クラウドサービスやリモートワークの利用が広がり、IDとパスワードだけのログインでは不正アクセスを防ぎきれない場面が増えています。その対策として多要素認証(MFA)の導入が進む一方、ログインのたびに追加の認証を求める運用は、従業員の手間やヘルプデスクへの問い合わせという新たな負担も生み出しています。
こうした利便性とセキュリティの両立という課題に応える仕組みが「アダプティブMFA(リスクベース認証)」です。ログインの状況からリスクの高さを見極め、リスクが低ければ普段どおりに、高いときだけ認証を強める考え方で、クラウド型のID管理サービスを中心に、企業規模を問わず導入できます。
本記事では、アダプティブMFAの基本から仕組み、導入時のメリットと注意点、対応する主な製品と選び方までをまとめて解説します。
目次
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アダプティブMFA(リスクベース認証)とは
アダプティブMFAとは、ログインやアクセス要求のたびにその状況(場所・端末・ネットワークなど)からリスクの高さを評価し、リスクに応じて求める認証の要素を動的に変える多要素認証の方式です。普段と変わらない低リスクのログインでは追加の確認を省き、いつもと違う高リスクのログインでだけ認証を強める、という挙動を取ります。
この定義は特定のベンダーに固有のものではありません。IBMは「ログインやアクセス要求の前後の状況に応じて、異なる認証要素、または追加の認証要素を求める多要素認証の手法」と説明しています。RSAも「ログイン試行ごとの状況に応じて認証要件を調整するMFAの一種」と、複数の提供元がほぼ同じ内容で定義しています。
出典・参考資料(2件)
リスクベース認証との違い・関係
結論から言えば、アダプティブMFAとリスクベース認証は、実務上ほぼ同じ「状況からリスクを見て認証の強さを変える」考え方を指し、製品を選ぶ場面では同義と捉えて差し支えありません。製品の紹介でも、両者はしばしば並んで登場します。
厳密にはRSAがこの2つを区別しています。アダプティブMFAは状況に応じて調整される多要素認証そのものを指します。一方のリスクベース認証は、リスクスコアリングを使って認証の要求だけでなく、より広いアクセス判断の材料とする、より広範な概念だと整理されています。
出典・参考資料(1件)
通常のMFAとの違い
通常のMFAとアダプティブMFAの最大の違いは、追加認証を求める条件にあります。通常のMFAは、普段使っている社内のパソコンからのログインでも、見知らぬ国の未登録の端末からのログインでも、毎回同じ手順で全員に同じ追加認証を求めます。アダプティブMFAはこのパターンを変え、ログインごとに状況を読み取って、必要なときにだけ強い認証を適用します。
Oktaは、通常のMFAとアダプティブMFAで共通して使える認証要素(セキュリティ質問、認証アプリのワンタイムパスワードやプッシュ通知、SMS、生体認証など)と、アダプティブMFAでのみ使える機能を区別しています。
後者には、場所・デバイス・ネットワークのコンテキスト(新しい市区町村や国、物理的に不可能な移動、新しい端末や管理対象かどうか、新しいIPや匿名化ネットワークの検知など)が含まれます。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 通常のMFAとアダプティブMFAの違い | 追加認証の求め方 | 判断に使う材料 | 低リスクのログイン | 高リスクのログイン | ねらい |
|---|---|---|---|---|---|
| 通常のMFA | ログインのたびに全員へ一律に求める | 特になし(常に同じ手順) | 毎回追加認証が必要 | 通常と同じ追加認証 | 一律に本人確認を強化する |
| アダプティブMFA | 状況から判定したリスクに応じて求める | 場所・端末・ネットワーク・時刻・ふるまい・履歴など | 追加認証を省き、スムーズにログイン | 生体認証などより強い認証を要求、または遮断 | 利便性を保ちつつ、リスクの高い場面を重点的に守る |
※上記は一般的な違いの整理です。実際の挙動や設定できる条件は製品によって異なります。
出典・参考資料(1件)
ここで比較の土台となる多要素認証(MFA)そのものについて、認証の3要素や二段階認証との違いから整理しておきたい場合は、以下の記事がわかりやすくまとまっています。
MFA(多要素認証)とは?仕組み・3要素と二段階認証との違いをわかりやすく解説
クラウドサービスの利用が当たり前になり、取引先やセキュリティガイドライン、サイバー保険の加入条件などで「MFA(多要素認証)を有効にしてほしい」と求められる場面が増えています。とはいえ、いざMFAという言葉に向き合うと、「二段階認証と何が違…
