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会社分割とは?吸収分割・新設分割の違いと事業譲渡との比較・手続き・税務をわかりやすく解説

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複数の事業の一つを子会社に移したい、採算の合わない部門を切り離したい、あるいは会社を次の世代や第三者に引き継ぎたい。こうした場面で検討の候補にあがるのが「会社分割」です。ただ、言葉は聞いたことがあっても、事業譲渡と何が違い、自社のケースではどちらを選ぶべきかが分かりにくいという声は少なくありません。

会社分割は会社法に定められた組織再編の手法で、事業に関する権利義務を「包括的に」別の会社へ承継させる点に特徴があります。契約や雇用、債務が個別の同意なしでまとめて移るため、事業譲渡とは手続きも税務も大きく異なります。

本記事では、会社分割の仕組みと4つの種類を整理したうえで、事業譲渡・合併・株式譲渡との違い、メリットと注意点、手続きの流れと期間、従業員の労働契約の扱い、税務、費用の目安までを順に解説します。読み終えたときに、自社が会社分割に向くのか、次に誰へ相談すればよいのかの見当がつく状態を目指します。

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会社分割とは?事業の権利義務を包括的に承継する組織再編

会社分割とは、会社がその事業に関して持つ権利義務の全部または一部を、別の会社に承継させる会社法上の組織再編です。承継先がすでにある会社か、新しく設立する会社かによって、それぞれ「吸収分割」「新設分割」と呼ばれます。

二十九 吸収分割 株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。
三十 新設分割 一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。

出典:会社法 第2条第29号・第30号|e-Gov 法令検索

条文が「株式会社又は合同会社」と定めているとおり、会社分割を行えるのは株式会社と合同会社に限られます。合名会社・合資会社は分割会社になれません。

「包括承継」とは(個別の同意なしでまとめて移る)

会社分割の最大の特徴は、承継の対象を「包括的に」引き継げる点にあります。分割契約や分割計画で承継すると定めた事業については、資産・債務だけでなく、取引先との契約や従業員の雇用契約もまとめて承継会社へ移ります。

会社法第758条は、吸収分割で承継する対象として「資産、債務、雇用契約その他の権利義務」を定めています。契約の相手方や従業員から一つひとつ個別の同意を取り付けなくても、分割の効力が生じれば権利義務が移転する点が、後述する事業譲渡との決定的な違いです。

出典・参考資料(1件)

会社分割が活用される主な場面

会社分割は、次のような場面で使われます。いずれも「事業の単位で切り出し、別の会社へ移す」という共通点があります。

  • M&Aによる事業の売却:特定の事業だけを切り出して他社へ譲り渡す
  • グループ内の再編:事業ごとに子会社化して、持株会社体制へ移行する
  • 不採算部門の切り離し:採算の合わない事業を別会社に移し、本体の経営再建を図る
  • 事業承継:後継者に引き継ぐ事業と、そうでない事業を分けて承継する

会社分割の種類|吸収分割・新設分割×分社型・分割型の4分類

会社分割は、2つの軸で整理すると全体像がつかめます。1つは承継先が「既存の会社か、新設する会社か」という軸、もう1つは分割の対価を「分割する会社が受け取るか、その株主が受け取るか」という軸です。

分社型(物的分割)
対価は分割会社が受け取る
分割型(人的分割)
対価は分割会社の株主が受け取る
吸収分割
既存の会社へ承継
分社型吸収分割分割型吸収分割
新設分割
新しく設立する会社へ承継
分社型新設分割分割型新設分割

吸収分割と新設分割の違い(承継先が既存会社か新設会社か)

吸収分割は、切り出した事業をすでに存在する別の会社(吸収分割承継会社)に承継させる方法です。M&Aで他社へ事業を移すときによく使われます。手続きは承継会社との間で「吸収分割契約」を締結して進めます。

新設分割は、切り出した事業を新しく設立する会社(新設分割設立会社)に承継させる方法です。事業の子会社化や持株会社体制への移行で使われます。相手方がいないため契約ではなく、単独で「新設分割計画」を作成して進めます。

出典・参考資料(1件)

分社型分割(物的分割)と分割型分割(人的分割)の違い

分社型分割は、分割の対価(承継会社の株式など)を分割する会社自身が受け取る形です。切り出した事業が子会社になり、分割した会社がその親会社になるイメージで、「物的分割」とも呼ばれます。

