リモートワークやクラウドサービスの利用が広がり、「社内は安全・社外は危険」という前提で守ってきた従来のやり方に不安を感じていませんか。社外から社内システムへアクセスする機会が増えるほど、境界型防御やVPNだけでは守りきれない場面が出てきます。その解決策となるのが「ゼロトラスト」です。
ただ、「ゼロトラスト ネットワーク 比較」と調べても、製品ランキングの前に知りたいことが二つあります。ひとつは、今の境界型防御・VPNとゼロトラストは何がどう違うのか。もうひとつは、ゼロトラストを構成するZTNAやIDaaS、EDRなどの要素が、それぞれ何を守るもので、どう違うのかです。
本記事では、境界型防御・VPNとゼロトラストの違いを同じ軸で並べた比較表と、構成要素を「何を守るか・従来の何の代わりか・どの段階で入れるか」で整理した一覧表を用意しました。そのうえで、自社は何から・どの順で導入すればよいかの目安と、構成要素を担うサービスの費用感まで解説します。製品選びの前に押さえておきたい全体像を整理しています。
目次
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ゼロトラストネットワークとは?
ゼロトラストは、社内・社外を問わずすべてのアクセスを信頼せず、その都度検証するという考え方です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「ゼロトラスト導入指南書」は、ゼロトラストを次のように定義しています。
ゼロトラスト:ネットワークが侵害されている場合であっても,情報システムやサービスにおいて,各リクエストを正確かつ最小の権限となるようにアクセス判断する際の不確実性を最小化するために設計された概念とアイデアの集合体のことをいう。すべてを信用しないということではなく,すべて確認するということを表す。
出典:ゼロトラスト導入指南書|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
重要なのは「すべてを信用しない」ではなく「すべて確認する」という点です。社内ネットワークに入れたからといって無条件に信頼するのではなく、ユーザー・端末・通信をリクエストごとに検証し、必要な分だけアクセスを許可します。この考え方は特定の1製品ではなく、複数の仕組みを組み合わせて実現するものです。
なぜ今ゼロトラストが必要とされるのか
背景にあるのは、働き方とシステム環境の変化です。IPAの導入指南書は、境界型防御が前提としていた「社内=安全・社外=危険」という線引きが、クラウド活用とリモートワークの広がりで崩れてきたと説明しています。
現状のセキュリティ対策は,境界型防御が主流であり,社内を信用できる領域,社外を信用できない領域として外部からの接続を遮断している。しかし,上記の社会変化から,社内のシステム環境へ社外から接続するということが行われていることから,境界型防御で考えていたセキュリティモデルではサイバー攻撃の脅威を防ぎきれない状況になってきている。
出典:ゼロトラスト導入指南書|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
社外やクラウドからのアクセスが当たり前になると、境界の内側だけを守る発想では守備範囲が足りません。だからこそ、通信の場所に頼らず都度検証するゼロトラストが求められています。
出典・参考資料(2件)
境界型防御・VPNとゼロトラストは何が違うのか
ここからは、今お使いの境界型防御・VPNと、ゼロトラストの違いを同じ軸で見比べます。文章だけでは違いが残りにくいので、まず比較表で全体像を押さえてください。
| 観点 | 信頼の前提 | 主に守る対象 | 内部不正・侵入後への強さ | クラウド・リモート適性 | 運用の勘所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 境界型防御 | 社内ネットワークは安全とみなす | 外部からの侵入を防ぐ | 境界を越えられると内部での横移動に弱い | 社外・クラウド利用が増えると前提が崩れる | ファイアウォールやIDS/IPSで境界を固める |
| VPN(リモートアクセス) | 接続できれば社内側として信頼されやすい | 社外から社内への安全な通信経路を確保する | 接続後は内部を広く信頼しがち | 利用が集中すると通信帯域が逼迫しやすい | ゲートウェイの増強・可用性の確保が課題 |
| ゼロトラスト | 社内外を問わず信頼せず、リクエストごとに検証する | 侵入や内部からの情報流出・不正操作を防ぐ | セッション単位・最小権限でアクセスを絞り被害を抑える | クラウド・社外アクセスを前提に個別制御する | ID・端末・通信を継続的に検証し監視する(境界型とも併用) |
IPAの導入指南書は、境界型防御とゼロトラストを「見ている視点が違う」ものとして整理しています。
