契約書の押印や郵送をやめて電子化したいと考えたとき、まず気になるのが「法律上、本当に問題ないのか」という点です。結論から言えば、契約書の電子化は法律で認められており、電子契約は紙の契約書と同じ法的効力を持ちます。
ただし、すべての契約が自由に電子化できるわけではありません。公正証書や書面が必要な契約が一部に残っているほか、電子データで保存する際には電子帳簿保存法が定める要件を満たす必要があります。守るべきルールを押さえておかないと、せっかく電子化しても税務や取引先対応でつまずきかねません。
本記事では、契約書の電子化が有効とされる根拠となる法律から、関係法令の全体像、電子化できる契約書とできない契約書の線引き、電子帳簿保存法の保存要件、印紙税が非課税になる理由、最新の法改正、そして法令違反を避けるための注意点までを、条文の裏づけとともに整理します。自社のどの契約書を電子化してよいかを判断する材料として役立ててください。
目次
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契約書の電子化は法律で有効?結論と根拠となる法律
ここからは、契約書を電子化しても法的に有効なのか、その根拠となる法律を確認します。電子契約が紙と同じ効力を持つ仕組みは、大きく3つの法律で支えられています。

契約は書面がなくても成立する(民法522条2項)
そもそも契約は、当事者の申込みと承諾の意思表示が合致すれば成立し、書面の作成は必須ではありません。これを定めているのが民法522条2項です。
民法 第522条第2項 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
出典:民法|e-Gov法令検索
このように契約の方式は原則として自由であり、紙でも電子データでも契約は成立します。ただし条文には「法令に特別の定めがある場合を除き」という留保があり、この例外が後述する「書面や公正証書が必要な契約」につながります。
出典・参考資料(1件)
電子署名があれば真正に成立したと推定される(電子署名法3条)
契約が成立することと、その契約書が「本物である(真正に作成された)」と裁判で扱われることは別の論点です。紙の契約書では、本人の押印があれば文書が真正に成立したものと推定されます。これが民事訴訟法228条4項による、いわゆる「二段の推定」の出発点です。
民事訴訟法 第228条第4項 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
出典:民事訴訟法|e-Gov法令検索
電子契約では、この「押印」の役割を電子署名が担います。電子署名法3条は、本人による電子署名が行われた電子文書を、真正に成立したものと推定すると定めています。
電子署名及び認証業務に関する法律 第3条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
出典:電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索
ここでいう電子署名(電磁的記録に行う措置のうち、本人が作成したことを示し、改変の有無を確認できるもの。電子署名法2条)は、紙の押印に代わって文書の真正性を担保します。ただし条文は「本人だけが行うことができる」という本人性を要件としている点に注意が必要で、事業者がユーザーの指示で署名する立会人型の扱いについては後述します。
出典・参考資料(2件)
電子契約のデータも裁判の証拠になる(民事訴訟法247条)
電子契約のデータ(PDFなど)は、民事訴訟法上「文書でないもの」として書証の規定が準用される準文書にあたります(民事訴訟法231条)。仮に電子署名法3条の推定が及ばない場面でも、裁判所は口頭弁論の全趣旨や証拠調べの結果をふまえ、自由な心証で証拠価値を判断します。
民事訴訟法 第247条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
出典:民事訴訟法|e-Gov法令検索
電子署名やタイムスタンプで「誰が・いつ・何に合意したか」を示せる電子契約は、紙の契約書と同様に裁判の証拠として機能します。
出典・参考資料(1件)
契約書の電子化に関係する法律の早見一覧
ここでは、契約書の電子化に関係する主な法律を一覧で整理します。有効性・保存・税務・個別の契約という4つの側面で、それぞれ別の法律が関わります。
| 法律 | 電子化に関して定めること | 関連する施行・改正 |
|---|---|---|
| 民法 | 契約は方式自由で、書面がなくても成立する(522条2項) | — |
