法人を設立して初めての決算を迎える、あるいは紙での申告からe-Taxへ切り替える——法人でe-Taxを使い始めようとすると、開始届出書の提出、電子証明書の準備、申告データの作成と、工程ごとに確認すべきことが次々に出てきます。国税庁の案内もページが分かれているため、全体を一本の流れとして追いにくいと感じる場面は少なくありません。
法人のe-Taxは、個人の確定申告とは準備や手続きが異なります。たとえば個人でよく使われる「ID・パスワード方式」(マイナンバーカードとICカードリーダライタが不要な方式)は、令和7年(2025年)10月1日に新規発行が停止され、もともと確定申告書等作成コーナー専用のため法人の申告には使えません。法人では電子証明書の準備が前提になります。
本記事では、法人がe-Taxを使い始める手順を、開始届出書の提出から利用者識別番号・電子証明書の準備、申告データの作成・電子署名・送信、受信通知の確認、納付までを一本の流れとして整理します。あわせて、自社が電子申告の義務対象かどうかの判定や、申告データの作成を効率化する会計ソフト・記帳決算申告サービスも紹介します。
目次
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法人のe-Taxの始め方【全体像】開始届出から納付までの通し手順
はじめに、法人がe-Taxで電子申告を始めるまでの全体像を、手続きの順番で確認します。国税庁は、e-Taxの利用開始の流れを次の5段階で示しています。
1 利用者識別番号の取得
出典:ご利用の流れ(法人の方)|e-Tax 国税庁
2 電子証明書の取得
3 手続を行うソフト・コーナーを選ぶ
4 申告・申請データを作成・送信する
5 送信結果を確認する
この5段階に、最初に行う開始届出書の提出と、申告後の納付を加えると、法人が実際にたどる流れは次のようになります。本記事はこの順番に沿って、各工程を解説します。
- 開始届出書を提出し、利用者識別番号を取得する
- 電子証明書を準備する(法人代表者のマイナンバーカード、または商業登記認証局などの法人用電子証明書)
- 利用するソフト・コーナー(e-Taxソフト(WEB版)や会計ソフト)を選ぶ
- 申告・申請データを作成し、電子署名を付けて送信する
- 送信後、メッセージボックスで受信通知(審査結果)を確認する
- 法人税などを納付する

e-Taxで手続きするのは法人税・消費税などの国税です。法人住民税・法人事業税といった地方税は、別システムの「eLTAX(エルタックス)」で申告します。本記事は、国税のe-Taxを使い始める手順を扱います。
出典・参考資料(1件)
法人がe-Taxでできること
e-Taxは、法人税や消費税などの申告と納付のほか、各種の申請・届出、納税証明書の交付請求までをオンラインで行える国税の電子申告・納税システムです。税務署の窓口や郵送による手続きを、インターネット経由に置き換えられます。法人の場合、法人税・地方法人税・消費税・源泉所得税などの申告・納付が中心になります。
紙での提出と比べて、窓口へ出向く必要がなく24時間送信できること、申告後の受信通知で受付の記録が残ること、添付書類の一部を省略できることなどが利点です。還付申告については、書面提出より早く還付金を受け取れる場合があります。
出典・参考資料(1件)
始める前に準備するもの(チェックリスト)
手続きに入る前に、次のものをそろえておくと迷わずに進められます。それぞれの詳細は後続の各章で解説します。
- 利用者識別番号:開始届出書を提出して取得する半角16桁の番号(あわせて暗証番号を設定)
- 電子証明書:法人代表者のマイナンバーカード(署名用電子証明書)、または商業登記認証局などが発行する法人用電子証明書
- ICカードリーダライタまたは対応スマートフォン:ICカード型の電子証明書を読み取るための機器
- 申告データを作成する手段:e-Taxソフト(WEB版)、または決算書・申告データを作成できる会計ソフト・記帳決算申告サービス
開始届出書の提出と利用者識別番号の取得
最初の工程は、開始届出書を提出して利用者識別番号を取得することです。利用者識別番号は、e-Taxを使うたびにログインや送信で使う、いわば法人のe-Tax上の識別番号にあたります。国税庁は次のように説明しています。
利用者識別番号とは、e-Taxをご利用いただくために必要な半角16桁の番号です。暗証番号とは、利用者識別番号を取得又は更新した際に登録した半角英数字8文字以上50文字以内のものです。
出典:e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて|e-Tax 国税庁
