市場環境の変化が速くなり、勘や経験だけに頼った意思決定では判断の根拠を説明しづらくなっています。そこで、社内外に散らばるデータを集めて経営判断に使う「データドリブン経営」を検討する企業が増えています。とはいえ、言葉は分かっても実際に他社が何をして何が変わったのかがつかめず、自社での進め方に踏み出せない担当者は少なくありません。
この記事では、製造・金融・小売・卸売・サービスなど業種の異なる実在企業が「どんなデータを・どう使って・何が変わったか」を紹介します。成果が数値で示されている事例もあれば、体制づくりの段階にある事例もあり、大企業のマクロな取り組みから部門単位で再現しやすい例まで取り上げます。
あわせて、事例から見えてくる成功の共通要因とつまずきやすい失敗パターン、自社で始めるときの進め方、そして事例のような取り組みを支える経営管理システム・BIツールまで整理します。自社に近い成功イメージがつかめ、次の一歩が見えてきます。
目次
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データドリブン経営の事例(業種別)
ここからは、実在企業がデータをどう経営に生かしたかを業種別に紹介します。各事例は、抱えていた課題・取り組み(使ったデータと仕組み)・成果の順で整理し、根拠となる出所を添えました。成果が数値で示されている事例もあれば、体制づくりの段階にある事例もあります。自社の業種・規模に近い例から読み進めると、取り組みのイメージをつかみやすくなります。
製造業の事例
製造業では、拠点や部門ごとにデータが分断され、分析に着手するまでに時間がかかることが課題になりがちです。データを集約する共通基盤を整え、探す・つなぐ手間を減らした2社を紹介します。
旭化成株式会社は、グループ内に散在するデータを全社で活用するため、共通のデータマネジメント基盤「DEEP(Data Exploration and Exchange Pipeline)」を構築し、2022年4月より本稼働を開始しました。DEEPは、散在するデータを探せるデータカタログと、データをシステム間で簡単に連携させるデータハブで構成されます。
同社はこの基盤により、データ活用に至るまでのリードタイムの短縮や効率化、生産性向上を実現したと説明しています。何をどこで探せばよいか分からない状態を解消し、全社でデータを使える土台を先に整えた点が、その後の活用を支えています。
出典・参考資料(1件)
日本製鉄株式会社は、各製鉄所に蓄積されたデータがサイロ化し、分析に必要なデータを集めるだけで時間がかかっていました。そこで、既存システムのデータをメタデータでカタログ化してクラウド上に集約する統合データプラットフォーム「NS-Lib」を導入します。
その結果、解析・分析に必要なデータ収集時間を8割削減し、従来6週間を要していた業務が1週間に短縮されました。データを探して集める工程が圧縮され、分析そのものに時間を使えるようになりました。
金融・保険業の事例
金融業では、行内システムやグループ会社に情報が分かれており、データを横断して使いこなす体制づくりが課題になります。組織の面から取り組みを進めた事例です。
株式会社京都銀行は、2023年2月1日に「データドリブン推進室」を新設しました。銀行グループ横断的なデータ利活用の推進・高度化を担う専担組織で、データサイエンティスト等の高度デジタル人財を育成することで、データの高速かつ高精度な分析を実現するとしています。
ツールの導入に先立って、データを扱う専門組織と人材を経営として位置づけた点が特徴です。全社的なデータ活用を継続させるための土台を、体制の面から固めた動きといえます。
出典・参考資料(1件)
小売・EC・アパレルの事例
小売・アパレルでは、顧客一人ひとりのデータを接客や商品提案に生かせるかが差になります。店頭で取得したデータを接客に還元した事例です。
株式会社ワコールは、3D計測を使った接客サービス「3D smart & try」を2019年5月より開始しました。3Dボディスキャナーで3秒で全身を計測し、インナーサイズや全身18か所の採寸データ、体型特徴、おすすめブランドを提示します。
計測データはタブレットでの接客に使われるほか、公式アプリと連動して顧客自身も自分の計測データを確認できます。2023年4月末時点で延べ約17万人が利用しており、店頭で得た顧客データを接客に還元した例です。顧客接点で得られるデータも、経営・事業の判断材料になります。
出典・参考資料(1件)
卸売・物流業の事例
取扱品目が膨大な卸売業では、見積や在庫の判断に時間がかかりやすく、データにもとづく自動化の効果が出やすい領域です。
トラスコ中山株式会社は、販売店ごとの取引実績データをもとにAIが適正価格を算出し見積を自動で回答するシステム「即答名人」を、2020年1月より提供しています。最短5秒で回答でき、2025年12月末時点のWeb見積依頼率は49.4%、見積自動化率も30.5%まで高まりました。
