サイバー攻撃の標的は大企業だけではありません。取引先からセキュリティ対策状況の確認を求められたり、同業他社の情報漏えいが報じられたりして、「自社も何か対策を始めなければ」と考える東京都内の中小企業が増えています。一方で、専任のセキュリティ担当者がいない、まとまった予算を取りにくいという事情から、何から着手すればよいか判断しづらいのも実情です。
東京都内に事業所を置く中小企業には、費用を抑えてサイバーセキュリティ対策を始めるための公的な支援が複数そろっています。UTMやEDRを無料で試せる事業、導入費用の半額を助成する制度、無料の研修やサイバー保険まであり、それぞれ運営主体も費用の形も申請方法も異なります。
この記事では、東京都内の中小企業が使えるサイバーセキュリティ対策の公的支援を一覧で整理し、無料事業と助成金の違いや使い分け、申請の進め方、支援を使って導入できる製品・サービスまでを解説します。自社に合った支援を選び、対策の第一歩を踏み出すための材料としてご活用ください。
目次
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東京都内の中小企業が使えるサイバーセキュリティ対策の公的支援 早見表
東京都内に主たる事業所を置く中小企業は、サイバーセキュリティ対策にあたって国や都、関連機関の支援を利用できます。運営主体や費用の形、対象となる条件がそれぞれ違うため、まず全体像を一覧で整理します。以下は、都内の中小企業が使える主な公的支援の早見表です(各制度の詳細と出典は、この後の各見出しで解説します)。
| 中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業 | サイバーセキュリティ対策促進助成金 | 標的型攻撃メール訓練・サイバー衛生研修 | サイバー保険制度(共済型) | サイバー犯罪の通報・相談窓口 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 運営主体 | 東京都(産業労働局) | 東京都中小企業振興公社 | 東京商工会議所 | 東京商工会議所 | 警視庁・警察庁・IPA |
| 費用・助成額 | 無料(UTM・EDRを最大3か月間無料体験、専門家の指導) | 導入費用の1/2以内を助成(助成額上限500万円・申請下限10万円) | 無料(会員限定) | 保険料は補償内容により異なる | 無料 |
| 主な対象・要件 | 東京都内に主たる事業所を有する中小企業 | SECURITY ACTION二つ星を宣言した都内の中小企業者等 | 東京商工会議所の会員企業 | 東京商工会議所の会員企業 | 被害・不審事象に直面した事業者(都内法人は警視庁窓口) |
| 申請期間・受付状況 | 令和8年度は2026年10月30日まで(先着枠) | 令和8年度は複数回に分けて受付。第2回は受付終了、第3回は今冬案内予定 | 標的型攻撃メール訓練は年1回・次回未定 | 随時 | 随時 |
| 申込・問い合わせ先 | 事業特設サイトから申込 | Jグランツ(電子申請)/設備支援課 03-3251-7889 | 東京商工会議所の特設ページから | 東京商工会議所の特設ページから | 警視庁 03-5805-1731 ほか |
※2026年10月時点で各運営主体の公式情報をもとに整理したものです。受付状況や次回日程は変わるため、申請前に各公式ページで最新の情報をご確認ください。
この早見表は、費用を抑えて対策を始めるのに直結する支援(無料の基本対策事業・促進助成金・研修・保険・相談窓口)を中心にまとめています。東京都はこのほかにも、サイバー攻撃対応演習や標的型攻撃メール訓練といった啓発事業、より実践的な対応力の強化やインシデント対応の支援など、段階に応じた支援メニューを用意しています。制度の全体像と最新の募集状況は、東京都の支援事業ポータルでまとめて確認できます。
出典・参考資料(1件)
- 参考:中小企業向けサイバーセキュリティ対策の極意(東京都の支援事業ポータル)|東京都産業労働局(https://www.cybersecurity.metro.tokyo.lg.jp/)
このうち「お金が出る助成金」と「無料で機器を試せる事業」は別の制度です。まずこの2つの違いを整理します。
無料の基本対策事業と促進助成金はどう違う?使い分けの整理
東京都のサイバーセキュリティ支援でよく混同されるのが、「中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業」と「サイバーセキュリティ対策促進助成金」です。名前が似ていますが、運営主体も費用の仕組みも別の制度です。

基本対策事業は東京都(産業労働局)が主催する事業で、UTM機器やEDRを最大3か月間、無料で体験できます。期間中はサポートデスクの支援を受けられ、参加費はかかりません。一方の促進助成金は東京都中小企業振興公社が運営する助成金で、自社でセキュリティ機器を導入する際の費用の2分の1以内(上限500万円)を助成する仕組みです。
