遠方の顧客に対応したい、来店の負担を減らしたいといった理由で、自社でもIT重説(テレビ会議などのITを使ってオンラインで行う重要事項説明)を始めることになった、という方は少なくありません。ところが、「結局、どういう順番で何をやればいいのか」が一本の流れとしてつながらず、戸惑うことがあります。
制度があることは知っていても、当日マイクの前に座るまでに事前に何を準備し、どの順で進めるのかが見えないと、最初の一件に踏み出しづらいものです。
この記事では、IT重説を1件やり切るまでの手順を「事前準備→当日→事後」の時系列で、各ステップで担当者が何をするのかがわかる形で解説します。あわせて、重要事項説明書など書面を電子で交付してよいかというルール、賃貸と売買での違い、必要な機材・ツールの選び方、通信トラブル時の判断まで、国土交通省のマニュアルを出所として整理します。
手順の根拠は、宅地建物取引業法と国土交通省が公表している実施マニュアルにあります。各ステップで、どの段階で何が求められるのかを、出典とともに確認できます。
目次
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IT重説とは(オンラインで行う重要事項説明)
ここからは、IT重説の前提と対面との違いを簡単に押さえます。IT重説とは、宅地建物取引業法第35条で義務づけられている重要事項説明を、テレビ会議などのITを活用してオンラインで行う方法です。宅地建物取引士が、画面越しに借主・買主へ説明します。
オンラインであっても、守るべき要件を満たせば対面の重要事項説明と同じ扱いになります。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、次の4つをすべて満たす場合に限り、対面と同様に取り扱うとしています。
(1)宅地建物取引士及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること。
出典:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(第35条第1項関係)|国土交通省
(2)宅地建物取引士により記名押印された重要事項説明書及び添付書類を、重要事項の説明を受けようとする者にあらかじめ送付していること。
(3)重要事項の説明を受けようとする者が、重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること並びに映像及び音声の状況について、宅地建物取引士が重要事項の説明を開始する前に確認していること。
(4)宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示し、重要事項の説明を受けようとする者が、当該宅地建物取引士証を画面上で視認できたことを確認していること。
ただし、(2)は「記名押印」と書かれていますが、これは賃貸のIT重説が新設された当時の文言です。2022年(令和4年)の宅地建物取引業法改正で宅地建物取引士の押印は廃止され、現在は重要事項説明書への押印は宅建業法上不要(記名は必要)とされています。この点はあとの「書面を電子で交付してよいか」で詳しく整理します。
出典・参考資料(2件)
IT重説はいつから可能になったか
IT重説は、取引の種類ごとに段階的に認められてきました。まず賃貸取引で2017年(平成29年)10月に本格運用が始まり、続いて売買取引で2021年(令和3年)3月30日に本格運用が開始されています。さらに2022年(令和4年)5月18日には、デジタル社会形成整備法による宅建業法改正で、重要事項説明書など書面の電子交付も可能になりました。
この3つの時点を押さえておくと、「オンラインで説明できるか」と「書面を電子でやり取りできるか」が別々に認められてきた経緯がわかり、手順を正しく理解しやすくなります。
IT重説を導入するメリット
IT重説を導入すると、遠方の顧客にも来店を求めずに説明でき、商圏を広げられます。日程の調整がしやすく、説明の様子を記録として残せる点も、後日の認識違いを防ぐうえで役立ちます。
IT重説の流れ(事前準備→当日→事後の7ステップ)