境界型防御は外からの侵入を防ぎ,「外部の攻撃による社内へのウイルス感染や不正侵入から身を守る」ということであり,それに対しゼロトラストは,内部から攻撃された場合,「内部の攻撃による社外への情報流出や不正操作から身を守る」ということである。
出典:ゼロトラスト導入指南書|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
注意したいのは、ゼロトラストにすれば境界型防御やVPNが不要になるわけではない点です。同じ導入指南書も、両者は視点が違うだけで、どちらかが優れているから一方は不要、という関係ではないと述べています。実際の移行では、既存のファイアウォールや境界対策を活かしつつ、ゼロトラストの仕組みを重ねていくハイブリッドな構成が現実的です。
VPNについては、接続後に社内側として広く信頼されやすいこと、そして利用者やクラウド通信が増えるとゲートウェイに通信が集中し帯域が逼迫しやすいことが課題として挙げられます。ゼロトラストでは、こうした「一度つながれば信頼する」構造を、アクセスのたびに検証する仕組みへ置き換えていきます。
ゼロトラストネットワークの構成要素
ここからは、ゼロトラストを形づくる主な構成要素を整理します。ZTNAやSASEといった略語が文章に散らばると役割が掴みにくいので、「何を守る・担うか」「従来の何に代わる・補うか」「どの段階で入れるか」を一覧にまとめました。
| 構成要素 | IDaaS(Identity as a Service)・多要素認証(MFA) | EDR(Endpoint Detection and Response) | SWG(Secure Web Gateway) | CASB(Cloud Access Security Broker) | SDP(ソフトウェア定義境界)/ZTNA | マイクロセグメンテーション |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 何を守る・担うか | クラウドを含む各サービスのID管理・認証(SSO・MFA・アクセス制御)を一元化する | パソコンやサーバなど端末の動作を監視し、侵入を受けた後の被害を抑える | 外部へのWebアクセスをクラウド経由で安全に制御する | クラウド利用に一貫したセキュリティポリシーを適用し、データを保護する | アクセスの境界をソフトウェアで動的に制御し、アプリ単位で接続を許可する | リソースを細かく区切り、区画ごとにゲートウェイで保護する |
| 従来の何に代わる・補うか | 個別のID/パスワード管理やActive Directory認証を集約・強化する | 感染を防ぐウイルス対策(EPP)を、侵入後の検知・対応で補う | VPNゲートウェイが担っていた通信をクラウドへ移管する | 把握しきれなかったクラウドやシャドーIT(無許可利用)の利用状況を可視化する | 境界で一括許可するVPN・ファイアウォールの発想を、動的なアクセス制御へ置き換える | 社内を一括で信頼していたフラットなネットワーク構成を見直し、万一の侵入後の横移動を抑える |
| 導入段階の目安 | STEP1(ID管理の強化) | STEP2(デバイス管理の強化) | STEP3(ネットワーク対策) | STEP3(ネットワーク対策) | STEP3(ネットワーク対策) | STEP3(ネットワーク対策) |
構成要素のうち、IDaaS・SWG・CASB・SDPなどの定義はIPAの導入指南書に整理されています。表のなかで「ZTNA」と並記したSDP(ソフトウェア定義境界)は、アクセスの境界をソフトウェア上に持ち、利用者がどこにいても動的にアクセスを制御する技術です。
「ZTNA」はガートナー社が広めた業界用語で、NISTやIPAの資料ではこのSDP(Software Defined Perimeter)として説明されており、両者はほぼ同じ概念を指します。
また、リソースを細かく区切るマイクロセグメンテーションは、NISTのゼロトラストアーキテクチャ(NIST SP 800-207)がゼロトラストの実装アプローチの一つとして整理している考え方です。これらの要素は単独で使うものではなく、ID・端末・ネットワーク・監視を補い合うように組み合わせて導入します。
出典・参考資料(2件)
ゼロトラスト・SASE・ZTNAの関係(SASEとの違い)
ここでは、よく混同される「ゼロトラストとSASEの違い」を、言葉の上下関係で整理します。結論から言うと、三つは対立する選択肢ではなく、考え方・枠組み・適用という役割の違いです。

- ゼロトラスト(考え方):社内外を問わず信頼せず都度検証するという、守り方の基本方針です。
- SASE(まとめて実現する枠組み):ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウドに集約したフレームワークで、CASB・SDP・SWGなどを束ねて提供します。ゼロトラストを実現する手段の一つです。