整理すると、基本対策事業は「無料で試す・専門家に見てもらう」制度、促進助成金は「自社で買う費用の一部を補助してもらう」制度です。
使い分けの目安は、対策の進み具合です。まだ機器を入れておらず、何から始めるか決めかねている段階なら、無料で機器を試せて専門家の指導も受けられる基本対策事業が入り口に向いています。導入する製品がすでに決まっていて、購入費用の負担を軽くしたい段階なら、促進助成金で費用の半額補助を受ける流れになります。
このほか、東京商工会議所の会員企業であれば、無料の標的型攻撃メール訓練・サイバー衛生研修や、共済型のサイバー保険制度も利用できます。いずれも会員向けの支援で、非会員の場合は入会が前提になります。利用を検討する場合は、商工会議所の特設ページで入会方法や内容を確認してください。
両制度に共通する前提として、促進助成金の申請には「SECURITY ACTION(セキュリティアクション)」の二つ星宣言が必要で、基本対策事業の専門家指導コースはこの二つ星宣言までを支援対象に含んでいます。この関係は後述の「進め方」で詳しく整理します。
出典:
出典・参考資料(2件)
- 出典:令和8年度中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業|東京都産業労働局(https://kihontaisaku.metro.tokyo.lg.jp/)
- 出典:サイバーセキュリティ対策促進助成金|東京都中小企業振興公社(https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/cyber.html)
無料の基本対策事業(UTM・EDR・マネジメント指導)の中身と選び方
ここからは、東京都の中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業の中身を見ていきます。この事業は、東京都内に主たる事業所を有し、サイバーセキュリティ対策に取り組む意欲を持つ中小企業を対象に、参加費無料で3つの支援コースを提供しています。
支援①UTM機器設置コース
UTM(統合脅威管理、Unified Threat Management)は、ファイアウォールやアンチウイルス、不正侵入防御などの機能を1台にまとめ、ネットワークの出入口で脅威を防ぐ機器です。このコースでは、UTM機器を最大3か月間無料で体験でき、期間中はサポートデスクによる支援を受けられます。先着50社が対象です。
支援②EDR導入コース
EDR(Endpoint Detection and Response、エンドポイントでの検知と対応)は、パソコンやサーバーといった端末での不審な挙動を検知し、対応を支援する仕組みです。このコースでも、EDRを最大3か月間無料で体験でき、期間中はサポートデスクの支援を受けられます。こちらも先着50社が対象です。
支援③情報セキュリティマネジメント指導コース
このコースでは専門家が企業を訪問し、最大4回の支援を行います。セキュリティに関する基本方針や規程などの策定を通じて、「SECURITY ACTION二つ星宣言」を目指す内容です。機器の導入より先に、社内のルールづくりや体制整備から着手したい企業に向いています。先着100社が対象です。
どのコースを選ぶか(UTM・EDRを導入済みか)
コースの選び方は、UTMやEDRをすでに導入しているかどうかが目安になります。公式のよくある質問では、UTMの設置やEDRの導入が済んでいない企業は支援①または②に参加でき、すでに導入している企業は支援③を案内するとされています。支援①②と支援③は合わせて申し込むことも可能で、支援③のみの参加や、UTM・EDRが未導入のまま支援③だけに参加することもできます。
最終的な判断は、申込後のヒアリングや専門家の事前診断にもとづいて決まります。
公式のよくある質問には、従業員4〜5名でサブスクリプション型アプリやMicrosoft 365を使う小規模事業者から「この規模でUTM導入を検討すべきか」という質問も寄せられています。これに対しては、事業規模に関係なくインターネットを利用しているならUTMやEDRでセキュリティレベルを上げられる、と回答されています。小規模だからという理由で対象外になるわけではありません。
令和8年度の申込受付期間は、3コースとも2026年6月8日から2026年10月30日までです。いずれも先着枠が設けられており、定員になり次第締め切られます(2026年10月時点)。締切間際は枠が埋まっている可能性があるため、参加を検討する場合は事業特設サイトで最新の受付状況を確認してください。
