社内で使っているクラウドサービスや管理画面を、「会社のオフィスからしかアクセスできないようにしたい」と考えていませんか。上司や取引先から「IPアドレス制限をかけてほしい」と言われた、セキュリティチェックシートで「アクセス元の制限」を問われた、といった場面で、まず仕組みと自社でできるのかを知りたい担当者は少なくありません。
IPアドレス制限は、許可した場所からのアクセスだけを通すシンプルで導入しやすい対策です。一方で、テレワークやスマホ回線だとIPが変わる、共有IPだと他人も通ってしまう、そもそもIP制限だけで本人確認になるのか、といった不安もつきまといます。ここでつまずくと「結局うちはどうすればいいのか」が見えないまま手が止まります。
本記事では、IPアドレス制限とは何かという仕組みから、許可リストと拒否リストの違い、効く場面とメリット、見落としやすい限界、一般的な設定方法と主要なクラウドサービスでの設定の勘所、導入後に形骸化させない運用、そしてIP制限だけに頼らずアクセスを統制する次の一手までを整理しました。自社で導入・運用してよいかを判断する材料としてご活用ください。
目次
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IPアドレス制限とは?仕組みを分かりやすく解説
IPアドレス制限とは、あらかじめ許可したIPアドレスからのアクセスだけを通し、それ以外のアクセスを拒否する仕組みです。IPアドレスは、インターネットに接続した機器を識別する番号で、どのネットワークから来た通信かを見分ける手がかりになります。この番号を使って「どこからのアクセスを認めるか」を決めるのが、IPアドレス制限の基本的な考え方です。
クラウドサービスの公式ヘルプでも、IPアドレス制限は接続元のIPアドレスで利用者を絞り込む機能として説明されています。たとえば自社オフィスのIPアドレスだけを許可しておけば、オフィス以外の回線からログインしようとしても弾かれるため、IDとパスワードが漏れても不正ログインの入口を狭められます。
IPアドレス制限とは、接続元のIPアドレスを使ってサービスの利用者を制限する機能です。
出典:IPアドレス制限|cybozu.com ヘルプ(サイボウズ)https://jp.kintone.help/general/ja/admin/list_security/list_access/ip_restrictions.html
2つの方式|ホワイトリスト(許可リスト)とブラックリストの違い
IPアドレス制限には2つの方式があります。どちらで考えるかによって、設定の向き・不向きが変わります。
IPアドレス制限には、許可するIPを登録するホワイトリスト方式(許可リスト)と、拒否するIPを登録するブラックリスト方式(拒否リスト)の2つがあります。社内システムや管理画面のように使う人が限られる入口は許可リスト、不特定多数がアクセスする一般公開のサービスは拒否リスト、というのが基本的な使い分けです。
| 方式 | 考え方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ホワイトリスト(許可リスト) | 登録したIPからのアクセスだけを許可し、それ以外はすべて拒否する | 利用者が限られる社内システム・管理画面・API。「決まった場所からだけ使わせたい」とき |
| ブラックリスト(拒否リスト) | 登録したIPからのアクセスだけを拒否し、それ以外は許可する | 不特定多数が使う一般公開サイト。攻撃元や迷惑なアクセス元を個別に遮断したいとき |
社内利用を前提に「自社の拠点からだけアクセスを許す」目的で使う場合は、ホワイトリスト方式が基本になります。許可リストに載っていないIPはすべて弾かれるため、許可する範囲をあらかじめ漏れなく洗い出しておくことが運用の出発点です。
IPアドレス制限が効く場面とメリット
IPアドレス制限の最大の利点は、ログイン画面に到達できる接続元そのものを減らせることです。IDとパスワードが漏れても、許可したIP以外からはログイン画面にすらたどり着けないため、総当たり攻撃やリスト型攻撃のような「外部から認証を試す」攻撃の入口を物理的に狭められます。認証の強度を高める前段として、入口を絞る役割を担います。
導入のしやすさもメリットです。多くのクラウドサービスは管理画面でIPアドレスを登録するだけで制限をかけられ、サーバー側もファイアウォールやWebサーバーの設定で対応できます。新しい機器やライセンスを買い足さずに既存の設備で始められるため、コストと手間を抑えて着手できます。
効く場面としては、経理や人事などの機密情報を扱う業務システム、クラウドサービスの管理者画面、社外に公開しないAPIなど、「使う人と場所が決まっている入口」が代表的です。こうした入口にアクセス元の制限をかけておくことは、監査や取引先のセキュリティチェックで求められる「アクセス元の制限」への回答にもなります。
IPアドレス制限の限界とデメリット
IPアドレス制限は便利ですが、これだけに頼ると運用でつまずいたり、守れると思っていたものが守れなかったりします。導入前に押さえておきたい限界を順に見ていきましょう。
