自然災害やサイバー攻撃、法令違反、サプライチェーンの寸断など、企業が向き合うリスクは年々複雑になっています。こうしたリスクへの備えを一部門の仕事にとどめず、経営の仕組みとして回したいと考える企業が増えています。
「企業のリスクマネジメントは経営のなかで何の役割を果たすのか」「その役割を社内の誰が担うのか」を整理しないまま体制づくりを進めると、リスク情報が部門ごとに分断され、経営が全体像をつかめないまま形だけの仕組みになりがちです。
本記事では、リスクマネジメントが経営で担う役割を結論から示したうえで、その役割分担や全社で回す進め方・体制までを解説します。自社でリスク管理を経営の仕組みとして立ち上げる・見直すための検討材料としてご活用ください。
目次
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経営におけるリスクマネジメントの役割
まず、リスクマネジメントが経営のなかで果たす役割を、結論から整理します。
経営が担う3つの役割
経営のなかでリスクマネジメントが担う役割は、大きく次の3つに整理できます。いずれも、リスクを避けること自体が目的ではなく、経営の意思決定と企業の持続的な成長を支えることに向いています。
- 企業価値の維持・向上:損失につながるリスクを抑えて事業を継続させるとともに、取るべきリスクを見極めて成長の機会をつかむことで、企業価値を守り高めます。
- 経営判断の質を高める:戦略の決定や投資判断の前提となるリスクを可視化し、経営陣が十分な情報にもとづいて意思決定できる状態をつくります。
- ステークホルダーへの説明責任:どのようなリスクを、どのような体制で管理しているかを株主や取引先に説明できる状態にし、企業への信頼を支えます。
このうち、企業価値の維持・向上と経営判断の質については、リスクマネジメントの国際規格であるISO 31000(JIS Q 31000)の序文が、その位置づけを明確に述べています。
この規格は,リスクのマネジメントを行い,意思を決定し,目的の設定及び達成を行い,並びにパフォーマンスの改善のために,組織における価値を創造し保護する人々が使用するためのものである。
出典:JIS Q 31000:2019「リスクマネジメント-指針」序文|日本規格協会
リスクマネジメントは,反復して行うものであり,戦略の決定,目的の達成及び十分な情報に基づいた決定に当たって組織を支援する。
リスクマネジメントは,組織統治及びリーダーシップの一部であり,あらゆるレベルで組織のマネジメントを行うことの基礎となる。
リスクマネジメントは「組織統治及びリーダーシップの一部」であり、戦略の決定や目的の達成を支えるものと位置づけられています。経営から切り離された管理業務ではなく、経営そのものを支える役割を担うという考え方が、国際規格の前提になっています。
3つ目の「説明責任」は、どのようなリスクをどう管理しているかを開示・説明することで企業への信頼を支えるもので、後述するコーポレートガバナンス・コードが求める全社的リスク管理体制の整備と、その運用状況の開示・監督につながります。
リスクマネジメントとは(関連用語との違い)
リスクマネジメントとは、企業の目的の達成を妨げうる不確実性を事前に把握し、損失の回避・低減や機会の活用につなげる一連の取り組みを指します。ISO 31000(JIS Q 31000)では、リスクを「目的に対する不確かさの影響」ととらえ、損失だけでなく、目的に対するプラス・マイナス両方の影響を対象とする考え方を示しています。
混同されやすい関連用語とは、次の点で区別されます。危機管理(クライシスマネジメント)は、事故や不祥事が実際に起きた後の対応に重きを置く概念です。これに対してリスクマネジメントは、リスクが顕在化する前の備えを含む、より広い枠組みを指します。また、リスクアセスメントは、リスクの特定・分析・評価を行う工程で、リスクマネジメント全体のなかの一部分にあたります。
なぜ一部門の作業ではなく「経営課題」なのか
リスクマネジメントが経営課題とされるのは、扱うリスクが特定の部門にとどまらず、経営全体に影響するからです。サイバー攻撃による事業停止、法令違反による信用の失墜、海外拠点の地政学リスクなどは、いずれも一部門の対応では完結せず、企業価値そのものを左右します。
これらのリスクにどこまで備え、どこで事業機会を取りにいくかという判断は、経営資源の配分に直結します。だからこそ、現場任せの個別対応ではなく、経営が全体像を把握して優先順位を決める必要があり、リスクマネジメントは経営の役割として位置づけられます。前掲のISO 31000が「組織統治及びリーダーシップの一部」と述べているのも、この意味においてです。
