銀行や暗号資産交換業者、資金移動業者、貸金業者、宅地建物取引業者、士業など、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)の特定事業者には、国家公安委員会が毎年公表する「犯罪収益移転危険度調査書(NRA)」を踏まえて、自社のマネー・ローンダリング対策を見直すことが求められています。最新版は令和7年11月に公表されました。
調査書は、どの取引形態・国・顧客属性・商品サービスに犯罪収益移転の危険性が高いかを整理した公的な評価です。一方で本体は200ページを超える分量があり、自社に関係する高危険度の項目がどこなのか、そしてそれを自社のリスク評価にどう落とし込めばよいのかを読み解く負担は小さくありません。
本記事では、犯罪収益移転危険度調査書とは何か、どの法律を根拠に誰が作成しているのかを整理したうえで、令和7年版が高危険度と評価した取引形態・国地域・顧客属性・商品サービスを一覧で確認します。
さらに、調査書を自社の特定事業者作成書面(リスク評価書)や顧客リスク格付、取引モニタリングにどう反映するかの実務の流れと、その見極めを支えるソリューションまで解説します。
目次
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犯罪収益移転危険度調査書(NRA)とは
犯罪収益移転危険度調査書(NRA:National Risk Assessment)とは、国家公安委員会が、取引の種別ごとに犯罪による収益の移転(マネー・ローンダリング)の危険性の程度を調査・分析し、その結果をまとめて毎年公表する書面です。平成27年以降、毎年継続して公表されており、特定事業者がリスクベース・アプローチでマネー・ローンダリング対策を行う際の前提となる資料として位置づけられています。
公表の根拠は、犯収法第3条第3項です。同項は、国家公安委員会が調査書を作成・公表することを次のとおり定めています。
国家公安委員会は、毎年、犯罪による収益の移転に係る手口その他の犯罪による収益の移転の状況に関する調査及び分析を行った上で、特定事業者その他の事業者が行う取引の種別ごとに、当該取引による犯罪による収益の移転の危険性の程度その他の当該調査及び分析の結果を記載した犯罪収益移転危険度調査書を作成し、これを公表するものとする。
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律 第3条第3項|e-Gov法令検索
調査書自身も、第1章で「調査書は、犯罪収益移転防止法第3条第3項に基づき、毎年公表しているものである」と、この条文を根拠として明記しています。作成は国家公安委員会が関係省庁や民間事業者等の協力を得て行い、公表は警察庁の犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)のサイトを通じて行われます。
出典・参考資料(1件)
調査書の概要と作成方法
調査書は、過去の捜査や疑わしい取引の届出などから得られた情報をもとに、犯罪による収益の移転の状況を分析して作成されます。全体は、危険度調査の方法や日本の環境、マネー・ローンダリング事犯の分析に加え、取引形態・国地域・顧客属性や商品・サービスごとの危険度などを章立てで整理しています。各章では、取引や商品ごとに「なぜ危険度が高い(低い)のか」を示しています。
本記事では、特定事業者が自社のリスク評価に反映する際に核となる「高危険度の取引形態・国地域・顧客属性」と「商品・サービスの危険度」を中心に取り上げます。危険度の低い取引やテロ資金供与の危険度を含む全体像は、原典にあたって確認してください。
最新版と過去版の入手先(令和7年11月版)
最新版は、令和7年11月に公表された「令和7年犯罪収益移転危険度調査書」です。本文のPDFは警察庁JAFICのサイトで公開されており、以下から直接確認できます。自社のリスク評価を見直す際は、要約や解説ではなく、まず原典の該当箇所にあたることをおすすめします。
調査書は平成27年以降、毎年公表されています。過去版と各年の年次報告書は、JAFICの「年次報告書」ページに一覧でまとまっており、前年版との比較や経年の変化を確認したい場合に役立ちます。
出典・参考資料(2件)
調査書が名指しする高危険度項目【一覧】
ここからは、令和7年版の調査書が「危険度が高い」と評価している具体的な項目を確認します。自社のどの取引・顧客・商品が該当するかを把握することが、リスク評価を見直す出発点になります。