分割型分割は、対価を分割する会社の株主が受け取る形です。切り出した事業が、元の会社と並ぶ兄弟会社のような位置づけになり、「人的分割」とも呼ばれます。どちらを選ぶかで、後述する税務(みなし配当など)の扱いも変わります。

分社型分割(物的分割)と分割型分割(人的分割)の違いを示した図。分社型は分割の対価を分割する会社自身が受け取り、切り出した事業が子会社となって親子関係になる。分割型は対価を分割する会社の株主が受け取り、元の会社と切り出した事業が兄弟関係になる。

会社分割と事業譲渡・合併・株式譲渡の違い【一括比較表】

事業や会社を移す手法は、会社分割のほかに事業譲渡・合併・株式譲渡があります。どれを選ぶかは、承継の方法・従業員や債権者への影響・税務で変わります。まず主要な違いを一覧で整理します。

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比較項目承継の方法債権者の同意従業員の雇用消費税簿外債務の引き継ぎ許認可手続きの負担対価の受け取り手
会社分割包括承継(事業単位でまとめて移る)不要(債権者保護手続きは必要)原則自動で承継(労働契約承継法)不課税承継範囲の簿外債務を引き継ぐ可能性当然には承継されない(業法ごとに扱いが異なる)重い(特別決議・債権者保護・登記)分社型は会社/分割型は株主
事業譲渡個別承継(契約ごとに移す)債務の移転には原則必要転籍に個別の同意が必要課税対象引き継ぐ範囲を限定しやすい原則、新規取得が必要契約ベースだが個別同意の手間原則、事業を譲る会社
合併包括承継(会社まるごと)不要(債権者保護手続きは必要)自動で承継不課税すべて引き継ぐ業法により承継の扱い重い消滅会社の株主
株式譲渡株式が移るだけで資産負債は会社に残る不要変わらない(雇用主の会社が存続)非課税(株式の譲渡)会社ごと引き継ぐ会社が存続するため原則そのまま比較的軽い株式を売る株主

各手法の一般的な特徴を整理したものです。個別の事案では要件・例外により扱いが異なります。

会社分割と事業譲渡の違い(包括承継か個別同意か)

会社分割と事業譲渡の最大の違いは、承継の方法です。会社分割は組織再編行為で、事業に属する権利義務が包括的に移ります。これに対し事業譲渡は売買に近い取引行為で、移す資産・契約を一つひとつ特定し、契約の相手方の同意を得ながら個別に移転します。

この違いは消費税にも表れます。事業譲渡は「対価を得て行う資産の譲渡」にあたるため課税対象ですが、会社分割は資産の譲渡等に該当しないため不課税です。一方、会社分割は包括承継ゆえに想定外の簿外債務を引き継ぐリスクがあり、引き継ぐ範囲を限定しやすい事業譲渡との使い分けが必要になります。

出典・参考資料(1件)

会社分割と合併の違い(法人格が残るか)

合併は、消滅する会社の権利義務の全部を存続会社や新設会社に承継させ、消滅会社の法人格そのものがなくなります。これに対し会社分割は、事業の全部または一部を移すだけで、分割した会社の法人格は存続します。「会社をまるごと一つにする」のが合併、「事業を切り出して分ける」のが会社分割です。

会社分割と株式譲渡の違い

株式譲渡は、会社の株式を売買することで経営権を移す方法です。会社の資産・負債・契約は会社に残ったままで、株主が変わるだけなので手続きは比較的シンプルです。ただし、承継したくない債務や不要な事業も会社ごと引き継ぐことになります。特定の事業だけを切り出したい場合は、株式譲渡ではなく会社分割や事業譲渡が選ばれます。

自社はどちらを選ぶべきか(判断の目安)

選択の目安は、次のように整理できます。事業の単位でまとめて移したい、従業員の雇用も含めて円滑に引き継ぎたいなら会社分割が向きます。承継する資産や債務の範囲を細かく限定したいなら事業譲渡、会社そのものを引き継いでもらいたいなら株式譲渡が候補になります。

