海外に子会社や拠点を持つ企業が増えるにつれ、贈収賄防止・競争法・データ保護・内部通報といった各国ごとに異なる規制へ、グループ全体でどう向き合うかが本社の経営課題になっています。進出先の法令は国ごとに内容も厳しさも異なり、現地の違反が本国の企業の責任に跳ね返る場面も少なくありません。
こうした海外事業に伴う法令遵守の取り組みを総称して「グローバルコンプライアンス」と呼びます。本記事では、グローバルコンプライアンスが対象とする主要な領域と代表的な法令を整理したうえで、なぜ今重要なのか、本社が直面しやすい課題と体制づくりの進め方、そして自社だけでは対応しきれない部分をどう外部に頼るかまでを解説します。
各国規制の全体像をつかみ、自社が対応すべき領域を棚卸ししたうえで、次の一手を検討するための材料としてご活用ください。
目次
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グローバルコンプライアンスとは
グローバルコンプライアンスとは、海外に拠点や取引を持つ企業が、進出先の国ごとに異なる法令・規制・国際規範を本社と現地の双方で遵守し、グループ全体で管理する取り組みを指します。国内のコンプライアンスと異なるのは、対象となる法令が日本の法律だけにとどまらず、進出先の現地法、さらに域外適用される外国法や国際規範まで広がる点です。
「海外拠点の法令遵守」とひとくくりにすると輪郭がつかみにくいため、まず対象となる主要な領域を、代表的な法令・規範と典型的なリスクとあわせて整理します。
対象となる主要領域と代表法令・典型リスク
| 贈収賄防止(腐敗防止) | 競争法(独占禁止) | データ保護・プライバシー | 経済制裁・マネーロンダリング対策 | 内部通報 | 人権・サプライチェーン | 労働・環境 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 代表的な法令・規範 | 不正競争防止法(外国公務員贈賄の禁止)、米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)、英国贈収賄防止法(UK Bribery Act 2010) | 日本の独占禁止法、EU競争法、米国反トラスト法など各国の競争法 | EU一般データ保護規則(GDPR)、各国の個人情報保護法 | 外国為替及び外国貿易法(外為法)、FATF(金融活動作業部会)勧告、米国OFAC規制など | EU内部通報者保護指令(Directive (EU) 2019/1937)、公益通報者保護法 | 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、EU企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)、OECD多国籍企業行動指針 | 各国の労働法・環境規制、OECD多国籍企業行動指針 |
| 典型的なリスク | 海外拠点や代理店を通じた外国公務員への利益供与。域外適用により本国の企業も処罰対象となる | 国際カルテル、再販価格の拘束、優越的地位の濫用。各国の競争当局による高額の制裁金 | 越境データ移転の規制違反、同意取得の不備。域外適用と高額の制裁金 | 制裁対象国・取引先との取引、資金洗浄やテロ資金供与の見逃し | 通報窓口の未整備、通報者への報復。制度未整備による不正の早期発見の遅れ | サプライチェーン上の強制労働・児童労働、人権デューデリジェンスの欠如 | 現地労働法(労働時間・解雇規制など)の違反、環境基準の未達 |
※上記は代表的な領域と法令・規範の例です。自社が対応すべき範囲は、進出国・業種・取引形態によって異なります。
これらのうち、とくに本国の企業に直接およびやすいのが贈収賄防止です。日本では不正競争防止法が外国公務員への贈賄を禁じており、同法第18条は次のように定めています。
(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)第十八条 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。
出典:不正競争防止法 第18条|e-Gov法令検索
同じく外国公務員への贈賄を禁じるのが、米国の海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act、以下FCPA)です。FCPAは、米国に証券を上場する外国企業や、米国内で贈賄につながる行為を生じさせた外国の企業・個人にも適用されます。
英国贈収賄防止法(UK Bribery Act 2010)も、英国で事業を行う企業に広く及び、行為が行われた場所を問わず適用され得る点が特徴です。海外での一件が本国の法律で問われる構図は、グローバルコンプライアンスを本社主導で管理すべき最大の理由のひとつです。
出典・参考資料(2件)
贈収賄防止以外の領域も、本社として最初に押さえたい着眼点は共通しています。競争法では国際カルテルや各国の競争当局による調査、データ保護では越境データ移転と同意取得の扱い、経済制裁・マネーロンダリング対策では取引先のスクリーニングが、まず確認したいポイントです。各領域の具体的な対応は、自社の事業や進出先に応じて専門家と確認しながら進めることが大切です。
