「予算策定」という言葉を仕事で急に扱うことになり、そもそも何をする作業なのかを押さえたい、という方は少なくありません。予算策定とは、一定期間の売上や費用の目標を数値で定め、ヒト・モノ・カネといった経営資源をどこにどれだけ配分するかを決める、一連の計画プロセスを指します。
混同しやすいのが「予算編成」や「予算管理」との違いです。予算策定は目標の決定から部門予算の積み上げ、全社調整、承認、そして実行後の予実管理までを見渡す広い言葉として使われることが多く、どこまでが予算策定の範囲なのかがつかみにくくなっています。
この記事では、予算策定の意味と目的を結論から整理します。あわせて、予算編成・予算管理との違い、予算の種類、手順と着手時期、進め方の違い、つまずきやすい点を順に解説し、Excel 中心の予算策定・予実管理を効率化する予算管理システムも紹介します。
目次
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予算策定とは?意味をわかりやすく解説
予算策定という言葉は日常業務ではなじみが薄く、まずは読み方と意味、そして企業が予算を策定する目的から押さえておきましょう。
予算策定は「よさんさくてい」と読みます。一定期間(多くは1年間)の売上・費用・利益の目標を数値で定め、その目標を達成するために経営資源をどの部門・事業にどれだけ割り当てるかを決める計画プロセスです。「来期はいくら売り、そのためにいくら使い、どれだけの利益を残すのか」を全社で数字に落とし込む作業だと考えるとわかりやすくなります。
単なる数字の見積もりではなく、経営方針と現場の実態をすり合わせ、限られた資金や人員の使い道を決める意思決定を伴う点が特徴です。策定した予算は、期中に実績と照らし合わせる物差しにもなります。
予算策定の目的・必要性(なぜ行うのか)
予算策定を行う目的は、大きく次の3つに整理できます。いずれも、場当たり的な経営を避け、組織を同じ目標に向かわせるために欠かせません。
- 経営目標を具体的な数値に落とし込む:抽象的な方針を、部門ごとの売上・費用の目標として明確にし、全社で共有できる
- 経営資源を最適に配分する:限られた資金・人員を、成長が見込める事業や重点施策に優先的に振り分ける判断ができる
- 進捗を測る基準をつくる:予算を物差しとして実績と比較することで、計画とのズレに早く気づき、軌道修正の手を打てる
予算策定は、目標設定・資源配分・進捗管理という経営の土台を支える役割を担います。これが曖昧なままだと、部門ごとに目指す方向がばらつき、資金繰りや投資判断の根拠も持てなくなります。
予算策定・予算編成・予算管理の違い
予算策定とよく一緒に登場するのが「予算編成」と「予算管理」です。3つは意味が重なる部分もあって混同されやすいため、役割の境目を対比表で整理します。
これらの言葉は実務では厳密に区別されず、重なり合って使われることも少なくありません。特に予算策定と予算編成は、ほぼ同じ意味で使う企業もあります。そのうえで、一般には次のように使い分けられることが多い、と押さえておくと役割の境目が見えてきます。

| 用語 | 主な作業の内容 | 主に担う部門 | 主なタイミング |
|---|---|---|---|
| 予算策定 | 経営方針をもとに予算の方針と全体像を描く計画づくり。予算編成を含む広い意味で使われることが多い | 経営層・経営企画 | 新年度が始まる前(期首前) |
| 予算編成 | 部門ごとの予算案を積み上げ、調整して1つの予算にまとめ上げる実務 | 各部門・経営企画 | 予算策定の中盤〜終盤 |
| 予算管理(予実管理) | 確定した予算と実績を照合し、差異を分析して改善につなげる運用 | 経営企画・各部門 | 予算の実行後(期中) |
大まかには、予算策定と予算編成が「予算をつくる」段階、予算管理が「つくった予算を運用する」段階にあたります。本記事では、予算をつくる計画プロセス全体を指す言葉として予算策定を使い、その中の積み上げ作業を予算編成として扱います。
予算の種類(売上予算・原価予算・経費予算・利益予算・資金予算)
予算と一口にいっても、対象ごとに複数の予算を組み合わせて全体をつくります。予算策定で組み立てる主な予算は、次の5つです。
- 売上予算:商品・サービスごと、顧客や地域ごとに、期間中にどれだけ売り上げるかの目標。予算全体の出発点になることが多い
- 原価予算(製造予算):売上を実現するためにかかる仕入れや製造の費用の見積もり。売上予算と連動して決める
- 経費予算:人件費・広告宣伝費・地代家賃など、販売や管理にかかる費用の計画
- 利益予算:売上から原価・経費を差し引いて残る利益の目標。経営目標に直結する最終的な数値
