保険業界では、顧客接点のオンライン化から保険金支払いの自動化、商品開発の迅速化、そしてレガシー基幹システムの刷新まで、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが各社で広がっています。
一方で、「保険業界のDXとは具体的に何をすることなのか」「他社は実際に何に着手しているのか」がつかめず、自社でどこから手をつければよいか迷う担当者は少なくありません。全体像と他社の実例が見えて初めて、自社の打ち手の見当がつきます。
本記事では、保険会社の実際のDX取り組み事例を生命保険・損害保険・ネット系の別に整理したうえで、保険DXの定義と背景、推進の課題、進め方を解説します。あわせて、課題の中心にあるレガシー基幹システムの刷新を担う保険会社向けのシステムも紹介します。
目次
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保険会社の実際のDX取り組み事例
まず、保険会社が実際にどのようなDXに取り組んでいるのかを、生命保険・損害保険・ネット系の別に見ていきます。健康増進を保険料に反映する新しい商品、走行データを使った自動車保険、保険金支払いや顧客対応のデジタル化など、取り組みの切り口は多岐にわたります。自社に近い類型から、着手の糸口を探してみてください。
| 保険会社 | 住友生命保険 | 第一生命保険 | ライフネット生命保険 | あいおいニッセイ同和損害保険 |
|---|---|---|---|---|
| 区分 | 生命保険 | 生命保険 | ネット系(生命保険) | 損害保険 |
| 主な取り組み | 健康増進型保険「Vitality」 | 健康増進アプリ「健康第一」 | オンライン完結の生命保険 | テレマティクス自動車保険 |
| 内容 | 運動や健康診断などの取り組みを評価し、保険料に反映。標準プランは1年目の保険料を15%割引し、以降は取り組みに応じて割引率が変動(上限30%) | 歩数や健康診断結果の記録と、保険契約者情報の連携に対応。2017年3月の提供開始から6か月でアプリダウンロード数ランキング1位となった | 申し込みから解約までをインターネットで完結でき、保険金・給付金の請求もオンラインに対応。申し込み時に医師の診査は不要で、ウェブ上の告知で手続きを進められる | 加入者の走行データにデジタル技術を組み合わせ、事故を未然に防ぐことや事故後の早期回復を支えるサービスを、社会課題の解決と結びつけて展開 |
※各社の公表情報をもとに主な取り組みを整理したものです。各社の最新の内容は公式情報をご確認ください。
出典・参考資料(4件)
これらの事例に共通するのは、単なる業務の効率化にとどまらず、顧客との接点や保険商品そのものをデジタルで作り替えている点です。ここからは、こうした取り組みをまとめて指す「保険DX」とは何かを整理します。
保険DXとは
保険DXとは、デジタル技術を使って保険業務や顧客体験、ビジネスモデルを変革する取り組みを指します。紙や対面を前提とした従来の業務をデジタルに置き換えるだけでなく、データやデジタル技術を起点に、新しい商品や収益の仕組みをつくり出すところまでを含む広い概念です。
その広がりは、業界全体の取り組み状況にも表れています。情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2023」によると、DXに取り組む企業の割合は2022年度調査で69.3%に達し、なかでも金融業・保険業は5割前後と、全産業平均の2割強を上回っています。
出典・参考資料(1件)
保険DXが目指す3つの領域
保険DXが目指すものは、大きく3つの領域に分けて捉えると整理しやすくなります。
- 業務効率化:引受査定や保険金支払い、契約保全、収納などの事務をデジタル化し、処理のスピードと正確性を高める
- 顧客体験の向上:申し込みや各種手続きをオンラインで完結できるようにし、問い合わせ対応やアフターフォローの質を高める
- 新しい商品・ビジネスモデル:健康増進型保険やテレマティクス保険、他業種のサービスに保険を組み込む仕組みなど、従来にない保険のあり方を生み出す

前章で見た事例も、この3つの領域のいずれか、あるいは複数にまたがります。業務効率化だけを保険DXと捉えると、商品やビジネスモデルを変える取り組みを見落としかねません。
InsurTechや従来のIT化との違い
保険DXと近い言葉に、InsurTech(インシュアテック)があります。InsurTechは「Insurance(保険)」と「Technology(技術)」を組み合わせた言葉で、AIやデータ分析といった技術を保険に応用する動きそのものを指します。保険DXは、こうした技術を使って業務や事業のあり方を変革していく取り組みを指す、より広い概念と捉えると区別しやすくなります。
AIやデータ分析を保険に応用するInsurTech企業が、国内外で具体的にどのような顔ぶれなのかは、以下の記事でジャンル別に整理しています。
