カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策として、店頭やレジ、受付、待合室に「迷惑行為はお断りします」と伝えるポスターを掲示する企業が増えています。厚生労働省や東京都などが無料で使えるポスターを配布しており、ダウンロードすればその日のうちに印刷して掲示できます。
2026年10月1日に改正労働施策総合推進法が施行され、カスハラ対策は労働者を雇うすべての事業主の義務になりました。顧客や取引先からの理不尽な言動から従業員をどう守るか、まず何から着手すればよいか、対応を迫られている企業は少なくありません。
本記事では、カスハラ防止ポスターを無料でダウンロードできる公式・公的な配布先を一覧で整理し、業種別の選び方、掲示場所やサイズ・文言の注意点までを解説します。あわせて「ポスターを貼るだけで義務を果たせるのか」という疑問にも答え、掲示の次に取るべき社内対策まで見通せるようにまとめました。
目次
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カスハラ防止ポスターを無料ダウンロードできる配布先一覧
まずは、無料で使えるカスハラ防止ポスターの主な配布先を整理します。国の機関・自治体・業界団体が啓発用のポスターを公式サイトで無料公開しているほか、民間団体も無料配布しています。配布元によって対象の業種や掲示する相手、サイズ、利用条件が異なるため、下の表で見比べてから選ぶと迷いません。
ポスターには、顧客に向けて「迷惑行為はお断りします」といった方針を示すものと、従業員に対応の心構えや相談先を伝えるものがあります。掲示する相手に合わせて選ぶと、現場で機能しやすくなります。
| 配布元 | 厚生労働省 あかるい職場応援団 | 東京都 TOKYOノーカスハラ支援ナビ | 愛知県 あいちカスハラ防止対策ナビ | 日本医師会 | 日本薬剤師会 | メンタルセーフティー推進機構(民間) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 対象・業種 | 全業種(宅配・小売・飲食・教育・介護など業種別資料あり) | 全業種(都内の事業者向け) | 全業種(県内の事業者向け) | 医療機関(待合室などへの掲示) | 薬局 | 全11業種92ジャンル |
| 掲示する相手 | 顧客向け・従業員向けの両方 | 顧客等向け・従業員向けの2種 | 事業者向け・消費者向けの2系統 | 患者・来院者向け | 顧客・来局者向け | 顧客向け |
| 多言語版 | — | — | 6言語ステッカー(タイ・ベトナム・ポルトガル・英・中国語簡体字・ハングル) | — | — | — |
| 利用条件・改変可否 | 出典を明記すれば利用可。営利目的の使用は遠慮を求める記載あり。改変可否の明記はなし | 自由にダウンロード可(明示的な制限の記載なし) | ポスター・ステッカーは掲示用に利用可。ロゴの別用途使用は県への連絡が必要で営利目的は不可 | カスハラポスター専用の利用条件の記載はなし(著作権は日本医師会) | 著作権は日本薬剤師会。無断の複製・改変・切除・二次的使用は不可 | 民間団体の配布。利用規約に同意のうえダウンロード |
| 入手先 | あかるい職場応援団 | TOKYOノーカスハラ支援ナビ | あいちカスハラ防止対策ナビ | 意見広告・ポスター | カスハラ防止啓発ポスター | 顧客向けカスハラ防止啓発ポスター |
※「—」は多言語版の提供が確認できないことを示します。
利用条件は配布元ごとに異なり、出典の明記や改変・営利利用の可否に違いがあります。各配布元の公式ページを開いてポスターを直接ダウンロードし、そのページに書かれた利用条件を確認したうえで掲示してください(配布元ごとの具体的な違いは、このあと掲示のポイントでも補足します)。
出典・参考資料(6件)
業種・現場別に合うカスハラポスターの選び方
ここからは、業種ごとにどの配布元のポスターが合うかを見ていきます。配布元は全業種向けの汎用ポスターと、特定の業種を想定したポスターの両方を用意しています。自社の現場で起きやすい場面に近いものを選ぶと、従業員にも顧客にも伝わりやすくなります。下記に当てはまらない業種は、厚生労働省や自治体の全業種向け汎用ポスターで対応できます。
医療機関・薬局・介護施設向け
医療・介護の現場は、患者や利用者とその家族との距離が近く、待合室や窓口でのトラブルが起きやすい業種です。日本医師会は待合室などへの掲示を想定したポスターを、日本薬剤師会は薬局向けのポスターを公開しています。介護・福祉分野では、厚生労働省のあかるい職場応援団が業種別のマニュアルや周知啓発ポスターを提供しています。
いずれも業種の実情に沿った言い回しになっているため、汎用ポスターより現場になじみやすくなります。
小売・飲食・サービス業向け
