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工場のセキュリティ対策とは?何から始める?進め方の3ステップを解説

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製造業を狙ったサイバー攻撃で工場の生産ラインが止まる事例が相次ぎ、自社の工場でも何か対策をと指示を受けた情報システム・生産技術の担当者が増えています。ただ、オフィスのIT対策はわかっても、工場(設備・制御系)のセキュリティは勝手が違い、何から手をつければよいか迷う場面が少なくありません。

本記事では、工場セキュリティがオフィスのIT対策と何が違うのかを押さえたうえで、経済産業省のガイドラインに沿った着手の3ステップと、各ステップで実際に行う作業、具体的な対策の中身までを順を追って解説します。現状把握を自社だけで進めるか外部に頼るかの判断材料も整理しました。

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工場のセキュリティ対策とは?オフィスのIT対策と何が違うのか

工場のセキュリティ対策は、オフィスのパソコンやサーバーを守るIT対策と地続きに見えて、守る対象も優先する考え方も異なります。着手の手順に入る前に、まずこの違いを押さえておくと、なぜ普通のやり方がそのまま通じないのかが腑に落ちます。

工場セキュリティが守るのは「OT(設備・制御系)」

工場のセキュリティが守る中心は、生産設備や制御装置、産業用ネットワークといったOT(Operational Technology、制御・運用技術)の領域です。具体的には、機械を動かすPLC(プログラマブルロジックコントローラー=制御用の小型コンピューター)や、設備を監視・操作するSCADA(スキャダ、監視制御システム)、これらをつなぐ制御ネットワーク、そこで扱う生産データなどが対象になります。

こうした設備や制御システムの総称がICS(Industrial Control System、産業用制御システム)です。オフィスのIT(Information Technology、情報技術)が情報の保護を主眼に置くのに対し、工場のOTは「設備を安全に動かし続けること」を主眼に置く点が、両者を分ける出発点になります。

ITセキュリティと決定的に違う6つの勘所【対比表】

ITと工場(OT)では、何を最優先し、どこまで手を入れられるかが次のように異なります。この違いが、対策の進め方や使える手段を左右します。

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比較項目IT(情報システム)OT(制御系)
最も重視する点情報の機密性(情報を漏らさない)可用性(設備を止めない)。止まると生産そのものが止まり損失に直結するため
停止・再起動の可否業務時間外に停止・再起動して保守できる連続稼働で止められない。ラインを止めると生産や復旧に大きな影響が出る
パッチ適用OSやソフトを随時更新できる稼働中は適用しづらく、機器メーカーの保証・動作検証も必要で後回しになりがち
機器の使用年数数年単位で更新する10〜20年と長く、サポートの切れた古いOSが現役で動いている
検証環境テスト環境で事前に影響を確かめやすい本番と同じ検証環境を持ちにくく、対策の影響を事前に試しづらい
担当部門情報システム部門生産技術・保全部門。セキュリティの知見が部門をまたいで分散しやすい

要点は、OTでは「止めない・壊さない」ことが情報を守ること以上に重く、パッチ適用や再起動といったIT対策の定石がそのままでは使えない点にあります。だからこそ、工場では工場の事情に合わせた進め方が必要になります。

工場のセキュリティ対策は何から始める?経産省ガイドラインに沿った着手3ステップ

工場のセキュリティ対策は、次の順番で進めるのが基本です。

  1. 現状把握と資産・リスクの洗い出し:守るべき設備・ネットワーク・データを棚卸しし、どこにどんなリスクがあるかを整理する
  2. リスクに応じた対策の立案:洗い出したリスクに優先順位をつけ、講じる対策を選ぶ
  3. 対策の実施と運用・見直し:対策を実行して運用に乗せ、継続的に見直す
工場セキュリティ対策の着手3ステップを示した図解。STEP1は現状把握とリスクの洗い出し(設備・ネットワーク・データの棚卸しとリスク整理)、STEP2はリスクに応じた対策の立案(優先順位づけ)、STEP3は対策の実施と運用・見直し(PDCA)で、矢印で順につなげている。

この3ステップの拠り所になるのが、経済産業省が公開する「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」(Ver 1.0、2022年11月16日発行)です。

