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UTMは必要ない?いらない会社と必要な会社の違い・代わりになる対策まで解説

UTMは必要ない?いらない会社・必要な会社の違いと代替策のサムネイル画像

「UTM(統合脅威管理)はもう古い」「クラウドの時代に社内の出入口を守る機器は必要ない」といった声を目にして、自社にUTMを導入する意味があるのか迷っていませんか。

結論から言えば、UTMはすべての企業に必須ではなく、かといって不要でもありません。要否は、端末の数やクラウドの使い方、扱う情報の重要度といった自社の状況で決まります。目安としては、社内に複数の機器があり顧客情報を扱う会社ほど必要性が高く、クラウド中心で守る対象が社外にある会社ほど優先度は下がります。

本記事では、UTMが「必要ない・もう古い」と言われる理由を整理したうえで、自社が導入すべき側か、入れなくてよい側かを判定できるチェックリストと、UTMだけでは守りきれない部分を何で補えばよいかまでを解説します。読み終えたときに、自社の次の一手を決められる状態を目指します。

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UTMは必要ない?結論は「自社の条件で決まる」

UTMを入れるべきかどうかに、すべての企業に当てはまる唯一の答えはありません。守りたい端末やネットワーク機器が多く、社内ネットワークを中心に業務を行う会社では今も有効な選択肢である一方、クラウドサービス中心で守る対象が社外に出ている会社では、UTMだけでは効果が限られます。

判断の前提として押さえておきたいのが、サイバー攻撃の被害が中小企業に集中している事実です。警察庁の統計では、令和7年のランサムウェア被害報告のうち約6割を中小企業が占め、復旧費用が高額化しています。

ランサムウェア攻撃の被害企業について、組織の規模別で見ると、前年と同様に中小企業が約6割を占めている。(中略)復旧に総額 1,000 万円以上を要した組織の割合は全体の5割を超えている。

出典:令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁(令和8年3月公表)

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの脅威の第1位は「ランサム攻撃による被害」です。専任担当者を置けない企業ほど、限られた予算で何を守るかの優先順位づけが欠かせません。

ただし、ランサムウェアの多くは端末の中で実行されるため、UTMのような出入口の対策だけで防げるわけではありません。後述のとおり、端末側の対策と組み合わせることが前提になります。

出典・参考資料(1件)

そもそもUTMとは

UTM(統合脅威管理、Unified Threat Management)とは、ファイアウォール、アンチウイルス、不正侵入防止(IDS/IPS)、URLフィルタリングといった複数のセキュリティ機能を1台に集約した機器です。社内ネットワークとインターネットの境界(出入口)に置き、外から入ってくる通信や外へ出ていく通信をまとめて監視します。

機能を1台にまとめられるため、機器を個別に導入・管理するより手間とコストを抑えやすく、専任担当者がいなくても運用しやすいことから導入されてきました。一方で「出入口を守る」という設計上、どこまで守れてどこが守れないかは、あらかじめ理解しておく必要があります。

UTMの要否を分ける6つの判断軸

自社にUTMが要るかどうかは、次の6つの軸で大きく変わります。あとで述べるチェックリストも、この軸を具体的な質問に落とし込んだものです。

  1. 端末・ネットワーク機器の数:守る出入口と端末が多いほど、まとめて監視できるUTMの利点が効きます。
  2. クラウド中心か、社内ネットワーク中心か:業務の大半がクラウド上なら、社内の出入口を守るUTMの効果は限定的になります。
  3. 扱う情報の重要度・取引先からの要求:顧客情報や機密情報を扱う、または取引先から対策の実施を求められているほど、守りの層を厚くする必要があります。
  4. テレワークの比率:社外から働く人が多いほど、社内の出入口を通らない通信が増え、UTMが見えない範囲が広がります。
  5. セキュリティ専任担当の有無:専任者がいないほど、機能を1台にまとめて運用負担を減らせるUTMの手軽さが向きます。
  6. 既存のセキュリティ対策の充実度:すでに端末やクラウドで十分な対策があるなら、UTMの優先度は下がります。

【チェックリスト】UTMを入れなくてよい会社・必要性が高い会社

ここからは、先ほどの6つの軸を自社に当てはめ、UTMの要否を判定していきます。まず入れなくてよい可能性がある会社と必要性が高い会社の特徴を押さえ、最後にYes/Noで確かめられるチェックリストにまとめます。