e-Taxを利用しようとする方は、開始届出書を納税地を所轄する税務署長に提出(送信)し、利用者識別番号を取得する必要があります。
届出書の区分は、法人の場合「開始届出書(法人用)新規」を選びます。提出先は、原則として納税地(本店は法人税の納税地、支店は各税法の納税地)を所轄する税務署長です。支店などがある場合は、本店の開始届出書とは別に支店等の開始届出書の提出が必要になる点に注意してください。
開始届出書の提出方法は複数あります。国税庁の「開始届出書作成・提出コーナー」からオンラインで作成・送信するほか、開始届出書に対応した会計ソフトから送信して利用者識別番号を取得する方法もあります。新しく設立した法人であれば、デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」から、法人代表者のマイナンバーカードを使って開始届出書を作成・送信し、利用者識別番号を取得することもできます。
オンラインの「開始届出書作成・提出コーナー」から提出した場合は、その場で利用者識別番号と暗証番号が通知されます。申告期限が迫っていても、提出したその日から手続きを進められます。
法人用電子証明書の選び方と必要な機器
法人のe-Taxで最もつまずきやすいのが、電子証明書の準備です。送信する申告データには、本人が作成し改ざんされていないことを示すため、電子証明書を使って電子署名を行う必要があります。国税庁は、電子証明書について次のように説明しています。
送信される申告等データには、利用者の方本人が作成し、改ざんされていないことを確認するため、電子証明書を利用して電子署名を行っていただいております。そのため、事前に電子証明書をご準備ください。
出典:ご利用の流れ(法人の方)|e-Tax 国税庁
電子証明書は、法人等の代表者等に対して発行されます。そのため、法人の代表者のマイナンバーカードの署名用電子証明書もご利用いただけます。
法人が使える電子証明書は、大きく「法人代表者のマイナンバーカード(署名用電子証明書)」と「商業登記認証局などが発行する法人用の電子証明書」の2通りです。どちらを使うかで準備物や取得の手間が変わるため、自社の状況に合わせて選びます。費用・有効期限・代表者が交代したときの扱いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 費用 | 有効期限 | 代表者が交代したとき | 向いている法人 |
|---|---|---|---|---|
| 代表者のマイナンバーカード | 追加費用なし(すでに取得済みの場合) | 署名用電子証明書は発行後5回目の誕生日まで | 新しい代表者のカードの証明書に登録し直す | 代表者自身が手続きする小規模な法人 |
| 商業登記認証局などの法人用電子証明書 | 証明期間に応じた手数料(商業登記電子証明書は3か月1,100円〜27か月8,300円) | 証明期間を3〜27か月から選択(商業登記電子証明書の場合) | 新しい代表者で取得し直す | 長期の利用や担当者を含む運用を想定する法人 |
※手数料・有効期限は2026年10月時点。商業登記電子証明書の手数料は法務省の料金表(令和7年4月改定)による。費用・取得方法の詳細は各発行機関で確認してください。
代表者のマイナンバーカード(署名用電子証明書)を使う場合
電子証明書は法人の代表者等に対して発行されるため、法人代表者がすでに持っているマイナンバーカードの署名用電子証明書をそのまま使えます。あらためて法人用の電子証明書を取得する必要がなく、追加の費用もかからないため、代表者自身がe-Taxの手続きを行う小規模な法人では手軽な選択肢です。
ただし、署名用電子証明書には有効期限(発行日から5回目の誕生日まで)があり、代表者が交代した場合は新しい代表者の電子証明書で登録し直す必要があります。経理担当者が代表者に代わって署名する運用がしづらい点にも注意が必要です。
商業登記認証局など法人用電子証明書を使う場合
もう一つは、法人用の電子証明書を発行機関から取得する方法です。e-Taxで使える電子証明書は、認証局が発行したもののうち、e-Taxで使用可能であることが確認されたものに限られます。国税庁は認証の仕組みを次のように説明しています。
e-Taxで使用できる電子証明書は、電子署名法の特定認証業務の認定を経た上で、政府認証基盤(GPKI)のブリッジ認証局と相互認証を行っている認証局が作成した電子証明書等のうち、e-Taxで使用可能であることが確認されたものです。
出典:電子証明書の取得|e-Tax 国税庁
法人がよく使うのは、法務省が運営する「商業登記認証局」が発行する電子証明書です。このほか、株式会社帝国データバンクやセコムトラストシステムズ株式会社などの民間の認証局が発行する電子証明書もe-Taxで利用できます。
