事件報酬や顧問料の記帳、依頼者から預かった金銭の管理、源泉徴収された所得税の精算など、法律事務所の経理は一般的な個人事業とは違う手間がかかります。経理の専任者を置きにくい個人開業や小規模の事務所ほど、記帳から確定申告・決算までをどう効率化するかが毎年の悩みになりがちです。
会計ソフトは数多くありますが、弁護士業に特有の経理をどこまで楽にできるかは製品によって差があります。自分で記帳から申告まで完結させたいのか、顧問税理士と分担したいのか、月額課金を避けて買い切りで使いたいのか——事務所の進め方によって選ぶべき製品は変わります。
本記事では、弁護士・法律事務所が使える会計ソフトを、立替金・預り金の分別管理、事件報酬・顧問料の記帳と源泉徴収、複数所得の整理といった士業ならではの経理への対応を軸に比較します。料金・機能・顧問税理士との連携可否を並べて、自事務所に合う製品を選ぶための判断材料として活用してください。
また、自事務所の状況に合わせて候補を絞り込めるよう、「自事務所に合う会計ソフト診断」も用意しています。進め方や事務所の形態を選ぶだけで候補が見えるので、あわせてご利用ください。
目次
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本記事で比較する会計ソフトの範囲
ここでは、記帳から確定申告・決算までを効率化したい弁護士・法律事務所に向けて、士業特有の経理に対応できる会計ソフトを比較します。対象読者は、経理の専任者を置きにくい個人開業や小規模の事務所を中心に想定しています。
弁護士業務だけに特化した会計ソフトはかつて存在しましたが、現在は新規に導入できる製品が見当たりません。そのため本記事では、個人・法人の記帳と申告に広く使える汎用の会計ソフトを、弁護士業の経理にどう対応させるかという視点で取り上げます。弁護士という絞り込みを外して、会計ソフト全般を規模やタイプから比べたい場合は、会計ソフト全体を比較した以下の記事もあわせてご覧ください。
弁護士の会計ソフト選びで押さえる論点(士業特有の経理)
会計ソフトを選ぶ前に、弁護士業の経理が一般的な個人事業とどこで違うのかを整理しておきます。この違いを踏まえると、各ソフトの機能のどこを見ればよいかがはっきりします。
立替金と預り金を分けて管理する
弁護士の手元には、事務所の売上とは性質の違うお金が出入りします。訴訟費用や登記費用などを事務所が一時的に立て替える「立替金」と、着手金の前受けや和解金など依頼者から一時的に預かる「預り金」です。どちらも事務所の収益ではないため、売上と混ぜずに区別して扱う必要があります。
とりわけ預り金については、弁護士の職務上のルールとして保管方法が定められています。弁護士職務基本規程の第三十八条は、預かった金銭の扱いを次のように規定しています。
(預り金の保管)第三十八条 弁護士は、事件に関して依頼者、相手方その他利害関係人から金員を預かったときは、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にする方法で保管し、その状況を記録しなければならない。
出典:弁護士職務基本規程 第三十八条|日本弁護士連合会会規
会計ソフトの面では、この「自己の金員と区別」し「状況を記録」する実務を、依頼者ごとの補助科目や補助元帳で預り金・立替金の残高を把握できるかどうかで支えます。汎用の会計ソフトでも、預り金・立替金の勘定科目に依頼者名の補助科目を立てれば、誰の分をいくら預かっているかを帳簿上で追えます。製品を見るときは、補助科目や補助元帳をどこまで細かく設定できるかを確認するとよいでしょう。
実務では、預り金を事務所の運転資金と別の口座に分けて管理する事務所もあります。その場合は、複数の口座の明細をまとめて取り込めるソフトだと、口座ごとの残高も帳簿と合わせて管理しやすくなります。
事件報酬・顧問料の記帳と源泉徴収
弁護士が受け取る報酬のうち、依頼者が会社などの源泉徴収義務者である場合は、支払時に所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。つまり事務所の口座には、源泉徴収された後の差引額が入金されます。会計処理では、源泉徴収された所得税を分けて記帳し、確定申告で精算する流れになります。
源泉徴収される税率と計算方法は、国税庁が次のように示しています。
支払金額(=A)/税額
出典:タックスアンサー No.2798「弁護士や税理士等に支払う報酬・料金」|国税庁
100万円以下 A×10.21%
100万円超 (A-100万円)×20.42%+102,100円