動的IP・テレワーク・モバイルで管理が増える
一般的なインターネット回線やモバイル回線のIPアドレスは、固定ではなく変わることがあります。許可リスト方式で運用すると、IPが変わるたびにアクセスできなくなり、登録し直す手間が発生します。自宅や出張先、カフェなど場所が変わるテレワークでは、そもそも「どこからアクセスするか」が定まらないため、IP制限と相性が悪くなりがちです。
この問題は、固定IPアドレスを契約する、社内ネットワークを経由するVPNを使う、特定のIP範囲を静的に定義したうえで条件を設定する、といった方法で回避します。
VPNを経由すると、社外からのアクセスでも会社の出口IPを通るため、その出口IPを許可しておけばテレワークでも通せます。たとえばGoogle Workspaceのアクセス制御でも、動的IPを使うには静的なIPサブネットを定義する必要があると案内されています。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:コンテキストアウェア アクセスレベルを作成する|Google Workspace 管理者 ヘルプ(https://knowledge.workspace.google.com/admin/security/create-context-aware-access-levels?hl=ja)
共有IPは正規利用者も巻き込む
複数の利用者が同じIPアドレスを共有している環境では、IPアドレス単位の制限が粗くなります。たとえば共用のネットワークや大規模なプロバイダのIPを許可すると、同じIPを使う無関係の利用者まで通してしまいます。逆にブラックリストで特定のIPを拒否すると、そのIPを共有している正規の利用者まで一緒に弾いてしまうことがあります。
IPアドレスは「どのネットワークから来たか」までは分かっても、「誰が使っているか」までは区別できません。利用者を個別に見分けたい場合は、IP制限だけでなく利用者本人を確認する仕組みと組み合わせる必要があります。
IP制限だけでは本人確認にならない
IPアドレス制限は、接続元の「場所」を制御する仕組みであって、誰がアクセスしているかという本人確認そのものではありません。許可された場所の中から、盗んだIDとパスワードでログインされれば、IP制限は通過してしまいます。たとえばID基盤型のアクセス制御には、IPなどの条件を本人の認証が済んだ後に評価するものもあります。
条件付きアクセス ポリシーは、第 1 要素認証が完了した後に適用されます。
出典:条件付きアクセス ポリシー: ネットワーク 信号の使用|Microsoft Learn(https://learn.microsoft.com/ja-jp/entra/identity/conditional-access/concept-assignment-network)
IP制限は、本人確認を担う多要素認証(MFA)などとは役割が異なります。情報処理推進機構(IPA)も、不正ログイン対策としてMFAの設定を推奨しています。IP制限で入口を絞り、本人確認はMFAで行う組み合わせが現実的な守り方で、これを一つの仕組みでまとめて実現する方法は記事の後半で具体化します。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:不正ログイン対策特集ページ|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(https://www.ipa.go.jp/security/anshin/measures/account_security.html)
では、IP制限と組み合わせるMFAには、どんな認証方式があり、どう選べばよいのでしょうか。認証方式ごとの違いや料金、タイプ別の選び方は、以下の記事で比較しています。
IPv4・IPv6・CIDRの設定ミスが起きる
IPアドレスの範囲は、CIDR(サイダー)表記と呼ばれる書き方で指定するのが一般的です。CIDRは「192.0.2.0/24」のように、どこまでを同じネットワークとして扱うかをまとめて表す記法で、IPv4とIPv6のどちらでも使います。
たとえば単一のIPアドレスだけを許可したいときは「/32」を付けて書くので、オフィス1拠点の固定IPが1つならそのIPを「/32」で登録すれば足ります。この範囲を広く取りすぎると意図しないIPまで許可してしまい、狭すぎると正規の利用者を弾いてしまいます。
IPv4とIPv6が混在する環境では、片方だけ許可していてもう片方からアクセスして弾かれる、といった取りこぼしも起こります。許可する範囲の表記を誤ると、設定したつもりでも効いていなかったり、逆に広く開けすぎていたりするため、登録後は実際にアクセスを試して意図どおりに動くかを確認することが欠かせません。
IPアドレス制限の設定方法(一般の手順+主要SaaS別の勘所)
IPアドレス制限の設定を、一般的な手順、主要なクラウドサービス別の勘所、サーバー側の設定の順に解説します。
設定の基本手順
