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不可抗力条項とは|契約書の条文例・該当事由と「条項がない場合」の民法の扱いを解説

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契約書レビュー比較表(2026年版)

取引先から届いた契約書に不可抗力条項が入っていなかったり、自社のひな形に「災害など」とだけ書かれていたりして、このままでよいか迷った経験はないでしょうか。地震や感染症の流行、大規模なシステム障害といった想定外の事態が起きたとき、契約の履行責任を免れられるかどうかは、この一文の書き方で変わります。

不可抗力条項は、当事者の責めによらない事由で契約を履行できなくなったときの責任の扱いを定める条項です。条文例をそのまま写すだけでは、自社の取引で実際に起こりうる事態を取りこぼしたり、気づかないうちに不利な負担を引き受けたりすることがあります。

本記事では、そのまま契約書に使える不可抗力条項の条文例を立場別に示しつつ、列挙すべき該当事由、条項の効果、そして不可抗力条項がない場合に民法ではどう扱われるかを条文の番号とともに整理します。自社で契約書を起案する担当者も、相手方から届いた契約書をレビューする担当者も、判断の材料として活用いただけます。

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不可抗力条項とは

不可抗力条項とは、地震や戦争、感染症の流行のように当事者のどちらの責めにも帰することができない事由によって契約の履行が遅れたり不能になったりしたとき、その責任を負わないことを定める条項です。英語の「Force Majeure(フォース・マジュール)」に対応し、国内の契約書では「不可抗力」の見出しで置かれます。

目的は、想定外の事態が起きたときに「履行できなかった責任を負うのか」をめぐる争いをあらかじめ防ぐことにあります。何が不可抗力に当たるか、当たった場合に履行義務や損害賠償・契約解除がどう扱われるかを契約当事者の間で先に決めておく役割を持ちます。次の章から、実際に使える条文例を示します。

【コピーして使える】不可抗力条項の条文例(立場別)

ここでは、自社の契約書にそのまま反映できる不可抗力条項の条文例を、契約当事者の債務の持ち方で2パターンに分けて示します。いずれも、該当事由の列挙・免責・通知義務・解除という基本の構成を備えています。自社の取引に合わせて、該当事由の追加や解除までの期間の調整を行ってご利用ください。

双方が債務を負う場合の条文例

売買・業務委託・システム開発など、当事者の双方が履行すべき債務を負う契約で使う形です。甲乙のいずれにも不可抗力が起こりうるため、主語を「甲および乙」としています。

第●条(不可抗力)
1. 甲および乙は、地震、津波、台風、洪水、落雷その他の天災地変、戦争、内乱、暴動、テロその他の社会的事変、感染症の流行、ストライキその他の争議行為、法令の制定・改廃、公権力による命令・処分、停電、通信回線・情報システムの障害、サイバー攻撃、甲および乙の責めによらない火災、その他当事者の合理的な支配を超える事由(以下「不可抗力」という。)により、本契約に基づく義務の全部または一部の履行が遅滞し、または履行が不能となったときは、相手方に対してその責任を負わない。ただし、金銭債務の遅滞および不能については、この限りでない。
2. 前項の事由が生じた当事者は、速やかに相手方に対しその旨を通知するとともに、当該事由による影響を軽減し、履行を回復するために合理的な範囲で最善の努力を尽くすものとする。
3. 第1項の事由が生じ、その状態が○日以上継続し、本契約の目的を達することが困難となった場合、甲および乙は、協議のうえ、または相手方に対する書面による通知により、本契約の全部または一部を解除することができる。

第1項で免責の対象となる事由を具体的に並べ、最後に「その他当事者の合理的な支配を超える事由」という包括的な受け皿を置くことで、列挙しきれなかった事態も拾えるようにしています。ただし書で金銭債務を免責の対象から外しているのは、後述のとおり民法上も金銭債務が不可抗力で免責されないためです。

第2項の通知・努力義務と第3項の解除は、不可抗力が起きた後の手当てです。それぞれの意味と「○日」の決め方は、後述の「不可抗力条項の効果」で詳しく見ます。

一方(売主)のみが債務を負う場合の条文例

物品の供給やサービスの提供など、一方の当事者だけが物やサービスを提供する債務を負い、相手方は代金の支払いが中心となる契約で使う形です。この場合、不可抗力の影響を受けるのは主に履行する側(売主)なので、主語をそろえて書きます。

