自社で開発・運用するWebサービスや社内システムを守るうえで、「セキュリティテストをやっておこう」という話は出るものの、その言葉が具体的に何を指すのかは意外とつかみにくいものです。脆弱性診断、ペネトレーションテスト、ソースコード解析など、よく似た用語が並び、自社に必要なのはどれなのか判断に迷う場面は少なくありません。
セキュリティテストは複数の手法の総称です。それぞれが「何を調べるテストなのか」「どの場面で効くのか」を押さえておかないと、必要なテストを選べず、対策の抜け漏れにもつながります。では、セキュリティテストにはどんな種類があり、どう使い分け、どのくらいの費用で実施できるのでしょうか。
本記事では、セキュリティテストの定義から主な種類の全体像、混同しやすい手法の違い、実施手順、内製と外注の判断、費用の目安までを順に整理します。特に迷いやすい「脆弱性診断とペネトレーションテストの違い」「SAST・DAST・IASTの違い」は対比表で見分けられるようにまとめました。開発・運用やセキュリティに携わる方が、自社に合ったテストを選ぶための材料としてご活用ください。
目次
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セキュリティテストとは?
セキュリティテストとは、システムやソフトウェアが攻撃に耐えられるかを検証し、悪用され得る弱点(脆弱性)を攻撃者より先に見つけ出すためのテストの総称です。脆弱性診断やペネトレーションテストといった個別の手法を含む上位概念として使われます。
Webアプリケーションを対象とした手法やテスト項目は、OWASP(Open Worldwide Application Security Project)の「Web Security Testing Guide」などで体系化されており、セキュリティテストは特定の製品に依存しない定着した検証領域になっています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:Web Security Testing Guide (WSTG) Project|OWASP Foundation(https://owasp.org/www-project-web-security-testing-guide/)
機能テストとの違い
通常の機能テストが「仕様どおりに正しく動くか」を確かめるのに対し、セキュリティテストは「攻撃に耐えられるか」を確かめます。視点が逆である点が特徴です。機能テストは想定どおりの操作で正しい結果が返るかを確認しますが、セキュリティテストは想定外の入力や不正な操作をあえて与え、情報漏えいや改ざんにつながる弱点がないかを探します。
そのため、機能テストで問題がなくても、セキュリティ上の欠陥が残っていることは珍しくありません。両者は目的が異なる別のテストであり、どちらか一方で代替できるものではないと考える必要があります。
なぜセキュリティテストが必要なのか
サイバー攻撃は、システムの脆弱性やサプライチェーンの弱点を突く形で巧妙化しています。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、その傾向がうかがえます。
組織向けの脅威では、1位に「ランサム攻撃による被害」、2位に「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」、4位に「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が挙げられ、3位には「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織向けとして初めてランクインしました。
脆弱性を悪用した攻撃が上位に並ぶ状況では、自社システムの弱点を攻撃者より先に把握しておくことが欠かせません。セキュリティテストは、情報漏えいやサービス停止といった被害が起きる前に弱点を洗い出し、経営・顧客に対して「対策を講じている」と示すための材料にもなります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:情報セキュリティ10大脅威 2026|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)(https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html)
セキュリティテストの主な種類【一覧表】
セキュリティテストには、調べる対象やアプローチの異なる複数の手法があります。まず全体像を一覧で押さえ、それぞれが「何を調べるのか」「開発・運用のどの場面で効くのか」を把握しておくと、自社に必要なテストを選びやすくなります。