取得方法や費用は発行機関ごとに異なるため、各電子証明書の発行機関に確認してください。商業登記認証局の電子証明書は、法人の登記を管轄する全国の登記所のうち指定を受けた登記所で申請・発行を受けられます。
ICカードリーダライタ・対応スマホなど必要な機器
電子証明書がICカード(マイナンバーカードやICカード型の法人用電子証明書)に組み込まれている場合は、カードを読み取るためのICカードリーダライタと、それを使うためのデバイスドライバが別途必要になることがあります。マイナンバーカードについては、ICカードリーダライタの代わりに、マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンを使える場面もあります。
所得税徴収高計算書の提出、納付情報登録依頼、納税証明書の交付請求(署名省略分)のみを利用する場合は、電子証明書は不要とされています。ただし法人税や消費税の申告データの送信には電子署名が必要で、この例外には当たりません。
「ID・パスワード方式でカードリーダー不要」は法人にも使える?(令和7年10月1日で新規発行停止)
e-Taxを調べると、「ID・パスワード方式ならマイナンバーカードもICカードリーダライタも不要」という説明を見かけます。これを法人でも使えると考えてしまいがちですが、ID・パスワード方式は個人の確定申告向けの方法で、法人の申告には使えません。国税庁は次のように説明しています。
ID・パスワード方式とは、「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されたe-Tax用のID・パスワードを利用して、「確定申告書等作成コーナー」からe-Taxを行う方法です。マイナンバーカードとICカードリーダライタは不要です。
出典:ID・パスワード方式とは何ですか。|e-Tax 国税庁(よくある質問)
※ ID・パスワード方式は確定申告書等作成コーナーでのみ利用できます。
「確定申告書等作成コーナー」は個人の所得税の確定申告などに使うもので、法人税の申告には対応していません。したがって、カードリーダー不要のID・パスワード方式は法人の申告では使えず、法人は前述の電子証明書を準備する必要があります。
さらにID・パスワード方式は、令和7年10月1日より新規発行が停止されています。国税庁の案内は次のとおりです。
令和7年10月1日より、「ID・パスワード方式」で使用するID・パスワードの新規発行を停止しております。
出典:作成・送信する開始(変更等)届出書の選択|e-Tax 国税庁
この停止は個人の確定申告書等作成コーナーで使うID・パスワードに関するものですが、いずれにしても法人のe-Taxは電子証明書による電子署名が前提です。法人として始める場合は、ID・パスワード方式ではなく電子証明書の準備から進めてください。
申告データの作成・電子署名・送信と受信通知の確認
利用者識別番号と電子証明書がそろったら、いよいよ申告データを作成して送信します。この工程は、どのソフト・コーナーで申告データを作るかによって進め方が変わります。
e-Taxソフト(WEB版)で作成・送信する
国税庁が無料で提供するe-Taxソフトや、ブラウザから使えるe-Taxソフト(WEB版)を使うと、申告・申請データの作成から送信までをe-Tax上で行えます。送信の前には、取得した電子証明書をe-Taxに登録し、作成したデータに電子署名と電子証明書を添付します。国税庁は手順を次のように説明しています。
ご自身が作成した申告・申請データであることを証明するために、ご利用の各ソフト・コーナーの画面に従い、作成データに電子署名及び電子証明書を添付します。なお、電子署名に使う電子証明書は、STEP1「電子証明書の登録」で事前にe-Taxに登録した電子証明書と同一の電子証明書、かつ有効期限内のものを使用する必要があります。
出典:ご利用の流れ(法人の方)|e-Tax 国税庁
e-Taxソフト(WEB版)での基本的な操作は、次の順に進みます。
- 取得した電子証明書をe-Taxに登録する
- 申告・申請データを作成する(会計ソフトで作成したデータを取り込む場合もある)
- 作成したデータに電子署名と電子証明書を添付する
- e-Taxへ送信する
- 送信後、メッセージボックスで受信通知(審査結果)を確認する
e-Taxソフト(WEB版)では、法人設立や異動の届出のように、ログインして手続きを選び、帳票に入力して送信する操作も行えます。一方で、法人税の申告書(別表)そのものをe-Taxソフトだけで作り込むのは負担が大きいため、実務では次に説明する会計ソフトを使ってデータを作る方法が一般的です。
会計ソフトから電子申告データを出力する(決算書・勘定科目内訳書・申告書)
