契約書や領収書に収入印紙を貼ったとき、このハンコをどこに・どう押すのが正しいのか、会社の角印でよいのか、担当者の自分が押していいのか迷う場面は少なくありません。収入印紙に押すこの印は、実務では「割印」と呼ばれますが、印紙税法上の正式名称は「消印(けしいん)」です。
本記事では、収入印紙の割印(消印)を押す正しい位置と押し方、誰がどんな印鑑・署名で押せるのかを、国税庁の公式見解と印紙税法の条文にもとづいて整理します。あわせて、押し忘れたり失敗したりしたときにどうなるのか(過怠税と対処)も解説します。
あわせて、紙の契約書をやめて電子契約にすると、収入印紙も割印もそもそも不要になる仕組みについても解説します。手元の1枚を正しく処理するところから、印紙や割印の手間自体を減らす方法まで、まとめて確認できます。
目次
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収入印紙の割印(消印)とは|まず結論
収入印紙に押す「割印」は、印紙税法では「消印(けしいん)」と呼ばれます。目的は、貼った収入印紙を使用済みにして、はがして再び使われることを防ぐことです。押し方の結論は、収入印紙と文書(台紙)の境目にまたがるように、はっきりと押すこと。これは慣習ではなく、印紙税法で定められた義務です。
課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。
出典:印紙税法 第8条第2項|e-Gov 法令検索
条文にある「彩紋(さいもん)」とは収入印紙の模様の部分で、「彩紋とにかけ」が印紙と文書の境目にまたがって押すこと、「判明に」が誰が消したか分かるようはっきり押すことを指します。実務でいう「割印」と、条文でいう「消印」は同じものです。国税庁も収入印紙に押すこの印についての解説を「印紙の消印の方法」として示しています。
収入印紙の割印を押す位置と正しい押し方
収入印紙を貼る位置や割印を押す位置に、法令上の決まった場所の定めはありません。契約書では左上の余白、領収書では収入印紙の貼付欄や空いている余白に貼るのが一般的です。大切なのは場所そのものよりも、次の点を満たして押すことです。
- 収入印紙と文書(台紙)の境目にまたがるように押す(印紙の中だけ、文書の余白だけに押すと消印になりません)
- 誰が消したか分かるよう、にじみ・かすれのない鮮明な印影で押す
- 収入印紙を複数枚貼るときは重ねず、1枚ずつ文書との境目にまたがるように押す

国税庁も、印紙と文書の彩紋にかけて判明に消すことを消印の方法として示しています。押す位置に決まりはないものの、「印紙と文書にまたがって・はっきりと」という2点を外さなければ、どの位置でも問題ありません。
出典・参考資料(1件)
収入印紙の割印は誰が・何で押せるか
社長でないと押せないのか、会社の角印やシヤチハタでよいのか、手書きのサインでもよいのか——こうした迷いは、印紙税法施行令と国税庁の公式見解で解消できます。
誰が押せるか(担当者でよい・当事者全員でなくてよい)
消印は、文書の作成者本人に限らず、その代理人や従業員が押しても構いません。印紙税法施行令第5条は、消印は「自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない」と定めています。法人の代表者も含まれますが、代表者に限定されているわけではなく、経理や総務の担当者が自分の印章・署名で消しても有効です。
契約書を2者で取り交わす場合も、当事者全員が押す必要はありません。収入印紙を貼った文書を複数人で共同して作成したときは、作成者のうち1人が消せばよいとされています(印紙税法基本通達第64条)。実務では双方が押す慣例もありますが、法律上は1人分で足ります。
出典・参考資料(2件)
使える印鑑・署名
消印に使う印章の種類に決まりはありません。実印である必要はなく、認印・角印・ゴム印・日付印などで構いません。印章の代わりに署名(自署)で消すことも認められています。
印紙を消す方法は、文書の作成者又は代理人、使用人その他の従業者の印章又は署名によることになっています(令第5条)。
それに使用する印章は通常印判といわれているもののほか、氏名、名称などを表示した日付印、役職名、名称などを表示したゴム印のようなものでも差し支えありません(基通第65条)。
出典:印紙の消印の方法|国税庁
