後継者がいない、あるいは親族や社内に継がせる相手が見つからない。そうした悩みから事業承継を考え始めたとき、多くの経営者が最初にぶつかるのが「誰に相談すればよいのか」という問題です。事業承継には会社の株式や税務、M&A、法務、人材まで幅広い知識が必要で、一人の専門家ですべてをカバーできるわけではありません。
相談先には、M&Aの仲介会社やファイナンシャル・アドバイザー(FA)、税理士・公認会計士、金融機関、公的機関などさまざまな種類があり、それぞれ得意な領域や立場が異なります。特に、親族や社内に後継者がいない場合に選ばれるM&Aによる第三者への承継では、どのプロに任せるかで進め方も費用も大きく変わります。では、自社の状況に合うプロをどう見極めればよいのでしょうか。
本記事では、事業承継を任せられるプロの種類と役割を整理したうえで、M&Aによる第三者承継の相談先である「仲介」と「FA」の違いや利益相反、費用の相場(レーマン方式)、プロの選び方までを解説します。無料で使える公的窓口との使い分けも含め、相談候補を絞り込むための判断材料としてご活用ください。
また、自社の状況に合わせて相談すべきプロの種類を手早く確認できるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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事業承継の「プロ」とは?公的資格はなく役割で選ぶ
「事業承継の専門家」と呼べる単一の国家資格は存在しません。事業承継は、後継者の決定、自社株式の評価と移転、税負担への対策、M&Aによる第三者への引き継ぎ、法務や労務の整理まで多岐にわたり、それぞれの局面で異なる分野のプロが関わります。このように「事業承継のプロ」とは特定の資格保有者を指す言葉ではなく、自社の課題に応じて適切な専門家・機関を選び、使い分けることが前提になります。
背景には、後継者不在という構造的な課題があります。親族や社内に継ぐ人がいない中小企業では、M&Aによって社外の第三者へ事業を引き継ぐ選択肢が広がっており、相談先の幅も「身近な顧問税理士」から「M&Aの専門会社」まで大きく広がっています。だからこそ、どのプロが何をしてくれるのかを理解し、自社の承継方法に合った相手を選ぶことが、承継を成功させる第一歩になります。
なぜ中小企業でこれほど後継者が見つからなくなっているのか、その理由と採り得る解決策は、公的データをもとに別の記事で整理しています。承継を考え始めた背景から整理したい方は、こちらもご覧ください。
承継方法(親族内・社内・M&Aによる第三者)で変わる、頼るべきプロ
ここでは、事業承継の3つの方法と、それぞれで頼りになるプロの傾向を整理します。誰に相談すべきかは、自社がどの承継方法を取るかによって変わるためです。

親族内承継は、子どもや親族に事業を引き継ぐ方法です。自社株式の贈与・相続に伴う税負担や、他の相続人との調整が主な論点になるため、自社株評価や事業承継税制に詳しい税理士・公認会計士が中心的な相談相手になります。
社内承継(従業員承継)は、役員や従業員へ引き継ぐ方法です。後継者となる人材に株式を取得する資金がないケースが多く、MBO(経営陣による買収)やEBO(従業員による買収)のスキーム設計、金融機関からの資金調達の相談が必要になります。
M&Aによる第三者承継は、社外の企業や個人へ事業を譲り渡す方法です。後継者が見つからない場合の現実的な選択肢として広がっており、譲り渡し先の探索から企業価値の評価、条件交渉、契約の締結までを支援するM&Aの専門家(仲介・FA)が中心的な役割を担います。本記事では、この第三者承継を任せられるプロの選び方を中心に解説します。
事業承継の相談先の種類と役割
ここからは、事業承継で相談できるプロを種類ごとに整理し、それぞれが何をしてくれるのか、どんな場面で頼りになるのかを見ていきます。
M&A仲介・FA(第三者承継のプロ)