- 資金予算:入金と出金の見込みから、手元資金が不足しないかを計画するもの。設備投資や借入の判断にも使う
これらは独立しているわけではなく、売上予算をもとに原価や経費を見積もり、最終的に利益予算へ落とし込む、という形で互いに結びついています。どの予算をどこまで細かく組むかは、業種や事業規模によって変わります。
予算策定の手順|目標設定から承認・実行まで
予算策定は、目標設定から実行まで、おおむね5つのステップで進みます。全体の流れをつかんでおくと、自社の段取りを描きやすくなります。

- 経営目標・方針の設定:経営層が、中期経営計画や市場環境を踏まえて、次期に目指す売上・利益の大枠と重点方針を定めます
- 部門別予算の策定:各部門が、経営方針を受けて自部門の売上や費用の予算案を作成します。現場の見通しを数値に落とし込む工程です
- 全社での集約・調整:経営企画などの取りまとめ部門が各部門の予算案を集約し、全社目標との差や部門間の整合性を見ながら調整します
- 承認・共有:調整後の予算案を経営会議や取締役会で審議・承認し、確定した予算を全社に共有します
- 実行・予実管理:予算にもとづいて事業を進め、実績と予算を照合します。差異を分析し、着地見込みの更新や施策の見直しにつなげます
重要なのは、承認して終わりではなく、5つ目の予実管理まで含めて一連の流れだという点です。実績とのズレを早くつかめるほど、期中の打ち手の幅が広がります。
予算策定はいつから着手するか(策定スケジュール)
予算策定は、新しい会計年度が始まる前に完了させておく必要があります。一般的な目安としては、決算期の2〜3か月前に着手し、期首までに固めるケースが多く見られます。部門数が多い大企業では、5〜6か月前から準備を始めることもあります。
ただし、これは企業規模・業種・決算期によって変わるもので、絶対的なルールではありません。部門間の調整や経営会議での審議に想定以上の時間がかかることも多いため、逆算してスケジュールに余裕を持たせておくと安心です。
たとえば3月決算の企業であれば、1月ごろに経営層が方針と全体目標を示します。2月上旬までに各部門が予算案を提出し、2月下旬から3月上旬にかけて全社で調整・承認する、というように期首から逆算して組み立てるイメージです。
予算策定の進め方|トップダウン・ボトムアップ・折衷方式
予算策定の進め方は、大きくトップダウン・ボトムアップ・折衷の3つに分けられます。どれを選ぶかで、策定にかかる時間と現場の納得感が変わってきます。

トップダウン方式(経営層主導で配分)
経営層が全社の目標を決め、それを各部門に配分していく進め方です。経営の意思を素早く反映でき、全社目標との整合も取りやすい一方、現場の実態と離れた目標になると、部門の納得感が得にくく、達成への当事者意識が薄れやすい点に注意が必要です。トップの方針を速く浸透させたい企業や、スピードを優先したい局面に向きます。
ボトムアップ方式(各部門の積み上げ)
各部門が自部門の予算案を積み上げ、全社でまとめていく進め方です。現場の実態を反映しやすく担当者の納得感が高まりやすい反面、集約・調整に時間がかかり、部門ごとの見積もりが保守的になって全社目標に届かないこともあります。現場の知見を活かしたい企業や、部門の自律性を重視する組織に向いています。
折衷(ハイブリッド)方式
経営層が全体の方針と大枠の目標を示し、それを踏まえて各部門が予算を積み上げ、最後に全社で調整する進め方です。トップダウンのスピードとボトムアップの納得感の両方を取り込めるため、多くの企業で採用されています。大枠と現場見積もりのすり合わせに手間はかかりますが、目標の妥当性と現場の当事者意識を両立しやすいのが利点です。
予算策定でつまずきやすい点と対処法
初めて予算策定に取り組むと、次のような点でつまずきがちです。あらかじめ知っておけば、対処の手を打ちやすくなります。
- 将来の予測が難しい:市場環境の変化で前提が崩れやすい。楽観・悲観など複数のシナリオを用意し、期中に見込みを更新していく前提で組むと、ズレに対応しやすくなります(期中に見込みを繰り返し更新していく手法はローリングフォーキャストと呼ばれ、変化の激しい事業で活用されています)
- 部門間の調整が長引く:各部門の予算案がぶつかり、集約に時間がかかる。前提条件や全社方針を早い段階で共有し、提出フォーマットとスケジュールをそろえておくと調整の手戻りを減らせます
- Excel 運用が属人化・煩雑化する:部門ごとのファイルを手作業で集約すると、転記ミスや版の取り違えが起きやすく、担当者に負担が集中します。入力と集約を一元化できる仕組みを使うと、集計の手間と誤りを減らせます
- 策定後の予実のズレを想定していない:予算を立てることが目的になり、実績との照合が後回しになりがち。策定の段階から、どの指標で進捗を測り、どのタイミングで見込みを更新するかを決めておくと、運用がスムーズになります
