新商品の販売を伸ばしたい、店頭でもう一度手に取ってもらいたい。そうした販促の打ち手として、商品の購入を応募条件にする「マストバイキャンペーン」を検討する企業が増えています。
マストバイキャンペーンは、SNSのフォローだけで誰でも参加できるキャンペーンとは異なり、購入した人だけが景品に応募できる仕組みです。売上に直結しやすい一方で、景品表示法の景品額の上限や、購入をどう証明させるかなど、設計の段階で押さえておくべき実務上のポイントがあります。
本記事では、マストバイキャンペーンの定義と仕組み・購買証明の種類・景品表示法の景品上限・景品の選び方までを実務的に解説します。自社の商材と予算で実施できるかを判断する材料として役立ててください。
目次
マストバイキャンペーンとは
マストバイキャンペーンとは、対象商品の購入を応募条件とする販促キャンペーンのことです。「Must Buy(購入が必須)」の名のとおり、商品を買った人だけが景品に応募でき、購入した事実をレシートやシリアルナンバーなどで証明して参加します。
参加者を購入者に限定するため、売上そのものを押し上げる狙いで実施されます。新商品の初回購入を後押ししたい、まとめ買いやリピートを促したい、店頭での露出を高めたいといった場面で使われる販促手法です。
購入を条件に抽選で景品を提供するマストバイキャンペーンは、景品表示法上の「懸賞」に当たります。消費者庁は、購入者を対象に抽選で景品を提供する企画について、一般懸賞の規制対象になると示しています。
本件は、商品Aを購入した方を対象に抽選で提供することから、一般懸賞の規制の対象となります
出典:景品に関するQ&A(懸賞・くじ)Q33|消費者庁
そのため、景品に設定できる金額には上限があります。上限額は後述の景品表示法で設定できる景品の上限額で解説します。
オープンキャンペーンとの違い
キャンペーンは、購入を条件とするかどうかで「クローズドキャンペーン」と「オープンキャンペーン」に分かれます。マストバイキャンペーンは前者のクローズドキャンペーンの一種です。
両者を分ける境目は、応募に購買証明が必要かどうかです。オープンキャンペーンはSNSのフォローやアンケート回答など、購入しなくても誰でも参加できます。一方、マストバイキャンペーンは対象商品を購入したレシートなどの提示を求めるため、参加できるのは購入者だけです。
この違いは景品額の規制にも影響します。購入を条件とするクローズドの懸賞には景品表示法の上限が適用されますが、購入を条件としないオープンキャンペーンの景品には、景品表示法上の上限額の定めがありません。
両者の違いを整理すると、次のとおりです。

購入を条件としないオープンキャンペーン(オープン懸賞)が景品表示法でどう扱われ、景品額に本当に上限の定めがないのかを掘り下げて確認したい場合は、一般懸賞との違いとあわせて次の記事で解説しています。
購買証明の種類と選び方
マストバイキャンペーンの設計は、購入をどう証明させるか(購買証明)を決めるところから始まります。購買証明の方法によって、応募のしやすさ、告知の幅、かかるコストが変わります。
代表的な購買証明は、レシート・シリアルナンバーやQRコード・応募シール・商品パッケージのバーコードの4種類です。それぞれの仕組みと向き不向きを比較します。
| レシート応募 | シリアルナンバー・QRコード | 応募シール | パッケージのバーコード | |
|---|---|---|---|---|
| 応募の仕組み | 対象商品を購入したレシートを撮影し、画像をWebフォームにアップロードして応募 | パッケージ内側などに印字した番号やコードを、Webで入力・読み取りして応募 | 商品に貼付したシールを台紙に集めて応募(郵送またはWeb) | 対象商品のバーコードやロゴを切り取り、台紙に貼って郵送して応募 |
| メリット | 商品パッケージの加工が不要。「○円以上の購入」など金額条件を設定しやすく、購買データも取得しやすい | 不正応募を防ぎやすく、その場で当落が分かるインスタントウィンと相性が良い | 店頭での認知効果が高く、複数個の購入やリピートを促しやすい | 既存パッケージを使えるため加工コストを抑えられる |
| デメリット | レシートを捨てられると応募できない。別途、店頭やパッケージで告知する必要がある | 番号の印字・封入にコストがかかる。パッケージの製造工程に組み込む準備が必要 | シールの製作・貼付にコストと手間がかかる。消費者が集める負担も大きい | 切り取りを敬遠されやすく、郵送前提のため集計の手間がかかる |
