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越境ECで日本酒は売れる?必要な酒類販売免許・酒税の輸出免税と国別の規制・売り方を解説

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越境EC支援比較表(2026年版)のプレビュー

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越境EC支援比較表(2026年版)

国内の日本酒消費が長期的に縮小するなか、海外では和食人気を背景に日本酒への関心が高まっています。「自社の酒を海外の消費者にネットで売れないか」と考え始めた酒蔵や酒販店にとって、まず気になるのは「そもそも酒類を越境ECで売れるのか」「どんな免許が要るのか」という点ではないでしょうか。

酒類は一般の物販と違い、販売に免許が必要で、輸出先の国ごとに規制も異なります。免許の要否や輸出先ごとの規制は分かりにくく、何から確認すればよいか迷いがちです。

本記事では、日本酒を越境ECで海外に売るための免許・酒税の扱いを国税庁の手引・資料をもとに整理し、中国・韓国・欧州・米国など主要市場の規制と販売方法、自社に合った売り方の選び方までを解説します。海外販売に踏み出すかどうかの判断材料としてご活用ください。

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日本酒は越境ECで海外に売れる?(可否と海外需要)

結論として、日本酒を越境ECで海外の消費者に売ることは可能です。ただし酒類は販売に免許が必要で、輸出先の国ごとに規制や販売の仕組みが異なります。必要な準備を押さえれば、小規模な酒蔵や酒販店でも海外販売に踏み出せます。

海外需要は数字にも表れています。国税庁が財務省貿易統計をもとにまとめた資料によると、日本から輸出された酒類全体の金額は2025年に過去最高の1,495億円(前年比11.8%増)となりました。これはウイスキーやビール、リキュールなどを含む酒類全体の合計です。

出典・参考資料(1件)

一方、清酒(日本酒)単体の輸出金額は2025年で約459億円(45,879百万円)でした。清酒は2022年の約475億円がこれまでのピークで、2023年に一度落ち込んだあと2024年・2025年と回復してきていますが、2025年時点でも2022年の水準には届いていません。

「日本酒の輸出が過去最高を更新し続けている」と語られることもありますが、過去最高なのは酒類全体の数字であり、清酒単体は回復基調にある、というのが正確な見方です。

清酒の主な輸出先(2024年)は、中国、米国、香港、韓国、台湾の順で上位を占めます。アジアと北米が中心で、売りたい国の規制を理解することが海外販売の出発点になります。

出典・参考資料(1件)

日本酒を越境ECで売るのに必要な酒類販売免許

ここからは、越境ECで日本酒を売るときに必要になる免許について解説します。酒類の販売免許は「誰に売るか」と「どう売るか」で区分が分かれており、売り先が海外の事業者(卸・小売・飲食店・商社)なのか、海外の個人消費者なのかで、関係する免許が変わります。

注意したいのは、国税庁の酒類販売業免許の区分が「国内の小売(通信販売を含む)」と「輸出(卸売)」を前提に組まれており、「海外の個人消費者に小売で直接売る越境EC」をそのまま受ける単一の免許区分が存在しない点です。必要な免許の説明が分かりにくいのは、ここに根本の原因があります。以下では売り先ごとに、何が関係するのかを国税庁の手引に沿って整理します。

売り先による分かれ方を図にすると、次のようになります。

日本酒の越境ECで必要な免許が売り先で分岐することを示す図。出発点は『誰に売るか』。海外の事業者(卸・小売・飲食店・商社)へのBtoB輸出では輸出入酒類卸売業免許が整合する。海外の個人消費者へ直接売るBtoC越境ECは、受け皿となる単一の免許区分が国税庁の枠組みに無く、所轄税務署への確認や輸入業者・支援サービス経由での販売が一般的。

海外の卸・小売・飲食店・商社に売る場合(輸出入酒類卸売業免許)

海外の卸売業者・小売店・飲食店・商社といった事業者に継続的に販売する(BtoBで輸出する)場合は、酒類卸売業免許のうち「輸出入酒類卸売業免許」が関係します。国税庁の手引では、酒類卸売業免許を次のように定義しています。