サービスを問わず、IPアドレス制限の設定はおおむね次の流れで進みます。手順そのものはシンプルですが、許可するIPの洗い出しと、設定後の動作確認が成否を分けます。
- 許可したい拠点・回線のグローバルIPアドレスを洗い出す(オフィス、VPN、データセンターなど)。自社のグローバルIPは、アクセス元のIPを表示する確認サービスで調べられます。回線によってIPが固定か変動かが違うため、固定IPかどうかは契約している回線事業者への確認が必要です。
- 対象サービスの管理画面でIP制限の設定を開き、許可するIPアドレスやCIDR範囲を登録する。
- 登録後、許可した回線からと許可していない回線からの両方で実際にアクセスし、意図どおりに通る・弾かれることを確認する。
- 管理者自身が締め出されないよう、復旧手段(別の許可IPや管理者の例外)を確保しておく。
たとえばkintone(cybozu.com)の場合は、cybozu.com共通管理の「アクセス制限」からIPアドレス制限を開き、許可するIPアドレスやCIDR範囲を入力して保存する、という流れです。入力後は、許可した回線と許可していない回線の両方からアクセスして、意図どおりに通る・弾かれることを必ず確かめることが重要です。
主要SaaS別の設定の勘所
クラウドサービスによって、IP制限の設定場所や機能の呼び方、使えるプランが異なります。主要なサービスの勘所を横断で整理すると次のとおりです。画面や仕様はバージョンで変わるため、設定時は各サービスの公式ヘルプで最新の手順を確認してください。
| サービス | 設定の場所・機能名 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| kintone(cybozu.com) | cybozu.com共通管理のアクセス制限(IPアドレス制限) | 共通管理でまとめて設定。設定を誤るとアクセスできなくなるため復旧手順も確認 |
| Microsoft 365 / Exchange Online | Microsoft Entra ID の条件付きアクセス(名前付きの場所) | IP範囲を「名前付きの場所」として定義。条件は本人認証の後に適用される |
| Google Workspace | コンテキストアウェア アクセス(アクセスレベル) | IPはCIDRで指定。動的IPを使うには静的IPサブネットの定義が必要 |
| Salesforce | プロファイル単位のログインIPアドレスの範囲/組織全体の信頼済みIP範囲 | プロファイル単位と組織全体の2系統。範囲外は拒否される |
| Slack | IP許可リスト(組織設定のセキュリティ) | Enterprise Grid 向けの機能。許可リスト追加時、他IPで接続中の利用者は即サインアウト |
| Box | Box単体のIP許可リストは持たない | IPで絞りたい場合はSSO連携したID基盤(IdP)側の条件付きアクセスで制御する |
このように、IP制限といっても設定の入口はサービスごとにばらばらです。利用するサービスが増えるほど、それぞれの管理画面で個別にIPを登録・更新する手間がかかります。この「サービスごとにばらばら」という手間を一元管理で解消する方法は、このあと見ていきます。
出典・参考資料(6件)
- 参考資料:IPアドレス制限|cybozu.com ヘルプ(サイボウズ)(https://jp.kintone.help/general/ja/admin/list_security/list_access/ip_restrictions.html)
- 参考資料:条件付きアクセス ポリシー: ネットワーク 信号の使用|Microsoft Learn(https://learn.microsoft.com/ja-jp/entra/identity/conditional-access/concept-assignment-network)
- 参考資料:コンテキストアウェア アクセスレベルを作成する|Google Workspace 管理者 ヘルプ(https://knowledge.workspace.google.com/admin/security/create-context-aware-access-levels?hl=ja)
- 参考資料:ネットワーク アクセスの制限|Salesforce ヘルプ(https://help.salesforce.com/s/articleView?id=platform.security_networkaccess.htm&type=5)
- 参考資料:IP許可リストでSlackへのアクセスを管理する|Slack ヘルプセンター(https://slack.com/intl/ja-jp/help/articles/55052468755347-Manage-access-to-Slack-with-IP-allowlists)
- 参考資料:Enterprise Settings: Security Tab|Box サポート(IP制限の項目を持たないことの確認用)(https://docs.box.com/en/box-admin-tools/box-admin-reference/enterprise-settings-security-tab)