| 手法 | 脆弱性診断 | ペネトレーションテスト | アプリケーションの脆弱性解析(SAST・DAST・IAST) | 認証・アクセス制御テスト | ネットワーク(プラットフォーム)診断 | セキュリティ監査・ファジング |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 何を調べるか | 既知の弱点を幅広く洗い出す | 攻撃者視点で実際に侵入を試す | コードや稼働中のアプリを静的/動的に解析して脆弱性を検出 | 認証や権限設定の不備を確認 | サーバーOS・通信機器・設定の弱点を評価 | 基準適合の確認や、異常入力による不具合検出 |
| 主な対象 | Webアプリ・API・サーバー等 | 重要システム全体 | ソースコード・稼働中のアプリ | ログイン・権限機能 | サーバー・ネットワーク機器 | 組織・システム全般 |
| 手動/ツール | ツール+手動 | 手動中心 | ツール | 手動+ツール | ツール+手動 | 手動/ツール |
| 向くケース | 公開前・定期点検で網羅的に確認したい | 侵入されたらどこまで到達されるか確かめたい | 開発段階から公開前後にかけて検出したい | 不正ログインや権限昇格を防ぎたい | インフラ側の設定・パッチ状況を点検したい | 第三者基準での確認や堅牢性の試験をしたい |
各手法の位置づけは代表的な整理であり、サービスにより対象範囲は異なります。
脆弱性診断
脆弱性診断は、システムに潜む既知の弱点を幅広く洗い出す手法です。自動スキャンツールによる検査と、専門家による手動の検査を組み合わせて実施するのが一般的です。対象によって、Webアプリケーションを対象とする「アプリケーション診断」と、サーバーやネットワーク機器を対象とする「プラットフォーム診断」に大きく分けられます。
SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった代表的な脆弱性の有無を網羅的に確認でき、公開前のチェックや定期的な点検に向いています。
ペネトレーションテスト
ペネトレーションテスト(侵入テスト)は、実際の攻撃者の視点でシステムへの侵入を試みる実践的な手法です。弱点を網羅的に列挙する脆弱性診断とは異なり、「この弱点を突くと、どこまで侵入され、どんな被害につながるか」という攻撃の成立可否と影響範囲を検証します。重要な情報を扱うシステムで、具体的な攻撃シナリオに耐えられるかを確かめたい場合に適しています。
アプリケーションの脆弱性解析(SAST・DAST・IAST)
ソースコードやアプリケーションの挙動を解析して脆弱性を見つける手法には、SAST・DAST・IASTの3種類があります。SAST(静的アプリケーションセキュリティテスト)は、プログラムを実行せずにソースコードを解析して欠陥を見つける手法で、開発の早い段階で問題を発見できます。
DAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)は、稼働中のアプリケーションに外部から攻撃を模した入力を与え、実行時の脆弱性を検出します。
IAST(インタラクティブアプリケーションセキュリティテスト)は、アプリケーション内部に組み込んだセンサーが、テスト実行中の挙動を監視して脆弱性を検知する手法です。アプリの内部が見えるため、外部からは分かりにくい箇所の検出にも向きます。3つの詳細な違いは、後ほど対比表で整理します。
出典・参考資料(1件)
認証・アクセス制御テスト
認証・アクセス制御テストは、ログイン認証の強度や、利用者ごとの権限設定が適切かを確認する手法です。パスワードの強度や多要素認証の実装状況、本来アクセスできないはずのデータや機能に別の権限の利用者が到達できてしまわないか(権限昇格)などを検証します。不正ログインや情報の不正閲覧を防ぎたい場合に重要になります。
ネットワーク(プラットフォーム)診断
ネットワーク診断(プラットフォーム診断)は、サーバーのOSやミドルウェア、ファイアウォール・ルーターなどの通信機器、公開ポートやパッチ適用状況といったインフラ側の弱点を評価する手法です。アプリケーションそのものではなく、それを動かす基盤に設定ミスや未適用の修正プログラムが残っていないかを点検します。実際に流れる通信を分析して内部に潜む脅威を洗い出すタイプの診断もあります。
外部からの防御を固めていても内部側の点検が必要になる理由について、ネットワーク診断の現場では次のように語られています。

金融機関のお客様は、脆弱性診断やペネトレーションテストをすでに実施されていたり、ネットワーク分離によって、境界防御やエンドポイント、つまり入り口と出口の対策はしっかり固めていらっしゃるところが大多数です。ただ、お話を伺うと「侵入されない前提で設計しているからこそ、そこを突破されてひとたび中に入られてしまうと、内部は弱いんだよね」という現状があるとおっしゃいます。
セキュリティ監査・ファジング