| 向くケース・コストの目安 | 金額条件を付けたい販促や、短期で立ち上げたいキャンペーン。パッケージ改修費がかからない | 不正対策を重視する企画や、即時抽選を行いたい場合。印字・封入費が発生する | まとめ買い・継続購入を狙う企画。シール製作費と貼付の手間が発生する | パッケージ改修を避けたい場合。Web応募には向かず集計負荷が高い |
各方式の仕組みは消費者庁の運用基準で示された応募方法にもとづく。コスト・運用の目安は一般的な実務整理による。
近年はスマートフォンで完結するレシート応募とシリアル・QR応募が主流です。若年層にはWeb応募が、シニア層には郵送も選べる方式が向くなど、ターゲットの属性に合わせて応募導線を設計すると参加率を高められます。
応募方式の種類と使い分け
購買証明の方法を決めたら、当選をどう出すか(応募方式)を選びます。主な方式は、後日抽選・インスタントウィン・マイレージの3つです。
後日抽選
応募を締め切った後にまとめて抽選し、当選者に景品を届ける方式です。当選人数が少なく、高額の景品を用意する場合に多く使われます。応募期間中は結果が分からないため、期間を通じて購入と応募を促し続けられます。
インスタントウィン
応募したその場で当落が分かる方式です。結果がすぐ分かる手軽さから参加のハードルが下がり、少額の景品を多くの人に当てる企画に向いています。シリアルナンバーやQRコードと組み合わせやすく、当選後すぐに景品を受け取れる即時性も特徴です。
マイレージ(継続購入)
複数回の購入でポイントやシールを貯め、一定数に達すると景品に応募できる方式です。1回きりの購入で終わらせず、期間中のリピートやまとめ買いを促したい場合に向きます。レシートを複数枚アップロードして累積させる運用もあります。
景品表示法で設定できる景品の上限額
マストバイキャンペーンを設計するうえで最も注意したいのが、景品に設定できる金額の上限です。購入を条件に抽選で景品を提供する企画は景品表示法上の「懸賞」に当たり、景品類の最高額と総額に上限が定められています。
景品規制は、提供のしかたによって「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」の3つに区分されます。単独のメーカーやブランドが行う通常のマストバイキャンペーンは、原則として一般懸賞に当たります。3区分の上限額を一覧で示します。
ここでいう「取引価額」とは、原則として応募の条件となる購入の価額(対象商品の販売価格)を指します。「◯円以上の購入」を条件にする場合はその金額、複数個の購入を条件にする場合はその合計額が取引価額の目安になります。
| 一般懸賞 | 共同懸賞 | 総付景品 | |
|---|---|---|---|
| 対象・条件 | 購入を条件に抽選などで景品を提供(通常のマストバイはこれに該当) | 一定地域の小売・サービス業者の相当多数や商店街などが共同で実施する場合(成立要件あり) | 抽選によらず、購入者や来店者全員に景品を提供(もれなくプレゼント) |
| 景品類の最高額 | 取引価額5,000円未満:取引価額の20倍 取引価額5,000円以上:10万円 | 取引価額にかかわらず30万円 | 取引価額1,000円未満:200円 取引価額1,000円以上:取引価額の10分の2 |
| 景品類の総額 | 懸賞に係る売上予定総額の2% | 懸賞に係る売上予定総額の3% | 定めなし |
| 計算例 | 500円の商品購入が条件なら景品は最大10,000円(500円×20倍) | 商店街の共同企画など、要件を満たす場合に限り最大30万円 | 2,000円の商品なら景品は最大400円(2,000円×10分の2) |
景品の上限額は消費者庁の告示・運用基準にもとづく(出典は下記のリストを参照)。2026年10月時点。
一般懸賞の上限(取引価額の20倍・最高10万円)
通常のマストバイキャンペーンが該当する一般懸賞では、景品類の最高額は懸賞制限告示で次のように定められています。
懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の二十倍の金額(当該金額が十万円を超える場合にあつては、十万円)を超えてはならない。
出典:懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年公正取引委員会告示第3号)第2項|消費者庁
景品の最高額は取引価額の20倍まで、10万円を超える場合は10万円が上限です。取引価額が5,000円のときに20倍が10万円に達するため、消費者庁は取引価額5,000円を境に「5,000円未満は20倍まで」「5,000円以上は10万円まで」と整理しています。