たとえば150万円の弁護士報酬を支払う場合、源泉徴収税額は「(150万円−100万円)×20.42%+102,100円=204,200円」です。税率の10.21%・20.42%は復興特別所得税を含んだ率です。国などへの登記・申請のために本来納付すべき登録免許税や手数料に充てるものとして支払われたことが明らかな金銭は、源泉徴収の対象外とされています。
この実務を会計ソフトで楽にするには、源泉徴収された所得税額を記帳・集計しやすいか、依頼者(取引先)ごとに報酬と源泉税額を集計できるかが見るべき点になります。確定申告時に、1年分の源泉徴収税額を取りまとめて精算する作業がスムーズになります。
複数の所得を分けて整理する
弁護士は、事件報酬や顧問料といった事業所得のほかに、講演料・原稿執筆料・書籍の印税、所有不動産の賃貸収入など、複数の所得を得ていることが少なくありません。所得の種類ごとに税務上の扱いが変わるため、どの収入がどの所得区分に当たるかを分けて記帳しておくと、確定申告の整理が楽になります。
個人の確定申告ソフトを選ぶときは、不動産所得にも対応した青色申告決算書を作成できるかなど、事業所得以外の申告まで扱えるかを確認しておくと安心です。所得が多岐にわたる場合や申告が複雑な場合は、後述するように顧問税理士と分担する進め方も検討に入ります。
タイプ別に見る弁護士向け会計ソフトの選び方
ここからは、記帳から申告までをどう回すかという進め方の違いで、会計ソフトを3つのタイプに分けて整理します。自事務所がどのタイプに近いかを考えると、候補を絞り込みやすくなります。
記帳から申告まで自分で完結するクラウド会計タイプ
銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、記帳から確定申告・決算書の作成までをブラウザ上で完結できるタイプです。経理の専任者を置きにくい個人開業や小規模の事務所に向いています。
個人開業で所得税の青色申告をするなら、個人向けのクラウド青色申告ソフトが候補になります。簿記に不慣れでも使えるガイド付きのものから、月額を抑えた定額制のものまで幅があり、個人から法人まで一つの仕組みで扱える製品もあります。事務所を法人化している場合は、法人向けのクラウド会計が選択肢です。具体的な製品は、このあとの比較表と個別紹介で確認してください。
複式簿記で記帳し、e-Taxでの電子申告または電子帳簿保存の要件を満たせば、個人の青色申告で最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。クラウド会計ソフトは複式簿記記帳とe-Tax送信に対応しているため、この要件を満たしやすい点もメリットです。
出典・参考資料(1件)
65万円・55万円・10万円の控除額ごとの要件や、青色申告に対応したソフトを製品横断で比べたい個人開業の弁護士は、以下の記事もあわせてご覧ください。
顧問税理士と分担・記帳代行にまるごと任せるタイプ
記帳は事務所で行い、申告は顧問税理士に任せて分担する進め方や、記帳から決算・申告までをまるごと外部に任せる進め方です。複数の所得があって申告が複雑な事務所や、本業に集中して経理の手間を抑えたい事務所に向いています。
顧問税理士と分担する場合は、クラウド会計ソフトの税理士連携機能が役立ちます。先に挙げたクラウド会計ソフトの多くは、顧問税理士と同じデータを共有しながら記帳と申告を分担できる仕組みを備えています。記帳そのものを外部に任せたい場合は、ソフトの提供に記帳代行と決算・申告までをワンストップで請け負う記帳代行型のサービスが選択肢になります。
記帳代行サービスは法人を主な対象とすることもあり、個人開業では受け付けられない場合があります。個人開業で手間を抑えたいときは、クラウドの青色申告ソフトで日々の記帳だけを自分で行い、決算・確定申告は顧問税理士に税理士連携でデータを渡して任せる、という分担も現実的です。
月額を避けたい人向けの買い切りインストール型
パソコンにインストールして使う買い切り型のソフトです。毎月・毎年の利用料がかかるクラウドに対して、ソフト本体を購入すれば継続費用を抑えやすい点が特徴で、月額課金を避けたい個人開業の弁護士に向いています。個人向けの買い切り型の青色申告ソフトがこのタイプにあたります。
かつては、依頼者別の預り金補助元帳や報酬・源泉徴収税額の集計表を標準で備えた、弁護士専用の買い切りソフト「弁経」も存在しました。ただし弁経は公式告知によると2021年12月に販売を終了し、サポートも2022年12月で終了、後継製品もありません。
そのため現在は、新規に導入できる弁護士専用の会計ソフトは実質的に見当たらないのが実情です。弁護士業の経理は、汎用の会計ソフトに補助科目や補助元帳を設定して対応するのが現実的な選択になっています。