インシュアテック企業一覧|国内・海外の主要企業をジャンル別に紹介
「インシュアテック」という言葉は耳にするものの、実際にどんな企業があるのか、具体的な社名まではすぐに思い浮かばないという方は多いのではないでしょうか。新規事業や企画の検討で「注目されている企業の顔ぶれ」を押さえたいとき、まず知りたいのは定義…
従来のIT化との違いもあります。これまでのIT化は、既存の業務をそのままシステムに置き換えて効率を上げることが主眼でした。保険DXでは、業務の進め方や商品そのものをデジタル前提で作り替える点に重心があり、効率化はその一部という位置づけになります。
なぜ今、保険DXが必要なのか
保険DXが各社で進む背景には、業界を取り巻く環境の変化があります。主な要因は次のとおりです。
- 少子高齢化と国内市場の縮小:従来型の保険の需要が頭打ちとなり、新しい顧客層や商品で成長を描く必要が高まっている
- 顧客ニーズの多様化とデジタル接点の拡大:オンラインでの情報収集や手続きが当たり前になり、デジタルでの接点づくりが欠かせなくなっている
- 人手不足と生産性向上の必要性:事務や査定を担う人材の確保が難しくなり、業務の自動化・効率化が急がれている
- 異業種からの参入と競争の激化:IT企業や事業会社が保険領域に参入し、組込型保険などで新しい売り方が広がっている
- 顧客本位の業務運営への対応:金融庁が「顧客本位の業務運営に関する原則」を定めており(2017年策定、以降改訂)、顧客の立場に立ったサービス提供がより強く求められている
出典・参考資料(1件)
保険DXの課題
保険DXを進めるうえでは、いくつかの壁があります。ここでは、保険会社が直面しやすい代表的な課題を整理します。
レガシーシステム=「2025年の崖」
最も解決が難しい課題が、長年の改修を重ねて複雑化・老朽化した基幹システム(レガシーシステム)です。契約管理や保険金支払いといった中核業務が古いシステムに依存していると、新商品の開発やデジタル販売への対応に時間とコストがかかり、DXの足かせになります。
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」は、複雑化・ブラックボックス化した基幹システムを刷新できないまま2025年以降を迎えることで生じる経済的な損失を「2025年の崖」と名付け、企業に刷新を促しました。保険業界においても、基幹システムの刷新は多くの会社に共通するテーマです。
紙・対面文化とデジタル格差
申込書や各種手続きが紙と対面を前提に組まれている業務は、保険業界に多く残っています。これをデジタルに置き換えるには、業務プロセスそのものの見直しが必要です。あわせて、デジタルに不慣れな顧客や代理店が取り残されないよう、オンラインと対面を併用する設計も求められます。
データの分断と活用の遅れ
契約・請求・顧客の情報が部門ごとのシステムに分かれていると、全社で横断的にデータを活用しにくくなります。顧客ニーズの分析や、健康増進型・運転分析型といったデータ起点の商品開発を進めるには、分断されたデータを連携・統合できる基盤が前提になります。
セキュリティ・個人情報保護
保険会社は、健康状態や資産状況など機微な個人情報を大量に扱います。手続きのオンライン化やデータ活用を進めるほど、情報漏えいや不正アクセスへの備えが重要になります。本人確認や通信の暗号化、アクセス管理などのセキュリティ対策は、DXと並行して強化する必要があります。
DX人材・組織文化
DXを推進するには、デジタルと保険業務の双方を理解する人材が欠かせません。しかし、こうした人材は社内に不足しがちで、採用や育成、外部パートナーとの連携が課題になります。あわせて、現行の進め方を前提とする組織文化を、新しい取り組みを試せる形へ変えていくことも求められます。
保険DXの進め方
課題を踏まえると、保険DXは一度にすべてを変えようとするのではなく、順を追って進めるのが現実的です。ここでは、最初の一歩からの進め方を4つの段階で整理します。
まず着手したいのが、現状の可視化とボトルネックの特定です。どの業務に時間がかかり、どのシステムが刷新の足かせになっているのかを洗い出し、優先して取り組む領域を見極めます。次に、紙・帳票の電子化など着手しやすい領域から始めます。申込書のデジタル化や問い合わせ対応のオンライン化は、効果を実感しやすく、社内の理解も得やすい入り口です。
続いて、小さく試して検証する段階に進みます。特定の商品や業務に絞って新しい仕組みを導入し、効果を確かめてから広げることで、大規模な失敗を避けられます。そのうえで、全社展開とデータ基盤の整備へと広げます。試した仕組みを他の業務にも展開し、分断されていたデータを連携できる基盤を整えることで、DXの効果が全社に行き渡ります。

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この進め方の土台になるのが、課題の中心にあった基幹システムの刷新です。次章では、保険会社向けのシステムを使って基幹をどう作り替えられるのかを見ていきます。