- ZTNA(ネットワークアクセスへの適用):ゼロトラストの考え方をネットワークアクセス制御に適用した仕組みで、前述のとおりNIST・IPAのSDP(ソフトウェア定義境界)に相当します。
このように、ゼロトラストという方針があり、それをネットワークとセキュリティでまとめて実現する枠組みがSASE、ネットワークアクセスの部分を担う仕組みがZTNA(SDP)という関係です。「SASEかゼロトラストか」と二者択一で考える必要はありません。
何から始める?ゼロトラストの段階導入の目安
ここからは、自社は何から・どの順で導入すればよいかの目安を整理します。ゼロトラストは一度にすべてを置き換えるものではなく、既存の対策を活かしながら段階的に進めるのが現実的です。
ゼロトラストを実現させるためには,既存のセキュリティを活用しつつ,ハイブリッド型としてスモールスタートで実施していくことが現実的である。ゼロトラストをいち早く導入した Google 社も「BeyondCorp」の実現に 8 年の歳月を要している。
出典:ゼロトラスト導入指南書|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
段階導入のSTEP(VPN+ファイアウォールは何に置き換わるか)
IPAの導入指南書は、ゼロトラスト導入のポイントを次の順序で挙げています。現状のVPN+ファイアウォール中心の構成が、どの要素に置き換わっていくかの道筋として読めます。

- ID管理の強化(IDaaS):まず誰が・どの端末から・何にアクセスするかを一元管理し、多要素認証でなりすましを防ぎます。影響範囲が分かりやすく、着手しやすい最初のSTEPです。
- デバイス管理の強化(EMM・EDR):モバイル端末などを一元管理するEMMや、侵入を受けた後の検知・対応を担うEDRを加えます。
- ネットワークセキュリティ対策(SWG・SDP):VPNゲートウェイが担っていた通信をSWGでクラウドへ移管し、SDP(ZTNA)でアプリ単位のアクセス制御へ移行します。
- セキュリティ運用の自動化(SIEM・SOAR):ログを集めて分析するSIEMと、インシデント対応を自動化するSOARで、監視・運用の負荷を抑えます。
導入指南書は「『これを導入すればゼロトラスト実現!』や『ゼロトラスト』と言う名の製品はこの世の中に存在しない」とも述べています。まずはビジネスへの影響が小さい業務や、着手しやすいID管理の強化から始め、段階的に広げていくのが基本の進め方です。
最初のSTEPとなるID管理の強化で軸になるのが多要素認証(MFA)です。そもそもMFAとは何か、二段階認証とどう違うのかを押さえておきたい場合は、以下の記事で仕組みから整理しています。
構成要素を選ぶときの観点
どの要素から入れるかを決めたら、個々のサービスは次の観点で見比べると、自社に合うかを判断しやすくなります。
- 適用範囲:守りたい対象(ID・端末・クラウド・オンプレミス)に過不足なく適用できるか。今回の目的がID管理の強化なら、自社が使うクラウドやオンプレミスのシステムに対応しているかを確認することが重要です。
- 既存システムとの連携:現在使っているActive Directoryや業務システムと連携できるか。連携できないと二重管理が発生するため、SAMLやAPI対応の有無が分岐点になります。
- 運用負荷:ポリシー管理や例外対応が複雑になりすぎないか。情シスの人数が限られる場合は、設定や運用がどこまで自動化・簡素化されているかが効いてきます。
- 可視化・ログ:アクセス状況やログを把握でき、インシデント対応や社内への説明に使えるか。侵入後の調査まで見据えるなら、ログの保存・検索のしやすさが判断の分かれ目になります。
- サポート体制:設計・導入から運用、障害時まで必要な支援を受けられるか。自社に専門人材が少ないほど、導入支援やマネージドサービスの有無が重要になります。
導入前に押さえる注意点
費用については、ユーザー単位・デバイス単位などライセンス体系で変わるため、公開価格だけで総額を見積もりにくい点に注意が必要です。IPAの導入指南書も、費用はライセンス体系で変わるためベンダーから見積もりを取得するよう促しています。公開価格のあるサービスで費用感の目安をつかみつつ、最終的な金額は構成に合わせて確認する流れになります。
運用面では、段階的に範囲を広げる進め方のため、どのくらいの期間で見直すかを計画しておくことが大切です。導入当初はユーザーに直接影響が出て問い合わせが増えることも想定し、社内の問い合わせ対応やルール周知の準備をしておくと、移行がスムーズになります。
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ゼロトラストのネットワークを構成するサービスと費用感
