年明けに市区町村から償却資産申告書が届いた、あるいは上司から申告作業を任された経理担当の方、自分で経理を行う個人事業主の方も多いのではないでしょうか。まず知りたいのは「そもそも自社は申告しなければならないのか」「何を対象に、いつまでに、どこへ出すのか」という点です。提出期限は毎年1月31日と決まっており、準備にかけられる時間は限られています。
償却資産申告は、固定資産税の一種である「償却資産」にかかる税金を正しく計算してもらうために、資産の所有者自身が申告する手続きです。土地や家屋と違って登記制度がないため、どんな資産をいくらで持っているかを所有者が申告しなければ、市区町村は課税額を把握できません。初めて担当する方がつまずきやすいのは、対象になる資産とならない資産の線引きと、課税されるかどうかの基準となる免税点の金額です。
本記事では、償却資産申告の該当判定から、対象資産・免税点・評価額の計算・提出方法・申告しない場合のペナルティまでを整理します。申告書の書き方や、固定資産台帳から申告書を自動で作成して毎年の工数を減らす方法まで、自社の申告を自分で進められる状態になることを目指します。
目次
償却資産申告とは?固定資産税(償却資産)の自己申告
償却資産申告とは、事業で使う機械や備品などの「償却資産」について、固定資産税を計算するために所有者が市区町村へ申告する手続きです。固定資産税には土地・家屋・償却資産の3つの課税対象があり、このうち償却資産にかかる分が申告の対象になります。
土地や家屋は登記によって所在や所有者が公的に把握されますが、償却資産には登記制度がありません。そのため、どんな資産をいくらで所有しているかは、所有者が自ら申告しなければ市区町村が把握できない仕組みになっています。これが、毎年の申告が必要とされる理由です。
そもそも償却資産とは何を指すのか、地方税法では次のように定義されています。
償却資産 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし、自動車税の課税客体である自動車並びに軽自動車税の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。
出典:地方税法 第341条第4号|e-Gov 法令検索
要点を整理すると、償却資産とは「土地・家屋以外の事業用の資産で、減価償却費が法人税法や所得税法の計算上、損金または必要経費に算入されるもの」です。言い換えれば、事業のために使っていて減価償却の対象になる資産が、おおむね償却資産にあたります。無形固定資産や自動車税・軽自動車税の対象となる車両などが除かれる点は、後述の対象外の資産で詳しく整理します。
償却資産申告から納税までの流れ
ここでは、申告から納税までの全体像を先に確認します。各ステップの詳細は、このあとの各セクションで解説します。

- 申告書の提出(1月31日まで):賦課期日である1月1日時点で所有する償却資産を、所在地の市区町村へ申告します。
- 市区町村による評価・価格の決定:申告内容をもとに、市区町村が資産ごとの評価額を算定します。
- 課税台帳への登録・公示:決定した価格が償却資産課税台帳に登録され、縦覧・審査申出の期間が設けられます。
- 納税通知書の交付(6月頃):課税標準額が免税点以上の場合、税額が計算され、納税通知書が届きます。
- 納付:通常は年4回の納期に分けて納付します(東京23区は6月・9月・12月・翌2月)。
自社は対象?償却資産申告の該当判定
まず確認したいのは「自社が申告しなければならないのか」という点です。結論として、1月1日時点で事業用の償却資産を所有している法人・個人事業主は、償却資産申告の対象になります。業種や企業規模を問わず、事業のために機械・器具・備品などを使っていれば対象です。
申告義務は地方税法で次のように定められています。
固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者(…)は、総務省令の定めるところによつて、毎年一月一日現在における当該償却資産について、その所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数、見積価額その他償却資産課税台帳の登録及び当該償却資産の価格の決定に必要な事項を一月三十一日までに当該償却資産の所在地の市町村長に申告しなければならない。
出典:地方税法 第383条|e-Gov 法令検索