出典・参考資料(1件)
弁護士が会計ソフトを比較するときに見るポイント
タイプのあたりを付けたら、各製品を次の観点で見比べると判断しやすくなります。いずれも、このあとの比較表と診断ツールを読み解く土台になります。
銀行・クレジットカードとの明細連携に対応しているか
事務所の口座やクレジットカードの明細を自動で取り込めると、記帳の手入力を大きく減らせます。連携できる金融機関の数や、事件費の支払いに使うカードに対応しているかを確認するとよいでしょう。明細から自動で仕訳を提案してくれる機能があれば、経理に慣れていない弁護士でも記帳の負担を抑えられます。
確定申告書・決算書をどこまで作れるか
ソフト1本でどの書類まで作れるかは、事務所の形態で変わります。個人開業なら、青色申告決算書と所得税の確定申告書まで作れる製品がほとんどです。一方、法人化した事務所では、多くのクラウド会計ソフトが作れるのは決算書までで、法人税の申告書は税理士が使う申告ソフトや顧問税理士に委ねる形になります。自分でどこまで完結させたいかに応じて、対応範囲を確認しておくと安心です。
顧問税理士と同じデータを共有できるか
顧問税理士がいる事務所では、同じ会計データを税理士と共有できるかが分担のしやすさを左右します。税理士を招待してオンラインでデータを共有できる機能や、税理士が使う申告ソフトへデータを渡せるかも確かめておきましょう。顧問税理士が普段使っているソフトに合わせて選ぶと、やり取りがスムーズになる場合もあります。
弁護士業務特有の経理に対応できるか
前の章で挙げた立替金・預り金の分別管理や、事件報酬の源泉徴収税額の記帳・集計を、補助科目や補助元帳でどこまで扱えるかという観点です。ただし、弁護士専用の機能を備えた会計ソフトは現在ほぼなく、どの製品もこれらを汎用の補助科目で処理します。そのため、弁護士業への対応そのものでの製品差は大きくありません。
細かく見るなら、依頼者別の補助科目をどこまで多く・柔軟に設定できるか(勘定科目あたりの補助科目の上限など)や、源泉徴収された所得税を集計しやすいかが分かれ目です。実際の選定は、この弁護士対応の差より、進め方・事務所の規模・料金・顧問税理士との連携のしやすさで決まることが多くなります。各製品の細かな違いは個別紹介で補足します。
料金が事務所の規模に見合うか
クラウド型は月額または年額、買い切り型はソフト本体の購入費用と、料金の考え方がタイプで異なります。個人開業なら個人向けの低価格プランで足りることが多く、法人化していれば法人向けプランを検討します。記帳代行までまるごと任せる場合は、ソフト利用料とは別に代行の費用がかかるため、どこまでを任せるかで総額が変わります。
自事務所に合う会計ソフト診断
記帳・申告の進め方や事務所の形態を選ぶだけで、自事務所に合いそうな会計ソフトの候補が分かります。気になった製品は、このあとの比較表と個別紹介で詳しく確認してください。
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弁護士向け会計ソフトおすすめ比較表
ここからは、取り上げる会計ソフトを3つのタイプ別に、料金・機能に加えて弁護士業務への対応の観点で比較します。サービス名をクリックすると、各製品の個別紹介に移動します。「弁護士業務への対応」は、どの製品も専用機能を持たず汎用の補助科目で対応するため各社ほぼ同等で、細かな違いは個別紹介で補足します。
記帳から申告まで自分で完結するクラウド会計タイプの比較
| サービス名 | 弥生会計 Next | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | ジョブカン会計 | やよいの青色申告 オンライン | マネーフォワード クラウド確定申告 | ジョブカン青色申告 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 対象 | 法人 | 個人事業主〜法人 | 法人(ひとり法人〜中小) | 法人・個人事業主 | 個人事業主 | 個人事業主 | 個人事業主 |
| 提供形態 | クラウド会計 | クラウド会計 | クラウド会計 | クラウド会計 | クラウド青色申告 | クラウド確定申告 | クラウド青色申告 |