ここからは、IT重説を1件やり切るまでの流れを7つのステップで解説します。まず全体像を一覧で示し、そのあと各ステップで担当者が何をするかを順に見ていきます。当日の開始手順(接続確認→必要書類の確認→宅建士証の提示→本人確認)は、国土交通省「書面電子化・IT重説マニュアル ハンディガイド(令和6年12月)」の「IT重説:開始の流れ」に沿っています。

| 段階 | ステップ | 担当者が行うこと | 使うもの・送るもの |
|---|---|---|---|
| 事前準備 | STEP1 承諾の取得 | IT重説を行う承諾と、書面を電子で交付する場合の事前承諾を得る | 承諾書(書面電子化は書面・または書面出力できる形式) |
| 事前準備 | STEP2 IT環境の確認 | 顧客側の端末・回線・カメラ・マイクを確認する | 確認の連絡(メール・電話) |
| 事前準備 | STEP3 接続テスト | 当日と同じツールで映像・音声を試す | ビデオ通話ツール |
| 事前準備 | STEP4 書類の事前送付 | 記名した重要事項説明書・添付書類を説明の前に届ける | 重要事項説明書・添付書類(電子または紙) |
| 当日 | STEP5 宅建士証の提示・本人確認 | 接続確認→書類確認→宅建士証を画面提示→本人確認 | 宅地建物取引士証 |
| 当日 | STEP6 重要事項の説明 | 画面共有しながら説明し、質疑応答で理解を確認する | 重要事項説明書 |
| 事後 | STEP7 書類の返送・締結 | 説明後に記名のうえ返送してもらう(電子契約なら電子署名で締結) | 重要事項説明書・契約書類(電子または紙) |
当日の所要時間は案件や説明量によって変わり、公式に定められた時間はありません。説明する重要事項の分量自体は対面と変わらないため、顧客には対面と同程度の時間を目安に案内するとよいでしょう。30分〜1時間程度を見込んでおくと、日程を組みやすくなります。
【事前準備】STEP1 顧客の承諾(同意)を取得する
最初に、顧客からの承諾を得ます。ここで注意したいのは、承諾には性質の違う2種類がある点です。IT重説(オンラインで説明を受けること)の承諾は口頭でも可能ですが、トラブル防止の観点から書面やメールなど記録に残る方法が望ましいとされています。一方、重要事項説明書などの書面を電子で交付する場合の承諾は、宅建業法上「書面(紙)または書面に出力できる形式」で得る必要があり、口頭では足りません。
承諾書に法定の様式はなく、国土交通省のマニュアルは、承諾した年月日、宅建業者と相手方の氏名または名称、電子化の対象となる取引・書面の種類、電子書面を提供する方法やファイル形式などを記載することが望ましいとしています。署名・押印も必須ではありません。承諾書の様式例は、同マニュアルが参考資料として用意している「承諾取得例」で確認できます。
出典・参考資料(1件)
【事前準備】STEP2 顧客のIT環境を確認する
次に、顧客側の環境を確認します。対面と同様に扱うための要件の1つは、双方が図面などの書類や説明内容を理解できる程度に映像を視認でき、音声を十分に聞き取れる双方向のやり取りができることです。顧客がどの端末(パソコン・タブレット・スマートフォン)でどのツールを使えるか、通信環境は安定しているかを事前に確かめ、必要なら使い方を案内しておきます。
【事前準備】STEP3 接続テストを実施する
本番前に、当日と同じツールで接続テストを行います。映像と音声の品質、画面共有が問題なく映るかを顧客と一緒に確認しておくと、当日の中断を減らせます。接続が不安定な場合に備えて、電話番号など別の連絡手段をこの段階で共有しておくと安心です。
【事前準備】STEP4 重要事項説明書など書類を事前に送付する
重要事項説明を始める前に、記名した重要事項説明書と添付書類を顧客の手元に届けます。これは「説明を受ける人が書類を確認しながら説明を受けられる状態」を作るための手順で、対面と同様に扱うための要件に含まれます。
送付は電子でも紙でもかまいませんが、電子で交付する場合はSTEP1の事前承諾が前提になります。紙で郵送する場合は到着まで数日かかるため、説明の数日前には発送し、当日までに届くよう手配します。顧客の手元に書類がそろっているかは、当日の冒頭でも改めて確認します。
【当日】STEP5 宅建士証を画面提示し本人確認を行う