| 電子署名法 | 本人による電子署名があれば、電子文書は真正に成立したと推定される(3条) | 2001年4月施行 |
| 民事訴訟法 | 電子契約データの証拠としての扱い(228条4項・247条・231条) | — |
| 電子帳簿保存法 | 電子取引データを電子のまま保存する義務と保存要件(7条) | 2022年1月改正・2024年1月完全義務化 |
| 印紙税法 | 課税対象は「文書」であり、電子データは課税対象外 | — |
| e-文書法・IT書面一括法 | 法令で保存・交付が求められる文書の電子化を許容 | — |
| デジタル改革関連法 | 各種法令の書面交付義務・押印の見直し | 2021年9月施行 |
| 各業法(宅建業法・建設業法・労働基準法など) | 書面交付が義務づけられた契約の電子化の可否・条件 | 業法ごと |
| 法人税法 | 電子契約データを含む帳簿書類の保存期間(原則7年・欠損金が生じた事業年度は10年) | — |
このうち、有効性を支えるのが民法・電子署名法・民事訴訟法、保存に関わるのが電子帳簿保存法、税務に関わるのが印紙税法です。個別の契約ごとの可否は各業法が定めており、次章で具体的に見ていきます。
電子化できる契約書・できない契約書・相手方の承諾が必要な契約書【早見表】
ここからは、自社の契約書が電子化できるかどうかを判断できるよう、契約類型ごとの可否を早見表にまとめます。大半の契約は電子化できますが、一部に公正証書や書面が必要なもの、相手方の承諾が必要なものがあります。
| 契約類型 | 根拠条文 | 電子化の可否 | 相手方の承諾 |
|---|---|---|---|
| 業務委託・秘密保持・売買など一般的な契約 | 民法522条2項 | ○ 可 | 不要 |
| 定期借地権・定期建物賃貸借 | 借地借家法22条・38条 | ○ 可(電磁的記録で可) | 不要 |
| 製造委託などの取引条件の明示(取適法/旧下請法) | 取適法4条 | ○ 可 | 不要(2026年1月から承諾不要) |
| 労働条件の明示(雇用) | 労働基準法15条1項・労基則5条4項 | △ 電子可 | 要(労働者の希望) |
| 重要事項説明書・37条書面(不動産取引) | 宅地建物取引業法35条・37条 | △ 電子可 | 要(相手方の承諾) |
| 建設工事の請負契約 | 建設業法19条 | △ 電子可 | 要(相手方の承諾) |
| 旅行契約の書面 | 旅行業法12条の5 | △ 電子可 | 要(旅行者の承諾) |
| 任意後見契約 | 任意後見契約に関する法律3条 | × 不可(公正証書が必要) | — |
| 事業用定期借地権の設定 | 借地借家法23条 | × 不可(公正証書が必要) | — |
| 企業担保権の設定・変更 | 企業担保法3条 | × 不可(公正証書が必要) | — |
| 農地等の賃貸借 | 農地法21条 | × 不可(書面が必要) | — |
ただし、表のうち重要事項説明書・37条書面や労働条件の明示などは、契約書そのものではなく、法律で交付・明示が義務づけられた書面です。契約を電子で締結する話とは分けて、これらを電子で提供する際のルールとして整理しています。
電子化できる契約書の例
民法522条2項の原則どおり、業務委託契約書・秘密保持契約書・売買契約書・各種申込書など、大半のビジネス契約は電子化できます。デジタル改革関連法の整備により、定期借地権(借地借家法22条)や定期建物賃貸借(同38条)のように、かつては書面が求められた契約も電磁的記録による締結が書面とみなされるようになりました。
電子化できない契約書一覧(公正証書・書面が必要なもの)
一方で、法律が公正証書や書面の作成を義務づけている契約は、当事者だけの電子契約では成立しません。公正証書が必要な代表例が、任意後見契約・事業用定期借地権の設定・企業担保権の設定または変更です。
任意後見契約に関する法律 第3条 任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。
出典:任意後見契約に関する法律|e-Gov法令検索
また、農地や採草放牧地の賃貸借契約は、公正証書ではないものの、農地法21条が書面で契約内容を明らかにするよう求めており、電磁的記録の代替規定がないため電子化できません。「公正証書が必要なもの」と「書面が必要なもの」は根拠が異なるため、分けて押さえておくと安全です。
出典・参考資料(4件)
相手方の承諾が必要な契約書一覧
電子化そのものは可能でも、相手方の承諾や意思を条件とする契約もあります。代表例は次のとおりです。
- 労働条件の明示(雇用):原則は書面交付で、労働者がメールやFAXなどの電子的な方法を希望した場合に限り電子化できます(労働基準法15条1項・労働基準法施行規則5条4項)。