UTMを入れなくてよい可能性がある会社

次のような会社は、UTMの優先度が下がります。いずれも「守る出入口が少ない」か「すでに別の層で守れている」ことが共通しています。

  • 利用する端末やネットワーク機器が少ない:数台のパソコンだけなら、端末ごとのウイルス対策で守る範囲を十分カバーできます。
  • 業務の中心がクラウドサービス:社内に守るべきサーバーや共有資産が少なく、通信の多くが社外のクラウドとの間で行われる場合、社内の出入口を守るUTMの効果は限られます。
  • すでに十分な対策が整っている:端末のEDR(端末での検知・対応)、クラウド側のアクセス制御などで必要な範囲を守れているなら、UTMを重ねる必要性は低くなります。

ただし、UTMを入れない場合でも、OSやソフトの更新、端末のウイルス対策、パスワード管理といった基本対策は欠かせません。「UTMが不要」は「何も守らなくてよい」ではない点に注意が必要です。

UTMの必要性が高い会社

反対に、次のような会社ではUTMの必要性が高まります。守る出入口が多く、担当者が手薄なほど、機能を1台にまとめて運用負担を下げられる利点が効いてくるためです。

  • 複数の端末・ネットワーク機器を社内で使っている:パソコンに加え、サーバー・複合機・防犯カメラなど多くの機器がネットワークにつながるほど、出入口をまとめて監視できる利点が大きくなります。
  • 顧客情報や機密情報を扱っている:漏えい時の影響が大きいため、守りの層を厚くする意味があります。
  • 社内にIT・セキュリティの専任担当がいない:個別の機器を使い分ける運用が難しいため、1台で広くカバーできるUTMが向きます。トラブル時の問い合わせ先が1社に集約される点も負担軽減につながります。
  • 取引先からセキュリティ対策を求められている:対策の実施を取引条件として確認されるケースが増えており、出入口の防御は説明しやすい対策の一つです。

【Yes/No】自社の要否を判定するチェックリスト

次の質問に「はい」が多いほど、UTMの導入を前向きに検討する価値があります。「いいえ」が多ければ、UTMより端末やクラウド側の対策を優先したほうが効果的なことが多いです。

  • 社内でパソコンのほかにサーバー・複合機・防犯カメラなど複数の機器をネットワークにつないでいる
  • 業務の中心は社内ネットワークで、クラウド中心ではない
  • 顧客情報や機密情報を社内で扱っている、または取引先からセキュリティ対策の実施を求められている
  • テレワークより出社中心で、社内から働く人が多い
  • IT・セキュリティの専任担当がおらず、個別の機器を使い分ける運用が難しい
  • 端末やクラウド側でまだ十分な対策を取れていない

目安として、「はい」が3つ以上ならUTMの導入を前向きに検討する価値があります。特に「複数の機器をつないでいる」と「顧客情報を扱う」の両方に当てはまる場合は優先度が高く、半々で迷うときは、守る機器の多さと扱う情報の重要度を重く見て判断するとよいでしょう。

「はい」が多くても、UTMだけで安心できるわけではありません。UTMが苦手とする領域は後半で解説し、何で補えばよいかまで示します。

UTMが「必要ない・もう古い」と言われる理由

「UTMは必要ない」「もう古い」という意見は、大きく2つの観点から出ています。1つはUTMの機能そのものの限界、もう1つは働き方の変化によって守るべき対象が社外へ広がったことです。それぞれが自社に当てはまるかを切り分けて考えると、不要論に流されずに判断できます。

UTMの機能的な限界

UTMは「出入口を守る」機器なので、出入口を通らない脅威や、出入口を通過した後に起きる動きには対応しきれません。具体的には、次の3つの領域が守りにくくなります。これらは記事の後半で、何で補えばよいかを示します。

  • 社内に入り込んだ後の通信・社外に出た通信:侵入後の横移動や正規利用者による持ち出し、テレワークやクラウドで社内の出入口を通らない通信、中身が暗号化されて確認しにくい通信は、出入口の監視だけでは追いきれません。
  • 端末の中で実行される感染:メールの添付やマクロ、USBメモリ経由など、出入口をすり抜けて端末に届いた後の感染は、端末側の対策でないと止めにくくなります。
  • ネットワーク機器そのものの脆弱性:複合機やルーターが初期設定のまま放置され、攻撃の踏み台にされるリスクは、UTMの通信監視とは別に点検が必要です。

