自社サービスでWeb API(アプリケーション同士をつなぐ接続口)を外部公開したり、他社のAPIと連携したりする場面が増えるなかで、「うちのAPIは本当に守れているのか」と不安を感じていませんか。
APIは、Webサイトの画面を通さずにデータをやり取りする入口です。そのため、画面向けのWebアプリ診断やWAF(Webアプリケーションファイアウォール)だけでは見つけにくい、API特有のリスクが存在します。
本記事では、国際的な指標であるOWASP API Security Top 10(2023年版)を軸に、APIが受ける主なリスク・被害・対策を解説します。あわせて、通常のWebアプリ診断では守りきれない理由と、自社APIの状態を確かめる脆弱性診断の始め方まで取り上げます。
まずは攻撃の種類を正しく把握することが、優先順位を付けた対策の第一歩になります。自社のAPIがどのリスクを抱えているのか、確認を進めていきましょう。
目次
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APIのセキュリティリスク一覧(OWASP API Security Top 10 2023)
APIのセキュリティリスクを網羅的に把握するうえで、世界的な指標になっているのがOWASP API Security Top 10です。OWASP(Open Worldwide Application Security Project)は、Webやアプリのセキュリティ情報を公開する国際的な非営利コミュニティで、API向けの代表的なリスクを10項目にまとめています。
最新版は2023年版です。各リスクについて「何が起きるのか」「想定される被害」「主な対策」を一覧にまとめました。項目名の英語略称(BOLAなど)は、海外の資料や診断レポートでそのまま使われることが多いため、あわせて示します。構成は以下の10項目です。
| リスク(OWASP 2023) | 何が起きるか | 想定される被害 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| API1 オブジェクトレベル認可の不備(BOLA) | リクエスト内のIDを差し替えると、本来アクセスできない他人のデータに到達できてしまう | 他ユーザーの個人情報・取引データの閲覧・改ざん | リクエストごとに「そのユーザーがそのデータにアクセスしてよいか」をコード側で検証する |
| API2 認証の不備(Broken Authentication) | 認証の仕組みが弱く、トークンやパスワードを推測・窃取されてなりすまされる | アカウント乗っ取り、不正ログイン | 堅牢な認証方式・トークン管理、総当たり対策 |
| API3 オブジェクトプロパティレベル認可の不備(BOPLA) | 本来返す必要のない項目まで応答に含めたり、変更不可の項目を書き換えられたりする | 過剰な情報の漏えい、データの不正な書き換え | 応答・入力で項目単位に公開/変更可否を制御する |
| API4 リソース消費の無制限(Unrestricted Resource Consumption) | リクエスト回数やデータ量に上限がなく、大量アクセスで負荷をかけられる | サービス停止(DoS)、従量課金コストの増大 | レート制限、タイムアウト・サイズ上限の設定 |
| API5 機能レベル認可の不備(BFLA) | 一般ユーザーが管理者用のエンドポイントや操作を実行できてしまう | 権限昇格、管理機能の不正利用 | 機能・操作単位で権限を検証する(既定は拒否) |
| API6 重要なビジネスフローへの無制限アクセス(Unrestricted Access to Sensitive Business Flows) | 購入・予約などの重要な処理を自動化で乱用される | 在庫の買い占め・転売、不正な大量処理 | 自動化の検知・制限、ビジネスロジック側の防御 |
| API7 サーバーサイドリクエストフォージェリ(SSRF) | APIに外部URLを取得させ、内部ネットワークへアクセスさせられる | 内部システムへの侵入・情報取得 | 外部からのURL指定の検証・制限 |
| API8 セキュリティ設定ミス(Security Misconfiguration) | 不要な機能の有効化や設定の不備が攻撃の糸口になる | 情報漏えい、侵入の足がかり | 設定の標準化・点検、不要機能の無効化 |
| API9 不適切なインベントリ管理(Improper Inventory Management) | 旧バージョンや放置された未パッチのエンドポイントが残り、攻撃に使われる | 把握していないAPI経由の侵入・漏えい | APIの棚卸し・廃止計画、ドキュメントの整備 |
