ネットワークセキュリティという言葉はよく耳にするものの、「結局どこまでを守る話なのか」「自社は何から手を付ければよいのか」が整理できていない、という声は情報システムの担当者から多く聞かれます。背景には、社内外のネットワークを狙う攻撃が多様化し、専任の担当者を置きにくい企業ほど被害が広がっている実情があります。
本記事では、ネットワークセキュリティとは何かという定義から、社内外を狙う主な脅威、対策の種類、どの脅威にどの対策が効くのかの対応、そして自社が何から着手すべきかまでを整理します。
これから対策を検討する方が全体像をつかみ、次の一歩を判断するための材料として活用してください。
目次
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ネットワークセキュリティとは
ネットワークセキュリティとは、情報セキュリティのうち、ネットワーク(通信経路・ネットワーク機器・社内外の接続)を守る取り組みを指します。具体的には、社内の端末やサーバー、拠点間やインターネットとの通信、そこでやり取りされる業務データを、外部からの攻撃や内部からの情報漏えいから守ることが目的です。
情報セキュリティでは、次の3つの要素(頭文字からCIAと呼ばれます)を守ることが基本とされます。総務省は用語集で、それぞれを次のように説明しています。
出典:国民のためのサイバーセキュリティサイト 用語集|総務省
- 機密性:情報にアクセスすることが認可されたものだけがアクセスできることを確実にすること。
- 完全性:情報および処理方法の正確さおよび完全である状態を安全防護すること。
- 可用性:認可された利用者が、必要なときに情報にアクセスできることを確実にすること。
ネットワークセキュリティは、この3要素をネットワークの面から守る取り組みと言い換えられます。「ネットワークセキュリティ」という言葉そのものに一つの決まった公式な定義があるわけではなく、情報セキュリティの考え方を通信経路や機器に当てはめたもの、と捉えると整理しやすくなります。守る範囲は、インターネットとの接点(社外との境界)から、社内のネットワーク、個々の端末まで広がります。
ネットワークセキュリティの主な脅威
社内外のネットワークを狙う攻撃には、さまざまな種類があります。IPA(情報処理推進機構)が毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として次の順位が示されています。
出典:情報セキュリティ10大脅威 2026(組織向け)|IPA
- ランサム攻撃による被害
- サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
- AIの利用をめぐるサイバーリスク
- システムの脆弱性を悪用した攻撃
- 機密情報を狙った標的型攻撃
- 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む)
- 内部不正による情報漏えい等
- リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃
- DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)
- ビジネスメール詐欺
ここでは、ネットワークに関わる代表的な脅威を、名前と「何をされるのか」がわかる形で整理します。
マルウェア・ランサムウェア
マルウェアは、端末やサーバーに感染して不正な動作を行う悪意のあるソフトウェアの総称です。近年とくに被害が深刻なのがランサムウェアで、警察庁は次のように説明しています。
ランサムウェアとは、感染すると端末等に保存されているデータを暗号化して使用できない状態にした上で、そのデータを復号する対価(金銭又は暗号資産)を要求する不正プログラムであり、近年は、データを窃取したうえ、「対価を支払わなければ当該データを公開する」などと対価を要求する二重恐喝の被害も多くみられる。
出典:令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
警察庁によると、令和6年のランサムウェアの被害報告件数は222件と、引き続き高水準で推移しています。攻撃者にランサムウェアを提供して身代金の一部を受け取る「RaaS(サービスとしてのランサムウェア)」という分業も確認されており、攻撃の裾野が広がっています。
不正アクセス・なりすまし
不正アクセスは、ID・パスワードの窃取やネットワーク機器の脆弱性を突いて、本来権限のない第三者が社内システムに侵入する攻撃です。なりすましは、正規の利用者になりすましてログインや送金指示などを行うものを指します。
