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基幹システムのDXとは?レガシー化の課題と刷新の進め方・最初の一手を解説

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会計や販売、購買、在庫を支える基幹システムは、止まれば事業そのものが止まる中核の仕組みです。多くの企業でこの基幹システムが老朽化・複雑化し、改修を重ねるうちに全体像を把握できる担当者がいなくなっています。経営から「DXを進めよ」と求められても、何から刷新すればよいか分からない、という状況は珍しくありません。

基幹システムのDXは、古いシステムを新しいものへ入れ替えるだけの作業とは異なります。本記事では、基幹システムのDXとは何かを整理したうえで、自社の何が問題か、そして何から・どの順番で刷新を進めればよいかを解説します。

レガシー化の背景にある「2025年の崖」やSAP 2027年問題、刷新の進め方と最初の一手、刷新手段としてのERP(Enterprise Resource Planning=統合基幹業務システム)の位置づけまで整理しました。自社の基幹システム刷新の方針と着手点を考える材料としてご活用ください。

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基幹システムのDXとは?単なるIT化・システム刷新との違い

まず、基幹システムのDXとは具体的に何をすることなのかを整理します。結論からいえば、レガシー化した基幹システムを全社のデータ基盤に作り替え、部門をまたいでデータを活用できる状態にすることを指します。部門ごとに散らばったデータをつなげない限り、分析も新しい打ち手も生まれないため、データ基盤の統合がその中心に置かれます。

ここで押さえておきたいのが、「単なる刷新・入れ替え」との違いです。古いサーバーを新しいサーバーへ置き換えたり、同じ業務のやり方のままパッケージを新版にしたりするのは、設備の更新であって、基幹システムのDXではありません。業務とデータの持ち方そのものを見直し、散らばっていたデータを一つの基盤に集めて、経営判断や現場の業務にそのまま使える形にするところまでが射程に入ります。

この考え方の起点になったのが、経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」です。同レポートはDXを、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変することと位置づけ、複雑化・老朽化した既存システムがその妨げになると指摘しました。基幹システムのDXは、この妨げを取り除き、データを事業の武器にできる土台をつくる取り組みと言い換えられます。

出典・参考資料(1件)

自社の基幹システムの何が問題か|レガシー化の正体と放置リスク

ここからは、刷新を迫られる理由、つまり「自社の基幹システムの何が問題なのか」を言語化します。自社が刷新に踏み出すかどうかを判断する土台になる部分です。

基幹システムのレガシー化とは|老朽化・サイロ化・ブラックボックス化

レガシー化とは、長く使い続けた基幹システムが、保守や改修のしにくい状態に陥ることです。症状は大きく3つに分けられます。

基幹システムのレガシー化の3つの症状を並べた図解。老朽化(古い技術で作られ対応できる技術者が減り、部品やソフトのサポートも終了していく)、サイロ化(部門ごとに別々のシステムを建て増しデータが分断され、全体の数字をつかみにくい)、ブラックボックス化(カスタマイズが積み重なり動作を把握する人がいなくなり、改修が怖くてできない技術的負債)の3つを示している。

1つ目は老朽化です。古い技術で作られたシステムは、対応できる技術者が減り、部品やソフトウェアのサポートも終わっていきます。

経済産業省のDXレポートが引用する日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2016」によると、企業が保有する最も大きなシステムの稼働年数は長期化しています。2016年時点で既に、21年以上前から稼働している企業は20%、11〜20年稼働している企業は40%にのぼっていました。稼働年数が長いほど、トラブルや引き継ぎのリスクは高まります。

2つ目はサイロ化です。会計は会計、在庫は在庫というように、部門ごとに別々のシステムを建て増ししてきた結果、データが分断されます。経営者が全体の数字を見ようとしても、各システムからデータを集めて突き合わせる手間が発生し、正確な全体像をつかみにくくなります。

3つ目はブラックボックス化です。長年のカスタマイズが積み重なり、どの機能がどう動いているかを把握している人がいなくなった状態を指します。仕様が属人化し、改修が怖くてできない、担当者の異動や退職で業務が止まる、といった技術的負債として残ります。

出典・参考資料(1件)

