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電子契約に証拠能力はある?電子署名法3条と二段の推定・裁判例で法的根拠を解説

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電子契約システム比較表(2026年版)

契約業務を電子契約サービスに切り替える企業が増えるなかで、法務や総務の担当者からよく聞かれるのが「紙に押印した契約書と同じように、電子契約も裁判で証拠として通用するのか」という不安です。導入の利便性は理解していても、万一取引先と紛争になったときに「電子データだから証拠にならない」と言われないか、社内で説明を求められる場面は少なくありません。

結論から言えば、要件を満たした電子契約は、紙の契約書と同等の証拠能力・証明力を持ちます。その根拠は、紙の押印に真正な成立を推定させる民事訴訟法第228条第4項と、電子版の推定を定めた電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)第3条にあります。ただし、どの署名方式でも無条件に推定が働くわけではなく、満たすべき条件と限界があります。

この記事では、証拠能力と証明力の違いから、二段の推定の仕組み、署名方式による証拠力の差、裁判例、推定効の限界、電子化できない契約、証拠力を確保する実務までを順に整理します。自社の契約を電子化してよいか、どの署名方式なら証拠力を確保できるかを判断できるようにまとめました。

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電子契約に証拠能力はあるのか(結論と用語整理)

電子契約は、紙の契約書と同じように民事訴訟で証拠として扱えます。民事訴訟法には、証拠として取り調べてよいものの種類を一般的に制限する規定がなく、裁判所は提出された証拠を自由に評価して事実を判断します(自由心証主義・民事訴訟法第247条)。電子データであることだけを理由に証拠から排除されることはありません。

電子契約のデータが文書と同じ扱いを受ける根拠は、民事訴訟法第231条にあります。同条は、情報を表すために作成された物件で文書でないものに、文書の規定を準用すると定めています。これにより電子契約データは「準文書」として、紙の文書と同じく成立の真正などのルールが適用されます。

第二百三十一条 この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。

出典:民事訴訟法 第231条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109)

ここで、混同しやすい3つの言葉を整理しておきます。「証拠能力」は、その証拠を裁判で取り調べてよいかという入口の資格の問題です。これに対して、文書が証拠としてどれだけ役立つかという価値は「証拠力(証明力)」と呼ばれ、さらに2つの局面に分かれます。弁護士による実務解説では、次のように定義されています。

①形式的証拠力とは、作成名義人(その文書の作成者とされている者)により作成されたものかどうかという問題である。その文書を事実認定の際に利用して良いか、という入口の問題といえる。②実質的証拠力とは、その文書が事実認定にどこまで役立つかの問題である。形式的証拠力の問題がクリアされた上で、その文書の証拠としての価値(略)の評価の問題といえる。

出典:電子契約・電子署名の活用に関する諸問題(契約実践編)|アンダーソン・毛利・友常法律事務所(https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins14_pdf/201130.pdf)

このうち「形式的証拠力」とは、その文書が本人の意思で成立したか(成立の真正)という問題で、電子契約で最初に問われるのはこの点です。電子署名法第3条や民事訴訟法第228条第4項が定める「真正に成立したものと推定する」という効果は、この形式的証拠力に関わります。以降では、電子契約でこの成立の真正がどう推定されるのか、その仕組みを見ていきます。

出典・参考資料(2件)

紙と電子で何が違うのか:二段の推定の仕組み

紙の契約書が裁判で証拠として機能するのは、「二段の推定」という仕組みがあるからです。電子契約の証拠力も、この二段の推定を紙と電子で対応づけて理解すると見通しがよくなります。まず紙から確認します。

民事訴訟法第228条は、第1項で「文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない」と定め、第4項で、本人またはその代理人の署名・押印があれば真正に成立したものと推定するとしています。

第二百二十八条 1 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。/4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

出典:民事訴訟法 第228条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109)