法人税の電子申告では、決算書・勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書・法人税申告書(別表)といったデータを作る必要があります。これらを日々の記帳から一貫して作れるのが会計ソフトです。会計ソフトから申告データをe-Taxに載せる方法は、大きく次の3つに分かれます。
- 会計ソフトで決算書を作り、同じシリーズの申告製品を追加して、別表の作成から電子申告まで完結させる方式
- 会計ソフトで作った決算書・内訳書などのデータを、NTTデータの「達人シリーズ」などの申告ソフトに渡し、申告ソフト側で申告書を作成・送信する方式
- 記帳から決算・申告までを専門家に代行してもらい、申告データの作成・提出を任せる方式
2つめの「達人シリーズ」は、NTTデータが提供する有料の申告ソフトで、会計ソフトとは別に用意します。どの方式が合うかは、自社で申告まで行うか専門家に任せるか、資本金の規模、費用のかけ方などによって変わります。各会計ソフト・記帳決算申告サービスの対応状況は、記事後半の「申告データの作成を効率化する会計ソフト・記帳決算申告サービス」で具体的に紹介します。
会計ソフトから渡した決算データをもとに法人税申告書(別表)を作る「達人シリーズ」などの申告ソフトそのものを、対応する別表・連携できる会計ソフト・料金で比べたい場合は、以下の記事で10製品を比較しています。
送信後の受信通知を確認する
申告データを送信したら、必ず受信通知を確認します。送信直後にパソコンの画面に受付結果が表示されるほか、しばらくすると審査結果(受信通知)がメッセージボックスに格納されます。国税庁は次のように案内しています。
「申告(申請)完了」画面表示後しばらくして、送信データの審査結果(受信通知)をメッセージボックスに格納されますので、審査結果(受信通知)を必ずご確認ください。
出典:ご利用の流れ(法人の方)|e-Tax 国税庁
受信通知では、必須項目が入力されているか、データが改ざんされていないか、添付した電子証明書が有効期限内で失効していないか、事前に登録した電子証明書と一致しているかなどが審査されます。
受信通知が正しく格納されて初めて申告が受け付けられたことになるため、送信して終わりにせず、必ず内容を確認してください。メッセージボックスは、e-Taxにログインして確認します。この受信通知に格納される「納付区分番号通知」は、次の納付工程でも使います。
法人税などの納付方法と納税証明書の取得
申告が終わったら、法人税などを納付します。e-Taxを使うと、納付もオンラインで行えます。あわせて、取引や融資の場面で求められる納税証明書も、オンラインで請求できます。
電子納税(ダイレクト納付・インターネットバンキング)とクレジットカード納付
e-Taxによる電子納税には、ダイレクト納付とインターネットバンキング等の2つの方法があります。国税庁は次のように説明しています。
電子納税には、事前に税務署へ届出等をした預貯金口座からの振替により納付する方法(ダイレクト納付)と、インターネットバンキング等を利用して納付する方法があります。なお、インターネットバンキング等を利用して納付する方法には、登録方式及び入力方式の2通りの方法があります。
出典:電子納税の方法にはどのような方法がありますか。|e-Tax 国税庁(よくある質問)
ダイレクト納付は、事前に届け出た預貯金口座から口座引落しで納付する方法で、受信通知の「納付区分番号通知」から手続きできます。インターネットバンキング等は、金融機関のインターネットバンキング口座やATMから納付する方法です。
法人税などの納期限は、原則として申告期限(各事業年度終了の日の翌日から2か月以内)と同じです。ダイレクト納付を使うには事前に預貯金口座の届出が必要で、申告の直前に申し込むと当日の納付に間に合わないことがあるため、早めに準備しておくと安心です。
このほか、クレジットカードで納付する方法もあります。ただしクレジットカード納付は、e-Taxの電子納税そのものではなく、専用サイト「国税クレジットカードお支払サイト」を経由して行う別の手段で、決済手数料が別途かかります。自社の資金繰りや手数料負担に合わせて、納付方法を選びます。
納税証明書の取得(手数料370円)
納税証明書も、e-Taxからオンラインで交付請求できます。電子申請・書面発行による交付手数料は、国税庁により次のとおり定められています。
電子申請・書面発行による交付手数料は、次の算式のとおりです。
出典:納税証明書の電子申請・書面発行の場合の交付手数料はいくらでしょうか。|e-Tax 国税庁(よくある質問)
納税証明書(その1、その2) 税目数×年度数×枚数×370円