レガシー基幹システムの刷新=保険会社システムのDX
保険DXの土台となり、多くの課題の起点でもあるのが、基幹システムの刷新です。近年は、既存の基幹システムをすべて置き換えるのではなく、API連携やマイクロサービス(機能を小さな部品に分けて組み合わせる設計)を使う方法が広がっています。既存システムと共存しながら、必要な機能だけをデジタル化できる保険会社向けのシステムが登場しています。
刷新のアプローチには幅があり、自社の事情によって向く型が変わります。稼働中の基幹システムを止められない場合は、必要な機能だけを既存システムと連携させて追加したり、既存の基幹の上位にAPIの層を重ねて新商品やデジタル販売を先に立ち上げたりする方法が取りやすくなります。
一方、新規事業や少額短期保険のようにまっさらな環境で立ち上げる場合は、商品開発から契約管理、保険金の支払いまでを一つの基盤でまかなう方法が選択肢になります。
以下では、代表的な保険会社向けシステムを、こうした刷新アプローチの違いがわかるように紹介します。
各サービスの対応範囲や導入形式をさらに詳しく比較し、生命保険・損害保険といった業態別の選び方や導入事例まで確認したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
以下は、ここで紹介する保険会社向けシステムの比較表です。
| サービス名 | Graphene・Nano | Inspire | InsureMO | joinsure |
|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | リードインクス株式会社 | 株式会社Finatext(Finatextグループ) | InsureMO株式会社 | 株式会社justInCaseTechnologies |
| 提供形態 | PaaS(Graphene)/SaaS(Nano) | SaaS | PaaS(保険ミドルオフィス/API基盤) | SaaS |
| 対応保険分野 | 損保・生保・第三分野・ペット保険など(少額短期から積立保険まで導入実績) | 第一〜第三分野すべて(生保・損保・少短・共済) | 生保・損保・医療・共済・少額短期など(グローバル本体) | 少額短期・生命保険・損害保険 |
| 刷新・導入アプローチ | 既存と連携(インテグレート型)/別建て(併存型)/新規基幹(基幹システム型)の3形式から選択 | 包括パッケージのほか、機能単体導入(Inspire Select)・ローコードでの迅速立ち上げ(Inspire Express)・少短/共済向けパッケージを選択。既存システムの活用も可 | 既存基幹を入れ替えず、その上位にAPI・マイクロサービス層を重ねて最新化(保険ミドルオフィス) | 基幹システムとして全体導入、または申込フォームのみ単独導入(既存システムと併用)。少短の設立・商品開発支援も提供 |
| 主な対応業務 | 商品開発・申込・引受査定・契約管理・保全・保険金の請求と支払い・会計・決算帳票 | 見積・申込・引受査定・契約管理・保全・保険金請求・更改。API連携で複数保険会社の商品を組み込み | 申込・契約管理・保険金請求・決済などをマイクロサービス(アトミックAPI)化し、必要な部品を組み合わせて利用 | 申込・契約者ポータル・保険金請求と、管理コンソールでの引受査定・契約管理・保全・収納管理・支払査定 |
| 料金 | 初期費用・月額とも要問い合わせ | 初期費用・月額とも要問い合わせ | 初期費用・月額とも要問い合わせ | 初期費用・月額とも要問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
1. Graphene・Nano(リードインクス株式会社)

ソフトバンクの100%子会社であるリードインクス株式会社が提供する、保険会社向けのデジタル保険プラットフォームです。APIベースのマイクロサービス構成を採り、PaaS型の「Graphene」とSaaS型の「Nano」として提供されています。
保険商品の開発から契約管理、保全、保険金の請求・支払い、会計・決算帳票までを一つの基盤で扱えるのが特徴です。既存システムと連携して必要な機能だけを使う形から、新規事業の基幹として使う形まで、3つの導入形式を用意しています。既存の基幹システムを残したまま、段階的に刷新を進められる点が導入のしやすさにつながります。
住友生命保険の積立保険「Chakin」では、責任準備金・積立金の算出や決算機能を提供しています。MSプラスワン少額短期保険では基幹システムとして採用され、一定の条件下で請求から保険金の受け取りまでを約5分に短縮した事例も公表されています。損害保険ジャパンや東京海上日動、三井住友海上が手がける組込型保険の引受側システムとしても稼働しています。
2. Inspire(株式会社Finatext)