とくに注意が必要なのが、VPN機器やファイアウォールといったネットワーク機器の脆弱性が侵入口になるケースです。警察庁は、令和6年にこれらの機器で重大な脆弱性が複数公表され、攻撃者がそこを足がかりに内部ネットワークへ侵入して情報の窃取やランサムウェア感染を行うと報告しています。同ランキングでも「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が組織の4位に入っています。
DoS・DDoS攻撃
DoS攻撃(サービス妨害攻撃)は、大量の通信を送りつけてサーバーやネットワークを過負荷にし、サービスを停止させる攻撃です。多数の機器から一斉に行うものを、DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)と呼びます。
同ランキングでは組織の9位に入っています。実際に重要インフラで障害が発生した事例は、後半の被害事例で紹介します。
サプライチェーン攻撃
サプライチェーン攻撃は、セキュリティ対策が比較的手薄な取引先や委託先、あるいは利用しているソフトウェアを経由して、標的の組織に侵入する攻撃です。同ランキングでは組織の2位と上位に挙げられ、自社だけでなく、委託先や取引先の対策まで視野に入れる必要があることを示しています。
内部不正
内部不正は、従業員や元従業員などが、与えられた権限を悪用して情報を持ち出したり、不正に操作したりするものです。同ランキングでも「内部不正による情報漏えい等」が組織の7位に入っています。外部からの攻撃だけでなく、社内からの情報の持ち出しにも備える必要があります。
とくにリモートワークの広がりで、社外の端末や自宅から社内データにアクセスする機会が増え、持ち出しの経路も多様になっています。アクセス権限の管理や操作ログの記録、情報漏えい対策と組み合わせて備えることが有効です。
ネットワークセキュリティ対策の種類
脅威に対する対策は、ネットワークのどの段階で効くかで整理すると、全体像をつかみやすくなります。大きく次の5つに分けられます。
- 入口(社外との接点)での防御
- 認証(本人確認)の強化
- 内部(社内ネットワーク・端末)の監視
- 出口(情報の持ち出し)の対策
- これらを支える備え(バックアップ・脆弱性診断)
これらを一体的に提供する「ゼロトラスト・SASE」のような横断的な考え方もあります。ここからは代表的な対策を、効く場面とあわせて解説します。

境界防御(ファイアウォール・IDS/IPS・UTM)
入口を守る基本が境界防御です。ファイアウォールは、あらかじめ定めたルールに基づいて通信を許可・遮断する仕組みです。IDS(侵入検知システム)は不審な通信を検知し、IPS(侵入防止システム)は検知に加えてその通信を自動的に遮断します。
UTM(統合脅威管理)は、ファイアウォール・IDS/IPS・アンチウイルス・Webフィルタリングなど複数の機能を1台(または1つの基盤)に統合した製品で、社外との接点でまとめて脅威を止めます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:国民のためのサイバーセキュリティサイト 用語集(IDS/IPS)|総務省(リンク)
認証強化(多要素認証・ID管理・検疫)
なりすましや不正ログインを防ぐのが認証強化です。多要素認証(MFA)は、IPAの説明では「知っているもの」「持っているもの」「本人に関するもの」のうち2つ以上を組み合わせて認証する方式で、パスワードが漏れても単独では突破されにくくなります。
IAM(ID・アクセス管理)は、誰が何にアクセスできるかを一元的に管理する仕組みです。NAC(ネットワークアクセス制御)は、ネットワークに接続しようとする端末を認証・検査し、許可された端末だけを接続させます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:情報セキュリティ6か条(解説編)|IPA(リンク)
多要素認証といっても方式ごとに強度は異なります。認証サービスを提供する事業者からは、次のような指摘があります。

当社が採用しているパスキーのパスワードレス認証は、フィッシング攻撃に対して非常に強い耐性を持ちます。SMS認証やワンタイムパスワードなどの一般的な多要素認証を突破する攻撃手法が顕在化する中、より安全な認証環境を提供します。
多要素認証は、SMS・ワンタイムパスワード・パスキー(FIDO2)など方式によってフィッシングへの強さや使い勝手が変わります。どの認証方式を選ぶか、料金やタイプから製品を比べたい場合は、以下の記事が参考になります。
エンドポイント対策(EPP・EDR)
端末(エンドポイント)を守る対策です。EPP(エンドポイント保護プラットフォーム)は、ウイルス対策ソフトのように侵入そのものを防ぐ従来型の防御を指します。EDR(エンドポイントでの検知・対応)は、端末上の挙動を監視し、侵入後の不審な動きを検知して隔離・調査まで行う仕組みです。侵入を「防ぐ」EPPと、侵入された後に「気づいて対応する」EDRは、組み合わせて使うことで端末の守りが厚くなります。
