後継者が親族にも社内にも見つからない、あるいは引退を見据えて会社の引き継ぎを考え始めた。そんなとき、事業承継を一緒に進めてくれるサービスには、後継者を探すマッチングプラットフォーム、M&Aアドバイザリー、公的な無料相談窓口、取引金融機関、税理士・会計系のコンサルティングなど、性格の異なる相談先がいくつもあります。
選択肢が多いぶん、「結局どこに相談すればいいのか」「自社の規模や状況にはどの種類が合うのか」が分かりにくく、最初の一歩を踏み出せないという声は少なくありません。手数料の相場や進め方が見えないまま動くのも不安があります。
本記事では、事業承継を支援するサービスを5つの種類に分けて横断的に比較し、後継者の有無・会社の規模・親族内か第三者承継かといった状況から、自社が最初に当たるべき相談先を判断できるように整理しました。各種類の特徴・向いているケース・費用の考え方・無料で使える公的窓口まで解説します。
中小企業の経営者が、事業承継の相談先・依頼先を選ぶための判断材料としてご活用ください。
また、自社の状況に合う事業承継サービスの種類が30秒でわかる診断ツールも用意しています。どの相談先から当たればよいか迷う場合は、あわせてご利用ください。
目次
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事業承継とは?承継の3つの方法と全体像
ここでは、サービスの種類を選ぶ前提として、事業承継の全体像と自社の承継タイプを整理します。
事業承継とは、会社の経営を後継者へ引き継ぎ、事業を続けていくことを指します。引き継ぐ対象は社長の座だけでなく、自社株式や事業用資産、取引先との関係、従業員の雇用、技術やノウハウまで多岐にわたります。誰に引き継ぐかによって、必要な手続きも相談すべき相手も変わってきます。
事業承継とM&Aの違い
事業承継とM&Aは混同されがちですが、目的の重心が異なります。事業承継は「会社を後継者に引き継ぎ、事業を存続させること」が目的であり、その手段の一つとして、社外の第三者へ会社を譲渡するM&A(合併・買収)が含まれます。
M&Aは事業承継の一手段であり、後継者が親族や社内に見つからない場合の「第三者承継」を実現する方法として用いられます。後継者がいる場合はM&Aを使わずに承継を進めることもあり、自社がどの状況かによって、必要なサービスの種類が決まります。
承継の3つの方法と、後継者の有無による分かれ道
事業承継は、誰に引き継ぐかによって大きく3つの方法に分かれます。中小企業庁や事業承継・引継ぎ支援センターでも、相談内容を「親族内・役員や従業員・第三者」という区分で整理しています。

- 親族内承継:子どもや親族を後継者とする方法。自社株式の贈与・相続に伴う税負担への対策が論点になりやすく、税理士・会計系の支援と相性が良いです。
- 親族外承継(役員・従業員承継):役員や従業員に引き継ぐ方法。後継者による株式買い取り資金の手当てや、経営体制づくりの支援が必要になります。
- 第三者承継(M&A):社外の第三者へ会社や事業を譲渡する方法。後継者が見つからない場合の選択肢で、譲渡先探しから交渉・契約までを支援するサービスを使います。
後継者が決まっている場合は、親族内承継・親族外承継を前提に税務や経営体制の支援を選びます。後継者が決まっていない場合は、第三者承継(M&A)を視野に、後継者を探すサービスや譲渡を支援するサービスが候補になります。この分かれ道が、次に見るサービスの種類選びの出発点です。
事業承継を支援するサービスの種類(5タイプ)
ここからは、事業承継を進めるために使える相談・依頼先を、性格の違いで5つの種類に分けて解説します。それぞれ得意とする承継の局面や費用の考え方が異なります。
1. 後継者を探すマッチングプラットフォーム
売り手(譲り渡したい経営者)と買い手(譲り受けたい個人・企業)を、オンライン上で引き合わせるサービスです。後継者が親族や社内に見つからない中小・小規模事業者が、第三者承継の相手を広く探すのに向いています。
多くのサービスが売り手は無料で登録でき、成約時に手数料が発生する料金体系をとります。自分で案件を見て相手を探す自走型のため、費用を抑えやすい一方、交渉や契約の実務は自力での対応が中心になります。
2. M&Aアドバイザリー/仲介