紙の契約書では、まず「印影が本人の印章と一致すれば、その押印は本人の意思に基づくものと事実上推定される」という判例上のルール(第1段)が働き、次に押印があることで民事訴訟法第228条第4項により文書の成立の真正が法律上推定される(第2段)、という二段構えになっています。電子契約では、この仕組みを電子署名法第3条が引き継ぎます。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第3条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000102)

紙の押印と電子署名を、二段の推定の各段で対応づけると次のようになります。デジタル庁の資料も、この紙と電子の対応関係を同じ構造で示しています。

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推定の段階第1段(意思に基づくことの推定)第2段(成立の真正の推定)
紙の契約書(押印)印影が本人の印章と一致すれば、本人の意思に基づく押印と事実上推定される(判例によるルール)署名・押印があることで、文書の成立の真正が法律上推定される(民事訴訟法第228条第4項)
電子契約(電子署名)本人の電子署名が本人の秘密鍵で生成されたと検証できれば、本人の意思に基づくと事実上推定されると考えられる(実務法曹の多数説。確立した裁判例はない)本人による電子署名があることで、電磁的記録の成立の真正が法律上推定される(電子署名法第3条)

※民事訴訟法第228条・電子署名法第3条、およびデジタル庁「電子契約の有効性について」(2021年12月)にもとづく。

ここで注意したいのが、紙と電子で第1段の裏づけの強さが違う点です。紙の第1段は長年の判例に支えられていますが、電子の第1段は「本人だけが使える電子署名なら本人の意思に基づくと推定できる」という実務法曹の多数説にとどまり、これを正面から認めた確立した裁判例はまだありません。この点は、後述する推定効の限界ともつながります。

(電子署名による場合の第1段について)裁判例はないものの、本人が二要素認証を経てのみ利用できる電子署名を本人以外が利用することは技術的に難しいとの前提で、事実上の推定が働くと考え得る

出典:電子契約・電子署名の活用に関する諸問題(契約実践編)|アンダーソン・毛利・友常法律事務所(https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins14_pdf/201130.pdf)
出典・参考資料(3件)

当事者型と立会人型で証拠力はどう違うのか

電子署名には、契約当事者本人が自分の電子証明書で署名する「当事者型(当事者署名型)」と、サービス提供事業者が自社の署名鍵で利用者の指示に基づき署名する「立会人型(事業者署名型)」があります。多くのクラウド電子契約サービスで標準になっているのは、相手方の事前準備が不要な立会人型です。ここで気になるのが、立会人型でも電子署名法第3条の推定効が及ぶのか、という点です。

電子署名法第2条は、電子署名を「本人性(当該措置を行った者の作成に係るものであることを示す)」と「非改ざん性(改変が行われていないかを確認できる)」の2要件を満たす措置と定めています。

立会人型は事業者が署名するため、一見すると、電子署名を行った者が利用者ではないように見えます。

この点について、総務省・法務省・経済産業省は、立会人型でも一定の条件を満たせば利用者の電子署名と評価できるとの見解を示しています。

利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。

出典:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(令和2年7月17日)|総務省・法務省・経済産業省(https://www.moj.go.jp/content/001323974.pdf)

さらに、立会人型が電子署名法第3条の推定効まで得るには、「固有性の要件」を満たす必要があります。これは、署名のための符号を他人が容易に同じものを作成できないと認められること、という条件です。政府見解(電子署名法第3条に関するQ&A。令和2年9月4日公表、令和6年1月9日一部改定)は次のように説明しています。

このような効果を生じさせるためには、その前提として、暗号化等の措置を行うための符号について、他人が容易に同一のものを作成することができないと認められることが必要であり(以下では、この要件のことを「固有性の要件」などという。)、そのためには、当該電子署名について相応の技術的水準が要求されることになるものと考えられる。

出典:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係・令和6年1月9日一部改定)|デジタル庁・法務省(https://www.moj.go.jp/content/001327658.pdf)