M&Aによる第三者承継を任せる相手が、M&A仲介会社とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)です。譲り渡し先の候補探し、企業価値の評価、条件交渉、最終契約の締結(クロージング)まで、一連のプロセスを支援します。
仲介は売り手と買い手の双方との契約に基づいて両者の間に立ち、FAは売り手または買い手の一方と契約して、その依頼者の利益のために動くという違いがあります。この違いは費用や中立性に直結するため、後の章で詳しく解説します。
税理士・公認会計士(税務・自社株のプロ)
税理士・公認会計士は、自社株式の評価、事業承継に伴う贈与税・相続税の対策、親族内承継のスキーム設計に強みを持ちます。一定の要件を満たせば贈与税・相続税の納税が猶予・免除される法人版事業承継税制(特例措置)の活用も、こうした税務のプロが支援する領域です。
特例措置を使うには、都道府県への特例承継計画の提出が必要で、その提出期限は令和9年(2027年)9月30日までとされています。一方で、M&Aの仲介業務そのものは行わないことが多く、第三者承継では後述のM&A専門家と役割を分担します。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:事業承継税制(贈与税・相続税)特例承継計画|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html)
金融機関・公的機関(最初の相談窓口)
メインバンクなどの金融機関は、融資の関係から自社の財務状況を把握しており、事業承継の初期相談やM&A先の紹介を受けられる場合があります。ただし融資を軸にした提案に偏ることもあるため、提案の背景を踏まえて受け止めることが大切です。公的機関としては、国が設置する事業承継・引継ぎ支援センターがあり、承継の方向性が定まっていない段階でも無料で相談できる窓口として機能します。詳しくは後述します。
自社がどの承継方法を取り、どのプロに相談するのが合っているかは、状況によって変わります。方向性がまだ定まっていない段階なら、後述する無料の公的窓口で全体像を整理するのも一つの方法です。次の診断では、M&Aによる第三者承継を前提に、仲介かFAかといった観点から自社に合う相手の当たりを付けられます。
M&Aによる第三者承継の相談先「仲介」と「FA」の違い・利益相反
M&Aによる第三者承継を相談するうえで最も重要なのが、「仲介」と「FA」という2つの立場の違いです。どちらに依頼するかで、誰の利益のために動いてもらえるかが変わります。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、両者を次のように定義しています。
仲介者とは、譲り渡し側・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する(業務範囲は個別の支援機関ごとに異なる。)。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(2024年8月策定)
FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する(業務範囲は個別の支援機関ごとに異なる。)。
整理すると、双方と契約して両者の間を取り持つのが仲介、売り手か買い手の一方と契約してその依頼者の立場で動くのがFAです。仲介は売り手・買い手の双方が見つかりやすく成約までが早い一方、FAは依頼者一方の利益を最大化する立場で交渉にあたります。

ここで押さえておきたいのが、仲介に内在する利益相反のリスクです。同ガイドラインは、仲介者が双方から依頼を受ける構造上、利益相反のおそれが生じると指摘しています。
仲介者の場合は、譲り渡し側・譲り受け側の双方が依頼者となるため、構造的にいずれかの当事者との間で、利益相反のおそれが生じる。したがって、仲介者は、中立性・公平性をもって譲り渡し側・譲り受け側の両当事者に接する必要があるため、利益相反のおそれがあるとして想定される事項につき、事前に両当事者に説明を行い、了承を得ておく必要がある