譲渡先の探索から企業価値の評価、条件交渉、契約の締結までを、専任の担当者が一貫して支援するサービスです。確実に成約させたい場合や、交渉を専門家に任せたい場合に向いています。
売り手と買い手の間に立つ「仲介型」と、どちらか一方の利益のために助言する「FA(ファイナンシャルアドバイザー)型」があり、後者は利益相反が起きにくい立場です。マッチングプラットフォームより費用は高くなりやすいものの、実務の負担を大きく減らせます。
料金は成約額に応じた成功報酬が中心です。成功報酬は譲渡額に料率を掛けて計算する「レーマン方式」(譲渡額が大きい部分ほど料率が下がる段階制。たとえば5億円以下の部分は5%など)が一般的で、別に最低手数料が設けられていることもあります。相談先を選ぶ際は、後述するM&A支援機関登録制度のデータベースで手数料基準を確認できます。
3. 公的な無料相談窓口
国が設置する相談窓口で、事業承継をどう進めるべきか方向づけに迷う段階で、まず無料で相談できる先です。代表的なのが、全国の都道府県に置かれた事業承継・引継ぎ支援センターと、日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援です。
「事業承継・引継ぎ支援センター」は、国が設置する公的相談窓口です。親族内への承継も、第三者への引継ぎも、中小企業の事業承継に関するあらゆるご相談に対応します。
出典:事業承継・引継ぎ支援センター|中小企業基盤整備機構
事業承継・引継ぎ支援センターは、産業競争力強化法に基づき、各地の商工会議所などが国からの委託を受けて設置している公的機関です。相談は無料・秘密厳守で受けられます。ただし外部の専門家派遣による支援などを実施する場合には、費用負担が生じることがあります。
公的窓口は中立的で費用を抑えやすい反面、成約まで民間のように一気通貫で伴走するわけではなく、必要に応じて登録された民間の支援機関につなぐ役割も担います。「何から始めればよいか」を整理する最初の一歩として活用するのが適しています。
出典は以下のとおりです。
4. 金融機関(銀行・信用金庫)の承継支援
取引のある銀行・信用金庫が、法人顧客向けに事業承継の診断・計画策定・後継者マッチング・M&A支援を提供しているケースです。日ごろの取引で自社の財務状況を把握している相手に相談できる点が強みになります。
地域の金融機関は全国のネットワークや提携するM&A仲介会社を通じて譲渡先を探すこともあり、まずは自社のメインバンクに相談窓口があるかを確認するとよいでしょう。対応内容や費用は金融機関ごとに異なるため、条件は取引先に直接確かめるのが確実です。
5. 税理士・会計系の承継対策コンサル
自社株の評価、事業承継税制の活用、持株会社化など、親族内承継における税務・財務面の対策に強いのが、税理士・会計系のコンサルティングです。後継者が決まっていて、株式の引き継ぎに伴う税負担を抑えたい場合に向いています。
承継計画の策定や後継者の育成まで伴走するタイプもあり、料金は顧問契約型とスポット契約型に分かれます。親族内承継を中心に考える場合は、早い段階から相談しておくと、株価が上がる前の対策など選択肢が広がります。
【誰に相談すべき?】自社の状況別の選び方
ここからは、自社の状況に照らして、最初に当たるべき相談先の種類を考えます。判断の軸になるのは、後継者の有無・会社の規模・親族内か第三者承継か・急ぎ度の4点です。
後継者が決まっていない場合は、第三者承継(M&A)が主な選択肢になります。何から始めるか整理したい段階なら、まず公的な無料相談窓口で方向づけを受けるのが安全です。自分で相手を探してコストを抑えたい小規模事業なら後継者マッチングプラットフォーム、確実に成約させたい・交渉を任せたいならM&Aアドバイザリー/仲介が向いています。
後継者が決まっている場合は、親族内承継・親族外承継を前提に、自社株の評価や事業承継税制を扱える税理士・会計系のコンサルを中心に選びます。後継者による株式買い取り資金が課題なら、取引金融機関の承継支援もあわせて検討するとよいでしょう。
会社の規模も判断材料になります。小規模・個人事業はマッチングプラットフォームや公的窓口の相性が良く、一定の規模があり譲渡額も大きくなる場合は、企業価値評価や交渉を担えるM&Aアドバイザリー/仲介の支援が生きます。急いで進めたい事情があるなら、伴走してくれる民間の専門家に早めに相談するのが現実的です。
