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内部不正とは?定義・原因・事例と、IPA基本5原則に沿った対策をわかりやすく解説

内部不正とは?定義・原因・事例と対策のサムネイル画像

元社員による顧客情報の持ち出しや、退職者による技術情報の漏えいといった内部不正の報道が後を絶ちません。社内の誰かが情報を持ち出すという話は、社外からの攻撃とは違い、どこまでが「不正」にあたるのかが曖昧なまま対策の議論に進みにくいという難しさがあります。

内部不正とは何を指し、なぜ起こり、放置すると企業に何をもたらすのか。そして、何から対策に着手すればよいのか。社員を疑う話だからこそ、言葉の定義と対策の優先順位をはっきりさせたうえで社内の合意を取りたい担当者は少なくありません。

本記事では、内部不正の定義と線引き、典型的な手口と事例、起こる原因、企業が負うリスクを整理します。そのうえで、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「組織における内部不正防止ガイドライン」が示す基本5原則に沿った対策の進め方と、対策を支えるツールの選び方までを解説します。

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内部不正とは?定義と「含む/含まない」の線引き

内部不正とは、従業員や退職者などの組織関係者が、立場上アクセスできる重要情報や情報システムを不正に扱う行為を指します。IPAのガイドラインは、内部不正の範囲を次のように定めています。

本ガイドラインでは、違法行為だけでなく、情報セキュリティに関する内部規程違反等の違法とまではいえない不正行為も内部不正に含めます。内部不正の行為としては、重要情報や情報システム等の情報資産の窃取、持ち出し、漏えい、消去・破壊等を対象とします。また、内部者が退職後に在職中に得ていた情報を漏えいする行為等についても、内部不正として取り扱います。

出典:組織における内部不正防止ガイドライン 第5版 3-1.用語|IPA(独立行政法人情報処理推進機構)

この定義から、内部不正の範囲は一般にイメージされるより広いことがわかります。対策の守備範囲を社内で共有するために、含むものと含まないものを整理しておきましょう。

  • 含むもの:故意の違法行為(情報の窃取・持ち出し・外部への漏えい・消去や破壊)に加え、違法とまではいえない内部規程違反、さらに退職後に在職中の情報を漏えいする行為
  • 過失・規程違反も含む:悪意のない操作ミスや規程の不徹底による漏えいも、ガイドラインの実態調査では内部不正の文脈で集計されており、対策の対象に含める
  • 含まないもの:社外の第三者による攻撃(外部からの不正アクセスやマルウェア感染など)や、組織の重要情報・情報システムに関わらない立場の人(清掃員・警備員など)の行為は、内部不正とは区別される

内部不正の対象になる「内部者」とは誰か

内部不正の担い手となる「内部者」には、現在の従業員だけでなく、過去に在籍していた人も含まれます。ガイドラインは内部者を次のように定義しています。

経営者・役員、従業員(契約社員を含む)及び派遣社員等の従業員に準ずる者(以下、総称して「役職員」という。)又は、役職員であった者のうち、以下の 2 つのどちらかでも満たした者とします。

出典:組織における内部不正防止ガイドライン 第5版 3-1.用語|IPA

経営者・役員、契約社員を含む従業員、派遣社員、そして「役職員であった者」、すなわち退職者までが対象です。情報システムへのアクセス権を持つ人や、物理的に情報へ近づける職務の人が広く含まれる点は、対策範囲を考えるうえで押さえておきたいところです。

内部不正の典型的な手口と事例

ここからは、内部不正が実際にどのような形で起こるのかを、手口の類型ごとに見ていきます。自社に当てはまる経路がないかを確認する視点で読み進めてください。

退職者・元従業員による情報の持ち出し

内部不正のなかでも最も多い経路が、退職者による持ち出しです。IPAがガイドラインで引用する実態調査では、営業秘密の漏えいがあった企業での漏えい経路として「中途退職者(役員・正規社員)による漏えい」が36.3%と最多で、現職従業員の誤操作・誤認(21.2%)やルール不徹底(19.5%)がこれに続くと報告されています。

