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サイバーセキュリティ対策の費用はいくら?種類別の相場と中小企業の予算の目安・補助金を解説

サイバーセキュリティ対策の費用はいくら?種類別の相場と予算の目安のサムネイル画像

サイバー攻撃の被害は、もはや大企業だけの問題ではありません。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表する「情報セキュリティ10大脅威 2025」では、組織に対する脅威の1位に「ランサム攻撃による被害」が10年連続で選ばれており、中小企業も取引先を踏み台にする攻撃などで標的になっています。

出典・参考資料(1件)

一方で、いざ対策を始めようとすると「自社はいくらかければよいのか」という費用の相場が分からず、予算化が進まないという声は少なくありません。対策の種類が多く、価格もサービスごとに幅があるため、全体像をつかみにくいことが背景にあります。

本記事では、サイバーセキュリティ対策にかかる費用を対策の種類別の相場から整理し、中小企業の年間予算の目安、限られた予算で何から始めるべきかの優先順位、負担を下げる補助金、そして対策をしない場合の被害額までを解説します。

自社の状況に合った対策予算を具体的に見積もるための材料としてご活用ください。

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サイバーセキュリティ対策は種類ごとにいくら?費用相場の一覧

サイバーセキュリティ対策は、守る対象(端末・ネットワーク・Webサイト・IDなど)ごとに分かれており、対策の種類によって課金の単位も価格帯も異なります。まずは代表的な対策について、公式に公表されている料金の例をもとに費用の目安を一覧で確認します。

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ウイルス対策ソフト・EPP(端末保護)EDR(端末の検知・対応)UTM・マネージド監視(ネットワーク防御)WAF(Webサイト・アプリの防御)脆弱性診断セキュリティ教育・標的型攻撃メール訓練多要素認証・SSO(ID管理)
費用の目安1台あたり年額3,000円台〜6,000円程度(税抜・契約数で逓減)。月額定額型は1台あたり月額750円前後クラウド型は1ユーザーあたり月額449円〜。上位の統合製品は1ライセンス年額1万円台月額6,000〜10,000円程度+初期費用 数万〜数十万円(10台規模のマネージド型の公表例)従量課金型は小規模サイトで月額数十ドル(数千円)規模から。専用型クラウドWAFは要お問い合わせ自動診断ツール型は月額2万〜10万円規模。専門家による手動診断は1案件40万円〜、多くは要お問い合わせ自社運用の訓練キット型は年額15万〜40万円規模。無料で使えるサービスもあり専用サービスは1IDあたり月額300円〜1,500円程度。基盤機能に無料枠があるものも
主な課金単位・備考1台ごとの年額または月額。台数が増えるほど単価は下がる1ユーザー・1台ごとの月額/年額機器・監視の月額+初期費用。台数が増えると上がる。単体アプライアンスは要お問い合わせが多い従量課金(従量+固定)または月額。トラフィック量で変動対象のIP・FQDN数、診断の範囲・手法で変動訓練対象のID数などで区分した年額。外部委託は要お問い合わせが多い1IDごとの月額。既存のクラウドスイートに付帯する場合もある

※上記は2026年10月時点で各社公式料金ページ等に公表されていた価格の例です。プラン・契約数・構成により異なり、料金は改定される場合があります。

ここからは、各対策の内容と費用の目安を順に見ていきます。

ウイルス対策ソフト・EPP(エンドポイント保護)の費用相場

PCやサーバーといった端末をウイルス・マルウェアから守る、最も基本的な対策です。1台ごとに年額または月額で課金する形が一般的で、契約する台数が増えるほど1台あたりの単価は下がります。

たとえばESET PROTECT Entryは、6〜10ライセンスの場合で1ライセンス年額5,950円(税抜)、100〜249ライセンスでは3,240円(税抜)になり、さらに大量に契約すると単価は下がります。