免許は、販売先や販売方法によって区分されていますが、このうち、酒類卸売業免許とは、酒類販売業者又は酒類製造者に対し、酒類を継続的に販売することが認められる免許です。(中略)輸出入酒類卸売業免許とは、自己が輸出する酒類、自己が輸入する酒類又は自己が輸出入する酒類を卸売することができる酒類卸売業免許をいいます。

出典:酒類卸売業免許申請の手引|国税庁

販売先が「酒類販売業者又は酒類製造者」と定められているとおり、卸売業免許は相手が事業者であることが前提です。海外の卸・小売・飲食店・商社へ輸出するケースはこの区分に整合します。

「輸出酒類卸売業免許」という呼び方も広く使われていますが、現行の国税庁の正式な区分は輸出と輸入を一本化した「輸出入酒類卸売業免許」です。この区分には免許可能件数(抽選枠)の定めがなく、申請順に審査される点も手引で示されています。

海外の個人消費者に直接売る場合(税務署への確認が要る論点)

海外の個人消費者に小売として直接売る越境ECは、整理が難しい論点です。国内でインターネット通販により酒類を小売する免許として「通信販売酒類小売業免許」がありますが、国税庁の手引はこの免許の対象を次のように定義しています。

通信販売(2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格その他の条件をインターネット、カタログの送付等により提示し、郵便、電話その他の通信手段により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う販売をいいます。)によって酒類を小売することができる販売業免許が、「通信販売酒類小売業免許」です。

出典:通信販売酒類小売業免許申請の手引|国税庁

ここで定義されている「2都道府県以上の広範な地域の消費者等」は、国内の都道府県をまたぐ通信販売を指しており、手引のどこにも海外(国外)の消費者を対象とする記述はありません。通信販売酒類小売業免許は、海外の個人消費者への販売を想定した免許ではないのです。この免許を海外の個人消費者への直販に当てられると説明されることもありますが、国税庁の定義からは直接には導けません。

結果として、海外の個人消費者へ小売で直接売る越境ECをそのまま受ける免許区分は、現在の国税庁の枠組みには見当たりません。手引自身も、個別の事情については次のように確認を求めています。

必要に応じて所轄税務署を担当する酒類指導官に確認してください。

出典:通信販売酒類小売業免許申請の手引|国税庁

では、合法にどう売るのか。整理すると、売り方は次の2通りになります。海外の卸・小売・飲食店・商社へ売るなら、前述の輸出入酒類卸売業免許で整合します。海外の個人消費者へ直接売りたい場合は、所轄税務署の酒類指導官に「海外の消費者向けの越境ECはどの免許に当たるか」を確認したうえで進めるのが確実です。

実務では、自社で直接販売せず、海外の輸入業者や酒類に対応した越境EC支援サービスを介して販売する形を取り、免許の問題を整理している事業者も多く見られます。この場合、自社は国内の事業者(製造者・卸)として相手に卸す立場になり、消費者への小売は支援サービス側が担う形が一般的です。

税務署に相談する際は、「誰に売るか(事業者か個人消費者か)」「自社が製造者か酒販店か」「支援サービスを介すか自社で売るか」を整理して持参すると、必要な免許の判断が進みやすくなります。

免許の使い分け早見表(売り先 × 必要な免許 × 酒税の輸出免税)

売り先ごとに関係する免許と酒税の扱いを整理すると、次のようになります。自社がどの販売形態に当たるかの出発点としてご覧ください。実際の適用は所轄税務署で確認することが前提です。

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売り先海外の卸・小売・飲食店・商社(BtoB輸出)海外の個人消費者へ直接販売(BtoC越境EC)(参考)国内の消費者へ通信販売
主に関係する酒類販売業免許輸出入酒類卸売業免許(事業者向けの卸売区分)国税庁の単一区分に収まらない論点(通信販売酒類小売業免許は国内向けの定義)通信販売酒類小売業免許(2都道府県以上が対象)
酒税の輸出免税製造者が輸出する酒類は免除(申告・帳簿記帳の手続きが必要)輸出に当たる場合は免税の対象(手続きが必要)国内販売は対象外
確認のポイント相手が事業者であることが前提。区分は国税庁の卸売業免許の手引で確認所轄税務署の酒類指導官に個別確認が必要。輸入業者・支援サービス経由の販売形態も一般的店頭小売や1都道府県のみを対象とする販売はこの免許では不可