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(2024年8月策定)
これは仲介そのものが問題だという意味ではありません。ガイドラインは、仲介者に中立・公平義務を課し、不当に一方の利益・不利益となる利益相反行為を禁止したうえで、その内容を仲介契約書に明記することを求めています。具体的に禁止される行為として、次のような例が挙げられています。
- 譲り受け側から追加で手数料を取得し、当該譲り受け側に便宜を図る行為(ニーズに反したマッチングの優先や、不当に低い譲渡価額への誘導など)
- 一方当事者から伝達を求められた事項を他方に伝えない、または告げていない事項を偽って伝える行為
M&A専門業者には、不動産業における宅地建物取引業法のような業界共通の法規制が存在せず、許可制・免許制も採られていません。
だからこそ、仲介に依頼する場合は、こうした利益相反行為を行わない旨が仲介契約書に定められているかを自分で確認することが、不利な取引を避けるための実務的な確認ポイントになります。売り手として自社の利益を最優先に交渉してほしいのであれば、一方の立場に立つFAを選ぶという判断もあります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
事業承継のプロの選び方
ここからは、M&Aによる第三者承継を任せるプロを選ぶときの判断軸を整理します。中立性・料金体系(費用の相場)・実績の3つの観点から、自社に合う相手を見極めるポイントを整理します。
中立性で選ぶ(仲介かFAか)
前章で見たとおり、仲介は双方と契約し、FAは一方の利益を代弁します。自社の利益を最優先に交渉を進めてほしいならFA、相手探しのスピードや成約のしやすさを重視するなら仲介、という整理が基本です。仲介に依頼する場合は、利益相反行為を行わない旨が契約書に明記されているか、重要な情報が双方に適切に共有される仕組みがあるかを確認しましょう。立場の違いを理解したうえで選ぶことが、納得できる承継につながります。
料金体系・費用の相場で選ぶ
M&Aの専門家に支払う手数料は、発生するタイミングごとに種類が分かれます。中小M&Aガイドラインは、主な手数料として次のものを挙げています。
- 着手金(主に仲介契約・FA契約の締結時に支払う)
- 月額報酬(一定額を毎月支払う。リテイナーフィーとも呼ばれる)
- 中間金(基本合意の締結時など、案件完了前の一定時点に支払う)
- 成功報酬(M&Aの成立時に支払う)
これらをすべて請求する会社もあれば、着手金・月額報酬・中間金を取らず成功報酬のみを請求する「完全成功報酬型」の会社もあります。着手金や月額報酬があると、成約に至らなくても費用が発生する点に注意が必要です。
成功報酬の算定には、レーマン方式(基準となる価額の階層ごとに異なる料率を掛けて合算する方式)が広く用いられます。中小M&Aガイドラインは、料率の一例として次の値を示しています。
| 基準となる価額(円) | 乗じる割合(%) |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5 |
| 5億円超10億円以下の部分 | 4 |
| 10億円超50億円以下の部分 | 3 |
| 50億円超100億円以下の部分 | 2 |
| 100億円超の部分 | 1 |
この料率はあくまで一例で、実際の階層や割合は各社で異なります。また、何を「基準となる価額」とするか(譲渡額、株式価値、負債を含む移動総資産額、純資産額など)で手数料総額は大きく変わります。
たとえばガイドラインの例では、譲渡額1億円・着手金100万円・最低手数料500万円の場合に手数料総額は660万円(税込)、譲渡額5億円で負債5億円があり移動総資産額10億円を基準にする場合は総額4,950万円(税込)と試算されています。
小規模な案件では、レーマン方式で計算した額が各社の定める最低手数料を下回ることがあり、その場合は最低手数料が適用されます。本記事で紹介する会社の多くは最低手数料を2,000万円前後に設定しています。たとえば譲渡額1億円の場合、レーマン方式の計算額(5%で約500万円)ではなく、最低手数料が実際の負担になります。
