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脆弱性対策の進め方|情報収集から診断・パッチ適用・運用までの手順と脆弱性診断の使い分け

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脆弱性・セキュリティ診断サービス比較表(2026年版)

自社のWebサービスや社内のPC・サーバを預かるなかで、脆弱性を突かれた情報漏えいのニュースを見るたびに「うちは大丈夫なのか」と不安を感じていませんか。脆弱性対策という言葉は知っていても、実際に何から手をつけ、どの順で進めればよいのかは意外とはっきりしないものです。

脆弱性対策は、情報を集めて自社の該当を確認し、危険度に応じて優先順位をつけ、パッチ適用などで対応し、それを継続して回す、という一連の流れで進めます。言葉の定義を押さえることより、まずこの「やることの地図」を手にすることが、着実な対策の第一歩になります。

本記事では、脆弱性対策の進め方を6つのステップで解説し、各ステップで使う情報源(JVN・CVE・IPAなど)や危険度の判断基準(CVSS)、自社だけで回しきれない部分を補う脆弱性診断の使い分けまでを具体的に整理します。明日から自社で動けるよう、手順に沿ってまとめました。

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脆弱性対策の進め方【6ステップの全体像】

脆弱性対策は、一度きりの作業ではなく、情報を集めて対応し、継続して回していく一連の流れです。全体像は次の6ステップで捉えると整理しやすくなります。それぞれの詳しいやり方は、この後の各セクションで解説します。

脆弱性対策の進め方を示した6ステップの流れ図。STEP1 脆弱性情報を集める(JVN・CVEなど公的な情報源から公表された脆弱性情報を収集)、STEP2 自社が該当するか確認する(IT資産の把握と照らし自社のOS・ソフト・機器が対象か確認)、STEP3 危険度を判断し優先順位をつける(CVSSなどを目安にどの脆弱性から対応すべきか決める)、STEP4 パッチ適用・設定変更・回避で対応する(優先順位の高いものから修正プログラム適用や設定変更などで対応)、STEP5 対策後の状態を確認する(対応が正しく反映されリスクが下がったか確認)、STEP6 継続的に脆弱性を管理する(STEP1〜5を定期的に回し運用として定着)。全体は把握・対応・継続改善の循環として回す。
  1. 脆弱性情報を集める:JVNやCVEなどの公的な情報源から、新たに公表された脆弱性の情報を収集します(情報源の一覧と使い分け)。
  2. 自社が該当するか確認する:集めた情報が、自社で使っているOS・ソフトウェア・機器に当てはまるかを、IT資産の把握と照らし合わせて確認します(情報源の一覧と使い分け)。
  3. 危険度を判断し優先順位をつける:CVSSなどを目安に、どの脆弱性から対応すべきかを決めます(危険度の判断と優先順位づけ)。
  4. パッチ適用・設定変更・回避で対応する:優先順位の高いものから、修正プログラムの適用や設定変更などで対応します(見つかった脆弱性への対応)。
  5. 対策後の状態を確認する:対応が正しく反映され、リスクが下がったかを確認します(見つかった脆弱性への対応)。
  6. 継続的に脆弱性を管理する:1〜5を定期的に回し、運用として定着させます(継続的な脆弱性管理と内製・外部委託の判断)。

この流れは、経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」が示す考え方とも重なります。同ガイドラインは、リスクの把握と対応計画の策定(指示4)、対応の仕組みの構築(指示5)、PDCAサイクルによる継続的改善(指示6)を経営上の重要項目として挙げています。

脆弱性対策も、この「把握→対応→継続改善」の循環として捉えると、場当たり的な対応から抜け出しやすくなります。

出典・参考資料(1件)

脆弱性情報の集め方|情報源の一覧と使い分け

ここからは、ステップ1と2にあたる「脆弱性情報をどこで集め、自社が該当するかをどう確認するか」を具体的に見ていきます。脆弱性情報は複数の公的な情報源が公開しており、それぞれ役割が異なります。

主要な情報源の一覧(名称・何が載るか・使い方)