ここで押さえておきたいのが、課税標準額が免税点(後述)に満たず税金がかからない場合でも、申告自体は必要という点です。課税されるかどうかと、申告が必要かどうかは別の問題です。実際、東京都主税局をはじめ多くの自治体が、免税点未満でも申告書の提出を求めています。「どうせ少額だから出さなくてよい」と自己判断せず、該当する資産があれば申告する、と考えておくのが安全です。
資産に増減がない・該当する資産がない場合の申告
前年と比べて資産の増減がない場合でも、多くの自治体では申告書の提出が求められます。その際は、申告書の備考欄に「増減なし」と記入して提出する運用が一般的です。
また、該当する償却資産がまったくない場合も、「該当資産なし」として申告を求める自治体が少なくありません。市区町村から申告書が送付されてきた場合は、資産の有無にかかわらず、自社の状況を記入して返送するのが基本です。具体的な取り扱いは自治体によって異なるため、届いた案内や各市区町村の公式ページで確認してください。
なお、市区町村から申告書が送られてこない場合でも、事業用の償却資産を所有していれば申告義務があります。新規に開業した場合や拠点を新設した場合は申告書が届かないこともありますが、その際は各市区町村の公式サイトやeLTAX(地方税共同機構の電子申告システム)から様式を入手して申告します。
対象になる資産・対象外の資産【一覧】
ここからは、具体的にどんな資産が申告の対象になるのかを整理します。自社の固定資産台帳と照らし合わせながら確認してください。

対象になる資産(6区分と具体例)
償却資産は、申告書の様式上おおむね次の6区分に分けて記入します。業種ごとの代表的な資産例とあわせて確認すると、自社の資産を当てはめやすくなります。
| 資産の区分 | 具体例 |
|---|---|
| 構築物 | 舗装路面、看板、ネオンサイン、門・塀、受変電設備、内装・内部造作 |
| 機械及び装置 | 製造設備、工作機械、ポンプ、建設機械、太陽光発電設備 |
| 船舶 | 貨物船、遊漁船、漁船、ボート |
| 航空機 | 飛行機、ヘリコプター |
| 車両及び運搬具 | 大型特殊自動車、構内運搬車、フォークリフト(自動車税・軽自動車税の対象となる車両は除く) |
| 工具・器具及び備品 | パソコン、コピー機、エアコン、応接セット、陳列棚、レジスター、厨房機器、医療機器 |
たとえば事務所であればパソコン・複写機・看板・応接セット、飲食店であれば厨房機器・製麺機・自動販売機、建設業であればブルドーザーや大型特殊自動車などが対象になります。店舗の内装工事(内部造作)も構築物として対象になる点は見落としやすいため注意が必要です。
個人事業主が自宅を事務所として使う場合など、事業と私用を兼ねる資産は、事業に使っている部分(事業供用分)が申告の対象になります。
対象外・判断に迷う資産
一方で、次のような資産は償却資産申告の対象外です。先ほどの定義(地方税法第341条第4号)と、少額資産について定めた施行令にもとづいて整理します。
- 土地・家屋:固定資産税の別の区分として課税されるため、償却資産には含みません。
- 自動車税・軽自動車税の対象となる車両:普通自動車、軽自動車、オートバイなど。これらは別の税目で課税されます。
- 無形固定資産:ソフトウェア、特許権、実用新案権、意匠権、営業権(のれん)など。
- 取得価額10万円未満で、取得した年に全額を損金(必要経費)に算入した資産。
- 取得価額20万円未満で、3年間の一括償却資産として処理した資産。
- 繰延資産:資産ではなく費用の繰り延べにあたるため対象外です。
- 棚卸資産:商品・製品・原材料など。固定資産ではないため償却資産には含みません。
- 時の経過により価値が減少しない資産:書画・骨董品など(ただし複製品や、業務に使用して価値が減っていくものは対象になり得ます)。
このうち、少額資産が対象外になる根拠は地方税法施行令第49条に定められています。
法第三百四十一条第四号に規定する政令で定める資産は、法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、法人税法施行令第百三十三条第一項若しくは第百三十三条の二第一項又は所得税法施行令第百三十八条第一項若しくは第百三十九条第一項の規定によりその取得価額(…)の全部又は一部が損金又は必要な経費に算入される資産とする。(…)