端末の中で実行される感染の代表的な例が、メールを入口に広がるマルウェア「Emotet(エモテット)」です。IPAによれば、Emotetは不正なメールの添付ファイルや、本文中のリンクから誘導したファイルを通じて感染を広げ、正規のメールへの返信を装う手口も使われます。

偽の指示に従って操作してしまうと、悪意のあるマクロが実行されてしまい、Emotetに感染させられてしまいます。

出典:Emotet(エモテット)攻撃の手口|IPA

利用者がメールの指示に従ってマクロを有効にしたり、リンクをクリックしたりすると、端末内で感染が成立します。出入口を抜けて端末で実行されるこうした感染は、UTMの境界防御だけでは止めにくく、端末側で動作を監視する対策が必要になります。

出典・参考資料(1件)

クラウド・テレワークで広がった「境界の外」

「もう古い」と言われる背景には、守るべき対象が社内から社外へ広がった変化があります。クラウドサービスの普及やテレワークの定着で、データやアクセスが社内ネットワークの外に出るようになり、「社内と社外の境界を守る」という考え方だけでは守りきれない場面が増えました。

この流れを受けて広がっているのが、社内外を問わず「何も信頼しない」ことを前提に都度検証するゼロトラストや、通信とセキュリティをクラウド側で提供するSASE(サシー)といった考え方です。ゼロトラストは、2010年にアメリカの調査会社フォレスター・リサーチのジョン・キンダーバーグ氏が提唱した概念とされています。

ただし、これらはUTMと対立するものではありません。社内ネットワークを中心に業務を行う会社では、出入口を守るUTMは今も現実的な選択肢です。ゼロトラストやSASEは一般に導入コストと運用知識を要するため、「古いから捨てる」のではなく、自社の環境に合わせて使い分ける・組み合わせるのが実際的です。

出典・参考資料(1件)

UTMで足りない穴を何で埋めるか(代替・上乗せ対策)

ここからは、UTMが守りにくい領域を何で補えばよいかを整理します。UTMを入れる・入れないにかかわらず、「社内に入った後の通信」「端末の中」「ネットワーク機器の脆弱性」という3つの穴を、それぞれ別の対策で埋める考え方が有効です。前半で挙げたUTMの限界と、同じ3つの区分で対応します。

図解。UTMは社内ネットワークとインターネットの境界(出入口)の通信を監視する機器で、出入口の監視だけでは届きにくい3つの領域がある。穴1は社内に入った後・社外に出た通信(侵入後の横移動や持ち出し、テレワーク端末の通信)で、NDRが社内ネットワークの通信を記録・監視して埋める。穴2は端末の中で実行される感染(メール・マクロ経由のマルウェア)で、EPP・EDRの端末対策で止める。穴3は機器の脆弱性・被害後の復旧(複合機の初期パスワード放置など)で、脆弱性診断と隔離バックアップで備える、という対応関係を示す。

UTMの穴と、それを埋める対策の対応

UTMが苦手とする領域と、補い方の方向性を整理すると次のようになります。

← 横にスクロールできます →
社内に入り込んだ後の通信・社外に出た通信端末内で実行される感染ネットワーク機器の脆弱性・被害後の復旧
具体例侵入後の横移動、持ち出し、テレワーク端末の通信メール・マクロ経由のマルウェア感染複合機の初期パスワード放置、機器を踏み台にした侵入
埋める対策の方向性社内ネットワークの通信を記録・監視する(NDR)端末のウイルス対策・振る舞い検知(EPP/EDR)機器の脆弱性診断と、隔離したバックアップ

この3つの穴には、社内通信を監視するNDR(ネットワークでの検知・対応)、端末を守るEPP/EDR(端末の保護と検知・対応)、機器の脆弱性を診断するサービスという対策の方向性があります。以下では各方向性の代表的なサービスを1社ずつ取り上げます。まず3サービスの比較は次のとおりです。

