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レガシーシステムとは?意味・2025年の崖と脱却の3つの手法を解説【チェックリスト付き】

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社内のDX会議や経営資料で「うちのレガシーシステムが足かせになっている」「2025年の崖に間に合うのか」といった言葉を耳にするものの、その中身を自分の言葉で説明できる自信がない。そんな情報システム・経営企画の担当者は少なくありません。

レガシーシステムは、単に「古いシステム」を指す言葉ではありません。何がどういう状態だと「レガシー」と呼ぶのか、放置すると何が起きるのか、どう脱却するのか。この線引きが曖昧なままだと、自社の基幹システムを刷新すべきかどうかの判断に結びつきません。

この記事では、レガシーシステムの定義・問題点・「2025年の崖」の数字・脱却の3つの手法・刷新の進め方を整理します。自社が当てはまるかを確認できるチェックリストと、刷新先となるクラウドERPの選択肢まで、順番に解説します。

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レガシーシステムとは

レガシーシステムとは、技術の老朽化やシステムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化といった問題を抱え、その結果として経営・事業戦略上の足かせや高コスト構造の原因になっているシステムを指します。経済産業省の「DXレポート」も、この2つの側面からレガシーシステムを定義しています。

レガシーシステム問題の本質は「自社システムの中身がブラックボックスになってしまったこと」にある。レガシー化とは「ユーザ企業において、自社システムの中身が不可視になり、自分の手で修正できない状況に陥ったこと」と言うことができる。

出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(2018年)

技術的観点からの定義

技術面では、サポートの終了した古いハードウェア・ソフトウェアを使い続けている、度重なる改修でプログラムが肥大化・複雑化している、設計書やドキュメントが残っておらず中身が不可視になっている、といった状態が該当します。開発言語ではCOBOL(事務処理向けの歴史あるプログラミング言語)や、メインフレーム(大型の汎用コンピュータ)上で動く基幹システムが典型例として挙げられます。

経営的観点からの定義

経済産業省が強調しているのは、レガシー化は技術だけの問題ではなく、マネジメントの問題でもあるという点です。古い技術を使っているからといって必ずレガシー問題が起きるわけではなく、逆に最新のクラウド技術を使っていても、時間の経過とともにレガシー化し得ます。

中身が不可視で、自社の手で改修できず、変化に対応できない。この状態が経営・事業の足かせになっているかどうかが、レガシーかどうかの本質的な線引きになります。

出典・参考資料(1件)

レガシーシステムの具体例と自社が当てはまるかのチェックリスト

ここからは、どういうシステムがレガシーに当たるのか、具体例と自己診断の観点で確認します。「古い」かどうかではなく、中身が不可視で変化に対応できないかどうかで見ていきます。

レガシーシステムの典型例

典型例としては、メインフレームやオフコン(オフィスコンピュータ。中小規模の事務処理向け専用機)上で動く基幹システム、COBOLなど保守人材が減りつつある言語で書かれた業務システム、長年にわたって改修を重ね当初の設計から離れてしまったオンプレミス(自社で保有・運用する形態)の販売・会計システムなどがあります。

これらは安定して動いている一方で、改修のたびに属人的な対応が必要になり、変化に追従しにくくなっています。

自己診断チェックリスト

次の項目のうち、いくつか(目安として3つ以上)当てはまる場合、そのシステムはレガシー化が進んでいる可能性があり、刷新を検討する時期といえます。技術面と経営面の両方から確認してみてください。

  • OSやミドルウェア、ハードウェアがサポート終了(EOL)を迎えている、または近く迎える(セキュリティ更新が受けられなくなる兆候)
  • 設計書・仕様書が最新化されておらず、中身を把握している担当者が限られている(ブラックボックス化・属人化の兆候)
  • 改修や機能追加のたびに想定以上の工数・費用がかかる(肥大化・複雑化の兆候)
  • 他システムやクラウドサービスとのデータ連携が難しく、データが各システムに分断されている(連携困難の兆候)
  • 保守・運用のコストが年々増え、IT予算の多くが維持管理に割かれている(高コスト構造の兆候)
  • 新しい業務要件や法改正への対応に時間がかかり、事業のスピードに追いつけない(経営の足かせの兆候)

レガシーシステムの問題点・弊害

ここからは、先ほどのチェックリストで挙げた兆候を放置すると具体的にどのような弊害が生じるのかを、技術面・経営面の両方から整理します。経済産業省が引用した調査では、2018年時点で約8割の企業がレガシーシステムを抱え、約7割が自社のデジタル化の足かせになっていると回答しており、自社だけの問題ではありません(最新の2025年時点の保有率は後述します)。

出典・参考資料(1件)

保守・運用コストの増大

改修を重ねたシステムは構造が複雑になり、少しの変更にも調査と検証の手間がかかります。保守できる人材も限られるため、維持管理にIT予算の多くが取られ、新しい投資に回せる余力が削られていきます。