出典:地方税法施行令 第49条|e-Gov 法令検索
ここで特に間違えやすいのが、中小企業者等の「30万円未満の少額減価償却資産の特例」(租税特別措置法第67条の5)を使って取得時に損金算入した資産です。この特例で経費処理した資産は、上記の施行令第49条が定める対象外(10万円未満の損金算入・20万円未満の一括償却)には含まれません。
つまり、会計上は一度に損金にしていても、償却資産税では申告が必要です。節税のためにこの特例をよく使う企業ほど申告漏れが起きやすいため、固定資産台帳を見るときはこの点を必ず確認してください。
対象になるかどうかの判断に迷いやすい資産には、次のものがあります。
- 30万円未満の少額減価償却資産の特例で経費処理した資産:会計上は一度に損金にしていても申告対象(前述のとおり)。
- リース資産:原則として所有権を持つリース会社(貸し手)が申告します。所有権移転外ファイナンスリースのうち取得価額が20万円未満のものは対象外です。
- 建設仮勘定(建設中の資産):事業用として所有していれば対象になり得ます。
- 遊休資産(一時的に稼働していない資産):事業用として所有していれば対象になり得ます。
- 帳簿に計上していない資産(簿外資産):事業用として実際に使用していれば、帳簿への記載の有無にかかわらず申告対象です。
- 耐用年数が過ぎて減価償却済みの資産(帳簿価額が備忘価額1円の資産):事業用に使用し続けていれば申告対象です(評価額は取得価額の5%が下限になります)。
判断に迷う資産は、資産所在地の市区町村や顧問税理士に確認するのが確実です。
免税点と税率(150万円、令和9年度以後は180万円へ)
償却資産申告で読者が最も迷いやすいのが免税点の金額です。インターネット上の解説では「150万円」と「180万円」の両方が見られますが、令和8年度(2026年度)時点で適用される免税点は150万円です。地方税法に次のとおり定められています。
市町村は、同一の者について当該市町村の区域内におけるその者の所有に係る土地、家屋又は償却資産に対して課する固定資産税の課税標準となるべき額が土地にあつては三十万円、家屋にあつては二十万円、償却資産にあつては百五十万円に満たない場合においては、固定資産税を課することができない。
出典:地方税法 第351条|e-Gov 法令検索
免税点は、同一の市区町村内にあるその所有者の償却資産の課税標準額の合計で判定します。資産1つごとの判定ではなく、合計額が150万円未満であればその市区町村では課税されません(課税標準額の求め方は次の「評価額・税額の計算方法」で解説します)。ただし前述のとおり、課税されない場合でも申告自体は必要です。
では、なぜ「180万円」という数字が出てくるのでしょうか。これは令和8年度税制改正大綱で決まった引き上げ後の金額で、適用されるのは令和9年度(2027年度)以後です。大綱には次のように記載されています。
固定資産税について、家屋に係る免税点を 30 万円(現行:20 万円)に、償却資産に係る免税点を 180 万円(現行:150 万円)にそれぞれ引き上げる。(注)上記の改正は、令和9年度以後の年度分の固定資産税について適用する。
出典:令和8年度税制改正大綱(与党)|自由民主党(p.147)
つまり、令和8年度(2026年度)分の申告では免税点は150万円のままで、180万円が適用されるのは令和9年度分からです。解説記事で「180万円」と書かれている場合、適用時期を補って読む必要があります。なお同じ改正で家屋の免税点も20万円から30万円へ引き上げられますが、これは償却資産とは別の区分の話なので混同しないよう注意してください。
税率は、地方税法で標準税率が「百分の一・四(1.4%)」と定められています。
固定資産税の標準税率は、百分の一・四とする。
出典:地方税法 第350条第1項|e-Gov 法令検索
1.4%はあくまで「標準税率」であり、自治体によってはこれと異なる税率を条例で定めている場合があります。自社の資産がある市区町村の税率は、各自治体の公式情報で確認してください。
評価額・税額の計算方法
自社が免税点(課税標準額150万円)を超えるかどうかを判断するには、各資産の評価額を計算して合計する必要があります。評価額は取得した時期によって計算方法が分かれます。

- 前年中に取得した資産:取得価額 ×(1 − 減価率 ÷ 2)。取得月にかかわらず、初年度は半年分を償却したものとして計算します。