| API10 安全でないAPIの利用(Unsafe Consumption of APIs) | 連携先のサードパーティAPIから受け取ったデータを無検証で信頼してしまう | 連携経由の攻撃・データ汚染 | 連携先からのデータも検証する、通信の暗号化 |
※各リスク名は編集部による日本語訳です。正式な定義は原典(OWASP API Security Top 10 2023)を参照してください。
この10項目のうち、API1・API3・API5のように「認可(権限の確認)」に関するリスクが上位に並ぶのがAPIの特徴です。認可の確認はアプリのコード側で実装されることが多く、見た目は正しいリクエストに紛れて悪用されるため、後述するとおり通常のWebアプリ診断やWAFでは見つけにくいものが含まれます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:OWASP API Security Top 10 2023|OWASP API Security Project(https://api-security.owasp.org/editions/2023/en/0x11-t10/)
各リスクが現実に招く被害の具体例
ここからは、一覧で挙げたリスクが実際にどのような被害につながるのかを、系統ごとに具体的な場面で見ていきます。「情報漏えいのリスクがある」といった一般論ではなく、「何ができてしまうのか」を押さえると、自社で優先すべき対策が見えてきます。
認可の不備:他人のデータや管理機能に到達できてしまう
APIで最も起きやすいのが認可の不備です。代表例のBOLA(オブジェクトレベル認可の不備)では、リクエストに含まれるID(たとえば注文番号や店舗名)を別の値に差し替えるだけで、本来は見られないはずの他ユーザーのデータに到達できてしまいます。
OWASPはこの認可について「通常はコードレベルで実装されるアクセス制御の仕組み」と説明しており、ECサイトの例では、攻撃者が数千店舗の売上データにアクセスできた状況が示されています。
BFLA(機能レベル認可の不備)では、一般ユーザーが管理者専用のエンドポイントを呼び出せてしまい、本来許されない操作を実行できます。いずれも、リクエスト自体は正規の形式に見えるため、送信元から見分けるのが難しいのが厄介な点です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:API1:2023 Broken Object Level Authorization|OWASP API Security Top 10 2023(https://api-security.owasp.org/editions/2023/en/0xa1-broken-object-level-authorization/)
認証の不備:なりすましでアカウントを乗っ取られる
認証(相手が誰かを確かめる仕組み)が弱いと、トークンやパスワードを推測・窃取されてなりすまされます。推測しやすいトークンや総当たり対策のない認証では、攻撃者が他人になりすましてログインし、アカウントを乗っ取れてしまいます。画面側のログインが突破されていなくても、API側の認証が甘ければそこから侵入される点に注意が必要です。
データの過剰な公開:返しすぎ・書き換えで情報が漏れる
BOPLA(オブジェクトプロパティレベル認可の不備)では、APIが応答に本来不要な項目(内部ID・権限フラグなど)まで含めてしまい、画面には表示されなくても通信を覗けば情報が取得できてしまいます。逆に、変更できないはずの項目を入力に紛れ込ませて書き換えられるケースもあります。画面を介さずデータそのものをやり取りするAPIでは、「表示していないから安全」が通用しない点に注意が必要です。
リソースの枯渇:大量アクセスでサービスが止まる
リクエスト回数やデータ量に上限がないと、大量アクセスによってサーバーが処理しきれなくなり、サービスが停止します(DoS)。クラウドの従量課金サービスでは、停止までは至らなくても想定外の課金が膨らむ被害につながります。重要な処理が自動化で乱用されれば、在庫の買い占めや不正な大量登録といったビジネス上の被害も起こり得ます。
設定ミス・放置されたAPI:気づかない入口から侵入される
