テレワークの広がりとともに、「会社のパソコンを社外に持ち出して業務情報が漏れないか」という不安が多くの企業で現実の課題になっています。その対策として名前がよく挙がるのが「シンクライアント」です。言葉は聞くものの、普通のパソコンと何がどう違うのか、自社のテレワークや情報漏えい対策に本当に使えるのかが分かりにくい、と感じている情報システム担当者は少なくありません。
シンクライアントは、端末側に業務データやアプリを持たせず、処理とデータをサーバー側に集める仕組みです。実現方法は一つではなく、ネットブート型・画面転送型(ブレードPC型・サーバーベース型・VDI型)・クラウド型(DaaS)など複数の方式があり、方式によってコストも向き不向きも変わります。
本記事では、シンクライアントの仕組みと普通のパソコン(ファットクライアント)との違いを整理し、実行方式ごとの特徴、メリットとデメリット、端末の種類、費用の目安、自社に向くかどうかの判断基準までを解説します。あわせて、「端末に業務データを残さない」という目的に照らしたときに選択肢となる、データレスクライアントという別のアプローチも紹介します。
目次
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シンクライアントとは?仕組みと普通のPC(ファットクライアント)との違い
シンクライアント(thin client)とは、端末側の機能を最小限にとどめ、アプリケーションの処理やデータの保存をサーバー側に集約する仕組み、またはそのための専用端末を指します。「シン(thin=薄い)」は、端末側が担う役割が薄いことを表しています。利用者の手元にある端末は、キーボードやマウスの操作をサーバーへ送り、サーバーで処理された結果の画面を受け取って表示する役割が中心です。
これと対になるのが、普段使っている一般的なパソコンです。こうした端末は「ファットクライアント(fat client)」や「リッチクライアント」と呼ばれ、OS・アプリケーション・業務データのすべてを端末自身が持ち、処理も手元で行います。両者の役割分担を整理すると、次のようになります。
| 項目 | ファットクライアント(一般的なPC) | シンクライアント |
|---|---|---|
| アプリの処理 | 端末側で実行 | サーバー側で実行(方式による) |
| 業務データの保存場所 | 端末のディスク内 | サーバー側に集約(端末に残さない) |
| 端末紛失・盗難時 | 端末内のデータ漏えいリスク | 端末にデータが残らず漏えいを抑えやすい |
| オフライン利用 | 可能 | 原則ネットワーク接続が前提(方式による) |
ポイントは、「端末に業務データを残さない」という考え方そのものはシンクライアントに共通する一方で、どこまでをサーバー側に寄せるかは方式によって異なる点です。OSやアプリケーションまでサーバー側で動かす方式もあれば、端末側で処理しつつデータの保存だけをサーバー側に寄せる方式もあります。この違いは次章の「実行方式」で詳しく整理します。
なぜシンクライアントが使われるのか
シンクライアントの導入が検討される背景には、働き方と情報セキュリティをめぐる環境の変化があります。テレワークの常態化で社外に端末を持ち出す機会が増え、端末の紛失・盗難や、社外ネットワーク経由での情報漏えいへの備えが欠かせなくなりました。
加えて、マルウェア感染や内部不正による情報漏えいインシデントへの警戒感の高まり、台数が増え続けるパソコンの運用管理を集約したいというニーズも、業務環境をサーバー側に集約するシンクライアントが検討される理由です。災害時の事業継続(BCP)の観点から関心を持つ企業もあります。
こうした流れは公的な指針にも表れています。総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」でも、テレワークの方式の一つとして、端末にデータを保存させない仮想デスクトップ(VDI)方式が、情報漏えい対策と管理のしやすさの観点から整理されています。
設定によりテレワーク端末へのデータ保存の制限が可能なため、テレワーク端末上にデータを保存させないことができ、データ管理が容易です。
出典:テレワークセキュリティガイドライン(第5版)|総務省
シンクライアントの実行方式の違い
シンクライアントをどう実現するかという「実行方式」には、いくつかの種類があります。大きくはネットブート型と画面転送型の2系統に分かれ、画面転送型はさらに複数の方式に分かれます。近年はクラウド型(DaaS)も選択肢に加わっています。まず全体像を一覧で示します。