- 前年前に取得した資産:前年度評価額 ×(1 − 減価率)。
減価率は耐用年数ごとに「固定資産評価基準」で定められ、各市区町村が減価残存率表として公開しています。計算した評価額が取得価額の5%を下回る場合は、取得価額の5%が評価額の下限となります(使い続けている限り、評価額はゼロにはなりません)。東京都主税局は、この計算と税額の算定について次のように示しています。
(注)算出した評価額が取得価額の5%を下回る場合は、取得価額の5%の額が評価額となります。/課税標準額(1,000円未満切り捨て)× 税率(100分の1.4)= 税額(100円未満切り捨て)
出典:固定資産税(償却資産)|東京都主税局
たとえば耐用年数5年の資産(減価率0.369)を前年中に20万円で取得した場合で考えます。初年度の評価額は20万円×0.815(前年中取得の減価残存率)=16万3,000円、翌年度は16万3,000円×0.631(前年前取得の減価残存率)=約10万2,853円です。減価残存率は、前年中取得が1−減価率÷2、前年前取得が1−減価率で求めます。
各資産の評価額を合計したものが課税標準額(1,000円未満切り捨て)で、これに税率1.4%を掛けた額(100円未満切り捨て)が税額になります。たとえば課税標準額の合計が300万円であれば、税額はおよそ4万2,000円です。課税標準額の合計が150万円未満であれば、免税点により課税されません。
なお、一般方式で申告する場合は評価額を市区町村が計算するため、自分で評価額を算出する必要はありません。免税点を超えそうか事前に見積もりたいときや、電算処理方式で申告する場合にこの計算を使います。
申告期限・提出先・賦課期日
ここまでで自社が対象かどうかを確認できたら、次はいつまでに・どこへ出すかを押さえます。地方税法第383条が定めるとおり、基準となる日・期限・提出先は次のとおりです。
- 賦課期日:毎年1月1日。この日時点で所有している償却資産が申告の対象です。
- 申告期限:毎年1月31日まで(期限が土日祝にあたる場合は翌開庁日)。
- 提出先:資産が所在する市区町村。東京23区内に資産がある場合は、資産が所在する区の都税事務所が提出先になります。
提出先は「資産が所在する市区町村」が原則です。本社の所在地ではなく、資産が置かれている場所の市区町村である点に注意してください。たとえば本社とは別の市に営業所や工場があり、そこに機械や備品を置いている場合は、その市区町村にも申告が必要です。複数の市区町村に資産がある場合の手続きは、後述の提出方法で解説します。
毎年の申告書作成や評価額の計算にかかる手間を減らしたい場合は、固定資産台帳から申告書を自動作成できるシステムの資料もあわせて検討すると効率的です。
償却資産申告書の書き方
申告に使う書類は、おもに次の3種類です。様式名は全国共通で定められています。
- 償却資産申告書(償却資産課税台帳):第26号様式。所有者情報や資産の取得価額合計などを記入する表紙にあたる書類です。
- 種類別明細書(増加資産・全資産用):第26号様式別表1。新たに取得した資産や、全資産を記入します。
- 種類別明細書(減少資産用):第26号様式別表2。売却・除却などで減った資産を記入します。
種類別明細書には、資産の種類・名称・数量・取得年月・取得価額・耐用年数・増減の事由などを記入します。固定資産台帳や、法人税申告書別表16、所得税の減価償却明細を手元に用意しておくと記入がスムーズです。
一般方式と電算処理方式の違い
申告には「一般方式」と「電算処理方式」の2つがあり、評価額を誰が計算するかが異なります。eLTAX(地方税共同機構)は両方式を次のように説明しています。
一般方式で作成 償却資産の情報をPCdesk(DL版)等で入力して申告データを作成する方法です。この場合、評価額の算出は提出先の地方公共団体で行われます。/電算処理方式で作成 あらかじめ、全ての所有資産について評価額を算出した情報をもとに申告データを作成する方法です。主に、申告者独自で電算システム等をお持ちの方が対象となります。
出典:固定資産税(償却資産)を電子申告するには|地方税共同機構(eLTAX)
一般方式は、資産の情報を記入すれば評価額は市区町村が計算してくれる方式で、資産数が少ない事業者に向いています。電算処理方式は、全資産の評価額を申告者側で計算して申告する方式で、固定資産管理システムや会計ソフトで評価額まで算出できる場合に適しています。
