紙の請求書を印刷して封入し、郵送する作業をやめて電子にしたい。そう考えたとき、最初に迷うのが「電子化とは具体的に何をすればよいのか」です。PDFをメールで送れば十分なのか、それとも専用のシステムを入れる必要があるのか、選択肢そのものが見えにくいところから始まります。
この記事では、電子化を実現する3つの方法から、電子帳簿保存法・インボイス制度の保存要件、進め方と注意点、システムの選び方までを、国税庁などの出所を示しながら整理します。自社の規模や取引先の数に合った電子化の進め方の当たりを付けられます。
目次
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請求書の電子化とは
請求書の電子化とは、これまで紙で作成・郵送していた請求書を、PDFなどの電子データのまま発行し、送付・保存する形に切り替えることを指します。取引先へ送る手段が郵送からメールやWEBに変わるだけでなく、受け取った請求書をデータのまま保管する部分まで含めて「電子化」と呼びます。
電子化には、自社が発行する請求書を電子で送る「発行側の電子化」と、取引先から届く請求書を電子データで受け取って保管する「受領側の電子化」の二つの側面があります。どちらから着手しても構いませんが、進め方や必要な準備は少し変わります。
なぜ今、請求書の電子化が進んでいるのか
背景の一つが、電子帳簿保存法の改正です。電子メールやWEBでやりとりした請求書などの電子取引データは、令和6年(2024年)1月以降、原則として電子データのまま保存することが求められるようになりました。この保存のルールが、電子化を後押しする直接のきっかけになっています。
加えて、郵便料金の値上げによる郵送コストの上昇や、紙の請求書業務にかかる印刷・封入・投函の手間を減らしたいという実務上の要請も重なっています。テレワークで出社しないと請求書業務が回らない状況を避けたい、という声も電子化を進める動機になっています。
請求書を電子化する3つの方法
ここからは、請求書を電子化する具体的な方法を見ていきます。発行側の電子化には、大きく分けて「メール添付」「WEBダウンロード」「請求書発行システム」の3つの方式があります。まず全体像を、やり方・必要なもの・向いている規模・法対応のしやすさ・注意点で横並びに整理します。
| 方式 | メール添付(PDF) | 取引先にWEBでダウンロードしてもらう | 請求書発行システムを使う |
|---|---|---|---|
| やり方 | 請求書をPDFにして、メールに添付し取引先へ送る | 専用ページやサービスに請求書を掲載し、取引先にログインして取得してもらう | システム上で請求書を作成し、送付・保存までを一貫して行う |
| 必要なもの | 請求書作成ソフトやExcel、PDF化・送信できるメール環境 | WEB配信の仕組み、またはWEB発行に対応したサービス | クラウド請求書発行システムの契約 |
| 向いている規模 | 発行枚数が少なく、取引先も少ない事業者 | 定期的にまとまった枚数を送る事業者 | 発行枚数が多い、または法対応を仕組みに任せたい事業者 |
| 法対応のしやすさ | 改ざん防止措置や検索できる状態の確保を自社で用意する | サービス側が電子帳簿保存法・インボイス対応を備えるものが多い | 電子帳簿保存法・インボイス制度への対応を標準で備えるものが多い |
| 主な注意点 | 誤送信のリスク、後から探しやすい命名・管理ルールが必要 | 取引先にログイン方法や受け取り方を事前に案内する | 導入・運用コスト、取引先ごとの送付方法の切り替え設定 |
※上記は各方式の一般的な特徴を整理したものです。実際の対応可否は利用するソフト・サービスの仕様をご確認ください。
メール添付(PDF)で送る
請求書作成ソフトやExcelで作った請求書をPDFに変換し、メールに添付して送る方法です。新たなシステムを導入しなくても始められるため、発行枚数が少ない事業者にとっては手軽な選択肢になります。
一方で、送信先を間違えると情報漏えいにつながる誤送信のリスクがあり、パスワード付与や宛先の確認といった運用ルールが必要です。受け取った電子データを保存する際に、後から取引年月日・金額・取引先で探せる状態にしておく検索性の確保も、自社で工夫して用意することになります。
取引先にWEB上でダウンロードしてもらう
自社のWEBサイトや請求書配信サービスに請求書を掲載し、取引先にログインしてダウンロードしてもらう方法です。メール添付のように送信先を都度指定する必要がなく、開封や受け取りの状況を把握できるサービスもあります。
取引先にとっては新しい受け取り方になるため、ログインの手順や請求書の取得方法を事前に案内しておくことが欠かせません。配信の仕組みを備えたサービスを使えば、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応もサービス側でまかなえる場合が多くなります。
請求書発行システムでやりとりする
クラウド請求書発行システムを導入し、請求書の作成から送付、保存までを一つの仕組みで完結させる方法です。取引先ごとに電子送付か郵送代行かを切り替えられるものが多く、紙と電子が混在する期間でもそのまま運用できます。
電子帳簿保存法の保存要件やインボイス制度への対応を標準で備え、法改正への追従もサービス側が行うため、法対応の負担を仕組みに任せられる点が強みです。発行枚数が多い事業者や、要件対応を自社で抱えたくない事業者に向いています。導入・運用のコストはかかるため、削減できる手間との兼ね合いで判断します。
電子化した請求書の保存要件(電子帳簿保存法)
ここからは、電子化した請求書を保存するときに満たすべき要件を見ていきます。抽象的な言葉ではなく、「何を満たせばよいか」を条件の形で整理します。
電子保存は義務?任意?
