老朽化した基幹システムの入れ替え(リプレイス)は、多くの企業にとって数年に一度の大きなプロジェクトです。保守期限が迫り「そろそろ入れ替えなければ」と分かっていても、何から着手し、どのフェーズにどれくらいの期間と費用がかかるのかが見通せず、計画づくりでつまずくケースは少なくありません。
やるべきことと期間の目安を全体像として押さえておけば、社内の意思決定や合意形成を進めやすくなります。逆に、見通しのないまま着手すると、追加費用や納期の遅延につながりかねません。
本記事では、基幹システム入れ替えの進め方を5フェーズで整理し、フェーズ別の期間の目安、費用が変わる要素、よくある失敗パターンと回避策を解説します。あわせて、入れ替えを検討すべきタイミングや、内製・外注やクラウド・オンプレミスの選び方、入れ替え先・導入支援サービスの選択肢までを整理します。
目次
一括ダウンロードする
基幹システム入れ替えの進め方(5フェーズの全体像)
基幹システムの入れ替えは、大きく5つのフェーズで進みます。前のフェーズの成果物が次のフェーズの前提になるため、順序を飛ばさずに進めることが、後戻りを防ぐうえで重要です。まずは全体の流れをつかんでおきましょう。

フェーズ1:計画策定・現状分析
最初に、入れ替えの目的と達成したい状態を言葉にします。老朽化したからという理由ではなく、「手作業の集計をなくして月次決算を早める」「部門ごとに分かれたデータを1つに統合する」といった、入れ替え後に実現したい業務の姿を具体化します。
あわせて、現行システムで誰がどの業務をどう回しているかを棚卸しします。この現状分析が不十分なまま進めると、後の要件定義で必ず手戻りが発生します。目的を測る指標(KPI。処理時間・工数・エラー率など)も、この段階で決めておきます。
フェーズ2:要件定義・ベンダー選定
棚卸しした業務をもとに、新しいシステムに求める要件を整理します。このとき、現行システムの機能をそのまま再現しようとせず、できるだけ標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard(標準機能優先)」の考え方を軸にすると、カスタマイズによる費用と期間の膨張を抑えられます。
要件がまとまったら、提案依頼書(RFP:導入したいシステムの要件や予算、スケジュールをまとめた依頼文書)を作成し、複数のベンダーに提案を依頼します。機能一覧の確認だけでなく、自社に近い業種・規模での導入実績や、導入後のサポート体制まで含めて比較することが重要です。
フェーズ3:設計・開発
選定したシステムに合わせて、画面や帳票、他システムとの連携などを設計します。パッケージやクラウド型のシステムでは、標準機能で足りない部分だけを設定・追加開発するのが基本です。カスタマイズや外部システムとの連携が多いほど、この工程は長くなります。
フェーズ4:テスト・データ移行
設計どおりに動くかを検証するテストと、現行システムからのデータ移行を行います。テストでは、開発側の動作確認に加えて、実際に使う現場の担当者が業務の流れに沿って確認する受入テスト(UAT)を必ず挟みます。
データ移行は、移行対象の洗い出し、不要・重複データの整理(クレンジング)、移行後の件数・金額の照合までをセットで計画します。移行作業を軽く見積もると、本番稼働後にデータの不整合が噴き出す原因になります。切り替え方式には、一度にすべてを切り替える方法と、業務や拠点ごとに段階的に切り替える方法があり、リスク許容度に応じて選びます。
フェーズ5:本番稼働・定着化
本番稼働後は、現場が新しいシステムを使いこなせるよう、操作マニュアルの整備や研修で定着を支援します。稼働直後は問い合わせやトラブルが集中しやすいため、一定期間の問い合わせ窓口と、不具合時に旧システムへ戻す手順(ロールバック)を用意しておくと安心です。稼働後も、運用して見えてきた課題を改善につなげていきます。
フェーズ別にかかる期間の目安
基幹システムの入れ替えにかかる期間は、企業規模・対象業務の範囲・カスタマイズ量によって大きく変わります。そのうえで、フェーズごとのおおよその目安を知っておくと、全体スケジュールのイメージを描きやすくなります。以下は一般的な目安で、実際の期間はプロジェクトの条件によって前後します。