実際の事例もあります。ソフトバンクを退職して楽天モバイルへ転職した元社員が、在職中に基地局設備などの技術情報を不正に持ち出したとして不正競争防止法違反(営業秘密領得)に問われました。東京地方裁判所は2022年12月9日、懲役2年・執行猶予4年・罰金100万円の有罪判決を言い渡しています。退職から転職先への技術情報の持ち出しは、内部不正の最も典型的な形のひとつです。

出典・参考資料(2件)

アクセス権限の悪用(特権アカウントの乱用)

システムの運用・保守に関わる人物が、与えられた強い権限を本来の目的の外で使うケースもあります。2023年10月にNTTマーケティングアクトProCXが公表した事例では、コールセンターシステムの運用保守に従事していた元派遣社員が、システム管理者アカウントを悪用して顧客データの保管サーバーにアクセスし、約900万件の顧客情報を不正に持ち出していました。

この事例では一部にクレジットカード情報も含まれ、影響は59のクライアント(自治体・企業など)に及びました。

正規の権限を持つ担当者による持ち出しは、通常業務と見分けがつきにくく、発覚が遅れがちです。誰にどこまでの権限を与えているかの棚卸しと、操作記録の保全が対策の鍵になります。

出典・参考資料(1件)

オンラインストレージ・シャドーITを経由した持ち出し

個人のクラウドストレージや、会社が把握していないアプリ・サービス(シャドーIT)を経由した持ち出しも、注意したい経路のひとつです。業務データを私用アカウントにアップロードする、許可されていないファイル転送サービスを使うといった行為は、社外ネットワークへの通信として現れるため、通信やファイル操作の記録がないと把握しづらいのが実情です。

在宅勤務・私物端末からの持ち出し

在宅勤務やリモート環境では、管理の目が届きにくく、私物端末やUSBメモリへのコピーといった経路が生まれます。端末にデータが保存される設計のままだと、紛失・盗難や持ち出しのリスクが社外に分散します。端末側にデータを残さない仕組みや、外部デバイスへの書き出し制御が対策の候補になります。

IPAの内部不正事例集にも、記録媒体へデータをコピーして持ち出した事例や、業務委託先の社員が私物スマートフォンを記録媒体として認識させてデータを持ち出した事例が収められており、こうした経路は実際のインシデントとして確認されています。

出典・参考資料(1件)

生成AIへの機密情報の入力

近年は、ChatGPTなどの生成AIに業務上の機密情報や個人情報を入力してしまう経路も新たな論点です。悪意の有無にかかわらず、入力した情報が社外のサービスに渡る可能性があり、何を入力してよいかのルール整備と、利用状況の把握が求められます。

承認していない生成AIサービスが現場で使われる「シャドーAI」の把握や、利用ルールの運用を支える手段として、AIガバナンスツールという選択肢があります。タイプ別の違いや選び方は以下の記事で解説しています。

内部不正が起こる原因(不正のトライアングルと人的・技術的要因)

内部不正の背景を理解する枠組みとして、よく使われるのが「不正のトライアングル」です。米国の犯罪学者ドナルド・R・クレッシー(Donald R. Cressey)が横領の研究から示した考え方で、不正は「動機(プレッシャー)」「機会」「正当化」の3つがそろったときに起こりやすいとされます。日本公認会計士協会も、監査の不正リスク要因をこの3区分で整理しています。

不正のトライアングルの図。上に動機(プレッシャー)、下に機会と正当化の3要素を配置し、中央に内部不正を置く。動機は処遇への不満や金銭的困窮、機会はアクセス権限が広すぎる・操作が記録されない環境、正当化は自分が作ったデータだといった理屈を指し、3つがそろったときに内部不正が起こりやすいことを示す。
  • 動機(プレッシャー):処遇への不満、転職先での活用、金銭的な困窮など、不正に向かう心理的なきっかけ
  • 機会:アクセス権限が広すぎる、操作が記録されていないなど、不正を実行できてしまう環境
  • 正当化:「自分が作ったデータだ」「これくらいは許される」といった、自らの行為を納得させる理屈