納税証明書(その3、その4) 枚数×370円
この370円は、e-Taxを使った電子申請・書面発行の場合の単価です。また、還付申告については、e-Taxで送信すると書面提出より早く還付金を受け取れる場合があり、国税庁はe-Taxで送信された還付申告を通常3週間程度で還付していると案内しています(あくまで目安です)。
出典・参考資料(1件)
電子申告が義務化されている法人かどうかの判定
法人の中には、e-Taxでの電子申告が義務づけられている法人があります。自社が義務の対象かどうかは、資本金の額などで判定します。国税庁は対象を次のように定めています。
① 内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額(以下「資本金の額等」といいます。)が1億円を超える法人
出典:大法人の電子申告の義務化について|e-Tax 国税庁
② 通算法人、相互会社、投資法人及び特定目的会社
対象となる税目は、法人税・地方法人税と消費税・地方消費税です。判定の時点は「事業年度開始の時」で、この制度は令和2年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。資本金1億円以下の多くの中小法人は義務の対象ではありませんが、その場合でもe-Taxを任意で利用できます。本記事の読者の多くは、この任意で始めるケースに当たります。
義務対象の法人であっても、例外的に書面で申告できる場合があります。国税庁は次のように定めています。
電気通信回線の故障、災害その他の理由によりe-Taxを使用することが困難であると認められる場合において、書面により申告書を提出することができると認められるときは、納税地の所轄税務署長の事前の承認を要件として、法人税等の申告書及び添付書類を書面によって提出することができます。
出典:大法人の電子申告の義務化について|e-Tax 国税庁
この書面申告の例外は災害などに限られた取り扱いで、多くの中小法人はここを気にする必要はありません。義務の対象でなければ紙でもe-Taxでも申告できるため、本記事の手順に沿ってe-Taxから始めれば問題ありません。
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申告データの作成を効率化する会計ソフト・記帳決算申告サービス
法人のe-Taxでは、開始届出や電子証明書の準備と並んで、「申告データ(決算書・勘定科目内訳書・法人税や消費税の申告書)を何で作るか」が手続きの中心になります。日々の記帳から決算書・申告データまでを一貫して作れる会計ソフトや、記帳から申告までを任せられるサービスを使うと、この工程の負担を減らせます。
ここでは、法人の申告データをe-Taxに載せる手段として役立つサービスを紹介します。会計ソフトで決算書を作り同じシリーズの申告製品で電子申告まで完結する方式、達人シリーズなどの申告ソフトへデータを渡す方式、記帳から申告まで代行してもらう方式のそれぞれに対応したサービスを取り上げます。まずは主なサービスの特徴を比較表で整理します。
| サービス名 | Tenbook(テンブック) | 弥生会計 Next | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 勘定奉行クラウド | PCAクラウド 会計 | ジョブカン会計 | 会計王 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド会計ソフト+記帳・決算・申告の代行 | クラウド会計ソフト | クラウド会計ソフト | クラウド会計ソフト | クラウド会計ソフト | クラウド会計ソフト | クラウド会計ソフト | インストール型(買い切り)+クラウド連携 |
| 決算書の作成 | ●記帳代行で作成 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
| 法人税申告書(別表)の作成 | ●提携会計事務所が代行作成 | ×自社では不可(達人シリーズが必要) | △freee申告の追加契約で作成(資本金1億円以下) | ×自社では不可(達人シリーズが必要) | △申告奉行クラウドの追加で作成 | △PCA法人税の追加で作成 | ×自社では不可(達人シリーズが必要) | ×自社では不可(達人シリーズが必要) |
| e-Tax電子申告の方式 | 記帳・決算・申告を代行 提携税理士が電子申告 | 達人シリーズ連携 決算書等を達人へ出力 | 同シリーズの申告製品で完結 freee申告からe-Tax直接送信 | 達人シリーズ連携 API連携・中間ファイル出力 | 同シリーズの申告製品で完結 申告奉行クラウドで電子申告 | 同シリーズの申告製品で完結 PCA法人税で電子申告 | 達人シリーズ連携 連携ファイルを書き出し | 達人シリーズ連携 法人税の達人と連携 |