月額定額で使える中小企業向けの「PCセキュリティみまもりパック」(PFU)は、1台あたり月額750円(税別)で初期費用もかかりません。1台あたりで見れば、月額換算で数百円から千円程度が一つの目安です。

出典・参考資料(2件)

EDR・UTM(検知対応とネットワーク防御)の費用相場

EDR(Endpoint Detection and Response)は端末での不審な挙動を検知して対応するしくみ、UTM(統合脅威管理)はファイアウォールやIPS(不正侵入防止)などを1台にまとめて社内ネットワークの出入口を守る機器です。いずれも、ウイルス対策ソフトだけでは防ぎきれない侵入や被害の拡大を抑える役割を担います。

EDRはクラウド型(SaaS)であれば1ユーザー月額数百円から導入でき、Microsoft Defender for Businessは1ユーザー月額449円(年払い・税抜)でEDRを含みます。ESET PROTECT Eliteは26〜49ライセンスで1ライセンス年額13,410円(税抜)です。

UTM機器の導入から監視までをまとめて任せるマネージド型は、IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の比較一覧で価格の例を確認できます。10台規模の例として、月額6,000〜10,000円程度に初期費用数万〜数十万円を加えた価格が公表されています(守る端末数が増えれば費用も上がります)。

一方、単体のEDR専用製品やUTMアプライアンスは、国内の公式サイトでは料金を公表せず個別見積もりとする例が多く見られます。

出典・参考資料(3件)

EDRは製品ごとに検知の方式や運用を任せられる範囲が異なり、NDR(ネットワーク側で脅威を検知するしくみ)との役割分担も踏まえて選ぶ必要があります。料金を非公開とする製品も多く、相場だけでは絞り込みにくい領域です。具体的な製品の比較や、エンドポイントとネットワークのどちらの層から整備すべきかは、以下の記事で詳しく解説しています。

WAF(Webサイト・アプリの防御)の費用相場

WAF(Web Application Firewall)は、自社のWebサイトやアプリケーションを狙う攻撃を遮断するしくみです。クラウド事業者が従量課金で提供する形と、専用のクラウドWAFを月額契約する形があります。

従量課金型では、AWS WAFがWeb ACL 1つあたり月額5.00ドル、ルール1つあたり月額1.00ドル、受信リクエスト100万件あたり0.60ドルといった単価を公表しています(リージョンや利用量で変動します)。小規模なサイトであれば月額数十ドル(日本円で数千円)規模から利用できます。

一方、国内の専用型クラウドWAF(攻撃遮断くん、Scutumなど)は、守るサイトのトラフィック量に応じて料金が変わるため、公式サイトでは価格を公表せず要お問い合わせとしています。

出典・参考資料(1件)

脆弱性診断の費用相場

脆弱性診断は、システムやWebアプリに攻撃の糸口となる弱点がないかを点検する対策です。ツールで自動的に診断するサービスと、専門家が手作業で診断するサービスがあります。

自動診断ツール型では、Securify(スリーシェイク)が月額5万円(年額60万円・1 IP/FQDN。FQDNは診断対象のドメイン名)から、VAddy(ビットフォレスト)がProfessionalプラン月額19,800円(税別・標準3 FQDN)などの料金を公表しています。

専門家による手動のWebアプリ診断・プラットフォーム診断は、対象の規模で費用が変わるため要お問い合わせとする事業者が多く見られます。料金を公式に示す例では、VAddyの手動診断オプションが1プランあたり40万円から(リクエスト数の上限あり)、プラットフォーム診断が1回15万円(3 IPまで)です。

出典・参考資料(2件)

脆弱性診断は、ツールで自動的に診断するか専門家が手作業で診断するか、どの範囲を対象にするかで費用が変わります。診断方法ごとの違いや無料で使えるツール、サービスの選び方をさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事で比較しています。