高危険度とされる取引形態・国地域・顧客属性
調査書の第4章は、取引形態・国地域・顧客属性のそれぞれについて、危険度を高める要因を整理しています。令和7年版で示された主な高危険度の項目は以下のとおりです。
| 高危険度とされる取引・国地域・顧客属性(令和7年版) | 非対面取引 | 現金取引 | 外国との取引 | 北朝鮮・イラン | ミャンマー | 暴力団 | 非居住者 | 外国の重要な公的地位を有する者(外国PEPs) | 実質的支配者が不透明な法人等 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 分類 | 取引形態 | 取引形態 | 取引形態 | 国・地域 | 国・地域 | 顧客属性 | 顧客属性 | 顧客属性 | 顧客属性 |
| 調査書が指摘する主な理由 | 本人確認書類の偽造・改ざん等を通じて架空名義や他人名義の口座開設等が容易で、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の被害金交付にも悪用される | 匿名性が高く、資金移転の追跡が困難。キャッシュレス化が進む一方で依然として悪用事例がある | 国内取引より追跡が困難。近年は暗号資産を含む多様な手段で国外へ資金が移転される | 犯収法および犯収法施行令で、犯罪収益移転防止の制度整備が十分に行われていないと認められる国・地域として規定されている | 犯収法規則で、調査書の内容を勘案して危険性の程度が高いと認められる国・地域に該当し、厳格な顧客管理が要請される | 日本の代表的な犯罪組織であり、資金獲得活動を通じて犯罪収益の移転に関与する | 日本国内に住所を有さず、継続的な顧客管理が制約的で、取引の実態把握がしにくい | 外国で重要な公的地位にある者やその関係者で、継続的な顧客管理が制約的なため、特に慎重な確認が求められる | 実体のない法人の設立や休眠法人の買収等により、法人名義の口座を第三者が支配して収益を隠匿・移転する手口に悪用される |
※令和7年犯罪収益移転危険度調査書「第4 取引形態、国・地域及び顧客属性の危険度」をもとに作成。各項目の詳細は原典を確認してください。
顧客属性については、調査書の概要では暴力団、非居住者・外国の重要な公的地位を有する者(外国PEPs)、実質的支配者が不透明な法人等が整理されています。自社の顧客にこれらに該当する属性が含まれる場合は、通常よりも深度のある確認(EDD:Enhanced Due Diligence)を検討する対象になります。
実質的支配者が不透明な法人では、どこまで遡って確認すれば十分かが実務上の課題になります。この点について、弁護士の阿部由羅氏は、ハイリスクな取引における反社チェックの水準を次のように指摘しています。

出典・参考資料(1件)
高危険度とされる商品・サービス(18類型)と相対的に危険度が高い業態
調査書の第5章は、危険性が認められる主な商品・サービスとして、以下の18類型を挙げています。各類型について、危険度を高める要因や、事業者が留意すべき事項、危険度の低減措置などが整理されています。これは危険性が認められる商品・サービスの全体像で、幅広い業態が含まれます。そのなかで調査書は、相対的に危険度が高い業態をさらに絞り込んで示しています。
- 預金取扱金融機関が取り扱う商品・サービス
- 保険会社等が取り扱う保険
- 金融商品取引業者等及び商品先物取引業者が取り扱う有価証券の売買の取次ぎ等
- 信託会社等が取り扱う信託
- 貸金業者等が取り扱う金銭貸付
- 高額電子移転可能型前払式支払手段発行者が取り扱う高額電子移転可能型前払式支払手段
- 資金移動業者が取り扱う資金移動サービス
- 電子決済手段等取引業者が取り扱う電子決済手段
- 暗号資産交換業者が取り扱う暗号資産
- 両替業者が取り扱う外貨両替
- ファイナンスリース事業者が取り扱うファイナンスリース
- クレジットカード事業者が取り扱うクレジットカード
- 宅地建物取引業者が取り扱う不動産
- 宝石・貴金属等取扱事業者が取り扱う宝石・貴金属
- 郵便物受取サービス業者が取り扱う郵便物受取サービス
- 電話受付代行業者が取り扱う電話受付代行
- 電話転送サービス事業者が取り扱う電話転送サービス
- 法律・会計専門家が取り扱う法律・会計関係サービス
このほか、18類型とは別に「利用実態等を注視すべき商品・サービス」としてカジノが挙げられています。そのうえで調査書は、業態ごとの相対的な危険度について次のように総括しています。