同社が扱う商品在庫は62万アイテムに及び、需要予測にもとづく在庫の持ち方とあわせて、データを日々の受注業務に組み込んでいます。担当者が都度対応していた見積を仕組みで返すことで、対応の速さと標準化を同時に実現しました。
出典・参考資料(1件)
サービス・IT業の事例
店舗網や拠点を持つサービス業では、現場が自分でデータを見て動ける状態をつくれるかがポイントになります。全社にデータ可視化を広げた事例です。
株式会社NTTドコモは、BIツール「Tableau」を活用し、状況を素早く確認する固定レポートと、地域特性に応じて自分でデータの絞り込みや軸を調整できるセルフBIを全社に展開しました。これにより、ドコモショップ各店が簡単に自店のデータを確認できるようになりました。
公表資料では、月あたりの作業時間が数十時間削減された業務もあると紹介されています。専門部署が集計して配るのではなく、現場が自らデータを見て判断できる形に変えた点が特徴です。
出典・参考資料(1件)
中小企業・部門レベルの事例
大がかりなデータ基盤を持たなくても、予算と実績の管理をデータドリブンに変えるだけで経営判断のスピードは上がります。部門単位で再現しやすい事例です。
テクバン株式会社は、8事業部の予測管理を表計算ソフトで運用しており、着地見込の更新や差異分析に手間がかかっていました。予実管理クラウド「DIGGLE」に移行して予実の突合と差異分析を仕組み化したところ、着地見込更新の工数が削減され、差異分析と対応策の準備期間が3日から2週間に広がりました。DIGGLEの導入事例では、こうした改善とあわせて経常利益が1.5倍になったことも報告されています。
準備期間が延びたのは、集計に追われる時間が減り、打ち手を検討する時間に回せるようになったためです。利益の伸びは事業全体の要因も絡むため一概にツールの効果とは言えませんが、見る数字を絞って可視化し、空いた時間を行動に充てる流れは、規模を問わず参考になります。
出典・参考資料(1件)
事例まとめ表(業種横断で見比べる)
ここまでの7事例を、使ったデータ・取り組み・成果で並べました。自社に近い業種や課題の行から、取り組みの型を読み取ってみてください。
| 企業(業種) | 旭化成(製造・化学) | 日本製鉄(製造・鉄鋼) | 京都銀行(金融) | ワコール(小売・アパレル) | トラスコ中山(卸売) | NTTドコモ(サービス・IT) | テクバン(中小・部門/IT) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 使ったデータ | グループ内に散在する各種データ | 各製鉄所に蓄積された現場・経営データ | グループ横断の行内データ | 店頭3D計測による全身18か所の採寸データ | 販売店ごとの取引・在庫データ | 店舗・顧客接点のデータ | 8事業部の予算・実績・着地見込データ |
| 取り組み | 共通基盤「DEEP」でデータのカタログ化とシステム間連携 | 統合基盤「NS-Lib」でカタログ化しクラウド集約 | 専担組織「データドリブン推進室」を新設し人材育成 | 「3D smart & try」で計測データを接客・商品提案に活用 | AI見積「即答名人」で見積を自動回答、在庫を最適化 | Tableauで固定ダッシュボードとセルフBIを全社展開 | 予実管理クラウド「DIGGLE」で予実突合・差異分析を仕組み化 |
| 成果(時点) | データ活用までのリードタイム短縮・生産性向上(2022年4月本稼働) | 分析用データ収集時間を8割削減(6週間→1週間) | 横断的なデータ利活用の推進体制を整備(2023年2月新設) | 延べ約17万人が利用(2023年4月末時点) | 最短5秒回答・Web見積依頼率49.4%・見積自動化率30.5%(2025年12月末) | 月あたり作業時間を数十時間削減した業務あり | 差異分析の準備期間が3日→2週間に拡大、経常利益1.5倍 |
※各社の公式発表・導入事例にもとづきます(数値の時点・出所は本文各事例の出典を参照)。
事例から学ぶ成功の共通要因と失敗パターン
個別の事例を横断すると、うまくいく取り組みに共通する要因と、逆につまずきやすいパターンが見えてきます。自社に当てはめて読み解くための視点として整理します。

成功の共通要因
1つ目は、散らばったデータを集めて「同じ数字を全員が見られる」状態を先につくっていることです。旭化成のDEEPや日本製鉄のNS-Libは、分析の前段にあるデータを探して集める工程を仕組みで解消しました。データの置き場所と探し方が整うほど、分析に使える時間が増えます。
2つ目は、可視化にとどめず、現場の行動につなげていることです。NTTドコモは各店舗が自らデータを確認できる状態をつくり、トラスコ中山は見積という日々の業務そのものにデータを組み込みました。誰が・どの場面で数字を見て動くのかまで設計されている点が共通します。