セキュリティ監査は、組織やシステムのセキュリティ対策が基準に適合しているかを第三者の視点で確認する手法です。経済産業省が策定した「情報セキュリティサービス基準」でも、情報セキュリティ監査サービスは脆弱性診断サービスやペネトレーションテストと並ぶ独立したサービス区分として定義されています。
ファジングは、予期しない入力や不正な形式のデータを自動で大量に与え、プログラムのバグや脆弱性、異常な挙動を見つけ出すテスト手法です。想定していない入力への堅牢性を確かめたい場合に用いられます。
出典・参考資料(2件)
- 出典:情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト|独立行政法人 情報処理推進機構(IPA、経済産業省策定)(https://www.ipa.go.jp/security/service_list.html)
- 参考資料:Fuzzing|OWASP Foundation(https://owasp.org/www-community/Fuzzing)
混同しやすい手法の違いを対比で見分ける
種類の中でも特に混同しやすいのが、「脆弱性診断とペネトレーションテスト」と「SAST・DAST・IAST」の2組です。いずれも名前が似ているうえに目的が重なる部分もあるため、対比して整理すると違いがつかめます。
脆弱性診断とペネトレーションテストの違い
両者は「弱点を見つける」点では共通しますが、目的とアプローチが異なります。脆弱性診断は弱点を網羅的に洗い出すこと、ペネトレーションテストは攻撃が成立するかと、その影響範囲を確かめることに重点を置きます。
| 観点 | 目的 | アプローチ | 網羅性 | 主な実施方法 | 向くケース |
|---|---|---|---|---|---|
| 脆弱性診断 | 既知の弱点を幅広く洗い出す | 網羅的にチェックする | 高い(広く浅く) | ツール+手動 | 公開前・定期的な全体点検 |
| ペネトレーションテスト | 攻撃の成立可否と影響範囲を確かめる | 攻撃者視点で特定の侵入経路を試す | 限定的(狭く深く) | 手動中心(高い専門性が必要) | 重要システムで実際の攻撃耐性を検証 |
一般には、まず脆弱性診断で弱点を網羅的に把握し、特に重要なシステムについてペネトレーションテストで攻撃耐性を確かめる、という使い分けが考えられます。
費用・期間・実施頻度の違いや、自社はどちらを選ぶべきかまで踏み込んで知りたい場合は、両者を比較した次の記事が参考になります。
SAST・DAST・IASTの違い
SAST・DAST・IASTは、いずれもアプリケーションの脆弱性を見つける手法ですが、「コードを実行するかどうか」と「開発のどの段階で効くか」が異なります。それぞれが効く開発フェーズも含めて対比すると、使い分けが見えてきます。
| 観点 | 検査対象 | コードの実行 | 効く開発フェーズ | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|---|---|
| SAST(静的解析) | ソースコード | 実行しない | コード記述段階(早期) | 早期に欠陥を発見でき修正コストを抑えやすい | 実行時固有の問題は見つけにくい |
| DAST(動的解析) | 稼働中のアプリ | 外部から実行し攻撃を模倣 | テスト・公開前後 | 公開環境に近い状態で検出できる | 内部構造が見えない |
| IAST(対話型解析) | 実行中のアプリ内部 | 内部にセンサーを置き実行中に監視 | テスト・運用段階 | アプリ内部が見え検出精度が高い | 導入にアプリへの組み込みが必要 |
SASTは開発の早い段階、DASTは公開前後、IASTはその中間を補う、という形で開発工程に沿って組み合わせると、見つけられる脆弱性の幅が広がります。
なお、DASTのような動的解析は、脆弱性診断のなかで使われる検査手法でもあります。種類として並べた「脆弱性診断」と「SAST・DAST・IAST」は、完全に別物というより一部が重なり合う関係だと捉えると整理しやすくなります。
このうちSAST(ソースコードを検査する静的解析)を実際に外注する際の費用の考え方や依頼先の選び方は、ソースコード診断に絞って整理した次の記事が参考になります。
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セキュリティテストの実施手順(6ステップ)
セキュリティテストは、対象の洗い出しから再テストまで、おおむね次の6つのステップで進みます。手順を踏むことで、検査の抜け漏れを防ぎ、見つかった弱点を確実に改善につなげられます。
- 対象範囲の明確化:どのシステム・画面・機能を検査するかを決めます。範囲は費用や期間に直結するため、守るべき情報資産を踏まえて優先順位をつけます。
- テスト計画の作成と環境構築:検査方法(手動/ツール)やスケジュール、検査に使う環境を準備します。想定される攻撃の洗い出し(脅威の整理)もここで行います。
- テストの実施:計画に沿って、ツールによる自動スキャンと専門家による手動検査を実施します。