| 料金 | 初期0円/年34,800円〜(エントリー、税抜)。ベーシック50,400円・ベーシックプラス84,000円 | 初期0円/個人 年払い月980円〜、法人 ひとり法人 月2,980円〜(税抜・年払い、スターター以上は従量課金別) | 初期0円/ひとり法人 月2,480円〜・ビジネス 月6,480円〜(税抜・年払い。月払いは3,980円〜) | 初期0円/月2,500円〜(スタートアップ3ユーザー、税抜)。ビジネス5,000円・エンタープライズ50,000円 | 年11,800円〜(セルフ、税別・次年度以降)。セルフ・ベーシックは初年度無料 | 月900円〜(パーソナルミニ・年払い、税抜)。パーソナル1,280円・パーソナルプラス2,980円 | 年12,000円(税抜)の単一プラン |
| 弁護士業務への対応 | △汎用の補助科目で対応(弁護士専用機能なし) | △汎用の補助科目で対応(弁護士専用機能なし)。支払った報酬分の源泉税額は決算書へ自動反映 | △汎用の補助科目で対応(源泉税は預り金処理の仕訳ガイドあり) | △汎用の補助科目で対応(弁護士専用機能なし) | △汎用の補助科目で対応(弁護士専用機能なし) | △汎用の補助科目で対応(弁護士専用機能なし) | △汎用の補助科目で対応(弁護士専用機能なし) |
| 確定申告・決算書作成 | ●法人の決算書作成(法人税申告書は達人連携) | ●個人の青色申告決算書・確定申告書、法人は決算書作成 | ●法人の決算書作成(消費税申告書はビジネス) | ●法人・個人の決算書作成(損益計算書・貸借対照表) | ●青色申告決算書・確定申告書(所得税) | ●青色申告決算書・確定申告書(第一〜四表) | ●青色申告決算書(一般・不動産・農業)・確定申告書 |
| 銀行・カード連携 | ●2,500以上の金融機関・カード | ●1,000以上の金融機関・サービス | ●2,300以上の金融関連サービス | ●銀行・カード明細の自動取込 | ●2,500以上の金融機関・カード | ●2,300以上の金融関連サービス | ●銀行・カードの自動連携 |
| 税理士連携 | ●弥生PAP提携の会計事務所とデータ共有 | ●認定アドバイザーを外部メンバー招待(課金対象外) | ●「監査」権限で招待(公認メンバー士業は課金対象外) | ●外部メンバーで共有(要事前設定、人数上限に影響なし) | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
| 電帳法・インボイス対応 | ●電帳法JIIMA認証・インボイス対応 | ●電帳法JIIMA認証・インボイス対応 | ●インボイス・電帳法に対応 | ●インボイス・電帳法に対応 | ●電帳法JIIMA認証・インボイス対応 | ●インボイス・電帳法に対応(消費税申告はパーソナル以上) | ●電帳法JIIMA認証(2024年4月)・インボイス対応 |
| 無料試用 | ●最大2か月 | ●30日間 | ●1か月 | ●30日間 | ●初年度無料(セルフ・ベーシック) | ●1か月 | ●30日間 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※料金は2026年10月時点の各社公式情報に基づく税抜・税別・税込表記です。最新の料金やプランは各社公式サイトでご確認ください。
顧問税理士と分担・記帳代行にまるごと任せるタイプの比較
| サービス名 | Tenbook(テンブック) |
|---|---|
| 対象 | 法人中心(個人事業主は公式記載なし) |
| 提供形態 | 記帳代行+クラウド会計(アウトソーシング) |
| 料金 | 初期0円/月29,500円〜(免税事業者)・44,500円〜(課税事業者)、決算料0円 |
| 弁護士業務への対応 | △記帳代行のなかで個別対応(弁護士専用機能なし) |
| 確定申告・決算書作成 | ●決算・法人税申告まで専門家が代行 |
| 銀行・カード連携 | ●10bookで金融機関・カード連携 |
| 税理士連携 | 記帳・決算・申告を専門家が代行(税理士連携は不要) |
| 電帳法・インボイス対応 | ●10bookがインボイス・電帳法に対応 |
| 無料試用 | △10bookソフトは30日間(記帳代行は明記なし) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る |
※料金は2026年10月時点の各社公式情報に基づく税抜・税別・税込表記です。最新の料金やプランは各社公式サイトでご確認ください。
月額を避けたい人向けの買い切りインストール型の比較
| サービス名 | やよいの青色申告 デスクトップ | みんなの青色申告 |
|---|---|---|
| 対象 | 個人事業主 | 個人事業主 |
| 提供形態 | インストール(買い切り、Windows専用) | インストール(買い切り、Windows専用) |