小規模な譲渡ほど、料率よりも各社の最低手数料の水準が費用を大きく左右します。料率だけでなく、最低手数料がいくらか、何を基準に計算するのかを必ず確認することが大切です。
一方、税理士・公認会計士に依頼する自社株評価や税務対策の費用、金融機関の手数料は、案件の内容や会社によって幅があります。公的な相場を一律に示すことは難しいため、見積もりを取り、何にいくらかかるのかを個別に確認することをおすすめします。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
実績・得意業種・企業規模で選ぶ
同じM&Aの専門家でも、得意とする案件規模や業種はさまざまです。成約実績の件数や、自社と近い規模・業種の支援経験があるかを確認すると、ミスマッチを避けやすくなります。小規模な案件を得意とする会社もあれば、中堅・大企業の案件に強みを持つ会社もあります。
会社ごとに強みは異なります。地方やニッチな業種での相手探しなら金融機関・会計事務所のネットワークが広い会社、短期間での成約を重視するならシステムを活用してスピードを打ち出す会社、会計・税務の専門性を重視するなら公認会計士が関与する会社、というように、自社が最も重視する点から絞り込めます。
成約実績は件数の多さだけでなく、件数を公表しているか非公表か、自社と同じ業種・地域での事例があるかも確認材料になります。各社の実績や強みは、次の比較表とサービス紹介で見比べてください。
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事業承継の相談先サービスの比較
ここからは、M&Aによる第三者承継を任せられる主なサービスを、相談先のタイプ(仲介かFAか)・対応する承継方法・得意な企業規模・料金体系・実績などの観点で比較します。自社の状況に照らして、相談候補を絞り込む材料としてご覧ください。
| サービス名 | M&A Lead | 日本M&Aセンター | M&Aキャピタルパートナーズ | ストライク | M&A総合研究所 | fundbook |
|---|---|---|---|---|---|---|
| タイプ | FA(売主側) | 仲介 | 仲介 | 仲介 | 仲介 | 仲介 |
| 主な強み・特徴 | 売主だけに付く専属アドバイザー(FA) | 成約件数が多く、金融機関・会計事務所ネットワークが広い | 専任担当が一貫対応。着手金・月額報酬が無料 | 公認会計士が関与。オーナー受取額を基準に報酬算定 | AI活用で成約が速い(平均7.2ヶ月・最短43日) | 独自システムで手続きをオンライン化 |
| 得意な案件・企業規模 | 公式に受託基準の記載なし (公開成約事例は売上約5,000万〜10億円) | 小規模企業〜上場企業 (全業種・全国対応) | 中小企業オーナー中心 (案件規模は売上1億円未満〜50億円以上) | 中堅・中小企業の事業承継が中心 (案件は年商1億円以下〜100億円超) | 中堅・中小企業 (売上規模 約1億〜100億円) | 中堅・中小企業 |
| 料金体系 | 完全成功報酬制(着手金・中間金・月額報酬0円) レーマン方式5%〜1%・最低2,000万円 報酬は売主のみ負担 | 着手金100万〜500万円+成功報酬 レーマン方式・売り手最低2,000万円 売り手・買い手の双方が負担 | 着手金・月額報酬無料 中間報酬(手数料総額の約10%)+成功報酬 株価レーマン方式5%〜1% | 着手金無料+基本合意報酬100万〜300万円+成功報酬 オーナー受取額レーマン方式・最低2,000万円 | 売り手は完全成功報酬制(着手金・中間金・月額報酬すべて無料) レーマン方式(譲渡代金ベース、料率は要問い合わせ) | 完全成功報酬制(相談料・着手金・月額報酬無料) 契約形態により中間報酬が発生する場合あり レーマン方式(売り手は5億円以下の部分が定額2,500万円) |