たとえば「1,000円以上の購入」を応募条件にする場合は、取引価額1,000円として景品は最大20,000円(1,000円×20倍)までが目安です。
加えて、景品類の総額にも上限があります。
懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の百分の二を超えてはならない。
出典:懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年公正取引委員会告示第3号)第3項|消費者庁
「取引の予定総額」とは、運用基準で懸賞販売の実施期間中における対象商品の売上予定総額とされています。景品の総額は、この売上予定総額の2%以内に収める必要があります。
総付景品の上限(取引価額の10分の2・最低200円)
抽選ではなく、購入者全員にもれなく景品を渡す場合は「総付景品」に当たり、上限額の考え方が変わります。
一般消費者に対して懸賞(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和五十二年公正取引委員会告示第三号)第一項に規定する懸賞をいう。)によらないで提供する景品類の価額は、景品類の提供に係る取引の価額の十分の二の金額(当該金額が二百円未満の場合にあつては、二百円)の範囲内であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない。
出典:一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年公正取引委員会告示第5号)第1項|消費者庁
景品の上限は取引価額の10分の2(20%)まで、200円に満たない場合は200円が上限です。取引価額1,000円で20%が200円に達するため、消費者庁は「1,000円未満は200円まで」「1,000円以上は取引価額の10分の2まで」と整理しています。全員プレゼント型の企画を検討する場合は、抽選型の一般懸賞とは別のこの基準を確認してください。
共同懸賞の上限(30万円)と成立要件
複数の事業者が共同で実施する懸賞は「共同懸賞」として、一般懸賞より高い上限が認められます。景品類の最高額は取引価額にかかわらず30万円、総額は売上予定総額の3%までです。
前二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合において、懸賞により景品類を提供するときは、景品類の最高額は三十万円を超えない額、景品類の総額は懸賞に係る取引の予定総額の百分の三を超えない額とすることができる。
出典:懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年公正取引委員会告示第3号)第4項|消費者庁
ただし、共同懸賞は誰でも使える枠ではありません。懸賞制限告示第4項は、一定の地域の小売業者・サービス業者の相当多数が共同して行う場合や、商店街が共同して行う場合などに限って認めています。単独のメーカーやブランドが行う通常のマストバイキャンペーンは共同懸賞には当たらず、一般懸賞の上限(20倍・10万円)が適用される点に注意してください。
景品額は区分の判断を誤ると景品表示法違反につながるため、企画の初期段階で区分と上限を確認し、個別の判断に迷う場合は消費者庁の資料や専門家に確認することをおすすめします。
出典・参考資料(4件)
- 出典:景品規制の概要|消費者庁(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation/)
- 出典:懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年公正取引委員会告示第3号)|消費者庁(PDF)
- 出典:一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年公正取引委員会告示第5号)|消費者庁(PDF)
- 出典:「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準(平成24年消費者庁長官通達第1号)|消費者庁(PDF)
景品の選び方とデジタルギフトの活用
上限額の範囲内で、どんな景品を用意するかは参加率を大きく左右します。ここでは景品選びの考え方と、近年主流になっているデジタルギフトの活用について解説します。
景品に選ばれるものとデジタルギフトの利点