設定の不備や、旧バージョン・テスト用のまま放置されたエンドポイントは、攻撃の格好の入口になります。OWASPは不適切なインベントリ管理について「古いAPIバージョンや、未パッチのまま稼働し続けるエンドポイントを通じて不正アクセスされることが多い」と指摘しています。自社でも把握しきれていないAPI(いわゆるシャドーAPI)が残っていると、守りようがないまま狙われることになります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:API9:2023 Improper Inventory Management|OWASP API Security Top 10 2023(https://api-security.owasp.org/editions/2023/en/0xa9-improper-inventory-management/)
このほか、他社のAPIと連携している場合は、連携先から受け取ったデータを無検証で信頼すると、そのデータ経由で攻撃を受けることがあります(安全でないAPIの利用)。APIに外部のURLを取得させて内部ネットワークにアクセスさせるSSRF(サーバーサイドリクエストフォージェリ)も、API特有の攻撃面として押さえておきたいリスクです。
ここまで系統ごとに見てきたとおり、APIの不備は種類を問わず実際の大規模漏えいに直結します。たとえばT-Mobileは2023年1月、米国の証券取引委員会(SEC)への提出書類で、悪意のある第三者がAPIを悪用して約3,700万件の顧客アカウントのデータを取得したと公表しました。氏名・請求先住所・メールアドレス・電話番号などが対象でした。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:T-Mobile Discloses API Data Breach(約3,700万件)|BleepingComputer(2023年1月19日)(https://www.bleepingcomputer.com/news/security/t-mobile-hacked-to-steal-data-of-37-million-accounts-in-api-data-breach/)
Webアプリ診断・WAFだけでAPIを守れない理由
「Webアプリの脆弱性診断やWAFを入れているから大丈夫」と考えがちですが、APIにはそれだけでは守りきれない領域があります。ここでは、なぜAPIに特化した視点が必要になるのかを整理します。
APIの利用拡大で攻撃対象(アタックサーフェス)が広がっている
スマートフォンアプリ、SaaS連携、外部サービスとの接続が増えるほど、公開されるAPIの数は増えます。APIは外部から常時アクセスできる入口であり、増えた分だけ攻撃の対象となる面(アタックサーフェス)も広がります。画面(Webページ)だけを守っていても、その裏で動くAPIが無防備であれば、そこが狙われます。
WAF・通常のWebアプリ診断では見つけにくいAPI特有のリスク
APIで上位を占める認可の不備(BOLA・BFLAなど)は、アプリのコード側で「そのユーザーがその操作をしてよいか」を確認する仕組みに関わります。攻撃リクエストは文法上は正しく、正規の利用と見分けにくいのが難しさの核心です。そのため、既知の攻撃パターンを照合するシグネチャ型のWAFや、対象アプリの認可ルールを知らない汎用的なWeb診断では、認可の逸脱を判別しづらい特徴があります。
ここで注意したいのは、認可の不備が「どんな検査でも見つからない」わけではない点です。汎用的なWeb診断では取りこぼしやすい一方、APIの仕様や認可ルールを理解した検査なら、構造が整理されている分むしろ見つけやすいとOWASPは整理しています。このように、守れるかどうかは検査の種類ではなく「APIの仕様を踏まえているか」で決まります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:API5:2023 Broken Function Level Authorization|OWASP API Security Top 10 2023(https://api-security.owasp.org/editions/2023/en/0xa5-broken-function-level-authorization/)
Webアプリ診断とAPI脆弱性診断の違い
Webアプリ診断は、画面(URL)をたどって入力欄やリンクを検査するのが基本です。一方、APIには画面がなく、検査すべきエンドポイントやパラメータは仕様書(OpenAPIなどの定義)で管理されます。
画面をたどる検査と、仕様書からエンドポイントを洗い出す検査では、アプローチそのものが異なります。そのため、Webアプリ診断の延長では、APIの認可ロジックやエンドポイントの網羅までは届きにくいのです。API脆弱性診断が具体的に何を・どう検査するかは、次の章で解説します。