当日は、接続確認、顧客の手元に書類があるかの確認を済ませてから、宅地建物取引士証を画面に提示します。対面と同じく、IT重説でも宅建士証の提示は必要です。国土交通省のマニュアルは、相手方が視認できたことを確認するための進め方の一例として、次のようなやり取りを示しています。
・宅建士:自身の宅建士証をカメラにかざし、宅建士証の写真と同一人物であることを確認するよう依頼する
出典:書面電子化・IT重説マニュアル ハンディガイド(令和6年12月)|国土交通省
・相手方:「確認しました。」
・宅建士:宅建士証に記載されている氏名・生年月日・登録番号の読み上げを依頼する
・相手方:「氏名は・・・、生年月日は・・・、登録番号は・・・です。」
・宅建士:読み上げた内容が正しいことを確認の上、宅建士証を確認した旨を答えていただく
・相手方:「○○さんの宅建士証を確認しました。」
これはあくまで望ましい進め方の一例で、唯一の正解手順ではありません。
続けて、説明の相手が契約当事者(借主・買主)本人であることを確認します。本人確認の具体的な方法は国土交通省のマニュアルで細かく定められていませんが、申込時に得た情報と照合する、必要に応じて本人確認書類を画面に提示してもらうなど、対面のときと同等の確認を行います。
出典・参考資料(1件)
【当日】STEP6 重要事項を説明し質疑応答する
本人確認を終えたら、重要事項の説明に進みます。画面共有などで書類の該当箇所を示しながら説明すると、顧客が今どこを説明されているかを追いやすくなります。オンラインでは相手の表情や反応がつかみにくいため、節目で質問を促し、理解の度合いを確かめながら進めることが大切です。
【事後】STEP7 書類の返送・契約締結を行う
説明が終わったら、契約の締結に進みます。紙でやり取りしている場合は、契約書類に記名のうえ、必要部数を返送してもらう流れになります。
ここで電子契約システムを使い、重要事項説明書の電子交付から契約書の電子署名による締結までをオンラインで行えば、部数のやり取りや郵送・返送を待たずに、その日のうちに手続きを完了できます。電子化できる書面の範囲は、次の章で整理します。
書面を電子で交付してよいか(4書面の電子化ルール)
ここからは、重要事項説明書など書面を電子で交付してよいかを整理します。2022年(令和4年)5月18日に施行されたデジタル社会形成整備法による宅建業法改正で、不動産取引の主要な書面は、相手方の承諾を得たうえで電子的な方法で提供できるようになりました。同時に宅地建物取引士の押印も廃止されています。「電子交付は認められていない」という数年前の情報は現在の制度と異なるため、注意が必要です。
電子交付できる4つの書面と交付タイミング
電子化の対象となる書面は4種類です。このうちIT重説で直接関わるのは重要事項説明書(35条書面)ですが、媒介契約書やREINS(指定流通機構に物件情報を登録・共有する仕組み)の登録証、契約書も電子化できます。書面ごとに、記名の要否・改変防止措置の要否・交付のタイミングが異なります。国土交通省のマニュアルは次のように整理しています。
| 書面電子化の対象 | 記名(印字でも可) | 押印 | 改変防止措置 | 提供のタイミング |
|---|---|---|---|---|
| 媒介契約書(34条の2書面) | 不要 | 宅建業法上は不要 | 必要 | 契約締結・成立後に遅滞なく |
| REINS登録証 | 不要 | 宅建業法上は不要 | 不要 | REINS登録後に遅滞なく |
| 重要事項説明書(35条書面) | 必要 | 宅建業法上は不要 | 必要 | 重要事項説明を実施する前 |
| 売買/賃貸借契約書(37条書面) | 必要 | 宅建業法上は不要 | 必要 | 契約締結・成立後に遅滞なく |
特に注意したいのは、重要事項説明書の提供タイミングです。国土交通省のマニュアルは、その提供は必ず重要事項説明の「前」である必要があると強調しています。STEP4で説明前に書類を届けるのは、このルールに沿った手順です。
改変防止措置と事前承諾
電子で交付する書面には、改変されていないかどうかを確認できる措置(改変防止措置)が求められます。国土交通省のマニュアルは、その例として電子署名とタイムスタンプを挙げています。あわせて、書面を電子で交付するには、相手方から書面または書面に出力できる形式で事前承諾を得る必要があります。