2024年(令和6年)の改定では、この固有性が、利用者とサービス提供事業者の間のプロセスと、事業者内部のプロセスの両方で満たされている必要があり、一方だけでは不十分だと明確化されました。当事者型と立会人型の証拠力に関わる違いを整理すると、次のとおりです。

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観点署名する人本人確認の仕組み電子署名法第3条の推定効導入のしやすさ
当事者型(当事者署名型)契約当事者本人(本人の電子証明書で署名)電子認証局が発行した電子証明書で本人性を担保(書面の印鑑登録証明書に近い)本人の電子署名として推定効が及びやすい相手方も電子証明書の取得が必要になる場合がある
立会人型(事業者署名型)サービス提供事業者(利用者の指示に基づき事業者の署名鍵で署名)メール認証などで本人性を担保(事前の電子証明書取得は不要)固有性の要件を十分な水準で満たせば及びうる。満たすかは個別の事案ごとに裁判所の判断に委ねられる相手方はメール受信で署名でき、導入のハードルが低い

※電子署名法第2条・第3条、および同法第2条第1項・第3条に関する政府Q&Aにもとづく整理。

立会人型でも推定効が及びうる一方で、政府見解は、その成否を個別の事案における裁判所の判断に委ねています。さらに、利用者の身元確認の水準やなりすまし防止の対策が低い場合には、真正な成立を推定するには不十分と判断される可能性があるとも述べています。立会人型だから必ず証拠力が確保されるとは言い切れない点は、署名方式を選ぶうえで押さえておく必要があります。

電子契約サービスにおける利用者の身元確認の有無、水準及び方法やなりすまし等の防御レベルは様々であるところ、現状では必要な基準についての裁判例の蓄積が十分でなく、身元確認の水準や防御レベルが低い場合には、実際の裁判において真正な成立を推定するためには不十分であると判断される可能性がある。

出典:電子署名法第3条に関するQ&A(問5・令和6年1月9日一部改定)|デジタル庁・法務省(https://www.moj.go.jp/content/001327658.pdf)
出典・参考資料(3件)

電子契約の証拠力が争われた裁判例

電子契約や電子メールのやり取りの証拠力が争われた事案として、実務解説でよく挙げられる東京地方裁判所の裁判例が2件あります。ただし、いずれも電子署名法第3条の推定効そのものを正面から判断したものではなく、現時点で3条の推定効を直接認めた確立した裁判例はまだありません。

以下の2件は、電子的なやり取りが証拠としてどう扱われたかを示す参考例です。両事案とも判決文の全文を公開データベースで広く参照できる状態になく、実務解説で報じられている範囲の紹介にとどめます(判決文の逐語引用は行いません)。

東京地裁 令和元年7月10日(貸金返還等請求事件)

この事案では、相互極度貸付契約書に付された電子署名の効力が、貸金返還等請求事件のなかで争われました。裁判所は、契約書上の電子署名が被告本人の意思に基づいて行われたものと認め、電子的に締結された契約の効力を認めたと紹介されています。

電子署名が付された契約書データが、当事者の意思に基づく合意の証拠として評価されうることを示した事案として、実務解説で代表例に挙げられています。

東京地裁 平成25年2月28日(業務委託料請求事件)

もう1件は、電子署名のない電子メールのやり取りが証拠になるかが問題となった業務委託料請求事件です。裁判所は、やり取りされたメール(写し)の成立の真正を認め、契約の成立や内容を認定する証拠として用いたと紹介されています。

電子署名がなくても、メールなどの電子的な記録は事実認定の証拠として評価されうるということです。電子署名は成立の真正を推定で裏づける手段であり、署名がない記録が当然に証拠から外れるわけではありません。

これらの事案からわかるのは、電子署名の有無にかかわらず、電子的なやり取りそのものは証拠として扱われうるということです。もっとも、電子署名法第3条の推定効を確実に得て立証の負担を軽くできるかは、前章で見た署名方式と固有性の要件に左右されます。そして、その推定効にも次章で見る限界があります。

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電子署名法第3条の推定効の限界(過信しないために)