なぜ今グローバルコンプライアンスが重要なのか
海外展開に伴う法令遵守は以前から重要でしたが、近年は違反時の制裁が重くなり、対応を求める規制も相次いで整備されています。ここでは、対応を怠った場合の帰結と、2025〜2026年の規制強化動向を整理します。
対応を怠った場合の帰結
違反が生じたときの金銭的な制裁は、領域によっては企業の規模に連動する水準に達します。たとえばGDPRは、重大な違反に対する制裁金の上限を、最大で2,000万ユーロか、企業の場合は直前の会計年度における全世界の年間売上高の4%のいずれか高い方と定めています。原文は次のとおりです。
Infringements of the following provisions shall, in accordance with paragraph 2, be subject to administrative fines up to 20 000 000 EUR, or in the case of an undertaking, up to 4 % of the total worldwide annual turnover of the preceding financial year, whichever is higher
出典:一般データ保護規則(GDPR)第83条第5項|個人情報保護委員会(英日対訳)
売上高に連動する点が、グローバルに事業を展開する企業ほど金額が大きくなる理由です。贈収賄についても制裁は重く、日本の不正競争防止法は外国公務員贈賄に対し、個人は10年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金、法人は10億円以下の罰金を定めています。
出典・参考資料(1件)
金銭的な制裁だけでなく、違反が発覚すれば現地当局による調査対応や事業の一時停止、取引先からの契約見直し、そして企業の信用の失墜といった影響も生じます。規制の増加そのものが事業の重荷にもなっており、PwCのグローバルコンプライアンス調査2025(回答1,802名)では、回答企業の77%が、自社の成長分野である5つ以上の分野で規制の増加によって何らかの悪影響を受けたと回答しています。
内部通報・人権分野で進む規制整備(直近の動き)
内部通報と人権の分野を中心に、企業に具体的な対応を義務づける規制が国内外で整備されています。国内では、公益通報者保護法が2025年に改正され(令和7年法律第62号、2026年12月1日施行)、通報者保護が強化されます。改正では次のような措置が設けられました。
出典:公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号)改正概要|消費者庁
- 通報後1年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由としてされたものと推定する(民事訴訟上の立証責任転換)。【第3条関係】
- 公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対し、直罰(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、両罰)を新設する。法人に対する法定刑を3,000万円以下の罰金とする。【第21条、第23条関係】
海外でも内部通報の整備は進んでおり、EUは内部通報者保護指令(Directive (EU) 2019/1937)で、従業員50名以上の民間事業者に内部通報窓口の設置を義務づけ、通報者への報復を禁じています。
人権の分野では、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を出発点に、企業へ人権デューデリジェンスを求める動きが各国で広がっています。EUの企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)は、大企業に人権・環境デューデリジェンスを義務づけるものです。
CSDDDは当初、従業員1,000人超・全世界純売上高4.5億ユーロ超の企業を最終的な適用対象としていました。その後、2025〜2026年の簡素化(オムニバス)の議論で、対象を5,000人超・純売上高15億ユーロ超へ引き上げる方向での見直しと適用時期の後ろ倒しが進んでおり、確定値は今後の動向を確認する必要があります。
企業行動の国際的な基準としては、OECD多国籍企業行動指針が2023年に改訂され、人権・労働・環境・贈収賄・消費者・競争・税務までを横断する勧告として参照されています。
出典・参考資料(4件)
本社が直面する主な課題と対応
グローバルコンプライアンスを進めるうえで、多くの本社が同じ壁に突き当たります。ここでは代表的な4つの課題を、何がどう難しいのかと、その場で手を打つ際の勘所とあわせて見ていきます。具体的な構築の手順は次章で扱うため、ここでは課題の見立てと初動に絞ります。