今年度の受付に間に合わない場合でも、この事業はこれまで年度ごとに実施されています。次の募集を待つ間に、後述のSECURITY ACTION二つ星宣言の準備や、促進助成金の申請に使うGビズIDの取得を進めておくと、募集が始まったときにすぐ動けます。次年度の実施や募集時期については、事業特設サイトで最新の情報を確認してください。
出典:
出典・参考資料(1件)
- 出典:令和8年度中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業(支援内容・募集概要・Q&A)|東京都産業労働局(https://kihontaisaku.metro.tokyo.lg.jp/)
促進助成金(助成率・上限額・対象経費)の中身と申請
自社でセキュリティ機器を導入する費用を補助してもらいたい場合は、東京都中小企業振興公社の「サイバーセキュリティ対策促進助成金」が選択肢になります。ここでは、助成の金額と対象、申請の前提を整理します。
助成の対象となるのは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施するSECURITY ACTIONの二つ星を宣言している、都内の中小企業者・中小企業団体・中小企業グループです。助成率と助成額は、公社の公式ページに次のように記載されています。
助成率: 1/2以内
サイバーセキュリティ対策促進助成金|公益財団法人 東京都中小企業振興公社(https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/cyber.html)
助成額: 500万円(申請下限額10万円)※標的型メール訓練に関しては別途規定
助成の対象経費は、サイバーセキュリティ対策に必要な機器などの導入やクラウド利用にかかる費用で、公式ページでは次の区分が挙げられています。
- ①統合型アプライアンス(UTM等)
- ②ネットワーク脅威対策製品(FW、VPN、不正侵入検知システム等)
- ③コンテンツセキュリティ対策製品(ウィルス対策、スパム対策等)
- ④エンドポイント・セキュリティ製品(EDR、EPP等)
- ⑤アクセス管理製品(シングル・サイン・オン、本人認証等)
- ⑥システムセキュリティ管理製品(アクセスログ管理等)
- ⑦暗号化製品(ファイルの暗号化等)
- ⑧サーバーOS及びインストール作業費用(サーバー入替に伴うOS更新を含む)
- ⑨標的型メール訓練
UTMやEDR、本人認証の仕組みなど、幅広い対策が助成の対象に含まれています。
申請は、二つ星宣言を済ませたうえで、Jグランツ(国の補助金電子申請システム)から電子申請する流れです。Jグランツの利用にはGビズIDプライムアカウントが必要で、公式ページでは発行に2〜3週間かかると案内されています。申請期日に対して余裕を持った事前登録が必要です。
令和8年度の申請は複数回に分けて受け付けられています。2026年10月時点の公式のお知らせでは「第2回受付が終了しました。第3回募集のご案内は今冬掲載予定です」とされています。受付のタイミングは年度内で区切られ、予算の執行状況により早期終了する場合もあるため、申請を検討する場合は募集回のスケジュールと受付状況を公式ページで確認してください。
問い合わせ先は、企画管理部 設備支援課(電話03-3251-7889、受付は9〜12時・13〜17時)です。
出典:
出典・参考資料(1件)
- 出典:サイバーセキュリティ対策促進助成金(助成率・助成額・対象経費・申請方法)|公益財団法人 東京都中小企業振興公社(https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/cyber.html)
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何から始める?二つ星宣言→支援申込→製品導入の進め方
これまで本格的な対策をしてこなかった場合でも、進め方の順序を押さえれば、無料事業と助成金を組み合わせて対策を進められます。ここでは、SECURITY ACTIONの二つ星宣言から製品導入までの流れを整理します。

公的支援の有無にかかわらず「そもそも中小企業は何を・どの順番で・いくらかけて対策すべきか」という優先順位から整理したい場合は、以下の記事で費用感つきに解説しています。
ステップ1:SECURITY ACTIONの二つ星を宣言する
SECURITY ACTIONは、中小企業が自ら情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する、IPAの制度です。促進助成金の申請前提である「二つ星」を宣言するには、公式に次の取り組みが求められています。
「★★二つ星」を宣言するには・・・「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の付録3「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で自社の状況を把握したうえで、付録2「情報セキュリティ基本方針(サンプル)」を定め、外部に公開してください。