| 方式 | 処理する場所 | データの保存先 | コスト感(傾向) | 向く規模・用途 |
|---|---|---|---|---|
| ネットブート型 | 端末側 | サーバー側 | 中(サーバー・通信の増強が必要) | 既存PCを活かしたい・中規模 |
| ブレードPC型(画面転送型) | サーバー側の専用物理PC | サーバー側 | 高(人数分の物理機材) | 動作の安定を重視・少人数〜中規模 |
| サーバーベース型(画面転送型) | 共有サーバーのOS | サーバー側 | 低〜中(1環境を共用) | 画一的な業務・コスト重視 |
| VDI型(画面転送型) | サーバー上の仮想PC | サーバー側 | 高(基盤・ライセンス) | 柔軟性を重視・中〜大規模 |
| クラウド型(DaaS) | クラウド上の仮想PC | クラウド側 | 初期は小・月額課金 | 初期費用を抑えたい・増減が多い |
※コスト感は構成・規模・契約により変わる傾向を示したものです。以下で各方式の仕組みを解説します。
ネットブート型
ネットブート型は、OSのイメージをサーバー側に置き、端末は起動のたびにネットワーク経由でOSを読み込んで動かす方式です。処理そのものは端末側で行うため端末に一定の性能が必要ですが、データはサーバー側に保存し端末に残しません。台数が増えると起動時の通信やサーバーの負荷が大きくなりやすく、安定した通信環境が前提になります。
画面転送型
画面転送型は、アプリケーションの処理とデータの保存をサーバー側で行い、端末にはその画面だけを転送する方式です(提供元によっては「画像転送型」とも表記されます)。端末側は画面表示と入力の送受信が中心になるため、端末に業務データが残らず、情報漏えい対策に有効です。画面転送型は、サーバー側の作り方によってさらに次の3つに分かれます。
ブレードPC型
利用者1人ごとに、データセンターなどに設置した専用の物理PC(ブレードPC)を割り当て、その画面を端末へ転送する方式です。1人に1台の物理環境が割り当たるため動作が安定しやすい一方、人数分の物理機材が必要でコストは高くなりやすい方式です。
サーバーベース型
1台のサーバーのOS環境を複数の利用者で共有し、それぞれに画面を転送する方式です。1つの環境を共用するため1人あたりのコストを抑えやすい反面、利用者ごとに環境を細かくカスタマイズしにくく、特定の利用者の負荷が全体に影響しやすい面があります。
VDI型(仮想デスクトップ)
サーバー上に利用者ごとの仮想的なデスクトップ環境(仮想PC)を作り、その画面を端末へ転送する方式です。英語の Virtual Desktop Infrastructure を略して「VDI」と呼ばれ、シンクライアントの中核的な方式として広く使われています。
利用者ごとに独立した環境を持てるため柔軟性が高い一方、サーバー・仮想化ソフトウェア・仮想デスクトップのライセンスが必要で、導入時の投資は大きくなりやすい方式です。
クラウド型(DaaS)
仮想デスクトップ環境を自社でサーバーから構築するのではなく、クラウド事業者が提供するサービスとして利用する方式です。Desktop as a Service を略して「DaaS」と呼ばれます。自前でサーバーを用意・運用する必要がなく、利用者数の増減に合わせて契約を調整しやすい点が特徴です。
月額のサービス利用料で使えるため初期投資を抑えやすい一方、継続的な利用料とクラウドへの接続品質が前提になります。
シンクライアントのメリット
ここからは、シンクライアントの仕組みがもたらす具体的な便益を、4つの観点で解説します。
情報漏えい・マルウェア感染のリスクを抑えられる
最大の便益は、端末に業務データを残さないことによる情報漏えい対策です。データが端末のディスク内に存在しなければ、端末を紛失・盗難された場合でも、ディスクを取り出して中身を読み取られるリスクを下げられます。処理やデータをサーバー側に寄せる方式では、端末側でファイルをダウンロード・保存させない運用も取りやすく、持ち出し端末からの情報流出を構造的に抑えられます。
運用管理のコストと手間を抑えられる
OSやアプリケーションをサーバー側で一元的に動かす方式では、更新やセキュリティパッチの適用をサーバー側でまとめて行えます。端末ごとに個別対応する必要が減るため、台数が多い環境ほど運用負荷の軽減効果が出やすくなります。端末自体に高い処理性能を求めない構成では、端末の調達・更新の考え方も変わります。