侵入後の端末の不審な挙動を捉えるEDRは、製品ごとに検知の仕組みや運用のしやすさが異なります。専任の担当者を置きにくい企業がクラウド型のEDRを比べたい場合は、以下の記事が参考になります。
中小企業向け不正アクセス検知システムおすすめ6選|EDR・ATOをクラウド型で徹底比較
取引先・金融機関からセキュリティ対策状況の説明を求められた、社内PCのランサムウェア被害がニュースで増えている、ECサイトでなりすましログインが疑われる注文が散発しています。 こうしたトリガーに該当するIT・情シス担当者は、不正アクセス検知…
情報漏えい対策(DLP)
出口を守るのが情報漏えい対策です。DLP(データ損失防止)は、機密情報の外部への持ち出しや送信を監視し、ポリシーに反する操作を検知・ブロックします。内部不正による持ち出しや、メールの誤送信による漏えいを防ぐ場面で役立ちます。
ネットワーク監視(NDR・ログ/SIEM)
社内ネットワークの内部を監視する対策です。NDR(ネットワークでの検知・対応)は、ネットワークを流れる通信を監視し、侵入後の不審な通信や感染拡大を検知して対応します。端末を監視するEDRの、ネットワーク版と考えるとわかりやすいでしょう。SIEM(セキュリティ情報・イベント管理)は、各機器が出力するログを集約して相関分析し、単体では気づきにくい脅威の兆候を見つけ出します。
VPN・通信の暗号化
VPN(仮想プライベートネットワーク)は、総務省の用語集では、インターネットや多くの利用者が共用する回線を介して、暗号化などの技術により仮想的な専用の通信経路を作る仕組みとされています。社外から社内ネットワークへ安全に接続する用途で広く使われます。
ただし前述のとおり、VPN機器自体の脆弱性や設定不備が侵入口になる事例が報告されているため、機器のソフトウェアを最新に保ち、設定を見直すことが前提になります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:国民のためのサイバーセキュリティサイト 用語集(VPN機器)|総務省(リンク)
データのバックアップ
バックアップは、重要なデータを定期的に別の場所(ネットワークから切り離した媒体やクラウドなど)に複製しておく対策です。ランサムウェアのようにデータを暗号化して使えなくする攻撃を受けても、複製から元に戻せます。IPAの「情報セキュリティ6か条」でも、まず実施すべき基本対策の一つに挙げられています。
脆弱性診断(セキュリティ診断)
脆弱性診断は、攻撃者に悪用される前に、自社のネットワーク機器・サーバー・アプリケーションの弱点(脆弱性)を洗い出して対処する取り組みです。VPN機器の脆弱性が侵入口になる事例があるように、弱点を放置しないことは、ここまで挙げたどの対策にとっても前提になります。定期的に診断を行い、見つかった弱点にソフトウェアの更新や設定変更で対処することで、侵入の足がかりを減らせます。
この診断をどのくらいの頻度で行えるかという運用面について、脆弱性診断を提供する事業者からは次のような指摘があります。

このようなオフィス内の脆弱性を調べるために、従来はお客様先まで足を運び、中に入って席を借りて調査する必要がありました。専門家が2人で出向いて期間中拘束されるため、どうしてもコストが高くなり、頻繁にはお願いしづらいのが実情です。結果として、年に1回程度の実施が一般的でした。一方で、新しい脆弱性は日々生まれており、生成AIの登場でそのスピードもさらに上がっています。
ゼロトラスト・SASE
ゼロトラストは、「社内ネットワークだから信頼する」という従来の境界型の前提を捨て、利用者・端末・リソースの単位でアクセスのたびに検証する考え方です。米国立標準技術研究所(NIST)の文書「SP 800-207」では、防御の重心を静的なネットワーク境界から、利用者・資産・リソースへ移すサイバーセキュリティの考え方と位置づけられています。
SASE(Secure Access Service Edge)は、ネットワーク機能とセキュリティ機能をクラウド上で統合して提供する枠組みで、リサーチ会社のGartnerが2019年に提唱した呼称です。拠点ごとに機器を置いたりVPNを個別に構えたりせず、通信の制御とセキュリティをクラウド側でまとめて行えるため、拠点や在宅勤務が多い企業ほど運用を簡素にしやすい利点があります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:NIST Special Publication 800-207「Zero Trust Architecture」|NIST(リンク)
脅威と対策の対応(どの脅威にどの対策が効くか)
ここまでの脅威と対策を、「どの脅威に、どの層の対策が主に効くか」で対応づけると、自社に足りていない部分を把握しやすくなります。以下は代表的な対応関係を整理した表です(◎:主に効く/○:補完的に効く/—:直接は対象外)。