実際には複数の種類を組み合わせることもあります。たとえば、公的窓口で方向を定めてから民間のアドバイザリーに依頼する、あるいは税理士の助言を受けながらM&Aを進める、といった進め方です。次の診断ツールで、自社に合う種類の当たりをつけてみてください。
【無料診断】自社に合う事業承継サービスの種類を30秒でチェック
いくつかの質問に答えるだけで、自社の状況に合う事業承継サービスの種類と候補を確認できます。
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【比較表】事業承継サービスを種類別に比較
主要な事業承継サービスを、種類・対応する承継の局面・費用の考え方・無料相談の可否などの軸で比較します。サービス名をタップすると、各サービスの詳しい紹介にリンクします。
| サービス名 | BATONZ(バトンズ) | TRANBI(トランビ) | relay(リレイ) | M&A Lead | 日本M&Aセンター | 事業承継・引継ぎ支援センター | 事業承継マッチング支援(日本公庫) | 取引のある銀行・信用金庫 | 事業承継コンサルティング(チェスター) | 事業承継センター |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 種類 | マッチングプラットフォーム | マッチングプラットフォーム | マッチングプラットフォーム | M&Aアドバイザリー/仲介 | M&Aアドバイザリー/仲介 | 公的な無料相談窓口 | 公的な無料相談窓口 | 金融機関の承継支援 | 税理士・会計系コンサル | 税理士・会計系コンサル |
| 向いているケース | 後継者不在の中小・小規模事業者 (年商1億円未満の案件も多数) 幅広い買い手を自力で探す入口 | 500万円以下の小規模案件・個人の買い手が中心 費用を抑えて自力で買い手を探したい 小規模事業者 | 地域の零細・中小企業 居抜き・後継者採用など少額の承継も対応 (オープンネーム型・売り手に専任担当) | 後継者不在で第三者承継を 確実に進めたい中小企業 (売主専属FAが一貫支援) | 第三者承継を仲介型で 確実に進めたい中小〜上場企業 (全業種・全国対応) | 「何から始めるか」を整理したい段階 親族内・従業員・第三者承継を 中立的に相談できる(全国48カ所) | 日本公庫(国民生活事業)の融資残高がある (完済後8年以内を含む)中小・小規模事業者が中心 引き合わせが主で実務は別途専門家 | 自社の財務を把握するメインバンクに まず相談したい中小企業 (後継者の株式買い取り資金の相談も) | 親族内承継で自社株評価・事業承継税制・ 持株会社化など税務対策を進めたい (後継者が決まっている場合向き) | 承継計画の策定から後継者育成まで 長期で伴走してほしい(親族内・従業員承継中心) M&A売却前提の相談先ではない |
| 費用の考え方 | 売り手は着手金・月額・成約手数料が無料 (会社譲渡はプレミアムサポート必須、税込220万円〜) 買い手は成約価格の2%(税込2.2%、最低税込38.5万円〜) | 売り手無料・成約手数料無料 買い手は月額定額制 (税込1,078円〜21,780円の4プラン) | 売り手は掲載〜マッチングが無料 (人材採用型・デューデリジェンス(DD)は別費用) 買い手は成約時に譲渡金額の8%(税込8.8%、下限税込38.5万円)※専任サポート型で料率は高め | 完全成功報酬制(着手金・中間金・月額0円) 成功報酬は譲渡対価×レーマン方式 (最低2,000万円)。買主からは受領しない | 着手金100万〜500万円+ レーマン方式成功報酬(売り手最低2,000万円、税抜) 売り手・買い手の双方が負担する仲介型 | 相談は無料・秘密厳守 (外部専門家の派遣など一部支援は費用負担あり) 第三者承継は登録民間M&A支援機関(有償)につなぐ | 引き合わせは無料 契約書作成・DD等の実務費用は別途 (専門家への依頼を見込む) | 取引先向けの相談は無料のことが多い M&A支援は提携仲介会社の手数料が発生 (対応内容・費用は金融機関ごとに異なる) | 初回面談後に見積提示(プラン別定額は非公開) 純資産1億円以上の法人は初回面談無料 それ以外は来社3万円(税込)/時間・出張10万円(税込)/回+交通費 | コンサル料金は公式に明示なし・個別見積り (後継者塾は税込396,000円など 講座は定額) |