自社のシステムに関わる脆弱性情報を見落とさないために、まず押さえておきたい公的な情報源は次のとおりです。

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情報源JVN(Japan Vulnerability Notes)JVN iPediaCVENVD(National Vulnerability Database)JPCERT/CC各ベンダーのセキュリティ情報
運営JPCERT/CC・IPA 共同運営IPAMITRE(米国)NIST(米国)JPCERTコーディネーションセンター各ソフトウェア提供元
何が載るか・使い方日本で使われているソフトウェアなどの脆弱性関連情報と対策情報を提供する脆弱性対策情報ポータル。国内で調整・公表された脆弱性の注意喚起を確認できる公表済みの脆弱性対策情報を蓄積・検索できるデータベース。CVSSによる評価値とともに脆弱性を調べられる(稼働状況に注意)公開された脆弱性に一意の識別番号「CVE-ID」を付与する国際的な枠組み。世界共通の番号で脆弱性を特定できるCVEをもとにCVSSスコアなどの分析情報を付加した米国政府のデータベースインシデント対応の支援と、公表前の脆弱性関連情報を製品開発者と調整するハンドリングを担う。注意喚起・緊急の脆弱性情報を発信する自社が使う製品の提供元が出す脆弱性情報・修正プログラムの案内。該当製品を使っている場合はこれが一次の確認先になる

これらは入口と役割が分かれています。IPAの脆弱性対策情報ポータルは個別の脆弱性をJVNやJVN iPediaへ案内する入口にあたり、JVNは調整済みの個別脆弱性の注意喚起、JVN iPediaはCVSS付きで検索できる蓄積データベース、CVE/NVDは国際的な識別と分析、という位置づけです。

自社の該当確認では、まず使っている製品のベンダー情報とJVNを押さえ、国際的な番号で追う場合にCVE/NVDを併用するのが実務的です。

新しい脆弱性を見落とさないためには、JVNの注意喚起メールやRSS、使っている製品ベンダーのセキュリティ情報の配信などを登録し、情報が自動的に届く状態にしておくと、巡回の手間を減らせます。

IPAが運営するJVN iPedia(およびMyJVNバージョンチェッカ、mjcheck4などのMyJVN関連サービス)は、一時的にサービスを停止することがあります(2026年11月時点でも一時停止の告知が出ています)。利用時には公式サイトで稼働状況を確認し、停止中は恒常的に稼働しているJVN・CVE/NVD・JPCERT/CCを主に使うとよいでしょう。

出典・参考資料(5件)

脆弱性情報の公表を支える仕組み

日本国内の脆弱性情報は、「情報セキュリティ早期警戒パートナーシップ」という枠組みで、IPAが脆弱性の届出を受け付け、JPCERT/CCが製品開発者との調整を行い、JVNで公表する、という三者分担で扱われています。JPCERT/CCは脆弱性情報ハンドリングの役割を次のように説明しています。

脆弱性情報ハンドリングとは、公表前の脆弱性関連情報を必要に応じて公開することで、脆弱性情報の悪用、または障害を引き起こす危険性を最小限に食い止めるためのプロセスです。JPCERT/CCは、本枠組みの調整機関として、一般公表前に脆弱性関連情報を製品開発者に連絡し、対応(パッチ、ワークアラウンドなどの作成)を依頼します。

出典:脆弱性関連情報の取扱い|JPCERTコーディネーションセンター

この仕組みがあるため、公表される脆弱性情報の多くには、すでに修正プログラムや回避策の案内が添えられています。情報を集める段階で「対応の手がかりもセットで得られる」と理解しておくと、次の対応ステップに進みやすくなります。

集めた情報が自社に該当するかを確認する(IT資産の把握)

脆弱性情報を集めても、自社で使っているOS・ソフトウェア・ネットワーク機器が分かっていなければ、該当するかどうかを判断できません。そのため、どの端末でどのソフトウェアをどのバージョンで使っているかを把握しておくことが、該当確認の前提になります。

この把握が曖昧だと、「公表された脆弱性が自社に関係あるか分からず放置する」という事態につながりかねません。まずは自社で稼働しているシステムと使用ソフトウェアを棚卸しし、脆弱性情報と突き合わせられる状態にしておくことが重要です。

棚卸しは、サーバ・PC・ネットワーク機器といった資産ごとに、使っているOSとソフトウェアの名称・バージョンを一覧(台帳)にまとめるところから始められます。管理対象が多く手作業で追いきれない場合は、IT資産管理ツールの活用も検討します。

脆弱性の危険度の判断と優先順位づけ(CVSS)

ステップ3では、見つかった脆弱性の危険度を判断し、どれから対応するかの優先順位をつけます。すべての脆弱性に同時に対応するのは現実的でないため、危険度の目安となる指標を使って判断します。