| 1. 計画策定・現状分析 | 2. 要件定義・ベンダー選定 | 3. 設計・開発 | 4. テスト・データ移行 | 5. 本番稼働・定着化 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 期間の目安 | 1〜3か月 | 2〜4か月 | 3〜8か月 | 2〜4か月 | 1〜3か月 |
| 主な作業 | 目的・範囲・指標の決定、現行業務の棚卸し | 要件定義、RFP作成、提案比較・選定 | 設計、設定・追加開発、外部連携 | 各種テスト・UAT、データ移行・照合 | 稼働、研修・マニュアル整備、初期サポート |
※上記は一般的な進め方における期間の目安です。実際の期間は企業規模・対象業務・カスタマイズ量により変動します。
フェーズを合計すると、基幹システム全体の入れ替えでは着手から本番稼働までおおむね1〜3年程度を見込むケースが多くなります。上の表は各フェーズ単体の目安で、規模が大きい案件ではフェーズが重なったり期間が延びたりして、全体で3年程度に及ぶこともあります。
対象を一部の業務に絞ったり、カスタマイズを最小限に抑えたりすれば短縮できますが、要件定義や現状分析を急ぐと後工程での手戻りでかえって長引くため、上流工程に十分な時間を確保することが結果的に近道になります。
基幹システム入れ替えにかかる費用の考え方と費用が変わる要素
基幹システムの入れ替え費用は、同じ規模の企業でも条件によって大きく開きます。一律の相場で語りにくいため、「何に対して費用がかかるのか」「どの要素で金額が変わるのか」という構造で押さえておくと、見積もりを比較するときの判断材料になります。
費用の主な内訳
費用はおおまかに、システムを使うためのライセンス費用、自社に合わせる導入・カスタマイズ費用、現行システムからのデータ移行費用、そして稼働後の保守・運用費用に分かれます。クラウド型では、月額または年額のライセンス費用と、初回の導入費用という形が基本です。
金額の規模感は製品や要件によって幅があります。クラウド型の統合基幹システムには、1ユーザーあたり月額数千円程度のライセンス費用から利用できるものもあります。たとえばオープンソース型のERPには、スタンダードプランで月額20ドル台(日本円でおよそ数千円)のものもあります。これに利用するユーザー数と初回の導入費用、必要に応じた導入支援の費用が積み上がります。対象業務を広げるほど、またカスタマイズや外部連携が増えるほど総額は大きくなります。
たとえば50名で1ユーザーあたり月額数千円のライセンスなら、ライセンス費用だけで月額十数万円規模となり、ここに初回の導入費用が加わります。対象業務を一部に絞って標準機能中心で導入する場合と、全社の基幹業務をカスタマイズや他システム連携を伴って刷新する場合とでは、総額の桁が変わると考えておくとよいでしょう。
費用が変わる主な要素
見積もり金額は、次のような要素で変動します。これらは要件定義の段階でおおよそ見えてくるため、優先順位をつけて範囲を調整することで、費用をコントロールできます。
- 利用するユーザー数と、対象とする業務・モジュールの範囲
- 導入形態(クラウド型かオンプレミス型か、パッケージ活用か、一から独自に作るフルスクラッチ開発か)
- 標準機能で足りない部分のカスタマイズ・追加開発の量
- 会計ソフトやECサイトなど、外部システムとの連携の有無
- 移行するデータの量と、クレンジングの必要性
- 一括で切り替えるか、業務・拠点ごとに段階的に導入するか
特にカスタマイズの量は費用と期間の両方を押し上げます。前のフェーズで触れた「標準機能優先(Fit to Standard)」の考え方は、業務を標準に寄せることで作り込みを減らし、費用を抑える効果もあります。具体的な金額は条件によって大きく変わるため、複数のベンダーから自社の要件に基づく見積もりを取り、内訳を比較することが欠かせません。
入れ替えでよくある失敗パターンと回避策
基幹システムの入れ替えでつまずくポイントには、共通するパターンがあります。先に知っておけば避けられるものばかりです。ここでは代表的な失敗のパターン(よくある失敗事例)と、その回避策をセットで紹介します。
要件定義やプロジェクト進行をベンダー・SIerに任せきりにする
要件定義やプロジェクト全体の進行を、ベンダーやシステム開発会社(SIer)に丸投げしてしまうと、自社の業務に合わない仕様のまま進み、後から大量の追加要件が発生します。その結果、追加費用と納期の遅延を招きます。