サーバー側の設定(Apache・nginx)
自社で運用するWebサーバーやアプリケーションでは、サーバー側でIP制限をかけられます。Apacheでは設定ファイルや「.htaccess」で許可・拒否のルールを記述し、nginxでは設定ファイルの allow・deny でアクセスを制御します。許可リスト型にする場合は、明示的に許可したIP以外をすべて拒否するように書くのが基本です。
たとえばnginxでは、許可する範囲に allow 203.0.113.0/24; を並べ、最後に deny all; と書いて、それ以外をすべて遮断します。
サーバー側で設定する場合も、考え方はクラウドサービスと同じで、許可するIPの洗い出しと設定後の動作確認が重要です。リバースプロキシやロードバランサーを経由している環境では、アクセス元のIPが中継機器のIPに置き換わることがあるため、本当の接続元IPをどこで判定しているかを確認してから設定します。
導入後の運用と見直し(形骸化を防ぐ)
IP制限は「設定して終わり」ではなく、放置すると少しずつ実態と合わなくなり、形だけ残って効かなくなります。設定した後の運用のポイントを見ていきます。
IP制限が形骸化する3つのパターン
許可IPリストが実態と合わなくなるのには、よくある3つのパターンがあります。自社に当てはまるものがないか確認してみてください。
- 拠点変更・担当者変更後も古いIPが残る:オフィス移転や回線変更で使わなくなったIPが、許可リストに登録されたまま放置される。
- 外部パートナーや業務委託先の例外登録が増える:一時的に許可したIPが、業務終了後も消されずに積み上がる。
- テレワーク・ハイブリッドワークで前提が崩れる:「オフィスからだけ」という前提が働き方の変化で崩れ、なし崩しに許可範囲が広がる。
許可リストの見直し・棚卸しの基準
形骸化を防ぐには、許可IPリストを定期的に棚卸しし、登録されている各IPが「今も必要か」を確認します。判断に迷うときは、次の基準で仕分けると整理しやすくなります。
- 残す:現在も使っている拠点・回線で、用途と担当が明確なIP。
- 削除する:使わなくなった拠点・回線のIP、業務が終わった委託先のIP。
- 要確認:いつ・何のために登録したか分からないIP。登録の経緯をたどってから判断する。
一時的な例外は、登録時に期限を決めておき、期限が来たら自動的に見直す運用にすると積み上がりを防げます。アクセスログと照合して、実際に使われていないIPを洗い出すのも有効です。こうした棚卸しの記録は、監査や取引先のセキュリティチェックで「アクセス元をどう管理しているか」を説明する材料にもなります。
自己締め出しの防止と一時解除の注意
IP制限で最も起きやすいトラブルが、設定ミスによる管理者自身の締め出しです。許可するIPを誤って登録すると、管理画面にすら入れなくなり、設定を直せなくなります。サービスによっては締め出し時の復旧手順が用意されていますが、設定前に復旧経路を確認し、別の許可IPを残しておくのが安全です。
障害対応などで一時的に制限を緩めたときは、戻し忘れに注意します。全許可の状態を解除し忘れると、せっかくのIP制限が無効のまま放置されます。一時解除は期限や担当を決め、作業後に必ず元に戻す運用にしておきましょう。
サービスによっては、許可リストを変更すると他のIPで接続中の利用者がその場でサインアウトされることがあります。変更のタイミングにも配慮が必要です。
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IPアドレス制限だけでは足りない理由とID基盤での統合
ここまで見てきたとおり、IPアドレス制限は「場所」を制御する有効な手段ですが、それだけでは本人確認にならず、テレワークや共有IPでは運用が難しくなります。ここからは、IP制限を含めてアクセスをどう統制するか、次の一手を整理します。
公的なセキュリティ設計の指針でも、ひとつの対策だけですべての攻撃を防ぐことはできないという前提に立っています。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)のガイドラインは、完全に防ぎきれる単一の対策は存在しないとしたうえで、複数の対策を組み合わせる多層防御の考え方を示しています。IP制限も、この多層防御を構成する一つの層と位置づけるのが実態に合っています。
情報システム内部への全ての攻撃を完全に防御し、遮断することを可能とするような対策があればそれを実施すればよいが、残念ながらそのような対策は現在存在しない。
出典:高度サイバー攻撃対処のためのリスク評価等のガイドライン 付属書|内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)(https://www.cyber.go.jp/pdf/policy/general/riskguide-appendix.pdf)