ここからは、まず着手するID管理の強化(STEP1)と、端末・ネットワークの監視を担う具体的なサービスを取り上げます。ゼロトラストの入り口になる構成要素として、提供形態・対応範囲・費用感を比較できます。まずはスポット比較表で全体を見比べてください。
| サービス名 | CloudGate UNO | YubiKey as a Service | Network Blackbox | Soliton OneGate | IIJ IDサービス | CrowdStrike Falcon |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 担う構成要素(役割) | IDaaS(ID管理・SSO)/多要素認証(MFA) | 多要素認証(MFA・物理セキュリティキー) | NDR(ネットワーク検知・対応) | IDaaS(ID管理・SSO)/多要素認証(MFA) | IDaaS(ID管理・SSO)/多要素認証(MFA) | EDR(エンドポイント検知・対応)/NGAV(次世代アンチウイルス) |
| 提供形態 | クラウド(IDaaS) | 物理セキュリティキー+サブスク運用 | オンプレミス(ミラーリング方式で導入) | クラウド(IDaaS) | クラウド(IDaaS) | クラウド(SaaS・単一エージェント) |
| 対応範囲 | クラウド/SaaSのSSO・多要素認証・アクセス制限・ID管理を一元化 | SSOや各種SaaS/オンプレの認証を物理キーで強化(スマホ不要) | ネットワークの全通信を収集し、侵入・不審通信の検知と事後調査に対応 | クラウド・社内システム・VPN・Wi-Fiの認証をデジタル証明書で一元管理 | クラウド/SaaSのSSO・多要素認証、AD連携・統合Windows認証 | PC・サーバ等エンドポイントの実行防止・侵入後の検知・対応 |
| 料金目安 | 月額400円〜/ユーザー(税抜。初期費用別途) | 要問い合わせ(サブスク・200ユーザーから) | 要問い合わせ | 月額150円〜/ユーザー(PKI 150/ベーシック 300/スタンダード 600。初期費用別途) | 初期費用0円+月額120円〜/ID(SSO+MFAは240円/ID。税抜) | 月額7.99米ドル〜/デバイス(グローバル公式価格。円建ては要問い合わせ) |
| 無料トライアル・検証(PoC) | 30日間の無料トライアル | 実機検証あり(無料トライアルは公式記載なし) | デモ申請あり(無料トライアルは公式記載なし) | 30日間の無料トライアル | トライアルあり(期間・条件は要問い合わせ) | 15日間の無料トライアル |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
ここで挙げたサービスは、社内セキュリティ全体のなかでID・端末・ネットワークの守りを担う部分にあたります。ゼロトラストの構成要素に限らず、守る対象ごとに社内セキュリティのソリューションを見渡して比較したいときは、以下の記事がタイプ別に整理しています。
1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOは、公式に「ゼロトラスト時代のSSO・アクセス制限・認証強化・ID管理プラットフォーム」と位置づけられたクラウド型のID管理基盤です。シングルサインオン(SSO)・多要素認証(MFA)・アクセス制限・ID管理を一つに統合し、段階導入のSTEP1にあたるID管理の強化をまとめて担えます。
Google WorkspaceやMicrosoft 365、Salesforceなど多数のクラウドサービスと連携し、FIDO2準拠のパスワードレス認証にも対応しています。提供元のインターナショナルシステムリサーチによれば契約数は1,400社以上です(2026年10月時点)。
料金はStandard Plusが月額400円/ユーザー(税込440円)からで、初期費用は別途必要となります(2026年10月時点)。
段階導入の起点となるID管理の強化が、実際の運用負荷にどう表れるかについて、提供元のインターナショナルシステムリサーチは次のように述べています。

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。
2. YubiKey as a Service(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

物理的なセキュリティキー「YubiKey」を、サブスクリプション型で導入できるサービスです。キーの本体を買い切りで調達するのではなく、月額・年額の運用費として利用でき、契約期間中のキー種類の変更や、故障・紛失に備えた予備キーの提供(年ごとに契約数の25%分)が含まれます。