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APIセキュリティリスクへの対策(設計・開発・運用)
APIのリスクは、設計・開発・運用の各フェーズで分担して備えると漏れが減ります。ここからは、OWASPの推奨や公的機関のガイドで示される対策を、フェーズごとに解説します。
設計フェーズ:認証・認可を最初に設計する
APIの入口となる認証(相手が誰かを確かめる)と認可(何をしてよいかを確かめる)は、設計段階で方針を固めるのが基本です。デジタル庁の「APIテクニカルガイドブック」では、情報漏えい防止の観点から「API利用者認証を強く推奨する。少なくともAPIキーによる実装以上の認証レベルを担保すること」とされています。
あわせて、APIキーはコピーされ得るため強固な対策ではない点にも留意するよう示されています。認可は、リクエストごとに「そのユーザーがそのデータ・機能にアクセスしてよいか」を確認し、既定は拒否とする最小権限の考え方で設計することが重要です。
開発・テストフェーズ:入力検証とセキュリティテスト
開発では、受け取るデータが仕様どおりかを検証(スキーマ検証・入力検証)し、応答に不要な項目を含めない作り込みが基本になります。あわせて、リリース前にセキュリティテストを組み込み、認可の抜けやパラメータ操作で不正ができないかを確認することが求められます。テストには、ツールによる自動検査と、専門家が手で攻撃を試すテストがあり、APIの仕様を踏まえて検査できる体制が欠かせません。
運用フェーズ:暗号化・レート制限・資産管理
運用では、通信の暗号化と乱用の抑制が柱になります。デジタル庁のガイドブックは、通信の改ざん・盗聴防止として、TLSによる暗号化を次のように求めています。
必ずTLS(SSL)サポートの対応をする必要がある。最新のTLS 1.3プロトコルを採用し、すべての通信でHTTPSを強制する
出典:デジタル社会推進実践ガイドブック DS-464-2「APIテクニカルガイドブック」|デジタル庁(2024年9月30日)
あわせて、サーバ負荷の管理として、利用申請と認証でAPI利用者単位の呼び出し回数を把握し、利用制限(レート制限)をかけることを挙げています。
加えて欠かせないのが、公開しているAPIの棚卸しと廃止計画です。旧バージョンやテスト用のエンドポイントを放置せず、どのAPIが動いているかを継続的に管理することが、気づかない入口からの侵入を防ぎます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:デジタル社会推進実践ガイドブック DS-464-2「APIテクニカルガイドブック」|デジタル庁(2024年9月30日)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fe5f0631-c978-42db-8416-6759cfa7e53a/f6ca1b7b/20241001_policies_development_management_outline_04.pdf)
自社APIのリスクを確かめる第一歩=API脆弱性診断
リスクと対策を押さえたら、次は「自社のAPIが実際にどのリスクを抱えているか」を確かめる段階です。ここでは、API脆弱性診断の中身と手法の選び方、そして診断に対応するサービスを紹介します。
API脆弱性診断とは何を・どう検査するか
API脆弱性診断は、APIの仕様(エンドポイントやパラメータ)をもとに検査対象を洗い出し、認可の抜け・入力検証の不備・設定ミスなどを確認する検査です。このとき同時に行いたいのが、公開しているAPIの棚卸しです。
対策フェーズでは「継続的に資産を管理する」ことが対策の一つでしたが、診断の場面では、把握できていない旧バージョンやテスト用の未知のAPI(シャドーAPI)を洗い出し、現状を可視化する役割を担います。何がどこで動いているかが分かって、はじめて守るべき対象が定まります。
診断を始めるときの大まかな流れは、次の3ステップです。
- 公開しているAPIを棚卸しし、シャドーAPIを含めて検査対象を洗い出す
- 自社の開発頻度・予算・求める精度に応じて診断手法(ツール診断・手動診断・ハイブリッド)を選ぶ
- API診断に対応するサービスの資料を取り寄せ、診断範囲と料金を比較して依頼先を決める
診断手法の選び方(ツール診断・手動診断・ハイブリッド)