自社の状況から絞り込む場合は、次のような対応が目安になります。

  • 引き継ぐ事業に簿外債務が隠れていないか不安なら、承継範囲を限定しやすい事業譲渡が無難です
  • 従業員をまとめて引き継ぎたいなら、原則自動承継の会社分割が向きます
  • 許認可を切らさずに事業を移したいなら、その事業の根拠法で承継の扱い(認可承継の可否)を先に確認しておくことが望まれます
  • 株式を対価にして買収資金を抑えたいなら、会社分割が選択肢になります

ただし、簿外債務の有無・許認可の扱い・税務上の有利不利は個別の事情で変わります。自社のケースでどの手法が最適かは、次に挙げるメリット・デメリットや税務の節もあわせて判断してください。

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会社分割のメリット

会社分割が選ばれる理由を、4つの観点から整理します。事業を切り出す側と引き受ける側の双方に利点があるため、それぞれどちらの立場の利点かもあわせて示します。

株式を対価にできるため買収資金が不要

これは事業を引き受ける(承継する)側の利点です。会社分割では、承継会社が発行する株式を対価にできます。現金での買収と違い、まとまった買収資金を用意しなくても事業を取得できるため、承継する側の資金負担を抑えられます。

権利義務を包括承継でき移転手続きが簡便

これは切り出す側・引き受ける側の双方にかかわる利点です。包括承継のため、承継対象に含めた契約や雇用は個別の同意なしで移ります。取引先が多数にのぼる事業でも、契約を一件ずつ巻き直す必要がないため、事業譲渡に比べて移転の手間を抑えられます。

一部の事業だけを切り出せる

これは事業を切り出す側の利点です。会社全体ではなく、特定の事業単位で切り出せます。成長事業だけを子会社化する、不採算部門だけを切り離すなど、残す事業と移す事業を選べる柔軟さがあります。

買収によるシナジー効果を得やすい

承継する側にとっては、既存事業と組み合わせやすい事業だけを取り込めます。人材や顧客基盤を一体で引き継げるため、事業の立ち上げ直しが不要で、統合後の相乗効果を得やすい手法です。

会社分割のデメリット・注意点(落とし穴)

メリットの裏側には、事前に把握しておくべき注意点があります。見落とすとトラブルにつながりやすい4点を解説します。

簿外債務を包括的に承継するリスク

包括承継は手続きが簡便な反面、承継範囲に含まれる債務をまとめて引き継ぎます。帳簿に表れていない保証債務や未払い残業代などの簿外債務が、分割後に承継会社の負担として顕在化することがあります。承継前のデューデリジェンス(買収監査)で債務の実態を精査することが欠かせません。

許認可の扱い(事前認可で承継・なければ新規取得)

事業に必要な許認可は、会社分割をしても当然に承継されるとは限らず、業法ごとに扱いが異なります。たとえば建設業では、2020年(令和2年)10月施行の改正建設業法により、会社分割についてあらかじめ国土交通大臣等の認可を受ければ建設業の許可を承継できる制度が設けられました(建設業法第17条の2)。認可を受けない場合は、承継会社で改めて許可を取得し直す必要があります。

許認可の承継可否や必要な手続きは事業分野ごとに違うため、対象事業の根拠法を事前に確認しておくことが重要です。

出典・参考資料(1件)

詐害的会社分割と債権者保護

債務を分割会社に残したまま優良な事業だけを別会社に移すと、分割会社に残された債権者(残存債権者)が害されることがあります。こうした詐害的な会社分割に対して、会社法は残存債権者を保護する規定を設けています。

第一項の規定にかかわらず、吸収分割会社が吸収分割承継株式会社に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って吸収分割をした場合には、残存債権者は、吸収分割承継株式会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。

出典:会社法 第759条第4項・第764条第4項|e-Gov 法令検索

残存債権者を害することを知って分割した場合、残存債権者は承継会社に対して、承継した財産の価額を限度に債務の履行を請求できます。恣意的な事業の切り出しは、後からこの請求を受けるリスクがある点に注意が必要です。

株主総会の特別決議・反対株主の買取請求の負担

会社分割は原則として、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議による承認が必要です。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決されます。

加えて、分割に反対する株主は、自己の株式を公正な価格で買い取るよう会社に請求できます(反対株主の株式買取請求)。これらの手続きには時間と費用がかかるため、スケジュールに織り込んでおく必要があります。

出典・参考資料(1件)

会社分割の手続きの流れと期間

会社分割の手続きは、吸収分割と新設分割で大きな流れは共通しますが、起点となる書類が「契約」か「計画」かで異なります。ここでは、それぞれの流れと所要期間の目安を解説します。