種類別明細書の書き方(増加・減少・全資産)
種類別明細書は、資産の動きに応じて使い分けます。前年1月2日から当年1月1日までに取得した資産は「増加資産・全資産用」(別表1)に、同じ期間に売却・除却・移動などで減った資産は「減少資産用」(別表2)に記入します。増加資産には取得年月・取得価額・耐用年数と「新品取得/中古取得/移動」などの増加事由を、減少資産には「売却/除却/移動」などの減少事由を記載します。
たとえば2025年4月に20万円で購入した業務用ノートパソコン1台を新たに申告する場合、増加資産・全資産用の明細書に、資産の種類「工具・器具及び備品」、名称「ノートパソコン」、数量「1」、取得年月「2025年4月」、取得価額「200,000円」、耐用年数「4年」、増加事由「新品取得」のように記入します。
初年度と2年目以降で書く範囲の違い
初めて申告する年(初年度)は、所有しているすべての償却資産を記入します。2年目以降は、一般方式の場合、前年からの増加資産と減少資産だけを記入すれば足ります(前年までに申告済みの資産は市区町村側で引き継がれます)。一方、電算処理方式では毎年すべての資産を記入して申告します。自社がどちらの方式かによって、毎年記入する範囲が変わる点を押さえておきましょう。
申告の提出方法(窓口・郵送・eLTAX)
作成した申告書の提出方法は、おもに窓口・郵送・eLTAX(電子申告)の3つです。窓口と郵送は、資産が所在する各市区町村(東京23区は都税事務所)へ直接提出する従来の方法です。eLTAXは、インターネットを通じて電子的に申告する方法で、全国すべての地方公共団体でサービスが提供されています。
eLTAXを利用するには、事前に利用届出を行い、電子申告用のソフト「PCdesk」などを使って申告データを作成・送信します。紙の書類を印刷・郵送する手間がなく、固定資産管理システムや会計ソフトで作成した申告データをそのまま取り込める点がメリットです。
複数の市区町村に資産がある場合
本社・支店・工場など複数の市区町村に資産がある場合、紙の申告ではそれぞれの市区町村へ個別に提出する必要があります。eLTAXを使うと、この提出先を一本化できます。
紙の申告書で複数の地方公共団体に申告の手続きを行う場合は、作成した申告書をそれぞれの受付窓口へ提出する必要がありました。電子申告では、複数の地方公共団体へ提出する場合でも、送信先はいつでも同じ窓口(ポータルセンタ)になります。
出典:電子申告(eLTAX)の概要|地方税共同機構(eLTAX)
複数の市区町村に資産が分散している事業者ほど、eLTAXを使うことで提出の手間を減らせます。拠点が複数ある企業は、電子申告への対応を検討する価値があります。
申告しない・間違えた場合のペナルティ
償却資産申告を正当な理由なく行わなかった場合、過料が科されることがあります。地方税法には次のように定められています。
市町村は、固定資産の所有者(…)が第三百八十三条若しくは第三百八十四条の規定により、又は現所有者が第三百八十四条の三の規定により申告すべき事項について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合には、その者に対し、当該市町村の条例で十万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
出典:地方税法 第386条|e-Gov 法令検索
過料の上限は10万円以下で、実際に科すかどうかは各市区町村の条例によります(必ず科されるわけではありません)。また、虚偽の申告をした場合には、より重い罰則が定められています。
第三百八十三条から前条までの規定により申告すべき事項について虚偽の申告をしたときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
出典:地方税法 第385条|e-Gov 法令検索
虚偽申告の罰則は「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。さらに、申告漏れが後から判明した場合は、不足していた税額に加えて延滞金が課されることもあります。
また、申告をしなくても市区町村は調査にもとづいて資産を把握して課税できるため、「申告しなければ課税されない」というわけではありません。意図的でなくても申告漏れは不利益につながるため、該当資産を正確に把握して期限内に申告することが大切です。