第●条(不可抗力)
1. 乙(売主)は、地震、津波、台風、洪水、落雷その他の天災地変、戦争、内乱、暴動、テロその他の社会的事変、感染症の流行、ストライキその他の争議行為、法令の制定・改廃、公権力による命令・処分、停電、通信回線・情報システムの障害、サイバー攻撃、乙の責めによらない火災、その他当事者の合理的な支配を超える事由(以下「不可抗力」という。)により、本契約に基づく債務の全部または一部の履行が遅滞し、または履行が不能となったときは、甲(買主)に対してその責任を負わない。
2. 乙は、前項の事由が生じたときは、速やかに甲に通知し、当該事由による影響の軽減および履行の回復に合理的な範囲で努めるものとする。
3. 第1項の事由が生じ、その状態が○日以上継続したときは、甲は、乙に対する書面による通知により、本契約を解除することができる。

買主の側に立つときは、第1項の対象を「乙の債務」に限り、代金の支払いが免責の対象に紛れ込まないようにします。また第3項の解除権を買主(甲)が持つ形にすると、供給が長く止まったときに買主から契約を打ち切れます。相手方(売主)に提示する条項を買主に有利な側へ寄せたい場合は、上の条文例を次のように調整します。

(買主に有利な側へ寄せる調整例)
・通信回線・情報システムの障害などは、「乙が合理的な保守・冗長化の措置を講じてもなお避けられない場合に限る」と限定し、売主の管理責任に属する事象まで免責されないようにする。
・第3項の解除権を甲(買主)に置き、「不可抗力が○日以上継続したときは、甲は催告することなく本契約を解除できる」とする。
・不可抗力が続く間も、乙に代替手段の提案および進捗の報告を義務づける一文を加える。

立場ごとの調整の勘所は、後半の「立場別レビューの勘所」でも整理します。

不可抗力条項に列挙すべき該当事由

不可抗力条項の効き目は、どの事由を条文に並べるかで大きく変わります。「災害など」とぼかすと、実際に起きた事態がその「など」に含まれるかで争いになりかねません。ここでは、定番として押さえておきたい事由と、現在の取引で加えておきたい事由を分けて示します。

なお、事由を列挙しておけば発生時に当然に免責されるわけではありません。免責されるには、その事由と履行不能との間に因果関係があり、かつ当事者がその事由を予見・回避できなかったことが前提になります。列挙は「対象になりうる事態を明確にする」ためのもので、個別の免責の可否は事案ごとに判断される点に注意が必要です。

定番の該当事由

以下は、先ほどの条文例にも盛り込んでいる定番の事由です。古いひな形では抜けていることもあるため、自社の契約書の抜けチェック用のリストとして分類ごとに確認してください。

  • 天災地変:地震、津波、台風、洪水、暴風雨、落雷、噴火など
  • 社会的事変:戦争、内乱、暴動、テロ、感染症の流行(パンデミック)など
  • 争議行為:ストライキ、ロックアウト、ボイコットなど
  • 法令・公権力に関する事由:法令の制定・改廃、公権力による命令・処分
  • その他:当事者の責めによらない火災など

IT・決済時代に加えておきたい事由

本記事の冒頭に挙げた条文例にはこれらを盛り込み済みですが、災害や戦争を中心に組み立てられた古いひな形では抜けていることが多い事由です。オンラインでの取引やシステムを前提としたサービス提供が当たり前になった現在は、次の事由が入っているかを確認してください。とくにSaaS・決済・ECなど、システムの稼働そのものが履行に直結する業態では見落とせません。

  • 停電:大規模停電や計画停電による設備・サーバーの停止
  • 通信回線・情報システムの障害:自社の責めによらない通信障害やクラウド基盤の大規模障害
  • サイバー攻撃:DDoS攻撃やランサムウェアなど、合理的な対策を講じても防げない規模の攻撃

これらを加えるときは、「当事者の合理的な支配を超える」ものに限る趣旨を保つことが大切です。自社の保守体制の不備や予見できた障害まで免責されると相手方が受け取れば、交渉で削られたり、紛争時に効力を否定されたりする余地が残ります。どこまでを自社の管理責任とし、どこからを不可抗力とするかの線引きを意識して列挙することが大切です。

不可抗力条項の効果(免責・通知義務・解除)

不可抗力条項は、一般に「免責」「通知・努力義務」「解除」の3段で効果を組み立てます。ここでは、それぞれが条文例のどの項に対応し、何を定めているのかを順に見ていきます。