| 料金 | 買い切り 税込26,730円(優待15,400円)+2年目以降あんしん保守 年11,330円〜(税込・任意) | 買い切り 税込10,780円+2年目以降バリューサポート 年7,700円(税込・任意) |
| 弁護士業務への対応 | △汎用の補助科目で対応(弁護士専用機能なし) | △汎用の補助科目で対応(弁護士専用機能なし) |
| 確定申告・決算書作成 | ●青色申告決算書・確定申告書(所得税) | ●青色申告決算書(一般・不動産)・確定申告書 |
| 銀行・カード連携 | ●スマート取引取込で明細を自動取込 | ●MoneyLinkで入出金データを一括取込 |
| 税理士連携 | 要確認 | 要確認 |
| 電帳法・インボイス対応 | ●電帳法JIIMA認証取得 | △改正電帳法に対応(優良電子帳簿・インボイスは公式明記なし) |
| 無料試用 | ●30日間体験版 | ●30日間体験版 |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト |
※料金は2026年10月時点の各社公式情報に基づく税抜・税別・税込表記です。最新の料金やプランは各社公式サイトでご確認ください。
弁護士向け会計ソフトの個別紹介
ここからは、タイプ別に各会計ソフトの特徴と、弁護士業での使いどころを紹介します。自事務所の進め方に近いタイプから読み進めてください。
記帳から申告まで自分で完結するクラウド会計タイプ
記帳から確定申告・決算までを自分で完結させたい事務所向けの製品です。個人開業の青色申告から法人化後のクラウド会計まで、事務所の形態に合わせて選べます。
1. 弥生会計 Next(弥生株式会社)

弥生会計 Next は、弥生株式会社が2025年4月にリリースした法人向けのクラウド会計です。会計に請求・経費・証憑の管理を加え、各データが自動で会計処理に流れる構成で、法人化した弁護士法人の経理に向きます。個人事業主向けの機能は備えていないため、個人開業の弁護士は弥生の青色申告ラインを使います。
事件の預り金や立替金は、それぞれの勘定科目に依頼者名の補助科目を立てて事件別に残高を追えます。補助科目は勘定科目ごとに最大3,000件まで設定でき、依頼者ごとの管理に対応します。源泉徴収された所得税も、預り金として記帳する流れです。
顧問税理士とは、同じ画面を見ながら確認・修正を進めるデータ共有に全プランで対応します(共有できるのは弥生PAP提携の会計事務所に限られます)。料金は年契約でエントリー34,800円・ベーシック50,400円・ベーシックプラス84,000円(いずれも税抜)、初期費用は0円で、最大2か月の無料体験があります。
2. freee会計(フリー株式会社)

簿記の経験が浅くても使えるガイド付きの入力画面が特徴で、フリー株式会社が提供します。個人事業主から法人までを同じ仕組みで扱えるため、経理の専任者を置きにくい個人開業の弁護士が、記帳から確定申告まで自分で進めたい場合の候補になります。
受け取った事件報酬の源泉徴収税額は、売上の仕訳で源泉分を分けて記帳し、確定申告で精算します。あわせて、自分が他の専門家へ報酬を支払った場合の源泉徴収税額を入力すると、青色申告決算書の「税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳」欄へ自動で反映する機能もあります。依頼者からの預り金・立替金は、勘定科目に補助科目を設けて事件別に管理します。弁護士業向けの初期設定や専用機能は設けられていません。
顧問税理士は認定アドバイザーとして外部メンバーで招待でき、料金が発生するメンバー数には含まれません。料金は個人向けが年払い月額980円から、法人向けはひとり法人が月額2,980円から(いずれも税抜で、スターター以上は従量課金が別途かかります)。30日間の無料お試しがあります。
3. マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)

複式簿記で勘定科目を自分で扱う運用に向くのが、株式会社マネーフォワードが提供する法人向けクラウド会計です。簿記の基礎がある事務所や、経理担当が細かく設定したい法律事務所に合います。請求・経費・給与など同社シリーズと同じ基盤で連携します。
受け取った事件報酬の源泉徴収税額は、売上の仕訳で分けて記帳できます。預り金・立替金は補助科目を立てて依頼者・事件別に管理します。同社のガイドには、逆に自分が弁護士へ報酬を支払う側の仕訳例(個人の弁護士への支払いは源泉税分を「預り金」として計上、弁護士法人への支払いは源泉徴収が不要)も示されています。