ブラックボックス化・属人化

ドキュメントが整備されないまま改修が続くと、システムの中身を把握しているのが特定の担当者だけ、という状態になります。その担当者が退職・異動すると、誰も正確に修正できなくなり、障害対応や機能追加のリスクが大きく高まります。

他システムとの連携が困難になる

古い設計のシステムは、APIなどの標準的な連携手段を備えていないことが多く、クラウドサービスや新しい業務システムとデータをやり取りしにくくなります。結果として、データが各システムに分断され、全社横断での分析や経営判断に使えないという問題につながります。

セキュリティ・法令対応が難しくなる

サポートが終了したソフトウェアは、脆弱性が見つかっても修正プログラムが提供されず、セキュリティリスクが高まります。また、制度改正や新しい法令への対応にも柔軟に追従しにくく、コンプライアンス面での負担が増していきます。

サポート終了による稼働リスク

ハードウェア・ソフトウェアのサポートが終了すると、障害が起きても修理やパッチ提供を受けられず、事業の根幹を支える基幹システムが止まるリスクを抱えることになります。この「いつまで安全に使えるか」という時間軸の問題が、次に説明する「2025年の崖」につながります。

「2025年の崖」と2030年問題を数字で把握する

ここからは、レガシーシステムを放置した場合のリスクを、社内の会議や説明で使える出所のある数字で整理します。いずれも経済産業省などが公表した試算で、条件つきの「最大値」である点も含めて正確に押さえておくことが重要です。

「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年の「DXレポート」で示した警告です。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残ったままだと、IT人材の引退やサポート終了などのリスクが重なり、2025年以降は最大で年間12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるとされました。

複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025 年までに予想される IT 人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025 年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある

出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(2018年)

これはあくまで「最大」「年間」「2025年以降」という条件つきの試算であり、必ず12兆円の損失が出ると決まっているわけではありません。ただし、レガシーシステムが社会全体にそれだけの影響を及ぼし得るという経済産業省の問題意識を示す数字として、刷新を検討する根拠になります。

この問題は現在も続いています。経済産業省が2025年にまとめた「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」によると、ユーザー企業の61%がいまだレガシーシステムを保有しており、大企業ではその割合が74%に上ります。2018年時点の約8割からは下がったものの、依然として多くの企業がレガシーシステムを抱えたままである状況がうかがえます。

あわせて深刻なのが、IT人材の不足です。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」では、IT人材の需給ギャップは2030年に最大で約79万人に拡大する可能性があると試算されています。IT人材不足が深刻化するこの見通しは「2030年問題」とも呼ばれます。

これは高位のシナリオにもとづく数字ですが、レガシーシステムを保守できる人材の確保が年々難しくなることを意味しており、「使い続ける」こと自体のリスクが高まっていきます。

出典・参考資料(3件)

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なぜレガシーシステムの脱却が進まないのか

放置のリスクがわかっていても、脱却が進まない企業は少なくありません。ここからは、刷新が後回しになりやすい代表的な要因を整理します。自社に当てはまる障壁を言語化しておくと、社内での合意形成の準備になります。

IT人材の不足

刷新を主導できるIT人材が社内に不足していることが、最も大きな障壁の一つです。前述のとおり需給ギャップは2030年に最大約79万人に拡大すると試算されており、レガシーシステムの中身を理解し、移行を設計できる人材の確保は今後さらに難しくなります。

移行コストの高さと投資判断の難しさ

基幹システムの刷新には相応の費用と期間がかかり、しかも「売上が増える」といった直接的な効果が見えにくいため、投資判断が後回しになりがちです。現行システムが問題なく動いているように見えるほど、刷新の優先度は下がりやすくなります。

経営層のデジタルリテラシー・危機感の不足

経済産業省も、システムのブラックボックス化を現場が認識していても、改修プロジェクトは経営陣の理解を得にくく開始しにくいと指摘しています。レガシー化が技術だけでなく経営の問題であることが共有されていないと、刷新は動き出しません。

出典・参考資料(1件)

機能の要不要が不明・ドキュメントの不在

長年使われたシステムは、どの機能が今も必要でどれが使われていないのかが分からなくなっていることがあります。設計書も残っていないと、移行対象の棚卸しから始めなければならず、刷新の入口でつまずきやすくなります。

レガシーシステム脱却の3つの手法を比較

ここからは、レガシーシステムから脱却するための代表的な3つの手法を、何をどこまで変えるのか・どんなときに選ぶのかという観点で比較します。言葉が似ていて混同しやすいため、それぞれの違いを整理しておきます。