- 重要事項説明書・37条書面(不動産取引):相手方の承諾を得て電磁的方法で提供できます(宅地建物取引業法35条・37条)。
- 建設工事の請負契約:相手方の承諾を得て電子情報処理組織を使う方法などに代えられます(建設業法19条)。
- 旅行契約の書面:旅行者の承諾を得て電磁的方法で提供できます(旅行業法12条の5)。
かつて「3条書面」として相手方の承諾が必要とされていた下請法の取引条件の明示は、2026年1月施行の取適法(中小受託取引適正化法)で、承諾なしに電磁的方法で明示できるようになりました。この最新の変更は後述します。
出典・参考資料(4件)
電子帳簿保存法が定める電子データの保存要件
契約を電子で締結したあとに関わるのが、電子帳簿保存法です。電子でやり取りした契約データの保存には、満たすべき要件が定められています。
電子取引データは電子のまま保存が義務(2024年1月完全義務化)
電子契約のように電子的に授受した取引情報は「電子取引」にあたり、その電磁的記録を保存する義務があります(電子帳簿保存法7条)。2022年1月の改正で紙に出力して保存する方法が原則廃止され、宥恕(ゆうじょ)措置の終了により、2024年1月1日以後の電子取引は電子データのまま保存することが完全に義務化されました。
出典・参考資料(2件)
満たすべき要件(真実性の確保・可視性の確保)
電子取引データの保存では、大きく「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つが求められます。国税庁の電子帳簿保存法一問一答では、具体的に次の措置が示されています。
- 真実性の確保:総務大臣が認定する時刻認証業務によるタイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残るシステムの利用、訂正削除の防止に関する事務処理規程の策定・運用のいずれかの措置を講じます。事務処理規程は国税庁がサンプルを公開しており、自社向けに修正して使えます。
- 可視性の確保:モニターや操作説明書などを備え付け、取引年月日・取引金額・取引先で検索できる検索機能を確保します。
電子契約サービスの多くは、認定タイムスタンプの付与や操作ログの保存を標準で備えており、これらの要件を満たしやすい仕組みになっています。
出典・参考資料(1件)
電子契約データの保存年数
保存期間は電子帳簿保存法ではなく、法人税法などの各税法が定めています。法人税法上、帳簿書類の保存期間は原則7年で、欠損金が生じた事業年度については10年とされています。電子取引データも、この期間が満了するまで要件を満たした形で保存する必要があります。
出典・参考資料(1件)
紙をスキャン保存する場合と最初から電子契約する場合の違い
「契約書の電子化」には、すでにある紙の契約書をスキャンして保存する経路と、最初から電子契約として締結する経路の2つがあります。両者は満たすべき要件も証拠としての扱いも異なるため、区別して理解しておきましょう。

既存の紙をスキャンして電子保存する場合の要件
すでに紙で締結した契約書をスキャナで読み取って保存する場合は、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件が適用されます。解像度やタイムスタンプの付与、入力期間の制限、訂正・削除の履歴、検索機能など、国税庁が定める複数の要件を満たす必要があります。要件の詳細は国税庁の一問一答(スキャナ保存関係)で確認できます。
出典・参考資料(1件)
最初から電子契約で締結する場合
一方、最初から電子契約として締結する場合は「電子取引」にあたり、前章で触れた電子取引データの保存要件(真実性・可視性・検索機能)を満たせば足ります。紙の読み取り精度を気にする必要がなく、電子署名やタイムスタンプが締結の時点で付与されるため、スキャン保存よりも要件を満たしやすいのが特徴です。これから契約業務を電子化するなら、電子契約での締結を基本に据えるのが実務的です。
スキャンした契約書は原本ではない点に注意
紙をスキャンしたデータは、あくまで原本の複製です。民事訴訟では、文書の提出は原本・正本・認証のある謄本によるのが原則とされています(民事訴訟規則143条1項)。そのため、裁判でスキャン画像を示しても、相手方が原本の提出を求めれば紙の原本が必要になる場面があり、証拠としての扱いでは最初から電子契約で締結したデータに一歩譲ります。原本性を重視するなら、スキャン保存よりも電子契約での締結が有利です。
出典・参考資料(1件)
電子契約で印紙税が非課税になる理由