守りだけでなく「取るべきリスク」の選択も経営の役割
リスクマネジメントは、損失を防ぐ「守り」の側面だけで語られがちですが、経営の役割としては、取るべきリスクを見極めて成長につなげる「攻め」の側面も含みます。新規事業への投資や海外展開は、リスクを伴うからこそリターンが期待できる判断であり、リスクを正しく把握することは、果断な意思決定の裏付けになります。
この考え方は、後述するコーポレートガバナンス・コードでも明確に示されています。全社的なリスク管理体制の整備は、リスクを最小化するためだけでなく、「経営陣が果断にリスクテイクを行うための裏付けとなり得るもの」と位置づけられています。守りと攻めの両面を支えることが、経営におけるリスクマネジメントの役割です。
誰がリスクマネジメントを担うのか(役割分担)
ここからは、経営におけるリスクマネジメントを「誰が何を担うのか」という役割分担の観点から整理します。リスクマネジメントは特定の担当者だけの仕事ではなく、取締役会から各事業部門まで、それぞれの立場で役割を分担して初めて機能します。
取締役会から各事業部門までの役割分担と、方針・監督が上から、リスク情報の報告が下から流れる関係を図にまとめると、次のとおりです。

役割分担の全体像
主な主体とその役割を一覧にすると、次のように整理できます。
| 主体 | 取締役会・監査役等 | 経営者(経営トップ・経営会議) | リスク管理委員会・事務局 | リスク管理部門・リスクマネジャー | 各事業部門 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経営におけるリスクマネジメントの主な役割 | 全社的リスク管理体制を整備する方針を定め、その運用状況を監督する。監査役・監査役会(または監査等委員会)は、取締役の職務執行を監査する立場からリスク管理の状況を確認する。 | 取締役会が定めた方針を具体化し、重点的に管理すべきリスクを決定する。取るべきリスクと避けるべきリスクを選択し、経営資源の配分を判断する。 | 全社のリスク情報を集約・評価して経営層に報告し、部門をまたぐリスクの調整を担う。委員会の運営や規程の整備を事務局が支える。 | リスクの洗い出し・分析・評価の実務を回し、対応策の設計・進捗管理を行う。現場と経営をつなぐハブとして、全社のリスクを横断的に把握する。 | 自部門の業務に伴うリスクを一次的に把握・管理し、リスク管理委員会・事務局へ報告する。日々の業務のなかでリスク対応を実行する。 |
※上記は一般的な役割分担の例です。実際の体制・名称は各社の規模や機関設計により異なります。
このうち取締役会の役割については、コーポレートガバナンス・コード(金融庁・東京証券取引所)が、現行の2026年版の原則4-4で明確に定めています。
取締役会は、内部統制や全社的リスク管理体制を適切に整備すべきである。
出典:コーポレートガバナンス・コード 原則4-4(2026年版)|金融庁・株式会社東京証券取引所
(解釈指針)内部統制や先を見越した全社的リスク管理は、適切なコンプライアンスの確保により持続的に信頼を維持し、リスクを最小化するために重要であるのみならず、経営陣が果断にリスクテイクを行うための裏付けとなり得るものであるから、取締役会は、グループ全体を含めたこれらの体制を適切に構築するとともに、内部監査部門を活用しつつ、その運用状況を監督すべきである。
取締役会が体制の整備と監督を担い、その下で経営者が具体的なリスク管理を主導するという関係は、上場企業のガバナンス開示でも確認できます。たとえば株式会社リコーは、取締役会の役割を次のように開示しています。
取締役会は、リコーグループのリスクマネジメント原則を定める他、経営者の職務の執行において、リスクマネジメントが有効かつ効率的に行われているか監督する役割と責任を負う。
出典:リスクマネジメント|サステナビリティ|株式会社リコー
役割分担を自社に当てはめるときの視点
役割分担表を自社に当てはめる際は、立場ごとの責任の重なりと受け渡しに注目すると整理しやすくなります。取締役会は体制を整えて監督する立場、経営者は重点リスクを決めて判断する立場、リスク管理部門や委員会は実務を回して情報を集約する立場、と役割の重心が分かれます。それぞれの境界と連携を明確にすることで、リスク情報が宙に浮いたり、重複して管理されたりする事態を防げます。
リコーの開示では、経営が主体的に選択・管理する「重点経営リスク」と、各事業執行組織が責任を持って管理する機能部門・ビジネスユニットのリスクを二層に分け、両者を連動させる体制が示されています。全社で管理すべきリスクと現場で管理するリスクを切り分けつつ、その情報を経営層が束ねられるようにすることが、役割分担を機能させる鍵になります。