景品は高額であればよいわけではなく、応募のきっかけになる「買う理由」との相性が重要です。限定グッズや体験型の景品は話題性で引きつけ、金券やポイント・デジタルギフトは使い道の広さで多くの層に選ばれやすいという特徴があります。
自社の商材との相性で選ぶと効果が高まります。新商品の認知を広げたいなら話題性のある限定グッズや体験型、日用品や食品のように購入頻度が高い商材でリピートを促したいなら、少額でも使い道の広いデジタルギフトやポイントが向きます。いずれの場合も、景品の金額は前述の景品表示法の上限の範囲内で設定します。
なかでもデジタルギフトは、景品の準備と運用の負担を抑えられる点でマストバイキャンペーンと相性が良い選択肢です。URLやコードをメールで送れるため発送の手間や配送費がかからず、現物のような在庫リスクもありません。インスタントウィンと組み合わせれば、当選後すぐに景品を届けられる即時性も実現できます。
一方で、マストバイキャンペーンの運営には、応募の受付、レシートなど購買証明の確認、当選者への景品配布といった作業が伴います。これらを自社だけで回すと負荷が大きいため、景品の発行・配布や応募事務局を支援するサービスを使う企業が増えています。以下では、景品の配布に使える主なデジタルギフトサービスを比較します。
| サービス名 | あっとギフト(@gift) | デジコ(デジコギフト) | デジタルギフト® | dgift(ディーギフト) |
|---|---|---|---|---|
| 運営会社 | 株式会社ティーガイア | 株式会社DIGITALIO | 株式会社デジタルプラス | 株式会社デジマース |
| 取扱手数料 | 8%(商材により無料のものもあり) | 10%(税別) | 要問い合わせ(公式に非掲載) | 要問い合わせ(料率非公開) |
| 交換先の種類数 | 多数(総数は非公開) | 最大6,000種類 | 公式掲載16種類(総数は非公開) | 6,000点以上 |
| マストバイ関連機能 (レシート応募・抽選) | レシート認識・シリアル認識に対応 即時抽選に対応 | レシート判定・抽選機能は公式記載なし API即時発行でインスタントウィンに組込可 | レシート応募に対応 インスタントウィンに対応 | レシート応募は公式記載なし 即時抽選・インスタントウィンに対応 |
| 配布方法 | メール・SMSのURL/対面/API・CSV納品 | 管理画面URL/CSV/メール/API | メール・SNSなど/CSV一括発行 | メールURL/シリアルナンバー/API連携 |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
各社の公式サイトにもとづいています(2026年10月時点)。手数料・交換先の種類数・対応機能は変動するため、最新の条件は各社の公式資料で確認してください。
ここで取り上げた以外にも、法人向けのデジタルギフトは数多くあります。利用目的別の選び方や、より多くのサービスの料金・手数料をまとめて比較して景品を選びたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
法人向けデジタルギフトおすすめ25選|利用目的別の選び方と料金・手数料を比較
キャンペーンの景品やアンケートの謝礼、福利厚生のインセンティブを配るたびに、送り先の住所収集や商品の発送、在庫の管理に追われていませんか。受け取る側にとっても、後日郵送で届くより、その場でスマートフォンから受け取れる方が利便性は高くなってい…
ここからは、景品配布に使える主なデジタルギフトサービスを個別に紹介します。マストバイキャンペーンでの使いやすさ(レシート応募や抽選への対応)、取扱手数料、交換先の幅などから、自社の企画に合うものを検討してください。
あっとギフト(@gift)

あっとギフトは、株式会社ティーガイアが運営するデジタルギフトの発行・配布サービスです。商品購入キャンペーン向けの専用メニューを備え、景品配布だけでなくキャンペーン運営そのものを支えられる点が特徴です。
マストバイキャンペーンでは、レシート認識やシリアルナンバーによる応募、その場で結果が表示される抽選、LINE連携やアンケートといった機能に対応しています。短納期で応募サイトを立ち上げられるパッケージも用意されており、企画から配布までを一括で任せられます。
取扱手数料は8%で、商材によっては手数料が無料になるものも用意されています(初期費用はAPI連携を除き無料)。景品の交換先はAmazonギフトカード、QUOカードPay、PayPay、dポイント、au PAY、楽天ポイントなど幅広く、メール・SMS・対面での配布に対応します。