セキュリティ教育・標的型攻撃メール訓練の費用相場

標的型攻撃メールの多くは従業員がメールを開く操作を起点に被害が広がります。訓練やeラーニングは、技術的な対策だけでは防ぎきれないこの入口を小さくする対策です。

自社で運用する訓練キット型では、Securiax(旧・標的型攻撃メール対応訓練実施キット)が、訓練対象のID数に応じてMini年額15万円からLarge年額40万円(いずれも税別)で提供されており、無料プランも用意されています。

トレンドマイクロの「Phish Insight」のように、無料で使える標的型攻撃メール訓練のシミュレーションもあります(料金や提供条件は公式の最新情報をご確認ください)。外部に委託するeラーニングや訓練の多くは、内容や対象人数で費用が変わるため、公式サイトでは要お問い合わせとしています。

出典・参考資料(1件)

多要素認証・SSO(ID管理)の費用相場

パスワードの漏えいや使い回しを突く攻撃に備え、ログイン時に複数の要素で本人確認する多要素認証や、一度の認証で複数のクラウドサービスを使えるシングルサインオン(SSO)を導入します。1IDあたり月額で課金する形が一般的です。

Microsoft Entra IDは、P1プランが1ユーザー月額1,049円、P2プランが1,499円(いずれも年間契約・税抜)で、多要素認証とシングルサインオンを含みます。「トラスト・ログイン」(GMOグローバルサイン株式会社)は、SSOプロが1IDあたり月額300円(税抜)からで、基盤機能には無料枠も用意されています。

Microsoft 365やGoogle Workspaceを利用している場合は、プランに付帯する認証機能を活用できることもあります。

出典・参考資料(2件)

このように、対策の種類によって課金の単位も価格帯も異なり、利用規模に応じて要お問い合わせとなるサービスも少なくありません。個々の単価がわかったところで、次は年間でどの程度の予算を見込めばよいのかを、公的な調査のデータから見ていきます。

中小企業のサイバーセキュリティ対策費用は年間いくらが相場か

対策ごとの単価に続いて気になるのが、年間で合計いくらを見込めばよいかという総額の目安です。これには「他社がいくらかけているか」という実態のデータが参考になります。

IPAが2025年5月に公表した「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」(回答数4,191社)では、直近過去3期の情報セキュリティ対策への投資額について、次の傾向が報告されています。

傾向は IT 投資額とほぼ同じで、投資をしていないという回答が最も多く(2,623 件)62.6%と 6 割を超えている。投資をしている場合でも投資額が増えるほど件数は少なくなり、最も多いものが 100 万円未満(856 件)で 20.4%という状況である。

出典:2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書|IPA(独立行政法人情報処理推進機構)

この調査が示すのは、6割を超える中小企業が情報セキュリティにまったく投資しておらず、投資している企業でも最も多い層は3期を通じて100万円未満にとどまるという実態です。設問は単年ではなく直近過去3期分の投資額(IT機器や社員への教育等を含む)である点に注意すると、1年あたりに均した金額はさらに小さくなります。

目安としてよく「IT予算の10〜15%程度をセキュリティに充てる」「売上高の約1%」といった比率が紹介されることもあります。ただし、これらの比率に公的な統計の裏づけはなく、提示元によって数値も幅があります。自社の予算を考える出発点としては、公的調査が示す投資額の分布と、次に示す単価の積み上げを基準にしたほうが実態に近い見積もりができます。

では、自社ではどのくらいを見込めばよいのでしょうか。本記事の前半で挙げた公開料金の例をもとに、従業員30人規模の企業が基本的な対策一式をそろえる場合をおおまかに試算すると、次のようになります。

  • 端末保護・EDR:クラウド型を1人月449円で30人分とすると、年間約16万円
  • 多要素認証・SSO:1IDあたり月300円〜で30人分とすると、年間約11万円〜
  • ネットワーク監視(マネージド型):月6,000〜10,000円程度で、年間約7万〜12万円+初期費用 数万〜数十万円
  • 標的型攻撃メール訓練:自社運用の訓練キットで、年間15万円〜