具体的には、IPアドレス制限で「場所」を絞りつつ、多要素認証やパスワードレス認証で「本人」を確認し、デバイス証明書で「端末」を限定し、必要なら時間帯でも絞る、という組み合わせで多層的に守ります。これらを統合して管理する仕組みが、IDaaS(ID管理システム)と呼ばれるID基盤です。

ID基盤を使うと、サービスごとにばらばらだったアクセス制限を一元管理できます。IP(場所)・端末・時間帯・本人確認の条件を基盤側でまとめて設定し、連携した複数のクラウドサービスに一括で適用できるため、「サービスごとに個別にIPを登録・更新する」手間や設定漏れを減らせます。IP制限の限界だった本人確認とテレワーク対応を、同じ基盤の中で補えるのが利点です。
IPアドレス制限を含むアクセス制御をまとめて管理できるサービス
IP(場所)に加えて端末・時間帯・本人確認をまとめて管理できるID基盤(IDaaS)を紹介します。まず主要なサービスを、アクセス制御の軸で比較します。
| サービス名 | CloudGate UNO | Microsoft Entra ID | Okta | HENNGE One | トラスト・ログイン byGMO |
|---|---|---|---|---|---|
| IP・場所による制限 | ●IP制限(複数登録可)・国/地域 | ●名前付きの場所(P1以上) | ●ネットワークゾーン | ●IPアドレス制限 | ●IPアドレス制限 |
| 端末(デバイス)制限 | ●デバイス証明書(オプション) | ●デバイス条件(P1以上) | ●デバイス保証ポリシー | ●デバイス証明書(オプション) | ●デバイス制限(オプション) |
| 多要素認証・パスワードレス | ●パスキー(FIDO2)・全プラン標準 | ●パスキー・Windows Hello | ●FastPass・FIDO2 | ●OTP・プッシュ承認 | ●パスキー(FIDO2)・OTP |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
表の「×(公式に記載なし)」は、各社の公式ドキュメントで確認できなかった項目で、非対応と断定するものではありません。最新の対応状況は各社の公式情報でご確認ください(本表は2026年11月時点の各社公式情報にもとづきます)。ここでは、本記事のテーマであるアクセス制御(場所・端末・時間・本人確認)を一つの基盤でどこまでまとめられるか、という観点で各サービスを並べています。
自社に合う基盤を絞り込むには、より多くのサービスを比較できる一覧も役立ちます。IDaaS全体の比較は、以下の記事でまとめて確認できます。
ここでは、場所(IP)・端末・時間・本人確認を一つの基盤でまとめて管理する具体例として、これらを3軸のアクセス制限とパスワードレス認証で統合しているサービスを取り上げます。
CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

ゼロトラストの考え方にもとづくシングルサインオン(SSO)を軸にしたIDaaSが、CloudGate UNOです。一度の認証で複数のクラウドサービスにアクセスできる利便性と、アクセス制限を組み合わせ、2008年のSSOサービス提供開始以来、国産のID基盤として開発・サポートを続けています。
アクセス制限は「端末・場所・時間」の3つの軸で細かく設定できます。本記事のテーマであるIP(場所)による制限に加えて、私用端末からのアクセスを禁止する、特定の拠点からだけ許可する、残業時間帯はアクセスさせない、といった条件を組み合わせられます。IP制限だけでは届かなかった「端末」や「時間」の制御まで、同じ基盤で一元管理できるのが特徴です。
本人確認の面では、パスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証に対応し、フィッシング攻撃に強い認証環境を提供します。IP制限で入口の場所を絞りつつ、本人確認はパスワードに頼らない方式で固められるため、「場所の制御」と「本人確認」を一つの基盤でまとめて担えます。国産ならではの日本語サポート体制も整えています。
まとめ
IPアドレス制限は、許可した場所からのアクセスだけを通す、導入しやすく効果的な対策です。社内システムや管理画面など「使う人と場所が決まっている入口」で、不正ログインの入口を狭める役割を果たします。一方で、動的IPやテレワークでは運用が難しく、共有IPでは正規利用者を巻き込み、そしてIP制限だけでは本人確認にならないという限界があります。
そのため、IP制限は単体で過信せず、多要素認証やデバイス証明書と組み合わせた多層防御の一つとして位置づけるのが現実的です。IP(場所)・端末・時間・本人確認をまとめて管理したい場合は、ID基盤(IDaaS)での統合が有力な選択肢になります。まずは自社のアクセス制限の現状を棚卸しし、どこまでを一元管理すべきかを見極めることから始めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. IPアドレス制限とは何ですか?