場所を選ばず同じ環境で業務できる
サーバー側に業務環境を集約すると、オフィス・自宅・外出先のいずれからでも、同じデスクトップ環境にアクセスして業務を続けられます。テレワークと出社を行き来する働き方でも、端末ごとに環境を作り込む必要がなく、利用者はどこからでも一貫した環境で作業できます。
災害時にも業務を継続しやすい(BCP)
業務環境とデータがサーバー側にあるため、手元の端末が使えなくなっても、別の端末からアクセスして業務を再開できます。拠点の被災や端末の故障といった事態でも、サーバー側が稼働していれば事業を継続しやすく、BCP対策の一環として位置づけられます。
シンクライアントのデメリットと導入前に押さえる注意点
メリットの裏側には、仕組み上どうしても生じる弱点があります。導入後に「こんなはずではなかった」とならないよう、3つの注意点を押さえておきます。
ネットワーク環境に依存する
処理やデータをサーバー側に置く方式では、端末とサーバーの間の通信が業務の前提になります。回線が不安定な場所や通信が遅い環境では操作の反応が鈍くなり、ネットワークが切れればその間は業務ができません。オフラインでの作業が多い業務には向きにくく、通信環境の安定性を事前に見積もる必要があります。
サーバーへの集中で、障害時に影響が広がる
業務環境を1か所に集約する構成は、管理しやすい反面、サーバー側に負荷や障害が生じると多くの利用者が同時に影響を受けます。利用者数に対してサーバーの処理能力が不足すると全体の動作が重くなり、サーバーが停止すれば接続している端末がまとめて業務を止めてしまいます。想定利用者数に見合ったサーバー設計と、冗長化・障害対応の体制が欠かせません。
初期費用が高くなりやすい
特に仮想デスクトップ(VDI型)を構築する場合、サーバー・仮想化ソフトウェア・仮想デスクトップのライセンスなど、導入時にまとまった投資が必要になりやすい傾向があります。利用者数が少ないうちは1人あたりの負担が割高になりやすく、投資を回収できる規模かどうかの見極めが重要です。費用については後述します。
シンクライアント端末の種類
シンクライアントを使うための端末にもいくつかの種類があります。どの端末を選ぶかは、利用シーンやコスト、既存のパソコン資産を活かせるかどうかで変わります。
- デスクトップ型(専用端末):シンクライアント用に設計された据え置き型の専用端末。余計な機能を省き、セキュリティや管理のしやすさを重視した構成で、オフィスの固定席に向きます。
- モバイル型(専用端末):ノート型のシンクライアント専用端末。端末にデータを残さない特性を保ったまま持ち運べるため、テレワークや外出先での利用に向きます。
- USBデバイス型:手持ちのパソコンにUSBメモリ型の起動デバイスを挿し、そこからシンクライアント環境を立ち上げる方式。既存のパソコンを活かしつつ、災害時やスポット利用で素早く環境を用意したい場合に向きます。
- ソフトウェアインストール型:既存のパソコンに専用ソフトウェアを入れてシンクライアントとして使う方式。専用端末を新たに買わずに始められるため、既存端末を活かしてコストを抑えたい場合に向きます。
専用端末を使えばセキュリティと管理のしやすさを重視した構成にしやすく、USBデバイス型やソフトウェアインストール型を使えば既存のパソコンを活かして導入コストを抑えやすい、という使い分けになります。
ここで整理した端末の種類をふまえ、実際のシンクライアント端末を製品ごとに比較したい場合は、方式別の選び方とあわせて次の記事で整理しています。
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シンクライアントの費用の目安
シンクライアントの費用は方式と規模によって大きく変わるため、一律の相場を示すことは困難です。ここでは、どの費用がどの方式で発生するのかを整理し、費用感をつかめるようにします。
初期費用が最も大きくなりやすいのは、自社でサーバーから構築するVDI型です。主な費目は、仮想環境を動かすサーバー、仮想化ソフトウェア、仮想デスクトップを利用するためのライセンス、そして端末です。利用者数が少ないうちはこれらの初期投資を少人数で負担することになり、1人あたりのコストが割高になりやすい点に注意が必要です。
一方、クラウド型(DaaS)は自前のサーバーが不要なぶん初期費用を抑えやすく、月額の利用料で使えます。