出典・参考資料(1件)

この3要素は、人的要因・技術的要因・組織的要因となって現れます。人的要因は処遇や人間関係への不満、技術的要因はアクセス権限の集中や操作ログの不在、組織的要因は管理ルールやチェック体制の不備などが挙げられます。動機を完全になくすことは難しくても、機会を減らし、正当化を許さない環境をつくることは企業側の取り組みで可能で、この発想が次に見る対策の基本原則につながります。

内部不正が起こる原因を、処遇や人間関係といった人的側面と、権限管理やチェック体制といった組織的側面の両面からさらに掘り下げて知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。

内部不正を放置した場合の悪影響・リスク

内部不正が発生すると、企業は複数の面で損失を被ります。情報漏えいによる顧客・取引先からの信用の失墜、損害賠償や対応費用といった経済的な損失、再発防止のための内部統制強化にかかるコスト、そして刑事罰・法的責任です。とりわけ法的責任は、どの法律が関わるかを押さえておくと、対策の優先順位を判断しやすくなります。

営業秘密の持ち出しには、不正競争防止法が関わります。同法第21条は、営業秘密を不正に取得・使用・開示した個人に10年以下の拘禁刑または2,000万円以下の罰金(併科あり)を定め、第22条は法人に5億円以下(国外での使用など一定の場合は10億円以下)の罰金を定めています。退職者が在職中に不正開示の依頼を受け、退職後に使用・開示した場合も処罰の対象です。

個人情報の持ち出しには、個人情報保護法が関わります。同法第179条(個人情報データベース等不正提供罪)は、従業者または「これらであった者」が、業務で取り扱った個人情報データベース等を不正な利益を図る目的で提供・盗用した場合に、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を定めています。元従業員による個人情報の持ち出しを直接とらえる規定です。

他人のIDやパスワードを使う、与えられた権限を越えてネットワーク越しにシステムへ侵入するといった行為を伴う場合は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)も関わります。ただし同法は、従業員が自分に与えられた正規の権限の範囲でデータを持ち出すケースには適用されないため、この点は切り分けて理解しておく必要があります。

ここでの「拘禁刑」は、2025年に施行された刑法改正で従来の懲役・禁錮を一本化した刑で、それ以前の判決では「懲役」と表記されます。上記の罰則は個人に対するもので、不正競争防止法・個人情報保護法のいずれも、法人に対しては両罰規定(それぞれ第22条・第184条)により別途罰金が定められています。

出典・参考資料(3件)

情報セキュリティ10大脅威での内部不正の位置づけ

内部不正は、一過性の問題ではありません。IPAが毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威 2026」(組織向け)では、「内部不正による情報漏えい等」が第7位に選ばれ、11年連続11回目の選出となっています。外部からの攻撃と並んで、組織が継続的に向き合うべき脅威として位置づけられていることがわかります。

出典・参考資料(1件)

IPA基本5原則で始める内部不正対策

何から対策すればよいか迷ったときの出発点になるのが、IPAガイドラインが示す内部不正防止の基本5原則です。犯罪を起こしにくい環境をつくるという考え方(状況的犯罪予防)を内部不正に応用したもので、次の5つで構成されます。

  • 犯行を難しくする(やりにくくする):対策を強化することで犯罪行為を難しくする
  • 捕まるリスクを高める(やると見つかる):管理や監視を強化することで捕まるリスクを高める
  • 犯行の見返りを減らす(割に合わない):標的を隠したり、排除したり、利益を得にくくすることで犯行を防ぐ
  • 犯行の誘因を減らす(その気にさせない):犯罪を行う気持ちにさせないことで犯行を抑止する
  • 犯罪の弁明をさせない(言い訳させない):犯行者による自らの行為の正当化理由を排除する
出典:組織における内部不正防止ガイドライン 第5版 2-1.内部不正防止の基本原則|IPA

