える提案と、保守まで含めた提案が混在し、比較できなくなります。

  • ❌ 悪い例:「費用を提示してください」——初期費用のみの社と5年総額の社が混ざり、横並び比較が成立しない
  • ✅ 良い例:「初期費用・月額ライセンス・保守費用・想定カスタマイズ費用を分け、5年間の総所有コスト(TCO)として提示すること」——同じ土俵で費用を比較できる

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RFPテンプレート・公的ひな型の入手先

ゼロから項目を考えるより、実在する公的なひな型を土台にすると、項目の抜け漏れを防げます。まず、本記事の記載項目一覧(13項目の表)は、そのままコピーしてRFPの目次として使えます。以下で紹介する公的ひな型は、項目の抜け漏れ確認に使えます。いずれも誰でも無料で入手できます。

ITコーディネータ協会「開発委託用RFP見本」

特定非営利活動法人ITコーディネータ協会(ITCA)は、情報システムの開発・運用を外部委託する際のRFP/SLA(サービス品質保証)見本を公開しています。開発委託用RFP・開発委託用SLA・運用委託用RFP・運用委託用SLAの4分冊で構成され、PDF形式であれば誰でもダウンロードできます(Word形式は正会員向け)。ERP専用ではありませんが、RFPの記載項目の構成を確認できる代表的なひな型です。

提供条件はページ本文で次のように案内されています。

見本は、開発委託用のRFPとSLA、および運用委託用のRFPとSLAの4分冊で構成されます。見本はpdf形式で提供されます。さらに、正会員にはWord形式でも提供いたします。

RFP/SLA見本|特定非営利活動法人 ITコーディネータ協会(https://www.itc.or.jp/foritc/useful/rfpsla/)

IPA「非機能要求グレード」(非機能要件の整理に)

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開する「非機能要求グレード」は、可用性・性能/拡張性・運用保守性・移行性・セキュリティなどの非機能要件を、グレード(段階)で合意するためのツール群です。RFP全体のひな型ではありませんが、見落としやすい非機能要件の項目立てに使えます。クラウドERPの非機能要件を整理する際の裏づけになります。

出典・参考資料(2件)

ERPのRFPの作り方【5ステップ】

記載項目を埋める前に、要件を固める工程を踏むと、RFPの各項目に書く内容が自然とそろいます。ここでは、目的の明確化から評価基準の設計までを5ステップで整理し、各工程がRFPのどの項目に落ちるかをあわせて示します。

ERPのRFPの作り方を5ステップで示した図。STEP1 目的の明確化、STEP2 As-Is/To-Beの整理、STEP3 要件の優先順位付け、STEP4 記載項目へ落とし込む、STEP5 評価基準の設計、の順に矢印でつながっている。

Step1:導入の目的・ビジョンを明確にする

最初に取り組むのは、なぜ刷新するのか、達成したい状態は何かの言語化です。経営課題と結びつけておくと、RFPの「導入の目的・背景」に書く内容が定まり、提案の方向性もぶれにくくなります。

Step2:現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)を整理する

現行システムと業務フローを棚卸しし、どこに課題があるかを可視化します。あわせて、刷新後にどうありたいか(To-Be)を描きます。この整理がRFPの「現状の課題」と「対象業務範囲」の記述につながります。

この工程でつまずきやすいのは、ヒアリングが一部の部門に偏り、他部門の業務が抜け落ちることです。関係部門を早めに巻き込み、業務フロー図と課題一覧という成果物に残しておくと、後工程の要件定義がぶれません。

Step3:要件を棚卸しし、必須と希望に分けて優先順位を付ける

洗い出した要件は、必ず満たすべき必須要件と、満たせると望ましい希望要件に仕分けます。すべてを必須にすると提案が集まりにくく費用も膨らむため、優先順位を明示するほどRFPの機能要件・非機能要件の精度が高まります。成果物は、要件ごとに必須/希望の区分と優先度を付けた一覧表です。迷ったときは、その機能が無いと業務が回らないかを基準にすると、必須要件を絞り込めます。

Step4:記載項目に落とし込む

整理した内容を、前章の記載項目一覧に沿って文書化します。連携要件・データ移行要件・スケジュール・予算の提示条件など、ERP特有の項目も含めて埋めていきます。記入例を参考に、ベンダーが見積もれる具体度まで書き下すのがこの工程です。

Step5:評価基準と選定プロセスを設計する

提案をどの観点で・どう評価するかは、RFPを出す前に決めておくのが基本です。評価基準を先に固めておくと、提案を受け取った後の判断が恣意的にならず、社内の合意も得やすくなります。評価の観点と配点までこの段階で決め、RFPの「評価基準・選定プロセス」の項目に落とし込みます。