| 主な実績 | 公開成約事例7件 (累計成約件数は非公表) | 累計成約11,000件超 M&A成約件数でギネス世界記録5年連続認定 | 累計成約1,000組以上 | 創業以来3,700件以上の成約 | 平均成約期間7.2ヶ月・最短43日 年間問い合わせ15,000件超(2024年度) | 累計成約件数は非公表(要問い合わせ) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は各サービスの一般的な傾向です。実際の料金体系・対応範囲・実績は各社の公式情報をご確認ください。
事業承継を相談できるサービス
先ほどの比較表で取り上げた各サービスを、ここからは個別に紹介します。それぞれの立場(仲介・FA)や得意な案件規模、実績を踏まえて、自社に合う相談先を見つけてください。
1. M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadは、M&A Lead株式会社が運営する、売主(譲渡企業)側に立つM&Aアドバイザリーです。買主と売主の間に入る「仲介」ではなく、譲渡するオーナーだけに付く専属のアドバイザーとして、譲渡価格や従業員の雇用といった売主側の条件の実現に向けて交渉する立場をとります。
報酬は売主からのみ受け取り、買主からは手数料を受け取りません。着手金・中間金・月額報酬は0円で、費用が発生するのは譲渡が成約したときの成功報酬のみです。成功報酬は譲渡対価に応じたレーマン方式(5億円以下の部分5%〜100億円超の部分1%)で、最低手数料は2,000万円が設定されています。
買い手探しでは、自社のネットワークに加え、他社のアドバイザーや買い手側のFA、地方銀行を中心とする20行超の金融機関と連携し、複数の候補から条件提示を受ける進め方をとります。公開されている成約事例7件には、後継者不在を背景とした美容業・動物病院(いずれも社長60代)の事業承継も含まれます。中小企業庁のM&A支援機関として、中小M&Aガイドライン(第3版)の遵守を宣言しています。
2. 日本M&Aセンター(株式会社日本M&Aセンター)

日本M&Aセンターは、1991年創業・東証プライム上場(証券コード2127)のM&A仲介会社です。中堅・中小企業の事業承継を主な対象とし、累計成約件数は11,000件を超え、2020年から5年連続でM&A成約件数のギネス世界記録に認定されています。
全国の地方銀行94行(全国96行中)・信用金庫223庫、会計事務所1,118所、士業者約1,700と提携しています。この金融機関・会計事務所ネットワークを案件情報の入手経路とし、地方やニッチな業種の案件でも相手が見つかりやすい体制です。対応業種は23カテゴリ、対応地域は全国9地域と海外に及びます。
報酬は売り手・買い手の双方から受け取る仲介モデルで、一方だけに助言するFAとは立場が異なります。売り手側は着手金100万〜500万円と、レーマン方式(5億円以下の部分5%〜)の成功報酬(最低2,000万円)が発生します。対象は小規模企業から上場企業まで、公式に3区分で案内しています。
3. M&Aキャピタルパートナーズ(M&Aキャピタルパートナーズ株式会社)

中小企業オーナーの事業承継・会社売却を主な対象とするのが、2005年設立・東証プライム上場(証券コード6080)のM&Aキャピタルパートナーズです。マッチングから交渉、クロージングまでを1人の専任アドバイザーが一貫して担当する体制を特徴としています。
料金は着手金・月額報酬が無料で、基本合意に至るまで費用が発生しない設計です。費用は譲渡先候補が決まった時点の中間報酬(手数料総額の約10%)と、成約時の成功報酬(残り約90%)で、株式譲渡対価のみを基準とする株価レーマン方式(5億円以下5%〜100億円超1%)を売り手・買い手同一で適用します。
累計成約は1,000組以上で、公式に掲載される案件の規模は売上1億円未満から50億円以上まで幅があります。上場企業の買収(TOB)や企業グループの一部事業の切り出し(カーブアウト)、国境をまたぐ取引(クロスボーダーM&A)といった大型・複雑な案件にも対応します。中小企業庁のM&A支援機関として、中小M&Aガイドライン(第3版)の遵守を宣言しています。