特に、部門数が増えるほど Excel での集約・版管理の負荷は大きくなります。集計作業そのものに追われて、肝心の差異分析や改善の検討に時間を割けなくなったら、仕組みで効率化する段階に来ています。
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予算策定・予実管理を効率化する予算管理システム
予算管理システムを使うと、部門をまたいだ予算の入力・集約・調整・版管理を一元化でき、Excel 運用で起きがちな集計の手間や属人化を抑えられます。
この記事では、予算策定に対応する予算管理システムを2つ紹介します。自社の進め方や、予算と KPI の結びつけ方に合うかを比べる視点でご覧ください。
| サービス名 | DIGGLE(ディグル) | Scale Cloud(スケールクラウド) |
|---|---|---|
| 予算策定への対応 | ●画面直接入力・予算ID付与・バージョン保存・承認時の差分ハイライト | ●KPIを積み上げて複数パターンで予算作成・フォーキャスト |
| 予実管理・着地見込み | ◎予実突合を自動化、着地見込を明細レベルでスナップショット管理(予実管理特化) | ●予算・実績の対比と着地見込(フォーキャスト)の更新 |
| KPI・非財務指標連携 | △財務・非財務指標の可視化に対応(料金プラン説明) | ◎PL/BS/CFと先行・結果KPIを関連づけてモデリング(中核機能) |
| 会計・外部データ連携 | ●freee会計・マネーフォワード クラウド会計・勘定奉行クラウド・弥生・Salesforce ほか(API/CSV) | ●勘定奉行クラウド・freee・Salesforce(API)・Googleスプレッドシート・CSV明細 |
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) |
| 初期・月額費用の目安 | 初期費用:要問い合わせ 月額:要問い合わせ (Standard / Enterprise の2プラン・見積制) | 初期費用:要問い合わせ 月額:公式サイトで15万円〜 (他ページに10万円〜の記載も残り要問い合わせ) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 |
ここで取り上げた2サービスのほかにも、予算管理システムは数多くあります。以下の記事では主要な予算管理システムをタイプ別に比較し、料金・機能や自社に合う選び方を詳しく解説しています。導入を本格的に検討する段階では、あわせてご覧ください。
予算管理システムおすすめ19選を比較|タイプ別の選び方と料金・機能
部門や拠点が増えるにつれて、予算編成や予実の集計に使うExcelファイルが複雑になり、更新の手間や属人化に限界を感じていませんか。担当者しか触れない巨大なファイル、収集に何日もかかる実績データ、精度の上がらない着地見込み――こうした「守りの…
1. DIGGLE(ディグル株式会社)

DIGGLE(ディグル)は、予算・実績・見込をクラウド上で一元管理する、予実管理に特化したサービスです。公式の機能ページでは「予算策定と実績把握を自動化し、経営判断を加速」とうたい、予算策定から予実突合、着地見込みの管理までを一つのクラウド上で完結させられます。
予算策定の場面では、画面への直接入力やコメントの付与ができ、事業部と経営企画が情報を非同期にやり取りしながら予算を固めていけます。予算・見込はバージョンとして保存でき、申請・承認時には変更箇所が差分としてハイライトされるため、「どこが、なぜ変わったのか」を追いやすいのが特徴です。
freee会計やマネーフォワード クラウド会計、勘定奉行クラウドなどと API・CSV で連携し、会計データの取り込みと予実突合を自動化できます。料金は Standard と Enterprise の2プランで、いずれも見積制(要問い合わせ)です。
富士キメラ総研の調査では、予実管理ソフトウェア(SaaS/PaaS)のベンダーシェアで2024年度実績の1位と公表されています(公式プレスリリース 2026年1月21日)。
2. Scale Cloud(株式会社Scale Cloud)

Scale Cloud(スケールクラウド)は、財務数値(損益計算書=PL、貸借対照表=BS、キャッシュフロー計算書=CF)と非財務数値(KPI)を関連づけて一元管理する経営管理クラウドです。公式のソリューションページでは、各 KPI の数値をもとに「複数パターンでの予算作成やフォーキャストをしやすくなります」と説明しています。