たとえばAmazon WorkSpaces の Windows Standard(常時利用できるAlwaysOn・月額固定)は、米国オレゴンリージョンで1台あたり月額44米ドルという料金例が公式に示されています(標準的なストレージ構成を含む料金例、2026年10月時点。東京リージョンやスペック・利用形態により料金は異なります)。
出典・参考資料(1件)
円建てで価格が公開されている例としては、マイクロソフトのクラウドPCサービス「Windows 365 Business」が、2vCPU・4GBメモリ・64GBストレージの構成で1ユーザーあたり月額4,797円(税別)から価格を公表しています(2026年10月時点。メモリやストレージを増やすと月額も段階的に上がります)。
クラウド型(DaaS)は、このように1人あたりの月額があらかじめ見えやすいのも利点です。
出典・参考資料(1件)
また、後述するデータレスクライアントのようなソフトウェア型の製品には、利用者1人あたり月額数百円程度の料金を公表しているものもあります。
ただし各社の「VDIと比べて低コスト」という訴求は、比較の前提(どの構成のVDIと比べているか)が明示されていないことが多いものです。具体的な金額は方式・規模・保存先の契約によって変わるため、見積もりで確認することをおすすめします。
シンクライアントは自社に向くか(向く・向かないケース)
ここまでの内容を踏まえ、自社にシンクライアントが向くかどうかを判断する目安を整理します。断定できるものではないため、自社の状況に当てはめて検討してください。
向きやすいケースとしては、まず情報漏えい対策を最優先に考えており、端末に業務データを残さない運用を徹底したい企業が挙げられます。テレワークが常態化し、社外に端末を持ち出す機会が多い企業も、紛失・盗難時のリスクを抑えやすいシンクライアントの特性が活きます。利用者数が一定規模あり、サーバー側で運用を集約することで管理負荷の軽減効果が見込める企業にも向きます。
一方で慎重に検討したいケースもあります。外出先やネットワークが不安定な環境でのオフライン作業が多い業務は、常時接続を前提とする方式とは相性が良くありません。利用者数が少なく初期投資を回収しにくい小規模な組織では、VDI型の構築はコストが見合わないことがあります。
こうした場合は、クラウド型(DaaS)や、次章で紹介する端末側で処理しつつデータを残さないデータレスクライアントなど、初期費用を抑えやすい選択肢も含めて比較するとよいでしょう。
まず小さく試したい場合は、IPA(情報処理推進機構)とNTT東日本が無償で提供する「シン・テレワークシステム」のような仕組みで、職場のパソコンを社外から操作する使い勝手を確認してみる方法もあります(申込・契約不要で利用でき、実証実験として提供されています。品質・性能は商用サービスと同等ではない点に留意が必要です)。
出典・参考資料(1件)
端末にデータを残さない対策を検討するなら
「端末に業務データを残さない」という目的だけに立ち返ると、シンクライアントやVDIのほかにも選択肢があります。その一つが「データレスクライアント」と呼ばれるソフトウェア型の仕組みです。これは、OSやアプリケーションは普段どおり手元のパソコンで動かしつつ、業務データだけをクラウドやサーバーに逃がして端末に残さない、という考え方の製品群です。
既存のパソコンにソフトウェアを入れて使えるものが多く、サーバー基盤を新たに構築するVDIと比べて導入のハードルを抑えやすいのが特徴です。
以下は、端末にデータを残さないデータレスクライアントの比較表です。データを残さない仕組みや保存先、提供形態の違いを整理しています。
| サービス名 | Shadow Desktop | ZENMU Virtual Drive | CACHATTO SecureContainer | Flex Work Place Passage Drive | Flex Work Place Passage |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | アップデータ株式会社 | 株式会社ZenmuTech | e-Janネットワークス株式会社 | 横河レンタ・リース株式会社 | 横河レンタ・リース株式会社 |
| データを残さない仕組み | クラウド自動退避型 (PC内のデータをクラウド等へ自動アップロードし本体から削除) | 秘密分散型 (データを「無意味化」し断片をPC内とクラウド等に分散保管) | 端末内隔離型 (暗号化した隔離領域内で業務し終了時に削除) | ローカル書込制御+クラウド同期型 (ローカル書込を禁止しOneDriveへ集約) | ローカル書込制御型 (ローカルドライブを非表示にしファイルサーバーへリダイレクト) |