CVSSとは(基本評価基準とスコアの目安)

CVSS(共通脆弱性評価システム)は、脆弱性の深刻度を共通の基準で数値化する仕組みです。運営元のFIRSTは、脆弱性の主要な特性を捉えて数値スコアにし、そのスコアをlow・medium・high・criticalといった定性的な表現に変換できる、と説明しています。

CVSSには3つの評価基準があります。脆弱性そのものの特性を評価する基本評価基準(Base Metrics)、攻撃コードや対策の有無で変動する現状評価基準(Temporal Metrics)、利用者の環境によって変わる環境評価基準(Environmental Metrics)です。一般に公表される値は、脆弱性固有の特性を示す基本評価基準のスコアです。

基本評価基準のスコアは0.0〜10.0の数値で、FIRSTのCVSS v3.1では深刻度が次のように区分されています。日本語の深刻度ラベル(緊急・重要・警告・注意)は、JVN iPediaが表示に用いているものです。

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深刻度CriticalHighMediumLowNone
スコア9.0〜10.07.0〜8.94.0〜6.90.1〜3.90.0
日本語ラベル緊急重要警告注意—

FIRSTは2023年にCVSS v4.0を公開していますが、深刻度の区分(None〜Critical)は v3.1 と共通で、実務では v3.x も広く使われています。スコアの版が混在する場合があるため、情報源ごとにどの版のスコアかを確認しておくと誤解を避けられます。

出典・参考資料(3件)

CVSSだけに頼らない優先順位づけ

CVSSのスコアは危険度を測る有力な目安ですが、「スコアが高いものから順に対応する」だけでは実務に合わないことがあります。同じ脆弱性でも、その対象が社外公開のシステムか、閉じた社内環境かによって、悪用されるリスクは変わるためです。

そこで、基本評価基準のスコアだけで決めず、2つの観点を掛け合わせて優先順位を判断します。自社環境での悪用可能性(インターネットに公開されているか、攻撃の起点になりやすいか)と、その資産の重要度(止まると事業にどれだけ影響するか)です。CVSSの環境評価基準は、利用者の環境に応じてスコアを調整するための基準であり、こうした実務上の重みづけと整合します。

限られた人員と時間のなかで、影響の大きいものから確実に潰していく考え方が無理のない進め方です。

見つかった脆弱性への対応|パッチ適用・設定変更・回避・リスク受容

ステップ4と5では、優先順位をつけた脆弱性に実際に対応し、その結果を確認します。対応といっても、すべてを修正プログラムで塞ぐとは限りません。状況に応じて複数の方針を使い分けます。

4つの対応方針(回避・低減・移転・受容)

見つかった脆弱性への対応は、パッチ適用や設定変更といった具体的な手段と、それらをどう使うかの方針に分けて考えると整理できます。方針は、一般的なリスクマネジメントの枠組みで次の4つに整理でき、脆弱性対策でもこの考え方が当てはまります。

  • 回避:脆弱性のある機能やサービスの利用自体をやめ、リスクの原因を取り除く
  • 低減(軽減):修正プログラムの適用・設定変更・回避策(ワークアラウンド)によって、発生可能性や影響を下げる。脆弱性対応の中心となる方針
  • 移転(転嫁):サイバー保険や外部委託などで、リスクが顕在化したときの負担を他に移す
  • 受容:影響が小さく対応コストが見合わない場合に、リスクを認識したうえで受け入れる

パッチ適用時の検証と計画の勘所

修正プログラムの適用は低減の中心ですが、すぐ本番環境に当てればよいとは限りません。パッチによって既存の機能やほかのシステムとの連携に不具合が出ることがあるため、検証環境で影響を確認してから適用する手順が安全です。

すぐに適用できない事情があるときは、該当機能の一時停止やアクセス制限といった回避策でリスクを抑えつつ、業務への影響を見ながら適用の計画を立てます。公表される脆弱性情報には回避策が併記されることも多いため、情報収集の段階で得た内容がここで役立ちます。

対策後の状態を確認する

対応したら、修正が正しく反映され、狙ったとおりにリスクが下がったかを確認します。パッチが適用されたバージョンになっているか、設定変更が意図どおり効いているかをチェックし、必要に応じて再診断で裏づけます。ここまでを一巡させて、はじめて一つの脆弱性への対応が完了したといえます。