会社分割の手続きの流れを示した縦型フロー図。起点は吸収分割(吸収分割契約を締結)と新設分割(新設分割計画を作成)で異なる。以降は共通で、事前開示書類の備置き、従業員への通知・協議(労働契約承継法)、株主総会の特別決議(簡易・略式分割は省略可)、債権者保護手続き(異議申述は最低1か月、官報公告・個別催告)、反対株主の株式買取請求への対応、効力発生・登記、事後開示書類の備置きと進む。効力発生・登記は吸収分割が効力発生日に効力が生じ2週間以内に登記、新設分割が設立登記により効力が生じる点で異なる。全体の所要期間はおおむね2〜6か月。

吸収分割の流れ

  1. 吸収分割契約の締結:承継会社との間で、承継する資産・債務・雇用契約などを定めた契約を結びます(第757条・第758条)
  2. 事前開示書類の備置き:契約内容などを記載した書面を本店に備え置きます(第782条・第794条)
  3. 従業員への通知・協議:承継の対象となる労働者へ通知し、個別に協議します(労働契約承継法)
  4. 株主総会の特別決議:効力発生日の前日までに承認を受けます(第783条・第795条)
  5. 債権者保護手続き:異議を述べられる債権者へ官報公告・個別催告を行います(第789条・第799条、異議申述期間は最低1か月)
  6. 反対株主の株式買取請求への対応:分割に反対する株主からの買取請求を受け付けます(第785条・第797条)
  7. 効力発生・登記:効力発生日から2週間以内に変更登記を行います(第923条)
  8. 事後開示書類の備置き:承継した権利義務などを記載した書面を備え置きます(第791条)

新設分割の流れ

新設分割は相手方がいないため、契約ではなく「新設分割計画」を単独で作成するところから始めます(第762条・第763条)。以降の事前開示(第803条)・株主総会の特別決議(第804条)・債権者保護手続き(第810条)・反対株主の買取請求(第806条)・事後開示(第811条)の流れは吸収分割と同様です。

ただし登記は、新設会社の設立登記によって効力が発生する点が吸収分割と異なります(第924条)。吸収分割が「効力発生日に効力が生じ、その後2週間以内に登記」なのに対し、新設分割は「登記によって効力が生じる」と理解すると整理しやすくなります。

出典・参考資料(1件)

所要期間の目安

債権者保護手続きの異議申述期間に最低1か月を要することもあり、会社分割の全体の所要期間はおおむね2〜6か月が目安です。株主構成がシンプルで債権者が少ないケースでは短く、関係者が多い・交渉が長引くケースでは長くなります。

簡易分割・略式分割

一定の要件を満たす場合は、株主総会の特別決議を省略できます。承継する資産の規模が小さいときの「簡易分割」、一方が他方の議決権の9割以上を持つ特別支配関係にあるときの「略式分割」です(第784条・第796条・第805条)。要件を満たせば決議の手間を省けるため、スケジュールの短縮につながります。

会社分割で従業員の労働契約はどうなる(労働契約承継法)

会社分割で経営者が最も気にするのが、従業員の雇用の行方です。結論から言えば、承継される事業に主として従事する従業員の労働契約は、分割計画などに承継の定めがあれば、原則として自動的に承継会社へ引き継がれます。

前条第一項第一号に掲げる労働者が分割会社との間で締結している労働契約であって、分割契約等に承継会社等が承継する旨の定めがあるものは、当該分割契約等に係る分割の効力が生じた日に、当該承継会社等に承継されるものとする。

出典:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律 第3条|e-Gov 法令検索

雇用条件もそのまま引き継がれるため、従業員が個別に転籍へ同意する必要はありません。この点が、転籍に本人の同意が必要な事業譲渡との大きな違いです。

一方で、法律は従業員を保護する手続きも定めています。会社は対象となる従業員へ、承継の有無や異議申出の期限などを書面で通知しなければなりません(第2条)。主として従事しているのに承継の対象外とされた従業員や、逆に主として従事していないのに承継の対象とされた従業員は、異議を申し出ることができます(第4条・第5条)。