デジコ(デジコギフト)

株式会社DIGITALIOが提供するデジコは、1円単位で額面を設定できるデジタルギフトです。レシートキャンペーンをはじめとした販促用途に利用でき、導入実績は1,600社を超えます。
交換先は最大6,000種類にのぼり、PayPayマネーライトやAmazonギフトカード、QUOカードPay、各種ポイントなどから受け取る人が自由に選べます。発券手数料は10%(税別)で、初期費用・月額管理費は無料です。管理画面でギフトURLを発行して配布でき、APIを使えば当選と同時の即時発行も可能なため、インスタントウィン型の企画にも組み込めます。
デジタルギフト®

株式会社デジタルプラスが提供するデジタルギフト®は、法人向けのギフト配布サービスです。キャンペーン向けの機能として、インスタントウィン、レシート応募への対応、動画視聴やアンケート回答を条件にした配布などを公式に掲げています。
当選者への配布は、CSVで数千件分のギフトURLを一括発行し、メールやSNSなど希望の方法で届けられます。ロゴやバナー、メッセージを加えてキャンペーンの世界観に合わせることも可能です。費用はギフト金額に購入手数料と消費税を加えた形で、発行予定額を事前に銀行振込する前払い方式です(有効期限は発行から90日)。
dgift(ディーギフト)

株式会社デジマースが運営するdgiftは、商品購入キャンペーンでの利用を想定したデジタルギフトサービスです。6,000点以上のラインアップから景品を選べ、コンビニ商品やギフト券、金券などを景品に設定できます。
抽選では当たり・はずれの設定や当選確率の調整ができ、即時抽選・即時付与に対応します。配布は、メールのユニークURL、共通URLとシリアル入力の組み合わせ、API連携の3通りから選べます。料金は発行された分のみの支払いにも対応し、支払いは納品月の締め・翌月末払いです。
マストバイキャンペーンの実施手順と費用の考え方
ここまでの要素を踏まえ、実際にマストバイキャンペーンを進める手順と、費用をどう見積もるかを整理します。
実施手順(目的設定から効果検証までの5ステップ)
一般的には、次の5つのステップで企画を進めます。

- 目的と対象商品を決める:新商品の初回購入を促すのか、リピートを狙うのかなど、目的に応じて対象商品と応募条件(1点購入か、一定金額以上か)を設計します。
- 購買証明と応募方式を決める:レシート応募かシリアル応募か、後日抽選かインスタントウィンかを、ターゲットと目的に合わせて選びます。
- 景品を選定する:景品表示法の上限額の範囲内で、買う理由との相性を踏まえて景品を決めます。配布の手間を抑えたい場合はデジタルギフトが有力です。
- 告知し、応募を受け付ける:商品パッケージ、店頭POP、SNS、LINEなどを組み合わせて対象商品と応募条件を伝え、応募を受け付けます。
- 効果を検証する:売上や応募数に加え、応募条件や応募方式ごとの反応を振り返り、次回の企画に活かします。
費用の考え方(システム・景品・告知・事務局)
マストバイキャンペーンの費用は、おおむね次の4つの要素で構成されます。
- システム費:応募フォームやレシート確認の仕組み、インスタントウィンの抽選システムなどにかかる費用です。
- 景品費:景品そのものの金額と、デジタルギフトの場合は発行手数料(額面の数%〜10%程度が目安)です。
- 告知費:店頭POP、パッケージのシール、SNS広告など、対象商品と応募条件を知らせる費用です。
- 事務局費:応募の受付、購買証明の確認、当選者への連絡・配布を代行してもらう場合の費用です。
これらのうち、景品の発行・配布や事務局の作業は外部のサービスに任せられます。見積もりを取る際は、デジタルギフトなら発行手数料が景品費に含まれるか別建てか、現物景品なら発送費が景品費と二重に計上されていないかを確認すると、費用の全体像をつかみやすくなります。
実施時の注意点(不正応募対策・景表法の遵守)
レシート応募では、同じレシートの使い回しや画像の加工といった不正応募が起こり得ます。1枚のレシートにつき1回のみ応募可能とするルールの明示や、画像の確認体制を整えておくと安心です。応募件数が多い企画では、こうした確認を担える事務局やシステムの利用が現実的です。
あわせて、前述の景品表示法の上限額を必ず守ります。景品の最高額だけでなく、景品類の総額(売上予定総額に対する割合)も規制の対象であるため、応募数や当選人数を見積もる段階で総額が上限を超えないかを確認してください。
マストバイキャンペーンの成功事例
実際に公表されている実施例から、マストバイキャンペーンの進め方を見てみましょう。