ERP特有の要件の書き分け

ERPのRFPは、一般的なシステム導入のRFPに比べ、業務の統合範囲が広く連携も多いため、書き分けるべき論点が増えます。汎用的な解説では触れられにくい、ERPならではの4つの論点を整理します。

会計・販売・生産などモジュール別の機能要件

ERPは複数の業務モジュールが連動するため、機能要件もモジュール単位で書き分けると、各社の標準機能でどこまで対応できるかが判断しやすくなります。たとえば会計なら部門別・プロジェクト別の原価集計、販売なら与信管理や多段階の承認、生産なら所要量計算(MRP)といった具合に、自社の業務に固有の処理を具体的に挙げます。

既存システムとの連携要件・データ移行要件

ERPは社内の多くのシステムとデータをやり取りするため、連携と移行の記述が提案の精度を左右します。連携は相手システム・方式(API/ファイル連携など)・方向・頻度を示し、データ移行は対象データの種類・量・期間と、クレンジングや移行後検証の要否まで書きます。移行は見積もりのブレが大きい領域なので、現状のデータ量を示すと提案がそろいます。

カスタマイズ(アドオン)をどこまで求めるかをRFPに示す

ERP導入では、自社の業務に合わせてシステムを作り込む(アドオン/カスタマイズ)か、標準機能に業務を合わせるか(Fit to Standard)の方針が、費用・導入期間・将来の保守負担を大きく左右します。RFPでこの方針を示しておくと、各社の提案の前提がそろいます。

具体的には、どの業務を標準機能に合わせ、どこを自社固有の要件としてカスタマイズを求めるのかを切り分けて書きます。「すべて現行業務どおりに」と丸ごと求めると、アドオンが積み上がって見積もりも保守コストも膨らみます。標準機能で代替できそうな業務はその旨を添えておくと、現実的な提案を引き出せます。

クラウドERPの非機能要件・内部統制/ガバナンス要件

クラウドERPでは、可用性・性能・セキュリティといった非機能要件や、アクセス権限・承認フロー・証跡管理などの内部統制要件も、RFPで明示しておく必要があります。非機能要件は見落とされやすいため、IPAの「非機能要求グレード」のような項目体系を参照し、可用性や運用保守の水準をグレードで示すと、各社の前提をそろえられます。

出典・参考資料(1件)

提案の評価とベンダー選定

RFPを出した後は、集まった提案を評価して候補を絞ります。評価の観点と配点をあらかじめ決めておくと、価格の印象や提案の見栄えに引きずられず、要件への適合で選べます。

評価は、たとえば次のような観点を点数化し、重み付けして比較する方法が取り組みやすいでしょう。観点と配点はRFPの「評価基準」に明記し、各社へ事前に伝えておくと提案の方向もそろいます。

← 横にスクロールできます →
提案の評価観点機能適合費用導入体制・実績拡張性・継続性
見るポイント必須要件を標準機能で満たせるか、カスタマイズが必要な範囲はどこか初期・保守・ライセンスを含む5年総所有コスト(TCO)自社の業種・規模での導入実績、プロジェクト体制とサポート範囲将来の業務拡大や法改正対応、バージョンアップの方針

書面の評価だけでなく、上位候補にはデモやPoCを依頼し、実際の操作感や自社業務での再現性を確かめると、導入後のミスマッチを減らせます。RFI→RFP→RFQの流れの中で、RFPの段階では「標準機能での対応可否」を機能要件ごとに回答してもらうと、比較の精度が上がります。

ERPのRFP作成でよくある失敗と注意点

ここでは、RFP作成の工程で陥りやすい実務的な失敗を扱います(RFPという手段そのものを問い直す戦略的な視点は次章で述べます)。これらを知っておくと、精緻に作ったのに導入後にミスマッチが残る、という事態を避けられます。

要件過多・丸投げが「比較できない提案」を招く

要望をすべて必須要件として詰め込むと、対応できるベンダーが絞られ、費用も跳ね上がります。逆に「いい感じに提案してほしい」と丸投げすると、各社が前提を各様に補い、提案が噛み合いません。必須と希望を分け、優先順位を示すことが、比較できる提案を集める鍵になります。

ノウハウ不足で作成が停滞し、導入後にミスマッチが残る

RFP作成の経験が社内にないと、要件の言語化が進まず、プロジェクトが停滞しがちです。公的なひな型を土台にする、提案前提のヒアリングを活用する、導入支援の専門家に相談するといった手段で、要件定義の精度を補えます。要件が曖昧なまま進めると、導入後に「思っていた業務にならない」というミスマッチが残りやすくなります。

RFPを作り込む前に|「RFP偏重」の落とし穴とFit to Standard

ここまでRFPの作り方を解説してきましたが、RFPを精緻に作り込むこと自体が目的化すると、かえって導入を難しくすることがあります。RFPという手段そのものを一歩引いて捉える視点も持っておきましょう。