預金取扱金融機関が取り扱う商品・サービス、暗号資産、資金移動サービス及び電子決済手段は、他の業態よりも相対的に危険度が高い取引と認められる。
出典:令和7年犯罪収益移転危険度調査書 第5 商品・サービスの危険度|国家公安委員会
自社が取り扱う商品・サービスがこれらの業態に該当する場合は、取引時確認や継続的な顧客管理をより厳格に運用することが求められます。
令和7年版の主な更新点(前年版からの変更)
調査書は毎年更新されるため、自社のリスク評価も最新版に合わせて見直す必要があります。令和7年版は、国内外の情勢の変化やFATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査の結果、第5次相互審査に向けた対応等を踏まえて、記載内容が更新されました。主な変更点は以下のとおりです。
- マネー・ローンダリングの主体について記載順を見直し、「匿名・流動型犯罪グループ」を冒頭に配置したうえで、資金獲得犯罪に関する記載を更新
- 国内からオンラインカジノが利用されている実態を踏まえ、実態調査結果・講じている措置・資金の流れ等を記載
- マネー・ローンダリングを専門に請け負う犯罪グループによる、法人や法人名義の預貯金口座等の悪用実態を踏まえて分析を深化
- 危険度の高い非対面取引に関する記載を更新(インターネットバンキングに関するトピックを追加)
- 危険度の高い外国との取引に関する記載を更新(貿易を利用したマネー・ローンダリングや東南アジアを拠点とする詐欺の脅威等のトピックを追加)
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日本のマネー・ローンダリングの脅威と手口(背景)
高危険度の項目がなぜそう評価されるのかは、日本におけるマネー・ローンダリングの主体や手口の実態を押さえると理解しやすくなります。調査書は、マネー・ローンダリング事犯の主体を大きく3つに整理しています。
- 匿名・流動型犯罪グループ: 緩やかな結びつきで離合集散しながら、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺などで資金を獲得する主体
- 暴力団: 日本の代表的な犯罪組織で、多様な資金獲得活動で得た収益を組織的に移転させる主体
- 来日外国人犯罪グループ: 国境を越えた資金の移転に関与する主体
このうち匿名・流動型犯罪グループは、末端の実行役を次々と入れ替えるため、取引の相手方を調べても背後にいる反社会的勢力にたどり着きにくい点に難しさがあります。阿部氏も、この見極めの難しさを次のように述べています。

近年は、法人名義の口座が犯罪収益の隠匿・移転に悪用される事例や、インターネットバンキング・暗号資産を介した資金移転が問題となっています。こうした手口が、非対面取引・外国との取引・実質的支配者が不透明な法人といった項目の危険度を押し上げる背景になっています。詳細な犯罪情勢や前提犯罪の分析は、調査書の第2章・第3章で確認できます。
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この書面を参照すべき特定事業者の範囲
調査書を踏まえてリスク評価を行う義務を負うのは、犯収法上の「特定事業者」です。特定事業者の範囲は、犯収法第2条第2項で第1号から第49号まで列挙されています。本記事の読者に関係する主な業態は、おおむね次のとおりです。
- 金融機関等: 銀行(第1号)をはじめとする預金取扱金融機関、保険会社等、信託会社等
- 金融商品・決済関連: 金融商品取引業者(第21号)、貸金業者(第29号)、資金移動業者(第31号)、電子決済手段等取引業者(第31号の2)、暗号資産交換業者(第32号)
- 不動産・物品: 宅地建物取引業者(第42号)、宝石・貴金属等の売買を業として行う者(第43号)
- 士業: 弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士等(第45号〜第49号)
これらを含め、第1号から第49号までの事業者が特定事業者に該当します。自社が対象かどうかの正確な判断は、条文の各号にあたって確認してください。
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調査書を自社のリスク評価にどう反映するか(実務の流れ)