電子署名法第3条の推定効は、電子契約の証拠力を支える重要な仕組みですが、「電子署名さえあれば裁判に必ず勝てる」というものではありません。推定効の意味を正しく理解しておくことが、過信によるトラブルを防ぎます。デジタル庁の資料は、推定効の意義を次のように整理しています。

・証明責任は相手方に転換されない/・相手方からの反証が可能/◆文書の記載内容が、立証主題である事実の証明に寄与する程度(実質的証拠力)は別問題

出典:電子契約の有効性について(電子署名法3条の推定効の意義)|デジタル庁(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/35c2afb2-01d8-49b4-b0a8-2cc656d1733e/20211213_meeting_trust_dx_06.pdf)

デジタル庁の整理から読み取れる推定効の限界は、大きく3つあります。第1に、推定はあくまで推定であり、相手方は反証によって覆せます。証明責任そのものが相手方に移るわけではありません。

第2に、推定が及ぶのは「成立の真正(形式的証拠力)」までで、契約内容が真実であることまで保証するものではありません。第3に、成立の真正は推定効だけで決まるのではなく、最終的には裁判所が自由な心証で総合的に判断します(民事訴訟法第247条)。政府見解も、この点を明確にしています。

電子文書の成立の真正は、電子署名法第3条の推定効のみによって判断されるものではなく、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により裁判所に判断される(民事訴訟法第247条)ものである。

出典:電子署名法第3条に関するQ&A(問6・令和6年1月9日一部改定)|デジタル庁・法務省(https://www.moj.go.jp/content/001327658.pdf)

これら3つに加えて、法人間の契約では実務上の注意点がもう1つあります。電子署名法第3条の推定が及ぶのは、署名を行った本人(自然人)についてです。法人そのものに推定が及ぶわけではないため、署名した担当者に法人を代表・代理する権限があったかは、別途確認する必要があります。

一方で、電子署名法第3条の適用が認められたとしても法人そのものには適用がないため、法人を代表又は代理して電子署名を行う者の代表権又は代理権については別途確認する必要がある。

出典:電子契約・電子署名の活用に関する諸問題(契約実践編)|アンダーソン・毛利・友常法律事務所(https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins14_pdf/201130.pdf)
出典・参考資料(3件)

電子化できない・書面が必要な契約はあるか

証拠力の前提として、そもそも電子契約で締結してよい契約かどうかの確認も欠かせません。ただし「法律で書面が必要」と書かれていても、電子化が認められている契約は多くあります。「書面義務がある=電子化できない」と短絡しないことが大切です。

たとえば保証契約は、民法第446条第2項で書面によらなければ効力を生じないとされていますが、第3項で、電磁的記録によってされたときは書面によってされたものとみなすと定められています。そのため、保証契約は電子契約でも締結できます。

2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。/3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

出典:民法 第446条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)

同じように、定期借地権(借地借家法第22条)や定期建物賃貸借(同第38条)も、かつては書面が必要でしたが、改正により電磁的記録での締結が認められています。一方で、本当に電子契約では締結できないのは、法律が公正証書の作成を義務づけている契約です。代表例は、事業用定期借地権の設定契約で、借地借家法第23条第3項は次のように定めています。

3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。

出典:借地借家法 第23条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090)

公正証書は公証人が作成する文書で、電磁的記録での作成が認められていないため、公正証書が必須とされる契約は電子契約では締結できません。事業用定期借地権のほか、任意後見契約(任意後見契約に関する法律第3条)も公正証書が必須です。自社の契約を電子化する際は、書面義務の有無ではなく、公正証書が義務づけられているかどうかで線引きすると判断を誤りにくくなります。

出典・参考資料(3件)