リスク管理部門やリスクマネジャーは、実務の専門職として重要な役割を担います。AIG損害保険株式会社は、リスクマネジャーを「企業が直面する不確実性を最小化し、事業運営に欠かせないリスクマネジメント戦略の策定・実行をリードする専門職」と整理し、リスクの見える化や対応策の設計、現場と経営をつなぐ役割を挙げています。
出典・参考資料(1件)
全社で回す枠組み(ERM)と進め方・体制構築
役割分担を定めたら、それを全社で回す枠組みとして機能させる必要があります。ここからは、全社的リスクマネジメント(ERM)の考え方と、経営の仕組みとして立ち上げる進め方・体制を解説します。
全社的リスクマネジメント(ERM)とは — 従来の部門別リスク管理との違い
全社的リスクマネジメント(ERM:Enterprise Risk Management)とは、部門ごとに個別管理されがちなリスクを全社横断で捉え、経営戦略と結びつけて管理する枠組みです。内部統制やコンプライアンスの枠を超え、経営の意思決定にリスクの視点を組み込む点に特徴があります。
ERMの代表的な枠組みを示すCOSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会)は、ERMを次のように定義しています。
Enterprise risk management is not a function or department. It is the culture, capabilities, and practices that organizations integrate with strategy-setting and apply when they carry out that strategy, with a purpose of managing risk in creating, preserving, and realizing value.
出典:Enterprise Risk Management — Integrating with Strategy and Performance, Executive Summary (2017)|COSO
(筆者訳・大意)全社的リスクマネジメントは、一つの機能や部門ではない。それは、組織が戦略策定と統合し、戦略の実行時に適用する文化・能力・実務であり、価値を創造・維持・実現するなかでリスクを管理することを目的とする。
COSOはERMを、内部統制よりも広い範囲を扱うものと位置づけています。従来の部門別リスク管理が「各部門が自部門のリスクを個別に管理する」形だったのに対し、ERMは全社のリスクを経営戦略と一体で捉える点が異なります。だからこそ、経営に直結した枠組みとして位置づけられます。
リスクマネジメントのプロセス
ERMとして全社で回す際の基本的な流れは、ISO 31000(JIS Q 31000)が示すプロセスに沿って整理できます。同規格は、プロセスを次の要素で構成しています。
- 適用範囲・状況・基準の設定
- リスクアセスメント(リスクの特定・分析・評価)
- リスク対応
- モニタリング及びレビュー
- 記録作成及び報告
実務では、まず経営としてリスク管理の方針と、どの範囲・基準でリスクを見るかを定めます。次に、全社のリスクを洗い出し、影響の大きさと発生の可能性から評価していきます。そのうえで、回避・低減・移転・保有といった対応方針を決め、実施状況を継続的にモニタリングして見直すという流れです。これを一度きりで終わらせずPDCAとして繰り返すことが、環境変化に合わせてリスク管理を更新し続ける鍵になります。
出典・参考資料(1件)
体制構築の要点
プロセスを回す土台として、体制の整備が欠かせません。多くの企業では、経営層を委員長とするリスク管理委員会を置き、その実務を担う事務局を設け、リスク管理の方針や手順を規程として明文化します。これにより、誰が・いつ・何を報告し、どこで意思決定するかが定まります。
体制を機能させるうえで特に重要なのが、経営トップのコミットメントです。リスク管理を現場任せにせず、経営が重点リスクの選定や対応方針に主体的に関与することで、全社の取り組みに実効性が生まれます。前述のコーポレートガバナンス・コードが取締役会に体制整備と監督を求めているのも、この実効性を担保するためです。
体制を新たに立ち上げる、あるいは見直す場合は、段階を追って進めると現実的です。まず全社のリスクと現在の管理状況を棚卸しして現状を把握し、次に経営として重点的に管理するリスクを絞り込みます。