放置するとどうなるか|2025年の崖とSAP 2027年問題

レガシー化を放置したまま時間が経つと、事業の継続そのものにリスクが及びます。その象徴として語られるのが「2025年の崖」です。前掲のDXレポートは、次のように述べています。

この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)。

出典:DXレポート(サマリー)|経済産業省

この「最大12兆円/年」は2018年時点の推計で、IT人材の引退やサポート終了などによるリスクの高まりを織り込んだ金額です。金額の大小よりも、放置すると損失が積み上がっていくという構造を自社に引き寄せて読むことが重要です。

自社に直接関わる期限として意識したいのが、SAP 2027年問題です。独SAPの基幹システム「SAP Business Suite 7」(SAP ERP 6.0/ECCを含む)は、標準保守(メインストリーム保守)が2027年末で終了し、以降は有償の延長保守で2030年末まで提供されます。

当初は2025年末終了とされていたものが、2020年の発表で2027年末へ延長された経緯があります。SAP ECCを使っている企業にとっては、刷新を検討する期限が明確にあることを意味します。後継のS/4HANA(保守は2040年)とは別の話であり、混同しないよう注意が必要です。

出典・参考資料(1件)

保守終了以外にも、放置のリスクは複数あります。障害が起きても直せる人がいなければシステムは長期間止まり、受発注や出荷に影響します。古い基盤はセキュリティ対策が追いつかず、情報漏えいの危険も高まります。さらに、ブラックボックス化が進むほど、いざ刷新しようとしたときのデータ移行や業務の洗い出しが難しくなり、着手が遅れるほど刷新自体のハードルが上がっていきます。

基幹システムのDXで得られるメリット

続いて、刷新で何が良くなるのかを整理します。自社のどの業務に、どの効果が最も効くのかを見極める材料として読んでください。

最も大きいのは、業務の効率化とリアルタイムな可視化です。部門ごとに分かれていたデータを一つの基盤に統合すると、手作業の集計や突き合わせが減り、今の在庫・売上・資金繰りをその場で確認できます。日々の業務データがそのまま経営の数字につながり、月次集計を待たずに判断できる状態に近づきます。

データの統合は経営判断の精度にも効きます。販売・購買・在庫・会計が同じ基盤にそろえば、利益の出る商品やコストのかかる工程を部門横断で分析できます。このほか、サポートの続く基盤への移行でセキュリティ不安が下がり、紙やExcel運用を脱してコストと手間を抑え、統合データを足がかりに新たなサービスや販売チャネルを生む道も開けます。

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基幹システムのDX・刷新が進まない理由とよくある落とし穴

必要性は分かっていても、基幹システムのDXは多くの企業で止まりがちです。ここでは、進まない理由と、刷新プロジェクトでつまずきやすい落とし穴を対策とあわせて見ていきます。

進まない根本には、部分最適で止まってしまう構造があります。個別の業務にツールを足して改善した気になっても、土台の基幹システムが分断されたままでは、全社のデータはつながりません。基幹システムの見直しに踏み込まない限り、効果は一部にとどまります。加えて、現場からすれば日々の業務が回っている以上、作り替える動機を持ちにくく、優先順位が後回しになりやすいという事情もあります。

いざ刷新に着手しても、実務ではいくつかの落とし穴が待っています。代表的なものを挙げます。

  • 隠れ仕様と要件の後出し:長年の運用で生まれた暗黙のルールが、開発が進んでから次々と出てくる。現状業務の洗い出しを先に行い、仕様を可視化しておく
  • コスト超過とスケジュール遅延:対象範囲を広げすぎて見積もりが膨らむ。優先順位をつけ、範囲を絞ってから広げる
  • ビッグバン移行の失敗:全機能を一度に切り替えようとして、トラブル時に業務全体が止まる。段階的に移行してリスクを分散する
  • ベンダーロックイン:特定の製品や開発会社に依存し、後から乗り換えや改修がしにくくなる。標準機能を活かし、過度なカスタマイズを避ける
  • 現場の巻き込み不足:情報システム部門だけで進め、現場が使わない仕組みになる。業務を担う部門を早い段階から設計に参加させる