ただし、この3つは排他的な分類ではなく、「何をどこまで変えるか」の度合いや、どの切り口で捉えるかの違いで、実際には重なり合う部分もあります。モダナイゼーションは刷新手法の総称で、クラウド移行も手段としてマイグレーションやモダナイゼーションと重なることがあります。まずは全体像を表で押さえてから、個別に見ていきます。

手法何をどこまで変えるか向いているケース
モダナイゼーション既存システムの資産を活かしながら、基盤・構造・アプリケーションを新しい環境へ刷新する。下位の手法としてリホスト・リファクタ・リビルドがある既存の業務ロジックを一定程度活かしつつ、段階的に新しい基盤へ移行したい
マイグレーションプログラムやデータを、新しいOS・ハードウェア・言語などへ移し替える(機能は基本的に維持)動作環境の老朽化やサポート終了が主な課題で、まず環境を新しくしたい
クラウド移行オンプレミスで動いていたシステムを、クラウド基盤(IaaS/PaaSやSaaS型のERPなど)へ移す運用負荷の軽減・拡張性・他システム連携を重視し、インフラの保有をやめたい

※手法の区分は業界で一般的に用いられる整理にもとづき、本記事で平易に分類したものです。

3つの手法の関係を整理すると、次のようになります。モダナイゼーションは刷新手法の総称で、その下位にリホスト・リファクタ・リビルドが含まれます。

レガシーシステム脱却の3つの手法の関係図。モダナイゼーションは刷新手法の総称で、下位にリホスト・リファクタ・リビルドの3手法を含む。これと並ぶ手法としてマイグレーションとクラウド移行があり、3つは排他的でなく重なり合う部分もある。

モダナイゼーション

モダナイゼーションは、既存システムの資産を活かしながら新しい環境へと近代化する手法の総称です。経済産業省・デジタル庁・情報処理推進機構(IPA)が事務局を務める「レガシーシステムモダン化委員会」という名称にも表れているとおり、モダナイゼーション(モダン化)は政府の施策でも用いられる考え方です。どこまで手を入れるかによって、次の3つの下位手法に分かれます。

リホスト

アプリケーションの中身をほとんど変えず、稼働する基盤(ハードウェアやOS)だけを新しい環境へ載せ替える手法です。短期間・低コストで移行しやすい一方、経済産業省は、単純なリホストだけでは一時的にコストは下がってもブラックボックス化は解消されず、レガシー化がかえって深刻になると指摘しています。

単純なリホストや、プログラムのコンバージョンだけでは、一時的にはコストは下がっても、本質的には「ブラックボックス化」は解消されていないため、レガシー化は深刻になってしまう。

出典:経済産業省「DXレポート」(2018年)

リファクタ

外から見た機能は保ちながら、内部のプログラム構造を整理・最適化する手法です。複雑化したソースコードを見直すことで、保守性を高め、その後の機能追加やクラウド活用をしやすくします。中身に手を入れる分、リホストより工数はかかります。

リビルド

既存システムを作り直し、新しい設計・技術で再構築する手法です。業務要件を見直して刷新できるため効果は大きい一方、費用・期間ともに最も大きくなります。パッケージやクラウドERPへの置き換えも、この考え方に含まれます。

マイグレーション

マイグレーションは、プログラムやデータを新しいOS・ハードウェア・プログラミング言語などへ移し替える手法です。機能そのものは基本的に維持したうえで、動作環境を新しくすることが主眼になります。サポート終了を控えた環境の更新など、まず足元のリスクを下げたい場合に選ばれます。

クラウド移行

クラウド移行は、オンプレミスで運用していたシステムをクラウド基盤へ移す手法です。自社でサーバーを保有・運用する負担を減らし、拡張性や他システムとの連携のしやすさを得られます。個別に移行するのではなく、販売・会計・在庫などを一つにまとめたSaaS型のクラウドERPへ置き換える方法もあります。

どの手法を選ぶかは、現行システムの状態と、刷新で何を実現したいかによって変わります。コストの安さだけでリホストを選ぶと、ブラックボックス化が解消されないまま再びレガシー化する点には注意が必要です。

レガシーシステム刷新の進め方(最初の一歩)

ここからは、実際に刷新を進める際の進め方を、最初の一歩から整理します。いきなり全体を作り替えるのではなく、現状把握から段階的に進めるのが定石です。

レガシーシステム刷新の進め方を3ステップで示した図解。STEP1は現状システムの可視化(機能・業務・データの棚卸し)、STEP2は段階的な移行(優先順位をつけスモールスタート)、STEP3は経営層と現場が協働する推進体制づくり。

現状システムの可視化と課題の明確化

最初に取り組むのは、現行システムの可視化です。これは、先に挙げた「機能の要不要が分からない」という障壁を解く最初の一歩でもあります。どの機能が使われていて、どの業務とつながっているのか、どのデータが重要なのかを棚卸しし、ブラックボックス化した中身を明らかにします。経済産業省も、単に環境を移すだけではブラックボックス化は解消されないと指摘しており、可視化を伴わせることが刷新の出発点になります。