免許区分は国税庁「酒類卸売業免許申請の手引」「通信販売酒類小売業免許申請の手引」に基づく(2026年10月時点)。自社の販売形態の適用は所轄税務署で確認してください。

酒税の輸出免税と申告の手続き

ここからは、輸出する酒類にかかる酒税の扱いを解説します。酒税は本来、酒類が製造場から出荷される時点で課税されますが、輸出目的で出荷する場合は免除されます。国税庁は次のように説明しています。

酒税は、原則として、酒類が製造場から移出された時に課税原因が発生することとなりますが、酒類製造者が外国に輸出する目的で酒類をその製造場から移出する場合には、例外として、酒税が免除されます。

出典:酒税の輸出免税を受ける場合の手続について|国税庁 お酒に関するQ&A

免税を受けるための手続きは、大きく2つです。1つ目は、その酒類にかかる酒税納税申告書(期限内申告書に限ります)に、輸出免税の適用を受ける酒類の税率区分と数量を記載すること。2つ目は、輸出許可証などに基づいて必要事項を帳簿に記載することです。根拠法令は酒税法第29条、同法施行令第36条などです。

注意したいのは、手続きが過去から変わっている点です。以前は「輸出免税酒類輸出明細書」を酒税納税申告書に添付する必要がありましたが、令和2年(2020年)4月1日以後に提出期限が到来する申告書からは、輸出許可証などに基づいて帳簿に必要事項を記載していれば、この明細書を作成する必要はなくなりました。

「輸出の明細を税務署に提出する」と説明している古い情報もあるため、現行の手続きを国税庁の資料で確認することをおすすめします。

この免税は「酒類製造者が」輸出目的で製造場から移出する場合の仕組みです。酒蔵自身が輸出する場合はこの移出免税が当てはまりますが、課税済みの酒を仕入れて輸出する酒販店・商社は製造者ではないため、この移出免税が直接は当てはまらず扱いが異なります。自社が製造者か否かで手続きが変わるため、酒蔵以外の事業者は所轄税務署で自社の場合の扱いを確認してください。

出典・参考資料(1件)

国・地域別の規制と販売方法(中国・韓国・欧州・米国)

ここからは、主要な輸出先の規制と販売方法を解説します。酒類の規制は国ごとに大きく異なり、同じ越境ECでも「どう売れるか」が変わります。まず全体像を横断比較表で示し、そのあと国ごとに補足します。酒類規制は変動が大きいため、実際の輸出前には各国当局やジェトロの最新情報を確認してください。

国・地域別の横断比較表

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国・地域中国韓国欧州(EU)米国
日本酒の販売可否輸出・販売の実績あり(全面禁止ではない)段階的な流通構造を経るのが原則販売可(EU共通の距離販売ルールが適用)販売可(連邦+州の免許取得が前提)
必要な現地対応・免許などGACC(税関総署)への登録、各種証明書。福島など10都県産の食品輸入規制が継続酒類輸入業免許、卸売・小売はそれぞれ別免許(製造→卸売→小売→消費者)注文後14日間の撤回権・30日以内の配達(消費者権利指令)。国によっては別途ライセンス・登録連邦TTBの輸入基本許可+州ごとの業態別免許。米国内の事業拠点が必要
主な販売チャネル現地モール(天猫・京東)/越境EC(保税・直郵)/運営代行サービス現地の輸入業者・卸売業者を通した流通自社サイト/現地モール(Cdiscount等)/現地の輸入・小売輸入業許可を持つ輸出組合・食品商社の利用が一般的。州により消費者直送(DTC)の可否が異なる
時点の注意書類・登録不備による不許可が増加。規制の変動が大きく、税関総署・ジェトロの最新情報で要確認国税庁資料は2017年時点で古く、現行の免許区分・直販可否は要確認酒類が撤回権の対象かは要確認。仏のアルコール販売ライセンス等は各国ごとに要確認清酒はワインに分類。国税庁資料は2017年時点で古く、州ごとに異なるため個別確認