公式に認められているのは「氏名・名称等を表示した印」までで、認印やゴム印はこれに含まれます。いわゆるシヤチハタ(インク浸透印)も、氏名や社名が表示されていれば同様に使えると考えられますが、条文・通達が明示しているのは「氏名、名称等を表示した印」という範囲までです。署名で消す場合は、油性ボールペンなど簡単に消えない筆記具を使います。
消印として認められないNG例
一方で、次のような方法は消印として認められません。「割印に二重線を引いてよいか」といった疑問も、ここで整理できます。
- 単に「印」という文字を書いただけ、記号を書いただけ
- 斜線や二重線を引いただけ
- 鉛筆など、簡単に消し去ることができる筆記具での署名
単に「印」と表示したり斜線を引いたりしてもそれは印章や署名には当たりませんから、消印したことにはなりません。
鉛筆で署名したもののように簡単に消し去ることができるものは、消印をしたことにはなりません。
出典:印紙の消印の方法|国税庁
収入印紙の割印を押し忘れた・失敗したときの過怠税と対処
収入印紙に関するペナルティには、印紙そのものを貼り忘れた「不納付」の場合と、貼ったものの消印(割印)を忘れた「消印漏れ」の場合があり、課される過怠税が異なります。両者は混同されがちなので、分けて確認します。
貼り忘れ(不納付)と消印漏れの過怠税の違い
| 状況 | 収入印紙を貼り忘れた(不納付) | 調査で指摘される前に自主的に不納付を申し出た | 収入印紙は貼ったが消印(割印)を忘れた(消印漏れ) |
|---|---|---|---|
| 過怠税の額 | 納付しなかった印紙税額と、その2倍との合計額(=印紙税額の3倍) | 印紙税額と、その10%相当額との合計額(=1.1倍に軽減) | 消されていない収入印紙の額面金額に相当する金額 |
| 根拠 | 印紙税法第20条第1項 | 印紙税法第20条第2項 | 印紙税法第20条第3項 |
特に、収入印紙を貼っても消印(割印)を忘れた「消印漏れ」は見落とされやすく、消されていない収入印紙の額面金額に相当する金額が過怠税として徴収されます。
第八条第一項の規定により印紙税を納付すべき課税文書の作成者が同条第二項の規定により印紙を消さなかつた場合には、当該印紙税の納税地の所轄税務署長は、当該課税文書の作成者から、当該消されていない印紙の額面金額に相当する金額の過怠税を徴収する。
出典:印紙税法 第20条第3項|e-Gov 法令検索
これらの過怠税は収入印紙を貼る側(文書の作成者)に課され、受け取る側に負担はありません。また、過怠税の合計額が1,000円に満たない場合は1,000円とされます(印紙税法第20条第4項)。
出典・参考資料(1件)
にじみ・失敗したときの対処
押した割印がにじんだ、かすれた、欠けてしまった場合は、空いている別の位置にもう一度押し直せば問題ありません。同じ場所に重ねて押すと印影が不鮮明になり、消したことが分かりにくくなるため避けます。失敗した印影を二重線で訂正する必要もありません。
消印(割印)を押し忘れたことに後から気づいた場合は、気づいた時点で消印すれば問題ありません。消印をする時期について法令上の期限の定めはなく、文書を作成した後でも消しておけば消印漏れの状態を解消できると考えられます。消印をしないまま放置し、税務調査などで消印漏れを指摘されると、前述の過怠税の対象になります。
収入印紙を納めすぎた場合は、税務署に申請して還付を受けられます。対象になるのは、課税文書でない文書に誤って貼った場合、必要以上に高い額を貼った場合、印紙を貼った文書を書き損じるなどして使わなくなった場合などです。手続きは「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」と対象の文書の提出で、還付を請求できる日から5年を過ぎると請求権が消滅する点に注意が必要です。
出典・参考資料(1件)
割印・消印・契印・捨印の違い
契約実務では、収入印紙に押す「消印」のほかにも、似た場面で使われる印がいくつかあります。「割印」という言葉は複数の意味で使われるため、自分のケースがどれに当たるかを整理しておくと迷いません。
- 消印:収入印紙と文書にまたがって押し、印紙の再使用を防ぐための印。本記事で解説している、収入印紙に押す「割印」はこれに当たります。
- 2通の契約書にまたがる割印:同じ契約書を2部作成したときに、2部にまたがって押し、両者が同一・関連する文書であることを示す印。収入印紙への消印と同じ「割印」という語で呼ばれるため混同しやすいですが、目的が異なります。
- 契印(けいいん):契約書が複数ページにわたるとき、ページのつなぎ目(見開き)に押し、ページの差し替えや抜き取りを防ぐ印。