3つ目は、経営として体制や基盤に投資していることです。京都銀行が専担組織と人材育成を経営判断として位置づけたように、データ活用を一部門の努力に任せず全社の取り組みにする姿勢が、成果を継続的に生む土台になります。京都銀行の取り組みは体制づくりの段階で成果はこれからですが、続けられる仕組みを先に整えた点が、他社にも参考になります。
陥りやすい失敗パターン
逆に、成果が出にくい取り組みには次のような傾向があります。読み進めながら、自社に当てはまる兆候がないか確認してみてください。
1つ目は、ダッシュボードを作って満足し、可視化で止まってしまうことです。数字が見えるようになっても、それを見て誰が何を決めるかが決まっていなければ、業務は変わりません。事例のいずれも、可視化の先にある意思決定や行動まで設計していました。
2つ目は、分析が特定の担当者に属人化することです。集計や分析を一部の担当者が抱えると、その人の負荷で運用が止まり、他の部署に広がりません。テクバンのように仕組みで予実突合を自動化し、担当者の手作業を減らすことが、継続の条件になります。
3つ目は、情報システム部門だけの取り組みにしてしまうことです。データを使うのは現場と経営であり、どの数字を見たいかは業務側にしか分かりません。京都銀行が専担組織を設けて全社で推進したように、経営層が主導し、業務部門を巻き込んで進めることが欠かせません。
(おさらい)データドリブン経営とは?注目される背景とメリット
事例を踏まえて、データドリブン経営の考え方と注目される背景を簡単に整理します。すでに概要を把握している場合は、次の「進め方」から読み進めても構いません。
データドリブン経営とは(従来のデータ活用・DXとの違い)
データドリブン経営とは、勘や経験だけに頼らず、社内外に蓄積したデータの分析結果にもとづいて経営や事業の意思決定を行う経営手法です。従来もデータは使われてきましたが、必要なときに担当者が個別に集計する使い方が中心でした。データドリブン経営では、データを継続的に集約・可視化し、日常の意思決定の土台として使う点が異なります。
デジタル化(DX)との関係でいえば、DXが業務やビジネスモデルをデジタル前提で作り変える広い取り組みであるのに対し、データドリブン経営はその中で「データにもとづいて判断する」意思決定のあり方を指します。事例で見たデータ基盤の整備やBIツールの全社展開は、DXの一環としてデータドリブン経営を支える取り組みといえます。
注目される背景
市場や顧客ニーズの変化が速くなり、過去の経験だけでは判断しきれない場面が増えています。加えて、クラウドやAIの普及で、大量のデータを分析できる環境が整ってきました。
制度面でも、経済産業省は2018年の「DXレポート」で、既存システムの課題を放置した場合のリスクを次のように指摘しています。
この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)。
出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省(2018年)
データを活用できる基盤づくりは、こうした将来リスクへの備えとしても位置づけられています。
主なメリット
データドリブン経営の主なメリットは、意思決定の速さと精度が上がることです。事実にもとづいて判断できるため、根拠を示しやすく、関係者の合意形成も進めやすくなります。事例でも、データ収集の時間短縮や現場での即時判断といった形で効果が現れていました。
また、部門をまたいで同じ数字を共有することで、これまで見えなかった課題や改善余地に気づきやすくなります。売上や利益といった結果だけでなく、その手前の活動指標まで追えるようになる点も、日々の業務改善につながります。
自社でデータドリブン経営を始める進め方
事例のような取り組みは、最初から全社の基盤を整えなくても、小さく始めて広げられます。ここでは、無理なく着手するための進め方を3つのステップで説明します。

まず1つ目は、経営や事業で「毎日見たい数字」を3つ程度に絞ることです。月次売上、製品別の利益、在庫回転率など、自社の意思決定に直結する指標を選びます。最初から多くの指標を追おうとすると運用が続かないため、まず判断に効く数字に絞るのが要点です。
2つ目は、絞った数字を「見える状態」にする基盤を整えることです。データが会計システムや各部門のExcelに散らばっているなら、それらを集約して自動で可視化できる仕組みを用意します。完璧なデータ基盤を目指すより、まず必要な数字が滞りなく見える状態を先につくることが、事例に共通する順序でした。