申告漏れや記入ミスを防ぐうえでも、固定資産台帳から申告書・種類別明細書を作成できるシステムは役立ちます。次の章で具体的なサービスを紹介します。
償却資産申告の作業を効率化する固定資産管理システム
ここまで見てきたとおり、償却資産申告では、対象資産の洗い出し・評価額の計算・種類別明細書の作成という手作業が毎年発生します。資産数が多い企業や、複数の市区町村に資産がある企業では、この作業が大きな負担になりがちです。固定資産管理システムを使うと、固定資産台帳のデータから償却資産申告書・種類別明細書を自動で作成し、eLTAX向けのデータ出力まで一気通貫で行えます。
資産が数点程度と少なければ、手書きやeLTAX、お使いの会計ソフトの延長で対応できることもあります。一方、資産数が多い場合や複数の拠点に資産がある場合は、専用の固定資産管理システムを導入する効果が大きくなります。
固定資産管理システムの選び方のポイント
申告業務の効率化を目的に固定資産管理システムを選ぶ場合は、次の観点を確認すると自社に合う製品を見極めやすくなります。
- 申告書・種類別明細書を自動出力できるか:固定資産台帳から第26号様式と別表(種類別明細書)を作成できる製品を選ぶと、転記の手間と記入ミスを減らせます。製品によっては申告書本体ではなく「転記用資料」の出力にとどまる場合があるため、出力できる帳票の範囲を確認します。
- eLTAXに対応しているか:電子申告データを出力・送信できると、特に複数の市区町村に申告する場合の手間を大きく減らせます。CSVでPCdeskに取り込む形か、システムから直接送信できるかなど、連携の方式も確認します。
- 会計システムと連携できるか:減価償却費の仕訳や法人税申告書別表16との連携まで対応していれば、固定資産まわりの業務全体を効率化できます。
- 自社の規模・資産件数に合うか:管理できる資産件数や料金プランは製品によって幅があります。中小企業向けの手頃なクラウド型から、中堅・大企業向けまであるため、自社の資産規模に合った製品を選びます。
主要な固定資産管理システムの比較
償却資産申告への対応を中心に、代表的なクラウド型の固定資産管理システムを比較します。以下は2026年10月時点の各社公式情報にもとづく内容です。料金や対応範囲は変わることがあるため、導入前に各社の公式情報でご確認ください。
| サービス名 | マネーフォワード クラウド固定資産 | 固定資産奉行クラウド | PCAクラウド 固定資産 |
|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社マネーフォワード | 株式会社オービックビジネスコンサルタント | ピー・シー・エー株式会社 |
| 月額料金 | 要問い合わせ (契約内容により変動) | 4,750円〜30,400円 (iE/iA/iSプラン別) | 16,200円〜 (税抜・通常版単体) |
| 対象企業の目安 | 中堅〜大企業 (資産1,000件規模〜) | 小規模〜グループ企業 (管理資産100〜2,000件) | 単一企業〜中堅グループ (hyper版でグループ・セグメント管理) |
| 償却資産申告書・種類別明細書の出力 | ● | ● | ● |
| eLTAX電子申告対応 | △CSV出力→PCdesk取込 | ● | ● |
| 会計システム連携 | クラウド会計PlusとAPI連携 他社会計はCSV連携 | 勘定奉行iクラウドと仕訳自動連携 他社会計はCSV連携予定 | PCA会計とネイティブ連携 他社会計は出力パターンでテキスト連携 |
| 無料トライアル | 公式料金ページに記載なし | 30日間 | 2ヶ月 |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
1. マネーフォワード クラウド固定資産(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド固定資産は、固定資産台帳の管理から減価償却計算、税務申告帳票の作成までをクラウド上で一元化できるサービスです。償却資産申告の実務では、「償却資産課税台帳」「種類別明細書(増加資産・全資産用)」「種類別明細書(減少資産用)」の出力に対応し、PDFまたはCSV形式(CSVは全資産申告の設定時)で、単一の申告先ごと・複数の申告先まとめての両方に対応します。