回避するには、発注側である自社が主導権を持つ体制を組むことが重要です。最初の現状分析で業務を棚卸しし、「何を実現したいか」を自社の言葉で定義します。社内で体制を組みにくい場合は、ユーザー側の立場でプロジェクトを調整・管理する外部の支援(PMO)を活用する方法もあります。
現行システムの機能をそのまま再現しようとする
「今の業務をそのまま続けたい」という現場の要望をすべて受け入れ、現行システムの機能を丸ごと再現しようとすると、カスタマイズが膨らんで費用と期間が大きく増えます。古い業務のやり方ごと引き継いでしまい、入れ替えの目的だった効率化につながらないこともあります。
回避の軸は、計画段階で決めた目的とKPIに立ち返り、標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」を基本にすることです。現場の要望は、目的に照らして必要なものと慣れによるものを切り分け、本当に必要なものだけをカスタマイズの対象にします。
データ移行を軽く見積もる
「データは移すだけ」と簡単に考えていると、移行後にデータの重複や欠落、文字化けといった品質の問題が噴き出し、本番稼働後の業務が止まります。長年使ってきた基幹システムほど、蓄積されたデータには不整合や重複が潜んでいます。
回避するには、移行を独立した作業として計画し、対象データの洗い出し・クレンジング・移行後の照合までを工程に組み込みます。移行のリハーサルを行い、件数や金額が一致するかを事前に確認しておくと、本番での不整合を防げます。
切り替えを拙速に進め、戻せる備えをしない
新旧システムを並行して動かす期間を十分に取らず、一気に本番へ切り替えると、想定外の不具合が起きたときに業務が立ち行かなくなります。
回避の基本は、段階的な移行と、問題が起きたときに旧システムへ戻す手順(ロールバック計画)をセットで設計することです。重要な業務から順に切り替える、一定期間は新旧を並行稼働させるなど、リスクを小さく分けて進めます。
基幹システムの入れ替え(リプレイス)とは・検討すべきタイミング
ここまで進め方を見てきましたが、そもそも基幹システムの入れ替えとは何を指すのか、どんなときに検討すべきかを改めて整理します。入れ替えの必要性を社内で説明する際の材料にもなります。
基幹システムの入れ替え(リプレイス)とは
基幹システムとは、会計・販売・購買・在庫・生産・人事など、企業の中核業務を支えるシステムの総称です。その入れ替え(リプレイス)とは、現在使っているシステムを新しいシステムへ移行し、業務の基盤を刷新することを指します。単なるバージョンアップではなく、製品やアーキテクチャ(システムの基本構造)そのものを見直す点が特徴です。
そもそも基幹システムが支える「基幹業務」とは何か、業務システムとはどう違うのかを押さえておきたい場合は、以下の記事で整理しています。
入れ替えを検討すべきタイミング
入れ替えを検討する主なきっかけには、次のようなものがあります。
- 老朽化・保守/サポート切れ:ハードウェアやソフトウェアのサポート期限(保守切れ)が近づき、障害時の対応やセキュリティ更新が受けられなくなる
- 業務とのミスマッチ:事業の拡大や制度変更に現行システムが対応できず、手作業や個別対応が増えている
- 属人化・ブラックボックス化:度重なる改修で中身が複雑になり、担当者しか仕様が分からない状態になっている
こうしたきっかけは、実際にシステムの乗り換え相談を受けるベンダーの現場でも見られます。中堅・中小企業向けの会計システムを提供するピー・シー・エーの田崎氏は、乗り換え相談が増える背景を次のように話します。

基幹業務ソフトはどの企業様でも何かしらお使いになっているものですので、やはり他社ソフトからの乗り換えのご相談が非常に多いです。主なきっかけとしては、制度改正や法改正を機にシステムを見直したいというケース、企業の成長に合わせてステップアップした機能を使いたいというケース、そしてお使いのソフトがサービス終了となり他社製品を検討されるケースがあります。
こうした課題は、企業のデジタル化の足かせにもなります。経済産業省が2018年9月に公表した「DXレポート」では、企業が老朽化・複雑化した既存システムを刷新できないまま2025年を迎えると、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘されました(いわゆる「2025年の崖」)。
指摘された2025年は過ぎましたが、老朽化・複雑化したシステムの刷新は、多くの企業で現在も続く課題です。保守期限やサポート終了の時期から逆算し、余裕を持って検討を始めることが、こうしたリスクを避けることにつながります。