まず押さえておきたいのが、義務なのは「電子で受け取ったデータの保存」であって、「請求書を電子で発行すること」ではない、という切り分けです。電子帳簿保存法第7条は、電子取引を行った場合に、その取引情報に係る電磁的記録(電子データ)を保存しなければならないと定めています。
所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第七条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025)
メールやWEBで請求書を電子でやりとりしたら、そのデータは電子のまま保存する義務があります。一方で、自社が発行する請求書を紙のまま出し続けること自体を禁じる規定はなく、電子で発行するかどうかは事業者が選べます。電子化は義務ではありませんが、電子でやりとりしたデータの保存は義務、という関係です。
以前は電子取引データを紙に出力して保存することも認められていましたが、その宥恕(ゆうじょ)措置は令和5年(2023年)12月31日で廃止されました。令和6年(2024年)1月以降は、システムの整備が間に合わないなどの「相当の理由」がある場合に猶予措置が設けられています。ただしこの措置でも、出力した紙だけを保存するのは認められず、電子データそのものを保存しておく必要があります。
令和6年1月以降に行う電子取引を対象とした猶予措置では、出力書面のみを保存することで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要があります
出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)問79|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/03-6.pdf)
出典・参考資料(2件)
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第七条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025)
- 出典:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)問79・問83|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/03-6.pdf)
保存要件チェックリスト(真実性と可視性の2つ)
電子取引データを保存するときに満たす要件は、大きく「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つに分かれます。真実性の確保は4つの措置のいずれか1つを、可視性の確保は原則すべての要件を満たせばクリアできます。
真実性の確保(4つの措置のいずれか1つ)
データが後から改ざんされていないことを担保するための要件です。電子帳簿保存法施行規則第4条第1項は、次の4つの措置のいずれか1つを行うよう定めています。
- タイムスタンプが付されたデータを受け取る
- データを受け取った後、速やかにタイムスタンプを付す
- 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムでデータの授受と保存を行う
- 正当な理由がない訂正・削除を防ぐ事務処理規程を定め、それに沿って運用する
4つすべてを満たす必要はなく、いずれか1つで構いません。専用システムを使わない場合でも、4番目の「事務処理規程を定めて運用する」方法なら、国税庁が公開する規程のサンプルを用意すれば対応できます。
可視性の確保(検索要件など)
保存したデータを税務調査などですぐに確認できる状態にしておくための要件です。ディスプレイや書面で速やかに出力できることに加え、次の検索機能を備える必要があります。
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第二条第六項第五号|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410M50000040043)
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
専用システムを使わずにフォルダやファイル名で管理する場合は、ファイル名を「取引年月日_取引先_金額」とそろえたり、表計算ソフトで索引を作ったりします。こうして、取引年月日・金額・取引先で探せる状態にしておきます。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者や、出力した書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示できるようにしている場合は、範囲指定と組み合わせ検索の要件が不要になる緩和もあります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第四条・第二条第六項第五号|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410M50000040043)
請求書の保存期間
電子化しても、請求書の保存期間そのものは紙のときと変わりません。法人は帳簿書類を原則7年間保存する必要があり、青色申告書を提出した事業年度に欠損金額が生じた場合などは10年間となります。