顧問税理士は「監査」権限を含む7種類の権限から選んで招待でき、公認メンバー制度に加入した士業のアカウントは従量課金の対象外です。料金は年払いでひとり法人が月額2,480円、ビジネスが6,480円(いずれも税抜)、初期費用は0円で、1か月の無料トライアルがあります。
4. ジョブカン会計(株式会社DONUTS)

ジョブカン会計は、勤怠や給与などのジョブカンシリーズを手がける株式会社DONUTSのクラウド会計です。キーボード中心でパッケージソフトに近い入力感を残しており、月額2,500円から(スタートアップ・3ユーザーまで、税抜)と費用を抑えやすいため、コストを重視する小規模の法律事務所に向きます。人数が増える場合は、ビジネスプランが5名5,000円から15名15,000円までの段階制で用意されています。
預り金・立替金は補助科目を設けて依頼者・事件別に管理し、源泉徴収された所得税も預り金として記帳する汎用の進め方で対応します。弁護士業向けの初期設定や専用機能はありません。証憑を読み取るAI-OCR・AI仕訳は、有償オプションの「ジョブカン証憑管理」で利用します。
顧問税理士は通常のユーザーとして登録するとプランの利用人数に数えられますが、税理士側のアカウントと紐づける「外部メンバー」で招待すれば利用人数に影響せず共有できます(事前の設定申請が必要です)。初期費用は0円で、30日間の無料トライアルがあります。
5. やよいの青色申告 オンライン(弥生株式会社)

個人開業の弁護士が所得税の青色申告をするための製品で、弥生株式会社が提供します。銀行・クレジットカードの明細を取り込み、複式簿記の帳簿から青色申告決算書・確定申告書の作成、e-Taxでの送信までを一通り行えます。法人税の申告には対応しません。
セルフ・ベーシック・トータルの3プランは機能が同じで、違いはサポート範囲だけです。年額はセルフ11,800円・ベーシック22,800円・トータル39,600円(いずれも税別、次年度以降)で、セルフとベーシックは初年度無料です。サポートが要らなければ最安プランで全機能を使えます。
事件の預り金や立替金は、預り金・立替金の勘定に依頼者名の補助科目を立てて管理し、源泉徴収された所得税も預り金として記帳します。弁護士専用の機能はありませんが、記帳から申告までを自分で完結したい個人開業の弁護士の候補になります。
6. マネーフォワード クラウド確定申告(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウド確定申告は、個人事業主・フリーランス向けの確定申告ソフトです。株式会社マネーフォワードが提供し、明細の自動取得から青色申告決算書・確定申告書の作成、e-Taxでの申告までをカバーします。マイナンバーカードの読み取りから提出まで、スマートフォン1台で済ませることもできます。
確定申告書は第一表から第四表まで作成でき、事件報酬の事業所得のほかに講演料や原稿料などの収入がある弁護士の申告にも使えます。
料金は年払いでパーソナルミニが月額900円、パーソナルが1,280円、パーソナルプラスが2,980円(いずれも税抜)です。消費税の申告に対応するのはパーソナル以上で、パーソナルミニは消費税申告を利用できません。1か月の無料お試しがあります。
7. ジョブカン青色申告(株式会社ジョブカン会計)

年額12,000円(税抜)の単一プランで、機能による追加料金がないシンプルな料金が特徴の青色申告ソフトです。株式会社ジョブカン会計が個人事業主向けに提供し、帳簿入力から青色申告決算書・確定申告書の作成、e-Tax送信までをまとめて行えます。最大3名まで同時に操作できます。
青色申告決算書は一般用のほか不動産所得用・農業所得用にも対応し、兼業にも使えます。事件報酬の事業所得に加えて不動産の賃貸収入がある弁護士の申告にも向きます。
銀行・クレジットカードの明細を自動で取り込み、スマートフォンアプリにも対応します。電子帳簿保存法の「優良な電子帳簿」の要件については、2024年4月にJIIMA認証を取得しています。30日間は全機能を無料で試せます。
顧問税理士と分担・記帳代行にまるごと任せるタイプ
記帳や申告の手間を外部と分担したい事務所向けの選択肢です。記帳代行から決算・申告までをまとめて任せられます。
8. Tenbook(テンブック)(シンアカウンティングサービス株式会社)

記帳代行から決算・法人税申告までを、クラウド会計ソフトとセットでまるごと任せられるアウトソーシング型のサービスです。公認会計士・税理士の上田昌宏氏が代表を務めるシンアカウンティングサービスが運営し、自社開発のクラウド会計ソフト「10book(テンブック)」を契約者に無料で提供します。