そもそも脆弱性とは|原因・企業リスク・被害事例

ここまで進め方を見てきましたが、改めて「なぜ対策が必要なのか」を押さえておくと、社内で対策の重要性を説明する際の根拠になります。

脆弱性とは何か

脆弱性とは、OS・ソフトウェア・機器などに存在する、情報セキュリティ上の欠陥や弱点のことです。放置すると、攻撃者に不正アクセスやマルウェア感染、情報の改ざん・窃取の糸口として悪用される恐れがあります。

脆弱性が生まれる原因

脆弱性は、開発段階での設計ミスやプログラムの不具合によって生じるほか、公開された脆弱性に対して修正プログラムの適用が追いついていないことでも残り続けます。日々新たな脆弱性が公表されるため、「対策済み」の状態を保つには継続的な更新が欠かせません。

企業が受けるリスクと実際の被害事例

脆弱性を突かれると、社内ネットワークへの不正侵入、ランサムウェア感染による事業停止、取引先を経由した被害の拡大などが起こり得ます。IPAが公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織向けランキングでは、こうした脅威が上位に並んでいます(以下は脆弱性に関わる主なものを抜粋)。

  • 1位:ランサム攻撃による被害
  • 2位:サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
  • 4位:システムの脆弱性を悪用した攻撃
  • 8位:リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃

「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が4位に入っていること自体が、脆弱性対策が企業の重要課題であることを示しています。また、ランサムウェアやサプライチェーンを狙った攻撃も、その多くは脆弱性を侵入口として利用します。テレワーク環境で使うVPN機器などの脆弱性が狙われる事例も多く報告されています。

出典・参考資料(1件)

脆弱性診断の種類と使い分け|自動診断・手動診断・外部サービス

これまでの手順を自社だけで回そうとすると、「そもそも自社にどんな脆弱性が潜んでいるのか分からない」という壁に突き当たります。この弱点を能動的に洗い出すのが脆弱性診断です。診断には種類があり、目的に応じて使い分けます。

自動診断(ツール・スキャナー)

ツールやスキャナーで脆弱性を機械的に検出する方法です。短時間で広く検査でき、定期的な実施やリリースのたびの確認に向きます。一方、既知のパターンに基づく検出が中心のため、ロジックの作り込みに起因する問題など、文脈を要する弱点は見つけにくい面があります。

手動診断(ペネトレーションテスト)

専門家が攻撃者の視点で実際に侵入を試み、弱点を深く掘り下げる方法です。自動診断では拾いきれない、複数の要素を組み合わせた攻撃経路まで検証できます。精度と深度は高い一方、時間とコストがかかるため、重要なシステムや公開前の総点検などで使われます。

自動診断と手動診断の組み合わせ

実務では、日常的な確認は自動診断で広くカバーし、重要な局面で手動診断を重ねる、という組み合わせが効果的です。網羅性の高い自動診断と、深度の高い手動診断を補い合わせることで、検出の抜けを減らせます。

手動診断の中心であるペネトレーションテストは、ツールによる脆弱性診断としばしば混同されますが、目的・費用・向いている場面が異なります。両者の違いと使い分けを詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

診断対象による違い(Web・API・ソースコード・クラウド・ネットワーク)

脆弱性診断は、何を対象にするかでも分かれます。稼働中のWebアプリケーションやAPIを外側から検査する動的診断、プログラムのソースコードを解析する静的診断、クラウドの設定を点検するもの、ネットワーク上の通信を検査するものなどがあります。自社で守りたい対象がWebサービスなのか、社内ネットワークなのか、開発中のコードなのかによって、適した診断の種類が変わります。

外部の脆弱性診断サービスをいつ使うか

外部の脆弱性診断サービスには、ツールを自社運用するタイプ、専門家が診断して報告書を納めるタイプ、その両方を組み合わせるタイプがあります。客観的な第三者の視点で弱点を洗い出したいときや、自社にない専門性で深く検証したいときに、対象や予算、求める深さに応じて選びます。記事の後半で、具体的なサービスを比較しながら選び方を整理します。

継続的な脆弱性管理と内製・外部委託の判断

脆弱性は次々と新たに公表されるため、一度対策すれば終わりではありません。ステップ6にあたる継続的な脆弱性管理は、ここまでの流れを運用として定着させる取り組みです。