← 横にスクロールできます →
サービス名Network BlackboxEye"247" Safety ZoneKATABAMI
UTMのどの穴を埋めるか社内に侵入された後の通信・
社外に出た通信が見えない点
出入口をすり抜けて端末内で
実行される感染を止められない点
ネットワーク機器の脆弱性や
被害後の復旧まで手が回らない点
守る対象社内ネットワークを流れる通信(全パケット)パソコン・サーバーなどの端末サーバー・複合機・PC等の社内ネットワーク機器と
バックアップ対象データ
検知・診断の方式NDR(ネットワーク検知・対応)。
通信をミラーリングで記録し、シグネチャ検知・
ユーザー行為ベースの検出・コンテンツ分析で監視
EPP+EDR。
振る舞い検知(ATC)とBitdefenderの検知エンジンで
不審な動作を監視
ネットワーク内部からの脆弱性診断(VDP、月1回)。
検出・報告・改善の伴走まで。対策実装は標準対象外
提供形態端末にソフトを入れず導入(ミラーリング方式)。
EDR・SIEMと連携可
端末にインストールするソフト+ブラウザ管理コンソール。
ランサムウェア時にファイルを自動バックアップ
予防(診断)・復旧(隔離バックアップ)・補償(サイバー保険)の
統合パッケージ。リモート診断で設置10分
料金要問い合わせ要問い合わせ
(導入台数・契約期間に応じた個別見積もり)
1台あたり月額1,250円〜
(100ノード以下は年額90万〜150万円が目安)
詳細情報公式資料を見る公式資料を見るオンライン相談を予約

1. 社内に入った後の通信を記録・監視する — Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxの公式サイト。フルパケットキャプチャ対応のNDRソリューションであることが紹介されている

Network Blackbox(ネットワークブラックボックス)は、クワッドマイナージャパンが提供するNDR(Network Detection and Response)製品です。社内ネットワークを流れる通信をミラーリング方式で取り込み、不審な動きの検知と、事後に通信を遡って調べるフォレンジックを担います。

UTMが社内に侵入された後の横移動や持ち出しを追いにくいのに対し、Network Blackboxは通信そのものを保存するため、社内で何が起きたかを後から確認できます。

既知の攻撃を検知するシグネチャに加え、利用者の行為の記録にもとづく検出や、送受信データの中身を分析する検知を併用する構成です。端末にソフトを入れずに導入でき、EDRやSIEM(ログの統合管理)とはSyslog・REST APIで連携します。料金は要問い合わせです。

2. 端末のウイルス対策と振る舞い検知で感染を止める — Eye”247″ Safety Zone(株式会社フーバーブレイン)

Eye"247" Safety Zoneの公式サイト。エンドポイントセキュリティソフトとして紹介されている

端末の中で起きる感染を止める対策が、フーバーブレインのEye”247″ Safety Zoneです。EPP(端末の保護)とEDR(端末での検知・対応)を1つにまとめたエンドポイントセキュリティソフトで、Bitdefenderの検知エンジンを採用しています。

特徴は、アプリケーションの動作を常時監視する振る舞い検知(ATC)です。Emotetのように出入口をすり抜けて端末で実行される感染を、動きの不審さから捉えて止めることを狙います。ランサムウェアの動作を監視してファイルを自動でバックアップし、直近の状態から復元できる機能も備えます。料金は導入台数や契約期間に応じた個別見積もりのため、要問い合わせです。

3. ネットワーク機器の脆弱性を毎月診断し、隔離バックアップまで — KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

KATABAMIの公式サイト。予防・復旧・補償を束ねた国産のサイバーセキュリティ対策パッケージとして紹介されている

機器の脆弱性という穴に向き合うのが、SYNCHROのKATABAMI(カタバミ)サイバーセキュリティ対策パッケージです。予防(脆弱性診断)・復旧(バックアップ)・補償(サイバー保険)を1つにまとめた国産のパッケージで、「UTMやEDRを入れたが、ちゃんと機能しているか確かめたい」というニーズに応える位置づけです。

中心となる脆弱性診断(VDP)は、ネットワークの内部から月1回のペースで診断し、複合機が工場出荷時の初期パスワードのまま使われていないか、管理者権限の設定に不備がないかといった、侵入の足がかりになりやすい弱点を洗い出します。

検出した脆弱性は対策案とともに報告され、毎月の相談会で改善を伴走します。被害に備えて、攻撃者からたどり着けない隔離した経路にデータを自動バックアップする仕組みも備えます。