改変防止措置の利用方法は使う電子契約システムによって異なるため、同マニュアルも、必要な性能が備わる電子契約システムなどを活用することで適切に電子書面を提供できると説明しています。どのシステムを選ぶかが、電子交付を実務に乗せられるかの分かれ目になります。
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賃貸と売買でのIT重説の違い
IT重説の手順は賃貸と売買でおおむね共通ですが、売買では特有の論点があります。それがクーリング・オフの扱いです。宅建業者が売主となる売買では、顧客の権利としてクーリング・オフが問題になる場面があり、IT重説をどこで・誰の申し出で行うかによって扱いが変わります。
相手方の申し出により、相手方が自宅等でIT重説を受け、その場で非対面で契約する場合、クーリング・オフの対象外です。ただし、その申し出の履歴を残すことが望ましいと考えられます。なお、宅建業者の申し出の場合クーリング・オフの対象です。
出典:書面電子化・IT重説マニュアル ハンディガイド(令和6年12月)|国土交通省
顧客自身の申し出で自宅などでIT重説を受け、その場で非対面で契約した場合はクーリング・オフの対象外になり、宅建業者側の申し出で行った場合は対象になります。申し出の履歴を残しておくことが望ましいとされます。
また、クーリング・オフができる旨などを記した書面は電子化の対象4書面に含まれず、紙での交付が必要です。賃貸取引にはこのクーリング・オフ制度は基本的になじまないため、売買で特に意識すべき違いといえます。
出典・参考資料(1件)
ここまで見てきた書面の電子交付や電子締結は、対応した電子契約サービスを使えば実務に乗せられます。各社の機能や料金は、資料でまとめて比較できます。
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必要な機材・通信環境とツールの選び方
ここからは、IT重説に必要な機材と、ツールを選ぶときの判断軸を整理します。制度上の必須要件は、双方が映像を視認でき音声を十分に聞き取れる双方向の環境です。これを満たすための具体的な機材と、自社側・顧客側それぞれの準備を分けて見ていきます。
自社側・顧客側に必要なもの
自社側は、パソコン、安定したインターネット回線、カメラ、マイク、スピーカーやイヤホンといった音響機器をそろえます。書類を読み取れる程度の解像度で映せるWebカメラと、相手の声を聞き取りやすく自分の声も明瞭に届くヘッドセットやマイクがあると、説明の行き違いを減らせます。図面など細かい書類を画面共有するため、自社側の画面はある程度大きいものが向いています。
顧客側はパソコンのほかタブレットやスマートフォンでも受けられますが、国土交通省のマニュアルは、相手方が内容を適切に理解できるだけの十分な性能の機器である必要があるとしています。小さな画面で書類が読み取りにくい場合は、タブレットやパソコンなど画面の大きい端末への変更を案内することも検討します。
あわせて、本人確認書類を手元に用意してもらい、スマートフォンで受ける場合は通信量が増えるためWi-Fi環境での接続を案内しておくと、当日の進行がスムーズです。
ビデオ通話ツールとIT重説ツールの選定軸
ツールは役割ごとに分けて選ぶと判断しやすくなります。まず、重要事項説明を行うビデオ通話ツールは、Zoom・Google Meet・Microsoft Teams など一般的なものや、IT重説向けに用意された専用ツールのいずれでもかまいません。次の観点で比べます。国土交通省のマニュアルも、こうした観点での比較・検討を挙げています。
- 顧客側にアカウント登録やアプリのインストールが必要か(不要なほど顧客の負担が軽い)
- 録画・録音に対応しているか(記録を残したい場合)
次に、書面の電子交付・電子締結に使う電子契約システムは、次の観点で選びます。
- 書面の電子交付に必要な改変防止措置(電子署名・タイムスタンプ)に対応しているか
- 自社の業態(賃貸・売買)に対応しているか
- 顧客管理など自社の他システムと連携できるか