個人事業者は、帳簿は原則7年、請求書などの書類は原則5年の保存が必要です。ただし、消費税の課税事業者が仕入税額控除を受ける場合は、帳簿および請求書等を7年間(うち6年目・7年目はいずれか一方でよい)保存することとされています。
出典・参考資料(3件)
- 出典:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm)
- 出典:No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6496.htm)
- 参考資料:記帳や帳簿等保存・青色申告(帳簿書類の保存期間)|国税庁(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm)
インボイス制度で電子請求書に求められること
適格請求書(インボイス)は、電子データで交付・保存しても問題ありません。国税庁のタックスアンサーでも、適格請求書の記載事項は電磁的記録を含むと示されており、電子インボイスとして扱えます。紙か電子かに関わらず、次の6項目を満たすことが求められます。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)
- 税率ごとに区分して合計した金額および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
電子化にあたって特に見落としやすいのが、売手側にも交付した適格請求書(電磁的記録を含む)の写しを保存する義務がある点です。電子で発行した請求書は、送った控えを自社でも電子のまま保存しておきます。
出典・参考資料(2件)
- 出典:No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6497.htm)
- 出典:No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm)
電子帳簿保存法への対応は、請求書だけでなく経理業務全体に関わります。制度に対応することのメリットと見落としやすい注意点、導入を進めるときのポイントを広く押さえておきたい場合は、以下の記事もご覧ください。
請求書の電子化を進める手順と注意点
ここからは、実際に請求書の電子化を進める手順と、途中でつまずきやすいポイントを見ていきます。取引先を巻き込む取り組みのため、社内だけで完結しない点が特徴です。
電子化を進める4ステップ
電子化は、次の順序で進めるとスムーズです。方式の決定から取引先への周知までを一つずつ確認していきます。
- 電子化する方法を決める:メール添付・WEBダウンロード・請求書発行システムのどの方式にするかを、発行枚数や法対応の負担で選びます。
- 現在の取引先ごとの授受方法を確認する:どの取引先が電子を受け入れられるか、紙が必要な取引先はどこかを洗い出します。
- 取引先に電子化を周知して合意を得る:切り替えの時期や受け取り方を案内し、了承を得てから移行します。
- 受け取り方のフォローを行う:ログイン方法やデータの開き方など、取引先がつまずかないよう必要に応じて補足します。
方式を決めたら、あわせて電子帳簿保存法の保存要件(改ざん防止の措置と、探せる状態での保存)にどう対応するかも、この段階で決めておきます。専用システムを使う場合はサービス側が要件をまかないますが、自前で運用する場合は、事務処理規程やファイルの命名ルールを移行前に用意しておくと、切り替え後に慌てずに済みます。
電子化でつまずきやすいポイントと対処
電子化を進めるうえで、実務で引っかかりやすいのが取引先との調整や、印鑑・原本の扱いです。ここでは、事前に押さえておきたい点を整理します。
取引先の合意・事前周知
請求書の受け取り方は取引先の業務にも影響するため、合意を得ずに一方的に電子へ切り替えると、支払処理が滞るおそれがあります。切り替え時期・受け取り方法・問い合わせ先を記した案内を事前に送り、了承を得てから移行します。
紙を希望する取引先への個別対応
すべての取引先が一斉に電子へ移れるとは限りません。紙での受け取りを希望する取引先が残る前提で、紙と電子を併用できる運用にしておくと移行が進めやすくなります。郵送代行に対応した請求書発行システムなら、取引先ごとに送付方法を切り替えて対応できます。
印鑑・原本の扱い
紙の請求書に押していた社印をどうするかは、電子化でよく迷う点です。請求書は電子データでも有効で、押印がなくても書類として成り立ちます。取引先が慣行として押印を求める場合は、電子印鑑を画像として入れる方法で対応できます。原本という概念も、電子データ自体を保存要件どおりに保管していれば、それが正本として扱えます。
電子請求書は法的に有効か(押印の要否)
そもそも押印は、法律上の必須要件ではありません。政府の「押印についてのQ&A」は、契約一般について、書面への押印は特段の定めがある場合を除いて必要な要件ではないとの見解を示しています。
特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。
出典:押印についてのQ&A(令和2年6月19日)問1|内閣府・法務省・経済産業省(https://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf)