SECURITY ACTION とは?|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(https://www.ipa.go.jp/security/security-action/sa/index.html)
二つ星は、自社診断で現状を把握し、情報セキュリティ基本方針を策定して外部に公開することで宣言できます。自社だけで基本方針を整えるのが難しい場合は、基本対策事業の支援③(情報セキュリティマネジメント指導)で、基本方針や社内規程のサンプル提供を含めた宣言までのサポートを受けられます。
SECURITY ACTIONは、IPAが対策状況を認定するものではありません。そのため「認定を受けた」「取得した」ではなく「二つ星を宣言した」と表現する点に注意してください。
ここで使う「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」や基本方針のサンプルは、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」に収録されています。6か条や自社診断の中身を基礎から確認したい場合は、以下の記事で解説しています。
ステップ2:無料の基本対策事業で機器を試す・体制を整える
二つ星宣言と並行して、あるいはその準備として、基本対策事業の各コースを活用できます。UTMやEDRが未導入なら支援①②で機器を無料体験し、ルールづくりから始めたいなら支援③で専門家の指導を受けます。公式の参加事例には、業種・従業員規模の異なる企業が、セキュリティ対策がほぼない状態から支援①と支援③を組み合わせて取り組んだ例も紹介されています。
対策の経験がない企業でも、専門家の伴走を受けながら始められます。
ステップ3:促進助成金を使って製品を導入する
無料体験や指導を経て、自社に必要な製品が見えてきたら、促進助成金で導入費用の半額補助を受けながら本格導入に進みます。申請にはGビズIDプライムアカウントの取得(発行に2〜3週間)とJグランツからの電子申請が必要なため、募集回のスケジュールを見ながら早めに準備を進めます。どの製品を入れるかは、次の章で守る対象別に整理します。
出典:
出典・参考資料(2件)
- 出典:SECURITY ACTION とは?(二つ星の要件・適切な表記)|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(https://www.ipa.go.jp/security/security-action/sa/index.html)
- 出典:令和8年度中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業(支援コース・参加事例)|東京都産業労働局(https://kihontaisaku.metro.tokyo.lg.jp/)
支援で実際に導入できる対策(製品・サービス)と選び方・費用感
支援制度の全体像をつかんだら、次は「どの対策を入れるか」です。無料体験や助成金の対象になる対策は幅広いため、自社の守りたい対象から選ぶと整理しやすくなります。ここでは、守る対象別に製品のタイプを示し、支援を使って導入できる代表的なサービスを紹介します。
ここで注意したいのは、基本対策事業の無料体験が、事業者の用意するUTM・EDRを試す仕組みである点です。以下で紹介する製品は、主に促進助成金で自社購入する際の候補として読んでください(実際に助成の対象になるかは、公社の募集要項でご確認ください)。
支援の対象経費と守る対象別の製品タイプ(選び方の軸)
促進助成金の対象経費の区分(①〜⑨)は、そのまま「何を守るか」で読み替えられます。ネットワークの出入口はUTM、端末はEDR、ID・アクセスは本人認証やシングルサインオンが対応し、これらをまとめて任せるパッケージ型もあります。自社のどこに穴があるかを起点に、対応する製品タイプから検討すると選びやすくなります。
数名から十数名規模の小さな事業者は、端末やユーザーの数だけ契約できるタイプ(デバイス単位・ユーザー単位で始められるもの)から検討すると、規模に対して過剰な投資になりにくくなります。次の表は、本記事で紹介するサービスを、守る対象と対象経費の区分とあわせて整理したものです。
| ID・アクセス | 総合(予防・復旧・補償をまとめて) | ネットワークの出入口 | 端末(PC・サーバー) | |
|---|---|---|---|---|
| 対応する主な対策 | シングルサインオン・多要素認証・アクセス制御 | 脆弱性診断・バックアップ・サイバー保険を束ねたパッケージ | UTM(統合脅威管理)・ファイアウォール・不正侵入防御 | EDR・EPP(ウイルス対策を含む端末保護) |