重要事項説明はビデオ通話ツールで行い、重要事項説明書や契約書の電子交付・電子締結は電子契約システムで行う、という組み合わせが基本です。書面の電子化まで見据えるなら、改変防止措置に対応した電子契約システムを選んでおくと、説明から締結までを滞りなく進められます。
出典・参考資料(1件)
IT重説を扱う不動産業務では、賃貸管理ソフトとの連携や複数当事者の署名の扱いなど、業界特有の観点も電子契約システム選びに関わってきます。IT重説への対応や電子化できる書面の範囲で不動産業向けのサービスを絞り込んで比べたい場合は、以下の記事が参考になります。
不動産業向け電子契約システムおすすめ7選を比較|業界特化型と汎用型の選び方、IT重説対応を解説
2022年5月の宅建業法改正で電磁的交付が全面解禁されてから約4年が経ち、不動産取引の電子契約は「どのシステムを選ぶか」のフェーズに入っています。賃貸管理ソフトとの連動可否、IT重説までの一本化、業界特化型と汎用大手の使い分けなど、判断を保…
IT重説の注意点と中止の判断
ここからは、オンラインならではのつまずきと、その対処を押さえます。説明が無効になったりトラブルになったりするのを避けるために、あらかじめ判断の基準を決めておくことが役立ちます。
通信トラブル時の中断・中止の判断
国土交通省の解釈・運用の考え方は、説明の開始後に映像を視認できない、または音声を聞き取れない状況が生じた場合は、直ちに説明を中断し、状況が解消された後に再開するものとしています。復旧の見込みが立たないときは、日を改めて実施し直すか、対面に切り替えるかを判断します。接続が途切れる可能性に備えて、複数の連絡先を事前に共有しておくと、中断からの立て直しがスムーズです。
相手の理解度を確認する工夫
オンラインでは、相手がどこまで理解しているかが対面よりつかみにくくなります。説明の区切りごとに「ここまでで分からない点はありませんか」と確認し、書類の該当ページを画面で示しながら進めると、理解のずれを防げます。質問が出にくい場合は、重要な条項を読み上げて反応を見るといった工夫も有効です。
録画は必要か
IT重説に録画の義務はありません。国土交通省のマニュアルは、録画・録音データには個人情報が含まれるため、録画・録音を行うかどうかは事前に相手方と調整し、データの保存方法も決めておく必要があるとしています。記録を残しておくと、後日の認識違いを防げるほか、自社の説明の進め方を振り返って改善したり、新任担当者の教育に使ったりもできます。ただし、相手方の同意と適切な保管が前提になる点に注意します。
出典・参考資料(1件)
IT重説のデメリット・制約
IT重説は、ネットワーク環境とビデオ通話ツールの準備が整っていることが前提になります。顧客側の環境によっては接続がうまくいかないこともあり、その場合は対面への切り替えが必要です。相手の理解度を確認する手間が対面より増える面もあります。こうした制約を踏まえ、どの案件からオンラインに切り替えるかを無理のない範囲で判断していくとよいでしょう。
書面の電子交付・電子締結ができる電子契約システム
ここからは、IT重説と組み合わせて使う電子契約システムを紹介します。前述のとおり、重要事項説明書など書面の電子交付には改変防止措置(電子署名・タイムスタンプ)が必要で、その実装は使うシステムによって異なります。
IT重説そのものはビデオ通話で行い、書面の電子交付と契約の電子締結は電子契約システムが担う、という役割分担で考えると選びやすくなります。ここで取り上げるのは、書面電子交付・電子締結に対応した電子契約システムです。
| サービス名 | クラウドサイン | 電子印鑑GMOサイン |
|---|---|---|
| 提供会社 | 弁護士ドットコム株式会社 | GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 |
| 電子署名タイプ | 立会人型(事業者署名型)が標準 当事者型(マイナンバーカード署名)も対応 | 立会人型・当事者型に対応 ハイブリッド署名も可 |
| 改変防止措置(タイムスタンプ) | ●総務大臣認定タイムスタンプを全プランで標準付与 | ●長期署名・認定タイムスタンプを全プランで提供 |