| 保存先 | クラウド/オンプレから選択 (Amazon S3・Microsoft 365・Google Cloud Storage・オンプレサーバー等) | PC内+クラウド/外部ストレージに分散 | 端末内の隔離領域(終了時に削除) クラウド(OneDrive・Box・Googleドライブ)同期やオンプレ設置も可 | クラウド(OneDrive for Business) | 社内ファイルサーバー(オンプレミス) |
| 提供形態 | 既存Windows PCへのインストール型 | 既存Windows PCへのインストール型 | 既存Windows PCへのインストール型 | 既存Windows PCへのインストール型 | 既存Windows PCへのインストール型 |
| 対応OS | Windows のみ (Home は暗号化機能に制限) | Windows 10/11 のみ (Mac版は2027年春提供予定) | Windows 11 (Switch版は Home も対応) | Windows 10/11(Pro・Enterprise) | Windows 10/11(Pro・Enterprise) ※別途サーバーOSが必要 |
| オフライン利用 | ● | ●ZEE対応(ZLEは非対応) | ● | △公式に明示なし | ●PassagePlate(揮発領域)で一部継続 |
| 初期費用 | かからない (公式資料に記載) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ (公式に明示なし) | 374,000円+12,000円/ユーザー (買い取り版。構築費別途) |
| 利用料金 | 950円〜/ユーザー・月(税込1,045円〜) ※公式価格表2024年10月版 | 1,800円/ユーザー・月(ZEE・税別) 500円/ユーザー・月(ZLE・税別) ※代理店・公式PR由来 | 基本利用料120,000円/年+96,000円/10ユーザー・年 (いずれも税別) | 550円/ユーザー・月(税込) ※別途OneDrive for Businessの契約が必要 | 780円/ユーザー・月(レンタル・保守込み) |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
1. Shadow Desktop(アップデータ株式会社)

アップデータ株式会社が提供するShadow Desktopは、既存のWindows PCにインストールして使うデータレスクライアントです。デスクトップ・ドキュメント・ピクチャ・ダウンロードといったユーザーデータを、Amazon S3やMicrosoft 365などのクラウドストレージへ自動的に逃がし、パソコン本体にデータを残さない状態を作ります。
OSやアプリケーション自体は仮想化しないため、普段のパソコンと同じ操作感を保てる点が位置づけの軸です。
開いたファイルは端末内の専用領域に一時的にキャッシュされますが、この領域は暗号化され、ファイル名も変換されるため、紛失・盗難時にディスクを取り出しても内容を読み取れない設計とされています。
保存先としてAmazon S3・Azure Blob Storage・Microsoft 365・Google Cloud Storageやオンプレミスのサーバーを選べるほか、オプションで感染前の日時を指定してファイルを復旧するロールバック機能も用意されています。
2. ZENMU Virtual Drive(株式会社ZenmuTech)

株式会社ZenmuTechのZENMU Virtual Driveは、「秘密分散」という独自技術でデータを守るデータレスクライアントです。鍵で暗号化する方式とは異なり、データを複数の断片に分割し、一部を端末内、一部をクラウドやサーバー側に分けて保管します。端末単体ではデータの全体が揃わないため、パソコンの紛失・盗難だけでは元のデータを復元できない仕組みです。
VDIに代わる「セキュアFATクライアント」として位置づけられており、端末側のリソースを使って業務するためネットワークの影響を受けにくい点を訴求しています。