アツギ株式会社は、2025年3月1日から4月30日まで「選べるデジタルギフト1,000円相当が当たるキャンペーン」を実施しました。店頭で購入した人は対象商品とレシートを一緒に撮影した画像を、オンラインショップで購入した人は注文確定メールのスクリーンショットをキャンペーンページから応募する形式です。
応募者の中から抽選で1,500名に、Amazonギフトカードやau PAY、dポイント、PayPay、Google Play、QUOカードPayなどから選べるデジタルギフト1,000円相当をプレゼントしました。店頭とオンラインの双方に応募導線を用意し、購買証明にレシートと注文確定メールの2通りを認める設計が特徴です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:アツギ「選べるデジタルギフト1,000円相当が当たるキャンペーン」プレスリリース(2025年2月26日)|アツギ株式会社(PDF)
成功事例に共通するポイント
マストバイキャンペーンで成果を上げるうえで共通して重要なのは、応募のハードルをできるだけ下げることです。スマートフォンでレシートを撮影して送るだけで完結する導線や、店頭・オンラインの双方からの応募受付は、参加の手間を減らします。購入を重ねるほど応募機会が増えるマイレージ型も、継続購入を促す有効な設計です(不正防止の観点から、1枚のレシートにつき応募は1回とするのが原則です)。
景品にデジタルギフトを選び、受け取る側が交換先を選べるようにするのも有効です。発送の手間と配送費を抑えつつ、当選者の満足度を高められます。自社で企画する際も、応募導線の手軽さと景品の選びやすさを軸に設計すると、参加率を高めやすくなります。
まとめ
マストバイキャンペーンは、商品の購入を応募条件とすることで売上に直結させやすい販促手法です。設計では、購買証明の方法(レシート・シリアル・シール・バーコード)と応募方式(後日抽選・インスタントウィン・マイレージ)を目的に合わせて選び、景品表示法の上限額(通常のマストバイは一般懸賞で、取引価額の20倍・最高10万円、総額は売上予定総額の2%)を必ず守ることが出発点になります。
景品には、発送の手間や在庫リスクを抑えられ、当選後すぐに届けられるデジタルギフトが有力な選択肢です。応募の受付や景品配布の負荷を抑えたい場合は、キャンペーン運営を支援するサービスの活用も検討してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. マストバイキャンペーンとは何ですか?
A. マストバイキャンペーンとは、対象商品の購入を応募条件とする販促キャンペーンです。「Must Buy(購入が必須)」の名のとおり、商品を買った人だけがレシートやシリアルナンバーで購入を証明して景品に応募できる仕組みで、SNSのフォローだけで誰でも参加できるオープンキャンペーンと対になります。参加者を購入者に限定するため、売上そのものを押し上げやすい点が特徴です。
Q. マストバイキャンペーンとオープンキャンペーンの違いは何ですか?
A. マストバイキャンペーンとオープンキャンペーンの違いは、応募に商品の購入(購買証明)が必要かどうかです。マストバイキャンペーンは購入者だけが応募できるクローズド型で景品表示法の景品額の上限が適用されるのに対し、オープンキャンペーンは購入不要で誰でも参加でき、景品額の上限の定めがありません。売上に直結させたいならマストバイ、認知拡大や参加者数の確保を優先したいならオープンが向きます。
Q. マストバイキャンペーンは景品表示法の対象になりますか?
A. マストバイキャンペーンは、景品表示法上の「懸賞」として規制の対象になります。購入者を対象に抽選で景品を提供する企画は、消費者庁の告示にもとづき原則として一般懸賞に当たり、景品の最高額と総額に上限が課されます。区分の判断を誤ると景品表示法違反につながるため、企画の初期段階で区分と上限額を確認しておくことが必要です。
Q. マストバイキャンペーンの景品はいくらまで設定できますか?
A. 通常のマストバイキャンペーン(一般懸賞)では、景品の最高額は取引価額が5,000円未満なら取引価額の20倍、5,000円以上なら10万円までで、景品の総額は懸賞に係る売上予定総額の2%以内に収める必要があります。たとえば500円の商品の購入が条件なら、景品は最大10,000円です。
抽選によらず購入者全員に渡す総付景品の場合は別基準(取引価額1,000円未満は200円、1,000円以上は取引価額の10分の2)、要件を満たす共同懸賞の場合は30万円までとなります。