なぜ「人探し」でなく「仕組み」で防ぐのか

5原則の土台にある状況的犯罪予防は、犯罪学者のコーニッシュとクラーク(Cornish & Clarke、2003)が提唱した、犯罪を実行しにくい状況をつくることで予防するという理論です。内部不正に当てはめると、「怪しい人を見つけて取り締まる」よりも、「誰であっても不正を起こしにくく、起きても見つかる仕組みをつくる」ほうが現実的だという発想になります。

社員を一律に疑う運用は、職場の信頼関係を損ない、長続きしません。権限の設計や記録の仕組みで機会を減らすアプローチは、特定の個人を標的にせずに全体のリスクを下げられる点で、現場にも受け入れられやすい方法です。

各原則に対応する実務の打ち手

5原則は抽象的に見えますが、日々の業務の打ち手に落とすことができます。自社の現状と照らして、どこが手薄かを点検する視点で読んでみてください。

打ち手の出発点になるのが、情報資産を重要度で格付けすることです。IPAのガイドラインでも、重要情報と一般情報を区分したうえでアクセス制限を考えることが基本とされています。社外秘・極秘といった区分で守る優先順位を決めると、重要度の高い情報ほど権限管理・監視・持ち出し制御を手厚くでき、限られた人手でも守りの強弱を判断しやすくなります。

  • アクセス権限の管理:業務に必要な範囲だけに権限を絞り(最小権限)、退職者のアカウントを速やかに失効させる。権限の棚卸しを定期的に行う
  • 操作の記録と監視:誰が・いつ・どのファイルを操作し、どこへ送ったかを記録する。記録があること自体が抑止力になり、発覚時の原因究明にも使える
  • 端末・データの管理:USBメモリなど外部デバイスへの書き出しを制御し、端末にデータを残さない運用を検討する
  • ルールの策定と従業員教育:持ち出しや生成AIへの入力に関するルールを定め、誓約書や教育で周知する。これは「弁明をさせない」ことにつながる
  • 事後の原因究明への備え:不正が疑われたときに、端末や通信の記録から事実を確認できる体制を整えておく

打ち手の中心になる「操作の記録と監視」で使うPC操作ログについて、具体的にどんな情報が取得でき、どう確認・運用するのかを知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。

内部不正対策ツールの種類と選び方

基本5原則を実務に落とすうえで、人手だけでは難しい記録・監視・制御を担うのが対策ツールです。内部不正対策のツールは目的によって得意領域が分かれるため、自社の弱点に合うものを組み合わせて選ぶのが現実的です。主なカテゴリを整理します。

  • 操作ログ管理・IT資産管理:PCの操作やファイル・USBの利用を記録し、誰が何をしたかを可視化する。抑止と記録の中心になるカテゴリ
  • ネットワーク監視・NDR:社内ネットワークを流れる通信を記録・分析し、通常と異なる挙動の検知(予兆の把握)や外部への不審な送信の発見、発覚後の遡及調査に使う
  • データレスクライアント・デバイス制御:端末にデータを残さない、外部デバイスへの書き出しを制限するなど、持ち出しの機会そのものを減らす
  • 端末フォレンジック診断:退職者や在籍者の端末を解析し、情報の持ち出しや不正の痕跡がないかを事後に確認する

これらのカテゴリは、IPAの基本5原則のどの原則を主に支えるかで対応づけると選びやすくなります。

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操作ログ管理・IT資産管理ネットワーク監視・NDRデータレスクライアント・デバイス制御端末フォレンジック診断
主に支える原則捕まるリスクを高める/弁明をさせない捕まるリスクを高める犯行を難しくする/見返りを減らす捕まるリスクを高める
果たす役割操作・ファイル・USB利用の記録と可視化。抑止と証跡の確保通信の記録・分析による不審な送信の検知と、発覚後の遡及調査端末にデータを残さない運用や外部書き出し制御で持ち出しの機会を削減端末の解析による持ち出し・不正の痕跡の事後確認