各国規制は国税庁・ジェトロ・EU公式資料に基づく(出典は各見出し参照)。規制は変動するため輸出前に最新情報の確認が必要です。

中国

中国は清酒の輸出先として最大の市場で、日本酒は現に輸出・販売されています。全面的に禁止されているわけではありませんが、酒類を含む食品の対中輸出には、中国税関総署(GACC)への事業者・製品の登録や各種証明書が求められます。福島など10都県産の食品に対する輸入規制も震災以降続いています。

近年は、書類や登録(GACC登録)の不備による輸入不許可が増えています。ジェトロの分析によると、飲料・酒類の輸入不許可は2022年の74件から2025年には184件へと急増し、全品目のなかで最多(全体の50.8%)を占めました。日本酒を中心とした輸出拡大に、登録対応が追いついていない可能性が指摘されています。規制・運用は変動が大きいため、輸出の前に税関総署やジェトロの最新発表を確認してください。

出典・参考資料(1件)

韓国

韓国では、酒類の流通が段階的な免許制度で管理されています。国税庁の資料は次のように説明しています。

韓国では、酒類は販売チャネルの段階別に免許制度を採用しており、原則的には製造→卸売→小売→消費者といった流通段階を経る。

出典:韓国の酒類の輸入等に係る規制等の情報(平成29年3月)|国税庁

韓国で酒類を輸入するには酒類輸入業免許が必要で、卸売・小売を行うにはそれぞれ別の免許が求められます。日本から直接、現地の個人消費者へ販売するのではなく、現地の輸入業者や卸を通して流通させるのが原則的な形です。ただしこの資料は2017年時点のもので、現行の免許区分や消費者への直販可否は変わっている可能性があるため、ジェトロのソウル事務所などで最新情報を確認してください。

欧州(EU・フランス・ドイツなど)

EUでは、ネット通販などの距離販売について消費者保護の共通ルールが定められています。EU公式ポータルは、消費者に14日間の契約撤回権があること、事業者は契約成立から遅くとも30日以内に商品を届ける義務があることを示しています。

your customer has 14 days to withdraw from the contract(中略)you must deliver the goods without undue delay no later than 30 days after the contract is concluded

出典:E-commerce, distance and off-premises selling|Your Europe(European Commission)

この撤回権には生鮮食品などの例外がありますが、酒類が例外に当たるかは公式ページでは明示されていないため、個別に確認が必要です。また、フランスではアルコール販売のライセンス、ドイツでは有機食品としての認可・登録など、国ごとに別途ライセンスや登録が求められる場合があります。各国の個別規制は変動もあるため、ジェトロなどで最新の要件を確認したうえで進めてください。

ただし、イギリスはすでにEUを離脱しており、ここで触れたEU共通の距離販売ルールの対象外です。英国向けに売る場合は、別途、現地の酒類・通信販売の規制をジェトロなどで確認してください。

米国

米国は清酒の輸出先として中国に次ぐ市場で、近年の伸びも大きい一方、免許の仕組みは複雑です。国税庁の資料によると、日本から清酒を含む酒類を米国に輸出するには、連邦政府と州政府の両方の許可・免許が必要です。

日本から清酒を含む酒類を米国に輸出するためには、米国の連邦政府及び州政府の許可や免許を申請・取得する必要がある。(中略)この許可取得には、米国内に事業拠点を持つ必要あり。

出典:米国の酒類の輸入等に係る規制等の情報(平成29年3月)|国税庁

連邦レベルでは財務省のTTB(アルコール・タバコ税貿易管理局)から輸入基本許可を取得し、州レベルでは卸売・小売といった業態ごとに免許が分かれ、その内容は州によって異なります。製造・輸入、卸売、小売を法的に分離するこの仕組みは「3層制度(three-tier system)」と呼ばれます。

実務では、自ら輸入業許可を取得するのではなく、許可を持つ輸出組合や食品商社を利用する清酒輸出企業が多いとされています。清酒は米国ではワインに分類されます。消費者直送(DTC)の可否は州法によって異なるため、取り扱う地域ごとに確認が必要です。この資料も2017年時点のものである点に留意してください。