| 対象規模の目安 | 創業期〜中小企業 (課税事業者プランは売上5億円以下が目安) | 中小法人(法人向け) | 個人事業主〜上場準備企業 | ひとり法人〜中小(〜50名目安) | 小規模〜中小企業 | 中堅・中小企業 | 中小企業・スタートアップ | 中小企業・個人事業主 |
1. Tenbook(テンブック)(シンアカウンティングサービス株式会社)

記帳から決算・申告までまとめて任せたい法人に向くのが、シンアカウンティングサービス株式会社のTenbook(テンブック)です。クラウド会計・経理ソフト「10book」の提供と、記帳代行・決算・法人税や消費税の申告までを一括で引き受ける経理アウトソーシングを組み合わせたサービスで、経理の専任者を置きにくい新設法人や、経理リソースが不足している企業を主な対象としています。
日々の支払い・請求書作成・給与計算・立替経費精算といった経理フローの構築から、決算書・申告書の作成までを一気通貫で支援します。税理士業務(申告書の作成・提出)は提携するサン共同会計事務所が担い、対応する税目は法人税(グループ通算制度・組織再編税制・国際税務を除く)・所得税・消費税です。自社でe-Taxの手続きまで手が回らない段階で、申告まで含めて任せられる選択肢になります。
記帳から決算・申告までの代行が、どのような企業の状況を想定しているのかについて、シンアカウンティングサービスの上田氏は次のように話しています。
分かりやすいのは、経理リソースが不足している企業です。特に新設法人だと、経理に時間も人も割けないですし、経理フローを構築する知識や経験も不足しがちです。それと、経理担当者の退職などで業務が不安定になるケースもよくあります。属人的なフローになっていると引き継ぎが大変ですし、退職に伴って経理が回らなくなるリスクが出てきます。
2. 弥生会計 Next(弥生株式会社)

弥生会計 Nextは、弥生株式会社が2025年4月に提供を開始した法人向けクラウド会計サービスです。会計(帳簿・決算書作成)に加えて、見積・請求書発行、経費精算、証憑管理を1つのサービスに統合し、これらのデータが自動で連携する点を特徴としています。
作成した決算書などのデータは、NTTデータの申告ソフト「達人シリーズ」(法人税の達人・内訳概況書の達人・消費税の達人など)向けにエクスポートでき、達人シリーズ側で申告書を作成して電子申告する流れになります。
弥生会計 Next自体にe-Taxへ直接送信する機能や法人税申告書を作成する機能はないため、申告は達人シリーズが担う点を押さえておきましょう。最大2か月の無料体験プランの期間中は、決算書作成と達人連携は利用できない点にも注意が必要です。
3. freee会計(フリー株式会社)

フリー株式会社が提供する統合型のクラウド会計ソフトがfreee会計です。個人事業主から新設法人・中小企業、上場準備企業までを対象に、銀行口座やクレジットカードなど1,000を超えるサービスと連携して取引データを自動取得し、仕訳の自動化から決算書の作成までを行えます。
法人税の申告書(別表)はfreee会計単体では作成できませんが、同社の「freee申告」を追加で契約すると、freee会計の決算データを連携して、e-Tax・eLTAXへ直接電子申告まで完結できます。freee申告の対象は資本金1億円以下の法人で、電気・ガス供給業や保険業(保険代理店業を除く)は利用対象外です。会計から申告まで同じシリーズでそろえて、自社で電子申告まで行いたい法人に向きます。
4. マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)

株式会社マネーフォワードが提供する、ひとり法人・中小企業向けのクラウド会計ソフトです。銀行・クレジットカードなどとデータ連携して明細を自動取得し、AIが勘定科目を提案して仕訳を自動化します。請求・経費・給与など同社の他製品と同一の基盤で連携し、バックオフィス全体の効率化を図れます。
法人税の申告には対応しておらず、申告書の作成はNTTデータの「達人シリーズ」と連携して達人側で行います。2024年3月からはAPI連携にも対応し、従来のファイルのエクスポート・インポートに加えて、達人シリーズ上の操作で会計データを取り込めるようになりました。会計ソフト側で決算書・勘定科目内訳書・概況書のデータを用意し、申告は達人シリーズに引き継ぐ構成です。
5. 勘定奉行クラウド(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