これは契約全般についての見解ですが、押印が私文書の効力の要件ではないという原則は請求書にも及びます。したがって、電子で発行した押印のない請求書も有効です。ただし、取引先の社内規程で押印のある請求書でないと支払処理できないケースは実務上あるため、切り替え前に取引先の運用を確認しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:押印についてのQ&A(令和2年6月19日)|内閣府・法務省・経済産業省(https://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf)
請求書を電子化するメリット・デメリット
ここからは、請求書の電子化で得られるメリットと、あらかじめ知っておきたいデメリットを、発行する側と受領する側に分けて整理します。自分の立場に近いほうから確認してください。
発行側(自社)のメリット・デメリット
発行側の主なメリットは、印刷や郵送にかかる手間とコストを削減できる点です。
- 印刷・封入・投函の手間がなくなる
- 郵送費や用紙・インク代を削減できる
- 出社しなくても発行・送付でき、テレワークに対応しやすい
- 発行済み請求書の再発行・検索がしやすくなる
一方、デメリットとして次の点をあらかじめ見込んでおきます。
- システムを導入する場合は導入・運用コストがかかる
- これまでの請求業務のフローを見直す必要がある
- 取引先ごとに電子・紙の対応を切り分ける手間が一時的に増える
発行側のメリットである手間やコストの削減が、実際にどの程度になるかは送付する帳票の件数によって変わります。請求書などの帳票を電子で送付する仕組みを提供する事業者は、導入企業での削減効果について次のように述べています。

船井総研デジタル様では請求書発行コストの30%削減、メイコー様では債権関連業務の約3割の工数削減、奈良機械製作所様では月間33時間以上の郵送業務削減といった成果が出ています。
一番わかりやすい効果は、郵送や紙で行っていた送付業務をデジタルに置き換えることによる業務コストと郵送コストの削減です。送付していた帳票の件数が多いほど、導入効果は大きくなります。
受領側(取引先)のメリット・デメリット
受領側は、請求書を早く受け取れて保管・検索がしやすくなるのが主なメリットです。
- 請求書を郵便を待たずに受け取れる
- 紙の保管スペースが不要になる
- 受け取ったデータを検索・共有しやすい
- 入力や仕訳の効率化につなげやすい
デメリットとしては、受け取り方の変化に伴う次の負担があります。
- 受け取り方(ログイン方法など)に慣れが必要
- 電子取引データを保存要件どおりに保管する対応が生じる
- 取引先ごとに受け取り方式が異なると管理が煩雑になりやすい
ここまでは主に発行側の電子化を見てきましたが、取引先から届く請求書を電子で受け取って保管する「受領側の電子化」には、受領に特化したサービスを選ぶ視点が別途必要になります。受け取り窓口の集約やデータ化、電子帳簿保存法への対応をふまえた請求書受領サービスの選び方は、以下の記事で比較しています。
電子化を担うクラウド請求書発行システムの選び方
ここからは、電子化を仕組みに任せる場合の、クラウド請求書発行システムの選び方を見ていきます。「専用システムなら安心」で済ませず、次の観点で自社に合うかを確かめるのが失敗しないコツです。
電子帳簿保存法・インボイス制度に対応しているか
保存要件やインボイスの記載事項への対応を、システム側でまかなえるかを確認します。電子帳簿保存法の要件を満たすことを示すJIIMA(日本文書情報マネジメント協会)認証を取得しているかは、判断材料の一つになります。法改正への追従をベンダーが継続的に行うかも、長く使ううえで重要です。
既存の会計・販売管理システムと連携できるか
請求データを会計ソフトや販売管理システムと連携できると、二重入力や転記のミスを減らせます。すでに使っているシステムとの連携方式(API連携や標準対応の有無)を確認し、請求から会計までデータを引き継げるかを見ます。連携が弱いと、電子化しても手作業が残ります。
取引先ごとの送付方法に対応できるか
電子に移りきれない取引先が残ることを前提に、電子送付と郵送代行を取引先ごとに切り替えられるかを確認します。郵送代行に対応していれば、紙を希望する取引先の分だけシステムから郵送を依頼でき、紙と電子の混在期間を一つの仕組みで運用できます。
セキュリティ体制とサポートは十分か
請求書には取引金額など機密性の高い情報が含まれるため、通信の暗号化やアクセス権限の設定といったセキュリティ体制を確認します。導入時の設定支援や、運用開始後の問い合わせ対応など、サポートの手厚さも、社内に専任担当を置きにくい場合ほど効いてきます。
主なクラウド請求書発行システムの比較
ここからは、電子化を担う代表的なクラウド請求書発行システムを、対応領域や料金体系、法対応の観点で比較します。料金は請求書の発行件数などに応じた個別見積りのサービスが多く、正確な費用は資料請求で確認する形が中心です。自社の請求業務に合うかを見比べる出発点にしてください。
| サービス名 | 請求管理ロボ | マネーフォワード クラウド請求書Plus | マネーフォワード クラウドインボイス |
|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社ROBOT PAYMENT | 株式会社マネーフォワード | 株式会社マネーフォワード |