工場システムのセキュリティ対策の企画・導入の進め方を体系的に示した指針で、上長や経営層に「公的なガイドラインに沿って進めている」と説明できる後ろ盾にもなります。付録には自己点検用のチェックリストも用意されています。

出典・参考資料(1件)

ステップ1:現状把握と資産・リスクの洗い出し(ゾーン分けと保護対象の整理)

最初の一歩は、守る対象を自分の手で把握することです。抽象的な方針を立てる前に、工場の中に何があり、どこにリスクが潜むかを具体的に数え、評価することが重要です。作業としては、次のように進めます。

  • ネットワーク構成図を作り、工場内のどの機器が何とつながっているかを書き出す
  • 保護対象を「ネットワーク」「装置・機器(PLC・制御装置・PC・複合機など)」「データ(生産データ・図面・個人情報)」に分けて棚卸しする
  • 業務の重要度が同等な領域をまとめて「ゾーン」として区切り、ゾーンの境界と、ゾーンをまたぐ通信を把握する
  • 各ゾーン・資産に想定される脅威(外部からの侵入、内部不正、USBなど経由のマルウェア持ち込み)を洗い出す
  • 止まると生産や安全への影響が大きい設備を見極め、優先的に守る対象を決める

「何を数えればよいか」は、ガイドラインが示す想定工場の例が目安になります。先の3種類それぞれについて、自社に実在する機器やデータの名前まで落として一覧にするのが現状把握の作業です。

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種類ネットワーク・ネットワーク機器装置・機器データ
洗い出す構成要素の例設備系・生産管理系・情報系などのネットワーク、VPN装置兼ファイアウォール、無線LANアクセスポイントMESサーバ、生産ライン設備、SCADA、保守用端末、AGV(搬送装置)とその制御PC、自動倉庫、事務用のサーバ・PC生産計画(月次・週次・日次)、生産指示(生産機種・量・レシピなど)

(経済産業省ガイドラインが示す「想定工場における主な構成要素」の例。自社では実在する機器・データ名で一覧化する)

棚卸しした業務や保護対象は、同じ基準で一律に守るのではなく、重要度をつけて優先順位づけの土台にします(先の「優先的に守る対象を決める」の具体化です)。ガイドラインは、業務の重要度を「止まったときに生産へどれだけ早く・大きく支障が出るか」で大・中・小の3段階に整理する例を示しています。

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業務の重要度大中小
目安安定生産に直結する業務。止まるとその日のうちに生産に支障が出る。許容できない品質劣化が大規模に生じる安定生産に間接的に関連する業務。止まると2〜3日のうちに生産に支障が出る。許容できない品質劣化が小規模に生じる安定生産との関連が薄い業務。止まっても生産に支障が出るリスクは低い。製品として問題ないレベルの品質劣化にとどまる

(経済産業省ガイドラインが示す「業務の重要度(想定工場における例)」の区分)

こうした棚卸しや自己点検は、先のガイドライン付録のチェックリストを出発点にすると、何を確認すべきかが具体的になり、抜け漏れも減らせます。

リスクの洗い出し方には定石があります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開する制御システム向けのリスク分析ガイドは、2つの手法を示しています。保有する資産から洗い出す「資産ベース」の分析と、起こり得る事業被害から逆算する「事業被害ベース」の分析で、工場のOTにも活用できます。どちらの視点も用いると、見落としを抑えて現状を評価できます。

出典・参考資料(1件)

ステップ2:リスクに応じたセキュリティ対策の立案(優先度づけ)

現状把握で洗い出したリスクは量が多く、一度にすべては対策しきれません。そこで、被害の大きさ(影響度)と起こりやすさ(発生可能性)の2軸で整理し、どこから手を当てるかの優先順位をつけることで現実的に進みます。

OTでは設備を止めたり作り替えたりしにくいため、設備を止めずに打てる対策や、影響の大きい領域から着手すると現実的に進みます。講じる対策の具体例は、次章「工場で講じる具体的なセキュリティ対策」で解説します。

ステップ3:対策の実施と運用・見直し(PDCA)

対策は、実施して終わりではありません。運用に乗せ、計画・対策・運用体制を定期的に見直すPDCAサイクルとして回し続けます。新しい脅威は日々生まれ、設備の構成も変わっていくため、一度決めた対策が翌年も有効とは限らないからです。