脆弱性管理のサイクルを回す

情報収集・該当確認・優先順位づけ・対応・確認の流れを、定期的に繰り返す仕組みとして組み込みます。IT資産の棚卸しを最新に保ち、新しい脆弱性が出たらすぐ自社への影響を判断できる状態を維持することが、管理の土台になります。経済産業省・IPAの「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」も、PDCAサイクルによる継続的改善(指示6)を重要項目に挙げています。

人材・体制不足への対処

セキュリティの専任担当者がいない企業では、脆弱性管理を日常業務のなかで回し続けるのは負担になりがちです。自動診断ツールで定期チェックを仕組み化したり、判断に迷う部分を外部の専門家に委ねたりして、無理なく継続できる形を設計することが続けやすい進め方です。

内製と外部委託の判断軸

どこまでを自社で行い、どこから外部に任せるかは、自社の人材・対象システムの重要度・求める診断の深さで判断します。日常的な情報収集やパッチ適用は内製で回しつつ、専門性の高いペネトレーションテストや、客観性が求められる定期診断は外部サービスに委ねる、といった役割分担が取り組みやすい形です。委託する場合は、対象範囲・診断手法・報告内容を確認し、自社の課題に合うサービスを選びます。

脆弱性診断サービスの比較と選び方

ここからは、自社の弱点を洗い出すのに役立つ脆弱性診断サービスを紹介します。診断の対象(Web・API・ソースコード・クラウド・ネットワーク)やアプローチ(自動/受託/継続)はサービスごとに異なるため、自社が守りたい対象に合うものを選ぶことが大切です。

守りたい対象から選ぶと候補を絞りやすくなります。自社の状況に近いものから資料を見ていくとよいでしょう。

  • 社外に公開するWebサービス・API・ソースコードの弱点を洗い出したい → 自動スキャン型やAIと専門家を組み合わせた診断
  • 社内ネットワークに潜む脅威を可視化したい → ネットワーク層の診断
  • 専任担当がいないなかで継続的に回したい → 定期診断型のパッケージ

本記事では代表的なサービスを取り上げますが、より多くの脆弱性診断サービスを、診断方法・費用相場・選び方まで含めて比較検討したい方は、以下の記事で詳しく解説しています。

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サービス名Aikido Securityセキュア・レントゲンHi AUDITCoWorker 脆弱性診断サービスKATABAMI
提供会社株式会社AndGo(日本窓口)
/Aikido Security BV(開発元)
株式会社クワッドマイナージャパン株式会社TECHFUNDCoWorker株式会社株式会社SYNCHRO
主な診断対象ソースコード・依存ライブラリ
クラウド設定・コンテナ
Webアプリ(DAST)
ネットワーク(IT/OT)
流れる通信を全数検査
スマートコントラクト(主力)
Webアプリ・API・ネットワーク等
ソースコード
Webアプリ・API
社内ネットワーク・機器
(サーバー・複合機・PC等)
診断方式ツールによる自動スキャン
(自社運用のSaaS型)
専門家による受託診断
(機器を設置して分析)
自動診断+専門家の手動監査
(ハイブリッド)
自社開発AIの自動解析+専門家確認
(ハイブリッド)
受託・月次の定期診断
(ネットワーク内部から)
特徴開発から運用までの脆弱性を
1つの管理画面で横断検査。
無料プランで試せる
実際の通信を全数キャプチャし
内部に潜伏する脅威も可視化。
スポット型の診断
スマートコントラクト監査が主力。
報告後の修正対応まで並走
AI解析で高速に診断。
目的別に段階的なメニューを選べる
診断に加え復旧(バックアップ)と
補償(サイバー保険)を一体提供
料金無料プランあり
有料プランは月額5万円台〜
(参考価格)
要問い合わせ
(スポット診断型)
要問い合わせ15万円〜
(ソースコードAI診断)
1台1,250円/月〜
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1. Aikido Security|オールインワン脆弱性診断SaaS(株式会社AndGo)

Aikido Securityのウェブサイト

Aikido Securityは、ソースコード・依存ライブラリ・クラウド設定・コンテナ・稼働中のWebアプリを1つの管理画面でまとめて検査できる、自動スキャン型の脆弱性診断SaaSです。日本国内では株式会社AndGoが販売・問い合わせの窓口を担っています。