| 対象経費の区分 | ⑤アクセス管理製品(シングル・サイン・オン、本人認証等) | ①〜⑥等を組み合わせ(構成により異なる) | ①統合型アプライアンス(UTM等)/②ネットワーク脅威対策製品 | ④エンドポイント・セキュリティ製品(EDR、EPP等) |
| 本記事で紹介するサービス例 | CloudGate UNO | KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ | SmartConnect クラウド型UTM | ESET PROTECT / ESET Inspect |
※対象経費の区分は促進助成金の公式記載にもとづく整理です。実際の助成対象や各サービスの提供形態は、各公式情報・公社の募集要項でご確認ください。
この記事では守る対象ごとに代表的なサービスを絞って取り上げますが、守る対象を横断して社内セキュリティソリューション全体から比較検討したい場合は、タイプ別の違いと代表サービス・選び方をまとめた以下の記事が役立ちます。
社内セキュリティソリューション比較|守る対象別のタイプ・代表サービスと選び方
社内のセキュリティを強化したいものの、端末の保護から不正アクセス対策、情報漏えいの防止まで課題が広く、何から手をつければよいか判断がつかないという声は少なくありません。テレワークやクラウド利用が定着し、社外に持ち出される端末やIDが増えたこ…
以下は、ここで紹介する各サービスの比較表です。
| サービス名 | CloudGate UNO | KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ | SmartConnect クラウド型UTM | ESET PROTECT / ESET Inspect |
|---|---|---|---|---|
| 守る対象 | ID・アクセス | 総合(予防・復旧・補償) | ネットワークの出入口 | 端末(PC・サーバー) |
| 提供形態 | クラウド(IDaaS) | パッケージ型(内部診断+隔離バックアップ+サイバー保険) | クラウド型UTM(データセンター集約、拠点に機器設置不要) | クラウド/オンプレミス管理(端末にエージェント導入) |
| 主な機能 | シングルサインオン・多要素認証(パスキー/FIDO2)・アクセス制限・ID管理 | 月次の脆弱性診断・隔離バックアップ・サイバー保険の自動付帯 | ファイアウォール・IPS・アンチウイルス・アンチスパム・Webフィルタリング・アプリ制御 | アンチウイルス/EPP・EDR/XDR(ESET Inspect)・クラウドサンドボックス・24時間365日監視(MDR) |
| 対象規模・課金単位 | ユーザー単位(1ユーザーごと) | 端末(ノード)単位 | 〜サーバー・デバイス100台相当(標準プラン) | ライセンス単位(最小6、EDR込みのMDR Liteは最小26) |
| 初期費用 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 110,000円(税込121,000円)〜 | 要問い合わせ |
| 利用料金の目安 | 月額400円〜600円/ユーザー(税抜) | 月額1台1,250円〜 | 月額38,500円(税込42,350円)〜 | 年額5,950円〜/ライセンス(EPP最小構成・税抜) EDR込みは年額14,300円〜/ライセンス |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※料金は各社公式情報にもとづく2026年9〜10月時点の目安です(CloudGate UNO・ESETは税抜、SmartConnectは税込併記、KATABAMIは公式に税区分の記載なし)。プランや構成により変わるため、最新の料金は各サービスの公式情報・資料でご確認ください。
ここからは、それぞれのサービスの特徴を個別に見ていきます。
1. CloudGate UNO(株式会社インターナショナルシステムリサーチ)

CloudGate UNO(クラウドゲートウノ)は、ゼロトラストの考え方にもとづくシングルサインオンを提供するIDaaS(Identity as a Service、クラウド経由でID管理機能を提供するサービス)です。一度の認証で複数のクラウドサービスへアクセスできる利便性と、最小権限の原則にもとづくアクセス制御を組み合わせています。
助成金の対象経費でいえば、⑤のアクセス管理製品(シングルサインオン、本人認証)にあたる領域です。
特徴は、端末・場所・時間の3つの軸で細かくアクセスを制限できる点です。私用端末からのアクセス禁止や特定拠点への限定、時間帯による制御まで設定でき、労務管理や情報漏えい対策としても使えます。認証はパスキー(FIDO2)によるパスワードレス認証に対応し、フィッシング攻撃への耐性が高い方式を採用しています。