継続のカギになるのが、推進体制と経営層の関与です。

工場のセキュリティは生産技術・保全部門と情報システム部門にまたがるため、誰が旗振り役かを決め、責任の所在を明確にする必要があります。予算の確保や対策の優先順位づけには経営の判断が欠かせず、経営層が関与する体制を整えることで、対策が現場任せで止まらずに進みます。あわせて、被害が起きた場合に誰がどう動くかというインシデント対応の手順も、平時のうちに決めておく必要があります。

こうした継続的な運用や推進体制づくりまでを、専任担当を置きにくい現場だけで抱えると負担は小さくありません。自社の取り組みに抜けがないかを外部の客観的な目で確かめることには、現場だけでは気づきにくい弱点を見つけられる意義があります。

工場で講じる具体的なセキュリティ対策

工場のセキュリティは、単一の製品で守り切れるものではありません。ネットワーク・端末・物理と人という複数の層を組み合わせ、どこか一つを突破されても次の層で食い止める多層防御で守ります。ここからは、代表的な対策を層ごとに整理します。

工場の多層防御を3つの層で示した図解。土台のネットワークの層(ゾーン分離・UTM/IPSによる境界防御)、端末・通信の層(EPP/EDRによる端末保護とNDR/SOCによる通信監視)、物理・人・データの層(入退・媒体の管理や教育、隔離バックアップ)を積み重ね、どこか一つを突破されても次の層で食い止めることを表す。

ネットワークの分離とゾーニング(境界防御・UTM/IPS)

土台になるのが、工場ネットワークを業務の重要度でゾーンに区切り、ゾーン間の通信を必要最小限に絞る対策です。ゾーンの境界にはUTM(統合脅威管理、ファイアウォールなど複数のセキュリティ機能を束ねた機器)やIPS(不正侵入防止システム)を置き、外部やオフィスのネットワークから制御系への不要な通信を遮断します。

ここでOT特有の事情が効いてきます。止められない設備は脆弱性が見つかってもすぐにパッチを当てられないため、ネットワークを分離して攻撃者がその設備に到達する経路そのものを断ち、対策を講じる時間を稼ぐ考え方が有効です。また「閉域網だから安全」という前提は、保守用のUSBメモリや一時的な外部接続で崩れることがあるので、過信しないことが大切になります。

端末保護と通信の可視化・監視(EPP/EDR・NDR・SOC)

パソコンやサーバーには、ウイルス対策のEPP(エンドポイント保護)や、端末での不審な挙動を検知・対応するEDR(エンドポイント検知・対応)を導入します。ただし工場では、古い制御端末やOT機器にこうしたソフトを入れられないことが多く、端末側の対策だけでは守りきれません。

そこを補うのが、ネットワークを流れる通信を可視化して異常を検知する対策です。NDR(ネットワーク検知・対応)で通信を監視し、必要に応じてSOC(セキュリティ監視を担う専門チーム)が24時間体制で見張ることで、端末に手を入れられない機器も、その機器が出す通信の異常から守れます。

境界だけでなく内部を流れる通信まで可視化しておくと、侵入後の不審な動きにも気づけます。IPAも産業用制御システム向けの侵入検知製品の導入手引書を公開しており、制御システムのプロトコルに対応した侵入検知で、端末に手を入れずに監視を補える方向性を示しています。

出典・参考資料(1件)

物理・人の対策とサプライチェーン・バックアップ

技術的な対策と並んで、物理面と人の対策も欠かせません。工場エリアへの立ち入り管理、USBメモリなど記録媒体の持ち込み制限、従業員へのセキュリティ教育で、設備に直接触れる経路からの脅威を抑えます。保守やメンテナンスで外部の取引先・ベンダーが関わる工場では、そこを経由した侵入(サプライチェーン攻撃)への備えも必要です。

万一に備えた復旧手段として、バックアップも重要になります。ランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する攻撃)では、通常のネットワーク上にあるバックアップ自体が攻撃対象になることがあるため、攻撃者から到達できない形で隔離して保管しておくと、被害後の復旧につながります。