調査書の内容を把握したら、次はそれを自社のリスク評価と日々の顧客管理に落とし込む段階です。ここでは、特定事業者作成書面(リスク評価書)の見直しから、顧客リスク格付・取引モニタリング、疑わしい取引の届出までの流れを整理します。

特定事業者作成書面(リスク評価書)の見直し
特定事業者が自社の取引の危険性を調査・分析し、その結果を記載した書面が「特定事業者作成書面等」(リスク評価書)です。その作成と見直しは、犯収法施行規則第32条第1項第1号に次のとおり定められています。
自らが行う取引又は特定受任行為の代理等(新たな技術を活用して行うものその他新たな態様によるものを含む。)について調査し、及び分析し、並びに当該取引又は特定受任行為の代理等による犯罪による収益の移転の危険性の程度その他の当該調査及び分析の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(以下この項において「特定事業者作成書面等」という。)を作成し、必要に応じて、見直しを行い、必要な変更を加えること。
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第32条第1項第1号|e-Gov法令検索
この施行規則は、犯収法第11条第4号が委任する「第3条第3項に規定する犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案して講ずべきものとして主務省令で定める措置」を具体化したものです。このように、調査書の内容を勘案してリスク評価書を作成・見直すことが、法令上の枠組みとして組み込まれています。
犯収法第11条はこれらの措置を「講ずるように努めなければならない」とする努力義務の規定ですが、調査書の高危険度項目を自社の実態に照らして反映しておくことは、態勢の実効性を示すうえで重要です。
見直しにあたっては、調査書やひな型の内容を引用するだけでなく、自社が実際に扱う商品・サービスや取引形態、顧客層といった個社の実態を反映することが求められます。
出典・参考資料(1件)
顧客リスク格付・取引モニタリング・制裁/PEPs照合への反映
リスク評価書で特定した危険性は、日々の顧客管理に落とし込んで初めて実効性を持ちます。金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」は、リスクの特定にあたって、国によるリスク評価の結果を踏まえる必要があるとしています。
なお、検証に際しては、国によるリスク評価の結果を踏まえる必要があるほか、外国当局や業界団体等が行う分析等についても適切に勘案することで、各業態が共通で参照すべき分析と、各業態それぞれの特徴に応じた業態別の分析の双方を十分に踏まえることが重要である。
出典:マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン Ⅱ-2(1)リスクの特定|金融庁
ここでいう「国によるリスク評価の結果」は、同ガイドラインで「犯収法に定める『犯罪収益移転危険度調査書』」と定義されています。したがって、調査書が高危険度とした項目を、自社の顧客リスク格付や取引モニタリングの基準に具体的に反映していくことが、ガイドラインが求める対応につながります。
実務では、たとえば次のような形で反映することが考えられます。
- 顧客リスク格付: 外国PEPsや実質的支配者が不透明な法人など、高危険度とされる顧客属性に該当する顧客を高リスクに分類し、確認の深度と頻度を上げる
- 取引モニタリング: 現金取引・外国との取引など高危険度の取引形態について、異常な取引を検知する基準を設ける
- 制裁リスト・PEPs照合: 北朝鮮・イラン・ミャンマーなど危険度が高い国・地域に関係する取引や、外国PEPsとの取引を、制裁リストやPEPsリストと照合して確認する
このうち制裁リスト・PEPsリストとの照合では、OFAC(米国)・EU・国連といった海外制裁リストをどの手順で突き合わせるかが実務の要になります。具体的な照合手順と対応ツールは、以下の記事で解説しています。
こうした確認を手作業や属人的な運用で続けると、対象の増加に伴って負担が大きくなり、確認漏れのリスクも高まります。顧客リスク格付・取引モニタリング・制裁/PEPs照合を支えるソリューションについては、記事後半で紹介します。
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疑わしい取引の届出への反映