香港・台湾

香港と台湾も清酒の主要な輸出先で、2024年の清酒の輸出先では香港が3位、台湾が5位に入っています。香港は関税や輸入規制が比較的緩やかな市場とされ、日本酒を扱いやすい市場に挙げられます。台湾は現地の輸入業者を通じた流通が一般的で、酒類の輸入には現地の規制への対応が必要です。

いずれも有力な市場ですが、本記事では各市場の詳細までは扱いません。輸入要件や必要書類は変わることがあるため、売りたい市場が決まったら、ジェトロの国・地域別情報で最新の要件を確認してください。

出典・参考資料(1件)
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日本酒を海外に売る方法とプラットフォーム(体制別の選び方)

ここからは、実際の売り方を体制別に解説します。日本酒を越境ECで売る方法は、大きく「自社サイトを構築して運営する」「酒類に対応した越境EC支援サービスに任せる」「現地のECモールに出店する」の3つに分けられます。自社の人員・ノウハウ・対象国に合わせて選ぶことがポイントです。

日本酒を海外に売る3つの体制を比較した図。自社サイト構築型(Shopifyなどで自前のEC、多通貨・多言語・決済・配送を自社設計、関税計算や規制対応・集客は自社、自社ブランド重視の事業者向け)、支援サービス・運営代行型(タグ設置での海外販売対応や特定市場の出店〜販促〜物流の代行、社内の人員が少ない事業者向け)、現地モール出店型(天猫・京東・Cdiscountなど、集客力を活かせるが出店審査・手数料・現地対応の負担、現地の集客力を使いたい事業者向け)。

自社サイト構築型(Shopify などで自前のECを持つ)

自社ブランドの世界観を保ちながら海外に売りたい場合は、Shopifyなどで越境EC対応の自社サイトを構築する方法があります。多通貨・多言語・海外決済・海外配送を自社の設計で組めるのが強みですが、関税計算や各国の規制対応、集客までを自社で担う必要があります。構築や運用のノウハウが社内にない場合は、EC構築を支援する事業者に依頼する選択肢もあります。

自社サイトでの構築を具体的に進めるなら、プラットフォームの選び方や費用相場、立ち上げまでの手順を押さえておくと検討しやすくなります。越境ECサイトの作り方は次の記事で詳しく解説しています。

酒類対応の越境EC支援サービス・運営代行型

海外発送や多言語対応の人員がない場合は、酒類に対応した越境EC支援サービスや運営代行を使う方法が現実的です。自社サイトにタグを設置するだけで海外販売に対応できるサービスや、中国など特定市場に特化して出店から販促・物流までを代行するサービスがあります。

酒類は扱える国・条件が限られることがあるため、対応範囲を事前に確認することが大切です。具体的なサービスはこの後で紹介します。

現地ECモール出店型(天猫・京東・Cdiscount など)

すでに集客力のある現地のECモールに出店する方法もあります。中国の天猫(Tmall)や京東(JD)、フランスのCdiscountなどが代表例で、モールの集客力を活かせる一方、出店審査・手数料・現地対応の負担があります。モールによっては日本の事業者向けの出店支援プログラムが用意されている場合もあります。

以前広く使われたモールのなかには終了・撤退したサービスもあるため、現在も運営されているかを公式情報で確認してから検討してください。

品質を保って届ける物流とトレーサビリティ

ここからは、海外へ品質を保って届けるための物流について解説します。日本酒は温度変化に弱く、特に生酒や繊細な香りの銘柄は、輸送中の高温や長期間の船便輸送で品質が損なわれるリスクがあります。酒蔵が輸出をためらう理由のひとつが、この品質管理の難しさです。

これに対し、定温・冷蔵を保ったまま輸送する物流網や、空港から顧客の住所まで同じ運送事業者が一貫して担い全行程を追跡できる仕組みを備えたサービスも登場しています。こうした品質重視の輸送は、冷蔵・定温輸送に対応した国際物流事業者や、酒類に対応した越境EC支援サービス(記事後半で紹介)が担います。

配送事業者によっては、アルコール度数によって引き受け条件が変わることもあるため、扱う銘柄の度数と配送手段の相性を確認しておくと安心です。品質を保てる物流を選べるかどうかは、海外のリピーターを獲得できるかを左右する重要な要素です。