アダプティブMFAの仕組み
ここからは、アダプティブMFAが何を見てリスクを判定し、その結果で認証がどう変わるのかを解説します。アダプティブMFAはログインのたびに状況(コンテキスト)を集めてリスクの高さを評価し、その高さに応じた強さの認証を適用します。
この処理はリアルタイムで行われ、低リスクの場合は利用者が気づかないことも少なくありません。以下では、どんな信号でリスクを判断するのか、その結果で認証がどう変わるのかを順に見ていきます。

リスク判定に使われる信号
リスクの判定には、ログインに伴うさまざまな情報(信号)が使われます。IBMやRSA、Auth0の公式解説をもとに、代表的な信号と「何を見て、何を怪しいと判断するか」を整理すると、次のとおりです。
| リスク判定に使われる主な信号 | 場所 | 端末(デバイス) | ネットワーク | 時刻 | ふるまい | 履歴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 何を見るか | ログインしてきた位置情報 | 使っている端末の種類や登録状況 | 接続元のネットワークやIPアドレス | ログインした時間帯 | アクセスしようとしている対象や操作 | その利用者の過去のログイン情報 |
| 何を怪しいと判断するか | 普段と違う都市や国、短時間での地理的に不可能な移動 | 過去に使われていない新しい端末、個人所有や管理対象外の端末 | 公開IP、匿名化ネットワーク、攻撃に使われた記録のあるIP | 通常の勤務時間から外れた時間帯 | 機密性の高いデータや特権アカウントへの通常と異なるアクセス | 蓄積された過去のパターンと現在のログインが大きく食い違う |
※どの信号をどう重み付けするかは製品やポリシー設定によって異なります。
リスクレベルに応じて認証がどう変わるか
判定したリスクの高さに応じて、求める認証の強さが段階的に変わります。IBMの解説では、低・中・高の3段階で次のように対応が切り替わる例が示されています。
- 低リスク:標準的なMFAを適用します。認証アプリのプッシュ通知や、モバイル端末に送られるワンタイムパスワード(OTP)などで本人を確認します。
- 中リスク:より強い認証に切り替えます。生体認証(顔認証や指紋認証)や、利用者の履歴に関する秘密の質問など、厳格な方法を追加で求めます。
- 高リスク:ログイン試行を直ちに遮断し、組織のセキュリティ部門へ通知する場合があります。
このように、同じ利用者でも朝の社内からのログインは追加認証なしで通り、夜間に海外の新しい端末からログインすれば強い認証や遮断が働く、といった使い分けが実現します。
出典・参考資料(1件)
導入のメリットと、知っておきたい注意点・限界
アダプティブMFAは利便性とセキュリティを同時に高められる一方、運用面での注意点もあります。導入を社内で検討・説明する際の材料として、メリットと限界の両面を押さえておきましょう。
導入するメリット
最大のメリットは、利便性とセキュリティの両立です。リスクの低い日常的なログインでは追加の確認が減るため、従業員が何度も認証を求められる「プロンプト疲れ」が和らぎ、ヘルプデスクへの問い合わせ削減にもつながります。RSAは、表示されるプロンプトの数が全体的に減り、残るプロンプトも明らかにリスクの高まりと結びつくため、導入率とセキュリティ態勢の両方が向上すると説明しています。
管理者にとっては、守る対象の重要度やアクセスする人の役割に応じて、求める認証の要件を柔軟に増減できる点も利点です。社内の重要システムには高いレベルの認証を確実に適用しつつ、一般的な業務では摩擦を抑える、といった設計が可能になります。
アクセスのたびに本人確認を見直す考え方は、ゼロトラストの方針とも親和性が高く、SSO(シングルサインオン)やパスワードレス認証とあわせて認証基盤を強化する一歩としても位置づけられます。
注意点・限界
一方で、運用には相応の手間と限界があります。RSAは課題として、ポリシーの調整が複雑になりうる点を挙げています。適切な閾値や使う信号、リスクが高いと判断したときの対応を定義するには、特に大規模で多様な環境では、時間と試行錯誤が必要になります。
また、信号の品質が悪いと誤検知につながる可能性もあります。コンテキストのデータが不完全だと、問題のないログインに不要な確認を求めたり、逆に本当の脅威を見逃したりするおそれがあります。
加えて、SMSで送るワンタイムパスワードのようにフィッシングの標的になりやすい認証要素は、アダプティブMFAをどれほど高度に導入しても、依然として回避される可能性が残ります。