自社に合う進め方の選び方
入れ替えの進め方には、いくつかの分かれ道があります。自社の体制やリソースに合う選び方を押さえておきましょう。
内製と外注のどちらで進めるか
社内に情報システム部門があり、業務要件を自社で整理できる体制があれば、内製で進める選択肢があります。自社の業務に精通した人が関わることで、要件のずれを抑えられます。一方、専門人材が限られる場合は、要件定義から導入・定着までを支援する外部パートナーへ外注する方が、品質と進行の両面で現実的です。
多くの企業では、要件定義や意思決定は自社が主導し、設計・開発や移行作業を外部に委託する組み合わせ(ハイブリッド)を取ります。判断の軸は、社内で確保できる人員とスキル、入れ替えに割ける期間、そして自社の業務にどこまで独自の要件があるかです。これらを棚卸ししたうえで、どの工程を外部に委ねるかを決めます。
クラウド型とオンプレミス型のどちらを選ぶか
新しい基幹システムの提供形態には、ベンダーが用意した基盤をインターネット経由で使うクラウド型と、自社の設備にシステムを構築するオンプレミス型があります。それぞれの特徴を整理します。
| 初期費用 | 導入期間 | カスタマイズの自由度 | 保守・運用 | 向いている企業 | |
|---|---|---|---|---|---|
| クラウド型 | 抑えやすい(基盤構築が不要) | 短くしやすい | 標準機能の範囲が中心 | ベンダー側が基盤を保守 | 短期間・標準業務で始めたい企業 |
| オンプレミス型 | 大きくなりやすい(サーバー等の構築が必要) | 長くなりやすい | 自由度が高い | 自社で運用・保守する | 独自要件が多く作り込みたい企業 |
※上記は一般的な傾向です。製品ごとの実際の提供形態や対応範囲は各社情報をご確認ください。
近年は、短期間で導入でき、保守・運用の負担を抑えられるクラウド型を選ぶ企業が増えています。ただし、独自業務が多くカスタマイズを重視する場合はオンプレミス型が適することもあり、自社の要件と照らして判断します。
一括ダウンロードする
基幹システムの入れ替え先・導入支援サービスの選択肢
ここからは、入れ替え先となる基幹システムや、要件定義からデータ移行・定着までを伴走する導入支援サービスの選択肢を紹介します。いずれも、前半で解説した進め方・費用・失敗回避の観点から、実際の入れ替えを進める手段として候補になります。
以下は、紹介するサービスの比較表です。
| サービス名 | Oracle NetSuite | Odoo導入・開発・業務統合支援 |
|---|---|---|
| 種類・提供形態 | 統合型クラウドERP(製品本体)。財務会計・販売購買・在庫・営業支援(SFA)・顧客管理(CRM)を1つの基盤に統合 | オープンソースERP「Odoo」の導入・開発支援(サービス)。提供形態はクラウド(Odoo Online/Odoo.sh)/オンプレミス/ハイブリッドから選択 |
| 主な対応・支援範囲 | 業務データを単一基盤で一元管理。27以上の言語・190以上の通貨に対応し海外拠点も統合。標準機能を活かした短期間導入と段階的な拡張。導入・サポートは日本オラクルの直販/パートナー経由 | 要件定義・Fit&Gap分析/カスタマイズ開発/外部システム連携/データ移行/運用定着・研修/公開後の運用支援の6工程を一貫して支援 |
| 料金体系 | 年間ライセンス料+導入時の初期費用(会社規模・ユーザー数・データ量で決定)。金額は非公開で要問い合わせ(2026年10月時点) | Odoo本体ライセンス(スタンダード22ドル/ユーザー・月、カスタム33ドル/ユーザー・月。初回ユーザー12ヶ月割引後)+マルウェブの導入支援費用は個別見積もり(2026年10月時点) |
| 向いている企業 | オンプレミスの刷新・事業成長に伴う業務の標準化・M&A後のグループ統合を進めたい企業。スタートアップから上場企業まで、海外拠点を持つ企業にも対応 | 販売・在庫・会計などが部門ごとに分断された中小企業。小さく始めて段階的に統合したい企業や、ECサイト・受発注との連携を求める企業 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