各海外拠点の実態把握が難しい
現地の事業活動や法令遵守の実態は、本社から見えにくいのが実情です。言語の壁や時差、現地任せの運用が重なると、問題が表面化するまで気づけません。
実態を把握する手立ては一つではなく、グローバル内部通報制度、従業員へのコンプライアンス意識調査、海外子会社の管理部門へのリスク調査、内部監査部門との連携、過去の自社・同業他社の事例の収集、元駐在員への聞き取りなど複数あります。いずれか一つに頼るのではなく、拠点の規模やリスクに応じて組み合わせることで、見落としを減らせます。
出典・参考資料(1件)
本社と現地子会社の役割分担が引きにくい
本社が細部まで統制しようとすると現地の実務が回らず、現地に任せすぎると方針が徹底されません。どこまでを本社が一律に定め、どこからを現地の裁量に委ねるかの線引きが課題になります。はじめに贈収賄防止や情報管理など「グループ共通で必ず守るべき最低ライン」を本社が定め、現地の法令上さらに厳しい要件がある部分は現地で上乗せする、という二層構造で考えると整理しやすくなります。
施策の効果が確認しにくい
ポリシーを定めて研修を実施しても、現地で実際に守られているかは見えにくいものです。通報件数、研修の受講率、リスク調査で見つかった指摘事項とその是正状況など、確認できる指標をあらかじめ決めておくと、施策が機能しているかを継続的に点検できます。指標が取れない運用は「やったつもり」になりやすいため、記録が残る形で回すことが要点です。
目指すべきコンプライアンス水準を定めにくい
進出先ごとに法令の厳しさが異なるなか、どの国の基準をグループの標準に置くかの判断は容易ではありません。各国の最低ラインをそれぞれ満たすだけでは域外適用される外国法や国際規範に対応しきれないことがあり、かといって最も厳しい国の基準を一律に当てはめると現地の負担が過大になります。域外適用のリスクが高い領域ほど厳しい基準に寄せるなど、領域ごとにどこまでをグループ標準とするかを見極めることが求められます。
グローバルコンプライアンス体制づくりの進め方
ここからは、前章の課題を踏まえて体制を構築する手順を、現状診断から研修までの流れで解説します。順番に進めることで、場当たり的な対応ではなく、継続して回る仕組みをつくれます。

現状診断とリスク評価
最初の出発点は、自社が対応すべき領域と拠点ごとのリスクの洗い出しです。本記事の対象領域の表を手がかりに、進出国・業種・取引形態に照らして、どの法令・規範が自社に関係するかを整理するとよいでしょう。そのうえで拠点ごとに、起こり得る違反の深刻度と発生可能性を評価し、優先して手を打つべき領域を絞り込みます。限られた人員と予算を、リスクの高いところから配分することが肝心です。
ポリシー・行動規範の策定
評価したリスクをもとに、グループ全体で守るべき行動規範や各領域のポリシーを定めます。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」は、企業が人権を尊重する責任を果たすために、規模と状況に応じた方針とプロセスを備えるべきとしており、その内容は次のとおりです。
15. In order to meet their responsibility to respect human rights, business enterprises should have in place policies and processes appropriate to their size and circumstances, including: (a) A policy commitment …; (b) A human rights due diligence process to identify, prevent, mitigate and account for how they address their impacts on human rights; (c) Processes to enable the remediation …
出典:Guiding Principles on Business and Human Rights, Principle 15|OHCHR
方針を掲げるだけでなく、影響を特定・予防・是正するプロセスまで備えることが求められている点が要点です。行動規範は、グループで一律に定める部分と現地の事情に合わせる部分を分けて整えると運用しやすくなります。
本社・地域統括・現地の役割分担
策定したポリシーを運用に落とすには、本社・地域統括会社・現地法人の役割分担を定めておくことが欠かせません。本社はグループ方針の策定と全体の監督、地域統括は地域ごとの法令差への対応と現地支援、現地法人は日々の運用と一次的な報告、という分担が基本形です。誰が最終的な責任を負い、どの判断を本社に上げるかの基準を明文化しておくと、有事の初動が速くなります。
モニタリングと内部監査
定めた仕組みが現地で守られているかを、継続的に点検します。英国贈収賄防止法(UK Bribery Act 2010)は、関係者が贈賄を行った場合に企業自体を処罰する一方で、企業が「適切な手続(adequate procedures)」を整備していたことを抗弁として認めています。