API脆弱性診断の手法は、大きく3つに分かれます。ツール診断は、自動のスキャナで検査する方式で、費用を抑えて素早く広く検査できる一方、認可ロジックのような文脈依存のリスクは取りこぼすことがあります。手動診断は、専門家が仕様を理解したうえで攻撃を試す方式で、精度は高いものの費用と時間はかかります。ハイブリッド診断は、自動で広く検査しつつ要所を人が確認する折衷案です。
どの手法が合うかは、自社の開発頻度や予算、求める精度に応じて選ぶとよいでしょう。リリースのたびに繰り返し検査したいならツール診断や継続的な仕組みが向き、重要なシステムで認可まで踏み込んで確認したいなら手動診断やハイブリッドが候補になります。
手法ごとの費用の考え方や、API診断に対応するサービスをどう比べて選べばよいかをもう一歩踏み込んで知りたい方は、API脆弱性診断に絞って解説した以下の記事もあわせてご覧ください。
API診断に対応する脆弱性診断サービスの比較
ここでは、Web API(REST/GraphQLなど)の脆弱性診断に対応するサービスを比較します。提供形態(ツール型SaaS・手動診断)や診断の対象範囲はサービスごとに異なるため、自社の運用に合うものを選ぶ際の目安にしてください。
| サービス名 | Aikido Security | CoWorker 脆弱性診断サービス | Securify(セキュリファイ) | AeyeScan(エーアイスキャン) | VAddy(バディ) | セキュリティ診断(NRIセキュア) | Vex(脆弱性検査ツール) | GMOサイバーセキュリティ byイエラエ | Cloudbric脆弱性診断 | GMO Flatt Security 脆弱性診断 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社AndGo(開発元 Aikido Security・ベルギー) | CoWorker株式会社 | 株式会社スリーシェイク | 株式会社エーアイセキュリティラボ | 株式会社ビットフォレスト | NRIセキュアテクノロジーズ株式会社 | 株式会社ユービーセキュア | GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社 | ペンタセキュリティ株式会社 | GMO Flatt Security株式会社 |
| 提供形態 | ツール型SaaS(自動診断) | ハイブリッド(AI診断+専門家確認) | ツール型SaaS(自動診断) | ツール型SaaS(AI自動診断) | ツール型SaaS(自動診断・CI/CD連携) | ハイブリッド(手動主体) | ハイブリッド(ツール+診断代行) | ハイブリッド(手動診断+ツールASM) | ハイブリッド(専門家手動+ツール) | 専門家による診断(AIエージェント併用) |
| 診断対象 | ソースコード/クラウド設定/Webアプリ(DAST)/API | ソースコード/Webアプリ/API(+ペネトレーションテスト) | Webアプリ/API/クラウド設定/ASM/SBOM | Webアプリ/SPA/API/Androidアプリ | Webアプリ/APIサーバー(REST・JSON) | Web/API/スマホアプリ/クラウド/ソースコード/ペネトレーションテスト ほか | Webアプリ/API/SPA(診断代行でプラットフォーム・スマホアプリ) | Web/スマホアプリ/クラウド/ネットワーク/API/IoT ほか | Webサイト/Webアプリ/API/プラットフォーム/スマホアプリ(+ペネトレーションテスト) | Webアプリ/API/SPA/SSR/GraphQL/クラウド/LLM ほか |
| API診断 | ●製品は対応・日本窓口の提供プランは要確認 | ● | ● | △オプション機能 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 料金の目安 | 月額5万円台〜(AndGo参考価格・年間契約) | ソースコード診断15万円〜/動的(API)診断30万円〜 | 月額5万円〜(脆弱性診断STARTER) | 要問い合わせ | 月額19,800円〜(Professional・税別) | 要問い合わせ(ペネトレーションテストは800万円〜) | ツール: 年額66万円〜/診断代行: 要問い合わせ | 要問い合わせ(ネットde診断ASMは月額4万円〜) | 要問い合わせ | 100万円〜(税別) |