この異議申出を定める労働契約承継法(以下、承継法)第5条とは別に、実務上重要なのが、個々の従業員との事前協議です。分割会社は、承継の対象となる従業員と事前に協議する義務を負います(通称「5条協議」。商法等の一部を改正する法律〔平成12年法律第90号〕附則第5条にもとづき、厚生労働省の指針が運用)。

これとは別に、すべての事業場で過半数組合または過半数代表者と協議し、労働者全体の理解と協力を得るよう努める義務もあります(承継法第7条、通称「7条措置」)。手続きを怠ると承継の効力が争われることもあるため、丁寧な説明が欠かせません。

出典・参考資料(2件)

会社分割の税務|適格・非適格の違いと繰越欠損金・各税

会社分割の税務は、「適格分割」か「非適格分割」かで大きく変わります。ここは専門性が高く誤解も多い領域なので、根拠条文とあわせて整理します。実際の税額の判断は、税理士など専門家への確認を前提としてください。

税制適格分割と非適格分割(グループ内/共同事業の要件・課税繰延)

適格分割とは、法人税法が定める一定の要件を満たす分割で、資産を帳簿価額のまま移転できます。その結果、移転時に譲渡損益が計上されず、課税が繰り延べられます(法人税法第62条の2第2項・第62条の3)。要件を満たさない非適格分割では、資産を時価で譲渡したものとされ、含み益に課税されます。

適格となる類型は、大きく「完全支配関係(100%のグループ内)」「支配関係(50%超のグループ内)」「共同事業」の3つです。いずれも分割の対価が株式のみであることが前提で、支配関係・共同事業の類型では次のような要件が加わります。

(支配関係がある場合の適格要件の一部)当該分割により分割事業に係る主要な資産及び負債が当該分割承継法人に移転していること。当該分割の直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該分割後に当該分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること。当該分割に係る分割事業が当該分割後に当該分割承継法人において引き続き行われることが見込まれていること。

出典:法人税法 第2条第12号の11(適格分割の定義)|e-Gov 法令検索

主要な資産・負債の移転、従業者のおおむね80%以上の従事見込み、事業の継続見込みが要件です。共同事業として適格になる場合は、これらに加えて、分割する事業と承継会社の事業の関連性や、事業規模の釣り合いまたは経営への参画といった要件がさらに求められます。自社のケースがどの類型に当たるかで、課税の有無が変わります。

出典・参考資料(1件)

繰越欠損金の取扱い(会社分割では引き継げない・利用制限に注意)

ここは誤解が広まっている点です。会社分割には、分割会社の繰越欠損金を承継会社へ引き継ぐ制度はありません。法人税法第57条第2項で欠損金の引継ぎが認められるのは適格合併と完全支配関係子会社の残余財産確定の場合に限られ、会社分割は対象外です。分割会社の繰越欠損金は、分割後も分割会社に残ります。

むしろ会社分割で関係するのは「利用制限」です。適格分割で支配関係が生じてから5年以内などの一定の場合、承継会社がもともと持っていた繰越欠損金の使用や、引き継いだ含み損資産の損失計上が制限されます(法人税法第57条第4項・第62条の7)。「会社分割で欠損金を引き継げる」という理解は正確ではないため注意してください。

出典・参考資料(1件)

不動産取得税(要件次第で非課税)・消費税(不課税)・登録免許税・みなし配当

会社分割に関わる主な税金は次のとおりです。

  • 消費税:会社分割による資産の移転は資産の譲渡等に当たらないため不課税です
  • 不動産取得税:地方税法施行令が定める要件(分割対価が株式のみ・主要資産負債の移転・従業者のおおむね80%以上の従事・事業継続見込み)を満たす分割であれば非課税です。要件を満たさない場合は課税されます(地方税法第73条の7第2号)
  • 登録免許税:不動産の所有権移転登記や会社の設立・資本金増加の登記にかかります(詳細は次の費用の節で解説します)
  • みなし配当:非適格の分割型分割では、株主が受け取る対価のうち資本金等の額に対応する部分を超える額が、みなし配当として課税されます(法人税法第24条第1項第2号)。適格分割型分割ではみなし配当は生じません
出典・参考資料(2件)