| 無料相談 | ● | ● | ● | ● | 要問い合わせ | ● | ● | 要問い合わせ | △純資産1億円以上の法人は無料 | 要問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイトをご覧ください | 公式サイト | 公式サイト |
主要な事業承継サービスの紹介
ここからは、種類ごとに代表的な事業承継サービスの特徴を紹介します。自社の状況に合う種類が見えてきたら、その中の候補を具体的に見比べてみてください。金融機関(銀行・信用金庫)は取引先ごとに窓口や内容が異なるため、ここでは種類としての特徴にとどめ、まずは自社のメインバンクに確かめてみてください。
後継者を探すマッチングプラットフォーム
売り手が無料で登録でき、幅広い相手から後継者・譲渡先を探せるサービスです。
1. BATONZ(バトンズ)(株式会社バトンズ)

M&A仲介大手の日本M&Aセンターから2018年に分社化した株式会社バトンズが運営する、M&A・事業承継のマッチングプラットフォームです。公式トップでは掲載案件1万件以上を掲げ、個人・個人事業主から法人まで、年商1億円未満の小規模な案件も多く扱います。
売り手は着手金・月額・中間金・成約手数料のいずれも無料で、相手探しから交渉までを自分で進められます。ただし株式譲渡(会社譲渡)はプレミアムサポートの利用が必須で、成約価格1,000万円未満でも税込220万円の費用がかかります。買い手は成約価格の2%(税込2.2%)、最低税込38.5万円からのシステム利用料が発生します。
自力での交渉が中心ですが、必要に応じて成約実績のある会計士・税理士やM&A専門家へ相談・依頼できる仕組みもあります。後継者が親族や社内に見つからない中小・小規模事業者が、幅広い買い手候補の中から第三者承継の相手を探す入口として使えます。
2. TRANBI(トランビ)(株式会社トランビ)

個人や中小零細企業の利用を想定した、売り手無料・成約手数料無料のM&Aマッチングプラットフォームです。運営する株式会社トランビは、500万円以下の小規模案件や個人の買い手を明確に対象に据えており、掲載案件は3,500件以上あります。
買い手の料金体系に特徴があり、成約額に応じた成功報酬ではなく月額定額制をとります。交渉できる案件規模に応じてベーシック(税込4,378円)からエンタープライズ(税込21,780円)まで3プランがあり、学習・相場把握用のエントリー(税込1,078円)も用意されています。
交渉は売り手と買い手の当事者間で進めるのが基本で、専任担当を付けたい場合は売り手向けの有償マッチングエージェント(成約時に税込33万円)などを選びます。中小企業庁のM&A支援機関に登録し、東京都や岡山市の事業承継支援事業の受託実績もあります。後継者不在の小規模事業者が、自力で買い手を探しながら費用を抑えたい場合に向きます。
3. relay(リレイ)(株式会社ライトライト)

事業主の実名や事業への想いを記事として公開し、後継者を募る「オープンネーム事業承継」を掲げるマッチングプラットフォームです。宮崎市に本社を置く株式会社ライトライトが運営し、地域の零細・中小企業を中心に、後継者募集案件を1,002件以上掲載しています(2026年10月時点)。
売り手は案件の掲載からマッチングまで無料で利用でき、専任担当者が付きます。買い手は着手金・中間金が無料で、成約時に譲渡金額の8%(税込8.8%、下限税込38.5万円)の手数料がかかります。居抜きや設備の譲渡、後継者を採用で迎える形まで、少額の承継にも対応します。
自治体・商工団体・金融機関や事業承継・引継ぎ支援センターと連携し、100以上の公共団体と組んで地域の後継者不在事業者を掘り起こしている点も特徴です。電話(0120-417-007、平日9時〜18時)でも相談でき、仲介会社が扱いにくい地方の小規模な第三者承継の入口として使えます。
M&Aアドバイザリー/仲介
譲渡先探しから交渉・契約までを専任担当が支援し、確実に成約させたい場合に向くサービスです。
4. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadは、M&A Lead株式会社が運営する、売り手(譲渡企業)だけに付く売主専属のM&Aアドバイザリーです。売り手と買い手の間に立つ仲介型とは異なり、買主からは手数料を受け取らず、譲渡価格や従業員の雇用条件など売り手側の条件の実現に向けて交渉するFA(ファイナンシャルアドバイザー)型の立場をとります。
料金は完全成功報酬制で、着手金・中間金・月額報酬はいずれも0円、報酬は譲渡が完了したときの成功報酬のみです。成功報酬は譲渡対価に応じたレーマン方式(5億円以下の部分5%〜100億円超の部分1%)で、最低手数料は2,000万円が設定されています。
後継者が見つからない事業承継にも対応し、自社の買い手候補に加えて、他社のアドバイザーや買い手側FA、地方銀行を中心とする金融機関のネットワークから相手を探します。企業価値の評価から条件交渉、最終契約まで売り手の窓口として一貫して支援し、相談は無料・全国対応です。
5. 日本M&Aセンター(株式会社日本M&Aセンターホールディングス)

日本M&Aセンターは、株式会社日本M&Aセンターホールディングスが手がける、1991年創業のM&A仲介会社です。東証プライム市場に上場(証券コード2127)し、中堅・中小企業の事業承継・M&Aを中心に扱っています。売り手と買い手の双方の間に立ち、両者から手数料を受け取る仲介型のため、売り手だけに付くFA型とは立場が異なります。
全国の地方銀行の約9割、信用金庫の約8割と提携し、会計事務所や士業を含むネットワークから案件を集める体制が強みです。累計の成約件数は11,000件を超え、2020年から5年連続でM&A成約件数のギネス世界記録に認定されています(いずれも公式サイト記載)。
料金は、提携仲介契約を結ぶ時点の着手金(簿価総資産額に応じて100万〜500万円)と、最終契約時のレーマン方式による成功報酬で構成され、売り手側の成功報酬は最低2,000万円です(いずれも税抜)。売り手・買い手の双方が費用を負担する点が、片方からのみ受け取るFA型との違いになります。
第三者承継(M&A)を軸に進めると決めたら、アドバイザリー会社を仲介型・FA型や案件規模で見比べて選ぶのが近道です。ここで挙げた以外の会社も同じ軸で比較したい場合は、以下の記事が参考になります。
公的な無料相談窓口
国が設置する窓口で、無料・秘密厳守で事業承継の進め方を相談できます。
6. 事業承継・引継ぎ支援センター(中小企業庁)

産業競争力強化法に基づき、各地の商工会議所などが国の委託を受けて設置する公的な相談窓口です。全国47都道府県に48カ所が置かれ、親族内承継から従業員承継、第三者承継(M&A)まで幅広く相談できます。
相談は無料・秘密厳守で受けられますが、外部の専門家派遣による支援などを行う場合は費用負担が生じることがあります。中立的な立場で方向づけの助言を受けられ、第三者承継では登録された民間のM&A支援機関(有償)につなぐ役割も担います。
全国の窓口で第三者承継(M&A)の成約を支援しているほか、後継者不在の会社と創業希望者を引き合わせる後継者人材バンクも運営しており、「何から始めればよいか」を整理する最初の一歩として活用できます。
7. 事業承継マッチング支援(株式会社日本政策金融公庫)

事業を譲り渡したい中小企業・小規模事業者と、創業や事業拡大のために譲り受けたい個人・法人を、政府系金融機関である日本政策金融公庫が無料で引き合わせるマッチングサービスです。2026年(令和8年)3月末時点で、譲渡登録6,649件・譲受登録14,370件の候補が集まっています。
譲り受け側は事業規模や借入の要件なく登録できますが、譲り渡し側は原則として日本公庫(国民生活事業)の融資残高がある方(完済後8年以内を含む)が対象です。借入残高がない場合でも、商工会議所や税理士などの紹介があれば利用できます。
業種15区分・地域7区分などの条件で後継者を募る企業を検索し、希望する相手に申し込む仕組みです。引き合わせが主な役割で、契約書の作成やデューデリジェンスといった実務まで公庫が支援するかは公式に明示されていないため、必要に応じて専門家への依頼を見込んでおくとよいでしょう。
税理士・会計系の承継対策コンサル