証拠力を確保するための実務と立証プロセス

ここまでの整理を踏まえ、自社で証拠力を確保するために何をすればよいか、そして万一争われたときにどう立証するかを実務の視点で確認します。

普段から残しておくべき記録と署名方式の選び方

証拠力を高める基本は、本人性と非改ざん性を後から確認できる記録を残しておくことです。具体的には、電子証明書やメール認証などの本人確認の記録、認定タイムスタンプ、操作ログ、締結時に発行される合意締結証明書(契約締結証明書)などが、第三者が成立の経緯を検証できる材料になります。

署名方式は、契約の重要度に応じて選ぶのが現実的です。相手方の本人確認を厳格にしたい重要な契約では、電子証明書で本人が署名する当事者型が証拠力の面で有利です。

日常的な取引で導入のしやすさを優先する場合は立会人型が使われますが、その場合でも、固有性の要件を満たすサービスを選び、身元確認やなりすまし防止の仕組みが備わっているかを確認しておくと安心です。政府見解でも、身元確認は推定効の必須要件ではないものの、有効な立証手段の1つになるとされています。

自社が使う(検討する)立会人型サービスが固有性の要件を満たす方向にあるかは、次の点を手がかりに確認できます。ログイン時の二要素認証やアクセスコードなど、本人だけが署名を実行できる仕組みがあるか、利用者の身元確認をどの方法・水準で行っているか、です。

これらはサービスの仕様書・ヘルプや、営業・サポートへの問い合わせで確かめられます。身元確認やなりすまし防止の水準が高いほど、万一争われたときに真正な成立を立証しやすくなります。

サービス提供事業者が電子契約サービスの利用者と電子文書の作成名義人の同一性を確認する(いわゆる利用者の身元確認を行う)ことは、電子署名法第3条の推定効の要件として必ず求められているものではないものの、電子契約サービスの利用者と電子文書の作成名義人が同一であることの有効な立証手段の一つとなり得る。

出典:電子署名法第3条に関するQ&A(問4・令和6年1月9日一部改定)|デジタル庁・法務省(https://www.moj.go.jp/content/001327658.pdf)

万一争われたときの立証プロセス

電子契約の成立が裁判で争われた場合、証拠として何を出すかは次のように整理できます。「これだけ出せば十分」という決まりはなく、本人性と非改ざん性を多面的に示す姿勢が求められます。

  • 締結した電子契約データそのもの(PDFなど)。紙に印刷して提出するほか、電磁的記録として提出する方法もあります
  • 電子署名・タイムスタンプの検証結果(署名が有効で、締結後に改ざんされていないことを示す画面や検証レポート)
  • 合意締結証明書や操作ログなど、誰がいつ合意したかを示す記録
  • 利用した電子契約サービスの仕組みを説明する資料(署名・タイムスタンプの技術的な裏づけを裁判所に理解してもらうため)
  • 本人確認に関する記録(メール認証の履歴、電子証明書の情報など)

電子契約サービスの多くは、こうした検証画面や仕組みの説明資料、裁判での立証をサポートする資料を用意しています。導入時には、締結後にどのような証跡が残り、争われたときにどこまでの資料を出せるのかを確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。

出典・参考資料(1件)

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証拠力を確保できる署名方式を選べる電子契約サービス

ここからは、当事者型と立会人型を1つのサービスで使い分けられ、証拠力の観点で署名方式を選べる代表的な電子契約サービスを2つ紹介します。いずれも認定タイムスタンプに対応し、契約の重要度に応じて署名方式を選べる点が、証拠力を確保するうえでの選定材料になります。電子契約システムを料金やタイプ別の選び方まで含めて比較したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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サービス名クラウドサイン電子印鑑GMOサイン
提供会社弁護士ドットコム株式会社GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
署名方式立会人型(事業者署名型)標準
当事者型(マイナンバーカード署名)対応
立会人型(契約印タイプ)・当事者型(実印タイプ)
ハイブリッド署名も可
本人確認立会人型はメール認証
当事者型はマイナンバーカードの電子証明書
契約印タイプはメール認証
実印タイプは電子認証局の電子証明書
認定タイムスタンプ全プランで標準付与
長期署名に対応
全プランで標準付与
延長タイムスタンプは有料プラン
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る