コンビニやスーパー、飲食店、各種サービス業は、不特定多数の顧客と接するため、レジや受付での掲示が効果的です。厚生労働省の汎用ポスターや、東京都・愛知県など自治体のポスターは、小売・飲食を含む幅広い業種で使える内容になっています。民間のメンタルセーフティー推進機構は11業種92ジャンルの業種別ポスターを公開しており、より細かく業態に合わせたいときの選択肢になります。
運輸・交通・公共交通向け
鉄道・バス・タクシー、宅配・物流などの現場は、乗車中や荷物の受け渡し時、遅延や運休をめぐって乗務員・配達員が威圧的な言動を受けやすい業種です。専用のポスターは多くないため、厚生労働省の宅配業向けステッカーや全業種向けの汎用ポスターを土台にするのが現実的です。
そのうえで、自社の相談窓口や「乗務員・係員への迷惑行為はお控えください」といった現場に即した文言を補うと実情に合います。駅・車内・営業所など掲示場所が多いので、サイズ違いで複数用意しておくと使い分けやすくなります。
公共・行政窓口向け
自治体の窓口や公共施設は、制度の説明を尽くしても納得が得られず、長時間の居座りや同じ要求の繰り返しに職員がさらされやすい現場です。東京都や愛知県は、条例の施行にあわせて来訪者向け・職員向けのポスターを作成しており、公共の窓口でそのまま使える内容になっています。
国の機関や他の自治体でも独自のポスターを公開していることがあるため、まず自分の地域・所管の自治体が素材を用意していないかを確認すると、地域の方針に沿った掲示ができます。
外国人の顧客が多い現場向け
外国人の顧客や利用者が多い現場では、日本語のポスターだけでは意図が伝わりにくい場合があります。愛知県のあいちカスハラ防止対策ナビは、タイ語・ベトナム語・ポルトガル語・英語・中国語(簡体字)・ハングルの6言語のステッカーを公開しています。多言語の素材を併用すると、言葉の壁がある相手にも「迷惑行為は許容しない」という方針を示せます。
カスハラポスターの掲示のポイント(場所・サイズ・文言)
ポスターは、貼る場所・サイズ・文言の選び方で効果が変わります。ここでは、ダウンロードしたポスターを現場でうまく活かすためのポイントを整理します。
顧客向けと従業員向けで掲示場所を使い分ける
ポスターには、顧客に向けて方針を伝えるものと、従業員に対応の心構えや相談先を伝えるものがあります。東京都や愛知県も、顧客等向けと従業員向けの2種類を分けて配布しています。顧客向けは入口・受付・レジ・窓口など顧客の目に入る場所に、従業員向けはバックヤードや休憩室など従業員が落ち着いて確認できる場所に掲示すると、それぞれの役割を果たしやすくなります。
掲示場所に合わせてサイズを選ぶ
ポスターはA4・A3・A2など複数のサイズで配布されていることがあります。愛知県の場合、事業者向けポスターはA2、消費者向けポスターはB2で用意されています。入口やエントランスなど遠くからでも見せたい場所は大きめのサイズ、レジ横や窓口など近くで読ませる場所はA4程度と、掲示場所と視線の距離に合わせて選ぶと読みやすくなります。
施設名・相談窓口の追記と利用条件の確認
ポスターに自社の施設名や相談窓口の連絡先を加えると、顧客にも従業員にも「この施設の方針」として伝わりやすくなります。ただし追記や加工の可否は配布元の利用条件により、たとえば厚生労働省は出典の明記を求めて営利利用に遠慮を、日本薬剤師会は無断の改変を認めていません。加工する前に、ダウンロードした配布元のページで利用条件を必ず確認してください。
掲示する文言で注意すること
ポスターの文言は、強すぎると正当な意見や要望まで萎縮させ、弱すぎると抑止になりません。鍵になるのは、カスハラと正当なクレームの線引きです。厚生労働省は、カスタマーハラスメントを次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。
職場における「カスタマーハラスメント」とは、職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③の要素を全て満たすものをいいます。
出典:令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!|厚生労働省
商品やサービスへの正当な意見・要望そのものはカスハラではありません。問題になるのは、要求の内容に理由がない、または手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えている場合です。ポスターでは「ご意見・ご要望はお受けします」と正当な声を受け止める姿勢を示しつつ、暴言・威圧・長時間の拘束といった具体的な迷惑行為には応じられない、と線引きを示すと、顧客を萎縮させずに抑止できます。
なぜ今カスハラ対策ポスターが必要か(義務化と自治体条例)
カスハラ防止ポスターへの関心が高まっている背景には、法律による対策の義務化があります。2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、2026年10月1日から、労働者を雇うすべての事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられました。中小企業や個人事業主も対象に含まれます。