| 無料トライアル | あり | 記載なし | あり(最短即日) | あり(2サイト) | あり(1週間) | なし | あり(14日間) | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※料金は2026年11月時点の各社公開情報です。提供形態で読み方が異なります(ツール型SaaSは月額・年額、専門家による都度診断は1件あたりの目安)。詳細は各社の最新資料でご確認ください。
ここからは、上の比較表のうち提供形態の異なる代表例として、開発工程に組み込むオールインワンのSaaS型(Aikido Security)と、AIと専門家を組み合わせて繰り返し診断しやすいサービス(CoWorker 脆弱性診断サービス)の2社を個別に紹介します。
1. Aikido Security(株式会社AndGo)

Aikido Securityは、ソースコード・クラウド設定・依存ミドルウェア・稼働中のWebアプリなど、開発から運用までのセキュリティ検査を一つの画面でまとめて扱えるオールインワンの脆弱性診断SaaSです。ベルギーのAikido Securityが開発し、日本では株式会社AndGoが提供窓口として日本語での導入・運用を支援しています。
単機能のツールを足していくとアラートが分散して「消し込み」が負担になりがちですが、検査を統一することで対応すべきアラートを絞り込みやすいのが特徴です。検出した脆弱性の修正案をプルリクエストとして提案する機能もあり、開発初期からセキュリティを組み込むDevSecOpsの進め方に合わせて使えます。
料金は月額のサブスクリプション型で、利用するエンジニア数などに応じたプランが用意されています。自社でアプリを内製する開発チームに適したサービスです。
開発の各段階でセキュリティをどう扱うかという考え方の変化について、株式会社AndGo代表取締役の原氏は次のように話します。

正直なところ、昔は「セキュリティは運用側が最後に何とかするもの」という前提が強かったと思います。ですが今は攻撃の手口も複雑ですし、作ったあとに1回チェックして終わり、では追いつきません。だから開発の初期からセキュリティを組み込むDevSecOps(開発(Dev)、セキュリティ(Sec)、運用(Ops))が現実解になってきていて、Aikido Securityはその“回し方”を作るためのツールだと考えています。
2. CoWorker 脆弱性診断サービス(CoWorker株式会社)

CoWorker 脆弱性診断サービスは、WebアプリケーションやAPIを対象に、静的診断(ソースコード解析)・動的診断・ペネトレーションテストの3つの方法で検査するサービスです。自社開発のAI診断システム「Red Agent」を活用して検査を高速化し、その結果を社内の専門家が確認する体制をとっています。
料金は、静的診断が15万円から、動的診断がAPIのエンドポイント数に応じて30万円から、Webペネトレーションテストが60万円からと公表されています。AIで検査を効率化することで、従来は年1回程度だった診断を四半期ごと・月次といった頻度で継続しやすくしている点が特徴です。繰り返し診断を回したい企業や、API・Webを幅広く検査したい企業に向いています。
診断を繰り返し行う必要性が高まっている背景について、CoWorker株式会社の一ノ瀬氏は次のように話します。

これまでは年に1回、あるいはサービスをリリースした直後にだけ脆弱性診断を行うという企業が多かったのですが、AIの発達によって攻撃側のスピードが上がっている以上、定期的に診断をしないと危険だという状況になってきました。
API診断に限らず、Webアプリやクラウドなども含めた脆弱性診断サービス全体を見比べて選びたい場合は、以下の記事で診断方法・費用相場・選び方を解説しています。全体像をつかんだうえで自社に合う診断を検討したい方は、こちらもご覧ください。
まとめ
APIのセキュリティリスクは、OWASP API Security Top 10(2023年版)を軸に把握すると全体像がつかめます。特に、BOLAやBFLAといった認可の不備はAPIで起きやすく、正規のリクエストに見えるため、通常のWebアプリ診断やWAFだけでは見つけにくいのが特徴です。
対策は、設計・開発・運用の各フェーズで、認証・認可の設計、入力検証とセキュリティテスト、暗号化・レート制限・資産管理と分担して備えます。そのうえで、自社APIが実際にどのリスクを抱えているかは、API脆弱性診断で確かめるのが確実な一歩です。公開しているAPIの棚卸しとあわせて、自社に合った診断手法・サービスの検討を進めてみてください。
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APIセキュリティに関するよくある質問(FAQ)