- 結果の分析とリスク評価:検出された脆弱性を、CVSS(共通脆弱性評価システム)などの指標で深刻度を評価し、対応の優先順位を整理します。
- 対策・改善の実施:評価結果にもとづき、優先度の高い脆弱性から修正や設定変更を行います。
- 再テスト:修正が正しく反映され、脆弱性が解消されたかを再度検査して確認します。
CVSSは脆弱性の深刻度を0.0〜10.0の数値で表す国際的な指標で、スコアが高いほど緊急度が高いと判断できます。限られた時間と予算のなかで、どの脆弱性から対応するかを決める目安になります。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:Common Vulnerability Scoring System (CVSS)|FIRST(https://www.first.org/cvss/)
開発工程のどこで回すか(シフトレフト)
脆弱性は、発見が遅れるほど修正にかかる手戻りとコストが大きくなります。そのため、公開直前にまとめて検査するのではなく、設計・開発の早い段階からセキュリティテストを組み込む「シフトレフト」の考え方が広がっています。
具体的には、コードを書く段階でSASTを回し、テスト段階でDASTやIASTを加え、公開前に脆弱性診断やペネトレーションテストで仕上げる、という形で開発工程に沿って手法を組み合わせます。運用開始後も定期的に再診断することで、新たに公開された脆弱性への対応を続けられます。

セキュリティを開発の早い段階から組み込むという考え方の変化について、診断ツールを提供する現場では次のように語られています。

正直なところ、昔は「セキュリティは運用側が最後に何とかするもの」という前提が強かったと思います。ですが今は攻撃の手口も複雑ですし、作ったあとに1回チェックして終わり、では追いつきません。
内製(ツール)か外注か|手動診断とツール診断の使い分け
セキュリティテストは、ツールを使って自社で実施する方法と、専門の診断会社に外注する方法があります。ただし、ツールを外注先が使うことも、手動検査の一部を社内で担うこともあるため、「ツール=内製/手動=外注」と固定して考える必要はありません。
一般には、専門性の高いペネトレーションテストや、重要システム・公開前の最終確認は外注し、日常的な検査や開発中のコードチェックは自社のツールで回す、という線引きが現実的です。社内に診断の知見が乏しい場合は、まず重要な対象から外注で押さえるとよいでしょう。
手動診断とツール診断の長所短所
ツールによる自動診断は、短時間で広範囲を繰り返し検査でき、費用も抑えやすい一方、ツールが対応していない複雑な脆弱性やビジネスロジックの欠陥は見つけにくい傾向があります。手動診断は、専門家が文脈を踏まえて検査するため精度が高く、自動では検出しにくい弱点にも対応できますが、費用と時間がかかります。
実務では、日常的な検査はツールで継続し、重要なシステムや公開前の最終確認では手動診断を組み合わせる、という使い分けが現実的です。ツールだけで全ての脆弱性を発見できるわけではなく、誤検知の精査にも人の判断が必要になる点は押さえておきましょう。
ツールと手動を組み合わせる理由について、診断サービスを手がける現場では次のように説明されています。
ツールを使えば大量の項目を短期間で効率的に診断できますが、ビジネスロジックに関わる部分や、複数の脆弱性の組み合わせで一つの問題が起きるようなケースは、単一のツールでは取りこぼしやすい領域です。そこは人間の目で判断する必要が必ずありますので、両方を組み合わせて診断しています。
代表的なツール
自社でWebアプリケーションのセキュリティテストを行う際によく使われる代表的なツールに、ZAPとBurp Suiteがあります。ZAP(旧OWASP ZAP。現在はCheckmarxが支援する独立したオープンソースプロジェクト)は、無料で使えるWebアプリケーション脆弱性スキャナーです。
Burp Suite(提供元:PortSwigger)は、手動でのWebセキュリティテストに広く使われるツール群で、無料のCommunity Editionと有償のProfessionalがあります。
これらのツールは強力ですが、使いこなすには一定の専門知識が必要です。検出結果の読み解きや誤検知の判断を含めると、社内に知見が乏しい場合は外注も含めて検討するのが現実的です。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:ZAP 公式サイト(https://www.zaproxy.org/)/Burp Suite|PortSwigger(https://portswigger.net/burp)
診断前に知っておきたい落とし穴
セキュリティテストを始める際につまずきやすいのが、対象範囲の設定です。範囲を広げすぎると費用と期間がかさみ、狭すぎると重要な弱点を見逃します。守るべき情報資産を先に洗い出し、優先順位をつけてから範囲を決めると、無駄を抑えられます。