料金は1台あたり月額1,250円からで、100ノード以下の場合は年額90万円〜150万円が目安です(いずれも2026年11月時点)。

UTMやEDRを導入済みの企業がこうした客観的な診断を求める背景について、提供元であるSYNCHROの北口氏は次のように話します。

北口氏
株式会社SYNCHRO 取締役CMO
北口氏
独自インタビューより

すでに対策をされている企業の場合は、UTM(ファイアウォール機能付きルーター)やアンチウイルスソフト、EDR、NDRなどが導入されています。ただ、それらが適切に機能しているかどうかは、やはりチェックしたくなるものです。すり抜けてきたウイルスの被害や、ファイアウォールが無効化されてエンドポイントに攻撃が届くような事例も増えていますので、現状の対策がどの程度機能しているかを客観的に診断したい、というニーズが多いです。

クラウドやテレワークが業務の中心で、社内の出入口を通らない通信が多い会社では、働く場所を問わず端末を守るEPP/EDRが土台になります。そのうえでクラウドサービスへのアクセス制御や、ゼロトラスト・SASEといった境界に依存しない守り方は、守る対象別に整理した比較記事で確認できます。

UTMを入れると決めたら確認したい選び方の勘所

チェックリストの結果、UTMを導入すると決めたなら、最低限押さえておきたい選定の観点があります。まず押さえたいのが、自社の接続台数と通信量に機器の処理性能(スループット)が合っているかという点です。性能が足りないと通信速度の低下を招き、能力に余裕がありすぎると過剰なコストになります。

次にサポート体制です。専任担当がいない会社ほど、トラブル時にどこまで対応してもらえるか、設定や運用を任せられるかが運用を左右します。設置する機器を自社で管理するのが難しい場合は、提供事業者が運用まで請け負うマネージドUTMや、拠点の増減に対応しやすいクラウド型UTMという選択肢もあります。

費用も判断材料になります。UTMの料金は接続台数・処理性能・契約形態(買い切りか月額か、保守やライセンス込みか)で幅があり、同じ規模の会社でも見積もりによって差が出ます。複数社から見積もりを取り、必要な性能に対して過不足のない構成かで比べることが大切です。入れないと判断する場合も、この費用と端末・クラウド側の対策にかかる費用を見比べると、方針を決めやすくなります。

個別の製品の比較検討まで進みたい場合は、守る対象別にタイプと代表サービスを整理した比較記事もあわせて確認してみてください。UTMのような境界防御だけでなく、端末・通信・ID・データなど「どこを守るか」からソリューションのタイプと代表サービスをたどれます。

まとめ

UTMが必要かどうかは、「もう古い」といった言葉ではなく、自社の端末数・クラウドの使い方・扱う情報・テレワーク比率・担当者の有無・既存対策で決まります。本記事のチェックリストで「はい」が多ければ導入を前向きに検討し、「いいえ」が多ければ端末やクラウド側の対策を優先するのが現実的です。

そのうえで、UTMは出入口を守る機器であり、端末の中・社内に入った後の通信・機器の脆弱性までは守りきれません。判断の結論は「入れずに端末やクラウド側の対策でいく」「UTMに端末防御や通信監視を足す」「UTMを入れる」のいずれかに整理できます。自社の弱点がどこにあるかを見極め、足りない穴を埋める一手を選んでください。

よくある質問(FAQ)

Q. UTM(統合脅威管理)とは何ですか?

A. UTM(統合脅威管理)とは、ファイアウォール・アンチウイルス・不正侵入防止(IDS/IPS)・URLフィルタリングなど複数のセキュリティ機能を1台に集約し、社内ネットワークとインターネットの境界(出入口)で通信をまとめて監視する機器です。

機能を個別に導入・管理するより手間とコストを抑えやすく、専任担当者がいなくても運用しやすいことから導入されてきました。一方で「出入口を守る」設計のため、端末の中で起きる感染や社外に出た通信までは守りきれないという前提があります。

Q. 中小企業にUTMは本当に必要ですか?

A. 中小企業にUTMが必要かは会社によって異なり、守る端末・ネットワーク機器が多く社内ネットワーク中心で業務を行う会社では有効ですが、クラウド中心で守る対象が社外にある会社では効果が限られます。

端末数・クラウドの使い方・扱う情報の重要度・テレワーク比率・専任担当の有無・既存対策の6点で判断でき、本記事のチェックリストで「はい」が多いほど導入を検討する価値があります。