事業主が具体的に何をすべきかは、厚生労働省の指針(2026年〈令和8年〉2月26日告示、令和8年厚生労働省告示第51号)が定めています。指針は、講ずべき措置を大きく3つの柱に整理しています。
出典:令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!|厚生労働省
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発:①カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する/②カスハラの内容及びあらかじめ定めた対処の内容を、労働者に周知する
- 相談体制の整備:③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する/④相談窓口担当者が、適切に対応できるようにする
- 事後の迅速かつ適切な対応:⑤事実関係を迅速かつ正確に確認する/⑥被害者に対する配慮のための措置を行う/⑦再発防止に向けた措置を講ずる
カスハラ防止ポスターの掲示は、このうち「方針の明確化・周知・啓発」を実際の行動として示す一手段にあたります。このように、ポスターは義務化された対策の入口として分かりやすく、取り組みやすい施策だといえます。
措置義務そのものに違反しても、直接の刑事罰(懲役や罰金)が科されるわけではありません。改正法では、厚生労働大臣が事業主に助言・指導・勧告を行い、勧告に従わない場合はその旨を公表できると定めています。また、報告を求められたのに報告しない、または虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料が科されます。
罰金という形ではないものの、企業名の公表につながりうる点は、企業の評判に関わるリスクとして意識しておく必要があります。
出典・参考資料(3件)
また、2026年10月の改正では、カスタマーハラスメントだけでなく職場のハラスメント全体について事業主の措置義務が強化され、対応すべき類型が4から6へ広がりました。パワハラ・セクハラなども含めて何がどこまで義務づけられたのかを社内説明の前に整理したい場合は、次の記事で種類ごとの定義と措置義務を確認できます。
【2026年10月施行の義務化を反映】職場のハラスメントの種類一覧|定義・言動例と企業の措置義務
職場で使われる「〜ハラスメント」という呼び名は、パワハラ・セクハラ・マタハラに加えて、カスタマーハラスメントやSOGIハラ、リモートハラスメントなど毎年のように増えています。相談を受けた側からすると、それぞれが「法律で対応が求められる類型」…
自治体のカスハラ防止条例も広がっている
国の義務化に先行して、自治体でもカスハラ防止条例の制定が進んでいます。東京都は全国で初めてカスタマーハラスメント防止条例を定め、2025年4月1日に施行しました。愛知県も同様の条例を2025年10月1日に施行しています。これらの自治体は、条例の施行にあわせて普及啓発用のポスターを無料で配布しており、地域の事業者はそのまま掲示に使えます。
自社の所在地の自治体が条例やポスターを用意していないかを確認しておくと、地域の方針に沿った対応ができます。
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ポスター掲示だけで終わらせないカスハラ対策(相談窓口・対応マニュアル・従業員研修)
「ポスターを貼れば、カスハラ対策の義務を果たしたことになるのか」という疑問を持つ担当者は少なくありません。結論から言うと、ポスターの掲示だけでは不十分です。前述のとおり、厚生労働省の指針が求める措置は「方針の明確化・周知・啓発」「相談体制の整備」「事後の迅速かつ適切な対応」の3本柱で構成されています。
ポスターの掲示はこのうち「方針の周知・啓発」の一手段にすぎず、相談窓口の設置や、実際にトラブルが起きたときの対応体制は別に整える必要があります。

相談窓口と対応マニュアルを整備する
指針は、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知し、担当者が適切に対応できるようにすることを求めています。あわせて、どこまでが正当なクレームでどこからがカスハラかの線引き、現場での初期対応、エスカレーションの手順をまとめた対応マニュアルを用意しておくと、現場の従業員が迷わず動けます。これらは「相談体制の整備」に直接対応する措置であり、ポスター掲示と並行して進めるべき取り組みです。
従業員へのカスハラ対応研修で現場を守る
方針を周知し相談窓口を整えても、現場の一人ひとりが「どう対応すればよいか」を知らなければ機能しません。従業員へのカスハラ対応研修は、方針の周知・啓発や、相談窓口担当者が適切に対応できるようにする取り組みを実効性のあるものにする手段として有効です。