東証グロース市場に上場するFinatextホールディングス傘下の株式会社Finatextが、2020年から提供するSaaS型のデジタル保険基幹システムです。生命保険・損害保険・第三分野のいずれの商品にも対応し、見積もり・申込・引受査定・契約管理・保険金請求・更改といった保険業務をワンストップで扱えます。
Webサービスやアプリに保険を組み込む「組込型保険」の基盤として使われている点が特徴で、事業会社が自社の顧客導線に保険加入のフローを組み込めます。三菱UFJ銀行の資産形成サービス内の保険プラットフォームとしての稼働実績もあります。
立ち上げ期間を短縮するパッケージも展開しています。少額短期保険会社・共済向けにテンプレート化した「Inspire for 少短/共済」では最短2週間での立ち上げを、ローコードの「Inspire Express」では約8週間での構築を掲げています。
3. InsureMO(InsureMO株式会社)

老朽化した基幹システムを入れ替えずに、その上位にAPI・マイクロサービスの層を重ねることで、新しい保険商品やデジタル販売チャネルを短期間で立ち上げられるようにする「保険ミドルオフィス」基盤です。公式には「API・データ・AIを支える保険ミドルオフィス・プラットフォーム」と位置づけられています。
申し込み・支払い・契約管理・保険金請求といった保険業務を部品化したマイクロサービスとして用意し、API経由で組み合わせて利用します。ノーコードで保険商品を設定できるエンジンや、組込型保険への対応を備え、既存の基幹システムを止めずに段階的に最新化する用途に向いています。保険会社向けだけでなく、保険を組み込みたい異業種や、複数の引受会社を扱う代理店まで、幅広い利用者を想定しています。
同社がマイクロサービス型のプラットフォームを開発した背景について、InsureMO株式会社の河上氏は、従来提供していたパッケージ製品からの転換の経緯を次のように語っています。

背景には、当社のCEOの大きな決断があります。私たちはもともと、保険会社向けにパッケージ製品を提供していました。当時としては評価いただいていた製品なのですが、モノリシックの仕組みである以上、改修するとあちこちに影響が出ますし、カスタマイズも基本的にしたくないしすべきではない。そうすると、お客様としては「やりたいことができない」「カスタマイズで費用がかかる」「保守が難しい」となってしまうわけです。これは結局、お客様を幸せにしないとCEOが判断しまして、思い切ってそのパッケージは販売停止にしました。そのうえで、マイクロサービスを組み合わせて構築する全く新しいプラットフォームとしてInsureMOを作り直したという経緯です。
4. joinsure(株式会社justInCaseTechnologies)

デジタルで完結する保険の立ち上げを、システムの提供と、保険事業の設立・商品開発の支援を組み合わせて支えるサービスです。保険の引受から支払査定までを担うシステム機能に、少額短期保険の設立コンサルティングや商品開発、保険数理のサポートを組み合わせて提供しています。
2026年2月にはau少額短期保険への提供を開始し、第1弾として月額190円の「スマホ保険」を立ち上げました。AIを使った保険販売支援の機能も展開しており、デジタル前提で新しい保険事業を立ち上げたい事業者の選択肢となります。
海外の保険DX先行事例
保険DXの先行例として、海外の動きも参考になります。米国のInsurTech企業Lemonadeは、AIを使った保険金支払いを早くから実装してきました。
同社が自社ブログで公表している2016年末の請求事例では、保険金請求を処理するAI「A.I. Jim」が、請求内容を契約内容と照合し、18種類の不正検知アルゴリズムを実行したうえで承認しました。そして、銀行への送金指示までを3秒で完了したとされています。
保険金支払いという保険業務の中核を、人を介さずに即時で処理する仕組みは、海外で先行して実装された事例です。前章で紹介した国内のシステムでも、AIと支払い判定ロジックを組み合わせた査定の自動化が進んでおり、海外の先行例と連続した動きが国内でも広がりつつあります。
出典・参考資料(1件)
まとめ
保険DXは、業務の効率化にとどまらず、顧客体験や保険商品そのものをデジタルで作り替える取り組みです。健康増進型保険やテレマティクス保険、保険金支払いの自動化など、生保・損保を問わず各社が具体的な一歩を踏み出しています。
その推進を阻む最大の課題が、複雑化・老朽化した基幹システムです。対策の出発点は、現状を可視化して着手しやすい領域から段階的に進めることにあり、その土台となるのが基幹システムの刷新です。既存システムと共存しながら必要な機能だけをデジタル化できる保険会社向けのシステムも登場しており、自社の課題に合う選択肢を比べることが、保険DXを前に進める近道になります。
基幹システムの刷新やデジタル保険基盤の導入を検討する際は、各サービスの資料を取り寄せ、対応範囲・導入形式・費用を並べて確認することから始めるのが確実です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 保険DXとは何ですか?