自社株評価・事業承継税制など、親族内承継の税務・財務対策に強いサービスです。
8. 事業承継コンサルティング(株式会社チェスターコンサルティング)

相続税を専門とする税理士法人チェスターを実務母体とし、株式会社チェスターコンサルティングが窓口を務める事業承継コンサルティングです。親族内承継で論点になりやすい自社株式の評価や税負担への対策を、税務の専門家が担います。
対策メニューは、事業承継税制の適用診断、持株会社スキーム、名義株などの株主整理、合併・分割といった組織再編まで7つに分かれ、会社の規模や相談内容に応じたオーダーメイド提案としています。金融機関や顧問税理士が作成したレポートを第三者の視点で検証するセカンドオピニオンも、単独で依頼できます。
費用は初回面談後に見積もりを提示する方式で、プランごとの定額料金は公開していません。純資産1億円以上の法人は初回面談が無料(全国どこでも出張費・交通費も不要)で、該当しない場合は来社3万円(税込)/時間、出張10万円(税込)/回に交通費実費が加わります。
9. 事業承継センター株式会社

2011年設立の事業承継センター株式会社は、中小企業の経営者・後継者を対象に、承継計画の策定から後継者の育成までを長期で伴走する支援会社です。経営革新等支援機関にも認定されています。
コンサルティングでは、事業承継計画書の作成支援を軸に、株式の分配や相続の相談、相続・税務・財務支援、経営戦略や労務・法務の制度づくりまでを扱います。後継者を育てる「後継者塾」(全11回・計44時間、396,000円/税込)や、支援人材向けの資格講座も運営している点が、税務特化のコンサルとは異なる特徴です。
事業承継コンサルティングの料金は公式サイトに明示がなく、個別相談を通じて見積もる方式です。M&Aの仲介・FAを主業とはせず、親族内・従業員への承継や後継者育成に重きを置く伴走型のため、第三者へ売却する前提の相談先とは性格が異なります。
事業承継サービスの費用の考え方(種類別)
事業承継サービスの費用は、種類によって考え方が大きく異なります。高額な手数料を避けたい場合も、種類ごとの相場観を押さえておくと判断しやすくなります。
- 後継者マッチングプラットフォーム:売り手は登録・成約手数料が無料のことが多く、買い手が手数料や月額を負担します。自走するぶん費用は抑えやすい傾向です。
- M&Aアドバイザリー/仲介:譲渡額に応じたレーマン方式の成功報酬が中心で、最低手数料(数千万円規模のこともあります)が設定されている場合もあります。着手金や中間金の有無はサービスにより異なります。
- 公的な無料相談窓口:相談は無料です(外部の専門家派遣など一部の支援で費用負担が生じる場合があります)。まず方向づけを受けるコストは抑えられます。
- 金融機関の承継支援:取引先向けの相談は無料のことが多く、M&A支援では提携する仲介会社の手数料が発生します。対応内容・費用は金融機関ごとに異なります。
- 税理士・会計系コンサル:顧問契約型とスポット契約型があり、対策の範囲によって費用が変わります。料金を公開せず見積り提示とする会社が多いため、依頼範囲(診断のみか、組織再編まで含めるか)を伝えて事前に見積りを確認するのが前提です。初回相談を無料や定額の面談費で受けられる会社もあります。
M&Aの手数料は、中小企業庁が定める中小M&Aガイドラインが、手数料の考え方や契約時の留意点を示しています。相談先が同ガイドラインを遵守しているか、またM&A支援機関登録制度のデータベースで手数料の算定基準を確認できるため、費用の妥当性を見極める手がかりになります。
事業承継税制・自社株評価など税務で早めに備える観点
親族内承継では、自社株式を後継者へ引き継ぐ際の相続税・贈与税が大きな論点になります。こうした税負担を軽減する仕組みとして、事業承継税制があります。
法人版事業承継税制には「特例措置」と「一般措置」があり、2026年10月時点で、特例措置は期間限定の制度とされています。一定の要件のもとで、非上場株式等にかかる相続税・贈与税の納税が猶予される仕組みです。