また、診断はやって終わりではありません。見つかった脆弱性を修正し、再テストで解消を確認するところまでが一連の流れです。レポートを受け取っただけで対策が止まると、弱点は残ったままになります。外注する場合は、修正方針の相談や再診断まで対応してもらえるかを事前に確認しておくと安心です。
セキュリティテストの費用の目安
セキュリティテストの費用は、検査する対象の範囲や深さ、手動かツールか、期間によって大きく変わります。公的機関が示す標準的な相場は存在せず、同じ「脆弱性診断」でも内容によって金額は幅があります。そのため、提示された金額だけで比較するのではなく、何をどこまで検査する費用なのかを揃えて見積もりを取ることが欠かせません。
費用の決まり方の一例として、Webアプリケーション診断では検査するリクエスト数(画面や機能の数)を基準に見積もる方式がよく使われます。見積もりの精度を上げるには、対象の画面数や機能、検査してほしい範囲をできるだけ具体的に伝えることが重要です。
金額の目安としては、ツールを使う月額制のサービスで月数万円程度から、専門家による手動のソースコード診断やWebアプリケーション診断では対象範囲に応じて十数万円〜数十万円規模から、というケースがあります。これらは後述する各サービスの料金の一例で、公的な相場ではありません。
ツールによる自動診断を自社で継続する方式と、専門家による手動診断を外注する方式では費用構造が異なるため、自社の体制と対象の重要度に合わせて選びます。
まずは複数のサービスから、検査範囲を揃えて見積もりを取り、対応範囲・診断方式・再診断の有無を含めて比較するとよいでしょう。次の章では、セキュリティテストに対応するサービスを具体的に紹介します。
セキュリティテストに使えるサービス・解決策
ここからは、セキュリティテストに対応するサービスを紹介します。ツールで自動的に検査するタイプから、専門家が手動で診断するタイプ、ネットワークや組織全体を対象とするタイプまで、それぞれ得意領域が異なります。自社が検査したい対象に合うものを選ぶ参考にしてください。
セキュリティテストの中心となる脆弱性診断について、より多くのサービスを診断方法・費用相場・選び方の観点で比較検討したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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主なサービスの特徴を一覧で比較します。大まかには、WebアプリやソースコードならAikido SecurityやCoWorker、社内ネットワークやIT/OT(工場などの制御ネットワーク)環境ならセキュア・レントゲンやKATABAMI、スマートコントラクトなどWeb3領域も含めるならHi AUDITが対象に入ります。
| サービス名 | Aikido Security | セキュア・レントゲン | Hi AUDIT | CoWorker 脆弱性診断 | KATABAMI |
|---|---|---|---|---|---|
| 診断の対象 | Webアプリ・ソースコード・依存ライブラリ・クラウド設定・コンテナ | ネットワーク(IT/OTの実通信トラフィック) | スマートコントラクト(中核)/Webアプリ・API・IoT機器など | Webアプリ・API・ソースコード | 社内ネットワーク内部(サーバー・ネットワーク機器・複合機・PC等) |
| 診断方式 | ツール自動(自社で回すSaaS型) | ハイブリッド(業者依頼。ツール収集+専門家分析) | ハイブリッド(業者依頼。自動監査+専門家のマニュアル監査) | ハイブリッド(業者依頼。AI自動解析+専門家の最終確認) | 業者依頼(専門家による月次の内部診断+伴走) |
| 特徴 | SAST・DAST・SCA・CSPMを1画面に統合。無料プランがあり、開発工程に継続的に組み込める | 通信を全数キャプチャして分析し、内部に潜む脅威や不審通信まで可視化。IT/OT横断 | スマートコントラクト監査が中核。報告後の修正相談にも対応すると説明 | AIで短納期。ソースコード診断から攻撃シミュレーションまで段階的に選択 | 脆弱性診断・バックアップ・サイバー保険を一体提供。中小企業向けで低工数 |
| 料金の目安 | 月5万円台〜(日本窓口AndGo) 無料のDeveloperプランあり | 要お問い合わせ (スポット型の単発診断) | 要お問い合わせ (成果報酬型と説明) | ソースコードAI診断15万円〜 セット診断は50万円〜 | 1台1,250円/月〜 (100ノード以下 年額90万〜150万円) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
※各社の公式情報・掲載情報による(2026年11月時点)。料金・仕様は変更される場合があるため、最新情報は各社の資料でご確認ください。