合計すると、基本的な一式で年間おおよそ50万〜80万円程度に、別途 初期費用として数万〜数十万円を見込むのが一つの目安です。導入する対策の組み合わせや契約数、選ぶサービスによって上下するため、出発点としての目安と考えてください。

自社の人数で見積もるときは、課金のしかたの違いを踏まえると当てはめやすくなります。端末保護や多要素認証のように1人あたりで課金される対策は、従業員数にほぼ比例して増減します。一方、ネットワーク監視やメール訓練のように人数への依存が小さい対策は、規模が変わっても費用の振れ幅が比較的小さく収まります。

この水準は、多くの中小企業が実際に投じている額(最も多い層が3期で100万円未満)を上回ります。裏を返せば、基本的な対策一式をそろえるには、今の平均的な投資額では足りていない企業が多いということです。

最低限から始めるなら、まず端末保護とデータのバックアップだけでも年間数万円から着手でき、予算に応じて認証の強化や監視を足していく進め方もできます。無理のない範囲で始め、優先度の高い対策から広げることが現実的です。

ただし「他社が投資していないから自社も不要」という判断は危険です。投資をしていない企業が多いことは、裏を返せば対策が手薄な企業が狙われやすい状況を意味します。次章以降で解説する被害額と見比べながら、自社にとって必要な水準を考えることが重要です。

限られた予算で何から始める?対策の優先順位

すべての対策を一度に導入できる企業は多くありません。限られた予算で効果を出すには、守るべき情報資産と、被害が起きたときの影響の大きさを基準に、取り組む順番を決めることが大切です。

経済産業省とIPAが策定した「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0」は、経営者が認識すべき第1の原則として、サイバーセキュリティを経営上のリスクととらえ、経営者主導で対策を進める必要性を示しています。

経営者は、サイバーセキュリティリスクが自社のリスクマネジメントにおける重要課題であることを認識し、自らのリーダーシップのもとで対策を進めることが必要

出典:サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0「経営者が認識すべき3原則」(原則1)|IPA

この考え方を踏まえると、優先順位は費用の安い順でも導入の手軽な順でもなく、被害の起きやすさと起きたときの打撃の大きさから逆算して決めるのが筋です。中小企業では、次のような順序で検討すると無理がありません。

限られた予算でサイバーセキュリティ対策を進める優先順位を5段階で示した図。STEP1は現状と守るべき資産の把握、STEP2は被害が最も大きい入口を塞ぐ対策(ウイルス対策・EDR・UTMとバックアップ)、STEP3は多要素認証・SSOによる認証の強化、STEP4は教育・標的型攻撃メール訓練、STEP5は定期的な脆弱性診断による継続的な点検。被害の起きやすさと打撃の大きさから逆算して順番を決める。
  1. 現状と守るべき資産の把握:どの端末・サーバー・データが業務の要で、どこに穴があるかを洗い出します。何を守るかが定まらないまま製品を買うと、費用対効果が読めません。
  2. 被害が最も大きい入口を塞ぐ:組織向け脅威の1位はランサム攻撃です。端末を守るウイルス対策ソフトやEDR、社内ネットワークの出入口を守るUTM・ファイアウォールなど、侵入と被害拡大を防ぐ対策を優先します。あわせて、暗号化されても事業を戻せるようにバックアップを別経路で確保します。
  3. 認証の強化で乗っ取りを防ぐ:パスワードの使い回しや漏えいを突く攻撃に備え、多要素認証やシングルサインオン(SSO)でクラウドサービスへのログインを守ります。
  4. 人の対策(教育・訓練):標的型攻撃メールの多くは従業員の操作が起点です。訓練やeラーニングで、技術だけでは防ぎきれない入口を小さくします。
  5. 継続的な点検:脆弱性は日々新しく生まれます。定期的な脆弱性診断で、導入した対策が機能し続けているかを点検します。