4. ストライク(株式会社ストライク)

ストライクは、公認会計士の荒井邦彦氏が1997年に創業したM&A仲介会社です。社内に公認会計士・税理士などの有資格者が在籍することを強みに掲げ、現在は持株会社の株式会社ストライクグループ(東証プライム上場、証券コード6196)のもとで、事業会社の株式会社ストライクが仲介を担っています。
1998年には国内初のインターネットM&A市場「SMART」を開設し、現在も自社で運営しています。担当者個人に加えて社内全体で買い手候補を探す「オールストライク」の体制をとり、創業以来3,700件以上の成約実績を公表しています。
着手金は無料で、基本合意報酬(資産総額に応じ100万〜300万円)と成功報酬(最低2,000万円)が発生します。成功報酬のレーマン方式は、負債を含む移動総資産ではなくオーナーが実際に受け取る金額を基準とする「オーナー受取額レーマン」を採用している点が特徴です。基準となる金額が小さくなるぶん、負債を含む移動総資産額を基準とする方式に比べて手数料を抑えやすい傾向があります。
5. M&A総合研究所(株式会社M&A総合研究所)

独自のAIマッチングシステムと企業データベースを活用した成約スピードを前面に打ち出すのが、M&A総合研究所です。2018年に設立され、2022年に東証グロース市場へ上場した独立系の仲介会社で、現在の親会社はクオンツ総研ホールディングス(東証プライム上場、証券コード9552)です。
公表されている平均成約期間は7.2ヶ月、最短43日で、年間の問い合わせ件数は15,000件以上(2024年度)とされています。譲渡企業(売り手)向けには着手金・中間金・月額報酬をすべて無料とする完全成功報酬制をとり、成功報酬は譲渡代金をベースとするレーマン方式です。
対象は売上規模およそ1億円〜100億円の中堅・中小企業です。中小企業庁のM&A支援機関として中小M&Aガイドラインの遵守を宣言し、専任条項やテール期間(契約終了後も一定期間、成功報酬が発生する取り決め)の上限、セカンドオピニオンの許容などの遵守事項を公式ページで明示しています。
6. fundbook(株式会社fundbook)

fundbookは、従来型のM&A仲介にテクノロジーを組み合わせた「ハイブリッド型」を掲げるM&A仲介会社です。2017年設立で、東証プライム上場の株式会社チェンジホールディングスのグループ企業にあたります。中堅・中小企業のオーナーを主な対象としています。
独自のM&A特化型システム「fundbook cloud」を仲介サービスに組み込み、企業概要書の閲覧や契約手続きの申請、書類のやり取りをオンライン化しています。買い手企業が自ら候補先を検索してオファーを出せる機能も備えます。
料金は、相談料・企業価値算定費用・着手金・月額報酬が発生しない完全成功報酬制です(合意により中間報酬が発生する契約形態を選ぶ場合があります)。成功報酬は譲渡対象資産額に応じたレーマン方式で、売り手側は5億円以下の部分が定額2,500万円、それを超える部分に4%〜1%の料率を適用します。
ここで取り上げた以外にも、M&Aアドバイザリーには仲介型・FA・Big4系など多様な会社があり、得意な案件規模も異なります。自社の規模や案件に合う相手をもっと広く見比べたい場合は、案件規模別に会社を整理した以下の記事が候補選びの材料になります。
M&Aアドバイザリー会社おすすめ比較|仲介型・FA・Big4系まで案件規模別に紹介
事業承継の受け皿が親族や社内に見当たらず外部への売却を検討している、あるいは成長のために同業や隣接領域の会社を買収したい。そう考えて相談先を探しても、「M&Aアドバイザリー会社」「M&A仲介」「FA(ファイナンシャルアドバイ…
事業承継のプロに相談してから契約までの流れ
M&Aによる第三者承継は、相談から成約まで数か月から1年以上かかることもあります。全体の流れを把握しておくと、どの段階でどんな費用が発生するかを見通せます。

- 初回相談・方針の整理:承継の希望や会社の状況を伝え、M&Aが選択肢になるかを相談します。公的窓口や多くの専門家は、この段階の相談を無料で受け付けています。