記帳や月次処理から決算書・申告書の作成までを原則3名体制の専門チームが一貫して担うため、経理に手が回らない個人開業や小規模の事務所が本業に集中しやすいのが使いどころです。弁護士報酬から源泉徴収された所得税の精算や、不動産所得など事業所得以外を含む複数所得の申告まで、専門家側に任せられます。
料金は決算料が0円の月額制で、免税事業者は月額29,500円から、課税事業者は44,500円からが目安です。依頼者からの立替金・預り金の分別も記帳代行のなかで個別に対応する形になり、弁護士業に特化した機能や導入事例は公式には示されていません。
公式に案内されている主な対象は創業期の企業や中小企業などの法人で、個人事業主を受け付けるかは明記がないため、個人開業での利用可否は申し込み前に確認しておくと安心です。
経理の担当者を置きにくい事務所にとって、記帳や申告を外部に委ねる意義はどこにあるのか。同サービスを運営するシンアカウンティングサービスの上田氏は、インタビューで経理体制が不安定になりやすい事情に触れています。
属人的なフローになっていると引き継ぎが大変ですし、退職に伴って経理が回らなくなるリスクが出てきます。そこを専門家に任せることで、経理業務の安定性を提供したいと考えています。
月額を避けたい人向けの買い切りインストール型
月額・年額の利用料を避け、買い切りで使いたい個人開業の弁護士向けの製品です。前述のとおり弁護士専用の買い切りソフト「弁経」は販売を終了しているため、ここでは個人向けの汎用の買い切りソフトを取り上げます。弁護士業特有の経理は、これらのソフトに依頼者別の補助科目を設定して対応します。
9. やよいの青色申告 デスクトップ(弥生株式会社)

やよいの青色申告 デスクトップは、弥生株式会社がWindows向けに提供する買い切り型の青色申告ソフトです。月額課金のクラウド版「やよいの青色申告 オンライン」とは別製品で、帳簿入力から青色申告決算書・確定申告書の作成、e-Taxでの電子申告までを1本で行えます。電子帳簿ソフト法的要件認証(JIIMA認証)も取得しています。
本体と初年度サポートをセットにした弥生公式オンラインストアのセルフプラン付きは、税込26,730円(優待価格15,400円)です。2年目以降はあんしん保守サポートを更新する場合にのみ年間費用(セルフプランで税込11,330円)がかかり、月々の利用料は発生しません。30日間の無料体験版も用意されています。
銀行明細・クレジットカード・ICカードの取引は「スマート取引取込」で自動取り込みでき、記帳の手入力を減らせます。立替金・預り金を依頼者別に把握したい場合は、汎用の会計ソフトと同じように預り金・立替金の勘定科目へ依頼者名の補助科目を立てて対応します。個人事業主向けの製品で、Windows専用(Mac非対応)です。
10. みんなの青色申告(ソリマチ株式会社)

ソリマチ株式会社のみんなの青色申告は、個人事業主に対象を絞った買い切り型のWindows専用ソフトです。振替伝票や仕訳日記帳による複式簿記記帳に対応し、青色申告決算書(一般・不動産)や確定申告書を作成できます。電子申告(e-Tax)にも対応するとしています。
本体価格は税込10,780円の買い切りで、初年度は保守サービス「バリューサポート」が無償で付帯します。2年目以降のサポート更新(年7,700円・税込)は任意で、更新しなければ本体購入後の追加費用は発生しません。こちらも30日間の無料体験版があります。
全国の銀行・クレジットカードと連携する「MoneyLink」で入出金データを一括取り込みでき、記帳の負担を抑えられます。青色申告決算書が不動産所得にも対応するため、事件報酬などの事業所得に加えて賃貸収入がある弁護士が、複数の所得を1本のソフトで整理しやすい点が挙げられます。電話サポートは平日10時〜17時(土・日・祝を除く)に対応します。
まとめ
弁護士・法律事務所の会計ソフト選びは、記帳から申告までをどう回すかという進め方から考えると整理しやすくなります。自分で完結させたいならクラウド会計、手間を外部と分担したいなら税理士連携や記帳代行、月額を避けたいなら買い切りのインストール型が候補です。
そのうえで、立替金・預り金を依頼者別に分けて管理できるか、事件報酬の源泉徴収税額を記帳・集計しやすいか、顧問税理士とデータを共有できるかといった、弁護士業特有の経理への対応を補助科目や連携機能で確認してください。弁護士専用の会計ソフトが実質なくなった今、汎用の会計ソフトをどう使いこなすかが選定の分かれ目になります。気になる製品は、資料を取り寄せて機能や料金を具体的に比べてみることをおすすめします。
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よくある質問(FAQ)