  • 幅広い検査を1画面で:ソースコード解析(SAST・SCA)、動的診断(DAST)、クラウド設定診断(CSPM)などに対応し、開発から運用までの脆弱性を横断的に扱えます。
  • 運用を助ける機能:アラートの自動トリアージで誤検知を減らし、Slack・Teams・Jira・AWSなどと連携できます。ISO 27001・SOC 2の認証取得・維持の支援と監査用レポート出力にも対応します。
  • 導入前に試せる:無料のDeveloperプランがあり、導入前に機能を試すことができます(公式料金ページ)。

自社の開発・運用チームが主体となってツールを使い、継続的に脆弱性を検査したい企業に向いています。

ツールによる自動スキャンの今後について、日本国内の窓口を務める株式会社AndGoの原氏は、AIの進展が侵入テストのあり方を変えつつあると話しています。

原氏
株式会社AndGo 代表取締役
原氏
独自インタビューより

AIコーディングが当たり前になるほど、「AIが書いたコードも含めて、日常的に検証できる仕組み」が重要になります。その文脈で、AIエージェントがハッカーをエミュレーションして侵入テストを行い、ログや証跡を残す“AIペンテスト”の方向性も出てきています。これが進むと、コストや時間の都合で「リリース前に1回」が限界だった侵入テストを、ビルドパイプラインに組み込み、毎日回す世界が見えてきます。

2. セキュア・レントゲン(株式会社クワッドマイナージャパン)

セキュア・レントゲンのウェブサイト

株式会社クワッドマイナージャパンが提供するセキュア・レントゲンは、NDR製品「Network Blackbox」のフルパケットキャプチャ技術を活用して、ネットワーク上のリスクを診断します。実際に流れている通信を全数検査し、外部からの脅威だけでなく、すでに内部に侵入・潜伏している脅威や弱点を洗い出す点に特徴があります。

  • 通信の実測ベースで診断:設定診断やスキャンではなく、実際の通信パケットを全数キャプチャして分析するため、内部に潜む脅威や不審な通信も検出の対象になります。
  • IT/OT両環境に対応:制御技術(OT)のプロトコルに対応し、工場ネットワークを含めて診断できる点を、製造業向けのリスク診断として訴求しています。ミラーリング方式で接続するため、業務への影響を抑えられます。

Webアプリのスキャンやペネトレーションテストとは対象が異なり、ネットワーク層のリスクを可視化するスポット型の診断です。検出・可視化と対策案の提示までを担い、実際の修正は自社または既存ベンダーが行う設計のため、自社ネットワークにどんなリスクが潜んでいるかを把握したい企業に向いています。

境界防御やエンドポイント対策を固めている企業が、あえてネットワーク内部の診断を求める背景について、株式会社クワッドマイナージャパンの白垣氏は導入現場の実態を次のように説明しています。

白垣氏
株式会社クワッドマイナージャパン 営業部
白垣氏
独自インタビューより

金融機関のお客様は、脆弱性診断やペネトレーションテストをすでに実施されていたり、ネットワーク分離によって、境界防御やエンドポイント、つまり入り口と出口の対策はしっかり固めていらっしゃるところが大多数です。ただ、お話を伺うと「侵入されない前提で設計しているからこそ、そこを突破されてひとたび中に入られてしまうと、内部は弱いんだよね」という現状があるとおっしゃいます。

3. Hi AUDIT(株式会社TECHFUND)

Hi AUDITのウェブサイト

株式会社TECHFUNDが展開するHi AUDITは、Webアプリケーション・API・ネットワークなどを対象とする診断に対応するセキュリティ監査サービスです。Web3・ブロックチェーン領域のスマートコントラクト監査を主力とする点に強みがあり、自動監査と専門家によるマニュアル監査を組み合わせて提供しています。

  • 自動と専門家のハイブリッド:ツールによる自動監査と、専門家によるマニュアル監査を組み合わせる体制をとっています。
  • 幅広い診断対象:スマートコントラクト監査を中核としつつ、Webアプリケーション・API・ネットワークなどを対象とする診断メニューも提供しています(TISとの提携メニューなどを含む)。

Webアプリケーション・APIの脆弱性診断に対応領域を持ち、Web3・ブロックチェーン領域のスマートコントラクト監査を必要とする企業にも適しています。

診断で見つかった脆弱性に何から対応すべきかという論点について、株式会社TECHFUNDの生田氏は次のように話しています。

株式会社TECHFUND セキュリティ監査事業部 事業責任者
生田氏
独自インタビューより

脆弱性の報告だけでは、企業側からすると、何から対応すればいいのか分かりません。

「この問題を悪用されると、他ユーザーの情報を取得される可能性がある」「この脆弱性は認証を突破して管理者権限を取得される可能性がある」といった形で、攻撃シナリオと事業インパクトまで整理して説明することを重視しています。