- 仲介契約・FA契約の締結:依頼する専門家が決まったら契約を結びます。着手金が発生する場合はこの時点です。利益相反に関する取り決めもここで確認します。
- 企業価値の評価・譲り渡し先の探索:自社の価値を算定し、条件に合う譲り受け先の候補を探します。
- 交渉・基本合意:候補先と条件を交渉し、大枠で合意します。中間金が発生する場合があります。
- デューデリジェンス(買い手による詳細調査)・最終契約・成約:調査を経て最終契約を結び、成約します。成功報酬はこの段階で発生します。
着手金・月額報酬・中間金の有無によって、成約前に発生する費用は変わります。契約前に、どの段階でいくら支払うのかを書面で確認しておくと安心です。
無料で使える公的窓口(事業承継・引継ぎ支援センター)との使い分け
いきなり有料の専門家に依頼する前に、無料で使える公的窓口を活用する方法もあります。その代表が、国が設置する事業承継・引継ぎ支援センターです。
事業承継・引継ぎ支援センターは、経済産業省の委託を受けた機関(都道府県商工会議所、県の財団等)が実施する事業である。(中略)センターは、全国48か所(全都道府県に各1か所、ただし東京都は2か所)に設置されており、地域金融機関OBや、公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士等の士業等専門家といった、中小M&Aの知見を有する専門家が常駐している
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(2024年8月策定)
センターへの相談は無料で、承継の方向性がまだ定まっていない段階でも利用できます。中立的な立場から状況を整理し、必要に応じて適切な民間の支援機関へ橋渡しをしてくれるため、「まず何から始めればよいか分からない」という段階の最初の窓口に向いています。
一方で、ガイドラインも示すとおり、センターが紹介する登録機関などに実際の支援を依頼する場合は有料です。無料の公的窓口で全体像と方向性を整理し、具体的な相手探しや交渉はM&Aの専門家に有料で依頼する、という使い分けが現実的です。自社だけで相談先を絞り込むのが難しい場合は、まず無料窓口で相談してみるとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
まとめ
事業承継のプロには、M&A仲介・FA、税理士・公認会計士、金融機関、公的機関などさまざまな種類があり、自社の承継方法によって頼るべき相手が変わります。親族や社内に後継者がいない場合の選択肢であるM&Aによる第三者承継では、仲介とFAの立場の違いと利益相反のリスクを理解し、中立性・料金体系(レーマン方式を含む費用の相場)・実績の3つの観点で相手を選ぶことが、納得できる承継につながります。
まずは無料の公的窓口で全体像を整理し、そのうえで自社に合うM&Aの専門家に相談候補を絞り込むのが現実的な進め方です。本記事の比較表や各社の情報で料金体系や得意な案件規模を見比べ、気になる相手には資料請求や初回相談で具体的に話を聞いてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 事業承継のプロとは何ですか?
A. 事業承継のプロとは、会社の引き継ぎを支援するM&A仲介・FA、税理士・公認会計士、金融機関、公的機関などの専門家・機関の総称です。「事業承継の専門家」という単一の国家資格は存在せず、自社株評価・税務・M&A・法務など局面ごとに異なる分野のプロが関わります。そのため、自社の承継方法に合った相手を選び、使い分けることが前提になります。
Q. 事業承継は顧問税理士に相談するだけで足りますか?
A. 事業承継を顧問税理士だけに相談して済むかは、承継方法によって異なります。親族内承継の自社株評価や相続・贈与の税務対策であれば顧問税理士が中心的な相談相手になりますが、M&Aによる第三者承継では、譲り渡し先の探索や交渉を担うM&Aの専門家(仲介・FA)が別途必要になります。