※対応づけは一般的な整理です。各ツールの機能範囲は提供形態により異なるため、各社情報をご確認ください。

自社で手薄な原則はどこかを起点に、それを支えるカテゴリから検討すると、過不足のない対策につながります。

内部不正対策に役立つサービス

ここからは、内部不正の抑止・検知・事後の原因究明に役立つサービスを紹介します。以下はご紹介するサービスの比較表です。

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サービス名Network BlackboxEye"247" Work Smart CloudCoWorker 端末侵害診断サービスShadow DesktopSKYSEA Client ViewLANSCOPE エンドポイントマネージャー
ツールのカテゴリネットワーク監視・NDR操作ログ管理・IT資産管理端末フォレンジック診断データレスクライアント操作ログ管理・IT資産管理操作ログ管理・IT資産管理
内部不正への主な効き方検知・事後の原因究明(社内通信を記録し遡及調査)抑止・検知(PC操作ログの記録・可視化)事後の原因究明(持ち出し痕跡を事後解析)抑止(端末にデータを残さず持ち出しを防止)抑止・検知(操作ログ・デバイス制御)抑止・検知(操作ログ・デバイス制御)
提供形態ネットワークにミラーリングで導入(詳細形態は非公表)クラウド(SaaS)スポット/定期の診断サービス既存PCにインストール(保存先はクラウド/オンプレ)オンプレミス版/クラウド版クラウド版/オンプレミス版
料金の目安要お問い合わせ初期費用0円/月額400〜1,100円(1台・従量制、税別)1台20万円(税別)〜(台数割引あり)月額950円〜(1ライセンス・税別、最低5ライセンス〜)要お問い合わせ要お問い合わせ
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約サービス詳細を見るサービス詳細を見る

※料金・機能は2026年11月時点の各社公式情報にもとづく目安です。最新の内容や詳細条件は各社の公式資料・サービスページでご確認ください。

ここで紹介したのは、内部不正対策に役立つサービスの一部です。操作ログ管理やネットワーク監視、データレス化、端末フォレンジックなど、守る対象別に社内セキュリティソリューション全体を見比べて選びたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

1. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxのウェブサイト

Network Blackboxは、社内ネットワークを流れる通信を取り込んで記録・分析するネットワーク型の検知・対応(NDR)ソリューションです。フルパケットキャプチャを基盤に、通信をメタデータとして記録し、既知の攻撃パターンのほか、通常と異なる行為やデータの外部流出の兆候を検知します。

内部不正の文脈では、保存した通信を後から検索し、いつ・どこへ・どのファイルが送られたかを遡って確認できる点が強みになります。通信記録が残っていれば、持ち出しが疑われたときの事後調査(フォレンジック)の手がかりになります。一方で、ネットワークに現れない端末単体の操作は対象外のため、操作ログ系のツールと組み合わせる設計が前提です。

2. Eye“247” Work Smart Cloud(株式会社フーバーブレイン)

Eye247 Work Smart Cloudのウェブサイト

PCの操作内容を「誰が・いつ・どこで・何を操作したか」まで記録・可視化するクラウド型サービスが、株式会社フーバーブレインのEye“247” Work Smart Cloudです。作業ログを1分間隔で取得し、Webの閲覧、ファイル操作、印刷、USB機器の使用履歴などを記録します。内部不正対策のほか、労務管理やIT資産管理にも使える点が特徴です。

サーバー構築が不要なクラウド型で、初期費用は無料。月額費用は契約台数に応じた1台あたりの従量制で、台数が少ないほど単価が上がり、5〜9台で1台あたり月額1,100円、100台以上で月額400円からです(いずれも税別、最低契約5台)。導入実績は3,000社以上(2026年10月15日時点)で、14日間の無料トライアルも用意されています。

出典・参考資料(1件)

3. CoWorker 端末侵害診断サービス(CoWorker株式会社)

CoWorker 端末侵害診断サービスのウェブサイト

CoWorker株式会社の端末侵害診断サービスは、会社が管理するPCを解析し、情報漏えいや内部不正、ランサムウェア感染の痕跡がないかを確認するフォレンジックのサービスです。退職者のPCを調べて機密情報を個人のドライブやクラウドへ持ち出していないかを確認する用途と、在籍者の支給PCを定期的に点検する用途の2つが中心です。