会社分割にかかる費用の目安

会社分割にかかる費用は、法律で決まる登録免許税・官報公告費と、実務を依頼する専門家への報酬に分かれます。まず全体像を一覧で示します。

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費用項目登録免許税(設立・資本金増加の登記)登録免許税(不動産の移転登記)官報公告費(債権者保護手続き)専門家報酬(弁護士・税理士・司法書士・M&Aアドバイザー等)
金額の目安資本金の額の0.7%、最低3万円不動産価額の2.0%数万円程度数十万円〜(依頼範囲・案件規模により数百万円。M&A売却時は成功報酬が別途)

登録免許税は、会社分割に伴う登記にかかります。新設分割による会社の設立登記、または吸収分割による資本金の増加登記は、資本金(増加した資本金)の額の0.7%、計算額が3万円に満たない場合は1件につき3万円です。「登録免許税は3万円」と説明されることがありますが、3万円はあくまで下限で、資本金が大きいほど0.7%で増えます。

加えて、不動産を移転する場合は、所有権移転登記に不動産価額の2.0%がかかります。会社分割は「その他の原因による移転」に該当し、合併の0.4%より高い税率です。

出典・参考資料(1件)

税金や官報公告費は数万円〜数十万円に収まることが多い一方、実務では専門家報酬が費用の主たる部分になります。登記や手続きの代行を依頼する場合は数十万円から、スキーム設計や税務を含めて依頼する場合は案件規模に応じて数十万円〜数百万円が一つの目安です。

さらに、M&Aによる事業売却を伴う場合は、仲介会社やFA(財務アドバイザー)への成功報酬(取引額に応じて料率が下がるレーマン方式など)が別途かかります。いずれも幅があるため、依頼先に見積もりを取って確認するのが確実です。

会社分割の進め方の相談先|M&Aアドバイザリーの活用

ここまで見てきたように、会社分割は会社法・労働法・税法が複雑に絡み、手続きも多岐にわたります。グループ内再編や税務の最適化が主な目的であれば、弁護士・税理士・司法書士が主たる相談先となり、スキームの検討から登記・労務・税務の各手続きまでを支えます。

一方、事業の切り出しや売却(M&A)を伴う場合は、買い手候補の探索から価値算定・条件交渉・最終契約の締結(クロージング)までを担うM&Aアドバイザリーが有力な相談先になります。

M&Aの相談先には、中小企業のM&Aに強い仲介会社から、独立系のFA、大手監査法人系(Big4系)まで複数のタイプがあり、案件の規模や目的によって向き・不向きが分かれます。自社の会社分割を任せる相手を案件規模別に見比べたい場合は、次の比較記事もあわせてご覧ください。

事業の切り出しや売却を伴う会社分割では、買い手候補の探索や条件交渉が成否を左右します。ここからは、売主の立場で支援を受けられるサービスの一例を紹介します。

M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Lead(売主専門M&Aアドバイザリー)の公式サイト

M&A Leadは、譲渡企業(売主)に専属して支援するM&Aアドバイザリーです。買主からは手数料を受け取らず売主の片側からのみ報酬を得る体制をとり、譲渡価格や従業員の雇用条件など、売主側の希望の実現に向けて交渉する立場を明確にしています。

支援範囲は、スキームの検討から企業価値の算定、買い手候補のリストアップ・打診、条件交渉、最終契約のクロージングまで一気通貫です。会社全体の株式譲渡だけでなく一部の事業譲渡にも対応しており、事業単位で切り出す会社分割型のニーズとも親和性があります。自社の買い手リストに加え、他社のアドバイザーや買い手側FA、地方銀行を中心とする金融機関のネットワークを通じて候補を探す点も特徴です。

相談料は無料で、譲渡の意思が固まっていない検討段階からの相談も受け付けています。全国対応で、後継者不在による第三者承継の相談にも対応しています。

まとめ

会社分割は、事業に関する権利義務を包括的に別会社へ承継させる組織再編で、吸収分割・新設分割、分社型・分割型の4つに整理できます。契約や雇用が個別同意なしでまとめて移る点が事業譲渡との大きな違いで、消費税が不課税である一方、簿外債務の承継や許認可の扱い、株主総会の特別決議・債権者保護手続きといった注意点があります。

税務は適格・非適格で課税が大きく変わり、繰越欠損金は会社分割では引き継げない点に注意が必要です。自社のケースで会社分割が最適か、どのスキームを選ぶべきかは個別の事情で変わるため、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。資料で複数のM&Aアドバイザリーを比較したうえで、相談先を検討してみてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 会社分割とは何ですか?