いずれの落とし穴も、「現状を可視化してから、範囲を絞って段階的に進める」という姿勢で多くを避けられます。この考え方は、次に解説する進め方の土台にもなります。

基幹システムDXの進め方|現状棚卸しから段階移行までのステップ

ここが本記事の中心です。「で、何から・どう進めるのか」を、自社の動きに置き換えられる粒度で解説します。

基幹システムDXの進め方5ステップ

基幹システムのDXは、おおむね次の5つのステップで進めます。順番に着手することで、落とし穴を避けながら土台を整えられます。

基幹システムDXの進め方を示した5ステップの図解。STEP1 現状の棚卸し(業務とデータの可視化で対象と優先順位を見極める)、STEP2 デジタル化(紙・Excel・メールの作業をデジタルデータに置き換える)、STEP3 データ基盤へ統合(分断されたデータを一つの基盤に集める)、STEP4 データ中心へ(統合データの活用を起点に業務を設計し直す)、STEP5 段階的な移行(優先度の高い業務から順に切り替えて範囲を広げる)を矢印でつないで示している。
  1. 現状の棚卸し(業務・データの可視化):どの部門がどのシステムを使い、どんなデータをどこで持っているかを書き出します。属人化している業務やブラックボックス化した機能を洗い出し、刷新の対象と優先順位を判断する材料をそろえます
  2. ペーパーレス化・デジタル化:紙やExcel、メールで回している作業をデジタルデータに置き換えます。後の統合でデータを扱えるよう、入力の形式やルールをそろえておきます
  3. データ基盤への統合:分断されていたデータを一つの基盤に集めます。クラウドERPへの移行など、会計・販売・在庫・購買を同じ基盤で扱える仕組みを選び、部門間でデータが流れる状態をつくります
  4. プロセス中心からデータ中心へ:既存の業務手順をそのまま再現するのではなく、統合したデータをどう活用するかを起点に業務を設計し直します。たとえば、月末にExcelで集計していた在庫と売上を、統合データからいつでも参照できる前提で発注や生産の手順を組み替える、といった形です。標準的なやり方に業務を合わせることで、過度なカスタマイズを避けられます
  5. 段階的な移行:優先度の高い業務から順に切り替え、動作を確認しながら範囲を広げます。一度にすべてを置き換えるのではなく、止まっても影響を抑えられる単位で進めます

この5ステップは、順に積み上げる流れとして捉えてください。棚卸しを飛ばして統合に入ると隠れ仕様に足をすくわれ、デジタル化が中途半端なまま統合すると集めたデータが使えません。土台から順に固めることが、結果的に近道になります。

最初の一手|どこから着手するかの見極め

5ステップの全体像が見えても、「では自社は具体的にどこから手をつけるのか」で手が止まりがちです。最初の一手は、対象を絞り込む判断から始めます。

まず、棚卸しで見えた業務のうち、どこから着手すると効果が大きいかを見極めます。現状のデータや業務を客観的に評価し(データアセスメント)、課題が深く、かつ他の業務への波及が大きい領域を優先候補とします。すべてを一度に変えようとせず、対象業務を切り分けて優先順位をつけるのがポイントです。

着手の単位を絞ったら、そこから段階的に広げます。たとえば販売と在庫の連携から始めて、運用が定着してから会計やそのほかの領域を加えていく、といった進め方です。全機能を一度に作り替えるビッグバン方式は、トラブル時のリスクが大きいため、避けるのが基本となります。小さく始めて成果を確かめ、次の領域へ進む流れが、着手のハードルを下げます。

基幹システムのDX・刷新事例

進め方を具体的にイメージできるよう、前節までの刷新手段を実際に選んだ企業の例を見ていきます。課題・施策・成果の順に、ERPを実際に選んだ企業の例を取り上げます。

物流業の日立埠頭株式会社は、全社7事業で受発注や会計の業務がそれぞれ分かれていました。これをクラウドERP「NetSuite」に統合した結果、全社の受発注・会計業務を一つの基盤でまとめ、年間約1,200時間の作業工数を削減しています。部門ごとに人手で集計・照合していた作業が、統合によって大きく減った例です。