3つ目は、数字を見た後の行動を決めておくことです。誰が・どのタイミングで数字を確認し、どの水準を下回ったら何をするのかを、あらかじめ決めておきます。可視化で止まる失敗を避けるには、この「見た後の一手」までを設計に含めることが欠かせません。経済産業省もデータを活用できる基盤づくりの重要性を指摘しており、段階的にでも着手しておく意義は大きいといえます。
事例のような取り組みを実現する経営管理システム・BIツール
事例で見た「データを集めて可視化し、経営判断に使う」取り組みは、目的に合ったツールを使うことで自社でも進めやすくなります。ここでは、取り組みのタイプごとにどんなツールが向くかを整理したうえで、代表的なサービスを紹介します。
目的別に見るツールのタイプ
データドリブン経営を支えるツールは、目的によって大きく次のタイプに分かれます。自社がまず何をしたいかで選ぶと、過不足のない導入につながります。
予実管理型は、予算・実績・着地見込を突き合わせ、差異の要因を分析することに強みがあります。テクバンの事例のように、Excel中心の予実管理をデータドリブンに変えたい場合に向きます。全社データ可視化(BI)型は、散らばったデータを集約してダッシュボードで可視化し、現場が自らデータを見て動ける状態をつくるのに適しています。NTTドコモや日本製鉄のように、部門横断でデータを見せたい場合に効果的です。
このほか、グループ全体の数字を統合する連結・グループ経営管理型や、基幹業務のデータを統合するERP型もあります。旭化成のDEEPや日本製鉄のNS-Libのような全社規模のデータ基盤は、システム開発会社と組んで独自に構築する例が中心です。
多くの企業にとっては、まず部門から市販のツールで小さく始め、必要に応じて全社基盤へ広げるのが現実的な進め方になります。
以下では、経営管理システム・BIツールの代表的なサービスを比較します。自社の取り組みタイプに照らして候補を絞る参考にしてください。
| サービス名 | DIGGLE(ディグル) | X-KPI(クロスケーピーアイ) | Scale Cloud(スケールクラウド) | Srush AI(データ統一クラウド) |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 30万円〜(税別) |
| 月額費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 15万円〜 | 5万円〜(税別) |
| 予実管理 | ◎予実管理に特化 | ●差異・異常値を自動検知 | ●予算策定〜着地見込み更新 | △予実は限定的(BI中心) |
| KPI・非財務指標 | ●財務・非財務指標を可視化 | ◎KPIツリーで一元管理 | ◎財務(PL/BS/CF)とKPIを関連づけ | △BIで可視化(専用のKPI管理は限定的) |
| データ統合・可視化(BI) | △外部BIツールへデータ出力 | ●ノーコードでダッシュボード設計 | ●経営・管理部・事業部別ダッシュボード | ◎Snowflake+QuickSightを標準搭載 |
| 会計・外部連携 | freee会計・マネーフォワード・勘定奉行クラウド・Salesforceなどと API/CSV 連携 | 会計ソフト・グループウェアと API 連携 | 勘定奉行クラウド・freee・Salesforce・Googleスプレッドシート・CSV 連携 | 500種類以上と連携(会計ソフトは対象外・DB経由で接続) |
| 向いているタイプ | Excel中心の予実管理を仕組み化したい企業 | 部門・拠点をまたいでKPIと予実を一元把握したい企業 | 財務とKPIを結びつけ予算達成の再現性を高めたい企業 | 全社・グループのデータを統合・可視化したい企業 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | オンライン相談を予約 |
※本表は各社の公式サイト・提供資料等をもとに2026年9月時点で編集部が作成したものです。料金・機能は変更される場合があるため、最新かつ正確な情報は各社の公式資料でご確認ください。「要問い合わせ」は公式サイトに金額の記載がない項目です。各機能欄の記号は、◎=特に強みとする領域/●=標準的に対応/△=限定的・別ツールや条件により対応、を表します。
予実管理型のツールで予算・実績・着地見込を扱うなら、市場や業績の変化に合わせて予算や着地見込を定期的に見直す「ローリングフォーキャスト」という手法も知っておくと役立ちます。年間固定の予算との違いや無理なく運用するコツは、以下の記事で解説しています。
DIGGLE(ディグル株式会社)

DIGGLEは、予算・実績・見込をクラウド上で一元管理する予実管理特化のサービスです。予算策定から予実突合、着地見込の管理、レポーティングまでを1つの基盤で完結でき、会計システムからのデータ取り込みと予実突合を自動化します。Excel中心の予実管理で起こりがちな属人化や集計の手間を減らしたい企業に向いています。