Auth0も、ソーシャルログインや一部の認証フローではアダプティブMFAが機能しない制限事項を公式ドキュメントで示しており、自社の利用環境で対象になるかを確認しておくことが大切です。
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アダプティブMFAに対応する主な製品
アダプティブMFA(リスクベース認証)は、多くのID管理・多要素認証の製品で利用できます。ここでは、リスクベース/アダプティブ認証のエンジンを備える主な製品を取り上げ、それぞれが何を見て、どのように認証を変えるのかを紹介します。まずは各製品の特徴を一覧で見てみましょう。
| アダプティブMFA対応製品の比較 | Okta | Microsoft Entra ID | Cisco Duo | Auth0 | RSA ID Plus | OneLogin | Entrust Identity | SafeNet Trusted Access |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(IDaaS) | クラウド(IDaaS) | クラウド(既存環境への後付け型) | クラウド(開発者向けの認証基盤) | クラウド/ハイブリッド/オンプレ/エアギャップ | クラウド(IDaaS) | クラウド(IDaaS)/オンプレ(Identity Enterprise) | クラウド(IDaaS)/STA Basic・STA・STA Premium |
| アダプティブ認証の機能・エンジン | Adaptive MFA+Okta ThreatInsight | 条件付きアクセス+Microsoft Entra ID Protection | アダプティブアクセスポリシー+リスクベース認証 | Adaptive MFA(Confidence Score) | RSA Risk AI(アシュアランスレベルHigh/Medium/Low) | SmartFactor Authentication(Vigilance AI) | アダプティブ(リスクベース)認証(RBA) | コンテキストベース認証(シナリオベース/条件付きアクセス) |
| リスク判定に使う主な信号 | デバイス・ネットワーク/IP 位置情報(新しい市区町村・国、不可能な移動) ユーザー行動・外部リスクシグナル | ユーザー・場所・デバイス・アプリ サインインリスク・ユーザーリスク | 場所・デバイスの状態・記憶済みデバイス Wi-Fiフィンガープリント・脅威パターン・ユーザー行動 | NewDevice(過去30日間に未使用の端末) ImpossibleTravel(到達不可能な移動) UntrustedIP(不審な挙動に関連するIP) | 機械学習と30種類以上のリスク信号(行動分析・ビジネス文脈など) アクセス履歴の統計分析・IP・位置情報 | 接続ネットワーク・デバイス・地理情報・時間帯(機械学習でリスクスコアを算出) | リアルタイムの文脈属性(コンテキスト)を継続的に評価 | 接続元・場所・デバイス・時刻・IPレンジ 上位プランでネットワーク条件・匿名化検出・デバイス認証状態 |
| リスク時の応答 | リスクに応じてステップアップ認証 不審IPは自動ブロック(ThreatInsight) | アクセス可否の制御、追加MFAやパスワード再設定の要求 | リスクが高い場合にコード入力を伴うVerified Duo Pushなど強い認証を要求、古い/リスクのある端末はブロック | 信頼度スコアが低い(高リスクと判断した)ログインでのみMFAを要求 | リスクに応じてステップアップ認証、リスクのある操作を遮断 | 追加MFAの要求、機微なアプリやポータルへのアクセス拒否 | 低リスクは円滑に通し、高リスク時にステップアップ認証を発動 | リスクに応じた段階的な認証(ステップアップ認証) |
| リスクベース認証の提供条件 | Adaptive MFAは上位プラン(Core Essentials以上)で提供(契約前に要確認) | リスクベース制御(ID Protection)はP2が必須(条件付きアクセス自体はP1以上) | リスクベース認証は上位のAdvantage以上 | 公開料金ページに記載なし(要お問い合わせ) | RSA Risk AIは最上位のE3または個別アドオン | SmartFactor Authenticationは上位プラン(グローバル料金ではBusiness以上) | 公開料金なし(個別見積もり) | 拡張的なシナリオポリシーは最上位のSTA Premium |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※2026年11月時点の各社公式情報による。提供プラン・条件は変更される場合があるため、最新は各社公式でご確認ください。