| 電子帳簿保存法対応 | ●認定タイムスタンプ標準付与・検索要件に対応 | ●認定タイムスタンプを全プランで付与。JIIMA認証(電子帳簿ソフトの法的要件認証)は「契約印&実印プラン」で取得(現行各プランは要問い合わせ) |
| 送信料 | 220円/件(税込242円) | 立会人型100円/件(税込110円) 当事者型300円/件(税込330円) |
| 月額費用(有料プラン) | Light 11,000円〜(税抜) | ライト 8,800円〜(税抜、年間契約) |
| 無料プラン | ●フリープラン(1ユーザー・月2件まで) | ●お試しフリープラン(1ユーザー・月5件まで) |
| 不動産・重説での利用 | IT重説と電子契約を組み合わせた公式導入事例あり | 不動産業界向けの重要事項説明 対応フロー(公式ヘルプ)を公開 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)

クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が運営する電子契約サービスです。書類のアップロードから電子署名・タイムスタンプの付与、契約書の保管・検索までをオンラインで完結でき、締結した契約には総務大臣認定のタイムスタンプが標準で付与されるため、書面電子化で求められる改変防止措置に対応できます。
標準の署名方式は、認証局での本人確認が不要で導入しやすい立会人型(事業者署名型)です。より確実な本人確認が必要な契約には、マイナンバーカードの電子証明書を使う当事者署名型も選べます。
不動産取引での活用事例も公開されています。重要事項説明をオンライン(IT重説)で行い、2022年の宅建業法改正後は契約書も電子契約で締結することで、紙書類の郵送・返送が不要になり同日中に契約が完結したという事例が紹介されています。
電子印鑑GMOサイン(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)

電子印鑑GMOサインは、立会人型(契約印タイプ)と当事者型(実印タイプ)の両方に対応するクラウド型の電子契約・電子署名サービスです。両者を組み合わせたハイブリッド署名も利用できます。認証局として電子証明書を発行してきたGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営しています。
送信料は契約印タイプが1件100円、実印タイプが1件300円で、月5件までは無料で試せるプランも用意されています。不動産業界向けには、重要事項説明書の電子交付でGMOサインを使う手順を解説した公式ヘルプも公開されており、重要事項説明にあわせた書面の電子交付・契約締結の手段として検討できます。導入にあたっての具体的な運用は、資料請求やミーティング予約で確認するとよいでしょう。
ここで取り上げたのは、書面の電子交付・電子締結に対応した電子契約システムの一例です。料金体系や署名方式(立会人型・当事者型)、契約書の管理機能まで含めて電子契約システム全般を比較し、自社に合う一社を選びたい場合は、以下の記事をご覧ください。
電子契約システムおすすめ比較|料金とタイプ別の選び方で自社に合う一社を選ぶ
契約のたびに印刷・製本・押印・郵送を繰り返し、取引先の返送を待つあいだ業務が止まってしまう。そんな紙の契約に伴うリードタイムと印紙税の負担を、見直したいと感じていませんか。 電子契約システムを導入すれば、押印や郵送のやり取りをオンラインに置…
まとめ
IT重説は、顧客の承諾を取り、IT環境の確認と接続テストを行い、記名した重要事項説明書を説明の前に届けたうえで、当日は宅建士証を画面提示して本人確認を行い、説明・質疑応答を経て書類を返送・締結する、という流れで進みます。手順の根拠は宅地建物取引業法と国土交通省のマニュアルにあり、各ステップが何のためにあるのかを押さえておくと、自社の案件でも迷わず運用できます。
2022年の宅建業法改正で重要事項説明書など主要な書面の電子交付も可能になったため、改変防止措置に対応した電子契約システムを使えば、説明から締結までをオンラインで完結できます。まずは自社の業態に合うツールの資料を取り寄せ、手順に沿って最初の一件を進めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. IT重説とは何ですか?