勘定科目より細かい粒度での損益管理や、多段階の配賦、着地見込のバージョン管理にも対応します。テクバンの事例のように、部門ごとの予実管理をデータドリブンに切り替えたい場合の選択肢になります。料金は初期費用・月額費用とも要問い合わせで、Standard・Enterpriseの2プラン構成です(2026年9月時点)。
X-KPI(株式会社パブリックアイデンティティ)

X-KPIは、複数の部門・拠点・プロジェクトごとのKPIと予実データをクラウド上で集約し、リアルタイムに可視化するツールです。予算と実績の差異や異常値を自動で検知し、原因とともにチャットツールへ通知するため、差異分析を担当者の手作業に頼らず運用できます。
KPI項目やダッシュボードは専門知識がなくても設計でき、全体目標と個別目標の関係をツリー構造で管理するKPIツリー機能も備えます。会計ソフトやグループウェアとAPI連携できるため、既存のデータ基盤を生かした運用がしやすい点も特徴です。無料トライアルにも対応しています(2026年9月時点)。
Scale Cloud(株式会社Scale Cloud)

公認会計士である代表が立ち上げた株式会社Scale Cloudが提供するのが、財務数値(PL・BS・CF)と非財務指標であるKPIを関連づけて一元管理する経営管理クラウドです。KPIの変化が財務にどう影響するかをシミュレーションでき、KPIを積み上げて予算を作成する方式にも対応します。結果指標だけでなく先行指標まで含めて設計できる点が特徴です。
経営層・管理部・事業部それぞれの視点に合わせた複数のダッシュボードや、指標を起点としたコミュニケーション機能を備え、部門横断で同じ数字を見て議論する土台をつくれます。公認会計士である代表のコンサルティング知見を背景に、KPI設計の支援や導入後の定期ミーティングによる伴走もあります。
開発の背景について、提供元である株式会社Scale Cloudの代表は、部門ごとにばらばらの指標を追う状態の課題を次のように述べています。
そのプロセスを把握するために何を見ればいいかというと、KPIのデータになります。ただ、実際にはマーケティング、セールス、カスタマーサクセスといった各部門がそれぞれバラバラなKPIを追っている状態で、情報が統合されていない。みんなが違うデータを見ているので、同じ景色を見ながら議論できていないことが多いと思われます。予算達成は全チーム共通の目的であるはずなのに、そこに向かって一丸となって走れていない。それならば、まずは同じ景色を見て議論し、PDCAを回せる共通のプラットフォームを作るべきだと考えました。PLのデータも各部門のKPIデータも一箇所に集まった状態で、事業の全体像が誰にでもわかる。
Srush AI(Srush株式会社)

散らばったデータの集約・加工から可視化までを、ノーコードで一気通貫に行えるのがSrush AIです。データウェアハウスにSnowflake、可視化基盤にAmazon QuickSightを標準採用し、500種類以上のツールとクリック操作で連携できます。
NTTドコモの事例が独自開発でなく市販のBIツールで全社に可視化を広げたように、散らばったデータを集めて見える化したい場面に向きます。
自然言語で分析を依頼できる対話型AIエージェントを全プランに搭載し、異常値の検出やレポートの自動生成にも対応します。経営層・経営管理向けの利用として、複数拠点・グループ会社のデータ統合や、報告集計の自動化といった用途を公式に想定しています。予実の突合や差異分析に特化した機能というより、データ統合と可視化に強みを持つBIツールとして検討するのが適しています。
ここで挙げた4サービスのほかにも、予実管理・連結会計・ERPなどタイプの異なる製品があります。以下の記事では経営管理システムをタイプ別に幅広く比較し、自社の課題に合った選び方を詳しく解説しています。ツール全体を見比べて検討したい方は、あわせてご覧ください。
まとめ
データドリブン経営の事例を業種横断で見ると、成果を出している企業は、散らばったデータを集めて同じ数字を全員が見られる状態をつくり、可視化にとどめず現場の行動につなげ、経営として体制や基盤に投資する、という共通の型を持っていました。一方で、可視化で止まる・分析が属人化する・情報システム部門だけの取り組みになる、といった落とし穴も繰り返し現れます。
自社で始めるなら、毎日見たい数字を絞り、それを見える状態にし、見た後の行動を決めることから着手できます。予実管理をデータドリブンに変えたいのか、全社のデータを可視化したいのかによって、選ぶべき経営管理システム・BIツールは変わります。まずは複数のサービスの資料を見比べ、自社の取り組みタイプに合う候補を絞ることから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. データドリブン経営とは何ですか?