1. Aikido Security(株式会社AndGo)

Aikido Securityは、ソースコード・依存ライブラリ・クラウド設定・コンテナ・稼働中のWebアプリを1つの管理画面でまとめて検査できる脆弱性診断のSaaSです。人が診断してレポートを納品する受託型ではなく、自動スキャンのツールを利用する形態のため、開発の各段階で継続的に検査を回したい企業に向いています。
SAST・DAST・SCA(依存ライブラリの検査)・CSPM(クラウド設定の検査)などを横断して扱える点が特徴です。
無料のDeveloperプランがあり、導入前に機能を試せます。日本では株式会社AndGoが窓口となり、日本語での対応や日本円での請求書払いにも対応しています。手動によるペネトレーションテストが必要な場合は、AndGoが別サービスとして案内しています。
2. セキュア・レントゲン(株式会社クワッドマイナージャパン)

セキュア・レントゲンは、実際にネットワーク上を流れている通信を全数収集・分析する「ネットワークリスク診断サービス」です。設定のスキャンやWebアプリの検査とは異なり、流れているトラフィックそのものを検査するため、すでに内部に侵入・潜伏している脅威や不審な通信も洗い出せる点が特徴です。ITとOT(工場などの制御ネットワーク)を横断して診断でき、製造業向けの診断としても提供されています。
本サービスは、リスクの検出・可視化と対策の提案(レポーティング)に特化しており、検出した脆弱性へのパッチ適用そのものは利用企業側で対応する設計です。「どこに弱点があるかを外部の目で洗い出したい」というネットワーク起点のニーズに向いています。
3. Hi AUDIT(株式会社TECHFUND)

Hi AUDITは、株式会社TECHFUNDが提供するセキュリティ監査サービスです。スマートコントラクトの監査を中核としつつ、Webアプリケーション・API・ネットワーク・IoTデバイスなどを対象とする診断にも対応しています。自動の監査ツールと、専門家によるマニュアル監査を組み合わせて実施する点が特徴です。
料金は、脆弱性が実際に見つかった場合に、その重大度・件数に応じて課金する成果報酬型を採用していると説明されています。レポート提出後の質問対応や修正方法の相談にも対応するとしており、Web3・Fintech領域を含め、診断と改善を一貫して進めたい企業に向いています。
4. CoWorker 脆弱性診断サービス(CoWorker株式会社)

CoWorker 脆弱性診断サービスは、自社開発のAI「Red Agent」による自動解析と、社内のセキュリティ専門家による最終確認を組み合わせた診断サービスです。
診断メニューは、ソースコードのAI診断、Web/APIを対象とする動的脆弱性診断、実際の攻撃を想定した実践攻撃シミュレーション診断(ペネトレーションテスト)の3つで、静的解析から段階的に選べます。
AIによる自動解析を活用することで、短期間での納品に対応しています。派生サービスとして、生成AI・LLMを対象とした脆弱性診断も提供しており、開発したアプリケーションからAIを組み込んだシステムまで、幅広い対象を診断したい企業に向いています。
5. KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

KATABAMIは、脆弱性診断(予防)・データ復旧(復旧)・サイバー保険(補償)を1つにまとめたパッケージ型のサービスです。診断専業のサービスではなく、脆弱性診断を含む対策全体を一体で提供する点が特徴で、脆弱性診断(予防)ではネットワーク内部から定期的に弱点を検出し、改善策を提示します。
公式サイトでは「最短2週間で利用開始」「設置10分」を掲げており、専任のセキュリティ担当者がいない中小企業でも、診断から復旧・補償までを短期間でまとめて導入できる設計を打ち出しています。診断単体ではなく、対策から有事の備えまでをまとめて整えたい企業に向いています。
まとめ
セキュリティテストは、脆弱性診断・ペネトレーションテスト・ソースコード解析(SAST・DAST・IAST)・ネットワーク診断・セキュリティ監査など、複数の手法の総称です。それぞれが調べる対象と効く場面は異なるため、まず全体像を押さえ、自社が守りたい対象に合う手法を選ぶことが出発点になります。
実施にあたっては、対象範囲を絞り込んだうえで、ツールによる自動診断と専門家の手動診断を使い分け、開発の早い段階から継続的に検査を組み込むと、手戻りとコストを抑えられます。費用には公的な相場がないため、検査範囲を揃えて複数のサービスから見積もりを取り、対応範囲や再診断の有無まで含めて比較することが大切です。自社に合うサービスを探す際は、各サービスの資料を取り寄せて具体的に検討してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. セキュリティテストとは何ですか?