不可抗力条項の効果を3段で示した図。条文例第1項は履行遅滞・履行不能の免責(金銭債務は対象外)、第2項は通知義務と影響軽減の努力義務、第3項は不可抗力が一定期間継続した場合の契約解除。

①履行遅滞・履行不能の免責

中心となる効果は、不可抗力によって履行が遅れたり不能になったりしたときに、その責任(履行遅滞・履行不能による債務不履行責任や損害賠償責任)を負わないとする免責です。条文例の第1項がこれに当たります。ただし、金銭債務は免責の対象から外すのが原則で、その理由は後の章で説明します。

②通知義務と影響軽減の努力義務

不可抗力が生じた当事者に、速やかな通知と、影響を軽減し履行を回復するための努力を義務づけます。これにより、相手方は状況を把握して代替手段を検討でき、不可抗力を理由にした安易な履行放棄も防げます。通知を怠った場合の扱い(免責を主張できないなど)まで定める例もあります。

③一定期間継続した場合の解除

不可抗力の状態が長引き、契約の目的が達せられなくなったときに備えて、契約を解除できるようにします。免責だけでは、履行されないまま契約関係が宙に浮いてしまうため、出口として解除権を定めておきます。

解除までの期間(30・60・90日)の設計オプション

解除のトリガーは「不可抗力が○日以上継続したとき」という形で設計します。期間の取り方は契約の性質で変わり、短納期の取引では30日、継続的な供給契約では60日や90日を置く例が見られます。待てる期間を長くすると取引関係を維持しやすい一方、履行を待つ側の負担は増えます。自社が供給を受ける側か、提供する側かも踏まえて設定します。

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不可抗力条項がない場合、民法ではどうなるか

そもそも、契約書に不可抗力条項を置かなくても、民法の規定でおおむねの処理はされます。それでも条項を設けるのは、民法の規定だけでは「責めに帰することができる事由があったか」をめぐって争いになりやすいからです。ここでは、不可抗力条項がない場合に関係する民法の規定を、条文の番号とともに整理します。

不可抗力条項がない場合に関係する民法の規定を整理した図。民法415条1項ただし書(責めに帰せない事由による不履行なら損害賠償責任を負わない)、536条(危険負担=双方の責めによらず履行不能なら債権者は反対給付の履行を拒める)、567条1項(引渡し後に双方の責めによらず滅失・損傷なら買主は代金の支払いを拒めない)、541条・542条(相手が履行不能なら催告なしで解除できる)。

民法415条1項ただし書(帰責事由がなければ損害賠償責任を負わない)

債務不履行による損害賠償を定める民法415条1項は、本文で損害賠償を請求できるとしたうえで、ただし書で例外を置いています。履行できなかったことが「債務者の責めに帰することができない事由」によるときは、損害賠償責任を負いません。

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

出典:民法 第415条(債務不履行による損害賠償)|e-Gov法令検索

つまり、不可抗力と評価できる事由で履行できなかったのであれば、条項がなくても損害賠償責任は原則として生じません。ただ、「責めに帰することができない事由」に当たるかどうかの評価は、取引上の社会通念に照らして個別に判断されるため、当事者の認識が食い違いやすい部分です。不可抗力条項は、この判断の対象となる事由を先に明確にしておく意味を持ちます。

民法536条(危険負担)

免責されても、では相手方への反対給付(代金の支払いなど)はどうなるのか、という問題が残ります。これを定めるのが危険負担の規定です。双務契約で、当事者双方の責めに帰することができない事由によって一方の債務が履行できなくなったときは、民法536条1項により、債権者は反対給付の履行を拒めます。

第五百三十六条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

出典:民法 第536条(債務者の危険負担等)第1項|e-Gov法令検索

2020年4月に施行された改正民法では、この場面を「反対給付の履行を拒むことができる」という履行拒絶権の形で定めています。たとえばシステム開発が双方の責めによらない事由で完成できなくなった場合、発注者は報酬の支払いを拒めるという整理です。相手方案のレビューで代金の支払いがどうなるかを確かめるときは、536条を手がかりにできます。

民法567条1項(売買の危険の移転)

売買契約では、目的物を引き渡した後に危険が買主へ移ります。民法567条1項は、売主が特定した目的物を引き渡した後、当事者双方の責めによらない事由で滅失・損傷したときは、買主は代金の支払いを拒めないと定めています。

第五百六十七条 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。

出典:民法 第567条(目的物の滅失等についての危険の移転)第1項|e-Gov法令検索

引き渡しを境に、商品が災害で失われたときの負担が売主から買主へ移るという整理です。不可抗力条項で危険の移転時期や負担の分担を明示しておくと、この原則と自社の取引実態との食い違いを避けられます。