自社に情報システムの専任者がいない場合は、個々の製品を自前で運用するより、監視や診断、復旧までをまとめて任せられるサービスを選ぶことで、人手をかけずに上記の順序をカバーできます。

とりわけ、すでに複数の対策を導入している企業ほど、それらが実際に機能し続けているかを点検する視点が欠かせません。中小企業向けに脆弱性診断を提供する企業の担当者は、現場で寄せられる相談について次のように述べています。

北口氏
株式会社SYNCHRO 取締役CMO
北口氏
独自インタビューより

すでに対策をされている企業の場合は、UTM(ファイアウォール機能付きルーター)やアンチウイルスソフト、EDR、NDRなどが導入されています。ただ、それらが適切に機能しているかどうかは、やはりチェックしたくなるものです。すり抜けてきたウイルスの被害や、ファイアウォールが無効化されてエンドポイントに攻撃が届くような事例も増えていますので、現状の対策がどの程度機能しているかを客観的に診断したい、というニーズが多いです。

サイバーセキュリティ対策に使える補助金・助成金

対策費用の負担を下げる手段として、国の補助金を活用できる場合があります。代表的なものが、中小企業・小規模事業者のIT導入を支援する「IT導入補助金」です。

IT導入補助金2025には「セキュリティ対策推進枠」が設けられており、公募要領では補助額と補助率が次のように定められています。

セキュリティ対策推進枠:補助額 5万円~150万円/機能要件 独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービス/補助率 中小企業:1/2以内 小規模事業者:2/3以内/補助対象経費 サービス利用料(最大2年分)

出典:IT導入補助金2025 公募要領(セキュリティ対策推進枠)|中小企業庁 サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局

補助の対象になるのは、IPAが認定・公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスの利用料(最大2年分)です。任意のセキュリティ製品が何でも対象になるわけではないため、導入を検討するサービスがリストに掲載されているかを事前に確認する必要があります。

出典・参考資料(1件)

ここで示したのは「IT導入補助金2025」の内容で、補助金の名称・補助率・上限額・対象経費は年度ごとに見直されます。2026年の公募からは制度の枠組みが変わることも見込まれているため、いま申請できる枠や次回の公募時期は、必ず事務局の公式サイトで最新の公募要領を確認してください。自治体が独自に実施するセキュリティ関連の助成金が利用できる地域もあります。

費用をかけないとどうなる?被害額との比較と「投資」としての考え方

対策費用を判断するうえで欠かせないのが、対策をしなかった場合に生じる被害額との比較です。ここを押さえておくと、経営層に対して「なぜこの出費が必要か」を数字で説明できます。

かけない場合の被害額・復旧費用の実データ

JNSA(NPO日本ネットワークセキュリティ協会)が被害組織へ実施したアンケート調査(2023年、速報版)では、被害の種類ごとの平均被害額が次のように報告されています。

ランサムウェア感染被害 2,386万円/エモテット感染被害 1,030万円/ウェブサイトからの情報漏えい(クレジットカードおよび個人情報) 3,843万円/ウェブサイトからの情報漏えい(個人情報のみ) 2,955万円/その他のサイバー攻撃被害 473万円

出典:サイバー攻撃被害組織のアンケート調査(速報版)|NPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)

この平均額は大企業・団体の回答も含む数値ですが、ランサムウェア感染では平均2,386万円、復旧対応に要した組織の内部工数は平均27.7人月に上ります。被害額の中心は身代金ではなく、調査・復旧・対応にかかるコストである点が特徴です。

個別の費用項目では、同協会のインシデント損害額調査レポートをもとにIPAがまとめた損害額のイメージ(参考値)が参考になります。主な項目を抜粋します。

事故原因・被害範囲調査費用 300~400 万円/コールセンター費用 3 ヶ月の対応で 700~1,000 万円/システム復旧費用 対応規模等によって大きく異なるが、数百~数千万円のケースも/再発防止費用 対応規模等によって大きく異なるが、数百~数千万円のケースも/行政損害 個人情報保護法上の罰金は最大 1 億円