4. CoWorker 脆弱性診断サービス(CoWorker株式会社)

CoWorker 脆弱性診断サービスのウェブサイト

CoWorker 脆弱性診断サービスは、自社開発AI「Red Agent」による自動解析と、社内のセキュリティ専門家による最終確認を組み合わせた脆弱性診断サービスです。診断メニューは、ソースコードAI診断、動的脆弱性診断(Web/API診断)、実践攻撃シミュレーション診断(ペネトレーションテスト)の3つで構成されています。

  • AI解析+専門家確認:AIによる自動解析のあとに専門家が最終確認してレポートを作成する二段構成です。ソースコードAI診断は本番環境に影響を与えずに実施できると公式に案内されています。
  • 段階的に選べるメニュー:ソースコードAI診断から動的診断、ペネトレーションテストまで、必要に応じて段階的に選べます。

料金は、公式サイトには通常「50万円〜」と記載があります。プラン別の料金はMCB FinTechカタログの掲載情報として、ソースコードAI診断15万円、Lite 50万円、Standard 100万円、Professional 150万円が案内されています(2026年10月時点)。

自社のWebサービスやソースコードの弱点を、AIと専門家の両面で洗い出したい企業に向いています。

AIによる自動解析の精度をどのように担保しているのかについて、CoWorker株式会社の一ノ瀬氏は次のように説明しています。

一ノ瀬氏
CoWorker株式会社 Sales Manager
一ノ瀬氏
独自インタビューより

精度については、ハルシネーションが心配だというお声もいただきますが、ハルシネーションを完全に防ぐとAIの強みが損なわれてしまいますので、そこは防ぎきることはしていません。その代わり、ハルシネーションが起きた可能性がある箇所については明確に示すようにしていて、最終的に人の目で見て正しいかどうかを承認するフローを取っています。

5. KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージのウェブサイト

KATABAMIは、脆弱性対策を「予防・復旧・補償」の3本柱で提供するパッケージ型のサービスです。脆弱性診断にあたるのは予防コンポーネントのKATABAMI VDP(脆弱性診断)で、ネットワーク内部から月次(年12回)で脆弱性を検出し、A〜Eの5段階評価と改善策レポートを定期的に提示する「定期検診」という位置づけです。

  • 内部ネットワークからの定期診断:外部スキャン型と異なり、ネットワーク内部から検査するため、メールやUSB経由のマルウェアなど内部起点の脅威も検知できる点を訴求しています。検出した脆弱性には対策案を提示しますが、対策の実装そのものは標準範囲外です。
  • 診断・復旧・補償を一体で:脆弱性診断(予防)に加え、隔離経路でのバックアップによる復旧(CRA)、サイバー保険による補償までを1つのパッケージで提供する点が、診断専業サービスとの違いです。公式LPでは「最短2週間で利用開始」「設置10分」を訴求しています。

専任のセキュリティ担当者がいない中小企業が、継続的な定期診断と有事への備えをまとめて整えたい場合に向いています。

従来の訪問型診断がなぜ年1回程度にとどまりがちだったのかについて、株式会社SYNCHROの北口氏は次のように話しています。

北口氏
株式会社SYNCHRO 取締役CMO
北口氏
独自インタビューより

このようなオフィス内の脆弱性を調べるために、従来はお客様先まで足を運び、中に入って席を借りて調査する必要がありました。専門家が2人で出向いて期間中拘束されるため、どうしてもコストが高くなり、頻繁にはお願いしづらいのが実情です。結果として、年に1回程度の実施が一般的でした。一方で、新しい脆弱性は日々生まれており、生成AIの登場でそのスピードもさらに上がっています。

まとめ

脆弱性対策は、情報収集・自社該当の確認・危険度に応じた優先順位づけ・パッチ適用などでの対応・対策後の確認・継続的な管理、という流れで進めます。最初に全体像をつかみ、各ステップで公的な情報源や基準を使い分けることが、場当たり的な対応から抜け出す鍵になります。

  • 情報源を使い分ける:JVN・CVE/NVD・JPCERT/CC・ベンダー情報などを役割に応じて確認し、自社の該当をIT資産の把握と突き合わせる。
  • 優先順位をつけて対応する:CVSSを目安にしつつ、自社環境での悪用可能性や資産の重要度を加味して、影響の大きいものから確実に潰す。
  • 自社の弱点は診断で洗い出す:自動診断・手動診断・外部サービスを使い分け、専門性や客観性が必要な部分は外部に委ねる。

脆弱性をゼロにすることはできませんが、進め方を仕組みとして回し、自社の弱点を定期的に洗い出すことで、被害に至るリスクは着実に下げられます。まずは自社に合った脆弱性診断から検討してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 脆弱性対策とは何ですか?