自社開発のAIエージェントを使って端末のログを解析し、従来は専門家の手で時間のかかっていたフォレンジックを短期間・低コストで行える点を打ち出しています。料金は1台あたり20万円(税別)からで、台数に応じたボリュームディスカウントがあります。退職時の持ち出しが疑われる場面で、事実を確認したい企業に向いた選択肢です。

出典・参考資料(1件)

本記事で見たとおり、内部不正の漏えい経路は退職者による持ち出しが最も多くを占めます。実際にどのような調査依頼が寄せられているのか、提供元のCoWorker株式会社は現場の相談傾向を次のように話しています。

一ノ瀬氏
CoWorker株式会社 Sales Manager
一ノ瀬氏
独自インタビューより

多いのは、退職された方のPCから情報の持ち出しがなかったかを確かめたいという、内部不正の調査のご相談です。最近では、Webサービスで広く使われているソフトウェアに深刻な脆弱性が公表されたことをきっかけに、「自社のサーバーや端末がすでに侵害されていないか、まずは手早く確かめたい」というご相談も増えています。

4. Shadow Desktop(アップデータ株式会社)

Shadow Desktop(シャドウデスクトップ)のウェブサイト

Shadow Desktopは、PC内のユーザーデータをクラウド等の外部ストレージへ自動的に退避させ、端末本体にはデータを物理的に残さない「データレスクライアント」製品です。アップデータ株式会社が提供し、デスクトップやドキュメントなどのデータをPCに保存しない状態をつくることで、端末の紛失・盗難や持ち出しによる漏えいのリスクを下げます。

仮想デスクトップ(VDI)と違い、通常のPCと同じ操作感のまま使える点を特徴としています。持ち出しの「機会」そのものを減らすアプローチで、在宅勤務や外出先での利用が多い企業の情報漏えい対策として検討しやすいサービスです。

5. SKYSEA Client View(Sky株式会社)

SKYSEA Client Viewのウェブサイト

Sky株式会社が開発・提供するSKYSEA Client Viewは、PCの資産管理と操作ログの収集を1つの管理画面で行えるクライアント運用管理ソフトウェアです。起動・終了やファイル操作、印刷、Webアクセスなど多数のログを記録し、USBなど外部デバイスの制御や、許可されていない端末が社内ネットワークに接続された際の検知・遮断にも対応します。

オンプレミス版とクラウド版があり、ログは最大10年間の保存設定が可能です。累計26,387社・約1,349万台(2026年8月末時点)の導入実績を持ち、操作の記録と可視化を幅広くカバーしたい企業に向いています。

出典・参考資料(1件)

6. LANSCOPE エンドポイントマネージャー(エムオーテックス株式会社)

LANSCOPE エンドポイントマネージャーのウェブサイト

エムオーテックス株式会社のLANSCOPE エンドポイントマネージャーは、PCやスマートフォンを一元管理するIT資産管理製品です。旧称「LanScope Cat」からリブランドした製品で、ハードウェア・ソフトウェアの棚卸しに加え、PCの操作ログの取得やUSBデバイスの制御といった内部不正・情報漏えい対策の機能を備えています。

クラウド版とオンプレミス版があり、累計40,000社以上の導入実績を持ちます。60日間の無料トライアルも用意されており、資産管理と内部不正対策をまとめて整えたい企業が検討しやすい製品です。

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まとめ

内部不正は、故意の違法行為だけでなく、内部規程違反や退職後の情報利用までを含む幅広い概念です。漏えい経路としては退職者による持ち出しが最も多く、特権アカウントの悪用やオンラインストレージ・生成AIを経由した持ち出しなど、経路も多様化しています。

対策は、特定の個人を疑うのではなく、IPAの基本5原則に沿って「不正を起こしにくく、起きても見つかる仕組み」をつくる発想で進めるのが現実的です。アクセス権限の管理、操作の記録と監視、端末・データの管理、ルールと教育、事後の原因究明への備えという打ち手を、自社で手薄な原則から整えていきましょう。

これらを支えるツールは目的ごとに得意領域が分かれます。資料を取り寄せて、自社の課題に合うものを見比べてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 内部不正とは何ですか?うっかりミスや退職後の情報持ち出しも含まれますか?