クラウドへ移行し複数のSaaS利用を始めた企業が、IDとアクセスの管理をまとめて安全にしたい場合に向いています。
専任のIT担当者が限られる企業では、導入後の運用負担がどう変わるかも判断材料になります。提供元の株式会社インターナショナルシステムリサーチは、取材でパスワードレス認証に切り替えた企業の事例を次のように述べています。

導入と同時にパスワードレス認証に切り替えた企業では、IT部門の業務の約20%を占めていたパスワード関連のヘルプデスク業務が「0%」になったという事例があります。
2. KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

株式会社SYNCHROのKATABAMIサイバーセキュリティ対策パッケージは、サイバー攻撃対策を「予防・復旧・補償」の3本柱で一式提供するサービスです。個別の製品を一つずつそろえるのではなく、まとめて導入したい企業に向きます。
予防は、ネットワーク内部から月次(年12回)で脆弱性を検出し改善策を提示する定期診断です。復旧は隔離された経路でデータを自動バックアップする仕組み、補償はサイバー保険の自動付帯で、3つを合わせて備えます。
公式サイトでは「最短2週間で利用開始」「設置10分」をうたっており、専任のセキュリティ人材がいない中小企業でも短期間・省工数で始められる設計です。月額費用は1台あたり1,250円からのデバイス単位課金とされています(公式サイト記載、2026年9月時点)。診断で検出した脆弱性への対策の実装自体はサービスの標準範囲外で、原則として利用企業側で進める点は押さえておきましょう。
診断・報告と伴走、バックアップ、保険までをひとまとめにして進めたい企業に適しています。
月次で診断を繰り返す進め方が、従来のネットワーク内部診断と何が異なるのかについて、提供元の株式会社SYNCHROは取材で次のように説明しています。

このようなオフィス内の脆弱性を調べるために、従来はお客様先まで足を運び、中に入って席を借りて調査する必要がありました。専門家が2人で出向いて期間中拘束されるため、どうしてもコストが高くなり、頻繁にはお願いしづらいのが実情です。結果として、年に1回程度の実施が一般的でした。一方で、新しい脆弱性は日々生まれており、生成AIの登場でそのスピードもさらに上がっています。
3. SmartConnect クラウド型UTM(NTTスマートコネクト株式会社)

NTTスマートコネクトのSmartConnect クラウド型UTMは、UTM機器を自社の拠点に置かずに使えるクラウド型のサービスです。機器を顧客拠点に設置する代わりに、同社のデータセンター(大阪)に集約したUTM基盤へ、拠点のインターネット接続を集約します。
拠点ごとに機器を購入・設置・運用する手間をかけずに、ネットワークのセキュリティ対策と運用を任せられます。
搭載機能は、ファイアウォール、IPS(不正侵入防御)、アンチウイルス、アンチスパム、Webフィルタリング、アプリケーション制御です。標準プランはサーバー・デバイス100台相当までの規模に対応します。料金は公式ページで初期費用110,000円(税込121,000円)から、月額38,500円(税込42,350円)からと案内されています(帯域別プランにより変動、2026年9月時点)。
有償オプションの監視分析を付ければ、同社の分析官によるログ分析やインシデント時の緊急遮断まで任せられ、情報セキュリティ担当者が不足している企業の運用負担を軽くできます。
4. ESET PROTECT / ESET Inspect(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)

ESETの法人向け製品は、アンチウイルス・EPP(Endpoint Protection Platform、端末保護基盤)を中核に、EDR/XDR製品「ESET Inspect」やクラウドサンドボックス、監視サービスまでを一体で提供する製品群です。端末の保護をEDRまで含めて強化したい企業が主な対象になります。
日本国内ではキヤノンマーケティングジャパンが総販売代理店として、製品供給から日本語でのサポートまでを担っています。
EDR機能にあたるESET Inspectは、端末の活動を収集・分析し、不審な挙動を検知・調査する仕組みで、ルールベースの検出エンジンにカスタムルールの追加・編集も行えます。製品はEPP中心の構成から、EDR/XDRや24時間365日の監視・運用まで複数の段階に分かれています。
ただし、ESET Inspectを単体で新規契約することは現在できず、EDR/XDR機能を新規に利用する場合は「ESET PROTECT MDR」または「ESET PROTECT Elite」のバンドル経由での導入となります(キヤノン公式案内、2026年9月時点)。段階的に端末保護のレベルを引き上げたい企業に向く製品です。