Okta(Okta Japan株式会社)

Oktaは、従業員や委託先など「働く人」のアイデンティティを管理するクラウド型のID基盤(IDaaS)です。SSOや多要素認証と一体で「Adaptive MFA」を提供し、アクセスのたびにデバイス・ネットワーク・場所・ふるまいなどのコンテキストを評価して、求める認証を動的に切り替えます。
通常のMFAにはない機能として、新しい市区町村・国や不可能な移動パターンといった場所のコンテキスト、新しい端末や管理対象かどうかのデバイスのコンテキストを評価できる点が挙げられます。あわせて、不審なIPアドレスを自動的にブロックする「Okta ThreatInsight」も備えています。
Microsoft Entra ID(日本マイクロソフト株式会社)

Microsoft 365やAzureの認証基盤を担うのが、クラウド型のID・アクセス管理サービスMicrosoft Entra IDです。条件付きアクセス(Conditional Access)で、ユーザー・場所・デバイス・サインインリスクなどの条件に基づいてアクセス可否や追加認証を動的に制御できます。
さらに「Microsoft Entra ID Protection」を使うと、サインインリスクやユーザーリスクの検知結果に応じて強い認証やパスワードの再設定を求める、リスクベースの制御が可能です。
ただし、このリスクベースの条件付きアクセスを利用するには上位ライセンスのMicrosoft Entra ID P2が必要になる点は、導入前に押さえておきましょう。すでにMicrosoft 365やAzureを利用している組織にとっては、追加導入なしで検討しやすい選択肢です。
Cisco Secure Access by Duo(シスコシステムズ合同会社)

Cisco Secure Access by Duo(Cisco Duo)は、多要素認証・デバイスの健全性チェック・アダプティブ(適応型)アクセスポリシーを組み合わせてアクセス可否を判定する、クラウド型のアクセスセキュリティサービスです。既存のVPNやクラウドサービスに後付けで多要素認証を導入できる点も特徴です。
リスクベース認証では、Wi-Fiフィンガープリントや脅威のパターン、ユーザーの行動を信号として使い、リスクが高いと判断した場合にコード入力を伴う強いプッシュ認証を要求します。これらのリスクベース機能は、上位のAdvantage以上のプランで提供されます。
Auth0(Okta Japan株式会社)

開発者がWebやモバイル、APIのアプリケーションにログイン機能を組み込むための認証・認可プラットフォームがAuth0です。公式ドキュメントでアダプティブMFAの仕組み(信頼度スコアによる判定)を詳しく公開しており、挙動を具体的に理解しやすい製品です。
Auth0のAdaptive MFAは、NewDevice(過去30日間に使われていない端末)、ImpossibleTravel(直前のログイン地点から到達不可能な場所)、UntrustedIP(不審な挙動に関連づくIP)という3つのリスク評価から、全体の信頼度スコア(Confidence Score)を算出します。
このスコアが低い=高リスクと判断されたログインでのみ、利用者に多要素認証による本人確認を求めます。
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RSA ID Plus(RSA Security Japan合同会社)

ハードウェアトークンによるワンタイムパスワード認証を源流とする、長年提供されてきた多要素認証製品が、RSA ID Plus(SecurID)です。政府機関や金融機関、重要インフラなど、高い保証レベルが求められる組織を主要なターゲットに据えています。
リスクベース認証エンジン「RSA Risk AI」は、機械学習と30種類以上のリスク信号(行動分析やビジネス上の文脈など)を使い、アクセス要求のたびに過去と現在のふるまいをリアルタイムで分析してリスクを採点します。その結果に応じて、リスクのある操作を遮断したり、ステップアップ認証を求めたりします。RSA Risk AIは上位プランやアドオンでの提供です。
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OneLogin(One Identity LLC)