A. IT重説とは、宅地建物取引業法第35条で義務づけられた重要事項説明を、テレビ会議などのITを使ってオンラインで行う方法です。宅地建物取引士が画面越しに借主・買主へ説明し、双方向で映像・音声をやり取りできる環境の確保や宅建士証の画面提示など、法令で定められた要件を満たせば、対面の重要事項説明と同じ扱いになります。
出典・参考資料(2件)
Q. IT重説の同意(承諾)は口頭で取ってもよいですか?
A. IT重説をオンラインで受けることへの同意は口頭でも可能ですが、重要事項説明書など書面を電子で交付する場合の事前承諾は、書面または書面に出力できる形式で得る必要があり、口頭では足りません。前者の同意も、後日のトラブルを防ぐ観点から、メールや書面など記録に残る方法で得ておくことが望ましいとされています。
出典・参考資料(1件)
Q. IT重説は顧客のスマートフォンだけでも受けられますか?
A. IT重説は、顧客のスマートフォンでも受けられます。ただし国土交通省のマニュアルは、相手方が説明内容を適切に理解できるだけの十分な性能の機器である必要があるとしており、画面が小さく書類が読み取りにくい場合は、タブレットやパソコンへの変更を案内することも検討します。事前のIT環境の確認と接続テストで、当日問題なく視認・聴取できるかを確かめておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
Q. IT重説では重要事項説明書を紙で交付・返送しなければなりませんか?
A. 重要事項説明書は、相手方の事前承諾を得れば電子で交付でき、紙での交付は必須ではありません。2022年(令和4年)5月18日施行のデジタル社会形成整備法による宅建業法改正で、35条書面を含む主要な書面の電子交付が可能になりました。
ただし電子交付には改変防止措置(電子署名・タイムスタンプなど)が必要です。売買でクーリング・オフを告知する書面は電子化の対象4書面に含まれないため、紙での交付が必要です。
Q. 売買の取引でもIT重説はできますか?
A. 売買の取引でもIT重説は可能です。賃貸取引では2017年(平成29年)10月、売買取引では2021年(令和3年)3月30日に本格運用が始まっています。手順は賃貸とおおむね共通ですが、売買では申し出の主体によってクーリング・オフの扱いが変わる(相手方の申し出で自宅等で受けた場合は対象外、宅建業者の申し出の場合は対象)点に注意が必要です。
Q. IT重説の最中に通信が途切れたらどうなりますか?
A. 説明の開始後に映像を視認できない、または音声を聞き取れない状況が生じた場合は、直ちに説明を中断し、状況が解消された後に再開します。復旧の見込みが立たないときは、日を改めて実施し直すか、対面に切り替えるかを判断します。接続が途切れる可能性に備えて、電話番号など別の連絡手段を事前に共有しておくと、中断からの立て直しがスムーズです。
出典・参考資料(1件)
Q. IT重説に録画は必要ですか?
A. IT重説に録画の義務はありません。説明の様子を記録しておくと後日の認識違いを防ぎやすい一方で、国土交通省のマニュアルは、録画・録音データには個人情報が含まれるため、録画・録音を行うかどうかを事前に相手方と調整し、データの保存方法も決めておく必要があるとしています。
出典・参考資料(1件)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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