取引において収受した財産が犯罪による収益である疑いがあると認められる場合、特定事業者は速やかに行政庁へ届け出なければなりません。これは犯収法第8条第1項に定められた義務です(第46号〜第49号の士業の一部は対象外とされています)。
調査書は、商品・サービスの各類型について「疑わしい取引の届出」の項目を設けており、どのような取引が届出の端緒になりうるかを把握する手がかりになります。顧客リスク格付や取引モニタリングで検知した異常を、疑わしい取引の届出につなげる運用を整えておくことが重要です。
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AML/CFT対策ソリューションで高危険度の見極めを仕組み化する
調査書が示す高危険度の顧客属性・国地域・取引を、自社のリスク評価や顧客管理で見極め続けるには、仕組み化が欠かせません。ここでは、マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策(AML/CFT)に用いる、顧客リスク格付・制裁/PEPs照合・反社チェック・本人確認を支えるソリューションを紹介します。各サービスの機能が、調査書のどの項目に対応するかに着目して確認してください。
| AML/CFT対策ソリューションの比較 | RiskAnalyze(リスクアナライズ) | RISK EYES(リスクアイズ) | ネクスウェイの本人確認(eKYC)ソリューション |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | 反社・コンプライアンスチェック | 反社・コンプライアンスチェック | 本人確認(eKYC) |
| 制裁・PEPs照合 | ●海外240以上の国・地域、国内外のPEPs・制裁情報に対応 | ●各国の制裁リスト・ダウ・ジョーンズWATCH LISTに対応 | × |
| 反社・暴力団チェック | ◎反社チェック専用ツール | ◎反社チェック専用ツール | △リスク情報検索オプションで代行検索 |
| 本人確認(eKYC)・非対面対応 | × | × | ◎ホ/ヘ/カ(JPKI)/郵送/SMS/法人に対応 |
| 法人・取引先リスクの確認 | △官報情報DBで法人の法的地位(破産・解散等)を把握 | ●商業登記情報の自動取得・AI解析 | ●法人確認サービス |
| 初期費用 | 無料 | 無料 | 50,000円〜(JPKIは100,000円〜) |
| 月額 | 27,500円〜 | 15,000円〜(税別) | 25,000円〜(従量課金制。JPKIは10,000円〜) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
※料金は2026年10月時点の各社公式情報にもとづく表示です。最新の料金・対応範囲は各社公式情報をご確認ください。
ここで取り上げた3サービスを含め、顧客リスク格付・取引モニタリング・制裁/PEPs照合・本人確認に対応するAML/CFT対策ソリューションを横断で比較したい場合は、以下の記事で選び方や機能を詳しく解説しています。導入を検討される方は、あわせてご覧ください。
AMLシステム比較18選|取引モニタリング・制裁スクリーニング・KYCを機能・対応法令・提供形態で選ぶ
金融機関や特定事業者では、犯罪収益移転防止法(犯収法)が求める取引時確認や継続的顧客管理、制裁対象者のスクリーニング、疑わしい取引の検知といった業務が年々重くなっています。マネー・ローンダリングやテロ資金供与(AML/CFT)への対応を人手…
1. RiskAnalyze(リスクアナライズ)/KYCコンサルティング株式会社

RiskAnalyzeは、KYCコンサルティング株式会社が提供する、AIを活用したWEBサービス型のコンプライアンス・反社チェックツールです。個人名・企業名を入力すると、反社会的勢力とのつながりや逮捕歴、行政処分、訴訟歴などを調査し、判定済みの調査レポートを表示します。
調査書の高危険度項目との対応で見ると、海外240以上の国・地域のリスク情報やPEPs・制裁(Sanction)情報に対応し、国内PEPsの照合機能も備えている点が特徴です。暴力団など反社会的勢力の確認に加え、2026年に追加された官報情報データベースで企業の法的地位(破産・解散等)を把握でき、取引先の法人リスクの確認に役立ちます。