減価残存率・価格・課税標準額を自動で算出して種類別明細書へ反映するため、評価額の計算を手作業で行う必要がありません。eLTAXへの電子申告は、申告データをCSVでエクスポートし、eLTAX対応ソフト「PCdesk」に読み込む形で対応します。
法人税申告書別表16の出力や、マネーフォワード クラウド会計Plusとの連携にも対応しています。
システム化によって申告業務の現場がどう変わるのか、同社は導入先での変化を次のように説明しています。

SmartHR様は、固定資産関連の業務が1〜2営業日かかっていたものが半日以下に短縮されました。また、エス・エム・エス様では償却資産申告の作業時間が3分の1になったという成果が出ています。
画面がわかりやすく操作もシンプルなので、資産の登録や移動登録といった業務が効率化されるだけでなく、属人化の解消にもつながります。これまで特定の担当者しかできなかった業務が、チームの誰もが対応できるようになるのは大きなメリットです。
2. 固定資産奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

奉行クラウドシリーズの一つである固定資産奉行クラウドは、固定資産・リース資産の管理に対応したシステムです。固定資産のライフサイクル管理や減価償却費の自動計算に加え、償却資産税(地方税)の電子申告に対応しており、公式サイトでは「電子申告(eLTAX)に対応しているため、償却資産申告書・種類別明細書を簡単な操作で各市町村へデータ送信できます」と説明されています(固定資産奉行クラウド公式サイト)。
勘定奉行iクラウドと組み合わせると、減価償却費の仕訳連携や法人税申告書別表16のデータ連携まで自動化できます。
料金は公式料金ページに明示されており、小規模・中小企業向けのiEシステムは初期費用0円・月額4,750円(管理資産100件まで)から利用できます。30日間の無料トライアルも用意されているため、導入前に操作感を試せます。
3. PCAクラウド 固定資産(ピー・シー・エー株式会社)

ピー・シー・エー株式会社が提供するPCAクラウド 固定資産は、減価償却計算・リース資産管理・資産棚卸に加え、償却資産税の電子申告まで一元的に扱えるクラウド型の固定資産管理ソフトです。減損処理や資産除去債務などの会計基準にも対応しています。PCA会計シリーズとのデータ連携に加え、出力パターン機能によってPCA以外の会計システムとも仕訳データを連携できます。
料金は公式料金ページに税抜で記載されており、単体利用の場合は月額16,200円(税抜)からです。通常版のほか、グループ企業管理やセグメント管理などに対応する上位のhyper版も用意されています。PCAクラウド全体では25,000法人を超える導入実績があります(PCA公式サイト)。
ここで取り上げた以外にも固定資産管理システムは数多くあり、対応できる資産件数や料金、会計システムとの連携範囲は製品ごとに異なります。以下の記事では、主要な固定資産管理システムを選び方や機能の違いとあわせて比較しているので、自社に合う製品をじっくり検討したい方はこちらもご覧ください。
【新リース会計対応】固定資産管理システムおすすめ19選を徹底比較|大企業・中小企業・個人事業主向け
Excel管理の属人化・計算ミスに加え、2027年4月1日以後に開始する事業年度から新リース会計基準(IFRS16号相当)が強制適用され、オフバランスだったリース取引の大半がオンバランス化されます。 強制適用の対象は、金融商品取引法の開示対…
まとめ
償却資産申告は、1月1日時点で事業用の償却資産を所有する法人・個人事業主が、毎年1月31日までに資産所在地の市区町村へ行う手続きです。免税点未満でも申告自体は必要で、令和8年度時点の免税点は課税標準額150万円(令和9年度以後は180万円)、税率は標準1.4%です。対象資産の線引きでは、30万円未満の少額減価償却資産の特例で経費処理した資産も申告対象になる点に特に注意しましょう。
申告書の作成では、対象資産の洗い出しと評価額の計算、種類別明細書への記入が毎年発生します。資産数が多い場合や複数の市区町村に資産がある場合は、固定資産台帳から申告書・種類別明細書を自動作成し、eLTAX向けのデータまで出力できる固定資産管理システムを活用すると、作業時間とミスを減らせます。自社の資産規模や会計システムとの連携要件に合わせて、最適なサービスを比較検討してみてください。
償却資産申告に関するよくある質問(FAQ)