被害に遭った・遭いそうなときの緊急相談先
対策を進めていても、不審なメールやシステムの異常など、サイバー被害が疑われる事態に直面することはあります。その場合の相談・通報先を整理します。
東京都内に所在する法人は、警視庁のサイバー犯罪に関する電話相談窓口(電話03-5805-1731、受付は平日午前8時30分から午後5時15分まで)を利用できます。ただし、殺害予告や犯行予告など生命・身体の危機に関わる緊急性のある事案は、相談窓口ではなく110番に通報してください。また、この電話相談窓口では被害届の提出はできず、被害届は法人の所在地を管轄する警察署へ相談する必要があります。
全国共通の窓口としては、警察庁がサイバー事案の通報・相談・情報提供のオンライン受付窓口を設置しており、通報内容は選択した都道府県警察本部または警察署に通知されます。技術的な相談は、IPAの情報セキュリティ安心相談窓口(電話03-5978-7509)が対応します。
また、東京商工会議所が会員向けに提供するサイバー衛生研修は、一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3)との連携により提供されているもので、JC3自体は中小企業向けの直接の相談電話窓口ではない点に注意してください。
出典:
出典・参考資料(3件)
- 出典:サイバー事案に関する通報・相談・情報提供窓口|警視庁(https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/cyber/sodan_tsuho/cyber_madoguchi.html)
- 出典:サイバー事案に関する相談窓口|警察庁 サイバー警察局(https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/soudan.html)
- 出典:サイバーセキュリティ対策 特設ページ(サイバー衛生研修・JC3連携)|東京商工会議所(https://www.tokyo-cci.or.jp/digital-support/security)
まとめ
東京都内の中小企業は、費用を抑えてサイバーセキュリティ対策を始められる公的支援を複数利用できます。まだ機器を入れていない段階なら、UTMやEDRを無料で試せて専門家の指導も受けられる中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業が入り口になります。
導入する製品が決まっていて費用負担を軽くしたいなら、SECURITY ACTIONの二つ星宣言を前提に、サイバーセキュリティ対策促進助成金で導入費用の半額補助を受けられます。両制度は運営主体も費用の形も別なので、自社の進み具合に合わせて使い分けるのが近道です。
どの対策を入れるかは、ネットワークの出入口・端末・ID・総合という守る対象から整理すると選びやすくなります。自社に合う製品を比較検討する際は、資料をまとめて取り寄せて機能や料金を見比べるのが効率的です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 東京都の中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業とは何ですか?
A. 中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業とは、東京都が主催し、都内に主たる事業所を置く中小企業が参加費無料でUTM・EDRの体験や専門家の指導を受けられる支援事業です。UTM機器設置・EDR導入・情報セキュリティマネジメント指導の3コースがあり、いずれも先着枠が設けられています。
UTMとEDRは最大3か月間無料で体験でき、情報セキュリティマネジメント指導では専門家が最大4回訪問して、SECURITY ACTION二つ星宣言に向けた支援を受けられます。
出典・参考資料(1件)
Q. 東京都の無料の基本対策事業とサイバーセキュリティ対策促進助成金は併用できますか?
A. 運営主体も費用の形も異なる別制度のため、無料の基本対策事業で試してから促進助成金で本格導入する、というように段階を分けて両方を活用できます。基本対策事業は東京都(産業労働局)が主催する無料体験・指導の事業、促進助成金は東京都中小企業振興公社が導入費用の一部を助成する制度です。
まだ機器を入れていない段階では無料の基本対策事業で試し、導入する製品が決まったら促進助成金で費用の半額補助を受ける、という使い分けが基本になります。ただし促進助成金の申請にはSECURITY ACTIONの二つ星宣言が前提となる点は、どちらを使う場合も共通して押さえておきましょう。