出典・参考資料(1件)

食品メーカーの株式会社湖池屋は、在庫管理をエクセルに頼り、データを一元管理できる基盤がない状態でした。購買・在庫・販売・会計・CRMなどの業務をオープンソースERP「Odoo」で統合し、業績や在庫の状況を常に正確に把握できるようになっています。

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工具商社のトラスコ中山株式会社は、自社運用(オンプレミス)のSAP S/4HANAからクラウド基盤のSAP S/4HANA Cloud Private Editionへ基幹システムを移行し、2026年1月に新システム「パラダイス4」の稼働を開始しました。事業拡大に応じて処理能力を柔軟に広げられるクラウド基盤を選んだ例です。

出典・参考資料(1件)

これらに共通するのは、分断や老朽化を抱えた基盤を見直し、全社で同じ数字をリアルタイムに扱える状態を目指したことです。自社でも、まずどの業務の分断や制約が経営判断の妨げになっているかを見極めることが、事例を自社に引き寄せる出発点になります。

刷新手段としてのERP|基幹システム・ERP・情報系システムの違いと手段の選び方

刷新手段を検討する前に、言葉の整理をしておきます。基幹システム・ERP・情報系システムは混同されやすいため、違いを押さえておくと手段の比較がしやすくなります。

基幹システム・ERP・情報系システムの違い

基幹システムは、会計・販売・購買・在庫・生産・人事など、止まると業務が止まる中核の業務を支える仕組みの総称です。個別の業務ごとに構築されていることも多く、それぞれが別々に動いている状態がレガシー化の一因になります。

ERP(統合基幹業務システム)は、それらの基幹業務を一つのデータベースで統合して扱うパッケージを指します。会計で登録したデータが販売や在庫にそのまま連動するため、部門をまたいでデータが一貫します。基幹システムのDXで「データ基盤に統合する」手段の代表が、このERPです。

情報系システムは、意思決定の支援や情報共有を担う仕組みで、BI(データ分析)ツールやグループウェア、営業支援などが該当します。止まっても即座に業務が止まるわけではない点が基幹システムとの違いで、基幹システムに蓄えたデータを活用する側に位置づけられます。

刷新手段の種別と選び方

刷新手段は、大きく「どの基盤に載せ替えるか(基盤の選び方)」と「どこまで作り込むか(カスタマイズ方針)」の2つの軸で整理すると選びやすくなります。どれが優れているということではなく、自社の状況に応じて何を解決する道具かを見て選ぶのが基本です。

まず基盤の選び方です。既存システムの刷新(オンプレミス刷新・個別開発)は、自社の業務に合わせて作り込める一方、開発・保守の負担が大きく、再びレガシー化するリスクも抱えます。独自性の高い業務を持つ企業で検討される手段です。

同じ基盤の選び方として、クラウドERPは、クラウド上で提供されるERPを使う手段です。自社でサーバーを保有せずに利用でき、提供側が機能更新を続けます。データ基盤への統合とクラウド化を同時に進めやすく、段階的な拡張にも向きます。

次にカスタマイズ方針です。Fit to Standardは、ERPの標準機能に自社の業務を合わせていく進め方で、どの基盤を選ぶ場合にも関わります。カスタマイズを最小限に抑えることで、導入期間やコスト、将来の保守負担を抑えられ、過度な作り込みによるブラックボックス化も避けられます。

これらの手段ごとに、対応できる企業規模や業種、料金、導入期間には幅があります。具体的な製品を機能・料金で比較検討する段階に進む際は、選定の観点やサービスごとの違いを整理しておくと判断しやすくなります。

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基幹システムの刷新・DXを支えるサービス

ここからは、基幹システムの刷新手段として実際に着手できるサービスを紹介します。進め方で触れた「データ基盤への統合」「段階的な移行」を、どのように形にできるかの具体例としてご覧ください。