1. Oracle NetSuite(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuite は、財務会計・販売購買・在庫管理・営業支援(SFA)・顧客管理(CRM)までを1つに統合したクラウド型の基幹業務システム(ERP)です。25年以上にわたり提供され、日本オラクルへの取材によると200か国以上・43,000社を超える企業に利用されており、27以上の言語と190以上の通貨に対応しています。海外拠点を含めて1つの基盤で扱える点が特徴です。
日本オラクルの担当者によると、導入のきっかけは大きく3つに分かれます。古くなったオンプレミスのシステムを刷新したいケース、事業の成長に伴ってバラバラになったシステムや業務のやり方を標準化したいケース、M&A後にグループ全体のシステムを統合してデータを可視化したいケースです。
標準機能を活用して比較的短期間で導入しやすく、成長に合わせて段階的に拡張できる点を強みとしています。導入効果の一例として、物流業の企業で年間およそ1,200時間の作業工数を削減した事例が紹介されています。
料金は、会社の規模に応じたライセンスに、利用するユーザー数や使用するデータ量を組み合わせて決まる仕組みで、年間のライセンス料と導入時の初期費用という形が基本です。具体的な金額は要件により変わるため、資料で詳細を確認できます。
2. Odoo導入・開発・業務統合支援(株式会社マルウェブ)

株式会社マルウェブが提供する、オープンソースの基幹業務システム(ERP)「Odoo」の導入支援サービスです。Odoo は販売・会計・在庫・顧客管理(CRM)など80種類以上のアプリから、自社で使うものだけを選んで組み合わせられるのが特徴で、マルウェブはその導入から定着までを一貫して支援します。
支援の工程は、要件定義とFit&Gap分析による現状業務の可視化から始まり、カスタマイズ開発、ECサイトの受注連携や会計ソフトへの仕訳連携といった外部システムとの連携、データ移行(クレンジング・インポートの設計と実行・移行後の検証)、そして管理者やエンドユーザー向けの研修・定着支援まで含みます。
本記事で解説した進め方を、伴走しながら進められる形です。販売・在庫・会計から小さく始めて段階的に広げるスモールスタートの提案にも対応します。
どこまでを一度に導入し、どこから段階的に広げるかは、費用と期間を左右する判断です。マルウェブの若林氏は、その見極めの軸を次のように話します。
判断の軸は大きく2点です。一つは、お客様が今どの業務をどのように運用していて、Odooのアプリで言えばどの領域を使うことになるのか。もう一つは、予算と優先順位です。この2点は要件定義とフィット&ギャップ分析の段階でお伝えしながら整理していきます。
費用は、Odoo本体のライセンス料と、マルウェブの導入支援費用に分かれます。Odooのライセンス料は、2つ以上のアプリを使うスタンダードプランで1ユーザーあたり月額22ドル、カスタムプランで同33ドルです(2026年10月時点、初回ユーザーへの12か月割引適用後の価格)。
マルウェブの導入支援費用は、利用ユーザー数・対象モジュール数・カスタマイズ範囲・外部連携やデータ移行量・段階導入か一括導入かといった要素で変わるため、個別見積もりとなります。詳細は資料で確認できます。
ここで取り上げた2つは、入れ替え先・導入支援サービスの一例です。ERP全般を対応業務の範囲・料金・提供形態(クラウド/オンプレミス)で横並びに見比べ、入れ替え先の候補を広げたい場合は、主要製品をまとめた以下の比較記事もあわせてご覧ください。
まとめ
基幹システムの入れ替えは、計画策定・現状分析から、要件定義・ベンダー選定、設計・開発、テスト・データ移行、本番稼働・定着化までの5フェーズで進めます。全体では1〜3年程度を見込むケースが多く、上流工程に時間をかけることが、後工程の手戻りを防ぐ近道です。
費用は規模やカスタマイズ量などの要素で大きく変わるため、構造で捉えて複数の見積もりを比較します。要件定義のベンダー任せ、現行機能の丸ごと再現、データ移行の軽視、拙速な切り替えといったよくある失敗は、発注側が主導権を持ち、標準機能を優先し、移行と切り替えを計画的に進めることで避けられます。自社の体制や要件に合う入れ替え先・導入支援サービスを比較し、無理のない計画づくりから始めてください。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. 基幹システムの入れ替え(リプレイス)とは何ですか?