近年は、全従業員がオンラインで受講できるeラーニング形式の研修が広がっており、店舗や施設が多拠点に分かれていても一斉に教育を届けられます。
以下は、カスハラ対応を学べるeラーニング研修2サービスの比較です。カスハラ向けの教材の形や料金体系が異なるため、自社の規模や受講対象に合わせて選ぶ際の参考にしてください。
| サービス名 | OneCompliance | manebi eラーニング |
|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社Oyster | 株式会社manebi |
| カスハラ対応教材 | ◎カスハラ専用3コース | ●ハラスメント研修内に収録 |
| 提供形態 | eラーニング(マイクロラーニング・動画/テキスト、PC・スマホ対応) | eラーニング(LMS型・2,100コース見放題)+集合研修 |
| 初期費用 | なし | 100,000円 |
| 料金・利用規模 | 受講者数に応じた従量課金(要問い合わせ)/10名から | 月額19,800円〜(LITE・39IDまで定額/STANDARD 39,800円) |
| 無料トライアル・デモ | あり(無料トライアル) | あり(無料デモ) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る |
1. OneCompliance(株式会社Oyster)

OneComplianceは、株式会社Oysterが提供する、コンプライアンス領域に特化したオンライン社員研修(eラーニング)サービスです。法令・労務・ハラスメント・情報セキュリティなどの研修を動画とテキストで学べ、カスタマーハラスメントについても専用コースを用意しています。
カスハラ関連のコースでは、クレームとカスハラの線引きや、時間拘束型・暴言型といった類型別の断り方・退去の求め方など、現場での判断と対応を学べます。1コンテンツ数分のマイクロラーニング形式で、PC・スマートフォンの両方に対応しています。初期費用はなく10名から始められ、無料トライアルも用意されているため、対面接客の現場を持つ中小〜中堅企業でも導入しやすい規模感です。
従業員が知識を持つことがなぜ重要なのか。OneComplianceを提供する株式会社Oysterの谷口氏は、サービス開発の背景を次のように語っています。

悪意があって違反するケースもゼロではない一方で、「知らなかった」ことで問題が起きる場面も現実にあります。だからこそ、知識と意識をしっかり学べる場を、継続的に提供したいと思ってサービスを作ってきました。
2. manebi eラーニング(株式会社manebi)

幅広い分野の研修コンテンツを定額で受け放題にできるLMS型(学習管理システム型)のeラーニングが、株式会社manebiの「manebi eラーニング」です。ハラスメント研修の中に、カスタマーハラスメント対応と対策を学べる講座を含みます。
全従業員へ配信できる学習管理の仕組みを備え、受講状況の管理もオンラインで完結します。低コストのプランから始められるため、まず自社の従業員にカスハラ対応の基礎を学ばせたい中小〜中堅企業に向いています。
ここで紹介した2サービスのほかにも、カスハラ対応を学べるコンプライアンス研修のeラーニングは数多くあります。教材のテーマや料金、受講管理の仕組み、自社に合う選び方までまとめて見比べたい場合は、次の比較記事が参考になります。
コンプライアンス研修eラーニングおすすめ比較29選!料金・教材テーマ・選び方を解説
コンプライアンス研修を全社員に行き渡らせたいのに、集合研修では日程調整や会場手配が追いつかず、受講記録の管理も煩雑になっていませんか。ハラスメント防止や情報セキュリティ、個人情報保護など扱うべきテーマは年々増え、法改正のたびに教材を作り直す…
まとめ
カスハラ防止ポスターは、厚生労働省や東京都・愛知県などの自治体、医師会・薬剤師会といった業界団体が無料で配布しており、公式ページからダウンロードすればすぐに掲示できます。配布元によって対象の業種・掲示する相手・サイズ・利用条件が異なるため、本記事の一覧で見比べ、自社の業種と掲示場所に合うものを選んでください。
文言は、正当な意見・要望を受け止めつつ、暴言や威圧などの迷惑行為には応じないという線引きを示すのがポイントです。
2026年10月に義務化されたカスハラ対策は、方針の周知・啓発、相談体制の整備、事後の対応という3本柱で構成されます。ポスターの掲示はその入口にあたる一手段であり、相談窓口の整備や従業員へのカスハラ対応研修とあわせて進めることで、現場の従業員を守る実効性のある対策になります。
まずは無料のポスターを掲示することから始め、相談窓口の整備や従業員へのカスハラ対応研修もあわせて検討してください。
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よくある質問(FAQ)