非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(「法人版事業承継税制」といいます。)には、租税特別措置法第70条の7の6から第70条の7の8までの各規定による措置(「特例措置」といいます。)と同法第70条の7の2から第70条の7の4までの各規定による措置(「一般措置」といいます。)の2つの制度があり、特例措置については、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの10年間の制度とされています。
出典:No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)|国税庁
個人事業者向けには、別途、個人版事業承継税制もあります。いずれも適用には細かな要件があり、特例措置では期限までの計画提出などが前提になります。自社が使えるか、どのタイミングで動くべきかは、税理士・会計系のコンサルや公的窓口に早めに相談して確認するのが安全です。
出典は以下のとおりです。
事業承継の相談・依頼の進め方と流れ
最後に、相談・依頼した後の進め方を押さえておきましょう。種類によって細部は異なりますが、おおまかな流れは次の順で進みます。

- 相談・現状把握:公的窓口や専門家に相談し、自社の財務・株式の状況と後継者の有無を整理します。
- 方向づけ:親族内承継・親族外(従業員)承継・第三者承継(M&A)のどれを目指すかを決めます。
- 第三者承継(M&A)を選ぶ場合:企業価値の評価 → 譲渡先の探索・マッチング → 交渉 → 基本合意・最終契約、の順で進みます。
- 親族内・従業員承継を選ぶ場合:承継計画の策定 → 自社株の評価と税務対策(事業承継税制の検討)→ 後継者の育成・経営体制の引き継ぎ、が中心になります。
株価が上がる前の対策や後継者の準備には時間がかかります。引退を意識し始めたら、まず無料で相談できる公的窓口から動き出し、必要に応じて民間のサービスへつなぐと、コストを抑えつつ全体像をつかめます。
まとめ:自社の状況から事業承継サービスを選ぶ
事業承継を支援するサービスは、後継者を探すマッチングプラットフォーム、M&Aアドバイザリー/仲介、公的な無料相談窓口、金融機関の承継支援、税理士・会計系の承継対策コンサルの5種類に大きく分かれます。どれが合うかは、後継者の有無・会社の規模・親族内か第三者承継か・急ぎ度で決まります。
自社に合う種類は、本記事の診断ツールや種類別の比較表で当たりをつけられます。気になるサービスの資料を取り寄せ、対応範囲や費用を具体的に見比べて、最初に相談する先を決めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 事業承継サービスとは何ですか?
A. 事業承継サービスとは、会社の経営を後継者へ引き継ぐ過程を支援する相談・依頼先の総称で、後継者を探すマッチングプラットフォーム、M&Aアドバイザリー/仲介、公的な無料相談窓口、金融機関の承継支援、税理士・会計系の承継対策コンサルの5つに大きく分かれます。
それぞれ得意とする承継の局面(親族内承継か第三者承継か)や費用の考え方が異なります。自社の状況に合う種類を見極めて、最初に当たる相談先を選ぶことが出発点になります。
Q. 事業承継は誰に相談すればよいですか?
A. 事業承継の相談先は、何から始めるか整理したい段階ならまず公的な無料相談窓口、後継者が不在で譲渡を進めたいなら後継者マッチングやM&Aアドバイザリー、親族内で引き継ぐなら税理士・会計系のコンサルが基本です。
取引のある銀行・信用金庫に承継支援の窓口があれば、自社の財務を把握している相手として候補になります。相談先が定まらない場合は、中立的な公的窓口で方向づけを受けてから、必要に応じて民間の専門家につなぐ進め方が安全です。
Q. 事業承継を無料で相談できる窓口はありますか?
A. 事業承継は、国が全国の都道府県に設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」や、日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援で、無料・秘密厳守で相談できます。
ただし、外部の専門家派遣による支援など一部のケースでは費用負担が生じることがあります。民間でも、M&Aアドバイザリーや税理士系コンサルで初回相談を無料とする先があり、方向づけの段階ではコストをかけずに複数に当たれます。