| 脅威と対策の対応 | マルウェア・ランサムウェア | 不正アクセス・なりすまし | DoS・DDoS攻撃 | サプライチェーン攻撃 | 内部不正 |
|---|---|---|---|---|---|
| 入口(境界防御) | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | — |
| 内部(監視・端末) | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
| 認証(本人確認) | ○ | ◎ | — | ○ | ◎ |
| 出口(情報漏えい対策) | ○ | ○ | — | ○ | ◎ |
| 備え(バックアップ・診断) | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
| 横断(ゼロトラスト・SASE) | ○ | ◎ | ○ | ○ | ◎ |
※上記は代表的な対応関係を整理したものです。実際の効果は製品や構成により異なります。
一つの脅威に複数の層の対策が関わり、一つの対策が複数の脅威に効くことがわかります。特定の製品だけですべてを守るのではなく、入口・内部・出口と層を重ねて守る「多層防御」の考え方が、ネットワークセキュリティの基本になります。
ネットワークセキュリティの被害事例
ネットワークを起点とした被害が実際にどのように起きているか、警察庁が公表している令和6年の事例を見てみます。いずれも、いつ・どこで・何が起きたかが具体的に示されています。
ランサムウェアによるサービス停止と情報漏えい
令和6年6月、出版大手企業は、同社のサーバがランサムウェアを含む大規模な攻撃を受けたと発表した。この攻撃により、同社が提供するウェブサービスが広く停止したほか、書籍の流通等の事業に影響が発生した。同社は、この攻撃により25万人分を超える個人情報や企業情報が漏えいしたことが確認されたこと及び同年度決算において、調査・復旧費用等として20億円を超える損失を計上する見込みであることを発表した。
出典:令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
ウェブサービスの停止、事業への影響、25万人分を超える情報漏えい、20億円を超える損失と、ランサムウェアの被害が事業全体に及んだことがわかります。
重要インフラへのDDoS攻撃
令和6年から令和7年の年末年始にかけ、交通機関や金融機関等の重要インフラ事業者等において、DDoS攻撃によるとみられる被害が相次いで発生し、空港において手荷物の自動チェックイン機が使えない障害や、インターネットバンキングにログインしづらい状況が発生するなど、実際に国民の生活に被害がもたらされた。
出典:令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
DDoS攻撃は、サービスを停止させることで利用者の生活にも直接影響を及ぼします。
VPN機器の脆弱性を起点とした不正アクセス
令和6年7月、国内の宇宙航空分野の研究開発機関は、VPN装置のぜい弱性を起点とする不正アクセスにより、侵害を受けた端末、サーバ及びクラウド上で管理していた情報の一部が漏洩したことを発表した。
出典:令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁
ネットワーク機器の脆弱性が侵入口になり、端末・サーバー・クラウドにまたがって情報が漏えいした事例です。機器を最新に保つことの重要性がうかがえます。
何から着手すべきか(専任者がいない企業の優先順位)
対策の種類は多いものの、専任の担当者を置けない企業が、すべてを一度に導入するのは現実的ではありません。公的機関は、「経営としての段取り」と「技術的な最低限」の両面から、できるところに着手する進め方を示しています。
IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(第4.0版)」は、経営者が認識すべき3原則を次のように挙げています。
出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版|IPA
- 原則1 情報セキュリティ対策は経営者のリーダーシップで進める
- 原則2 委託先の情報セキュリティ対策まで考慮する
- 原則3 関係者とは常に情報セキュリティに関するコミュニケーションをとる
技術面では、同じくIPAの「情報セキュリティ6か条」が、まず実施すべき基本的な対策を挙げています。
出典:情報セキュリティ6か条(解説編)|IPA
- OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!(脆弱性対策)