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サービス名Oracle NetSuiteOdoo導入・開発・業務統合支援
刷新手段のタイプ統合型クラウドERP(外資製品)オープンソースERP(Odoo)の導入支援
提供会社日本オラクル株式会社株式会社マルウェブ
提供形態クラウドERP(Oracle Cloud Infrastructure上で提供)クラウド(Odoo Online/Odoo.sh)・オンプレミス・ハイブリッド
費用年間ライセンス料(会社規模・ユーザー数・データ量で決定)+導入時の初期費用
いずれも金額非公開・個別見積もり
Odoo本体ライセンス: スタンダード22ドル/カスタム33ドル(1ユーザー・月、初回12か月の割引適用後)
導入支援費用は別途個別見積もり
導入期間要問い合わせ(標準機能を活用した短期導入に対応)標準機能中心で2〜3ヶ月、カスタマイズ・外部連携を含むと3〜6ヶ月
特徴会計・販売・購買・在庫からCRMまでを一つの基盤に統合
200か国以上・42,000社以上が利用、多言語・多通貨に対応
販売・会計・在庫・CRMなど必要なアプリだけ選んで追加
販売・在庫からのスモールスタートに対応、日本・ベトナムのハイブリッド開発体制
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る

ここで紹介するのは、刷新手段を形にするサービスの一例です。ERP製品そのものを機能・料金・選び方の観点から広く比較検討したい場合は、以下の記事で主要なERPを詳しく解説しています。

Oracle NetSuite(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuite GRCのウェブサイト

Oracle NetSuiteは、会計・販売・購買・在庫管理から営業支援、顧客管理(CRM)までを一つのクラウド基盤に統合する統合型クラウドERPです。日本では日本オラクル株式会社が提供し、世界では42,000社以上が利用しています(2026年10月時点、公式会社概要)。

出典・参考資料(1件)

もともとは、業務ごとにシステムが分かれてデータが分断され、経営者が全体の数字をつかみにくいという課題を出発点に開発されました。あらゆる業務を一つの基盤で一元管理し、どこからでもリアルタイムにデータを確認できる設計になっている点が特徴です。基幹システムのDXで目指す「データ基盤への統合」と「リアルタイムな可視化」を、ERPとして実現する手段といえます。

この「データ基盤への統合」という発想は、創業者自身が経営の現場で抱えた課題から生まれたものだといいます。日本オラクルの福宮氏は、開発の経緯を次のように語っています。

福宮氏
日本オラクル株式会社 理事 NetSuite事業統括 営業統括本部長
福宮氏
独自インタビューより

もともとは、創業者のEvan Goldberg(エバン・ゴールドバーグ)が自身の経営経験の中で感じた課題が出発点になっています。会計は会計のシステム、在庫は在庫のシステム、というように業務ごとにシステムが分かれていると、データが分断されてしまって、経営者が全体を見ようとしてもなかなか正確な数字がつかめません。実際に彼自身がその苦労をしていました。そこで、あらゆる業務を一つの基盤で一元管理して、経営者がどこからでもリアルタイムにデータを確認できるようにしたい、という発想からクラウドERPという形にたどり着きました。

導入のきっかけとして多いのは、古くなったオンプレミスのシステムを刷新したいケース、事業成長に伴ってバラバラになったシステムや業務を標準化したいケース、M&A後にグループ全体のシステムを統合してデータを可視化したいケースの3つです。本記事で扱ってきた刷新の動機とそのまま重なります。

料金は、会社規模に応じたライセンスに利用ユーザー数などを組み合わせた年間ライセンス料と、導入時の初期費用が基本で、金額は個別見積もりとなります。

Odoo導入・開発・業務統合支援(株式会社マルウェブ)

Odoo導入・開発・業務統合支援のウェブサイト

株式会社マルウェブが提供する、オープンソースERP「Odoo」の導入から運用定着までを支援するサービスです。Odooは、販売・会計・在庫・CRM・ECなど必要な機能をアプリとして選んで追加・統合できるクラウドERPで、使う業務だけを選んで始められる点が特徴です。

支援の範囲は、要件定義とFit&Gap分析で現状の業務フローを可視化するところから、カスタマイズ開発、ECや会計ソフトとの外部連携、データ移行、運用定着、公開後の運用支援までの工程に及びます。基幹システムのDXで欠かせないデータ移行や段階導入を、伴走しながら進められる構成になっています。