海外販売を伸ばす集客と成功事例

ここからは、海外で日本酒を売るための集客について解説します。海外の消費者は日本酒の銘柄や酒蔵の背景になじみがないことが多いため、商品を並べるだけでは売れにくいのが実情です。酒蔵の歴史や製法、料理との合わせ方を伝えるコンテンツが、購入の後押しになります。

具体的な打ち手としては、現地のSNSやKOL(キー・オピニオン・リーダー、インフルエンサー)と連携した情報発信、現地の展示会や試飲イベントへの出展、現地語での専門メディア運営などがあります。

たとえば中国市場向けには、商品やブランドのストーリーをコンテンツで発信し、KOLと連携したライブコマースで文化や飲み方を伝えて販売につなげている支援事業者があります(記事後半で紹介するInagoraがその一例です)。

欧州では、現地での試飲イベントをきっかけに、飲食店やホテルといった法人顧客を開拓する動きもあります。まず知ってもらい、味や背景に共感してもらう流れを作ることが、海外販売を伸ばす鍵になります。

日本酒の越境ECを外部に任せる(構築・運営・物流の支援サービス)

ここからは、越境ECの構築・運営・物流を外部に任せられるサービスを紹介します。「自社だけで免許や各国規制、物流まで対応するのは難しい」という場合は、支援サービスの活用が現実的です。まず代表的なサービスを比較し、それぞれの特徴を解説します。

ここで紹介するのは、ECサイトの構築・運営を支援するサービスです。酒類の免許取得・酒税・冷蔵物流そのものの代行は含みません。この違いを踏まえて、自社に足りない部分を補えるサービスを選んでください。

酒類の輸出手続きや現地での販売そのものは、輸入業許可を持つ輸出組合や食品商社、酒類に対応した物流事業者が担うのが一般的です。対象市場によって受け皿は変わり、中国向けは次に挙げるような中国特化の支援サービス、米国・欧州向けは現地に拠点を持つ輸出組合・食品商社の活用も選択肢になります。自社サイトの構築・運営、海外販売の代行、酒類の輸出手続きのどこを外部に任せるかを切り分けて選ぶとよいでしょう。

越境ECの構築や運営を外部に任せる選択肢は、ここで挙げた事業者のほかにも数多くあります。構築型・運営代行型・特化型といったタイプごとの違いや費用相場をまとめて見比べたい場合は、次の記事もあわせてご覧ください。

← 横にスクロールできます →
サービス名Magento / Adobe Commerce構築支援
(マルウェブ)
WorldShopping BIZ
(株式会社ジグザグ)
Inagora
(インアゴーラ)
提供形態自社ECサイトの構築・リニューアル支援
(Magento / Adobe Commerce)
既存ECにタグ1行で海外販売を追加
(購入代行型)
中国市場特化の出店・運営・物流の
一貫代行
対応エリア・対象国多言語・多通貨で海外全般に対応
(中国向け構築の知見あり)
228の国と地域中国を中心とした市場
日本酒(酒類)への対応×EC構築・運営が範囲(酒類の免許・酒税・冷蔵物流は対象外)△条件付きで対応(対象国・アルコール度数などに制限あり、要確認)●中国で日本の酒類を扱う専門店を運営(出店〜通関〜中国国内配送を一貫代行)
料金要お問い合わせ
(個別見積もり)
初期33,000円+月額5,500円(税込)
※購入代行手数料10%は海外購入者が負担
要お問い合わせ
(個別見積もり)
向いている事業者自社ブランドの越境EC基盤を
自前で構築したい事業者
既存の自社ECに酒類対応の
海外販売機能を手早く追加したい事業者
中国を主なターゲットに
日本酒を売りたい事業者
詳細情報公式資料を見る公式サイト公式サイト

1. Magento / Adobe Commerce 構築・リニューアル支援(株式会社マルウェブ)

Magento / Adobe Commerce 構築・リニューアル支援(株式会社マルウェブ)の公式サイト

株式会社マルウェブは、オープンソースのECプラットフォーム「Magento(Adobe Commerce)」を使った越境EC・大規模ECサイトの構築とリニューアルを支援するサービスです。Magentoは多言語・多通貨・複数サイトの運用に強く、自社ブランドの世界観を保ったまま海外向けの自社ECを持ちたい事業者に向いています。