Q. 後継者が見つからない場合、どの事業承継サービスを使えばよいですか?
A. 後継者が親族にも社内にもいない場合は、社外の第三者へ引き継ぐ「第三者承継(M&A)」が主な選択肢で、自分で相手を探すなら後継者マッチングプラットフォーム、交渉を専門家に任せたいならM&Aアドバイザリー/仲介が向きます。
費用を抑えて小規模な承継を進めたいならマッチング、確実に成約させたい・一定規模の譲渡を扱うならアドバイザリーが適しています。まず公的窓口で方向を定めてから民間サービスへ進む方法もあります。
Q. 事業承継サービスの費用はどのくらいかかりますか?
A. 事業承継サービスの費用は種類によって考え方が異なり、公的窓口は相談無料、マッチングプラットフォームは売り手登録無料・成約時手数料型、M&Aアドバイザリー/仲介は譲渡額に応じた成功報酬、税理士系コンサルは顧問・スポットの契約料金が中心です。
M&Aの成功報酬にはレーマン方式が使われ、最低手数料が設定されていることもあります。税理士系コンサルは事前に見積りを提示するのが一般的で、費用が不透明なまま進む心配は小さくなります。
Q. 事業承継で高額な手数料を避けるにはどうすればよいですか?
A. 高額な手数料を避けるには、中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」を遵守する相談先を選び、M&A支援機関登録制度のデータベースで手数料の算定基準を確認するのが有効です。
複数の相談先から見積りを取り、着手金・中間金・成功報酬の有無と料率を比べると、費用の妥当性を見極めやすくなります。最初の相談を無料の公的窓口で済ませれば、初期段階のコストも抑えられます。
Q. 事業承継の準備はいつから始めるべきですか?
A. 事業承継の準備は、引退を意識し始めたらできるだけ早く着手するのが望ましく、後継者の育成や自社株の評価・税務対策には数年単位の時間がかかります。
特に親族内承継では、株価が上がる前に対策を講じられるかどうかで選択肢が変わります。気になった時点で公的窓口や専門家に相談しておくと、余裕をもって計画を立てられます。
Q. 事業承継税制は自社にも適用できますか?
A. 事業承継税制を自社に適用できるかは、会社・後継者・承継のしかたが細かな要件を満たすかどうかで決まり、一律には判断できません。
法人版事業承継税制には特例措置と一般措置があり、特例措置は期間限定の制度で、期限までの計画提出などが前提とされています(2026年10月時点)。適用の可否や動くべきタイミングは、税理士・会計系のコンサルや公的窓口に早めに確認するのが安全です。
Q. 顧問税理士がいても、別の事業承継の相談先に依頼してよいですか?
A. 顧問税理士がいる場合でも、自社株評価や事業承継税制など専門性の高い対策だけを、事業承継に強い別の相談先へスポットで依頼することは一般的に可能です。
多くのコンサルは顧問税理士と連携し、承継に関わる部分だけを支援する形に対応しています。顧問契約を切り替える必要はなく、作成済みのレポートを第三者の視点で検証するセカンドオピニオンとして使う方法もあります。
Q. 社長本人でなくても、後継者や家族が事業承継を相談できますか?
A. 事業承継は、社長本人に限らず、後継者候補や家族、経理・管理部門の担当者が代わりに相談・情報収集することもできます。
実際に、後継者候補や担当者からの問い合わせを受け付けている相談先は少なくありません。関係者を交えて進めるほうが、承継後の経営体制づくりや合意形成がスムーズになります。
Q. 会社の規模が小さくても事業承継サービスは使えますか?
A. 会社の規模が小さくても、個人事業主や年商1億円未満の小規模な案件を対象とする後継者マッチングプラットフォームや、無料の公的相談窓口を利用できます。
小規模・個人事業はマッチングや公的窓口と相性が良く、一定の規模があり譲渡額が大きくなる場合は、企業価値評価や交渉を担えるM&Aアドバイザリー/仲介の支援が生きます。規模を理由に相談をためらう必要はありません。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