Q. 弁護士専用の会計ソフトはありますか?
A. 現在、新規に導入できる弁護士専用の会計ソフトは実質的にありません。かつては依頼者別の預り金補助元帳や報酬・源泉徴収税額の集計を標準で備えた専用ソフト「弁経」がありましたが、2021年12月に販売を終了し、サポートも2022年12月で終了、後継製品もありません。
そのため弁護士の経理は、個人・法人に広く使える汎用の会計ソフトに、預り金・立替金の勘定科目へ依頼者名の補助科目を立てて対応するのが現実的な選択になっています。
Q. 弁護士向けの会計ソフトで、立替金や預り金はどう扱えばよいですか?
A. 弁護士の立替金・預り金は、事務所の売上と混ぜず、預り金・立替金の勘定科目に依頼者名の補助科目を立てて事件別に残高を管理します。預り金については弁護士職務基本規程第三十八条が「自己の金員と区別し」「その状況を記録」するよう定めており、汎用の会計ソフトでも補助科目・補助元帳を細かく設定できれば、誰の分をいくら預かっているかを帳簿上で追えます。
製品を選ぶ際は、補助科目をどこまで細かく設定できるかを確認するとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
Q. 弁護士が受け取る事件報酬の源泉徴収は、会計ソフトでどう処理しますか?
A. 依頼者が法人などの源泉徴収義務者である場合、事件報酬・顧問料は源泉徴収された所得税を差し引いた後の金額で入金されるため、会計ソフトでは源泉徴収された所得税額を分けて記帳し、確定申告で精算します。税率は国税庁タックスアンサーNo.2798により、支払金額100万円以下が10.21%、100万円超の部分が20.42%(いずれも復興特別所得税を含む率)です。
依頼者(取引先)ごとに報酬と源泉徴収税額を集計できるソフトを選ぶと、確定申告時に1年分を取りまとめて精算する作業がスムーズになります。
出典・参考資料(1件)
Q. 弁護士向けの会計ソフトは顧問税理士と連携できますか?
A. 多くのクラウド会計ソフトは、顧問税理士を招待して同じ会計データを共有し、記帳は事務所・申告は税理士で分担できます。本記事で取り上げた法人向けのクラウド会計の多くは、税理士を外部メンバーや公認アカウントとして招く仕組みを備え、条件を満たせば利用人数の課金対象から外せる製品もあります。
顧問税理士が普段使っているソフトに合わせて選ぶと、やり取りがさらにスムーズになる場合もあります。
Q. 顧問税理士がいなくても、弁護士が会計ソフトを運用できますか?
A. 顧問税理士がいなくても、記帳から確定申告・決算まで会計ソフト1本で完結できます。銀行・クレジットカードの明細を自動で取り込み、簿記の経験が浅くてもガイドに沿って入力できる製品なら、個人開業の弁護士が自分で申告まで進められます。ただし、複数所得が絡む申告や決算・税務判断に不安がある場合は、相談先として税理士を確保しておくと安心です。
Q. 弁護士向けの会計ソフトは無料で試せますか?
A. 主要なクラウド会計ソフトの多くは、30日〜最大2か月程度の無料体験や無料トライアルを用意しています。買い切り型の青色申告ソフトにも、30日間の無料体験版が用意されています。実際の入力画面で、預り金・立替金の補助科目設定や明細の自動連携の使い勝手を確かめてから契約すると、導入後のミスマッチを防げます。
Q. 弁護士向けの会計ソフトを変えると、過去の帳簿は見られなくなりますか?
A. 会計ソフトを乗り換える際は、一般に期首残高などを新しいソフトへ引き継ぎ、過去の帳簿は旧ソフトで参照・保管するのが基本です。帳簿書類は原則7年間の保存が必要とされるため、乗り換えた後も旧データを閲覧できる状態を保ち、税務調査に備えておきます。移行前に、どのデータを引き継げるか・過去分をどう残すかを確認しておくと安心です。
Q. 個人開業から弁護士法人になっても、同じ会計ソフトを使い続けられますか?
A. 製品によっては、個人開業向けのプランから法人向けプランへ段階的に移行して使い続けられます。たとえば、個人向けの青色申告ソフトから同じブランドの法人向けクラウド会計へ、あるいは個人向けプランからひとり法人・上位プランへと、同じブランド内で乗り換えられる製品があります。ただし個人向けと法人向けで別製品になる場合もあるため、法人化の予定があるなら、移行のしやすさも含めて選んでおくとよいでしょう。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