民法541条・542条(契約の解除)

不可抗力で相手方が履行できなくなったときは、契約書に解除の定めがなくても、履行不能を理由に催告なしで契約を解除できます(民法542条1項1号)。相手の帰責事由がなくても解除できるのが2020年施行の改正民法での整理ですが、解除する側(自社)の責めによる不履行の場合は解除できません(民法543条)。

不可抗力条項で解除のトリガーや手続きを定めておくと、この法定解除の要件をめぐる争いを避け、自社の判断で動きやすくなります。

出典・参考資料(1件)

金銭債務は不可抗力でも免責されない(民法419条3項)

不可抗力条項を扱ううえで最も見落としやすいのが、金銭債務の扱いです。代金や報酬の支払いが遅れたときは、「不可抗力だったから支払いの遅れも免責される」とは扱われません。民法419条3項が、金銭債務の不履行については不可抗力を抗弁にできないと定めているためです。

不可抗力で免責される債務とされない債務を対比した図。非金銭債務(商品の引渡しやサービスの提供)は不可抗力で履行が遅れ・不能になれば責任を免れうる。金銭債務(代金・報酬の支払い)は不可抗力を抗弁にできず、民法419条3項により免責されない。

3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

出典:民法 第419条(金銭債務の特則)第3項|e-Gov法令検索

ここでいう「第1項の損害賠償」は、支払いが遅れたことに対する遅延損害金を指します。金銭だけが別扱いになる理由は、条文には書かれていませんが、一般に、お金は代替性が高く、災害時でも調達の手段が残っていると考えられるためと説明されます。手元の資金が足りなくても、借入れなどで調達できる以上、支払いができなくなること自体が原則として想定されない、という整理です。

この原則があるため、条文例でも「ただし、金銭債務の遅滞および不能については、この限りでない」と免責の対象から金銭債務を外しています。自社が支払う側のときは、不可抗力を理由に支払いを止められるわけではない点を押さえ、資金繰りの備えで対応する必要があります。

【立場別】不可抗力条項レビューの勘所

同じ不可抗力条項でも、自社が履行する側か、相手に履行させる側かで、有利・不利の向きが逆になります。ここでは、相手方から届いた契約書をレビューするとき、あるいは自社案を起案するときに、立場ごとに何を見ればよいかを整理します。

履行する側(債務者)で見る点

商品やサービスを提供する側は、不可抗力で履行できなくなったときに責任を問われないよう、免責の範囲を確保したい立場です。該当事由はできるだけ広く列挙し、「その他当事者の合理的な支配を超える事由」の包括条項を残しておくとよいでしょう。自社の業態で起こりうる事由(停電・システム障害など)が落ちていないかの確認が必要です。

一方で、通知義務や努力義務が過大だと、不可抗力下でも重い対応を迫られます。「直ちに」「あらゆる手段を尽くして」といった表現が自社にとって現実的かも、見ておきたいところです。

履行させる側(債権者)で見る点

相手に履行してもらう側は、免責が広すぎると供給が止まったときに打つ手がなくなります。該当事由が過度に広くないか、とくに相手方(売主)の管理責任に属しそうな事由(相手方の設備の不備による障害など)まで不可抗力に含めていないかの確認が必要です。

あわせて、不可抗力が長引いたときの解除権を自社が持てるか、協議義務や代替調達の取り決めがあるかも、確認しておきたい点です。契約書に解除の定めがなくても、先に見たとおり相手方が履行できなくなったときは民法542条で解除できますが、条項で解除のトリガーや手続きを定めておくほうが、自社の判断で動きやすくなります。

不可抗力条項の抜け・不利な書き方を効率的にチェックする方法

ここまで見てきたように、不可抗力条項は該当事由の抜け、金銭債務の扱い、立場による有利・不利など、確認すべき点が多岐にわたります。まずは、自社の契約書を自分で点検するときのチェックポイントを整理します。

  • 該当事由に抜けがないか(天災・感染症に加え、停電・システム障害・サイバー攻撃など自社の業態で起こりうる事由が入っているか)
  • 金銭債務が免責の対象に紛れ込んでいないか(支払いは不可抗力でも免責されない)
  • 通知義務・影響軽減の努力義務が、自社にとって過大な表現になっていないか
  • 解除権を自社が持てるか、解除までの期間(○日)は自社の取引に照らして妥当か
  • 自社が履行する側か・させる側かに照らして、免責の範囲が有利・不利に偏っていないか