認証方式はFIDO2/WebAuthnに対応し、端末に秘密鍵を保持することでフィッシングに強いパスワードレス認証を実現します。前述のCloudGate UNOのオプションとして提供され、SSOと組み合わせて使えます。最低契約数は200ユーザーから、契約期間は3年または5年で、デバイス単価は要問い合わせです。多要素認証を物理キーで一段強化したいときの選択肢になります。
スマートフォンのアプリ認証ではなく物理セキュリティキーがどのような場面で選ばれるのかについて、提供元のインターナショナルシステムリサーチは、相談で多いケースを次のように説明しています。

最も多いのは、全社員へのスマートフォン支給が困難なケースです。派遣社員や協力会社のスタッフがシステムにアクセスする際の認証手段として活用されています。また、店舗やコールセンターなどのシフト制の現場において、IDとパスワードの管理負担を軽減しつつ、確実な本人認証を実現する手段としても選ばれています。
3. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

ネットワークを流れる全パケットを収集し、脅威を可視化・分析・対応するNDR(Network Detection and Response)製品です。公式は「次世代ネットワーク検出および応答(NDR)ソリューション」と位置づけ、フルパケットキャプチャによるトラフィックの全数検査を基盤としています。
ミラーリング方式で導入するためネットワークへの影響を抑えつつ、外部からの侵入・内部の不審な通信・水平移動(ラテラルムーブメント)といった「ネットワーク上に痕跡が残る」動きの検知と、事後のフォレンジック調査に対応します。端末を監視するEDRやログを集めるSIEMを、ネットワーク側から補う監視の役割を担い、これらとは置き換えではなく連携します。料金は要問い合わせです。
4. Soliton OneGate(株式会社ソリトンシステムズ)

ソリトンシステムズが提供する国産のIDaaSで、デジタル証明書(クライアント証明書)による多要素認証を軸に、SSOとID管理を組み合わせています。認証局(CA)機能を製品に標準搭載しており、証明書の発行・配布から、社内システム・クラウド・VPN・Wi-Fiの認証一元管理までを1製品でカバーできる点が特徴です。
認証方式はデジタル証明書を中心に、FIDO2/WebAuthn・スマホ認証・顔認証・ICカード認証を組み合わせられます。料金はPKIプランが月額150円/ユーザー、スタンダードが600円/ユーザーなどで、証明書ベースの強固な認証からゼロトラストのID管理を固めたい企業に向きます。
5. IIJ IDサービス(株式会社インターネットイニシアティブ)

IIJが提供するクラウド型のID管理・認証サービス(IDaaS)です。1つのIDで複数のクラウドサービスにログインできるSSOを中核に、多要素認証やActive Directory連携、アクセス制御を提供し、ID管理の強化という最初のSTEPを担います。公式サービスページによれば導入は5,000社以上です(2023年4月時点)。
料金は初期費用0円で、SSO連携が月額120円/ID、多要素認証を含むプランが240円/IDと、認証方式ごとの追加料金が発生しない分かりやすい体系です(2026年10月時点。2026年11月以降は価格改定が予定されています)。段階導入の起点となるIDaaSを、費用感をつかみながら検討したい場合の候補になります。
6. CrowdStrike Falcon(クラウドストライク合同会社)

クラウドネイティブのエンドポイント保護プラットフォーム(EPP)を中核に、EDRや脅威ハンティング、ID保護などを単一の軽量エージェントから提供する統合セキュリティ基盤です。段階導入のSTEP2にあたるデバイス管理の強化、とくに侵入を受けた後の検知・対応(EDR)を担います。
グローバルの公式価格はFalcon Goが月額7.99米ドル/デバイスからで、フルEDRを含むFalcon Enterpriseなどの上位プランも用意されています。日本国内向けの円建て正式価格は公開されておらず、国内では販売代理店・SIer経由の個別見積もりが基本です。15日間の無料トライアルが用意されています(2026年9月時点)。
まとめ
ゼロトラストのネットワークを比較しようと調べ始めたとき本当に比べたいのは、製品ランキングの前にある二つの違いです。ひとつは、境界型防御・VPNとゼロトラストの信頼モデルの違い。もうひとつは、ZTNA(SDP)やIDaaS、EDRなどの構成要素が、それぞれ何を守り、どの段階で入れるものかという違いです。
ゼロトラストは1製品で実現するものではなく、既存の境界対策を活かしながら、ID管理の強化を起点に段階的に広げていくのが現実的です。まずは自社に必要な構成要素の当たりをつけ、その役割を担うサービスの資料を取り寄せて、費用感と対応範囲を具体的に確かめてみてください。
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よくあるご質問(FAQ)