- 捨印(すていん):文書の欄外にあらかじめ押しておき、後日の軽微な訂正に備える印。
このうち、法律(印紙税法)で押すことが義務づけられ、怠ると過怠税の対象になるのは収入印紙への消印だけです。契印・捨印・2通にまたがる割印は、文書の信頼性を高めたり訂正に備えたりするための実務上の慣行で、収入印紙の消印とは役割が別です。
収入印紙も割印も不要にする方法(電子契約)
そもそも、紙の契約書に収入印紙が必要なのは、印紙税が紙の「文書」を課税対象にしているためです。契約の内容をPDFなどの電磁的記録でやり取りし、紙の文書を作成・交付しない電子契約では、課税対象となる文書が存在しないため印紙税の課税原因が発生しない、というのが国税庁の考え方です。
注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。
出典:請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信する場合の印紙税の取扱いについて|国税庁(福岡国税局)
この考え方は、紙の課税文書を作成・交付しないことが前提です。電子契約システムを使えば、契約の締結を電子データで完結でき、収入印紙の貼付も割印(消印)も不要になります。印紙代そのものに加えて、印紙を貼って割印を押す手間、印紙の管理の手間も減らせます。ここでは、締結を電子データで完結でき、収入印紙を不要にできる電子契約システムを紹介します。
クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

弁護士ドットコム株式会社が提供する電子契約サービスです。書類のアップロードから電子署名・タイムスタンプの付与、契約書の保管・検索までをオンラインで完結でき、紙の契約書の印刷・押印・郵送をなくせます。
標準の電子署名は、契約当事者の指示にもとづき同社が署名を付与する事業者署名型(立会人型)です。相手方の事前登録や認証局での本人確認が不要なため、導入のハードルが低いのが特徴です。
2023年からは、マイナンバーカードの電子証明書を使って契約当事者本人が署名する当事者署名型(マイナンバーカード署名)にも対応しています。導入企業数は250万社以上、累計送信件数は4,000万件を超えています(公式サイト、2026年9月時点)。
電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

メール認証で手軽に使える立会人型(契約印タイプ)と、電子証明書を使う当事者型(実印タイプ)の両方に対応するクラウド型の電子契約サービスです。提供元はGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社で、契約の重要度に応じて2つの署名タイプを使い分けたり組み合わせたりできます。
グループ会社が電子証明書を発行する認証局(GlobalSign)を自社で持ち、当事者型の署名に使う電子証明書を自社グループ内で用意できる点が特徴です。導入企業数は350万社以上、累計送信件数は5,000万件に達しています(公式サイト、2026年9月時点)。
公式では「国内シェアNo.1」と訴求しています。ただしこれは電子署名・タイムスタンプが付与された契約の累計送信件数を基準としたシェア(GMOリサーチ&AI株式会社調べ、2024年12月)であり、導入社数のシェアではありません。
以下は、ここで紹介した電子契約システムの比較表です。いずれも電子契約で収入印紙・割印を不要にでき、署名タイプや無料プランなどで比べられます。
| サービス名 | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン |
|---|---|---|
| 提供会社 | 弁護士ドットコム株式会社 | GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 |
| 電子契約での収入印紙・割印 | どちらも不要(公式が、電子ファイルで発行した契約は印紙税の課税対象外と解説) | どちらも不要(公式が、電子契約は印紙税の課税対象外と解説) |
| 電子署名タイプ | 立会人型(事業者署名型)が標準/当事者型(マイナンバーカード署名)にも対応 | 立会人型(契約印タイプ)・当事者型(実印タイプ)に対応/両者のハイブリッド署名も可 |