そのうえで、影響の大きさと発生の可能性でリスクを評価する基準と、誰がいつ経営層へ報告するかという報告ラインを設計します。最後に、リスク管理委員会の運営ルールとモニタリングの頻度を定め、一度きりで終わらせずに繰り返します。
なお、リスク管理委員会・事務局・リスク管理部門は必ずしも別組織である必要はなく、事務局をリスク管理部門が兼ねる企業も多くあります。重要なのは組織の数ではなく、全社のリスク情報を集約して経営層へ報告する役割と、各部門のリスクを一次管理する役割が、誰の担当として明確になっていることです。
役割を機能させるうえでの実務課題
役割分担と体制を定めても、運用の段階で課題に直面することは少なくありません。最もつまずきやすいのが、部門ごとに分散したリスク情報を、どう集約して経営層が全体像を把握できる形にするかという点です。
前掲のCOSOも、ERMが単にリスクを一覧にすることや、全リスクを棚卸することにとどまらないと述べています。各部門がそれぞれリスクを管理していても、その情報が全社で束ねられ、経営の視点で優先順位をつけられなければ、経営判断の材料にはなりません。
そのため、影響度と発生可能性といった共通の基準で全社のリスクを集め、継続的に更新し、経営層が一覧で比較できる形に整理し続ける運用が求められます。この集約・可視化が滞ると、せっかく定めた役割分担も経営判断に結びつきません。
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役割を支える仕組み:ERM型GRCツールという選択肢
分散したリスク情報の集約・可視化という実務課題に対し、仕組みで支える選択肢がERM型のGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ツールです。全社のリスク情報、対応策、インシデント情報などを一元管理し、経営層がリスクの全体像をつかめる状態を支えます。
ここでは、全社的なリスク管理を支える代表的なサービスを紹介します。各サービスとも日本市場では、構成するモジュールや利用規模に応じた個別見積もりが基本です。また、企業規模や既存の基盤によって適する製品が分かれるため、各サービスの対象や前提もあわせて示します。
1. Enterprise Risk MT(ERMT)(株式会社GRCS)

Enterprise Risk MT(ERMT)は、GRC領域を専業とする株式会社GRCSが提供する、ISO 31000:2018に準拠した全社的リスクマネジメント(ERM)ツールです。リスク情報・対応策・インシデント情報を一元管理し、表計算ソフトによる属人的な運用で生じがちな、リスクの見えにくさや更新の負担といった課題に対応します。
国際ガイドラインが示すリスクマネジメントのプロセスに沿ってリスクを管理できる点が特徴で、リスクの見える化・省人化・迅速化を掲げています。戸田工業株式会社、セガサミーホールディングス株式会社、青山商事株式会社などの導入が公表されているほか、2025年9月には東京海上日動火災保険株式会社が販売紹介を開始しています。
2. Diligent(Diligent Japan合同会社)

取締役会管理ソフトを起点に成長したDiligentは、全社的リスクマネジメント(ERM)・内部監査・コンプライアンス・エンティティ管理などを単一のプラットフォーム「Diligent One Platform」に統合しています。ガバナンスの各領域を一つの基盤でつなぐことで、取締役会から実務までリスク情報を一貫して扱える点を打ち出しています。
複数の国・法域にまたがる大企業向けの統合ソリューションという位置づけが公式に示されており、グローバルにガバナンス体制を整える企業に向いています。日本法人のDiligent Japan合同会社が国内の営業・サポートの窓口を担っています。
3. IBM OpenPages(日本アイ・ビー・エム株式会社)

日本アイ・ビー・エム株式会社が提供するIBM OpenPagesは、広範なリスク・コンプライアンス領域を単一プラットフォームでカバーする統合GRC製品です。オペレーショナルリスク管理・規制コンプライアンス・内部監査・モデルリスクなど、必要なモジュールを選んで利用する構成になっています。
生成AIやWatsonとの連携により、リスク分類や文書要約の自動化に対応する点も特徴です。複雑な規制環境や大規模なベンダーネットワークを抱えるグローバル企業・金融機関での採用が中心で、金融機関向けのモデルリスク管理モジュールも備えています。
4. Archer(Archer Technologies Japan合同会社)

Archerが提供するのは、エンタープライズ向けの統合リスク管理(IRM:Integrated Risk Management)/GRCプラットフォームです。監査管理・オペレーショナルリスク管理・ITセキュリティリスク管理など、複数のソリューション領域をカバーします。