A. セキュリティテストとは、システムやソフトウェアが攻撃に耐えられるかを検証し、悪用され得る脆弱性を攻撃者より先に見つけ出すためのテストの総称です。
脆弱性診断・ペネトレーションテスト・SAST/DAST/IAST・ネットワーク診断・セキュリティ監査といった個別の手法を含む上位概念です。「仕様どおりに正しく動くか」を確かめる機能テストとは視点が逆で、想定外の入力や不正な操作をあえて与え、情報漏えいや改ざんにつながる弱点がないかを検証します。
Q. セキュリティテストと脆弱性診断の違いは何ですか?
A. セキュリティテストは複数の手法の総称で、脆弱性診断はそのなかの一手法という関係にあります。
脆弱性診断は既知の弱点を幅広く洗い出す手法です。セキュリティテストにはこのほかに、攻撃者視点で実際に侵入を試すペネトレーションテスト、コードやアプリを解析するSAST/DAST/IAST、インフラを点検するネットワーク診断などが含まれます。「脆弱性診断はセキュリティテストの一種」と捉えると整理しやすくなります。
Q. セキュリティテストはどの種類を選べばよいですか?
A. セキュリティテストの種類は、守りたい対象と検査の目的に合わせて選ぶのが基本です。
公開前や定期点検で弱点を網羅的に確認したいなら脆弱性診断、重要システムで実際の攻撃耐性を確かめたいならペネトレーションテスト、開発の早い段階でコードの欠陥を潰したいならSAST、というように使い分けます。一般には、まず脆弱性診断で全体の弱点を把握し、特に重要なシステムをペネトレーションテストで深掘りする流れが現実的です。
Q. セキュリティテストは自社のツールだけで実施できますか?
A. セキュリティテストはZAPやBurp Suiteなどのツールを使えば自社でも実施できますが、ツールだけですべての脆弱性を発見できるわけではありません。
ツールによる自動診断は短時間で広範囲を繰り返し検査でき費用も抑えやすい一方、ツールが対応していない複雑な脆弱性やビジネスロジックの欠陥は見つけにくく、誤検知の精査にも人の判断が必要です。日常的な検査はツールで継続し、重要なシステムや公開前の最終確認では専門家による手動診断(外注)を組み合わせるのが現実的です。
Q. セキュリティテストはどのくらいの頻度・タイミングで実施すべきですか?
A. セキュリティテストは、公開前にまとめて行うのではなく、設計・開発の早い段階から組み込み、運用開始後も定期的に再診断するのが望ましいとされています。
脆弱性は発見が遅れるほど修正の手戻りとコストが大きくなるため、コードを書く段階でSAST、テスト段階でDASTやIAST、公開前に脆弱性診断やペネトレーションテスト、という形で開発工程に沿って検査を組み込む「シフトレフト」の考え方が広がっています。運用開始後も、新たに公表される脆弱性に備えて定期的に再診断を続けることが重要です。
Q. セキュリティテストの費用はどう決まりますか?
A. セキュリティテストの費用は、検査する対象の範囲や深さ、手動かツールか、期間によって決まり、公的に示された相場値は存在しません。
たとえばWebアプリケーション診断では、検査するリクエスト数(画面や機能の数)を基準に見積もる方式がよく使われます。同じ「脆弱性診断」でも内容によって金額は大きく変わるため、提示された金額だけで比較せず、対象の画面数・機能・検査してほしい範囲を揃えて複数のサービスから見積もりを取ることが欠かせません。
Q. セキュリティテストの納期(期間)はどのくらいかかりますか?
A. セキュリティテストの納期は検査対象の規模によって変わり、画面や機能が多いほど診断と報告書作成の期間は長くなります。
小規模な対象なら数営業日から、範囲が広がれば数週間かかることもあります。急ぎの場合は相談に応じる事業者も多いため、正確な期間は検査範囲を伝えて見積もり時に確認するのが確実です。見つかった脆弱性を修正したあとの再テストまで含めると、さらに日数を見込んでおきましょう。
脆弱性診断・セキュリティ診断サービスの料金・資料を一括チェック
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