勘定奉行クラウド(勘定奉行iクラウド)は、株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)が提供する小規模〜中小企業向けのクラウド会計ソフトです。入出金明細や領収書、Excelデータなどから仕訳を自動で起票し、標準で50種類を超える帳票を備えます。
会計ソフト本体では決算報告書や消費税申告書の作成・電子申告に対応し、法人税の別表は同じシリーズの「申告奉行クラウド[法人税・地方税編]」を追加すると作成できます。申告奉行クラウドは勘定奉行クラウドと財務データをリアルタイムに連携し、別表の作成から電子申告・電子納税まで同じシリーズのなかで進められます。会計と申告を一気通貫でそろえたい法人に向く構成です。
6. PCAクラウド 会計(ピー・シー・エー株式会社)

ピー・シー・エー株式会社が長年提供してきたパッケージ「PCA会計」をクラウドで提供するのが、PCAクラウド 会計です。日常の伝票入力から元帳・試算表・決算書、経営分析帳票までを作成でき、中堅・中小企業の会計業務に必要な機能を備えています。
会計ソフト側で消費税申告書のe-Tax形式へのデータ変換・電子署名・送信ができ、決算書はXBRL(財務諸表の電子データ形式)出力に対応します。法人税の別表は同社の「PCAクラウド 法人税」または「PCAサブスク 法人税」を追加して作成し、PCA会計シリーズから勘定科目内訳明細書や法人事業概況説明書をインポートして、画面から電子申告まで進められます。
パッケージ版から続く操作性をクラウドで使いたい法人に向きます。
7. ジョブカン会計(株式会社DONUTS)

ジョブカン会計は、勤怠管理や給与計算などで知られる「ジョブカンシリーズ」を提供する株式会社DONUTSのクラウド会計ソフトです。初期費用無料・月額2,500円からという価格帯で、中小企業向けに低コストでシンプルな操作性を訴求しています。
決算書の作成まではジョブカン会計で行えますが、法人税申告書は会計ソフト単体では作成できません。NTTデータの「達人シリーズ」(法人税の達人・消費税の達人・内訳概況書の達人)向けの連携ファイルを書き出し、達人シリーズで申告書を作成・提出します。ただし「課仕80控」などの仕入控除関連の税区分を使用している場合は、達人シリーズへ書き出せない点に注意が必要です。
8. 会計王(ソリマチ株式会社)

ソリマチ株式会社の会計王は、中小企業・個人事業主向けの会計ソフトです。多くのクラウド会計ソフトと異なり、Windows PCにインストールして使うパッケージ型(買い切り型)が主力で、銀行明細の取り込みやデータ保管などにクラウド機能を組み合わせる構成です。
決算書や消費税申告書は会計王で作成できますが、法人税の申告書は作成できません。NTTデータの「法人税の達人」を導入すると、会計王と連携して申告書を作成し、電子申告できます。買い切り型で月額費用を抑えたい法人や、インストール型の操作に慣れた経理担当者にとって選択肢になります。
ここで紹介したサービスのほかにも、クラウド会計ソフトは数多くあります。料金・機能・申告への対応まで含めて幅広く比較し、自社に合うものを選びたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【2026年】クラウド会計ソフト比較15選|規模・タイプ別の選び方と料金を解説
クラウド会計ソフトの導入を検討するとき、「製品が多すぎて自社に合うものが分からない」「インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しているか不安」「手入力やExcelでの記帳から早く脱却したい」といった悩みに突き当たる担当者は少なくありません。 選…
まとめ
法人がe-Taxを始める流れは、開始届出書を提出して利用者識別番号を取得し、電子証明書を準備したうえで、申告データを作成・電子署名・送信し、受信通知を確認して納付する、という順番です。国税庁が示す5段階のフローに、開始届出書の提出と納付を加えて一本の手順として押さえておくと、工程ごとに迷わず進められます。
法人で特につまずきやすいのが電子証明書です。個人向けの「ID・パスワード方式」(令和7年10月1日に新規発行停止)は法人の申告には使えず、法人代表者のマイナンバーカードか商業登記認証局などの法人用電子証明書を準備する必要があります。
資本金1億円超などの法人は電子申告が義務ですが、それ以外の中小法人も任意で利用できます。申告データの作成を効率化したい場合は、会計ソフトや記帳決算申告サービスの活用を検討してください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 利用者識別番号や暗証番号を忘れたときはどうすればよいですか?