A. 内部不正とは、従業員や退職者などの組織関係者が、立場上アクセスできる重要情報や情報システムを不正に扱う行為を指し、故意の違法行為だけでなく、内部規程違反や退職後の情報の持ち出しまで含みます。

IPA「組織における内部不正防止ガイドライン」は、違法とまではいえない規程違反や、退職者が在職中に得た情報を漏えいする行為も内部不正として扱うと定めています。悪意のない操作ミスやルールの不徹底による漏えいも、ガイドラインの実態調査では同じ文脈で集計されており、対策の守備範囲から外せません。

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Q. 退職者による情報の持ち出しを防ぐには何をすればよいですか?

A. 退職者対策の基本は、退職時にアカウントと権限を速やかに失効させること、在職中から操作ログを記録しておくこと、必要に応じて退職者の端末をフォレンジックで点検することの3つです。

内部不正の漏えい経路は中途退職者によるものが最も多く(IPAが引用する実態調査で36.3%)、退職の前後に対策が集中します。秘密保持や情報の持ち出し禁止を定めた誓約書を取り交わし、在職中からアクセス権限を業務に必要な範囲に絞っておくと、持ち出しの「機会」と「言い訳」を同時に減らせます。

Q. 専任担当がいない中小企業は、内部不正対策を何から始めればよいですか?

A. まずは費用をかけずにできる「アクセス権限の棚卸し」「退職者アカウントの確実な削除」「ルールの明文化と周知」から着手するのが現実的です。

IPAの基本5原則は、高価なツールの導入ではなく「不正を起こしにくく、起きても見つかる仕組み」をつくる発想が土台にあります。そのうえで、人手では難しい操作ログの記録やデバイス制御を補うツールを、自社で手薄な部分から段階的に導入すると無理がありません。操作ログ管理ツールには初期費用無料・1台あたり月額数百円から使えるクラウド型もあり、小規模から始めやすくなっています。

Q. 内部不正対策のツールは、どれか1つを導入すれば十分ですか?

A. 1つのツールですべてを賄うのは難しく、自社で手薄な原則を補うカテゴリを組み合わせて選ぶのが現実的です。

内部不正対策のツールは、操作ログ管理・IT資産管理(抑止と記録)、ネットワーク監視・NDR(通信の記録と遡及調査)、データレスクライアント・デバイス制御(持ち出しの機会削減)、端末フォレンジック診断(事後の原因究明)と、得意領域が目的ごとに分かれます。

たとえば操作ログで日常を可視化し、持ち出しが疑われたときにフォレンジックで事実を確認するというように、役割の異なるものを補い合わせる設計が効果的です。

Q. 内部不正対策のツールの費用はどのくらいかかりますか?

A. 操作ログ管理のようなクラウド型は1台あたり月額数百円から、端末にデータを残さないデータレスクライアントは月額千円前後から、退職者端末のフォレンジック診断は1台20万円前後からが目安です。

継続的に運用する記録・監視系は台数に応じた月額課金が中心で、フォレンジック診断のように必要なときだけ使うものはスポット課金が中心です。ネットワーク監視など構成によって料金が変わるものは個別見積りとなるため、複数社の資料を取り寄せ、自社の規模・用途で見比べるのが確実です。

Q. 生成AI(ChatGPTなど)に入力してはいけない情報の基準は?

A. 個人情報や顧客情報、営業秘密・技術情報、未公表の経営情報など、社外に出れば損害や法的責任につながる情報は、生成AIに入力しないのが基本です。

入力した内容が社外のサービス側で保存・学習に使われる可能性があり、悪意がなくても情報漏えいにあたりかねません。判断の迷いを生まないために、「入力してよい情報・禁止する情報」と利用してよいサービスを会社のルールとして明文化し、従業員に周知することが重要です。業務での利用実態を把握できる記録の仕組みもあわせて整えると、ルールの実効性が高まります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
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