Q. OWASP API Security Top 10とは何ですか?
A. OWASP API Security Top 10とは、API(アプリケーション同士をつなぐ接続口)に特有の代表的なセキュリティリスクを10項目に整理した、国際的な非営利コミュニティOWASPによる指標です。最新は2023年版で、認可の不備(BOLA・BFLA)や認証の不備、リソース消費の無制限など、APIが受けやすい攻撃の種類を網羅的に把握する下敷きとして世界的に使われています。
Q. BOLA(オブジェクトレベル認可の不備)とは何ですか?
A. BOLAとは、リクエストに含まれるID(注文番号や店舗名など)を別の値に差し替えるだけで、本来アクセスできないはずの他人のデータに到達できてしまうAPIの認可不備で、OWASP API Security Top 10の筆頭(API1)に挙げられる最も起きやすいリスクです。
リクエスト自体は正規の形式に見えるため送信元から見分けにくく、他ユーザーの個人情報や取引データの閲覧・改ざんにつながります。対策は、リクエストごとに「そのユーザーがそのデータにアクセスしてよいか」をコード側で検証することです。
Q. シャドーAPIとは何ですか?
A. シャドーAPIとは、自社でも把握しきれていない、旧バージョンやテスト用のまま放置されたAPIのエンドポイントを指します。管理対象から外れているため対策が行き届かず、未パッチのまま攻撃の入口になりやすいのが問題です。公開しているAPIの棚卸しを継続的に行い、どのAPIが動いているかを可視化することが対策の起点になります。
Q. APIのセキュリティリスクで特に注意すべきなのはどれですか?
A. APIのセキュリティリスクで特に注意すべきは、BOLA・BFLAに代表される「認可(権限の確認)」の不備です。OWASP API Security Top 10でも認可関連の項目が上位に並び、APIで最も起きやすい一方、正規のリクエストに紛れるため通常のWebアプリ診断やWAFでは見つけにくいという特徴があります。まずは認可の検証が正しく実装されているかを優先的に確認するとよいでしょう。
Q. APIにおける認証と認可(承認)の違いは何ですか?
A. APIにおける認証と認可の違いは、認証が「相手が誰かを確かめる」こと、認可が「その相手が何をしてよいかを確かめる」ことにあります。両者は別の仕組みで、認証を通ったユーザーでも、個々のデータや機能へのアクセス可否は認可で別途検証する必要があります。認可の検証が抜けると、ログイン済みの利用者が他人のデータや管理機能に到達できるBOLA・BFLAのリスクにつながります。
Q. WAFを導入していればAPIのセキュリティリスクは防げますか?
A. WAFを導入していても、APIのセキュリティリスクをすべて防げるわけではありません。APIで上位を占める認可の不備(BOLA・BFLAなど)は攻撃リクエストが文法上正しく、正規の利用と見分けにくいため、既知の攻撃パターンを照合するシグネチャ型のWAFでは認可の逸脱を判別しづらいからです。