A. 会社分割とは、会社が事業に関して持つ権利義務の全部または一部を、別の会社にまとめて(包括的に)承継させる会社法上の組織再編です。承継先が既存の会社なら吸収分割、新しく設立する会社なら新設分割と呼びます。契約・雇用・債務が個別の同意なしで移る点が、売買に近い取引である事業譲渡との違いです(会社法第2条第29号・第30号)。

Q. 会社分割の吸収分割と新設分割は何が違いますか?

A. 吸収分割と新設分割の違いは、切り出した事業の承継先が「すでにある会社」か「新しく設立する会社」かです。吸収分割は既存の承継会社と「吸収分割契約」を結んで進め、M&Aで他社へ事業を移す場面で使われます。新設分割は相手方がいないため単独で「新設分割計画」を作成し、事業の子会社化や持株会社体制への移行で使われます。

Q. 会社分割と事業譲渡はどちらを選ぶべきですか?

A. 会社分割と事業譲渡のどちらを選ぶべきかは、承継する範囲をまとめて移したいか、細かく限定したいかで判断するのが基本です。契約や雇用も含め事業単位で円滑に引き継ぎたいなら包括承継の会社分割、引き継ぐ資産・債務の範囲を絞って簿外債務のリスクを抑えたいなら事業譲渡が向きます。消費税(会社分割は不課税・事業譲渡は課税)や許認可の扱いでも有利不利が変わるため、専門家と相談して判断するのが確実です。

Q. 会社分割と合併は何が違いますか?

A. 会社分割と合併の違いは、分割する会社の法人格が残るかどうかです。合併は消滅会社の権利義務の全部を引き継ぎ、その会社の法人格そのものがなくなります。これに対し会社分割は事業の全部または一部を切り出して移すだけで、分割した会社は法人格を保ったまま存続します。

Q. 会社分割に消費税はかかりますか?

A. 会社分割による資産の移転には、消費税はかかりません(不課税)。会社分割は消費税法上の「資産の譲渡等」に該当しないためです。対価を得て行う資産の譲渡として消費税が課される事業譲渡との大きな違いです(消費税法第2条第1項第8号)。

Q. 会社分割で従業員の雇用や労働条件はどうなりますか?

A. 承継される事業に主として従事する従業員は、分割契約等に承継の定めがあれば、雇用も労働条件もそのまま自動的に承継会社へ引き継がれます。従業員が個別に転籍へ同意する必要はありません(労働契約承継法第3条)。ただし会社は対象従業員への書面通知や事前協議(5条協議・7条措置)を行う義務があり、主たる従事者が承継の対象から外された場合などには、従業員は異議を申し出ることができます。

Q. 会社分割にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 会社分割の所要期間は、おおむね2〜6か月が目安です。債権者保護手続きの異議申述期間に最低1か月を要するためで、株主構成がシンプルで債権者が少ないケースは短く、関係者が多い・交渉が長引くケースは長くなります。簡易分割・略式分割の要件を満たせば株主総会の特別決議を省略でき、期間を短縮できます。

Q. 会社分割で事業に必要な許認可は引き継げますか?

A. 会社分割をしても、事業の許認可が当然に引き継がれるとは限らず、扱いは業法ごとに異なります。たとえば建設業では、あらかじめ国土交通大臣等の認可を受ければ許可を承継できる制度があります(建設業法第17条の2)。認可の仕組みがない、または認可を受けない場合は、承継会社で改めて許可を取得し直す必要があるため、対象事業の根拠法を事前に確認しておくことが重要です。

Q. 会社分割に株主総会の特別決議は必ず必要ですか?

A. 会社分割は原則として株主総会の特別決議による承認が必要ですが、一定の要件を満たせば決議を省略できます。承継する資産の規模が小さい「簡易分割」や、一方が他方の議決権の9割以上を持つ特別支配関係にある「略式分割」がこれにあたります。省略できれば手続きの負担とスケジュールを軽くできます(会社法第784条・第796条・第805条)。

Q. 会社分割は株式会社以外でもできますか?

A. 会社分割を行えるのは、株式会社と合同会社に限られます。会社法が分割会社を「株式会社又は合同会社」と定めているため、合名会社・合資会社は分割会社になれません。また会社分割は会社どうしの組織再編制度であり、個人事業主は利用できません(会社法第2条第29号・第30号)。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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