契約書を電子化するメリットとしてよく挙げられるのが、印紙税の負担がなくなる点です。ここでは、なぜ電子契約には印紙税がかからないのかを条文の裏づけとともに確認します。
印紙税法は、課税対象を別表に掲げる「文書」とし、課税文書の作成者に納税義務を課しています(印紙税法2条・3条)。条文自体に「紙に限る」「電子は非課税」とは書かれていませんが、課税文書の「作成」の意味を定める印紙税法基本通達44条が手がかりになります。
印紙税法基本通達 第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
出典:印紙税法基本通達 第44条|国税庁
「用紙等に課税事項を記載」とあるとおり、課税の対象は紙を前提としています。電子データは用紙への記載にあたらないため、課税文書の「作成」に該当せず、印紙税は課されません。この点は、2005年の国会答弁でも政府が明確に認めています。
事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。
出典:印紙税に関する質問に対する答弁書(第162回国会 答弁書第9号)|参議院
ただし、電子契約を印刷して当事者が署名・押印した書面を別途作成したり、電子で送ったあとに紙の原本を相手方に交付したりすると、その紙が課税文書となり印紙税が発生する場合があります。印紙税の負担をなくすには、電子データのまま契約を完結させることが前提です。
出典・参考資料(3件)
契約書の電子化に関する法改正の経緯と最新動向
契約書の電子化が認められる範囲は、法改正を重ねて少しずつ広がってきました。時系列で主な改正を押さえておくと、情報の新しさを確かめながら判断できます。
- 2021年9月:デジタル改革関連法の施行。デジタル庁が発足し、多数の法令で書面交付義務や押印の見直しが行われました。定期借地権・定期建物賃貸借の電磁的記録化もこの整備の一環です。
- 2022年5月:宅地建物取引業法の改正施行。重要事項説明書や37条書面の押印が廃止され、相手方の承諾を得たうえでの電磁的方法による提供が解禁されました。
- 2023年6月:特定商取引法の改正施行。消費者の承諾を条件に、契約書面などを電磁的方法で提供できるようになりました。
- 2025年10月:公証人法の改正施行。公正証書に係る一連の手続がデジタル化され、公正証書の原本を電子データで作成・保存し、オンライン申請やウェブ会議方式が使えるようになりました。ただし、遺言や任意後見契約の公正証書は、ウェブ会議などのリモート手続の対象外です。
- 2026年1月:取適法(旧下請法)の施行。下請法が中小受託取引適正化法(取適法)に名称変更され、取引条件の明示を、相手方の承諾なしに電磁的方法で行えるようになりました。
このように、電子化できる契約の範囲は年々広がっています。古い記事では「電子化できない」「承諾が必要」と書かれていても、直近の改正で変わっている場合があるため、判断の際は施行時点を確認することが大切です。
出典・参考資料(3件)
電子化・電子保存で法令違反を避けるための注意点
電子化は適法にできますが、保存要件を満たさなかったり、業法の義務を怠ったりすると、思わぬリスクを招きます。ここでは、特に注意したい違反リスクと、証拠力を高める実務を整理します。
電子保存の要件違反・税務リスク
電子取引データを要件どおりに保存していないと、税務調査で保存義務を果たしていないと判断され、青色申告の承認取消や追徴課税につながるおそれがあります。国税庁は、相当の理由がある場合などには直ちに取消しとはせず、他の事情も総合的に勘案するとしていますが、要件を満たさない運用を続けるのは避けるべきです。タイムスタンプの付与や検索機能の確保など、保存要件を満たす体制を整えておきましょう。
出典・参考資料(1件)
業法違反の罰則(取適法など)
電子化できる契約でも、業法が求める明示や交付を怠れば罰則の対象になります。たとえば取適法では、委託事業者が取引条件を明示しなかった場合などに、違反行為をした従業者に50万円以下の罰金が科されます(取適法14条)。電子化の手段そのものよりも、明示すべき事項を適切に相手方へ届けているかが問われます。
出典・参考資料(1件)
証拠力を高める実務(タイムスタンプ・署名方式)
電子契約の証拠力を高めるには、電子署名に加えてタイムスタンプを付与し、「いつ」その文書が存在したかを示せるようにすることが有効です。また、電子署名には、契約当事者本人が電子証明書で署名する当事者型(実印タイプ)と、事業者が当事者の指示で署名する立会人型(事業者署名型)があります。
立会人型については、総務省・法務省・経済産業省が示したQ&Aで、一定の条件を満たせば電子署名法3条の推定が及びうるとの整理が示されています。