契約書が増えるほど、これらを1本ずつ目視で確認するのは負担が大きく、見落としも起こりがちです。こうした点検を速く確実に進めたいときは、頻出条項の漏れや不利な書き方をAIが検出する契約書レビューサービスを使う方法もあります。ここでは、条項の抜けや不利な記載の検出に対応する契約書レビューサービスを紹介します。

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サービス名CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)LAWGUE(ローグ)法務オートメーション「OLGA」
条項の抜け・不足条項の検出●●△自社基準でのリスク検知が中心
不利な記載の検出・修正案の提示●△自社ナレッジに基づくレビュー●
対応文書の範囲契約書全般
(法務・労務相談にも対応)
契約書・社内規程・
マニュアル・開示文書など
契約書中心
(作成〜締結後の管理まで)
提供形態・専門家の関与法務BPaaS
弁護士など専門家が確認
クラウド(AIツール)
専門家の関与なし
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別途AIコンサルあり
料金の形月額11,000円〜(税込)
初期費用0円
要問い合わせ
(個別見積もり)
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中小企業向けは月額1万円〜(税別)
詳細情報公式資料を見るオンライン相談を予約オンライン相談を予約

※料金は2026年10月時点の各社公式サイト等の情報にもとづきます。最新の料金・プランは各社の公式サイトでご確認ください。

CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)のウェブサイト

弁護士監修のリーガルAIと、弁護士・司法書士などの専門家による体制を掛け合わせているのが、MOLTON株式会社の企業法務アウトソーシングサービス「CLOUD LEGAL(クラウドリーガル)」です。契約書の作成・レビューから法務相談までをWebサービスとして提供し、法務部や法務専任者がいない企業でも日常の法務作業を任せられます。

契約書レビューでは、リーガルAIで下地を作りつつ専門家が確認する流れで、不利な条文や欠落した条項の指摘と修正案の提示を受けられます。従来の顧問弁護士では1〜2週間かかっていたレビューを1〜2日で返せるとしており、不可抗力条項のチェックを含め、反復的に発生する契約書確認を外部に委ねたい企業に向いています。

こうした反復的な契約書レビューが現場でどのような負担になっているのかについて、同社の金沢氏は次のように述べています。

金沢由樹氏
MOLTON株式会社 CSMO(最高営業・マーケティング責任者)
金沢由樹氏
独自インタビューより

リソース不足の社内法務部では対応に限界がきており、顧問弁護士がいても日常で発生するような「企業法務の事務業務」までは引き受けてもらえず、業務の相談や処理先がないという現実です。たとえば日常でコンスタントに発生する契約書レビューのような、細かく反復的なタスクです。社内にリソースもなく、顧問弁護士にも頼みにくい。

2. LAWGUE(ローグ)

LAWGUE(ローグ)のウェブサイト

LAWGUE(ローグ)は、契約書や社内規程などの文書を、作成から検索・レビューまでクラウド上で扱えるサービスです。運営はFRAIM株式会社で、文書をデータベース化し、条番号やインデントのズレの自動補正、表記ゆれのアラートなど、作成の工数を減らす機能を備えています。

レビュー面では、頻出条項の漏れや欠落をAIが検出する「不足条項の提案」機能を持ち、不可抗力条項のような入れ忘れやすい条項の指摘に役立ちます。過去の自社文書を反映して自社基準でチェックするナレッジAIレビューも備え、契約書だけでなく規程やマニュアルまで同じ環境で扱いたい法務・総務部門に向いています。

3. 法務オートメーション「OLGA」

法務オートメーション「OLGA」のウェブサイト

契約書の作成・審査から締結後の管理までを一つの流れでカバーするのが、GVA TECH株式会社の法務オートメーション「OLGA」です。自社の運用基準に照らして契約書のリスク箇所をAIが検知・レビューする機能を軸に、交渉条件などのナレッジの蓄積、CRM・SFAとの連携まで扱えます。

AIによるリスク検知は、自社の基準に合わない条項や不利な記載を洗い出す用途に使え、不可抗力条項の内容確認にも活用できます。レビュー依頼を行う事業部門のアカウントを無料で提供しており、法務部門だけでなく事業部門を巻き込んで契約リスクを前倒しで潰したい企業に向いています。

ここで取り上げた3サービスは、不可抗力条項のような条項の抜け・不利な記載の検出に対応します。AIレビューと弁護士レビューの違いや使い分け、費用相場まで含めて契約書レビューサービスを幅広く比べたい場合は、以下の記事で主要サービスを整理しています。