警察庁によると、令和6年(2024年)のランサムウェア被害報告件数は222件と高い水準が続き、組織規模別では大企業が減少する一方で中小企業の被害は前年より37%増えました。復旧に1,000万円以上を要した組織の割合も37%から50%へ上がっており、被害時の負担は小さくありません。

出典・参考資料(1件)

バックアップの隔離をはじめ、ランサムウェアの予防から感染時の対応・復旧までを体系立てて押さえておきたい場合は、次の記事で進め方を解説しています。

現状把握・対策は自前か外部か——診断・監視サービスの活用

ここまでの進め方を踏まえると、どこまでを自社で担い、どこから外部に頼るかの線引きが論点になります。ネットワーク構成図の整理や保護対象の棚卸し、日々の運用ルールづくりは、現場を一番知る自社が主体で進められます。

一方で、実際に工場ネットワークにどんなリスクが潜んでいるかの客観的な把握や、設備を止めずに行う通信の監視は、専用の技術と専門人材が要るため、外部の診断・監視サービスを活用する判断が現実的な場面が多くあります。

外部に頼る選択肢は、大きく3つに分かれます。工場ネットワークの通信を分析して現状のリスクを洗い出す診断、設備やIoT機器を含めたネットワークを継続的に監視する仕組み、中小規模の工場が予防から復旧まで任せられるパッケージです。ここからは、工場のセキュリティに役立つ外部サービスを取り上げて比較します。

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サービス名セキュア・レントゲンNetwork BlackboxKATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ
提供会社株式会社クワッドマイナージャパン株式会社クワッドマイナージャパン株式会社SYNCHRO
外部に頼れる役割ネットワーク通信を分析して
現状のリスクを洗い出す診断
ネットワークを流れる通信を
継続的に監視する仕組み(NDR)
予防・復旧・補償を一体で任せる
対策パッケージ
診断・監視の対象工場・オフィスの
ネットワーク通信(全パケットを全数検査)
ネットワークを流れる
全パケット(収集・保存・分析)
サーバー・NW機器・複合機・
PCなど社内ネットワーク機器
OT(制御系)への対応●OTプロトコル対応●エージェント不要で制御系機器の通信も監視△OT専用機能はなく情報系機器が対象
導入・接続方式ミラーリング方式
(設備を止めずに診断)
ミラーリング方式
(エージェント不要)
専用通信経路(KATABAMI)で
リモート診断
提供形態スポット型
(最短1カ月の単発診断)
継続監視
(常時稼働のNDR製品)
月次の継続サービス
(予防・復旧・補償)
費用の目安要問い合わせ
(分析手法・設置台数で変動)
要問い合わせ1台1,250円/月〜
(100ノード以下で年額90万〜150万円が目安)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約

※各社の公式情報にもとづく(2026年11月時点)

KATABAMIはOT(制御系)専用の監視ではなく、工場を含む中小企業の情報系機器をまるごと外部に委託し、診断から復旧・補償までをまとめる役割です。ここからは、各サービスの特徴を順に紹介します。

セキュア・レントゲン(株式会社クワッドマイナージャパン)

セキュア・レントゲンの公式サイト

株式会社クワッドマイナージャパンが提供する、ネットワークリスク診断サービスです。NDR製品「Network Blackbox」のフルパケットキャプチャ技術を使い、工場やオフィスのネットワークに実際に流れている通信を全数検査して、外部からの脅威だけでなく、すでに内部に潜んでいる脅威や脆弱性を洗い出します。

公式はこの仕組みを「ネットワークの人間ドック」になぞらえ、製造業に特化した業界初のセキュリティ「リスク診断」と位置づけています。

工場にとって使いやすいのは、OTプロトコルに対応し、ミラーリング方式で接続するため、設備を止めずに診断できる点です。顧客側の作業はミラーリングの設定が中心で、機器の設置から分析、レポート、報告会までを同社が担います。

診断は最短1カ月のスポット型で、検出した脅威と対策案をまとめたレポートが成果物になります(パッチの適用など対策の実行自体はサービスの範囲外で、報告を踏まえて自社や既存ベンダーが進める形です)。

もともと製造業向けに、ITからOTへ脅威が横展開する懸念に対してネットワークの視点でリスクを洗い出す提案をしてきた経緯があり、工場の現状把握を外部の目で始めたい場面に向きます。料金は診断手法や設置台数によって変わるため、要問い合わせです。