中国向けのサイト構築を含め、海外展開を見据えたEC基盤づくりのノウハウを持つ点が特徴です。

一方で、マルウェブが担うのはECサイトの構築・運営の層であり、酒類販売免許の取得や酒税の手続き、冷蔵物流そのものを代行するサービスではありません。日本酒を売るための自社ECの土台を整えたい場合の選択肢として検討するとよいでしょう。

自社サイトで越境ECを立ち上げた場合、公開後どのくらいで成果が表れるのかは気になるところです。この点について、同社の前山氏は次のように話しています。

株式会社マルウェブ 代表取締役
前山和範氏
独自インタビューより

台湾向けや中国向けなど越境ECの場合、一律に「何カ月で成果が出る」とは言えません。既存のブランド認知や顧客基盤、広告・SNSなどの集客施策、現地での運用体制によって大きく変わるためです。

システム面では、公開直後から運用効率化などの効果が出るケースもあります。一方で売上や集客については、公開後のデータを見ながら継続的に改善していくことが重要だと考えています。

2. WorldShopping BIZ(株式会社ジグザグ)

WorldShopping BIZ(株式会社ジグザグ)の公式サイト

WorldShopping BIZは、自社サイトにタグを1行設置するだけで、多言語表示・海外決済・海外配送をまとめて支援する越境ECサービスです。運営元の株式会社ジグザグは2021年に酒類を扱うための免許を取得し、一定の酒類卸売業免許を持つECサイト向けに酒類の取り扱いを開始しています。海外発送の人員がいない事業者向けに、購入を代行する仕組みも用意されています。

酒類はアルコール度数などの条件や配送できる国・地域が限られ、対応範囲は変動するため、扱いたい銘柄・対象国が対応範囲に含まれるかを公式情報で確認するのが確実です。すでに自社ECを持っていて、酒類対応の海外販売機能を手早く追加したい事業者に向いています。

3. Inagora(インアゴーラ株式会社)

Inagora(インアゴーラ株式会社)の公式サイト

Inagoraは、中国市場に特化した越境EC支援を手がける事業者です。自社の越境ECアプリ「豌豆公主(ワンドウ)」をはじめ、中国大手ECプラットフォーム上で日本の酒類を扱う専門店(旗艦店)を運営しています。

商品やブランドのストーリーを伝えるコンテンツ制作やKOLを活用したライブコマース、日本からの輸出・通関・中国国内配送までの一貫代行など、中国で日本酒を売るための施策をまとめて提供している点が特徴です。

一般貿易と越境ECの両方の販売形態に対応し、中国市場での出店・運営・物流をまとめて任せられます。中国を主なターゲットに日本酒を売りたい事業者に向いています。料金は個別見積もりのため、公式サイトから問い合わせて確認してください。

まとめ

日本酒は越境ECで海外の消費者に売ることができ、海外需要も底堅く推移しています。ただし着手にあたっては、いくつかの点を自社に当てはめて確認する必要があります。要点を整理します。

  • 免許は売り先で変わる。海外の卸・小売・飲食店・商社へ売るなら輸出入酒類卸売業免許が関係する。海外の個人消費者への直販を受ける単一の免許区分は国税庁の枠組みに無く、所轄税務署の酒類指導官への確認が必要
  • 輸出する酒類は酒税が免除されるが、酒税納税申告書への記載と帳簿記帳の手続きが要る(輸出明細書の添付は現在は不要)
  • 中国・韓国・欧州・米国で規制と販売の仕組みが大きく異なる。規制は変動するため輸出前に最新情報を確認する
  • 売り方は自社サイト構築・酒類対応の支援サービス・現地モール出店の3通り。自社の人員・ノウハウ・対象国に合わせて選ぶ

まずは「誰に・どの国に売るか」を決め、必要な免許を所轄税務署で確認するところから始めてください。構築・運営や海外配送を外部に任せたい場合は、支援サービスの資料を取り寄せて比較してください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 日本酒の越境ECとは何ですか?