| 無料プラン | あり(フリープラン:1名・月2件まで、電子署名+タイムスタンプ利用可) | あり(お試しフリープラン:1ユーザー・月5件まで、契約印タイプのみ) |
| 導入実績 | 導入社数250万社以上・累計送信4,000万件超(公式サイト) | 350万社以上・累計送信5,000万件(公式サイト) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※料金・機能は本記事の作成時点の情報です。最新の内容や詳しい条件は、各社の公式サイト・公式資料をご確認ください。
ここで紹介した2サービスは一例です。料金体系や署名方式、契約書管理のしやすさまで含めて電子契約システム全体を見比べ、自社に合う一社を選びたい場合は、主要サービスをタイプ別に比較した以下の記事が参考になります。
まとめ
収入印紙の割印(消印)は、印紙と文書の境目にまたがるように、誰が消したか分かるよう鮮明に押すのが基本です。押すのは作成者本人に限らず代理人や従業員でもよく、認印・角印・ゴム印や署名でも構いませんが、単に「印」と書く、斜線を引く、鉛筆で書くといった方法は認められません。
収入印紙を貼り忘れた場合(不納付)と、貼ったが消印を忘れた場合(消印漏れ)では過怠税が異なるため、どちらに当たるかを確認して対処します。
そもそも紙の契約書をやめて電子契約にすれば、収入印紙も割印も不要になり、印紙代と貼付・割印の手間の両方を減らせます。自社の契約件数や年間の印紙代から、電子契約でどの程度の削減につながるかを試算してみるとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 収入印紙の割印(消印)とは何ですか?
A. 収入印紙の割印とは、貼った収入印紙と文書にまたがって押し、印紙を使用済みにして再使用を防ぐための印で、印紙税法上の正式名称は「消印(けしいん)」です。実務では「割印」と呼ばれますが、法律用語では消印を指します。印紙税法第8条第2項により、収入印紙を貼ったら文書の作成者がこれを判明に消すことが義務づけられています。
Q. 収入印紙の割印(消印)は、契約書に押した印鑑と同じでなければいけませんか?
A. 契約書の署名・押印に使った印鑑と同じである必要はありません。 消印に使う印章の種類に決まりはなく、認印・角印・ゴム印・日付印などで構いませんし、署名(自署)で消しても有効です(印紙税法施行令第5条・基本通達第65条)。消印の目的は収入印紙を使用済みにして再使用を防ぐことなので、契約の押印とは別の印でも問題ありません。
出典・参考資料(2件)
Q. 収入印紙の割印(消印)に日付は必要ですか?
A. 収入印紙の割印(消印)に日付を記す必要はありません。 消印は、収入印紙と文書の彩紋にまたがって、誰が消したか分かるように鮮明に押せば有効で、日付の記載までは求められていません。日付の入った日付印(ゴム印など)で消しても差し支えありませんが、日付がないからといって消印が無効になるわけではありません。
出典・参考資料(1件)
Q. 収入印紙を貼る必要がない文書にも割印(消印)は必要ですか?
A. 割印(消印)が必要なのは収入印紙を貼った課税文書だけで、印紙を貼る必要がない文書には割印も不要です。 印紙税法第8条第2項は「印紙をはり付ける場合には……判明に印紙を消さなければならない」と定めており、消印の義務は収入印紙を貼ったときに生じます。
非課税・不課税で収入印紙を貼らない文書には、そもそも消す対象がないため割印は要りません。手元の文書にそもそも収入印紙が必要かどうかは、課税文書に当たるか・記載金額がいくらかで決まるため、先に印紙の要否を確認しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
Q. 電子メールで送ったPDFの契約書や領収書にも収入印紙は必要ですか?
A. 紙の文書を作成・交付せず、PDFなどの電磁的記録を電子メールで送る場合は、収入印紙も割印も必要ありません。 印紙税は紙の「文書」を課税対象としており、現物(紙)の交付がない電子データは課税文書の作成に当たらず、印紙税の課税原因が発生しないというのが国税庁の考え方です。
一方、契約内容を紙に印刷して契約書・領収書として作成・交付した場合は、その紙が課税文書となり、収入印紙の貼付と割印が必要になります。契約そのものを電子契約システムで完結させれば、紙を介さないため収入印紙も割印も発生しません。
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