RSA Archerとして2000年代初頭から提供されてきた歴史を持ち、グローバルで1,200社以上、Fortune 500企業の50%以上が導入していると公表されています。日本法人のArcher Technologies Japan合同会社が国内展開を担い、大規模なリスク管理基盤を求める企業に向いています。
5. SAP GRC(SAPジャパン株式会社)

SAP GRCは、基幹システムのSAP ERP(ECC/S/4HANA)を基盤とする大規模企業向けのGRCソリューション群です。SAPジャパン株式会社が提供し、SAP ERPと密接に連携して、アプリケーション上の職務分掌(SoD)違反の検出、内部統制、規制対応を一元管理する用途で導入されます。
単一の製品ではなく、アクセス管理(Access Control)、プロセス統制(Process Control)、リスク管理(Risk Management)、監査管理(Audit Management)などの複数モジュールで構成されています。すでにSAPを基幹システムとして利用している企業が、その上位レイヤーとして全社のリスク・統制を管理する際に適しています。
【比較表】リスク情報の集約・可視化を支えるサービス
以下は、ご紹介した全社的リスク管理を支えるサービスの比較表です。
| サービス名 | Enterprise Risk MT(ERMT) | Diligent | IBM OpenPages | Archer | SAP GRC |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(SaaS) Salesforce基盤・単独利用可 | クラウド(SaaS) Diligent One Platform | SaaS/Hosted/オンプレ/ AWS Marketplace | SaaS/オンプレミス (両対応) | SAP ERP連携前提 (オンプレ/クラウド) |
| 特徴 | ISO 31000:2018準拠の国産ERM リスクの見える化・省人化 | 取締役会管理を起点にした統合GRC ガバナンスを単一基盤に統合 | 統合GRC(11モジュール) 生成AI・Watson連携 | 統合リスク管理(IRM) 9ソリューションを1基盤に統合 | SAP ERPと深く統合 SoD・内部統制・規制対応を一元管理 |
| 対応領域 | 全社リスク管理 (リスク評価・対応・インシデント管理) | ERM・内部監査・コンプライアンス・ エンティティ管理・取締役会管理 | オペレーショナルリスク・規制対応・ 内部監査・モデルリスク・ベンダーリスク等 | 監査・ERM/ORM・ESG・ ITセキュリティ・サードパーティ管理等 | アクセス管理・プロセス統制・ リスク管理・監査管理等 |
| 想定対象・前提環境 | 中堅〜大企業 スモールスタート可能 | 複数法域をもつ グローバル大企業 | 大企業・金融機関 (SIerの導入支援が前提) | 大企業・金融機関・公共部門 (認定パートナー実装が前提) | SAPを基幹に持つ 大企業・グローバル企業 |
| 料金 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
ここで取り上げたサービスも含め、GRCツール全体の選び方や機能をより広く比較しながら導入を検討したい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
経営におけるリスクマネジメントの役割は、企業価値の維持・向上、経営判断の質の向上、ステークホルダーへの説明責任という3つに整理できます。これは一部門の作業ではなく、取締役会が体制を整備・監督し、経営者が重点リスクを決定し、リスク管理委員会・部門と各事業部門が実務を担うという、全社の役割分担によって成り立ちます。
その役割を全社で回す枠組みが全社的リスクマネジメント(ERM)であり、方針決定からモニタリングまでのプロセスと、委員会・規程・経営トップのコミットメントを含む体制が土台になります。
運用段階では、部門ごとに分散したリスク情報を集約し、経営層が全体像を把握できる形にすることが課題となり、ERM型のGRCツールはこの仕組みづくりを支える選択肢です。自社のリスク管理を経営の仕組みとして整えるために、まずは役割分担と体制の現状を確認し、必要に応じて仕組みの導入を検討してください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 経営におけるリスクマネジメントの役割とは何ですか?