- ウイルス対策ソフトを導入しよう!(ウイルス対策)
- パスワードを強化しよう!(パスワード管理)
- 共有設定を見直そう!(機器の設定)
- バックアップを取ろう!(バックアップ)
- 脅威や攻撃の手口を知ろう!(情報収集)
優先順位をつけるうえで参考になるのが、感染経路です。警察庁は、ランサムウェアの感染経路のうちVPNやリモートデスクトップ用の機器からの侵入が全体の8割以上を占めると報告しています。その原因としては、ID・パスワードが安易だったことや、不要なアカウントが管理されずに残っていたことが挙げられています。
まずはこうした機器のパスワードの強化と不要なアカウントの整理、ソフトウェアの最新化から着手するのが現実的です。
警察庁の集計では、ランサムウェア被害を組織規模別に前年と比較すると、大企業が減少する一方で中小企業は37%増加しており、対策が手薄になりやすい中小企業ほど注意が必要です。どこまで対策するかは自社の規模やリスクによって変わるため、IPAが公開する「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」のようなチェックで自社の立ち位置を確かめ、段階的に進めるとよいでしょう。
対策の種類ごとに実際の製品を機能や料金で比べると、自社に必要な一歩が具体的になります。
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ネットワークセキュリティ対策に使えるサービス
ここからは、前半で整理した対策の層に対応する具体的なサービスを紹介します。OSやソフトウェアの最新化・パスワードの強化・不要なアカウントの整理といった無料でできる基本対策を済ませたうえで、足りない層を製品で補強していくのが現実的な順序です。
入口(境界防御)・内部(監視・端末)・認証(本人確認)のどの層を補強したいか、自社の規模や運用体制に合うかを確かめながら検討材料にしてください。まずは各サービスの位置づけを一覧で整理します。
| サービス名 | SmartConnect クラウド型UTM | Network Blackbox | Trend Vision One | CloudGate UNO | YubiKey as a Service |
|---|---|---|---|---|---|
| 対策の層 | 入口(境界防御) | 内部(ネットワーク監視) | 内部(エンドポイント) | 認証(ID・アクセス管理) | 認証(多要素認証) |
| 守る対象・主な役割 | 拠点とインターネット間の通信。ファイアウォール・IPS(不正侵入防御)・アンチウイルス・Webフィルタなどを束ねたUTMで、外部からの侵入や不正通信を入口で防ぐ | 社内ネットワークを流れる通信。全パケットを保存し、内部の不審な通信やデータ持ち出しの検知と、事後の遡及調査(フォレンジック)を担うNDR | PC・サーバーなどの端末。端末を起点にメール・ネットワーク・クラウドの脅威を相関的に検知・対応するEDR/XDRプラットフォーム | クラウド・SaaSへのログイン。SSO・アクセス制限・パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証で、なりすましや不正アクセスを防ぐIDaaS | ログイン時の本人確認。フィッシング耐性の高い物理セキュリティキーで多要素認証を実現し、認証情報の窃取を起点とする侵入を防ぐ |
| 提供形態 | クラウド型(データセンターに集約。拠点にUTM機器を置かない) | ミラーリング方式で導入(提供形態は非公表) | クラウド型(SaaS) | クラウド型(IDaaS) | 物理セキュリティキーのサブスクリプション(法人向け) |
| 料金の目安 | 初期110,000円(税込121,000円)〜/月額38,500円(税込42,350円)〜(プランにより変動) | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ(クレジット制ライセンスで価格は非公開) | 月額440〜660円/ユーザー(税込。プランにより異なる。初期費用別途) | 要お問い合わせ(200ユーザーから、3年または5年契約) |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※上記は2026年11月時点の各社公開情報・リサーチをもとにした目安です。「要お問い合わせ」は公式が料金を公開していないものです。最新の仕様・料金は各社の公式情報をご確認ください。
SmartConnect Network & Security クラウド型UTM(NTTスマートコネクト)