出典:2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 報告書(表2-5、JNSA「インシデント損害額調査レポート 第2版」より)|IPA

中小企業自身のデータでも、同じIPAの実態調査で11.4%の中小企業がサイバー被害を経験したと回答しています。被害額は50万円未満が最も多いものの、なかには1,000万円以上1億円未満の被害を受けた企業もあり、1社あたりの平均売上高(約2.1億円)を踏まえると、経営を揺るがしかねない規模です。

出典・参考資料(1件)

「コスト」ではなく「投資」として考える

ここまでの数字を並べると、対策費用と被害額の大きさが釣り合っていないことがわかります。年間の対策費用が数十万円から100万円台の水準であるのに対し、ランサムウェア被害では復旧や調査だけで数百万円から数千万円規模の支出が現実に発生しています。

サイバーセキュリティの対策費用と、対策をしなかった場合の被害額を並べて比較した図。対策費用は基本的な一式で年間数十万〜100万円台(別途、初期費用として数万〜数十万円)。対策をしない場合のランサムウェア被害は復旧・調査だけで数百万〜数千万円に達し、1件あたり平均2,386万円という調査結果もある。対策費用は損失を抑えるための投資として考える。

つまり、セキュリティ対策の費用は、万一の損失を抑えるための支出ととらえると判断しやすくなります。経営ガイドラインが示すように、サイバーセキュリティを経営リスクの一つとして位置づけ、どこまでの損失なら自社が耐えられるかという視点で予算を決めることで、過不足のない投資額が見えてきます。経営層へ説明する際も、被害額の実データを示すことが、予算を承認してもらうための具体的な根拠になります。

費用対効果を数字で示すことに加えて、社内で予算を実際に承認してもらうまでの進め方も、導入の現場では課題になります。ID管理サービスを提供する企業の担当者は、稟議を通すための説明の工夫について次のように語っています。

平澤氏
株式会社インターナショナルシステムリサーチ 営業本部マーケティング部
平澤氏
独自インタビューより

一番の動機は「ユーザーのパスワード管理の負担解消」ですが、それだけでは予算化が難しいケースも少なくありません。そこで「業務効率化」と「セキュリティリスクの排除」という2つのメリットを提示することで、稟議がスムーズに通るというケースが多いようです。

中小企業が導入しやすいサイバーセキュリティ対策サービス

相場や予算の目安を把握したら、次は自社に合った具体的なサービスの比較です。ここでは、専任のセキュリティ担当者を置きにくい中小企業でも導入しやすい、守る対象の異なる代表的なサービスを、認証・ネットワーク・診断の3方向から取り上げます。公開料金のあるものは実額を、個別見積もりのものはその旨を示します。

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サービス名CloudGate UNOEye"247" Safety Zone USAV ⅥKATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ
提供会社株式会社インターナショナルシステムリサーチ株式会社フーバーブレイン株式会社SYNCHRO
守る対象・対策の種類ID・認証(SSO/多要素認証/アクセス制限/ID管理)ネットワーク+端末の統合(UTM/EPP・EDR/業務可視化/メール訓練)予防・復旧・補償の統合(脆弱性診断/隔離バックアップ/サイバー保険)
費用の目安月額400〜600円/ユーザー(税抜)。初期費用は別途(要問い合わせ)要問い合わせ(クライアント数に応じた個別見積もり)月額1台1,250円〜(100ノード以下は年額90万〜150万円)
課金単位1ユーザー(ID)ごとの月額クライアント数・ライセンス期間での見積もり(10〜200台規模)ノード(端末)数・診断頻度
導入のしやすさ30日間の無料トライアルあり販売代理店への問い合わせが必要最短2週間で利用開始・設置10分。初回無料相談あり
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約