調査レポートとリスク分類をAIが自動作成し、証跡はクラウド上に7年間自動保存されます。API連携にも無料で対応し、既存の基幹システムやCRMに組み込めます。
2. RISK EYES(リスクアイズ)/ソーシャルワイヤー株式会社

東証グロース上場のソーシャルワイヤー株式会社が運営するRISK EYESは、取引先や採用候補者などについて、反社会的勢力との関係・犯罪関与・不祥事の有無を確認する反社・コンプライアンスチェックサービスです。WEBニュース・新聞記事・ブログ/掲示板・独自の反社データベースなどを横断して検索できます。
制裁/PEPs照合の観点では、米財務省・日本財務省・金融庁・経済産業省の制裁リストに加え、ダウ・ジョーンズ社のWATCH LISTにも対応しています。2015年以降の反社関連報道を独自に収集したアンチソーシャルDBで暴力団など反社会的勢力を確認でき、商業登記情報の自動取得・AI解析により実質的支配者の確認にも対応します。
登録した取引先を日次で継続監視するリスクアラート機能と承認ワークフローを備えており、調査書を踏まえた定期的な顧客管理と証跡の整備に向いています。
反社チェックを手作業で続ける場合と仕組み化した場合で、業務負担や証跡の残し方がどう変わるかについて、同社は導入事例をもとに次のように述べています。

導入事例では、広報支援会社で検索業務を約93%削減、オンラインマッチングサービスを運営する企業で反社チェック業務を約95%削減、採用管理システムを提供する企業で従来比約85%の工数削減を実現しています。採用管理システムを提供する企業では、日次20~30件の確認に100~150分かかっていた業務が大幅に短縮されました。単なる時間削減だけでなく、検索条件や確認結果を履歴として残すことで、担当者が変わっても同じ基準で運用しやすくなり、定期チェックや上場準備に必要な証跡整備にもつながっています。
3. ネクスウェイの本人確認(eKYC)ソリューション/株式会社ネクスウェイ

TISインテックグループの株式会社ネクスウェイが提供する本人確認(eKYC)ソリューションは、調査書が高危険度とする「非対面取引」のなりすまし・偽造リスクに、犯収法に準拠した本人確認で対応するサービスです。
スマートフォンで撮影した書類と顔写真による方式(ホ方式・ヘ方式)、マイナンバーカードの公的個人認証(カ方式/JPKI)、本人確認業務の代行(BPO)、転送不要郵便の発送追跡まで、本人確認の工程をワンストップで扱えます。
なりすまし・偽造対策として、まばたきや視線を検知するライブネス判定、本人確認書類の厚み判定、ICチップの署名検証に加え、BPOセンターのスタッフによる目視のダブルチェックを行います。法人の本人確認にも対応し、実質的支配者が不透明な法人の確認に活用できます。
公式サイトによると、犯収法の特定事業者への導入実績は100社以上で、2027年4月1日施行の犯収法改正への対応も明記されています。氏名・住所・生年月日でデータベースを代行検索するリスク情報検索オプションも用意されています。
本記事で紹介したRiskAnalyze・RISK EYESのような反社チェック専用ツールを、料金・データソースの幅・判定精度といった観点でさらに広く比較したい場合は、以下の記事をご覧ください。調査書が高危険度の顧客属性に挙げる暴力団などの確認手段を選ぶ際の参考になります。
まとめ
犯罪収益移転危険度調査書(NRA)は、国家公安委員会が犯収法第3条第3項に基づいて毎年公表する、取引種別ごとの犯罪収益移転の危険度をまとめた評価です。特定事業者は、この調査書を勘案して自社の特定事業者作成書面(リスク評価書)を作成・見直すことが、犯収法第11条第4号と施行規則第32条第1項第1号の枠組みに組み込まれています。
令和7年版では、非対面取引・現金取引・外国との取引、北朝鮮・イラン・ミャンマー、暴力団・外国PEPs・実質的支配者が不透明な法人等が高危険度とされ、商品・サービスの18類型のうち預金取扱金融機関の商品・暗号資産・資金移動サービス・電子決済手段が相対的に危険度が高いと総括されました。
自社に関係する項目を把握したうえで、顧客リスク格付・取引モニタリング・制裁/PEPs照合・本人確認に落とし込み、必要に応じてソリューションで仕組み化することが、実効性のある対応につながります。まずは令和7年版の調査書で自社に関係する項目を確認し、できるところから対応を進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 犯罪収益移転危険度調査書(NRA)とは何ですか?