Q. 償却資産申告とは何ですか?
A. 償却資産申告とは、事業で使う機械や備品などの「償却資産」について、固定資産税を計算するために所有者が市区町村へ申告する手続きです。土地や家屋と違って償却資産には登記制度がないため、どんな資産をいくらで所有しているかを所有者自身が申告しないと市区町村が課税額を把握できず、毎年の申告が必要とされています。
Q. 償却資産申告は免税点未満でも必要ですか?
A. 償却資産申告は、課税標準額が免税点(150万円)未満で税金がかからない場合でも必要です。課税されるかどうかと、申告が必要かどうかは別の問題で、東京都主税局をはじめ多くの自治体が免税点未満でも申告書の提出を求めています。「少額だから出さなくてよい」と自己判断せず、該当する資産があれば申告してください。
Q. 償却資産の免税点は150万円ですか、180万円ですか?
A. 償却資産の免税点は、令和8年度(2026年度)時点では課税標準額150万円、令和9年度(2027年度)以後は180万円です。150万円は地方税法第351条が定める現行の金額、180万円は令和8年度税制改正大綱で決まった引き上げ後の金額で、適用されるのは令和9年度分からです。解説記事で「180万円」とだけ書かれている場合は、適用時期を補って読む必要があります。
Q. 30万円未満の少額減価償却資産の特例で経費処理した資産も償却資産申告の対象ですか?
A. 30万円未満の少額減価償却資産の特例(租税特別措置法第67条の5)で取得時に損金算入した資産は、会計上は一度に経費にしていても償却資産申告の対象になります。対象外は取得価額10万円未満で全額を損金算入した資産と、20万円未満で3年一括償却した資産で、30万円未満の特例は含まれません。この特例をよく使う企業ほど申告漏れが起きやすいため、固定資産台帳で忘れずに拾い出してください。
Q. リース資産は誰が償却資産申告をしますか?
A. リース資産は、原則として所有権を持つリース会社(貸し手)が申告します。ただし所有権移転外ファイナンスリースのうち取得価額が20万円未満のものは対象外になるなど、契約の形態によって扱いが変わります。自社が借り手として申告が必要かどうか判断に迷う場合は、資産所在地の市区町村や顧問税理士に確認するのが確実です。
Q. 複数の市区町村に資産がある場合、償却資産申告はどうすればよいですか?
A. 複数の市区町村に資産がある場合は、資産が所在するそれぞれの市区町村(東京23区は都税事務所)に申告する必要があります。提出先は本社の所在地ではなく、資産が置かれている場所の市区町村です。紙の申告では市区町村ごとに個別提出となりますが、eLTAX(電子申告)を使えば送信先を一つの窓口(ポータルセンタ)に一本化でき、提出の手間を大きく減らせます。
Q. 該当する資産がない場合や前年から増減がない場合も償却資産申告は必要ですか?
A. 該当する資産がない場合や前年から増減がない場合でも、多くの自治体では申告書の提出が求められます。増減がないときは備考欄に「増減なし」、該当資産がないときは「該当資産なし」と記入して提出するのが一般的です。取り扱いは自治体によって異なるため、届いた案内や各市区町村の公式ページで確認しましょう。
Q. 償却資産申告の期限(1月31日)に遅れるとどうなりますか?
A. 償却資産申告を正当な理由なく行わなかった場合は、地方税法第386条にもとづき各市区町村の条例で10万円以下の過料が科されることがあります。また申告漏れが後から判明すると、不足していた税額に加えて延滞金が課されることもあり、虚偽の申告には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金というより重い罰則が定められています。期限に間に合わない場合も、できるだけ早く資産所在地の市区町村へ相談してください。
法人向けサービスを課題別に探すならMCB FinTechカタログ
MCB FinTechカタログでは、決済・金融・バックオフィス領域の法人向けサービスを課題別に探し、気になるサービスの資料をまとめて請求できます。固定資産管理システムのほかの課題も、あわせてご確認ください。
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