A. IPアドレス制限とは、あらかじめ許可したIPアドレスからのアクセスだけを通し、それ以外のアクセスを拒否する仕組みです。接続元のIPアドレス(インターネット上の機器を識別する番号)を手がかりに「どこからのアクセスを認めるか」を判定します。社内システムや管理画面を、会社のオフィスなど決まった場所からだけ使わせたいときに向いた、導入しやすいアクセス制限の方法です。
Q. IP制限とIPアドレス制限に違いはありますか?
A. IP制限とIPアドレス制限は同じ仕組みを指す言葉で、違いはありません。「IP制限」は「IPアドレス制限」を短くした呼び方で、どちらも接続元のIPアドレスでアクセスの可否を判定することを意味します。記事や製品によって表記が揺れているだけなので、同じものとして読み進めて問題ありません。
Q. IPアドレス制限に固定IPは必要ですか?
A. 許可リスト方式で安定して運用するなら、固定IPアドレスか、それに相当する仕組みが実質的に必要です。一般的なインターネット回線やモバイル回線のIPアドレスは変わることがあり、変わるたびにアクセスできなくなるためです。固定IPを契約するほか、社内ネットワークを経由するVPNを使う、静的なIP範囲を定義して許可する、といった方法でも代替できます。
Q. IPアドレス制限を設定するとテレワークではアクセスできなくなりますか?
A. 何も対策しないまま許可リスト方式にすると、自宅やモバイル回線のようにIPが変わる環境からはアクセスできなくなります。テレワークを前提にする場合は、社内ネットワークを経由するVPN、固定IPサービス、あるいは本人確認や端末の条件と組み合わせる条件付きアクセスを使うことで、場所が変わっても安全にアクセスできる運用にできます。
Q. IPアドレス制限だけで十分ですか?
A. IPアドレス制限だけでは不十分で、本人確認を担う多要素認証などと組み合わせるのが前提です。IP制限は「どこからのアクセスか」という場所を絞る仕組みで、許可された場所の中から盗んだIDとパスワードでログインされると通過してしまうためです。IP制限で入口を絞り、本人確認は多要素認証で行う、という複数の対策を重ねる多層防御の考え方が現実的です。
Q. IPアドレス制限はホワイトリストとブラックリストのどちらが安全ですか?
A. 利用者が限られる社内システムや管理画面では、許可したIPだけを通すホワイトリスト(許可リスト)方式が安全です。登録したIP以外をすべて拒否できるためです。一方、不特定多数が使う一般公開サイトは全利用者を事前登録できないため、問題のあるIPだけを拒否するブラックリスト(拒否リスト)方式に、WAFや認証などを組み合わせて守るのが一般的です。
Q. IPアドレス制限はIPv6環境でも使えますか?
A. IPアドレス制限はIPv6環境でも使えますが、割り当てられるアドレスの前半(プレフィックス)が固定されるかを回線事業者に確認する必要があります。プレフィックスが変わる契約だと許可したIPから外れてアクセスできなくなるためです。またIPv4とIPv6が混在する環境では、片方だけ許可していてもう片方から弾かれることがあるので、両方を登録しているかを確認してください。
Q. IP制限とIPバンの違いは何ですか?
A. IP制限は許可・拒否のルールを設計する仕組みを指し、IPバンはそのルールや自動判定の結果として特定のIPが遮断された状態を指します。IP制限が「どのIPを通すか」を決める設定であるのに対し、IPバンは「このIPは遮断されている」という個別の結果を表す言葉として使われることが多い、という関係です。
Q. IPアドレス制限で自分が締め出されたら、どう復旧すればよいですか?
A. 設定ミスで管理者自身が締め出された場合は、許可済みの別の回線からアクセスし直すか、提供元の復旧手順・サポートに連絡して解除します。サービスによっては締め出し時の復旧手段が用意されています。そもそも締め出しを防ぐため、設定の前に復旧経路を確認し、別の許可IPや管理者向けの例外を残しておくことが重要です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。