顧問税理士がM&Aに詳しいとは限らないため、承継方法に応じて専門家を使い分けるか、税務とM&Aの両面を支援できる体制があるかを確認するとよいでしょう。
Q. 事業承継のプロへの初回相談は無料でできますか?
A. 事業承継の初回相談は、多くの専門家や公的窓口が無料で受け付けています。国が設置する事業承継・引継ぎ支援センターは相談が無料で、M&A仲介・FAの多くも初回相談や企業価値の簡易算定を無料としています。ただし、着手金や月額報酬が発生する会社では契約後に費用がかかるため、どの段階からいくら発生するのかを事前に確認しておくことが大切です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
Q. 経営者本人でなくても、後継者候補や役員が事業承継のプロに相談できますか?
A. 事業承継の相談は、経営者本人に限らず、後継者候補や役員、家族など当事者以外の立場からでも可能です。実際に、親の会社の承継を検討する後継者候補や、経営を支える参謀役が相談の窓口になるケースも多くあります。ただし、正式な契約や重要な意思決定には経営者本人の関与が必要になるため、早い段階から本人を交えて話を進めるとスムーズです。
Q. 小規模な会社でもM&Aによる事業承継をプロに相談できますか?
A. 小規模な会社でも、M&Aによる事業承継をプロに相談することは可能です。ただしM&A仲介・FAには成功報酬の最低手数料(たとえば2,000万円など)を設けている会社が多く、譲渡額が小さい案件では手数料の負担感が相対的に大きくなります。小規模・小額の案件を得意とする会社を選ぶか、無料で使える事業承継・引継ぎ支援センターの活用も含めて、自社の規模に合った相談先を検討するとよいでしょう。
Q. 事業承継税制(特例措置)は自社でも使えますか。期限はありますか?
A. 法人版事業承継税制の特例措置は、一定の要件を満たせば自社株式にかかる贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度で、適用には都道府県への特例承継計画の提出が必要です。その提出期限は令和9年(2027年)9月30日までとされています。自社が要件を満たすかどうかは、自社株評価や事業承継税制に詳しい税理士・公認会計士に確認することをおすすめします。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:事業承継税制(贈与税・相続税)特例承継計画|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html)
Q. 事業承継のプロに依頼してから成約までどのくらいの期間がかかりますか?
A. M&Aによる第三者承継では、相談から成約まで数か月から1年以上かかるのが一般的です。譲り渡し先の探索、企業価値の評価、条件交渉、デューデリジェンス、最終契約と段階を踏むためで、相手が早く見つかる案件では半年程度、条件調整が難航すると1年を超えることもあります。会社によっては平均成約期間を公表している場合があるため、スケジュールの目安として確認するとよいでしょう。
Q. 事業承継のプロは複数の会社に相談して比較してもよいですか?
A. 契約前の段階であれば、複数のM&A仲介・FAに相談し、料金体系や得意な案件規模を比較して選ぶことが望ましい進め方です。ただし、正式に仲介・FA契約を結ぶ際は、同時に複数社へ依頼できない専任契約が一般的なため、比較は契約前に済ませておく必要があります。各社の資料を取り寄せて条件を見比べ、相談候補を2〜3社に絞ってから面談に進むと、納得感のある選択につながります。
Q. 事業承継のプロに依頼した後、別のプロにセカンドオピニオンを求めてもよいですか?
A. 事業承継の進め方や提示された条件に不安があれば、別の専門家にセカンドオピニオンを求めてよく、中小M&Aガイドラインもこれを許容する方向を示しています。ただし、仲介・FA契約には他の専門家への依頼を制限する専任条項や、契約終了後も一定期間は成功報酬が発生するテール条項が設けられている場合があります。
契約前に、専任の範囲やテール期間の長さ、セカンドオピニオンの可否を契約書で確認しておくと安心です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
Q. 地方の会社でも事業承継のプロに対応してもらえますか?
A. 地方の会社でも、事業承継のプロに対応してもらえます。全国の地方銀行・信用金庫・会計事務所と提携し、地方やニッチな業種の案件でも相手を探せる体制を持つM&A仲介会社があるほか、事業承継・引継ぎ支援センターは全都道府県に設置されています(全国48か所、東京都のみ2か所)。オンライン相談に対応する会社も増えているため、所在地にかかわらず相談先を選べます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html)
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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