上記サービスが電子署名法第3条に規定する電子署名に該当するには、更に、当該サービスが本人でなければ行うことができないものでなければならないこととされている。そして、この要件を満たすためには……当該サービスが十分な水準の固有性を満たしていること(固有性の要件)が必要であると考えられる。
出典:電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)令和2年9月4日|総務省・法務省・経済産業省
このように、立会人型でも固有性の要件(本人でなければ行えない水準)を満たせば、紙の押印と同様の推定を受けられます。重要な契約では当事者型を選ぶ、二要素認証で本人確認を強化するなど、契約の性質に応じて署名方式を使い分けると安心です。
出典・参考資料(1件)
法律要件を満たす電子契約システムの選び方と主なサービス
ここまで見てきた法律要件を実務で満たすには、電子契約システムの活用が近道です。選ぶ際は、電子署名の方式(立会人型・当事者型)、電子帳簿保存法に対応した認定タイムスタンプの付与、検索・保存機能の有無を確認すると、有効性と保存要件の両方を押さえられます。
ここでは、電子署名法と電子帳簿保存法に対応した代表的なサービスを紹介します。
| サービス名 | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン |
|---|---|---|
| 提供会社 | 弁護士ドットコム株式会社 | GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 |
| 電子署名の方式 | 立会人型(事業者署名型)が標準 当事者型(マイナンバーカード署名)も対応 | 立会人型(契約印タイプ)・当事者型(実印タイプ) 両者を組み合わせたハイブリッド署名も可 |
| 認定タイムスタンプ | ●全プランで標準付与 | ●全プランで標準付与 |
| 電子帳簿保存法対応 | ●認定タイムスタンプ・検索要件で対応 | ●JIIMA認証(電子取引ソフト法的要件認証)を取得 |
| 本人確認の方法 | メール認証に加えアクセスコード・アプリによる2要素認証 当事者型はマイナンバーカードで本人確認 | 立会人型はメール認証 当事者型は電子認証局発行の電子証明書で本人確認 |
| 月額費用 | 無料〜 Light 11,000円/Corporate 28,000円(税抜) | 無料〜 ライト 8,800円〜(税抜・年間契約) |
| 送信料 | 220円/件(税抜) | 立会人型 100円/件 当事者型 300円/件(税抜) |
| 無料プラン | フリープランあり (1名・月2件まで、電子署名+タイムスタンプ可) | お試しフリープランあり (1名・月5件まで、立会人型のみ) |
| 導入実績 | 導入250万社以上 累計送信4,000万件超 | 導入350万社以上 累計送信5,000万件超 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
1. クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が2015年から提供する電子契約サービスです。書類のアップロードから電子署名・認定タイムスタンプの付与、契約書の保管・検索までをオンラインで完結でき、電子帳簿保存法の保存要件に対応しています。
標準の署名方式は事業者署名型(立会人型)で、相手方は会員登録なしに受信したメールから署名できるため、導入のハードルが低いのが特徴です。重要な契約に向けては、マイナンバーカードの電子証明書で当事者本人が署名する当事者型の機能も用意されています。
導入社数は250万社以上、累計送信件数は4,000万件を超えます。富士キメラ総研の2025年版調査では、電子契約ツール部門のシェア首位と公表されています(いずれも公式サイト、2026年9月時点)。
2. 電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインは、GMOインターネットグループのGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が手がけるクラウド型の電子契約サービスです。立会人型(契約印タイプ)と当事者型(実印タイプ)の両方に対応し、両者を組み合わせたハイブリッド署名も選べる点が強みで、契約の重要度に応じて署名方式を使い分けられます。