Q. カスハラ防止ポスターとは何ですか?
A. カスハラ防止ポスターとは、店頭・レジ・受付・窓口などに掲示し、顧客等による迷惑行為(カスタマーハラスメント)には応じないという方針を示して従業員を守るための啓発用の掲示物です。 厚生労働省や東京都・愛知県などの自治体、日本医師会・日本薬剤師会といった業界団体が無料で配布しており、公式サイトからダウンロードすればその日のうちに印刷して掲示できます。
Q. 無料のカスハラ防止ポスターは、営利企業が自社の店舗に掲示してもよいですか?
A. カスハラ防止ポスターを自社の店舗や窓口に掲示して従業員を守ること自体は、多くの配布元が想定している使い方で、営利企業でも利用できます。 一方で利用条件は配布元ごとに異なり、たとえば厚生労働省の資料には「出典を明記した上でご利用ください」「営利目的でのご使用はご遠慮ください」との記載があります。
ポスターを印刷して販売する、自社サービスの宣伝素材に組み込むなど掲示以外の使い方を考えている場合は、ダウンロード元のページで条件を確認するか、配布元へ問い合わせてから利用してください。
Q. カスハラ防止ポスターに施設名や相談窓口の連絡先を追記・改変してもよいですか?
A. カスハラ防止ポスターを改変・加工できるかは、配布元の利用条件によって異なり、一律に可否が決まっているわけではありません。 施設名や相談窓口を加えると「この施設の方針」として顧客にも従業員にも伝わりやすくなりますが、たとえば日本薬剤師会のポスターは無断の複製・改変・切除が認められていません。
加工を前提にするなら、改変を許容している配布元の素材を選ぶか、各ページの利用条件を確認してから編集してください。
Q. カスハラ防止ポスターは自作してもよいですか?
A. カスハラ防止ポスターは、自社で独自に作成しても問題ありません。 掲示物の内容やデザインに法的な決まりはなく、現場の実情に合った文言で作れます。ただし公式ポスターの画像やイラストをそのまま流用すると配布元の著作権に触れるおそれがあるため、自作する場合はデザインを自前で用意してください。
文言は、正当な意見・要望は受け止めつつ、暴言や威圧などの迷惑行為には応じないという線引きを示すと、顧客を萎縮させずに抑止できます。無料の公式素材を使えば手早く掲示できるので、急ぐ場合は既製のポスターから始めるのも一つの方法です。
Q. 中小企業や個人事業主も、カスハラ対策の義務の対象ですか?
A. 中小企業や個人事業主も、労働者を1人でも雇っていればカスハラ対策(雇用管理上の措置)の義務の対象になります。 2026年10月1日に施行された改正労働施策総合推進法による義務で、企業規模による猶予や除外はありません。正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣労働者など雇用する労働者全体を迷惑行為から守ることが求められます。
Q. カスハラ防止ポスターを貼れば、対策義務を果たしたことになりますか?
A. カスハラ防止ポスターの掲示だけでは、対策義務を果たしたことにはなりません。 厚生労働省の指針が求める措置は「方針の明確化・周知・啓発」「相談体制の整備」「事後の迅速かつ適切な対応」の3本柱で構成されており、ポスターの掲示はこのうち方針の周知・啓発の一手段にあたります。
相談窓口の設置や対応マニュアルの整備、従業員へのカスハラ対応教育(研修)をあわせて進めることで、はじめて義務に対応したといえます。
Q. カスハラ対策の義務に違反すると、罰則はありますか?
A. カスハラ対策の措置義務そのものに違反しても、懲役や罰金といった直接の刑事罰は科されません。 改正労働施策総合推進法では、厚生労働大臣が事業主に助言・指導・勧告を行い、勧告に従わない場合はその旨を公表できると定められています。また、国から報告を求められたのに報告しない、または虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料の対象になります。
罰金という形ではないものの、企業名の公表は評判に関わるため、軽視できないリスクといえます。
出典・参考資料(2件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