Fit to Standard(標準機能活用)という考え方

現行業務を細部まで要件化してRFPに盛り込むと、その要件に合わせたカスタマイズ(アドオン)が積み上がり、費用と保守負担が膨らみます。近年のクラウドERPでは、現行業務をそのまま再現するのではなく、標準機能に業務を合わせるFit to Standardの考え方が重視されるようになっています。

この観点に立つと、RFPで「現行業務をすべて実現できること」を求めるより、「標準機能で何ができ、どこを自社に合わせるか」をベンダーと検証する姿勢が有効です。RFPで詳細要件を固める前に、標準機能で代替できる業務はないかを問い直すと、過剰な作り込みを防げます。

「2025年の崖」とアドオン肥大が招く戦略的リスク

カスタマイズの積み上げは、システムの複雑化・ブラックボックス化を招き、長期的なリスクになります。経済産業省が2018年に公表したDXレポートは、複雑化・老朽化した既存システムが残ると大きな経済損失につながると警鐘を鳴らし、これを「2025年の崖」と呼びました。

複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025 年までに予想される IT 人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025 年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある

デジタルトランスフォーメーション(DX)レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省(2018年)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/20180907_03.pdf)

ERP刷新は、この老朽化・ブラックボックス化から脱する機会でもあります。RFPで要件を固める際も、目先の業務再現だけでなく、標準機能を活かして将来の保守・改修を軽くする視点を持つと、導入後の運用まで見据えた選定ができます。

RFPを出す先をどう選ぶか|要件定義から支援するERP導入支援

RFPを出す先のERP製品を横並びで比較したい場合は、カテゴリの比較記事で各製品の機能・費用・特徴を確認できます。製品ごとの違いを俯瞰してから、候補を数社に絞ってRFPを送る進め方が効率的です。次の記事では、主要なERP製品を選び方・機能・費用の観点で比較しています。

一方で、RFP作成や要件定義そのものに不安がある場合は、製品を提供するベンダーだけでなく、要件定義の段階から伴走してくれる導入支援サービスを候補に入れる方法もあります。

選ぶ際は、要件定義・Fit&Gap分析(標準機能と自社要件の差異を洗い出す分析)から入ってくれるか、既存システム連携やデータ移行まで一貫して支援できるか、自社の規模・業種での実績があるか、といった観点で見ると、RFP作成の負担を軽くできます。こうした「要件定義から伴走するタイプ」の一例として、次のサービスがあります。

Odoo導入・開発・業務統合支援(株式会社マルウェブ)

株式会社マルウェブのOdoo導入・開発・業務統合支援サービスのウェブサイト

株式会社マルウェブが提供する、オープンソースERP「Odoo」の導入支援サービスです。Odooは販売・会計・在庫・CRMなど80種類以上のアプリから必要なものを選んで使えるERPで、販売から在庫管理までを一つのシステムで一元管理できます。

同社の支援は、導入前の要件定義とFit&Gap分析から始まり、現状の業務フローを可視化したうえで開発・外部システム連携・データ移行・研修・運用サポートまでを一貫して行います。RFP作成でつまずきやすい要件定義の工程から伴走してもらえる点が特徴です。Odooのラーニングパートナーとして契約し、日本とベトナムのハイブリッド体制で開発を進めることで、コストを抑えた導入を支援しています。

販売・在庫・会計が部門ごとに分断されている、ExcelやメールでのやりとりをERPに統合したい、といった中小企業からの相談を多く扱っており、スモールスタートから全社統合まで、予算と優先順位に応じた進め方を提案しています。

まとめ

ERP向けのRFPは、導入の目的・現状の課題・機能要件・非機能要件・連携要件・データ移行要件・予算・評価基準などを文書化し、各社から比較できる提案を引き出すための書類です。項目名を並べるだけでなく、ベンダーが見積もれる具体度まで書き下すことが、質の高い提案を集める鍵になります。

ITコーディネータ協会の「開発委託用RFP見本」やIPAの「非機能要求グレード」といった公的なひな型を土台にしつつ、ERP特有の連携・移行・カスタマイズ方針を書き分けましょう。あわせて、標準機能を活かすFit to Standardの視点を持つと、過剰な作り込みと将来の保守負担を避けられます。

RFPを出す先のERP製品や、要件定義から支援する導入支援サービスは、MCB FinTechカタログで資料をまとめて請求できます。ぜひ各社の資料を取り寄せて、自社に合う候補の比較検討を進めてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. ERPのRFP(提案依頼書)とは何ですか?