A. データドリブン経営とは、勘や経験だけに頼らず、社内外に蓄積したデータの分析結果にもとづいて経営や事業の意思決定を行う経営手法です。従来は必要なときに担当者が個別に集計する使い方が中心でしたが、データドリブン経営ではデータを継続的に集約・可視化し、日常の意思決定の土台として使う点が異なります。
Q. データドリブン経営は中小企業でも実現できますか?
A. データドリブン経営は、専門部署や大規模な投資がなくても、中小企業や一部門から始められます。本記事で紹介したテクバンの事例では、8事業部の予実管理をExcelから予実管理クラウドに移したことで、差異分析と対応策の準備期間が3日から2週間に広がり、集計に追われる時間を打ち手の検討に回せるようになりました。まず見る数字を絞り、小さく始めることが現実的な第一歩になります。
Q. データドリブン経営を始めるのに全社的なデータ基盤は必要ですか?
A. データドリブン経営は、最初から全社基盤を整えなくても、毎日見たい数字を3つ程度に絞って可視化することから小さく始められます。事例で成果を出した企業も、いきなり完璧な基盤を作ったわけではなく、まず必要な数字が滞りなく見える状態を先につくっていました。判断に効く指標に絞り、その数字を見た後の行動まで決めておくことで、無理なく運用を続けられます。
Q. データドリブン経営の効果が出るまでにどのくらいかかりますか?
A. データドリブン経営は、データが「見える」状態は比較的早く整う一方、見た数字を意思決定や行動に定着させるには一定の時間がかかります。可視化の基盤づくりだけであれば数ヶ月で形になりますが、現場が数字を見て動く習慣が根づくまでには継続的な運用が必要です。可視化で満足して止まると効果は出ないため、誰が・どの数字を見て・何を決めるのかまで設計しておくことが、効果を早める近道になります。
Q. データドリブン経営にはどんなツールが必要ですか?
A. データドリブン経営に必要なツールは、やりたいことによって予実管理型・全社データ可視化(BI)型・連結・グループ経営管理型・ERP型に分かれます。予算・実績・着地見込の差異分析が目的なら予実管理型、散らばったデータを集約して現場が自らデータを見られる状態にしたいならBI型が向きます。まず自社が何をしたいかを決めてから、その目的に合うタイプを選ぶと、過不足のない導入につながります。
Q. データドリブン経営の導入にかかる費用の目安は?
A. データドリブン経営を支える経営管理システムやBIツールの費用は、サービスや利用範囲・企業規模によって幅があり、料金を要問い合わせとしている製品も少なくありません。金額を公開している製品では月額数万円台から数十万円程度まで幅があり、初期費用がかかる場合もあります。
月額のサブスクリプション型が主流で、無料トライアルを用意するサービスもあります。複数サービスの資料を取り寄せ、初期費用・月額費用・対応できるデータ活用の範囲を見比べたうえで判断するのが確実です。
Q. データドリブン経営に取り組むデメリットや注意点はありますか?
A. データドリブン経営の主な注意点は、データ基盤の整備や人材にコストがかかる点と、データだけに依存すると判断を誤りかねない点です。分析やBIの知見を持つ人材の確保・育成には投資が必要で、成果がすぐに出るとは限りません。またデータは過去の事実にもとづくため、現場の知見や定性的な情報もあわせて判断することが欠かせません。データは意思決定の材料であって目的ではない、という前提を持つことが大切です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