同社は、外部の視点でネットワークを客観的に診断する需要が高まっている状況を、現場の実感として次のように語っています。

白垣氏
株式会社クワッドマイナージャパン 営業部
白垣氏
独自インタビューより

実際に「今すでに社内にランサムウェアが存在している可能性がないか、それを見てほしい」という緊急のチェックとしてご依頼いただいたこともあります。そのときは幸い問題ありませんでしたが、もし侵入されていたら、重大な被害につながりかねないリスクが見つかりました。既存の防御を過信せず、一度客観的に診断したいというニーズが確実に増えていると感じます。

Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxの公式サイト

現状のリスクを把握したうえで、止められない設備を継続的に見張りたい工場に向くのが、同じクワッドマイナージャパンのNDR製品「Network Blackbox」です。ネットワークを流れる全パケットを収集・保存し、可視化・分析・対応までを担います。

ミラーリング方式で導入するためエージェント(端末に入れる監視ソフト)が不要で、EDRを入れられない制御コンソールやOT機器が残る環境でも、ネットワーク側から通信を見張れる点が特徴です。

収集・検知・ハンティング・フォレンジック(通信記録をさかのぼる調査)・対応という機能を備え、保存したパケットを後から検索して、いつ・どの宛先と・どんなファイルがやり取りされたかを確認できます。

検知にはシグネチャによる既知攻撃の照合に加え、ユーザー行為ベースの検出やコンテンツ分析を併用します。SyslogやREST APIを通じて既存のEDR・SIEM(各種ログを集約して相関分析する基盤)と連携できるため、工場のネットワーク側の監視基盤として組み込む使い方ができます。

国内の総代理店は、EPPやEDRを導入できない制御コンソールが課題だった大手製造業のスマート工場化を導入事例として挙げています。料金は要問い合わせです。

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージの公式サイト

国産のセキュリティ技術「KATABAMI」をベースに、株式会社SYNCHROが提供する対策パッケージです。IPv6アドレスと暗号化を組み合わせた独自の通信経路を使い、予防(脆弱性診断)・復旧(隔離バックアップ)・補償(サイバー保険)を一体で提供します。

専任のセキュリティ人材を置きにくい、工場を含む中小企業が、現状把握から対策・復旧・補償までまとめて外部に任せられる点が持ち味で、OT専業の監視製品とは立ち位置が異なります。

予防にあたる脆弱性診断は、専用の通信経路を使ってリモートから、サーバー・ネットワーク機器・複合機・パソコンといったネットワーク内部の機器を月次(年12回)で点検します。

従来、専門家が現地に出向く訪問型の診断は拘束時間が長くコストがかさみ、年1回程度が一般的でしたが、リモートで実施することで継続的な点検が可能になります。問題点の指摘だけでなく、パスワードや権限設定の直し方まで説明して対策に伴走する運用も特徴です。

料金は診断する端末台数と頻度によって変わり、1台あたり月額1,250円からで、100ノード以下の場合は年額90万円から150万円が目安となります。工場内のOT機器のインターネット接続が進む流れを受け、製造業にも力を入れているサービスです。

工場のセキュリティを取り巻くリスクの変化について、同社は次のように話しています。

北口氏
株式会社SYNCHRO 取締役CMO
北口氏
独自インタビューより

加えて、工場内のOT機器のインターネット接続が進んでいるという流れもあります。DXにより便利になっていく一方で、サイバー攻撃の対象にもなりつつあり、大型機械の誤作動は人命や火災など、影響範囲が広くなるリスクも伴います。

ここで取り上げたのは、工場の現状把握や設備の監視に絞った外部サービスです。端末・ネットワーク・ID・データなど、守る対象ごとに社内セキュリティ全体のソリューションを見渡して「どのタイプから検討すべきか」を整理したい場合は、次の比較記事が参考になります。

まとめ

工場のセキュリティは、情報を守るオフィスのIT対策とは違い、設備を止めない可用性を最優先に、古い機器や連続稼働という制約の中で進める必要があります。何から始めるか迷ったら、経済産業省のガイドラインに沿って「現状把握と資産・リスクの洗い出し」「対策の立案」「実施と運用・見直し」の3ステップで着手するのが確実です。

最初の一歩は、自社工場の資産とリスクを棚卸しする現状把握です。ここを自社だけで進めるのが難しいと感じたら、工場ネットワークの通信を分析する診断や、設備を止めずに監視する仕組みといった外部のサービスを、現状把握の出発点として検討してみてください。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 工場のセキュリティ対策とは何ですか?