ランサムウェア被害の約6割は中小企業が占めており、UTMを入れない場合でも端末のウイルス対策などの基本対策は欠かせません。

Q. UTMとファイアウォールは何が違いますか?

A. UTMとファイアウォールの違いは、ファイアウォールが通信を許可・遮断する単機能なのに対し、UTMはそのファイアウォールにアンチウイルス・IDS/IPS・URLフィルタリングなどを加えて1台に束ねたものだという点です。

ファイアウォールは「通していい通信かどうか」を主に入口で振り分けますが、UTMは通過する通信の中身まで複数の観点で検査します。すでにファイアウォールだけを使っている会社が、守りの層を広げたいときの選択肢がUTMにあたります。

Q. UTMと次世代ファイアウォール(NGFW)はどう違いますか?

A. UTMとNGFWは複数のセキュリティ機能を束ねる点は共通で、違いは出自と想定する規模にあります。UTMは中小企業向けに複数機能の手軽な一括運用を重視して発展し、NGFW(次世代ファイアウォール)はアプリケーション単位の制御や高度な侵入防止を高い処理性能で担う方向で発展しました。

両者の機能は近づいており明確な線引きは難しいため、名称にこだわるより「自社の規模・通信量に処理性能が合うか」「必要な機能が備わっているか」で選ぶのが実際的です。

Q. UTMとルーターは何が違いますか?

A. UTMとルーターの違いは、ルーターがネットワーク同士をつないで通信を振り分ける機器であるのに対し、UTMは通過する通信の中身を検査して脅威を防ぐセキュリティ機器だという点です。

ルーターにも簡易なファイアウォール機能を持つものがありますが、アンチウイルスや不正侵入防止までは備えないのが一般的です。インターネットへの接続はルーター、その通信の安全性の確認はUTM、と役割が分かれます。

Q. UTMを導入すれば、ウイルス対策ソフトは不要になりますか?

A. UTMを入れても、端末ごとのウイルス対策ソフトは不要になりません。UTMは出入口を守る機器のため、出入口をすり抜けて端末に届いたマルウェアや、USBメモリ経由の持ち込みなど、端末の中で起きる感染は止めにくいためです。

メールのマクロから感染するEmotetのように、出入口を抜けて端末で実行される脅威に備えるには、端末ごとのウイルス対策・振る舞い検知を組み合わせる必要があります。UTMと端末側の対策は、守る場所が異なる別の層だと考えてください。

Q. UTMとEDRは、どちらを導入すべきですか?

A. UTMとEDRはどちらか一方を選ぶものではなく、守る場所が違うため役割分担で考えます。UTMは社内ネットワークの出入口を、EDR(端末での検知・対応)は一人ひとりの端末の中を守ります。

出入口を抜けて端末で実行される感染はUTMでは止めにくいため、守る端末が多く境界防御を重視するならUTM、端末内の感染や侵入後の動きを捉えたいならEDR、というように自社の弱点に合わせて選び、必要なら両方を組み合わせます。

Q. クラウド型UTMにはどんな利点と注意点がありますか?

A. クラウド型UTMは、機器を自社に設置せずクラウド経由でセキュリティ機能を使える点が利点で、拠点やテレワーク端末の増減に対応しやすく、機器の設置・保守の手間も抑えられます。一方で、提供事業者やプランによって機能・料金が異なり、インターネット接続が前提になる点には注意が必要です。

拠点が複数ある会社や、機器を自社で管理するのが難しい会社に向いた選択肢です。設置型(アプライアンス型)との違いは、自社の拠点構成や運用体制に合わせて見比べるとよいでしょう。

Q. UTMの更新・入れ替えの時期はどう判断すればいいですか?

A. UTMの更新時期は、保守・ライセンスの契約期限に加え、「処理性能が通信量に足りなくなった」「必要な機能に追いつかなくなった」というサインが目安です。接続台数や通信量が増えて速度低下が起きる、新しい脅威への対応機能が不足する、といった状態は入れ替えの目安です。

契約更新の案内が届いたタイミングで、現在の自社の規模・使い方に機器が合っているかを見直すと、過不足のない機器に切り替えやすくなります。

Q. UTMの導入は法律で義務化されていますか?

A. UTMという特定の機器の導入を義務づける法律はありません。ただし、個人情報を扱う企業には個人情報保護法で適切な安全管理措置が求められ、取引先からセキュリティ対策の実施を取引条件として確認されるケースも増えています。

UTMはそうした対策の選択肢の一つであり、義務だから入れるのではなく、自社が守るべき対象に合っているかで判断するものです。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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