WAFは有効な防御層の一つですが、APIの仕様や認可ルールを踏まえた対策・診断と組み合わせることが必要です。
Q. Webアプリの脆弱性診断を受けていればAPIも守れますか?
A. Webアプリの脆弱性診断を受けていても、APIのリスクまで十分に検査できているとは限りません。Webアプリ診断は画面(URL)をたどって入力欄やリンクを検査するのが基本ですが、APIには画面がなく、検査対象は仕様書(OpenAPIなどの定義)で管理されるため、アプローチそのものが異なります。APIの認可ロジックやエンドポイントの網羅までは、API脆弱性診断でなければ届きにくい領域です。
Q. APIセキュリティ対策は何から始めればよいですか?
A. APIセキュリティ対策は、設計段階で認証(相手が誰かを確かめる)と認可(何をしてよいかを確かめる)の方針を固めることから始めるのが基本です。そのうえで、開発では入力検証(スキーマ検証)と応答に不要な項目を含めない作り込み、運用では通信の暗号化・レート制限・APIの棚卸しと、設計・開発・運用の各フェーズで分担して備えると漏れが減ります。
デジタル庁のガイドでも、APIキーのみに頼らない利用者認証やTLSによる通信の暗号化が推奨されています。
Q. API脆弱性診断の手法(ツール診断・手動診断・ハイブリッド診断)はどう選べばよいですか?
A. API脆弱性診断の手法は、自社の開発頻度・予算・求める精度に応じてツール診断・手動診断・ハイブリッド診断から選びます。費用を抑えて素早く広く検査したい、またはリリースのたびに繰り返し検査したい場合はツール診断、重要なシステムで認可まで踏み込んで確認したい場合は手動診断やハイブリッド診断が候補になります。ツール診断は認可ロジックのような文脈依存のリスクを取りこぼすことがある点に留意が必要です。
Q. API脆弱性診断の費用はどのくらいかかりますか?
A. API脆弱性診断の費用は、提供形態によって幅があり、ツール型SaaSは月額数万円台から、専門家による手動診断は数十万円以上が目安です。自動スキャナ中心のSaaSは月額制で継続しやすく、専門家が仕様を理解して攻撃を試す手動診断は精度が高い分コストも上がります。対象とするエンドポイント数や診断範囲によっても変わるため、複数サービスの資料で診断対象と料金体系を比較するのが確実です。
Q. APIのセキュリティリスクを放置すると、どのような被害が起きますか?
A. APIのセキュリティリスクを放置すると、他人の個人情報・取引データの漏えい、サービスの停止(DoS)、管理機能の不正利用といった実害につながります。たとえばT-Mobileは2023年1月、APIを悪用されて約3,700万件の顧客アカウントのデータ(氏名・請求先住所・メールアドレス・電話番号など)を取得されたと公表しており、APIの不備が大規模な漏えいに直結し得ることを示しています。
Q. 自社でどんなAPIが公開されているか把握できていません。どうすればよいですか?
A. 把握できていないAPIがある場合は、まず公開しているAPIの棚卸し(アセット管理)を行い、旧バージョンやテスト用のシャドーAPIを含めて現状を可視化することが先決です。何がどこで動いているかが分かって、はじめて守るべき対象が定まります。API脆弱性診断の多くは、仕様をもとに検査対象を洗い出す過程で、把握できていなかったエンドポイントの発見にも役立ちます。
Q. API脆弱性診断はどのくらいの頻度で実施すべきですか?
A. API脆弱性診断は、APIの変更やリリースのたびに繰り返し検査するのが理想です。APIは機能追加や仕様変更が頻繁なため、一度の診断で終わらせず継続的に確認することで、新たに生まれた認可の抜けや放置されたエンドポイントを早期に発見できます。リリース頻度が高い場合は、ツール診断やCI/CDに組み込める継続的な仕組みが向いています。
Q. 小規模なサービスや社内向けのAPIでもセキュリティ対策は必要ですか?
A. 小規模なサービスや社内向けのAPIでも、外部やネットワークからアクセスできる以上、APIセキュリティ対策は必要です。APIは画面を介さずデータを直接やり取りする入口であり、規模にかかわらず認可の不備や設定ミスがあれば悪用され得ます。公開範囲が限られていても、認証・認可の検証と公開APIの棚卸しといった基本の対策は押さえておくべきです。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
