A. 犯罪収益移転危険度調査書(NRA)とは、国家公安委員会が犯収法第3条第3項に基づいて毎年公表する、取引の種別ごとに犯罪による収益の移転(マネー・ローンダリング)の危険度をまとめた公的な評価書面です。平成27年以降、毎年継続して公表されており、特定事業者がリスクベース・アプローチでマネー・ローンダリング対策を行う際の前提となる資料として位置づけられています。
Q. 犯罪収益移転危険度調査書は、いつ・どこで公表されますか?
A. 犯罪収益移転危険度調査書は、国家公安委員会が毎年公表しており、本文のPDFは警察庁JAFIC(犯罪収益移転防止対策室)のサイトで確認できます。最新版は令和7年11月に公表された「令和7年犯罪収益移転危険度調査書」です。過去版は、JAFICの「年次報告書」ページに平成27年版以降の各年版が一覧されており、前年版との比較にも利用できます。
出典・参考資料(2件)
Q. 自社が犯罪収益移転危険度調査書を参照すべき「特定事業者」に該当するか、どう確認すればよいですか?
A. 自社が特定事業者に該当するかは、犯収法第2条第2項が第1号から第49号まで列挙する事業者のいずれかに当てはまるかで判断します。
銀行などの預金取扱金融機関、金融商品取引業者、貸金業者、資金移動業者、暗号資産交換業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等の売買業者、弁護士・税理士などの士業が含まれます(各号の番号は本文「この書面を参照すべき特定事業者の範囲」で整理しています)。正確な該当判断は、各号の条文にあたって確認してください。
出典・参考資料(1件)
Q. 犯罪収益移転危険度調査書を読んだうえで、特定事業者は何をすればよいですか?
A. 特定事業者は、調査書が示す高危険度項目のうち自社に関係するものを特定し、それを自社の特定事業者作成書面(リスク評価書)に反映して、顧客リスク格付・取引モニタリング・制裁/PEPs照合に落とし込みます。リスク評価書の作成・見直しは犯収法施行規則第32条第1項第1号が定める措置で、その委任元である犯収法第11条第4号は「犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案して」措置を講ずるよう求めています。
Q. リスク評価書(特定事業者作成書面)は毎年作り直す必要がありますか?
A. リスク評価書は、毎年ゼロから作り直すことまでは法令上求められておらず、「必要に応じて、見直しを行い、必要な変更を加える」ことが犯収法施行規則第32条第1項第1号で定められています。ただし犯罪収益移転危険度調査書は毎年更新されるため、最新版の変更点が自社の扱う取引・顧客に関係する場合は、その都度リスク評価書を見直すことが実務上重要です。
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Q. 犯罪収益移転危険度調査書と金融庁のマネロン・テロ資金供与対策ガイドラインは、どのような関係にありますか?
A. 両者は、金融庁ガイドラインがリスクの特定にあたって踏まえるべき「国によるリスク評価の結果」として、犯収法に定める犯罪収益移転危険度調査書を位置づける関係にあります。同ガイドラインのⅡ-2(1)「リスクの特定」は、検証に際して国によるリスク評価の結果を踏まえる必要があるとしており、金融機関等は調査書の高危険度項目を自社のリスク評価に反映することが求められます。
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Q. 犯罪収益移転危険度調査書を踏まえた対応をしないと、法令違反になりますか?
A. 調査書を勘案したリスク評価書の作成・見直しは、犯収法第11条が定める努力義務であり、これを怠ったことが直ちに罰則付きの違反となるわけではありません。一方で、取引で収受した財産が犯罪による収益である疑いがあると認められる場合の疑わしい取引の届出は、犯収法第8条第1項が定める法的義務です(第46号〜第49号の士業の一部は対象外)。
調査書を踏まえた態勢整備は、この届出義務を的確に果たし、態勢の実効性を示すうえで重要です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