A. 日本酒の越境ECとは、日本の酒蔵や酒販店が、インターネットを通じて海外の消費者や事業者に日本酒を販売する仕組みです。

国内向けのネット販売と違い、酒類販売免許の確認、酒税の輸出免税の手続き、輸出先の国ごとの規制対応、品質を保った海外配送などが必要になる点が特徴です。売り方は自社サイトの構築、酒類対応の越境EC支援サービスの利用、現地ECモールへの出店などに分かれ、自社の体制や対象国に合わせて選びます。

Q. 日本酒の越境ECの免許や規制は、どこに相談・確認すればよいですか?

A. 日本酒の越境ECの免許や規制は、国内の免許・酒税は所轄税務署の酒類指導官に、輸出先の国ごとの規制はジェトロ(日本貿易振興機構)や現地当局に確認するのが確実です。

酒類の免許区分や国別の規制は変動があります。特に海外の個人消費者へ小売で直接売る越境ECをそのまま受ける免許区分は国税庁の枠組みに見当たらず、適用の判断は所轄税務署に委ねられる論点が残ります。国税庁の手引自身も、個別の事情は所轄税務署の酒類指導官に確認するよう求めています。中国・韓国など国別の規制は見直しの動きが大きいため、ジェトロの最新情報や現地当局の発表で確認したうえで進めてください。

出典・参考資料(1件)

Q. 日本酒の越境ECと、一般的な輸出(一般貿易)は何が違いますか?

A. 日本酒の越境ECは海外の顧客にオンラインで直接販売する形態で、一般貿易は現地の輸入業者や卸を通じて現地市場で流通させる形態という違いがあります。

中国のように、越境ECと一般貿易で通関・登録・課税の扱いが分かれる国もあり、同じ市場でも取るべき手続きや商標対応、販売チャネルが変わります。どちらの形態を選ぶかで関係する免許・物流・コストが変わるため、自社の販売先と規模に合わせて見極め、具体的な扱いは税関やジェトロで確認してください。

Q. 海外発送や多言語対応の体制がなくても、日本酒の越境ECは始められますか?

A. 日本酒の越境ECは、海外発送や多言語対応の人員が社内になくても、酒類に対応した越境EC支援サービスや運営代行を使えば始められます。

自社サイトにタグを設置するだけで多言語表示・海外決済・海外配送をまとめて支援するサービスや、中国など特定市場に特化して出店から販促・物流までを代行するサービスがあります。ただし酒類は扱える国やアルコール度数などの条件が限られることがあるため、扱いたい銘柄・対象国が対応範囲に含まれるかを事前に確認することが大切です。

Q. 日本酒の越境ECにかかる費用の目安はどのくらいですか?

A. 日本酒の越境ECの費用は、選ぶ売り方によって大きく異なり、一律の相場を示すのは難しいのが実情です。

目安として、自社サイトにタグを設置する購入代行型のサービスでは、初期費用と月額費用が明示されている例があります(初期3万円台・月額5千円台に、海外購入者が負担する購入代行手数料などが加わる形。具体額は本記事の比較表を参照)。

一方、運営代行型や自社サイト構築型、現地ECモール出店型は、対応範囲・対象国・要件によって費用が大きく変わり、個別見積もりとなることが多いのが実情です。複数サービスの資料を取り寄せ、対応範囲とあわせて費用を比較するのが確実です。

Q. 焼酎やウイスキーなど、日本酒以外の酒類も同じように越境ECで売れますか?

A. 焼酎やウイスキーなど日本酒以外の酒類も越境ECで販売できますが、酒類販売免許や酒税の輸出免税の枠組みは共通する一方、輸出先の国ごとの規制やアルコール度数による配送条件は品目によって変わるため、個別の確認が必要です。

実際、2025年に過去最高となった酒類全体の輸出額は清酒単体を上回る規模で、ウイスキーやリキュールなども海外で伸びています。一方で、配送事業者はアルコール度数によって引き受け条件が変わり、国によって扱える品目・度数も異なります。日本酒で整理した免許・酒税・国別規制の考え方を土台にしつつ、扱う品目ごとに規制と配送条件を確認したうえで進めてください。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
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