平時のモニタリングや内部監査の整備は、万一の際に企業を守る備えにもなります。日々の取引データやアクセス記録を監視し、不正の兆候を早期に検知できる状態をつくることが望まれます。
グローバル内部通報制度の整備
不正を早期に把握するうえで、グループ全体の内部通報制度は要となります。国内では公益通報者保護法が、常時使用する労働者の数が300人を超える事業者に対し、公益通報対応業務の従事者の指定と、通報に応じて適切に対応するための体制整備を義務づけています(300人以下は努力義務)。
海外拠点を含める場合は、現地の従業員が使いやすい言語・チャネルで通報を受け付けられること、通報者が報復を恐れずに利用できることが欠かせません。前述のEU内部通報者保護指令のように、海外では窓口設置を法的に義務づける国もあるため、進出先の要件を確認したうえで設計します。
出典・参考資料(1件)
研修の実施
ポリシーや通報制度を整えても、現地の従業員に理解されなければ機能しません。行動規範の趣旨や、贈収賄・利益相反といった身近なリスクを、現地の言語と具体的な場面に即して伝える研修を継続します。制度を周知するだけでなく、従業員が安心して懸念を声に上げられる風土づくりまで含めて取り組むことで、通報制度の実効性も高まります。
研修をどのような教材やテーマ、形式で進めるかを具体的に検討する段階では、コンプライアンス研修向けのeラーニングサービスを比較した以下の記事も参考になります。
コンプライアンス研修eラーニングおすすめ比較29選!料金・教材テーマ・選び方を解説
コンプライアンス研修を全社員に行き渡らせたいのに、集合研修では日程調整や会場手配が追いつかず、受講記録の管理も煩雑になっていませんか。ハラスメント防止や情報セキュリティ、個人情報保護など扱うべきテーマは年々増え、法改正のたびに教材を作り直す…
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自社だけで回らない部分の外部活用(専門家・ツール)
ここまでの体制づくりを本社の人員だけで進めるのは容易ではありません。現地法の最新知識、海外拠点の監査・調査、多言語での内部通報受付といった領域は、外部の専門家やツールの力を借りたほうが確実に回ることが多いものです。ここでは、課題ごとにどの外部活用が効くかを整理したうえで、グローバルコンプライアンスを支える主なサービスを紹介します。
課題に応じた外部活用の考え方
現地法の解釈や有事対応は、外部の専門家に頼る場面が多い領域です。各国の法令差の整理や進出前のリスク評価、不正が疑われたときの社内調査、買収先の反贈賄デューデリジェンスなどは、進出先での実務実績を持つ法律事務所やコンサルティング会社に依頼するのが基本になります。選ぶ際は、対象国での実績や現地事務所とのネットワークを持つかを確認するとよいでしょう。
一方、日々の運用を支えるのはツールです。海外子会社を含むグループの取引・承認・アクセスを一つの基盤で記録し、統制の状況を継続的に監視したい場合はグループ全体を扱えるシステムが、各国の従業員から多言語で内部通報を受け付けてケースを一元管理したい場合は内部通報に特化したプラットフォームが役立ちます。
下表は、本社が直面しやすい課題を、自社でまず取り組むことと、外部に頼れる専門家・ツールに整理したものです。自社で抱える部分と外部に委ねる部分を切り分けると、限られた人員でも体制を維持しやすくなります。
| 各海外拠点の実態把握 | 本社と現地の役割分担・水準設定 | 施策の効果の確認 | 現地法の最新把握・有事対応 | |
|---|---|---|---|---|
| 自社でまず取り組むこと | 内部通報・リスク調査・内部監査を組み合わせて情報を集める | グループ共通で守る最低ラインを本社が定める | 通報件数・研修受講率などの指標を決めて継続的に点検する | 平時にポリシーと内部通報制度を整えておく |
| 外部に頼れる専門家・ツール | 多言語の内部通報プラットフォーム/現地調査に強いコンサルティング会社 | 各国の法令差を整理できる、現地法に強い法律事務所 | グループの取引・承認・アクセスを一つの基盤で記録・監視するシステム | 現地法調査・不正調査・デューデリジェンスを担う法律事務所・コンサルティング会社 |
グローバルコンプライアンスを支える主なサービスの比較
以下は、海外拠点を含むグループのグローバルコンプライアンスに活用できるサービスの比較表です。2つは役割が異なり、ERPの刷新とあわせてグループの取引統制を整えたい場合と、まず多言語の内部通報を手当てしたい場合とで向き先が分かれます。
| サービス名 | Oracle NetSuite GRC | NAVEX One プラットフォーム |
|---|---|---|
| 提供形態 | クラウドERP「NetSuite」に組み込まれたGRC機能(GRC単独での提供はなく、NetSuite導入が前提) | 内部通報を軸としたGRC統合プラットフォーム(SaaS) |