商談数や成約率といった KPI を積み上げて売上予算を組み立てられる点が特徴で、現場の活動指標と予算を結びつけたい企業に向きます。勘定奉行クラウドや freee、Salesforce(API 連携)、Google スプレッドシートなどと連携し、会計データ以外も取り込めます。
料金は、現在の公式サイトでは月額15万円からと案内されています(連携ページや第三者サイトには以前の月額10万円からの記載も残るため、最新の料金は要問い合わせ)。公認会計士である代表のコンサルティング知見を背景に、KPI 設計から導入後の運用までを伴走支援する体制を打ち出しています。
KPI と予算を結びつけるという発想の背景について、Scale Cloud を提供する株式会社Scale Cloud 代表取締役の広瀬氏は、インタビューで従来の管理会計の限界に触れながら次のように説明しています。
従来の管理会計では、財務データを部門別や得意先別など様々な切り口で分析するのですが、それだけでは「この結果にどうやって至ったのか」というプロセスがまったくわからないです。事業の状況を正しく理解するためには、結果だけでなくそこに至るプロセスも含めて把握しなければ、どこに問題があるのか見えてこない。これが管理会計の限界だと感じていました。そのプロセスを把握するために何を見ればいいかというと、KPIのデータになります。
まとめ
予算策定とは、一定期間の売上・費用・利益の目標を数値で定め、経営資源の配分を決める計画プロセスです。予算編成が部門予算を積み上げる作業、予算管理が策定後に実績と照合する運用を指すのに対し、予算策定はそれらを含む計画全体を表す言葉として使われることが多いと押さえておくと、混同を避けられます。
進め方は、目標設定から部門別予算の策定、全社調整、承認、実行・予実管理までの流れが基本です。トップダウン・ボトムアップ・折衷のどれを選ぶかは、スピードと現場の納得感のどちらを重視するかで決まります。部門が増えて Excel での集約が負担になってきたら、予算管理システムで入力・集約・版管理を一元化すると、作業時間を削って差異分析に集中できます。
気になる予算管理システムがあれば、複数社の資料をまとめて取り寄せ、料金や予算策定・予実管理への対応を見比べることから始めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 予算策定とは何ですか?
A. 予算策定とは、一定期間の売上・費用・利益の目標を数値で定め、経営資源の配分を決める計画プロセスのことです。単なる数字の見積もりではなく、経営方針と現場の実態をすり合わせ、限られた資金や人員の使い道を決める意思決定を伴う点が特徴です。策定した予算は、期中に実績と照らし合わせる物差しにもなります。
Q. 予算策定の読み方は?
A. 予算策定は「よさんさくてい」と読みます。「策定」は計画や方針をはっきりと定めることを意味する言葉で、予算策定は来期の予算を数値として定める作業を指します。
Q. 予算策定と予算編成の違いは何ですか?
A. 予算策定は予算の方針から全体像までを描く計画プロセス全体を指し、予算編成はその中で各部門の予算案を積み上げて1つにまとめる実務を指すのが一般的です。ただし両者はほぼ同じ意味で使う企業も多く、実務では厳密に区別されないこともあります。策定後に実績と照合して管理・改善する運用は、予算管理(予実管理)として区別されます。
Q. 予算策定はいつから始めればよいですか?
A. 予算策定は、決算期の2〜3か月前に着手し、新年度が始まる期首までに固めるのが一般的な目安です。部門数が多い大企業では、5〜6か月前から準備を始めることもあります。企業規模や業種、決算期によって変わるため、部門間の調整や経営会議での審議にかかる時間を見込み、逆算して余裕を持たせておくと安心です。
Q. 予算策定は誰が行うのですか?
A. 予算策定は、経営層が方針と全体目標を示し、各部門が自部門の予算案を作成し、経営企画などの取りまとめ部門が集約・調整するという役割分担で進めるのが一般的です。最終的な承認は経営会議や取締役会が行い、確定した予算は全社に共有されます。どこまで経営層が主導するか、現場の積み上げを重視するかは、採用する進め方(トップダウン/ボトムアップ/折衷)によって変わります。
Q. 予算策定は Excel でもできますか?
A. 予算策定は Excel でも可能ですが、部門数が増えるほど集約や版管理が煩雑になり、転記ミスや属人化が起きやすくなります。部門ごとのファイルを手作業で統合する負担が大きくなり、集計に追われて差異分析に手が回らなくなってきたら、入力・集約・承認・予実管理を一元化できる予算管理システムの導入が選択肢になります。
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