※2026年10月時点の各社公式情報にもとづく。最新の仕様・料金は各サービスの公式情報をご確認ください。

クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインのウェブサイト

弁護士ドットコム株式会社が運営する電子契約サービスです。標準の署名方式は事業者署名型(立会人型)で、契約当事者の指示に基づいて同社の電子署名と認定タイムスタンプを付与します。認証局での事前の本人確認が不要なため、相手方はメールを受信するだけで署名でき、導入のハードルが低いのが特徴です。

より厳格な本人確認が必要な契約に向けて、2023年からはマイナンバーカードの電子証明書で契約当事者本人が署名する当事者署名型(マイナンバーカード署名)も提供しています。締結した契約には総務大臣認定の認定タイムスタンプが標準で付与され、電子署名の有効性を検証できる期間を延長する長期署名にも対応します。無料のフリープランでも、ユーザー1名・月2件までの範囲で電子署名とタイムスタンプを試せます。

電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインのウェブサイト

立会人型の「契約印タイプ」と当事者型の「実印タイプ」を1つのサービスで使い分けられるのが、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が提供する電子印鑑GMOサインです。実印タイプは、電子認証局が本人確認して発行した電子証明書で署名する方式で、公式は「法人実印相当の法的効力が認められます」と説明しています。

証拠力を重視する契約では実印タイプ、相手方の負担を抑えたい契約では契約印タイプ、と署名方式を選べます。

自社は当事者型(実印タイプ)、相手方は立会人型(契約印タイプ)で署名するハイブリッド署名にも対応し、この場合は相手方の電子証明書の取得が不要です。認定タイムスタンプは無料のお試しフリープランを含む全プランで付与され、10年を超える契約に備えて検証可能期間をさらに延長する延長タイムスタンプは有料プランで提供されます。幅広い署名方式を使い分けたい企業に向いています。

まとめ

電子契約は、要件を満たせば紙の契約書と同等の証拠能力・証明力を持ちます。民事訴訟法には証拠能力を一般的に制限する規定がなく、電子データは準文書として扱われるうえ、本人による電子署名があれば電子署名法第3条で成立の真正が推定されます。これは紙の押印による民事訴訟法第228条第4項の二段の推定に対応する仕組みです。

ただし、立会人型で推定効が及ぶには固有性の要件を満たす必要があり、その成否は個別の事案で裁判所が判断します。推定効は反証で覆せるうえ、契約内容の真実性まで保証するものではなく、法人の代表権・代理権は別途確認が要ります。また、公正証書が必須の契約は電子化できません。

これらの前提を押さえたうえで、契約の重要度に応じて署名方式を選び、本人確認やタイムスタンプなどの証跡を残しておくことが、証拠力を確保する実務のポイントです。

証拠力を確保できる署名方式を選べるサービスの資料をまとめて取り寄せて、自社の契約に合うものを比べてみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 電子契約の証拠能力とは何ですか?

A. 電子契約の証拠能力とは、その電子契約データを裁判の証拠として取り調べてよいかという「入口の資格」のことで、電子データであることだけを理由に否定されることはありません。民事訴訟法には証拠として扱えるものの種類を一般的に制限する規定がなく、裁判所は提出された証拠を自由に評価して事実を判断します(自由心証主義・民事訴訟法第247条)。

証拠能力と混同されやすいのが「証明力(証拠力)」です。証明力は、作成名義人が作成した文書かという「形式的証拠力(成立の真正)」と、その文書が事実認定にどこまで役立つかという「実質的証拠力」に分かれます。電子契約でまず問われるのは、成立の真正という形式的証拠力です。

出典・参考資料(2件)