| 対応領域 | 発行・集金・入金消込 | 発行・債権管理 | 送付特化 |
| 電子帳簿保存法対応 | ● | ● | ● |
| インボイス制度対応 | ● | ● | ● |
| 郵送代行 | ● | ● | ● |
| 会計・システム連携 | PCA・勘定奉行・弥生・MFクラウド会計 Salesforce・kintone | MFクラウド会計Plus Salesforce等のCRM・販売管理 | CSV・PDF・API取込 既存の販売管理システムを併用 |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 月額費用 | 要問い合わせ (月額+請求件数の従量) | 要問い合わせ (発行件数または従業員数連動) | 要問い合わせ (発行件数に応じて設定) |
| 特徴 | 請求書発行から集金・入金消込・催促まで自動化 会計ソフト・Salesforceと連携 導入1,000社以上 | 中堅〜上場・IPO準備向け 分割・合算請求やサブスク按分に対応 承認ワークフローで内部統制 | 帳票の送付業務に特化 Web・メール・郵送を自動振り分け 独自フォーマットのカスタマイズに強み |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | オンライン相談を予約 |
※料金・機能は2026年9月時点の各社公式情報にもとづきます。料金は要問い合わせのものが多く、最新の詳細は各社の公式資料でご確認ください。
主なクラウド請求書発行システムの個別紹介
比較表で挙げたサービスについて、機能・料金・特徴を個別に見ていきます。資料請求の判断材料として活用してください。
請求管理ロボ(株式会社ROBOT PAYMENT)

請求管理ロボは、請求書の発行から集金・入金消込・催促までを自動化するクラウド型の請求管理システムです。取引先と請求内容を登録しておくと毎月の請求書を自動で作成し、紙・電子の両方で送付できます。単発・定期定額・定期従量といった請求タイプに対応し、消費税額や税率区分を含めて自動で計算するため、手入力による記載ミスを抑えられます。
会計ソフト(弥生会計・勘定奉行・PCA会計・マネーフォワード クラウド会計)やSalesforce・kintoneと連携でき、インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応します。公式サイトでは1,000社以上の導入実績を掲げ、決済代行事業を母体とする入金管理の強みを持ちます。請求から会計までを一気通貫でつなぎたい中小〜中堅企業に適した選択肢です。
マネーフォワード クラウド請求書Plus(株式会社マネーフォワード)

株式会社マネーフォワードが中堅〜上場・IPO準備企業向けに提供するのが、クラウド請求書Plusです。CRMや販売管理システムと連携して受注データを取り込み、分割・合算する請求締めやサブスクリプションの売上按分に対応します。申請・承認ワークフローを備え、内部統制が求められる組織でも発行プロセスを統制できます。
マネーフォワード クラウド会計Plusと連携すれば、売上仕訳までデータでつなげられます。インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応します。複雑な請求パターンを扱う企業や、上場準備で統制を強めたい企業に向いています。料金は請求書の発行件数に応じた個別見積りです。
マネーフォワード クラウドインボイス(株式会社マネーフォワード)

帳票の送付業務だけを切り出して効率化できるのが、マネーフォワード クラウドインボイスです。CSV・PDF・API経由で帳票データを取り込み、取引先ごとにWeb送付・メール送付・郵送代行を自動で振り分けて一括送付します。既存の販売管理システムはそのまま使い続けられる構成のため、送付だけを見直したい企業に向きます。
帳票のレイアウトはパーツ単位でカスタマイズでき、自社独自のフォーマットで作りたい企業に向く点も特徴です。電子帳簿保存法・インボイス制度に対応し、マネーフォワードIDを持つ多数の事業者への電子送付もスムーズです。料金は請求書の発行件数に応じた個別見積りです。
ここで取り上げた以外にも、クラウド請求書発行システムは数多くあります。以下の記事では主要な請求書発行システムをタイプ別に比較し、選び方やインボイス制度・電子帳簿保存法への対応を詳しく解説しています。発行システムの導入を具体的に検討する段階に進んだ方は、あわせてご覧ください。
まとめ
請求書の電子化には、メール添付・WEBダウンロード・請求書発行システムの3つの方法があります。発行枚数が少なければメール添付から始められますが、電子帳簿保存法の保存要件(真実性・可視性)を自社で用意する必要があります。発行枚数が多い、または法対応を仕組みに任せたい場合は、要件対応や郵送代行を備えたクラウド請求書発行システムが有力な選択肢になります。
電子でやりとりしたデータの保存は義務である一方、請求書を電子で発行すること自体は任意です。進める際は、取引先の合意を得てから移行し、紙を希望する取引先が残る前提で運用を組むと無理なく進みます。自社の規模や取引先の数に合うサービスは、資料をまとめて取り寄せて比較検討するのがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q. 請求書の電子化は発行側と受領側のどちらから始めるべきですか?