A. 経営におけるリスクマネジメントの役割は、企業価値の維持・向上、経営判断の質の向上、ステークホルダーへの説明責任という3つに整理できます。リスクを避けること自体が目的ではなく、損失を防ぐ「守り」と、取るべきリスクを見極めて成長につなげる「攻め」の両面から、経営の意思決定と企業の持続的な成長を支える点に本質があります。
国際規格のISO 31000(JIS Q 31000)も、リスクマネジメントを「組織統治及びリーダーシップの一部」と位置づけています。
Q. 中小企業や非上場企業でも、経営としてリスクマネジメントに取り組む必要がありますか?
A. 企業の規模や上場の有無にかかわらず、事業の継続や信用に関わるリスクを抱える企業であれば、経営としてリスクマネジメントに取り組む意義があります。ただし、中小企業や非上場企業では、取締役会・リスク管理委員会・専任部門という体制をそのまま備える必要はなく、経営者が重点リスクを決め、既存の会議体や担当者が役割を兼ねる形から始めるのが現実的です。
重要なのは体制の形式よりも、経営が全社のリスクの全体像を把握し、優先順位を判断する機能を持たせることです。
Q. リスクマネジメントの専任部署や担当者は置くべきですか?兼任では問題がありますか?
A. リスクマネジメントは、必ずしも専任部署を置かなければ機能しないわけではなく、経営企画や内部統制などの既存部門が兼務する形でも成り立ちます。重要なのは、全社のリスク情報を集約して経営層へ報告するハブ機能と、各事業部門が自部門のリスクを一次的に管理する役割を、誰が担うのかを明確にすることです。
事業が多角化・グローバル化してリスクが複雑になるほど、横断的に全社のリスクを把握する専任のリスク管理部門やリスクマネジャーを置く意義が高まります。
Q. リスクマネジメントとBCP(事業継続計画)はどう違うのですか?
A. BCP(事業継続計画)は、災害やシステム障害など重大な事象が起きたときに、事業を中断させない・早期に復旧させるための計画であり、リスクマネジメント全体のなかの対応策の一つという位置づけです。リスクマネジメントがリスクの洗い出し・評価から対応・モニタリングまでを含む広い枠組みであるのに対し、BCPはそのうち「重大なリスクが顕在化した後に事業を守る」局面に特化した備えにあたります。
したがって、BCPの整備はリスクマネジメントの取り組みと切り離さず、全社のリスク評価の結果を踏まえて設計することが望ましいといえます。
Q. コーポレートガバナンス・コードのリスク管理に関する規定は、すべての企業に義務づけられているのですか?
A. コーポレートガバナンス・コードのリスク管理に関する規定(取締役会に全社的リスク管理体制の整備を求める原則4-4など)は、東京証券取引所に上場する企業に対して、上場規則を通じて「コンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合はその理由を説明するか)」の形で適用されます。罰則を伴う一律の法令上の義務ではなく、非上場企業を直接拘束するものでもありません。
ただし、取締役会が全社的リスク管理体制を整備し、その運用状況を監督するという考え方は、上場・非上場を問わず体制づくりの指針として参考になります。
Q. ERM型のGRCツールはどんな企業に必要ですか?Excelでの管理では不十分でしょうか?
A. ERM型のGRCツールは、部門ごとに分散したリスク情報を全社で一元管理し、経営層がリスクの全体像をつかめる状態を保ちたい企業に適しています。リスクの件数や関係する部門が限られるうちは表計算ソフトでも管理できますが、拠点・部門・リスク項目が増えると、更新の遅れや担当者への依存(属人化)、全社での比較のしにくさといった限界が出てきます。
全社横断でリスクを継続的に集約・可視化する運用が負担になってきた段階が、ツール導入を検討する一つの目安です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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