OneLoginは、社員・顧客・パートナーのアイデンティティ管理を一元化するクラウド型のID管理サービスです。SSOや多要素認証、アカウント管理の自動化を統合して提供します。
アダプティブ認証は「SmartFactor Authentication」が担い、機械学習ベースのリスクエンジン「Vigilance AI」が接続ネットワーク・デバイス・地理情報・時間帯などからログインごとのリスクスコアを評価します。その結果に応じて、追加の多要素認証を求めたり、特定アプリやポータルへのアクセスを拒否したりと、認証要件を動的に変えます。
Entrust Identity(エントラストジャパン株式会社)

Entrust Identityは、PKI(証明書)基盤を長年の中核事業としてきたEntrustが提供するID・アクセス管理の製品群です。証明書ベースの高保証な認証方式と、FIDO2やパスキー(パスワードを使わないフィッシングに強い認証方式)といったクラウド時代の方式を一つのベンダーで両立できる点に特徴があります。
アダプティブ(リスクベース)認証(RBA)では、リアルタイムの文脈属性を継続的に評価し、リスクに応じて認証の強度を動的に調整します。低リスクのアクセスは円滑に通し、高リスク時にはステップアップ認証を発動する仕組みです。
出典・参考資料(1件)
SafeNet Trusted Access(タレスDISジャパン株式会社)

SafeNet Trusted Access(STA)は、Thalesが提供するクラウドベースのアクセス管理サービスです。SSO、多要素認証、シナリオベース(条件付き)のアクセスポリシーを一つのプラットフォームに統合しています。
STAは「リスクベース」という語ではなく、コンテキストベース認証という表現で、リスクに応じた段階的な認証(ステップアップ認証)を提供します。接続元や場所・デバイス・時刻・IPレンジなどを評価するシナリオベースのポリシーにより、必要なときにだけ信頼のレベルを引き上げる設計で、上位プランほどネットワーク条件や匿名化検出など評価できる範囲が広がります。
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自社に合う製品の選び方・検討の進め方
製品を絞り込む際は、まず既存のID基盤との関係を確認しましょう。すでに利用しているクラウド基盤やIDaaSの延長で使えるか、開発するアプリに組み込む用途かなど、いま使っている環境と地続きで導入できるかは運用負荷を大きく左右します。どの製品がどの環境に向くかは、上の比較表で提供形態やエンジンを見比べてください。
次に、自社が重視するリスク信号への対応と、その機能がどのプランで使えるかを見ていきましょう。リスクベース認証は上位プランやアドオンでの提供となる製品が多いため、必要な機能と料金プランの対応関係を早い段階で確認しておくと、見積もりのずれを防げます。
あわせて、ポリシーの調整や誤検知への対応を担える運用体制があるかも検討材料になります。RSAは、閾値や信号、エスカレーション要件の定義には時間と試行錯誤が必要だとしており、小さく始めて段階的に広げる進め方が現実的です。
各製品の料金や機能をより詳しく横並びで比較したい場合は、多要素認証(MFA)システム全体を扱った比較記事もあわせてご覧ください。
多要素認証(MFA)システムおすすめ17選を徹底比較|認証方式・料金・タイプ別の選び方
ID とパスワードだけのログインは、もはや「鍵をかけていない」のと同じ状態に近づいています。攻撃者は流出したパスワードのリストを使い回し、本物そっくりの偽サイトで認証情報を抜き取り、正規利用者になりすまして社内システムやクラウドサービスへ侵…
まとめ
アダプティブMFA(リスクベース認証)は、ログインの状況からリスクを評価し、低リスクなら普段どおり、高リスクなら認証を強めるという、通常のMFAの弱点である「一律の手間」を解消する方式です。場所・端末・ネットワーク・時刻・ふるまい・履歴などの信号でリスクを判定し、その高さに応じて認証を段階的に変えることで、利便性とセキュリティを両立します。
一方で、ポリシー調整の手間や誤検知、SMSによるワンタイムパスワードの弱さといった限界もあり、導入にあたっては運用体制まで含めた検討が欠かせません。対応製品はクラウド型のIDaaSを中心に複数あり、既存のID基盤や必要な機能、提供プランを軸に選ぶのが現実的です。自社に合う製品を具体的に比較する際は、各社の資料をまとめて取り寄せて検討を進めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. アダプティブMFA(リスクベース認証)とは何ですか?