入口の守りを担うのが、NTTスマートコネクト株式会社が提供するクラウド型のUTMサービスです。拠点ごとにUTM機器を設置する代わりに、同社のデータセンターに集約したUTM基盤へ各拠点の通信を集め、ファイアウォール・IPS(不正侵入防御)・アンチウイルス・Webフィルタリングなどの機能をまとめて適用します。
設定から運用までをセキュリティの専門部隊が担うオプションもあり、情報システムの担当者が不足している企業でも運用負担を抑えやすい点が特徴です。複数拠点のセキュリティ設定を一元化できるため、拠点ごとに担当者を置きにくい企業に向きます。料金は初期費用が110,000円(税込121,000円)から、月額が38,500円(税込42,350円)からで、帯域などのプランにより変わります(2026年11月時点)。
Network Blackbox(クワッドマイナージャパン)

株式会社クワッドマイナージャパンの「Network Blackbox」は、社内ネットワークを流れるパケットを収集・保存して分析するNDR(ネットワークでの検知・対応)製品です。外部からの侵入、社内の不審な通信、感染拡大(水平移動)といった、通信に痕跡が残る脅威の検知に対応し、内部の守りを担います。
保存した通信をさかのぼって調べられるため、インシデント発生後に「いつ・どこへ・何が送られたか」を確認する事後調査(フォレンジック)に使える点が強みです。EDRやSIEMと連携する設計で、端末やログの監視と組み合わせることで、内部の守りを厚くできます。
Trend Vision One(トレンドマイクロ)

トレンドマイクロ株式会社の「Trend Vision One」(現行の公式表記はTrendAI Vision One)は、エンドポイント・サーバー・クラウド・メール・ネットワークなど複数の領域で集めた情報を相関分析し、攻撃の全体像を可視化するXDR(拡張検知・対応)を中核とした統合プラットフォームです。端末やサーバーを含めて横断的に守りたい場合の選択肢になります。
個別の対策製品をばらばらに運用するのではなく、複数の領域を一つの画面で見渡して運用したい企業に向きます。クラウド型(SaaS)で提供されます。
CloudGate UNO(インターナショナルシステムリサーチ)

認証とアクセスの入口を固めるのが、株式会社インターナショナルシステムリサーチが自社開発する国産のID基盤「CloudGate UNO」です。シングルサインオン(SSO)、多要素認証、パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証、アクセス制限、ID管理を一つにまとめて提供します。
IPアドレスや端末、時間帯によるアクセス制限を組み合わせられるため、なりすましや不正ログインの対策として導入しやすい構成です。公式サイトによると導入実績は1,400社以上(2026年11月時点)で、料金はStandard Plusが1ユーザーあたり月額440円(税込)からです。
YubiKey as a Service(インターナショナルシステムリサーチ)

なりすましをより確実に防ぎたい場合の選択肢が、同じくインターナショナルシステムリサーチが提供する「YubiKey as a Service」です。Yubico社の物理セキュリティキー「YubiKey」を、法人向けにサブスクリプション型で提供するサービスです。
秘密鍵が端末内にとどまり外部に送信されないため、フィッシングに強い多要素認証を実現できます。スマートフォンを使えない現場でも利用でき、予備キーやキー種類の変更、導入支援が契約に含まれます。最低契約数は200ユーザーからで、CloudGate UNOのようなID基盤と組み合わせて使うことが想定されています。
ここで挙げたのは対策の層ごとの代表的なサービスです。ネットワークセキュリティを含む社内セキュリティ全体を、守る対象別のタイプから比較して検討したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
まとめ
ネットワークセキュリティは、社内外のネットワークを狙うさまざまな脅威から、端末・サーバー・通信・業務データを守る取り組みです。情報セキュリティの3要素(機密性・完全性・可用性)を、ネットワークの面から守るものと整理できます。
脅威にはランサムウェア、不正アクセス、DDoS、サプライチェーン攻撃、内部不正などがあり、それぞれに境界防御・認証強化・エンドポイント対策・監視・情報漏えい対策といった対策が対応します。一つの製品ですべてを守るのではなく、入口・内部・出口と層を重ねて守る「多層防御」の考え方が基本です。
専任の担当者がいない企業は、まずVPN機器や認証の見直しなど、被害につながりやすい箇所から段階的に着手するのが現実的です。各対策の製品を詳しく比較検討する際は、以下の資料もあわせてご活用ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. ネットワークセキュリティと情報セキュリティの違いは何ですか?