A. ERPのRFP(提案依頼書)とは、ERP導入をベンダーに委託する際に、導入の目的・現状の課題・求める要件・予算やスケジュールなどをまとめ、具体的な提案を依頼する文書です。会計・販売・在庫・人事など多くの業務が一つに統合されるERPでは、関係する部門も要件も多岐にわたります。これらを文書で整理して各社に同じ条件で提示することで、返ってくる提案を横並びで比較できる状態をつくります。

Q. ERPのRFPとRFI・RFQはどう使い分けますか?

A. ERPのRFP・RFI・RFQは、RFI(情報収集で候補を絞る)→RFP(提案を比較する)→RFQ(詳細見積もりを確定する)の順で、プロジェクトの段階に応じて使い分けます。

RFIで候補を数社に絞り、RFPで各社の提案を比較し、最終候補にRFQで詳細見積もりを求めるのが一般的な流れです。ERPのように検討が長期化しやすいプロジェクトでは、この順序を意識すると各段階で集める情報が整理され、比較の軸がぶれにくくなります。

Q. ERP向けRFPの作成期間はどのくらいかかりますか?

A. ERP向けRFPの作成期間は、要件の棚卸しから文書化まで一般的に1〜3カ月程度が目安ですが、対象業務の範囲や関係部門の数によって大きく変わります。期間の大半は、現状業務(As-Is)の棚卸しと、必須要件・希望要件の整理や優先順位付けに費やされます。関係部門が多いERPでは、各部門へのヒアリングと社内合意に時間がかかるため、ベンダーへ提案を依頼したい時期から逆算して早めに着手するのが安全です。

Q. ERPのRFP作成に費用はかかりますか?

A. ERPのRFPは、自社で作成すれば直接の費用はかからず、コンサルティング会社や導入支援会社に作成を依頼する場合に費用が発生します。社内にRFP作成のノウハウがない場合は、要件定義の段階から伴走する導入支援サービスを活用する方法もあります。公的なひな型を土台にすれば、外部に依頼せずとも項目の抜け漏れを抑えながら自社で作成でき、費用を抑えられます。

Q. ERPのRFPは社内の誰が作成すべきですか?

A. ERPのRFPは、情報システム部門だけでなく、経理・販売などの利用部門と経営層を巻き込んだプロジェクト体制で作成するのが基本です。機能要件は現場の業務を知る利用部門、導入目的や予算は経営層、全体の取りまとめは情報システム部門、というように役割を分担します。ERPは全社の業務に関わるため、特定部門だけで要件を決めると、他部門の業務が抜け落ち、導入後のミスマッチにつながりやすくなります。

Q. ERP導入にRFPは必須ですか?

A. ERP導入でRFPは法的に必須ではありませんが、複数ベンダーの提案を同じ条件で比較し、自社に最適な製品と導入先を選ぶうえで事実上欠かせないプロセスです。

ただし、RFPで現行業務を細部まで要件化しすぎると、カスタマイズが積み上がって費用と保守負担が膨らむ点には注意が必要です。近年のクラウドERPでは、標準機能に業務を合わせるFit to Standardの考え方も重視されており、RFPで何をどこまで求めるかの線引きが導入の成否を左右します。

Q. ERP向けRFPに無料で使えるテンプレートはありますか?

A. ERP向けRFPには、ITコーディネータ協会の「開発委託用RFP見本」など、誰でも無料で入手できる公的なひな型が活用できます。同協会の見本はPDF形式で公開されており(Word形式は正会員向け)、RFPの記載項目の構成を確認できます。

非機能要件の整理には、IPA(情報処理推進機構)の「非機能要求グレード」も参考になります。いずれもERP専用ではないため、本記事の記載項目一覧とあわせ、自社の業務に合わせて項目を補うとよいでしょう。

Q. ERPのRFP作成で最も重要なことは何ですか?

A. ERPのRFP作成で最も重要なのは、導入の目的と現状の課題を明確にしたうえで、各要件をベンダーが見積もれる具体度まで書き下すことです。「効率化したい」といった抽象的な記述では、各社が前提を各様に補って見積もるため、提案の範囲も金額もそろいません。何を・どう処理したいかを業務の動作レベルまで具体化し、必須要件と希望要件を分けて優先順位を示すことが、比較できる提案を集める鍵になります。

Q. ERPのRFPで特に書き漏らしやすい項目は何ですか?

A. ERPのRFPでは、既存システムとの連携要件・データ移行要件・非機能要件が特に書き漏らされやすい項目です。ERPは社内の多くのシステムとデータをやり取りするため、連携する相手システム・方式・頻度や、移行対象データの種類・量・期間を示さないと、見積もりが大きくぶれます。

また、可用性やセキュリティなどの非機能要件も見落とされやすいため、IPAの「非機能要求グレード」のような項目体系を参照して整理すると、各社の前提をそろえられます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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