A. 利用者識別番号や暗証番号を忘れた場合は、新たな開始届出書ではなく「変更等届出書」を作成・送信して対応します。e-Taxの「開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から変更等届出を選び、本人確認のうえで手続きします。
改めて開始届出書を提出すると別の利用者識別番号が発行され、これまでの送信履歴やメッセージボックスを引き継げなくなるため、既存の番号を使い続けたい場合は変更等届出で対応するのが基本です。
出典・参考資料(1件)
Q. 法人の代表者が交代したときは、e-Taxの手続きはどうなりますか?
A. 代表者が交代しても法人の利用者識別番号はそのまま使え、電子署名に使う電子証明書を新しい代表者のものに登録し直すのが基本です。法人代表者のマイナンバーカード(署名用電子証明書)で署名していた場合は、新代表者の電子証明書をe-Taxに登録し直します。
あわせて、代表者氏名など登録している事項に変更が生じたときは「変更等届出書」で登録情報を更新します。商業登記認証局などの法人用電子証明書を使っている場合の扱いは、発行機関の案内もあわせて確認してください。
Q. 設立したばかりの法人でも、すぐにe-Taxを使えますか?
A. 設立直後の法人でもe-Taxを利用できます。デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」から、法人代表者のマイナンバーカードを使って開始届出書(電子申告・納税等開始(変更等)届出)を作成・送信すると、利用者識別番号を取得できます。設立の登記後、各種の設立届出とあわせてe-Taxの利用を立ち上げられるため、紙の手続きと二度手間になりません。
出典・参考資料(1件)
Q. 会計ソフトだけで法人税の申告まで完結できますか?
A. 多くのクラウド会計ソフトは決算書の作成までで、法人税申告書(別表)の作成と電子申告には、別途の申告ソフトや同じシリーズの申告製品が必要になるのが一般的です。会計ソフトは、大きく「決算データを外部の申告ソフトに渡して申告するタイプ」と「同じシリーズの申告製品を追加して自社で電子申告まで完結できるタイプ」に分かれます。
このほか、記帳から決算・申告までを専門家に任せる代行型のサービスもあります。どのサービスがどのタイプに当たるかは、本記事の比較表とサービス紹介で確認できます。自社で申告まで行うか専門家に任せるかによって、選ぶサービスが変わります。
Q. 資本金1億円以下の中小法人でもe-Taxを使えますか?
A. 資本金1億円以下の中小法人でも、e-Taxを任意で利用できます。e-Taxでの電子申告が義務づけられているのは、事業年度開始の時の資本金の額等が1億円を超える法人や、通算法人・相互会社・投資法人・特定目的会社などに限られます。
義務の対象でない中小法人は紙でもe-Taxでも申告できますが、24時間送信できることや受付の記録が残ることから、任意でe-Taxを利用する法人が増えています。自社が義務対象かどうかの判定基準は、本記事の「電子申告が義務化されている法人かどうかの判定」で確認できます。
出典・参考資料(1件)
Q. 法人がe-Taxを利用するのに費用はかかりますか?
A. e-Taxソフトやe-Taxソフト(WEB版)の利用自体は無料ですが、電子証明書の取得費用や、申告データを作成する会計ソフト・申告ソフトの費用は別途かかります。法人代表者のマイナンバーカードを使う場合は追加の証明書費用はかかりませんが、商業登記認証局などの法人用電子証明書は発行機関ごとに費用が定められています(金額は各発行機関に確認してください)。
また、納税証明書をe-Taxで交付請求する場合は、電子申請・書面発行で「税目数×年度数×枚数×370円」などの手数料がかかります。
出典・参考資料(2件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