まとめ

不可抗力条項は、当事者の責めによらない事由で契約を履行できなくなったときの責任を定める条項です。そのまま使える条文例をもとに、天災や感染症に加えて停電・システム障害・サイバー攻撃といった現在の取引で効く事由を列挙し、免責・通知義務・解除の3段で組み立てるのが基本の形です。

条項がない場合も、帰責事由がなければ損害賠償責任を負わない(民法415条1項ただし書)、危険負担(536条)、売買の危険の移転(567条1項)といった規定で処理されますが、金銭債務は不可抗力でも免責されません(419条3項)。条項の抜けや不利な書き方を効率的に確認したいときは、AIによる契約書レビューサービスの活用も検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 不可抗力条項とは何ですか?

A. 不可抗力条項とは、地震・戦争・感染症の流行など当事者のどちらの責めにも帰することができない事由によって契約を履行できなくなったときに、その責任を負わないことを定める条項です。英語の「Force Majeure」に対応し、国内の契約書では「不可抗力」の見出しで置かれます。

何が不可抗力に当たるか、当たった場合に免責・通知義務・契約解除がどう扱われるかを当事者間であらかじめ取り決めておくことで、想定外の事態をめぐる「履行できなかった責任を負うのか」という争いを防ぐ役割を持ちます。

Q. 新型コロナウイルスなどの感染症は不可抗力条項の不可抗力に該当しますか?

A. 感染症の流行は、条文に「感染症の流行」などとして列挙しておけば、不可抗力に該当しうる事由です。多くの契約書のひな形でも、天災地変や社会的事変と並べて感染症が挙げられています。

ただし、列挙されていれば自動的に免責されるわけではなく、感染症の流行と履行できなかったこととの間に因果関係があり、かつその事態を予見・回避できなかったことが前提になります。感染症の流行そのものではなく、単なる業績の悪化によって支払いが遅れたといった場合は、不可抗力とは認められにくくなります。

Q. 取引先の不可抗力を理由に、自社は代金の支払いを拒めますか?

A. 自社が負う代金や報酬などの金銭債務は、不可抗力を理由に支払いを止めることはできません(民法419条3項)。地震や感染症で資金繰りが苦しくなっても、金銭債務の遅滞については不可抗力を抗弁にできないと定められているためです。

一方、取引先(供給側)が不可抗力で商品やサービスをまだ引き渡せていない場合は、危険負担の規定(民法536条1項)により、自社は代金の支払いを拒めます。ただし、すでに引渡しを受けた後に目的物が当事者双方の責めによらず滅失・損傷したときは、民法567条1項により代金の支払いは拒めません。

出典・参考資料(2件)
  • 出典:民法 第419条(金銭債務の特則)第3項|e-Gov法令検索
  • 出典:民法 第536条(債務者の危険負担等)第1項・第567条(目的物の滅失等についての危険の移転)第1項|e-Gov法令検索

Q. 停電やシステム障害、サイバー攻撃は不可抗力条項の不可抗力に該当しますか?

A. 停電・システム障害・サイバー攻撃は、「当事者の合理的な支配を超える」規模のものであれば不可抗力に該当しうる事由です。ただし、定番の条文例は災害や戦争を中心に組み立てられ、これらが明示されていないことが多くあります。SaaS・決済・ECなどシステムの稼働が履行に直結する取引では、条文に具体的に書き加えておくと自社の実態に合います。

注意点として、自社の保守体制の不備や予見できた障害まで不可抗力に含めると、交渉で削られたり、紛争時に効力を否定されたりする余地が残ります。どこまでを自社の管理責任とし、どこからを不可抗力とするかの線引きを意識して列挙することが大切です。

Q. 不可抗力条項に該当事由が列挙されていれば、発生時に当然に免責されますか?

A. 不可抗力条項に該当事由が列挙されていても、その事由が発生しただけで当然に免責されるわけではありません。免責が認められるには、列挙した事由と履行できなかったこととの間に因果関係があり、かつ当事者がその事由を予見・回避できなかったことが前提になります。

事由の列挙は「どのような事態を不可抗力の対象とするか」を明確にするためのもので、個別の免責の可否は事案ごとに判断されます。列挙さえあれば安心と考えず、不可抗力が生じた際の通知義務の履行や影響軽減の努力も尽くしておくことが、実際に免責を主張する場面で重要になります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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