A. 工場のセキュリティ対策とは、生産設備や制御装置、産業用ネットワークといったOT(制御・運用技術)を、設備を安全に動かし続けられる状態のまま守る取り組みです。

オフィスのパソコンやサーバーを守るIT対策が情報の機密性を主眼に置くのに対し、工場では可用性(設備を止めないこと)を最優先にする点が出発点になります。守る対象には、機械を動かすPLCや設備を監視・操作するSCADA、これらをつなぐ制御ネットワーク、そこで扱う生産データなどが含まれます。

Q. 工場のセキュリティ対策はオフィスのIT対策と何が違うのですか?

A. 工場のOTでは、情報を守ること以上に「設備を止めない・壊さない」ことが重く、パッチ適用や再起動といったIT対策の定石がそのままでは使えない点が決定的に違います。連続稼働で止められない、10〜20年と長く使う機器にサポートの切れた古いOSが残る、本番と同じ検証環境を持ちにくい、といった制約があるためです。だからこそ、工場では工場の事情に合わせた進め方が必要になります。

Q. 工場のセキュリティ対策は何から始めればよいですか?

A. まずは現状把握、具体的には守るべき設備・ネットワーク・データの棚卸しと、どこにどんなリスクがあるかの洗い出しから始めます。経済産業省のガイドラインは、この「現状把握と資産・リスクの洗い出し」→「リスクに応じた対策の立案」→「対策の実施と運用・見直し」という3ステップで進めることを示しています。いきなり製品を選ぶのではなく、自社の工場に何があるかを数えて評価するところが最初の一歩になります。

Q. 中小規模の工場でもセキュリティ対策は必要ですか?

A. 中小規模の工場でも対策は必要です。警察庁によると、令和6年(2024年)のランサムウェア被害では、大企業の被害件数が減る一方で中小企業の被害は前年より37%増えており、対策が比較的手薄な中小企業が狙われる傾向が指摘されています。専任のセキュリティ担当を置きにくい工場ほど、現状把握から対策・復旧までをまとめて外部に任せられるサービスの活用も選択肢になります。

Q. 工場のセキュリティ対策にはどのくらいの費用がかかりますか?

A. 対策の範囲や工場の規模、自前で進めるか外部に頼るかによって幅があり、一概には言えません。例えば、工場ネットワークの通信を分析する診断は分析手法や設置台数で変わるため要問い合わせ、中小製造業向けに予防・復旧・補償をまとめたパッケージは1台あたり月額1,250円から(100ノード以下で年額90万〜150万円が目安)といった形です。

一方で、ランサムウェア被害では復旧に1,000万円以上を要した組織が半数に上っており、対策費用は被害を受けたときの損失と比べて判断する視点も欠かせません。

Q. 経済産業省の工場セキュリティガイドラインに従う法的義務はありますか?

A. 法的な義務はなく、対策の進め方を示す指針(ガイドライン)です。従わなくても罰則があるわけではありませんが、公的な指針に沿って進めることで、上長や経営層に「何を根拠にどう対策しているか」を説明しやすくなります。付録のチェックリストを使えば、自社の現状を自己点検する出発点としても活用できます。

Q. サポートが切れた古い設備など、パッチを当てられない機器はどう守ればよいですか?

A. ネットワークを分離して攻撃者がその設備に到達する経路そのものを断ち、通信を監視して異常を検知する守り方が現実的です。止められない設備は脆弱性が見つかってもすぐにパッチを当てられないため、ゾーンの境界にUTMやIPSを置いて不要な通信を遮断し、ウイルス対策ソフトを入れられない機器はネットワーク側から通信を見張って補います。

「閉域網だから安全」という前提は、保守用のUSBメモリや一時的な外部接続で崩れることがある点にも注意が必要です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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