A. 脆弱性対策とは、OS・ソフトウェア・機器に潜む情報セキュリティ上の欠陥(脆弱性)を把握し、危険度に応じて修正・緩和して、攻撃に悪用されるリスクを下げる一連の取り組みです。具体的には、脆弱性情報の収集→自社該当の確認→危険度に応じた優先順位づけ→パッチ適用などでの対応→継続的な管理という流れで進めます。

一度で終わる作業ではなく、新たな脆弱性が公表されるたびに運用として回し続ける点が特徴です。

Q. 脆弱性対策は何から始めればよいですか?

A. 脆弱性対策は、まず自社で使っているOS・ソフトウェア・機器を棚卸しし、IT資産を把握することから始めます。どの端末でどのソフトウェアをどのバージョンで使っているかが分からないと、公表された脆弱性が自社に該当するかを判断できないためです。資産を把握したうえで、JVNやCVEなどの公的な情報源から脆弱性情報を集め、該当するものに優先順位をつけて対応する流れに乗せていくのが着実な進め方です。

Q. 脆弱性診断とパッチ適用は何が違うのですか?

A. 脆弱性診断は自社に潜む弱点を洗い出す「発見」の工程、パッチ適用は見つかった脆弱性を塞ぐ「対応」の工程で、役割が異なります。診断で自社のどこに脆弱性があるかを把握し、その結果に応じてパッチ適用・設定変更・回避策などで対応します。診断だけでは弱点は塞がれず、パッチ適用だけでは未知の弱点を見つけられないため、両者は補い合う関係にあります。

Q. 脆弱性はCVSSスコアが高い順に対応すればよいですか?

A. 脆弱性対応は、CVSSスコアが高い順に機械的に進めるのではなく、自社環境での悪用可能性と資産の重要度を加味して優先順位を決めます。同じスコアの脆弱性でも、インターネットに公開されたシステムか閉じた社内環境かによって、実際に悪用されるリスクは変わるためです。CVSSは危険度を測る有力な目安ですが、スコアに自社の文脈を掛け合わせ、影響の大きいものから確実に潰していくのが現実的です。

Q. 脆弱性診断は自社で実施すべきですか、外部に依頼すべきですか?

A. 脆弱性診断は、日常的な自動診断は自社で仕組み化し、専門性や客観性が求められる診断は外部サービスに委ねる役割分担が現実的です。ツールによる自動診断は自社で運用しやすい一方、攻撃者の視点で深く掘り下げるペネトレーションテストや、第三者による客観的な評価は専門人材を要します。自社の人材・対象システムの重要度・求める診断の深さを踏まえ、内製と外部委託を組み合わせて判断するとよいでしょう。

Q. セキュリティの専任担当者がいなくても脆弱性対策はできますか?

A. 専任担当者がいない企業でも、自動診断ツールで定期チェックを仕組み化し、判断に迷う部分を外部の専門家に委ねることで、無理なく脆弱性対策を続けられます。すべてを人手で回そうとすると負担が大きく継続が難しくなるため、定型的な作業はツールで自動化し、専門性の高い部分だけ外部に任せる形が現実的です。外部の脆弱性診断サービスのなかには、診断から対策案の提示までを支援するものもあります。

Q. 脆弱性対策にかかる費用はどれくらいですか?

A. 脆弱性対策の費用は、公的な情報源の活用や自社でのパッチ適用は無料で始められる一方、外部の脆弱性診断サービスは診断の対象範囲や手法によって変わります。JVN・CVE・IPAなどからの情報収集や、OS・ソフトウェアの更新は追加費用なく取り組めます。

外部に診断を依頼する場合は、Webアプリ・ネットワーク・ソースコードといった対象や、自動診断か手動診断かによって費用が異なります。複数サービスの資料で見積もりを比較するのがおすすめです。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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