盗難・紛失時にクラウド側の断片へのアクセスを止めてデータを無効化するリモートロックや、USBメモリ・スマートフォンへの同期によるオフライン利用にも対応します。料金プランは標準の ZEE(Enterprise Edition)と、VDI併用向けで低価格な ZLE(Limited Edition)の2種類があります。
3. CACHATTO SecureContainer(e-Janネットワークス株式会社)

パソコン上に暗号化された隔離領域を作り、その中だけで業務を完結させるのがe-Janネットワークス株式会社のCACHATTO SecureContainerです。業務はこの「セキュアコンテナ領域」の中で行い、サインアウトやシャットダウン時に領域内のデータを削除する「端末内隔離」方式を採ります。手元のパソコンのリソースで処理するため、オフラインでの操作にも対応します。
独自VPN「CACHATTO Private Connect」と組み合わせることで、VDI・DaaS・リモートデスクトップを使わずにクラウドやオンプレミスへ安全にアクセスできる構成が特徴です。会社支給の専用機向けの「セキュアコンテナ AD」と、私物PC(BYOD)向けに標準環境と切り替えて使う「セキュアコンテナ Switch」の2種類が用意されており、利用シーンに応じて選べます。
4. Flex Work Place Passage Drive(横河レンタ・リース株式会社)

横河レンタ・リース株式会社のFlex Work Place Passage Driveは、Microsoft 365のOneDrive for Businessを保存先として活用するデータレスクライアントです。パソコンのローカルディスクへの書き込みを禁止・不可視化し、ユーザーデータをOneDrive for Business上へ集約することで、端末にデータを残さない「データレスPC」を実現します。
既存のパソコンにクライアントアプリを入れて使うソフトウェア型で、パソコンの入れ替えやAD連携・VPN設定なしで導入できると訴求しています。すでにMicrosoft 365を導入済みで、OneDriveを保存先として活かしたい企業に向いた構成です。基本ライセンスは550円/ユーザー・月(税込、2026年8月時点の公式価格ページ)で、別途OneDrive for Businessの契約が必要です。
5. Flex Work Place Passage(横河レンタ・リース株式会社)

社内のファイルサーバーにデータを集約するオンプレミス型のデータレスクライアントが、同じく横河レンタ・リース株式会社のFlex Work Place Passageです。先のPassage Driveがクラウド(OneDrive)を保存先とするのに対し、こちらはネットワーク上のファイルサーバーをデータの保存先とする構成で、クラウドを使わず社内にデータを集約したい企業に向きます。
Windows PCのローカルドライブを非表示にし、ローカルディスクへの書き込みを制御することで、パソコンにユーザーデータを残しません。専用端末やサーバー集約基盤を新たに構築せず、既存のパソコンにインストールして使えるソフトウェア型です。ネットワーク非接続時にも揮発性の領域で一部業務を継続し、終了時にデータを消去する仕組みも備えています。
まとめ
シンクライアントは、端末に業務データやアプリを持たせず、処理とデータをサーバー側に集約する仕組みです。端末にデータを残さないため情報漏えい対策やテレワーク、運用管理の集約、BCPに役立つ一方、ネットワークへの依存・サーバー集中時の障害影響・初期費用の大きさといった弱点もあります。
実行方式はネットブート型・画面転送型(ブレードPC型・サーバーベース型・VDI型)・クラウド型(DaaS)に分かれ、方式ごとにコストと向き不向きが変わります。
「端末に業務データを残さない」という目的に照らせば、VDIを構築する以外にも、既存のパソコンを活かしてデータだけを逃がすデータレスクライアントという選択肢があります。自社の規模・通信環境・運用体制に合わせて、初期費用を抑えやすい方式も含めて比較することが、無理のない情報漏えい対策につながります。
端末単体の対策にとどまらず、社内セキュリティ全体で何をどう比較して選ぶかを把握したい場合は、守る対象別にソリューションのタイプと代表サービスを整理した次の記事が参考になります。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
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よくある質問(FAQ)