Q. ゼロトラストネットワークとは何ですか?
A. ゼロトラストネットワークとは、社内・社外を問わずすべてのアクセスを信頼せず、リクエストごとに検証して必要な分だけ許可する考え方にもとづくネットワークのことです。IPA(情報処理推進機構)は「すべてを信用しないということではなく、すべて確認するということ」と定義しています。特定の1製品ではなく、ID管理・端末管理・ネットワーク制御・監視といった複数の仕組みを組み合わせて実現する点が特徴です。
Q. ゼロトラストを導入すると、今あるVPNやファイアウォールは不要になりますか?
A. ゼロトラストを導入しても、VPNやファイアウォールがすぐに不要になるわけではありません。IPAの導入指南書も、境界型防御とゼロトラストは「見ている視点が違う」だけで、どちらかが優れているから一方が不要という関係ではないと整理しています。
現実的には、既存の境界対策を活かしながらゼロトラストの仕組みを重ねるハイブリッド構成から始め、VPNゲートウェイが担っていた通信を段階的にSWGやZTNA(SDP)へ置き換えていきます。
Q. ゼロトラストとSASE・ZTNAは何が違いますか?
A. 三つは対立する選択肢ではなく、ゼロトラストが「考え方」、SASEがそれをまとめて実現する「枠組み」、ZTNAがネットワークアクセス制御に適用した「仕組み」という役割の違いです。
SASEはネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウドに集約し、SWG・CASB・ZTNAなどを束ねて提供します。ZTNAはNISTやIPAの資料ではSDP(ソフトウェア定義境界)として説明される、ほぼ同じ概念です。「SASEかゼロトラストか」と二者択一で考える必要はありません。
Q. 中小企業でもゼロトラストネットワークは必要ですか?
A. 中小企業でも、クラウドサービスやリモートワークを利用しているなら、企業規模にかかわらずゼロトラストの考え方は必要になります。社外やクラウドからのアクセスが増えると「社内=安全・社外=危険」という境界型の前提が崩れるためで、これは規模を問わず共通する変化です。
ただし一度にすべてを導入する必要はなく、影響範囲が分かりやすく着手しやすいID管理の強化(多要素認証など)から、スモールスタートで始めるのが現実的です。
Q. ゼロトラストネットワークの導入にはどれくらいの費用がかかりますか?
A. ゼロトラストの費用は、ユーザー単位・デバイス単位などライセンス体系によって変わり、一律の相場では示しにくいのが実情です。IPAの導入指南書も、費用はライセンス体系で変わるためベンダーから見積もりを取得するよう促しています。
目安として、公開価格のあるサービスではID管理(IDaaS)が月額120〜400円/ユーザー前後、EDRがデバイス単位で月額数ドル前後からと、構成要素ごとに料金体系が異なります。公開価格で費用感をつかみつつ、総額は自社の構成に合わせて見積もりを取る流れになります。
Q. ゼロトラストネットワークは1つの製品で実現できますか?
A. ゼロトラストは、1つの製品を導入すれば実現できるものではありません。IPAの導入指南書も「『これを導入すればゼロトラスト実現!』や『ゼロトラスト』と言う名の製品はこの世の中に存在しない」と明記しています。
実際には、既存のセキュリティ対策を活かしつつ、ID管理の強化(STEP1)→デバイス管理(EDR)→ネットワーク対策(SWG・ZTNA)→運用の自動化という順で、複数の仕組みを段階的に組み合わせて築いていきます。まずは着手しやすいID管理から始めるのが基本の進め方です。
Q. ゼロトラストネットワークの導入にはどれくらいの期間がかかりますか?
A. ゼロトラストの導入期間は、段階的に範囲を広げていくため一律には決まらず、着手する構成要素の範囲によって変わります。ID管理の強化のように影響範囲が分かりやすいSTEPから始められる一方、全社・全システムへ広げるには中長期の計画が必要です。ゼロトラストをいち早く導入したGoogleも「BeyondCorp」の実現に8年を要したと、IPAは紹介しています。
短期間での一斉移行ではなく、見直しの時期を決めて段階的に進めるのが現実的です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