Q. 促進助成金の申請にSECURITY ACTIONの二つ星宣言は必要ですか?
A. 必要です。サイバーセキュリティ対策促進助成金は、SECURITY ACTIONの二つ星を宣言した都内の中小企業者等が対象で、一つ星では対象になりません。二つ星は、IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で現状を把握したうえで、情報セキュリティ基本方針を策定し外部に公開することで宣言できます。
SECURITY ACTIONはIPAが対策状況を認定する制度ではないため、「認定を受けた」「取得した」ではなく「二つ星を宣言した」と表現します。自社だけで基本方針を整えるのが難しい場合は、基本対策事業の支援③(情報セキュリティマネジメント指導)で宣言までのサポートを受けられます。
出典・参考資料(2件)
Q. 促進助成金の申請に使うGビズIDはいつまでに準備すればよいですか?
A. GビズIDプライムアカウントは発行に2〜3週間かかるため、申請期日から逆算して早めに登録しておく必要があります。促進助成金の申請はJグランツ(国の補助金電子申請システム)から行い、その利用にGビズIDプライムアカウントが必須となります。
募集回ごとに受付期間が区切られているため、申請を検討する段階で先にGビズIDの登録を進めておくと、受付期間に間に合わないリスクを避けられます。
Q. 東京都の基本対策事業や促進助成金の申請はいつまでで、先着枠はありますか?
A. 2026年10月時点では、基本対策事業は令和8年度の申込を2026年10月30日まで受け付けており、UTM機器設置・EDR導入が各先着50社、情報セキュリティマネジメント指導が先着100社の枠です。促進助成金は複数回に分けて受け付けられ、同時点では第2回受付が終了し、第3回募集は今冬案内予定とされています。
いずれも先着枠や募集回ごとの受付期間、予算の執行状況により早期に締め切られることがあります。受付状況や次回日程は変わるため、申請前に各公式ページで最新の情報を確認してください。
出典・参考資料(2件)
Q. 従業員4〜5名の小規模な事業者でも、UTMやEDRの導入は必要ですか?
A. 事業規模に関係なく、インターネットを利用しているならUTMやEDRでセキュリティレベルを上げられる、と基本対策事業の公式Q&Aは示しています。サブスクリプション型アプリやMicrosoft 365を使う従業員4〜5名規模の事業者でも、小規模だからという理由で支援の対象外になるわけではありません。
むしろ専任のセキュリティ担当を置きにくい小規模な事業者ほど、無料で機器を試せる基本対策事業が対策の入り口に向いています。
Q. サイバーセキュリティ対策は、どの守る対象から始めればよいですか?
A. 自社のどこに穴があるかという「守る対象」を起点に選ぶと整理しやすく、ネットワークの出入口ならUTM、端末(PC・サーバー)ならEDR、ID・アクセスなら多要素認証やシングルサインオンが対応します。これは促進助成金の対象経費の区分(①統合型アプライアンス=UTM、④エンドポイント・セキュリティ=EDR・EPP、⑤アクセス管理=シングルサインオン・本人認証など)とそのまま対応しています。
どこから手を付けるか迷う場合は、基本対策事業の情報セキュリティマネジメント指導で専門家の事前診断を受け、自社の弱点を把握してから優先順位を決めるのも一つの進め方です。
Q. 基本対策事業のUTM機器設置コースは、設置に工事が必要ですか?
A. 大規模な工事は不要です。基本対策事業の公式Q&Aによれば、UTM機器はルーター等への設置で、配線の入れ替えや接続といった簡単な作業を専門員が訪問して実施するとされています。
Q. UTMやEDRをまだ導入していなくても、支援③(情報セキュリティマネジメント指導)だけに申し込めますか?
A. 可能です。UTM・EDRが未導入でも、情報セキュリティマネジメント指導(支援③)だけに申し込めます。基本対策事業は、支援①②③の組み合わせでも、いずれか一つだけでも申し込める仕組みです。
ルールづくりや体制整備から始めたい場合は支援③、まず機器を試したい場合は支援①②、というように自社の状況に合わせて選べます。
Q. 基本対策事業は、申し込む前に相談してから参加を決められますか?
A. 申し込んだあとに相談してから、参加するかを最終的に決められます。基本対策事業の公式Q&Aによれば、申込後3営業日以内に事務局から確認の電話があり、その際に支援内容や進め方を相談できるとされています。
どのコースが自社に合うかは、申込後のヒアリングや専門家の事前診断にもとづいて決まるため、迷っている段階でもまず申し込んで相談する流れが取れます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