A. 基幹システムの入れ替え(リプレイス)とは、会計・販売・在庫・人事など企業の中核業務を支える現行システムを、新しいシステムへ移行して業務基盤を刷新することです。既存環境を保ったまま行うバージョンアップとは異なり、製品やアーキテクチャそのものを見直す点が特徴です。現行システムの老朽化・保守切れ、業務とのミスマッチ、属人化・ブラックボックス化などをきっかけに検討されます。
Q. 基幹システムの入れ替えは全体でどのくらいの期間がかかりますか?
A. 基幹システム全体の入れ替えは、着手から本番稼働まで1〜3年程度を見込むケースが多いのが目安です。対象業務を一部に絞ったり、カスタマイズを最小限に抑えたりすれば短縮できます。ただし、企業規模・対象範囲・カスタマイズ量・移行データ量によって前後するため、あくまで幅のある目安として捉えてください。計画策定や要件定義などの上流工程を急ぐと後工程で手戻りが生じ、かえって長引く点にも注意が必要です。
Q. 基幹システムの入れ替えは、いつ切り替えるのがよいですか?
A. 月次・年次の決算や繁忙期を避け、業務が比較的落ち着く時期に本番切り替えを計画するのが基本です。切り替え直後はトラブルや問い合わせが集中しやすく、締め処理が重なる月末・期末や繁忙期と重なると、不具合対応と通常業務で現場の負担が大きくなります。並行稼働の期間とロールバック手順を用意し、重要な業務から段階的に切り替えると、リスクを抑えられます。
Q. 基幹システムの入れ替え費用はどのくらいが相場ですか?
A. 基幹システムの入れ替え費用は条件による開きが大きく、一律の相場で示すのは難しいため、費用が何で変わるかの構造で捉えるのが現実的です。費用はおおまかに、ライセンス費用・導入/カスタマイズ費用・データ移行費用・保守運用費用に分かれます。
金額は、利用ユーザー数や対象業務の範囲、導入形態(クラウド型/オンプレミス型、パッケージ活用/フルスクラッチ開発)、カスタマイズ量、外部システムとの連携、移行データ量などで変動します。特にカスタマイズ量が費用と期間の両方を押し上げるため、複数のベンダーから自社要件に基づく見積もりを取り、内訳を比較することが欠かせません。
Q. 基幹システムの入れ替えは内製と外注のどちらがよいですか?
A. 自社に情報システム部門があり業務要件を整理できる体制があれば内製、専門人材が限られる場合は外注が現実的で、多くの企業は要件定義を自社主導・設計や移行作業を外注するハイブリッドを採ります。判断の軸は、社内で確保できる人員とスキル、入れ替えに割ける期間、自社固有の要件の多さです。内製・外注・ハイブリッドのいずれを選ぶかで、必要な体制とベンダーへの依頼範囲が決まります。
Q. 基幹システムの入れ替えを依頼するベンダー・SIerはどう選べば失敗しにくいですか?
A. 機能一覧の確認だけでなく、自社に近い業種・規模での導入実績と、導入後のサポート体制まで含めて複数社を比較することが、失敗を避けるポイントです。提案依頼書(RFP)で要件・予算・スケジュールを明文化して各社に提案を求め、同じ条件で見比べます。
あわせて、現行機能の丸ごと再現ではなく標準機能を優先する進め方(Fit to Standard)に理解があるか、発注側が主導する体制を尊重してくれるかも確認しておくとよいでしょう。
Q. 基幹システムの入れ替えで社内に専任の体制を組めない場合はどうすればよいですか?
A. ユーザー側の立場でプロジェクトを調整・管理する外部の支援(PMO)を活用する方法があります。要件定義やベンダー選定をすべてベンダー任せにすると、自社の業務に合わない仕様のまま進み、追加費用や納期の遅延を招きます。社内に専任者を置けない場合でも、意思決定と要件の最終判断は自社が担い、進行管理や調整を外部の支援に委ねることで、発注側の主導権を保ったまま進められます。
Q. 基幹システムの入れ替えで「2025年の崖」とは何を指しますか?
A. 「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年9月に公表した「DXレポート」が示した、老朽化・複雑化した既存システムを刷新できないまま2025年を迎えると、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるという指摘です。基幹システムの老朽化やブラックボックス化はこのリスクに直結するため、保守期限やサポート終了の時期から逆算し、余裕を持って入れ替えを検討することが重要です。
基幹システム(ERP)の料金・資料を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、基幹システムの入れ替え先となるERP・導入支援サービスの最新資料を無料で一括請求できます。対応業務の範囲や料金体系を見比べて、自社に合う候補を効率的に絞り込めます。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