進め方としては、販売・在庫からスモールスタートし、慣れてきたら会計やCRMを段階的に追加する形を提案するなど、一度に全社へ広げないやり方を取れます。

導入期間の目安は、標準機能中心で2〜3ヶ月、カスタマイズや外部連携を含む場合で3〜6ヶ月です。料金は、Odoo本体のライセンス(スタンダード22ドル/ユーザー・月、カスタム33ドル/ユーザー・月、初回12か月の割引適用後、2026年10月時点)と、要件に応じて個別見積もりとなる導入支援費用に分かれます。

スモールスタートと全社統合をどう使い分けるかについて、同サービスを手がけるマルウェブの若林氏は、着手範囲の決め方を次のように説明しています。

株式会社マルウェブ
若林氏
独自インタビューより

たとえば「まずは販売と在庫と会計だけでスタートしましょう」という形で始めて、使い方に慣れてきたら会計やCRMを段階的に追加していく、といった進め方をご提案することもあります。カスタマイズがあまり必要でなければスモールスタートをお勧めしますし、業務が特殊な場合はカスタマイズに時間はかかりますが、そこはしっかり作り込んでいきましょうとご提案しています。いずれにしても、お客様の今の状態と予算感をヒアリングした上で決めていく形です。

まとめ

基幹システムのDXとは、レガシー化した基幹システムを全社のデータ基盤に作り替え、部門をまたいでデータを活用できる状態にすることです。単なる入れ替えとは異なり、業務とデータの持ち方そのものを見直すところまでが含まれます。

老朽化・サイロ化・ブラックボックス化というレガシー化の症状を抱えたまま放置すれば、2025年の崖やSAP 2027年問題に象徴されるリスクが現実になります。進め方は、現状の棚卸しからデジタル化、データ基盤への統合、段階的な移行へと順に積み上げ、対象を絞った最初の一手から小さく始めるのが基本です。

刷新手段としてのERPを具体的に比較検討する段階に進んだら、各サービスの機能・料金・導入期間を見比べて、自社の規模と課題に合うものを選んでいくことになります。MCB FinTechカタログでは、基幹システム刷新に使えるサービスの資料を無料で一括請求できます。

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よくある質問(FAQ)

Q. 基幹システムのDXとは何ですか?

A. 基幹システムのDXとは、レガシー化した基幹システムを全社のデータ基盤に作り替え、部門をまたいでデータを活用できる状態にすることです。古いサーバーやパッケージを新しくする「入れ替え」とは異なり、業務とデータの持ち方そのものを見直す点が特徴です。

経済産業省の「DXレポート」は、複雑化・老朽化した既存システムがDXの妨げになると指摘しており、基幹システムのDXはその妨げを取り除き、データを事業の武器にできる土台をつくる取り組みと言い換えられます。

Q. 基幹システムの刷新で語られる「2025年の崖」とは何ですか?

A. 「2025年の崖」とは、レガシーシステムを刷新できない場合に2025年以降で最大年12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じうるという、経済産業省が示した警鐘です。IT人材の引退やソフトウェアのサポート終了によるリスクの高まりを織り込んだ2018年時点の推計で、金額の大小よりも「放置するほど損失が積み上がる」という構造を自社に引き寄せて読むことが重要です。

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Q. SAP 2027年問題は自社の基幹システムに関係ありますか?

A. SAP ERP 6.0(SAP ECC)を使っている企業には関係します。標準保守が2027年末で終了し、有償の延長保守も2030年末までだからです。

SAP ECCを利用していなければ直接の影響はありませんが、自社の基幹システムの保守期限を確認しておくことは、刷新スケジュールを考えるうえで欠かせません。後継のS/4HANA(保守は2040年まで)とは別の話なので、混同しないよう注意してください。

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Q. 基幹システムとERPはどう違いますか?