Q. レシート応募とシリアル応募は、どちらが向いていますか?
A. マストバイキャンペーンの購買証明は、手軽に短期間で立ち上げたいならレシート応募、不正対策やその場で結果が出るインスタントウィンを重視するならシリアル応募が向きます。
レシート応募はパッケージの加工が不要で「○円以上の購入」といった金額条件を付けやすい一方、シリアル応募は番号の印字・封入にコストがかかるものの使い回しを防ぎやすく、即時抽選と相性が良い点が違いです。ターゲットの年齢層や企画の目的に合わせて選びます。
Q. マストバイキャンペーンで不正応募を防ぐにはどうすればよいですか?
A. マストバイキャンペーンの不正応募対策の基本は、1枚のレシートにつき1回のみ応募可能とするルールの明示と、応募画像を確認する体制の整備です。同じレシートの使い回しや画像の加工を防ぐには、一意に識別できるシリアルナンバーやQRコードを使う方式が有効です。応募件数が多い企画では、こうした確認を担える事務局やシステムを利用するのが現実的です。
Q. オンラインショップ(EC)での購入もマストバイキャンペーンの対象にできますか?
A. マストバイキャンペーンは、店頭だけでなくオンラインショップでの購入も対象にできます。ECでは紙のレシートが出ないため、注文確定メールや購入履歴のスクリーンショットを購買証明として認める設計が一般的です。店頭とオンラインの双方に応募導線を用意し、それぞれに合った証明方法を認めると、販売チャネルを問わず幅広い購入者が参加できます。
Q. マストバイキャンペーンの費用や実施期間の目安はどのくらいですか?
A. マストバイキャンペーンの費用は、システム費・景品費・告知費・事務局費の4つで構成され、なかでも景品費(景品額×当選人数)が中心になります。景品の総額は売上予定総額の2%以内という規制があるため、当選人数と景品額は売上見込みから逆算して設計します。実施期間は、告知・応募受付・抽選・景品配布といった工程を見込み、数週間から数か月の幅で組むのが一般的です。
Q. マストバイキャンペーンの事務局を外注するメリットは何ですか?
A. 事務局を外注する最大のメリットは、応募受付・購買証明の確認・当選者への連絡や景品配布といった運用負荷を自社で抱えずに済むことです。とくにレシート画像の確認や不正応募のチェックは応募件数が増えるほど手間がかかるため、専用のシステムや事務局に任せると、担当者は企画や販促の設計に集中できます。景品の発行・配布だけを外部サービスに切り出して利用することもできます。
Q. マストバイキャンペーンの景品にデジタルギフトを使うと、個人情報の取り扱いはどうなりますか?
A. 景品にデジタルギフトを使うと、当選者の住所を集めずにURLやコードをメールやSMSで配布でき、個人情報の取り扱いを最小限に抑えられます。現物の景品では配送のために住所の収集・管理が必要になりますが、デジタルギフトなら発送の手間や配送費がかからず、在庫リスクも生じません。当選後すぐに景品を届けられる即時性も利点です。
Q. 景品類の総額が上限を超えそうな場合は、どう調整すればよいですか?
A. 景品の総額が上限を超えそうな場合は、当選人数を減らすか、景品1点あたりの金額を下げて、売上予定総額の2%(一般懸賞の場合)以内に収めます。景品表示法では景品の最高額だけでなく総額(売上予定総額に対する割合)も規制されるため、応募数や当選人数を見積もる段階で総額が上限を超えないかを確認してください。売上予定総額を過大に見積もらないことも、総額規制を守るうえで大切です。
Q. マストバイキャンペーンの言い換え・類義語にはどのようなものがありますか?
A. マストバイキャンペーンは、「クローズドキャンペーン」や「購入応募キャンペーン」などと言い換えられます。購入を応募条件とするキャンペーン全般を指すクローズドキャンペーンの一種で、購買証明の方法に応じてレシートキャンペーンやシリアルキャンペーンなどと呼ばれることもあります。いずれも、商品の購入を応募条件とする販促という点は共通です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