Q. シンクライアントとは何ですか?
A. シンクライアントとは、端末側に業務データやアプリを持たせず、アプリの処理とデータの保存をサーバー側に集約する仕組み、またはそのための専用端末です。利用者の手元の端末は、キーボードやマウスの操作をサーバーへ送り、サーバーで処理された結果の画面を受け取って表示する役割が中心になります。「シン(thin=薄い)」は、端末側が担う役割が薄いことを表しています。
Q. シンクライアントとファットクライアント(普通のパソコン)の違いは何ですか?
A. シンクライアントとファットクライアントの違いは、業務データの保存とアプリの処理を端末側に持つか(ファットクライアント)、サーバー側に寄せるか(シンクライアント)にあります。
ファットクライアントはOS・アプリ・業務データのすべてを端末自身が持ち処理も手元で行うため、端末の紛失・盗難時にはデータ漏えいのリスクがあります。一方のシンクライアントは端末に業務データを残さないため、紛失・盗難時でも情報漏えいを抑えやすいのが特徴です。
Q. シンクライアントとVDIの違いは何ですか?
A. VDIとシンクライアントは対立する別物ではなく、VDI(仮想デスクトップ)はシンクライアントを実現する実行方式の一つという関係です。
シンクライアントという大きな仕組みの中に、ネットブート型・画面転送型(ブレードPC型・サーバーベース型・VDI型)・クラウド型(DaaS)といった複数の方式があり、VDIはそのうちサーバー上に利用者ごとの仮想デスクトップ環境を作って画面を転送する中核的な方式を指します。「シンクライアント=広い仕組み」「VDI=その実現方法の一つ」と整理すると分かりやすくなります。
Q. シンクライアントの初期費用が高くなりやすいのはなぜですか?
A. シンクライアントの初期費用が高くなりやすいのは、特に自社でサーバーから構築するVDI型で、サーバー・仮想化ソフトウェア・仮想デスクトップのライセンス・端末がまとめて必要になるためです。
利用者数が少ないうちはこれらの初期投資を少人数で負担することになり、1人あたりのコストが割高になりやすい点にも注意が必要です。初期費用を抑えたい場合は、自前のサーバーが不要で月額の利用料で使えるクラウド型(DaaS)も選択肢になります。
Q. シンクライアントはオフライン環境でも使えますか?
A. シンクライアントは、処理やデータをサーバー側に置く方式では原則としてネットワーク接続が前提となり、オフラインでの利用には向きません。回線が不安定な場所や通信が遅い環境では操作の反応が鈍くなり、ネットワークが切れている間は業務ができません。外出先などオフラインでの作業が多い業務では、通信環境の安定性を事前に見積もるか、端末側で処理してオフライン利用に対応できる別の方式を検討する必要があります。
Q. シンクライアントとデータレスクライアントの違いは何ですか?
A. シンクライアントとデータレスクライアントの違いは、OSやアプリを手元のパソコンで動かすか(データレスクライアント)、サーバー側で動かすか(シンクライアント/VDI)という点にあります。
どちらも「端末に業務データを残さない」という目的は共通しますが、データレスクライアントは普段どおり手元のパソコンでOSやアプリを動かしつつ業務データだけをクラウドやサーバーに逃がす方式のため、サーバー基盤を新たに構築するVDIと比べて導入のハードルを抑えやすいのが特徴です。
Q. シンクライアントは少人数の小規模な組織でも導入できますか?
A. シンクライアントは少人数でも導入できますが、VDI型を自社構築する場合は初期投資を回収しにくいため、クラウド型(DaaS)やデータレスクライアントなど初期費用を抑えやすい方式のほうが向く場合があります。
利用者数が一定規模あり運用を集約することで管理負荷の軽減効果が見込める企業ほど、シンクライアントの利点が活きます。小さく試したい場合は、IPAとNTT東日本が無償で提供する実証サービス「シン・テレワークシステム」で使い勝手を確認してみる方法もあります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