| グローバル対応(言語・通貨・拠点) | 27以上の言語・190以上の通貨に対応し、海外拠点を含むグループを1つの基盤で管理 | 電話オペレーターが170以上の言語で24時間365日の通報受付に対応。世界150以上の国で展開 |
| グローバルコンプライアンスで効く主な機能 | 職務分掌に応じたアクセス権限、承認ワークフロー、常時稼働の監査証跡、海外監査ファイル形式(SAF-T・GDPdU・IAF)への対応 | 内部通報・インシデント管理、コンプライアンス研修、ポリシー・手順管理、第三者リスク管理 |
| 内部通報・多言語ホットライン | × | ● |
| ERP業務データ上の統制(アクセス権限・承認・監査証跡) | ● | × |
| 向いている企業 | ERPの刷新とあわせて、グループの取引統制や海外子会社の監査対応を一基盤で整えたい企業 | 海外拠点を含め、多言語で内部通報を受け付けてケースを一元管理したい企業 |
| 料金 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る |
1. Oracle NetSuite GRC(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuite GRCは、日本オラクル株式会社が提供するクラウドERP「NetSuite」に組み込まれたガバナンス・リスク・コンプライアンス(GRC)機能群です。会計・販売・購買・在庫などの業務データと、それを守る統制(職務分掌に応じたアクセス権限、承認ワークフロー、常時稼働の監査証跡)が同じ基盤の上で動くため、取引が発生したその瞬間のデータがそのまま統制の対象になります。
グローバルコンプライアンスの観点では、27以上の言語と190以上の通貨に対応し、海外拠点を含めて一つの基盤で扱える点が特徴です。監査・コンプライアンスレポートでは、SAF-T(OECD諸国)、GDPdU(ドイツ)、シンガポールのIAFなど各国の監査ファイル形式に対応しており、海外子会社の現地監査や税務監査にも使えます。
なお、GRC機能はNetSuiteのプラットフォーム・ライセンスに含まれる付帯機能で、GRC単体での購入はできず、NetSuiteをERPとして導入することが前提となります。
業務システムと統制を同じ基盤で扱う場合と、統制のためのツールを別に持つ場合とで現場の運用がどう変わるかについて、日本オラクルの担当者は次のように説明しています。
これは単体のGRC製品と比べたときに、現場で一番効いてくる部分だと思っています。統制のためのツールを別で持っていると、業務システム側のデータをエクスポートして、突き合わせて、チェックして、という作業がどうしても発生します。ここがかなり労働集約的で、ミスも起きやすいんです。
2. NAVEX One プラットフォーム(NAVEX Global, Inc.)

内部通報を軸にグローバルコンプライアンスを支えるのが、米国のNAVEX Global, Inc.が提供するNAVEX One プラットフォームです。内部通報・インシデント管理、コンプライアンス研修、ポリシー・手順管理、第三者リスク管理などを一つのプラットフォームに統合しています。日本法人としてNAVEX Japan合同会社が2026年1月に設立され、国内向けの販売・導入支援を担っています。
内部通報の受付では、電話オペレーターが170以上の言語で24時間365日対応し、各国の従業員からの通報を受け付けられます。EU内部通報者保護指令への準拠を訴求するほか、情報セキュリティ管理の国際規格ISO/IEC 27001の認証を取得し、SOC 2 Type IIレポートも毎年発行しています。海外拠点を含めて多言語で通報を受け、ケースを一元管理したい企業に適した選択肢です。
出典・参考資料(2件)
ここで取り上げた2つのサービスのほかにも、ガバナンス・リスク・コンプライアンスを一体で管理するGRCツールは幅広く存在します。以下の記事では主要なGRCツールを選び方や機能の違いから比較しているので、自社に合うツールを本格的に検討する際にあわせてご覧ください。
まとめ
グローバルコンプライアンスは、贈収賄防止・競争法・データ保護・経済制裁やマネーロンダリング対策・内部通報・人権、労働・環境といった複数の領域にまたがり、進出先の現地法だけでなく域外適用される外国法や国際規範まで対象になります。制裁は売上高に連動する水準に達することもあり、内部通報や人権の分野では企業に具体的な対応を義務づける規制が国内外で整備されています。
まず自社が対応すべき領域とリスクを洗い出し、ポリシー策定・役割分担・モニタリング・内部通報・研修の順に体制を整えることが、過不足のない対応につながります。現地法の知識や海外拠点の監査、多言語での内部通報受付など、自社だけで回しにくい部分は、専門家やグループ全体を扱えるシステム、内部通報プラットフォームの活用を検討するとよいでしょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. グローバルコンプライアンスとは何ですか?