電子署名法に基づく電子署名とタイムスタンプが付与され、電子帳簿保存法に対応した保存が可能です。手書きサインによる対面契約や本人確認の強化なども、オプションで追加できます。導入実績は350万社以上、累計送信件数は5,000万件を超えています(公式サイト、2026年9月時点)。お試し用の無料プランも用意されており、小規模から試しやすいサービスです。
ここで紹介したのは代表的なサービスですが、電子契約システムは署名方式や料金体系、対応している機能がサービスごとに異なります。以下の記事では、主要な電子契約システムを料金やタイプ別に比較し、自社に合う一社を選ぶための観点を詳しく解説しています。導入を具体的に検討する際は、あわせてご覧ください。
電子契約システムおすすめ比較|料金とタイプ別の選び方で自社に合う一社を選ぶ
契約のたびに印刷・製本・押印・郵送を繰り返し、取引先の返送を待つあいだ業務が止まってしまう。そんな紙の契約に伴うリードタイムと印紙税の負担を、見直したいと感じていませんか。 電子契約システムを導入すれば、押印や郵送のやり取りをオンラインに置…
まとめ
契約書の電子化は、民法・電子署名法・民事訴訟法に支えられ、原則として法律で認められています。電子署名とタイムスタンプを備えた電子契約は、紙の契約書と同じ法的効力と証拠力を持ちます。
- 電子化できる契約:業務委託・秘密保持・売買など大半の契約。定期借地権なども電磁的記録で可。
- 電子化できない契約:任意後見契約・事業用定期借地権・企業担保権(公正証書が必要)、農地等の賃貸借(書面が必要)。
- 保存のルール:電子取引データは2024年1月から電子のまま保存が義務。真実性・可視性・検索機能を満たす。
- 税務メリット:電子契約は課税文書にあたらず、印紙税は非課税。
自社の契約類型ごとに可否を確認し、電子帳簿保存法の保存要件を満たせる電子契約システムを選べば、安心して電子化を進められます。まずは各サービスの資料を取り寄せ、署名方式や保存機能を比較してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 契約書の電子化とは何ですか?
A. 契約書の電子化とは、紙の契約書に代えて、契約の締結や保存を電子データで行うことです。やり方は大きく2通りあり、最初から電子契約として電子データで締結する方法と、すでにある紙の契約書をスキャンして電子保存する方法があります。電子署名やタイムスタンプを備えた電子契約は、紙の契約書と同じ法的効力を持ちます。
Q. 契約書を電子化するのに取引先(相手方)の同意は必要ですか?
A. 業務委託や売買など一般的な契約の電子化は、法律上は相手方の承諾がなくても有効に成立します(民法522条2項)。ただし電子契約は相手方も電子的に受信・署名する必要があるため、実務上は取引先の了解を得てから進めるのが一般的です。また、不動産取引の重要事項説明書・37条書面や建設工事の請負契約、労働条件の明示など、一部の契約は法律で相手方の承諾を電子化の条件としている点に注意が必要です。
出典・参考資料(1件)
Q. 電子署名がなくても、メールやPDFでやり取りした契約は有効ですか?
A. 契約は申込みと承諾の合意だけで成立するため、電子署名がなくても、メールやPDFでやり取りした契約は有効に成立します(民法522条2項)。ただし、後日の紛争でその契約書が本物であると認められやすくするには、本人による電子署名やタイムスタンプが重要です。電子署名法3条は、本人の電子署名がある電子文書を真正に成立したものと推定すると定めており、証拠力を高める決め手になります。
出典・参考資料(2件)
Q. 紙の契約書を電子化した後、紙の原本は破棄してもよいですか?
A. 紙の契約書をスキャンして電子化した場合、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たして保存すれば、税務上は紙の原本を保存し続ける義務はありません。ただし、スキャンデータはあくまで原本の複製にあたり、裁判では相手方が紙の原本の提出を求める場面があります。重要な契約書は紙の原本を残しておくか、最初から電子契約で締結しておくのが安全です。
出典・参考資料(2件)
Q. 立会人型(事業者署名型)の電子署名でも法的に有効ですか?
A. 立会人型の電子署名も、「本人でなければ行えない」という固有性の要件を満たせば、紙の押印と同様に真正な成立が推定され、法的に有効です。これは総務省・法務省・経済産業省が示したQ&Aでの整理に基づきます。より確実性を求める重要な契約では、当事者本人が電子証明書で署名する当事者型を選ぶ、二要素認証で本人確認を強化するなど、契約の性質に応じた使い分けが有効です。
出典・参考資料(1件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