A. アダプティブMFA(リスクベース認証)とは、ログインの状況からリスクの高さを評価し、その高さに応じて求める認証の強さを動的に変える多要素認証の方式です。普段どおりの低リスクなログインでは追加の確認を省き、いつもと違う高リスクなログインでだけ認証を強める点が、毎回一律に追加認証を求める通常のMFAと異なります。
Q. アダプティブMFAとリスクベース認証は同じものですか?
A. アダプティブMFAとリスクベース認証は、実務上はほぼ同じ「状況からリスクを見て認証の強さを変える」考え方を指す言葉として扱われます。厳密にはRSAなどが両者を区別し、アダプティブMFAは状況に応じて調整される多要素認証そのもの、リスクベース認証はリスクスコアをより広いアクセス判断に使うより広範な概念と整理していますが、製品を選ぶ場面では同義と捉えて問題ありません。
Q. アダプティブMFAを導入すると、従来の多要素認証(MFA)は不要になりますか?
A. アダプティブMFAは従来のMFAを置き換えるものではなく、MFAの一種として、追加認証を求めるかどうかを状況に応じて調整する仕組みです。低リスクと判断された場面で追加の確認が省かれても、IDとパスワードや標準的な本人確認そのものがなくなるわけではありません。
MFAをやめる技術ではなく、MFAの運用をより賢くするものと理解すると、選定の判断を誤りません。
Q. アダプティブMFAは、いま使っているID基盤やMFAに後付けで導入できますか?
A. アダプティブMFAを後付けで導入できるかは、製品によって異なります。既存のIDaaSの上位プランや追加機能として有効化する形が一般的で、製品によっては既存のVPNやクラウドサービスに多要素認証ごと後付けできるものもあります。
まずは自社がいま使っているID基盤でリスクベース認証の機能が使えるか、どのプランで提供されるかを確認するのが近道です。
Q. アダプティブMFAで低リスクと判断されたログインは、認証が省かれても安全ですか?
A. 低リスクと判断された場合でも、IDとパスワードや標準的なMFAによる本人確認そのものは行われ、省かれるのは「いつもどおりの状況」で上乗せされる追加の確認だけです。普段と違う場所・端末・ネットワークなどの兆候が出れば即座にリスクが上がり、より強い認証や遮断が働きます。
そのため、全員に毎回同じ認証を課す通常のMFAと比べて守りが手薄になるわけではありません。ただし、信号の品質が低いと誤検知につながる恐れがあるため、ポリシー設計は丁寧に行う必要があります。
Q. アダプティブMFAはゼロトラストとどう関係しますか?
A. アダプティブMFAは、アクセスのたびに状況からリスクを見て本人確認を見直すという点で、ゼロトラストの考え方と親和性が高い仕組みです。「一度認証したら信頼し続ける」のではなく、アクセスごとに信頼を確かめ直す発想が共通しており、SSO(シングルサインオン)やパスワードレス認証とあわせて、ゼロトラストに沿った認証基盤を段階的に整える一歩として位置づけられます。
Q. 中小企業でもアダプティブMFAを導入できますか?
A. アダプティブMFAは、クラウド型のIDaaS(ID管理サービス)を中心に、中堅・中小企業でも導入できます。多くはID管理・多要素認証の製品に備わる機能として提供されるため、専用のサーバーを自前で構える必要はありません。
ただし、リスクベース認証は上位プランやアドオンでの提供となる製品が多いため、必要な機能がどのプランに含まれるかと、ポリシー調整や誤検知への対応を担える運用体制を、導入前に確認しておくことが大切です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