A. ネットワークセキュリティは、情報セキュリティのうちネットワーク(通信経路・ネットワーク機器・社内外の接続)を守る部分を指します。情報セキュリティは、情報の機密性・完全性・可用性(CIA)を守る取り組み全体を指す広い概念で、ネットワークセキュリティはその考え方を通信経路や機器に当てはめたものと整理できます。
「ネットワークセキュリティ」という言葉そのものに一つの決まった公式な定義があるわけではなく、守る範囲はインターネットとの接点(社外との境界)から、社内ネットワーク、個々の端末まで広がります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:国民のためのサイバーセキュリティサイト 用語集|総務省(リンク)
Q. ネットワークセキュリティはファイアウォールだけで十分ですか?
A. ファイアウォールだけでは不十分で、入口・内部・出口と層を重ねて守る「多層防御」が基本です。ファイアウォールは社外との接点(入口)で通信を許可・遮断する対策で、すでに社内へ侵入した脅威や、内部からの情報の持ち出し、端末上の不審な挙動には直接対応できません。
認証強化・エンドポイント対策・ネットワーク監視・情報漏えい対策などを組み合わせ、一つの層が破られても別の層で止められる構成にすることが重要です。
Q. ネットワークセキュリティのUTMとEDRの違いは何ですか?
A. UTMは社外との接点(入口)で通信をまとめて守る製品で、EDRは個々の端末上の不審な挙動を侵入後に検知・対応する仕組みです。UTMはファイアウォール・IDS/IPS・アンチウイルス・Webフィルタリングなどを1つに統合し、ネットワークの境界で脅威を止めます。
一方EDR(エンドポイントでの検知・対応)は、入口をすり抜けて端末に入り込んだ後の動きを監視し、隔離・調査まで行います。守る場所(入口か端末か)と役割(侵入を防ぐか、侵入後に気づいて対応するか)が異なるため、競合せず組み合わせて使う対策です。
Q. 中小企業もゼロトラストを導入する必要がありますか?
A. いきなり全面的に導入する必要はなく、認証強化やアクセス管理など取り入れやすい部分から段階的に進めるのが現実的です。ゼロトラストは「社内だから信頼する」という前提を見直す考え方で、多要素認証の導入やアクセス制限の強化はその第一歩にあたります。
専任の担当者がいない企業は、まず基本対策(情報セキュリティ6か条など)を固めたうえで、クラウド利用やリモートワークの広がりに合わせて認証・アクセス管理を強化していくと、無理なく近づけます。
Q. VPNを導入すればネットワークセキュリティは安全になりますか?
A. VPNは社外から社内へ安全に接続する手段ですが、VPN機器自体の脆弱性や設定不備が侵入口になるため、導入すれば安全というわけではありません。警察庁の報告では、ランサムウェアの感染経路の8割以上がVPNやリモートデスクトップ用の機器からの侵入です。
機器のソフトウェアを最新に保ち、パスワードの強化と不要なアカウントの整理をあわせて行うことが前提になります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁(リンク)
Q. 中小企業はネットワークセキュリティ対策をどこまでやれば十分ですか?
A. どこまで対策するかは自社の規模やリスクによって変わり一律の正解はありませんが、まずはソフトウェアの最新化・パスワードの強化・バックアップなどの基本から段階的に進めるのが現実的です。IPAは「情報セキュリティ6か条」でまず実施すべき基本的な対策を示しており、最低限の目安になります。
警察庁の集計では、ランサムウェア被害が中小企業で前年比37%増加しており、対策が手薄になりやすい中小企業ほど注意が必要です。IPAが公開する「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」などで自社の立ち位置を確かめ、優先度の高い箇所から着手するとよいでしょう。
Q. ネットワークセキュリティ対策にはどれくらいの費用がかかりますか?
A. 費用は対策の種類と製品によって大きく異なり、まず着手すべき基本対策の多くは大きな追加費用をかけずに始められます。OSやソフトウェアの最新化、パスワードの強化、不要なアカウントの整理といった優先度の高い対策は、既存の環境の運用を見直すことで対応でき、費用を抑えられます。
製品を導入する場合は、ID基盤のように1ユーザーあたり月額数百円から始められるものから、クラウド型UTMのように月額数万円からのものまで幅があるため、補強したい層(入口・内部・認証など)を絞って比較するのが現実的です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