A. グローバルコンプライアンスとは、海外に拠点や取引を持つ企業が、進出先ごとに異なる法令・規制・国際規範を本社と現地の双方で遵守し、グループ全体で管理する取り組みです。国内のコンプライアンスと異なるのは、対象が日本の法律だけにとどまらず、現地法や域外適用される外国法・国際規範まで広がる点です。
具体的には、贈収賄防止・競争法・データ保護・経済制裁やマネーロンダリング対策・内部通報・人権、労働・環境など複数の領域にまたがります。
Q. グローバルコンプライアンスでは、海外子会社の違反でも日本の本社が責任を問われますか?
A. グローバルコンプライアンスでは、海外子会社や現地の代理店による違反であっても、域外適用によって本国の親会社や企業自体が処罰・制裁の対象となることがあります。たとえば贈収賄の分野では、米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)や英国贈収賄防止法(UK Bribery Act 2010)が、行為の行われた場所を問わず外国企業にも広く適用され得ます。
海外子会社任せにせず、本社がグループ全体の方針を主導する必要があるのは、このためです。
出典・参考資料(2件)
Q. 海外進出したばかりの中小企業でもグローバルコンプライアンスは必要ですか?
A. グローバルコンプライアンスは企業規模を問わず必要で、進出初期の中小企業でも最低限の対応は欠かせません。域外適用される贈収賄防止や経済制裁は取引規模の大小で免れるものではなく、違反時の制裁金や取引停止の影響は、体力の限られる中小企業ほど事業継続を直撃します。
専任の担当者を置きにくい段階でも、少なくとも自社に関係する領域の洗い出しと、取引先や代理店も含めた基本方針の共有から始めておくことが現実的です。
Q. グローバルコンプライアンスはどの領域から優先的に取り組むべきですか?
A. グローバルコンプライアンスは、域外適用のリスクが高く制裁も重い贈収賄防止から着手し、次いで自社の事業や取引形態に関わりの深い領域へ広げるのが基本です。すべての領域に一度に完璧に対応するのは現実的でないため、拠点ごとに違反の深刻度と発生可能性を評価し、リスクの高いところから限られた人員と予算を配分します。
自社が対応すべき領域の棚卸しには、本記事の対象領域の表を手がかりに、進出国・業種・取引形態に照らして関係する法令・規範を特定する方法が有効です。
Q. グローバルコンプライアンスの内部通報制度は、通報がなかなか集まらない場合どう改善すればよいですか?
A. 制度の周知を徹底したうえで、従業員が安心して懸念を声に上げられる風土づくりに取り組むことが効果的です。報復が禁止されていることを明示する、現地の言語で使える窓口を用意する、通報後の対応状況をフィードバックするといった工夫が利用を後押しします。あわせて、ケーススタディやロールプレイを交えた研修で「どんな場面で通報してよいのか」を具体的に伝えると、通報へのためらいが和らぎます。
Q. グローバルコンプライアンスの体制づくりは、専門家とツールのどちらに頼るべきですか?
A. グローバルコンプライアンスでは、現地法の解釈や有事の不正調査は法律事務所・コンサルティング会社に、グループ全体の統制の記録・監視や多言語での内部通報受付はツールに頼るのが基本的な切り分けです。両者は役割が異なり、どちらか一方だけで完結するものではありません。自社の人員で回せる部分と外部に委ねる部分を切り分けておくと、限られた体制でも継続的に運用しやすくなります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