保険DXとは、デジタル技術を使って保険業務や顧客体験、ビジネスモデルそのものを変革する取り組みです。紙や対面を前提とした業務をデジタルに置き換えるだけでなく、データやデジタル技術を起点に新しい商品や収益の仕組みをつくり出すところまでを含む広い概念です。業務効率化・顧客体験の向上・新しい商品/ビジネスモデルという3つの領域で捉えると整理しやすくなります。
Q. 保険DXとInsurTech(インシュアテック)はどう違いますか?
保険DXとInsurTechの違いは、InsurTechがAIやデータ分析などの技術を保険に応用する動きそのものを指すのに対し、保険DXはその技術を使って業務や事業のあり方を変革していく、より広い取り組みを指す点にあります。InsurTechは保険DXを支える手段の一つと位置づけると、両者を区別しやすくなります。
Q. 保険DXは従来のIT化と何が違いますか?
保険DXと従来のIT化の違いは、従来のIT化が既存業務をそのままシステムに置き換えて効率を上げることを主眼とするのに対し、保険DXは業務の進め方や商品そのものをデジタル前提で作り替える点に重心があることです。保険DXにおいて、効率化は全体の一部という位置づけになります。
Q. 保険DXは何から始めればよいですか?
保険DXは、まず現状を可視化してボトルネックを特定し、紙・帳票の電子化など着手しやすい領域から始めるのが現実的です。そのうえで特定の商品や業務に絞って小さく試し(スモールスタート)、効果を確かめてから全社展開とデータ基盤の整備へ広げると、大規模な失敗を避けられます。一度にすべてを変えようとせず、順を追って進めるのが要点です。
Q. 保険DXの課題であるレガシー基幹システムの刷新は、どう進めればよいですか?
レガシー基幹システムの刷新は、すべてを一度に置き換えるのではなく、API連携やマイクロサービスを使って既存システムと共存しながら、必要な機能だけをデジタル化する方法が選択肢になります。近年は、こうした段階的な刷新を支える保険会社向けのシステムが登場しています。
保険商品の開発から契約管理、保全、保険金の請求・支払いまでを一つの基盤で扱えるものや、既存基幹の上位にAPIの層を重ねて新商品やデジタル販売を素早く立ち上げられるものなど、刷新のアプローチには幅があります。自社の課題に合う対応範囲・導入形式を比べることが出発点になります。
Q. 既存の基幹システムを残したまま保険DXを進められますか?
既存の基幹システムは、残したまま段階的にデジタル化を進められます。既存基幹と連携して必要な機能だけを使う形式や、既存とは別建てで新しい仕組みを立ち上げる形式を用意する保険会社向けシステムがあり、老朽化した基幹を止めずに最新化できます。一気に全面刷新するリスクを抑えながら進めたい場合に向いています。
Q. 中小規模の保険会社や少額短期保険会社でも保険DXに取り組めますか?
中小規模の保険会社や少額短期保険会社でも、立ち上げ期間や対応範囲を絞ったパッケージを使えば保険DXに取り組めます。少額短期保険・共済向けにテンプレート化して短期間での立ち上げを掲げるシステムや、少額短期保険の設立コンサルティング・商品開発・保険数理のサポートまで組み合わせて支援するサービスもあり、規模の大小にかかわらず着手できます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