1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNOの公式サイト。ゼロトラスト時代のSSO・アクセス制限・認証強化・ID管理プラットフォームとして紹介されている。

CloudGate UNO(クラウドゲートウノ)は、株式会社インターナショナルシステムリサーチが自社開発する、シングルサインオン(SSO)・多要素認証・アクセス制限・ID管理を一つにまとめたクラウド型のID管理サービスです。パスワードの使い回しや漏えいを突く攻撃に備え、クラウドサービスへのログインを守る認証の強化に向いています。

月額料金は1ユーザーあたり400円から600円(税抜)で、フィッシングに強いパスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証を全プラン・全ユーザーが制限なく利用できます。端末・場所・時間の3つの軸でアクセスを細かく制限でき、30日間の無料トライアルも用意されています(2026年10月時点の公式料金ページによる)。

出典・参考資料(1件)

2. Eye”247″ Safety Zone USAV Ⅵ(株式会社フーバーブレイン)

Eye247 Safety Zone USAV Ⅵの公式サイト。UTM・エンドポイントセキュリティ・業務可視化を1つにまとめた統合パッケージとして紹介されている。

Eye”247″ Safety Zone USAV Ⅵ(ユーエスエーブイ シックス)は、ネットワークと端末の対策を1契約にまとめて導入できる、株式会社フーバーブレインの統合パッケージです。社内ネットワークの出入口を守るUTM(Check Point製アプライアンス)、端末を守るエンドポイントセキュリティ(EPP/EDR)、業務可視化ソフト、標的型攻撃メール訓練を束ねています。

専任のIT担当者がいない企業や、取引先からセキュリティ対策を求められている企業を想定しており、クライアント数10台から200台規模の構成に対応します。複数の対策を個別に契約・運用する手間をかけずに、ネットワークと端末の防御を一度に整えられる点が特徴です。価格はクライアント数などに応じた個別見積もりとなるため、販売代理店への問い合わせが必要です。

出典・参考資料(1件)

3. KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージの公式サイト。予防・復旧・補償の3本柱で紹介されている。

株式会社SYNCHROが提供するKATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージは、脆弱性診断(予防)・隔離経路へのバックアップ(復旧)・サイバー保険(補償)を1つにまとめたサービスです。ネットワークの内部から月1回のペースで脆弱性を点検し、検出した問題点と対策案をレポートで提示したうえで、改善を伴走支援します。

月額料金は1台あたり1,250円からで、100ノード以下の場合は年額90万円から150万円が目安とされています(ノードはサーバー・ネットワーク機器・複合機・PCなど、ネットワークに接続された端末の総数を指します)。最短2週間で利用を開始でき、既存のUTMやEDRが正しく機能しているかを客観的に点検したい企業にも適しています。

出典・参考資料(1件)

ここで取り上げた3サービスは、守る対象の異なる対策の一例です。端末・ネットワーク・IDなど守る対象ごとに、どのタイプの対策を選び、代表的なサービスをどう比較・検討すればよいかは、以下の記事で体系的に解説しています。自社に合う対策を本格的に比較検討する際にご覧ください。

まとめ

サイバーセキュリティ対策の費用は、対策の種類ごとの単価、年間の総額、そして対策をしなかった場合の被害額という3つの視点で見ると、自社に必要な水準が見えてきます。公的な調査では多くの中小企業が投資を控えている一方で、ひとたびランサムウェア被害に遭えば、調査・復旧・対応にかかる費用だけで平均2,000万円を超えるという調査結果もあります。

限られた予算では、被害の大きい入口を塞ぐ対策から優先的に取り組み、IT導入補助金などの制度も活用しながら、無理のない範囲で継続することが大切です。自社の規模や課題に合ったサービスを比較し、過不足のない対策予算を検討してください。

よくある質問(FAQ)