A. どちらから始めても構いませんが、手間や効果が大きいほうから着手するのが現実的です。毎月まとまった枚数を発行していて印刷・封入・郵送の負担が重いなら発行側から、取引先から届く請求書の入力・保管に追われているなら受領側から始めると、効果を実感しやすくなります。
発行側と受領側では、選ぶサービスも進め方も変わります。発行側はこの記事で扱う請求書発行システム、受領側は請求書の受領に特化したサービスが候補になります。
Q. 請求書はPDFをメールに添付して送るだけで、電子帳簿保存法の要件を満たせますか?
A. 請求書をPDFにしてメールで送る方法でも、やりとりした電子データを「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たす形で保存すれば、電子帳簿保存法に対応できます。PDFにして送ること自体が要件を満たすわけではなく、そのデータを保存する側が要件を用意する必要があります。
具体的には、改ざん防止の措置(タイムスタンプ・訂正削除の履歴が残るシステム・事務処理規程のいずれか1つ)と、取引年月日・金額・取引先で探せる検索性の両方が必要です。専用システムを使わない場合は、国税庁が公開する事務処理規程のサンプルを整え、ファイル名を「取引年月日_取引先_金額」でそろえるなどの運用で対応できます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第四条・第二条第六項第五号|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410M50000040043)
Q. 紙で受け取った請求書も、スキャナで読み取って電子データで保存できますか?
A. 紙で受け取った請求書は、スキャナで読み取って電子データで保存する「スキャナ保存制度」を使えば、電子保存に切り替えられます。電子帳簿保存法第4条第3項は、紙の国税関係書類をスキャナで電磁的記録にして、その電子データの保存をもって紙の保存に代えることを認めています。
ただしこれは任意の制度で、解像度やタイムスタンプなどの細かな要件があります。メールやWEBで最初から電子でやりとりした請求書(電子取引データ)の保存が義務であるのとは、別の制度である点に注意してください。
出典・参考資料(1件)
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第四条第三項|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025)
Q. 請求書は信書に該当しますが、電子で送っても問題ないですか?
A. 電子データで送る請求書は、紙などの物理的な文書を送達するときの「信書」には当たらないため、メールやWEBで送っても問題ありません。信書は紙の文書を郵便や信書便で送る場合の概念で、電子データのやりとりはこれに該当しません。紙の請求書を封筒に入れて送る場合は信書として送る必要がありますが、電子化して送る分にはこの制約を受けずに配信できます。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:「信書に該当する文書に関する指針」Q&A集|総務省(https://www.soumu.go.jp/yusei/111117_01.html)
Q. 取引先が請求書の電子化に応じてくれない場合は、どうすればよいですか?
A. 取引先が電子化に応じてくれない場合は、紙と電子を併用できる運用にして、応じてくれる取引先から段階的に電子へ切り替えるのが現実的です。請求書の受け取り方は取引先の支払処理にも影響するため、合意を得ずに一方的に電子へ切り替えると支払いが滞るおそれがあります。
郵送代行に対応した請求書発行システムなら、取引先ごとに電子送付と郵送を切り替えられるため、紙を希望する取引先を残したまま電子化を進められます。切り替え時期・受け取り方法・問い合わせ先を記した案内を事前に送り、了承を得てから移行しましょう。
Q. 電子印鑑に法的効力はありますか?
A. 電子印鑑があるかないかで、請求書の効力は変わりません。そもそも押印は請求書の法律上の必須要件ではないため、電子印鑑は取引先の慣行に合わせるための手段と考えれば十分です。政府の「押印についてのQ&A」は、契約について書面への押印は特段の定めがある場合を除き必要な要件ではないとの見解を示しており、この原則は請求書にも及びます。
取引先が慣行として押印を求める場合は、印影を画像として入れる電子印鑑で対応できますが、押印のない電子請求書も有効です。ただし、取引先の社内規程で押印のある請求書でないと支払処理できないケースは実務上あるため、事前に確認しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:押印についてのQ&A(令和2年6月19日)|内閣府・法務省・経済産業省(https://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