A. 基幹システムは会計・販売・在庫など中核業務を支える仕組みの総称で、ERPはそれらの基幹業務を一つのデータベースで統合して扱うパッケージを指します。個別に構築された基幹システムはデータが分断されがちですが、ERPでは会計で登録したデータが販売や在庫にそのまま連動し、部門をまたいでデータが一貫します。基幹システムのDXで「データ基盤に統合する」代表的な手段が、このERPです。

Q. 基幹システムのDXは何から始めればよいですか?

A. まずは現状の棚卸し(業務・データの可視化)から始め、効果の大きい業務を見極めて対象を絞り込むのが基本です。どの部門がどのシステムを使い、どんなデータをどこで持っているかを書き出し、課題が深く、かつ他業務への波及が大きい領域を優先候補とします。全社を一度に変えるビッグバン方式は避け、小さく始めて成果を確かめながら範囲を広げる進め方が、着手のハードルとリスクを下げます。

Q. 基幹システムの刷新・DXにはどのくらいの費用がかかりますか?

A. 費用は「導入時の初期費用」と「利用を続ける間のライセンス料・保守費用」に大きく分かれ、企業規模・対象業務の範囲・カスタマイズの量によって大きく変わります。クラウドERPはユーザー数に応じた月額・年額ライセンスが中心で、オンプレミスの個別開発は作り込むほど開発・保守の負担が増します。多くの製品は金額が個別見積もりとなるため、対象範囲を絞ったうえで複数社の見積もりを比べるのが現実的です。

Q. 基幹システムのDX・刷新にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 期間は刷新の範囲と方式で大きく異なり、標準機能中心のスモールスタートなら数ヶ月、全社の統合やカスタマイズを伴う刷新では年単位に及ぶこともあります。たとえばオープンソースERPの導入支援でも、標準機能中心で2〜3ヶ月、外部連携やカスタマイズを含む場合で3〜6ヶ月が目安です。段階的に移行すれば、全体の完了を待たずに優先度の高い業務から先に効果を出せます。

Q. クラウドERPとオンプレミスの刷新、どちらを選べばよいですか?

A. 自社サーバーを持たず機能更新を提供側に任せたいならクラウドERP、独自性の高い業務を細かく作り込みたいならオンプレミスの刷新が向きます。クラウドERPはデータ基盤への統合とクラウド化を同時に進めやすく、段階的な拡張にも向きます。

一方、オンプレミスの個別開発は自由度が高い反面、開発・保守の負担が大きく、再びレガシー化・ブラックボックス化するリスクを抱えます。自社の業務の独自性と保守体制を基準に選ぶのが基本です。

Q. 基幹システムの刷新で推奨されるFit to Standardとは何ですか?

A. Fit to Standardとは、ERPの標準機能に自社の業務を合わせていく進め方で、カスタマイズを最小限に抑えられる点から推奨されます。過度な作り込みは導入期間とコストを押し上げ、将来のブラックボックス化を招きます。標準に業務を寄せることで、導入が速く保守負担も軽くなり、提供側の機能更新もそのまま受けやすくなります。独自性の強い業務だけを見極めて最小限に対応するのが現実的です。

Q. 基幹システムの移行中、今の業務は止まってしまいますか?

A. 段階的に移行すれば、全社の業務を止めずに刷新を進められます。優先度の高い業務から順に切り替え、旧システムと新システムをしばらく並行させて動作を確かめることで、切り替え時の影響を一部の範囲に抑えられます。全機能を一度に切り替えるビッグバン方式はトラブル時に業務全体が止まるため、移行中の業務を守るうえでも段階的な移行が基本になります。

Q. 中小企業でも基幹システムのDXは必要ですか?

A. 中小企業でも、部門ごとにシステムやExcelが分断してデータを集計し直している状態なら、基幹システムのDXの効果は十分に見込めます。必要な機能だけを選んで始められるクラウドERPなら、小さく導入して段階的に広げられるため、大企業のような大規模刷新を前提にする必要はありません。まずは最も分断が経営判断の妨げになっている業務から着手するのが現実的です。

Q. 基幹システムのDXを進めると、現場の業務はどう変わりますか?

A. 手作業での集計やシステム間のデータの突き合わせが減り、必要な数字をその場で確認できるようになります。一方で、既存の業務手順をそのまま残すのではなく、標準的なやり方に業務を合わせ直す場面も出てきます。現場が使わない仕組みにならないよう、業務を担う部門を早い段階から設計に巻き込むことが、定着するかどうかの分かれ目になります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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