Q. サイバーセキュリティ対策費用とは、どのような費用ですか?

A. サイバーセキュリティ対策費用は、導入時にかかる初期費用と、月額・年額で継続的に支払うランニング費用(ライセンス料・運用監視費)に大きく分かれます。守る対象(端末・ネットワーク・Webサイト・IDなど)ごとに対策の種類が分かれており、「1台あたり」「1IDあたり」「1案件あたり」など課金の単位も価格帯も異なります。そのため総額は、導入する対策の組み合わせと利用規模によって決まります。

Q. 中小企業のサイバーセキュリティ対策費用は、年間いくらが相場ですか?

A. IPAの調査では、投資している中小企業で最も多いのは直近過去3期で「100万円未満」の層(20.4%)で、6割を超える企業はそもそも投資をしていないのが実態です。ただしこれは単年ではなく過去3期分の投資額のため、1年あたりに均すとさらに小さくなります。

「IT予算の10〜15%」といった比率もよく紹介されますが公的な裏づけはなく、公的調査が示す投資額の分布を出発点にするほうが、実態に近い見積もりができます。

出典・参考資料(1件)

Q. 限られた予算では、サイバーセキュリティ対策を最低限どこから始めればよいですか?

A. まず守るべき情報資産を洗い出したうえで、被害の大きいランサムウェアの侵入口を塞ぐ端末対策(ウイルス対策ソフト・EDR)とデータのバックアップから始めるのが基本です。費用の安い順や導入の手軽な順ではなく、被害の起きやすさと起きたときの打撃の大きさから逆算して優先順位を決めます。

そのうえで、認証の強化(多要素認証・SSO)、従業員への教育・訓練、定期的な脆弱性診断へと段階的に広げると無理がありません。

Q. サイバーセキュリティ対策の費用を抑えると、安全性は下がりますか?

A. 費用を抑えること自体が、安全性の低下に直結するわけではありません。機器を買い切りで持つ代わりにクラウド型(サブスクリプション)へ切り替えると、運用の負担を抑えつつ常に最新の状態を保てます。むしろ、更新されない古い機器やサポートの切れたソフトを使い続けるほうがリスクは高くなります。

コストを見直す際は、現状の契約費用・運用工数・過去のインシデントの有無を棚卸しし、更新時期の近いものから切り替えを検討するとよいでしょう。

Q. 社内にIT・セキュリティの専任者がいなくても対策を運用できますか?

A. 専任者がいなくても運用できます。監視や対応までを事業者に任せられるマネージド型のサービス(不審な挙動の検知・対応を代行するEDRや、監視込みのマネージド型UTMなど)を選べば、人手をかけずに24時間の監視体制を整えられます。複数の製品を自前で運用する負担が大きい場合は、端末・ネットワーク・診断などをまとめて任せられる統合パッケージ型のサービスも選択肢になります。

Q. サイバーセキュリティ対策費用に使える補助金はありますか?

A. 中小企業は「IT導入補助金2025」のセキュリティ対策推進枠で、補助額5万〜150万円・補助率1/2以内(小規模事業者は2/3以内)の支援を受けられます。ただし対象になるのは、IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスの利用料(最大2年分)に限られ、任意のセキュリティ製品が何でも対象になるわけではありません。

補助率・上限額・対象経費は年度ごとに見直されるため、申請前に事務局の公式サイトで最新の公募要領を確認してください。

出典・参考資料(2件)

Q. サイバーセキュリティ対策としてサイバー保険には加入すべきですか?

A. サイバー保険は、技術的な対策で防ぎきれなかった被害の損失を補うための備えで、対策費用の代わりではなく、組み合わせて検討する位置づけです。ランサムウェア被害では、復旧や調査にかかる費用が平均で2,000万円を超えるという調査もあり、対策で被害の確率を下げたうえで、残るリスクを保険で移転するという考え方が有効です。

脆弱性診断・バックアップ・サイバー保険をまとめて提供するパッケージ型のサービスもあります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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