Q. 電子契約は紙の契約書と同等の証拠能力がありますか?

A. 電子契約は、要件を満たせば紙の契約書と同等の証拠能力・証明力を持ちます。 電子契約データは民事訴訟法第231条により「準文書」として紙の文書と同じ扱いを受け、本人による電子署名があれば電子署名法第3条で成立の真正が推定されます。これは、紙の押印による民事訴訟法第228条第4項の推定に対応する仕組みです。

ただし、推定が働くには署名方式や固有性の要件といった条件を満たしていることが前提になります。どの電子契約でも無条件に紙と同等になるわけではない点は押さえておく必要があります。

出典・参考資料(2件)

Q. 立会人型(メール認証型)の電子契約でも証拠力は確保できますか?

A. 立会人型(事業者署名型)でも、「固有性の要件」を十分な水準で満たせば電子署名法第3条の推定効が及びえます。 ただしその成否は個別の事案ごとに裁判所の判断に委ねられ、利用者の身元確認やなりすまし防止の水準が低い場合には、真正な成立を推定するには不十分と判断される可能性があるとされています。

政府見解(3条Q&A)は、固有性が利用者とサービス提供事業者の間のプロセスと、事業者内部のプロセスの両方で満たされている必要があるとしています。立会人型だから一律に安全とは言えないため、身元確認やなりすまし対策の仕組みが備わったサービスを選んでおくことが大切です。

出典・参考資料(2件)

Q. 電子署名やタイムスタンプが付いていない電子データ(メールのやり取りなど)は証拠になりませんか?

A. 電子署名がない電子メールなどのやり取りも、証拠として扱われること自体は可能です。 民事訴訟法は証拠の種類を一般的に制限しておらず、実際に、やり取りされたメールの成立の真正が認められ事実認定の証拠に用いられた裁判例も紹介されています。

ただし、電子署名法第3条による成立の真正の推定を受けられるのは、本人による電子署名がある場合です。推定が働かないと成立の真正を自分で立証する負担が重くなるため、重要な契約ほど、電子署名と認定タイムスタンプを備えた電子契約サービスで締結しておくのが安全です。

出典・参考資料(1件)

Q. 電子署名法第3条の推定効があれば、裁判で必ず契約が有効と認められますか?

A. 必ず認められるわけではありません。推定効はあくまで「推定」であり、相手方は反証によって覆すことができます。 証明責任そのものが相手方に移る(転換される)わけではなく、推定が及ぶのは成立の真正(形式的証拠力)までで、契約内容が真実であることまで保証するものではありません。

成立の真正は推定効だけで決まるのではなく、最終的には裁判所が口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証で総合的に判断します(民事訴訟法第247条)。電子署名があれば立証の負担は軽くなりますが、「電子署名さえあれば必ず勝てる」と過信しないことが大切です。

出典・参考資料(2件)

Q. 法人名義の電子契約で、署名した担当者に契約の権限がなかった場合はどうなりますか?

A. 電子署名法第3条の推定が及ぶのは署名を行った本人(自然人)についてで、法人そのものには及びません。 そのため、署名した担当者に法人を代表・代理する権限があったかどうかは、推定効とは別に確認する必要があります。

権限のない担当者が署名した場合、電子署名としての成立の真正が推定されても、その契約が法人を拘束するかどうかは別の問題として争われる余地があります。社内で誰にどこまでの契約権限があるのかを明確にしておくことが、実務上のリスク管理になります。

出典・参考資料(1件)

Q. 証拠力を確保するには、電子契約サービス選びで何を確認すればよいですか?

A. 署名方式(当事者型・立会人型)を契約の重要度に応じて選べること、認定タイムスタンプに対応していること、本人確認やなりすまし防止の仕組みと操作ログ・合意締結証明書などの証跡が残ることの3点を確認するのがポイントです。

相手方の本人確認を厳格にしたい重要な契約では、電子証明書で本人が署名する当事者型が証拠力の面で有利です。導入のしやすさを優先する日常的な取引では立会人型が使われますが、その場合も固有性の要件を満たし、身元確認の仕組みが備わったサービスかを確認しておくと、万一争われたときの立証に役立ちます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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