段階的な移行・ロードマップの策定(スモールスタート)

可視化で全体像をつかんだら、優先順位をつけて段階的に移行するロードマップを描きます。影響範囲の小さい業務や、効果の見えやすい領域から着手するスモールスタートにすることで、リスクとコストを抑えながら、社内に成功体験を積み上げられます。

こうした段階的な進め方は、導入支援の現場でも実際にとられています。クラウドERP「Odoo」の導入支援を手がける株式会社マルウェブは、スモールスタートの具体的な進め方を次のように説明しています。

株式会社マルウェブ
若林氏
独自インタビューより

たとえば「まずは販売と在庫と会計だけでスタートしましょう」という形で始めて、使い方に慣れてきたら会計やCRMを段階的に追加していく、といった進め方をご提案することもあります。カスタマイズがあまり必要でなければスモールスタートをお勧めしますし、業務が特殊な場合はカスタマイズに時間はかかりますが、そこはしっかり作り込んでいきましょうとご提案しています。

経営層・現場が協働する推進体制づくり

レガシー化が経営の問題でもある以上、刷新はIT部門だけでは完結しません。経営層が投資判断と優先順位づけに関与し、業務を担う現場が要件定義に加わる推進体制を整えることで、刷新を「システムの入れ替え」ではなく「業務の見直し」として進められます。社内にリソースが足りない場合は、導入支援を手がける外部パートナーの活用も選択肢になります。

レガシーシステム刷新にかかる費用の考え方

刷新にかかる費用は、対象システムの規模・現状の複雑さ・選ぶ手法によって大きく変わるため、一律の相場を示すことは困難です。ここでは、費用の内訳と、金額をどう捉えるかという考え方を整理します。

刷新費用は、大きく次の項目で構成されます。

  • ライセンス・利用料:クラウドERPなどツールの利用にかかる費用。クラウド型は月額などで継続的に発生する
  • 初期構築・カスタマイズ費:要件定義や、自社の業務に合わせた設定・開発にかかる費用
  • データ移行費:既存システムのデータを新システムへ移すための費用
  • 研修・保守運用費:導入後の操作研修や、運用を続けるための保守にかかる費用

金額は規模や手法で大きく変わります。たとえば中小企業向けのオープンソースERP「Odoo」の導入支援では、ライセンス費・導入やカスタマイズの費用・データ移行費を合わせた導入費用の目安として、規模に応じて数十万円から数百万円程度という水準が示されています。

出典・参考資料(1件)

金額の大小と同じくらい大切なのが、刷新費用を「現行システムを使い続けるコスト」と比べて判断する視点です。レガシーシステムを維持する保守・運用コストは年々増え、障害やサポート終了のリスク、人材確保の難しさも抱えます。経済産業省が示した年間最大12兆円という経済損失の試算も、放置のコストを示す材料として捉えられます。

費用は初期の導入だけでなく、移行後の運用・拡張まで含めた総額で比較することが重要です。初期費用の安さだけで手法を選ぶと、前述のように再びレガシー化して結果的に割高になることもあります。具体的な費用は、刷新先の製品や導入支援会社によって異なるため、候補となるサービスの資料で確認するのが確実です。

刷新先としてのクラウドERPという選択肢

レガシーシステムの刷新先の有力な選択肢が、クラウドERP(統合基幹業務システム)です。販売・購買・在庫・会計・人事といった基幹業務を一つのクラウド基盤にまとめることで、レガシーシステムの課題だった「データの分断」や「他システムとの連携困難」を根本から解消しやすくなります。

このデータの分断の解消は、そもそもクラウドERPが生まれた背景そのものでもあります。クラウドERP「Oracle NetSuite」を提供する日本オラクル株式会社は、開発の原点を次のように説明しています。

福宮氏
日本オラクル株式会社 理事 NetSuite事業統括 営業統括本部長
福宮氏
独自インタビューより

もともとは、創業者のEvan Goldberg(エバン・ゴールドバーグ)が自身の経営経験の中で感じた課題が出発点になっています。会計は会計のシステム、在庫は在庫のシステム、というように業務ごとにシステムが分かれていると、データが分断されてしまって、経営者が全体を見ようとしてもなかなか正確な数字がつかめません。実際に彼自身がその苦労をしていました。そこで、あらゆる業務を一つの基盤で一元管理して、経営者がどこからでもリアルタイムにデータを確認できるようにしたい、という発想からクラウドERPという形にたどり着きました。

クラウドERPは、自社でサーバーを保有する必要がなく、アップデートもベンダー側で提供されるため、サポート終了のたびに移行を迫られるという従来の負担も軽くなります。製品ごとに対応する企業規模・業種・機能の範囲は異なり、自社で導入するだけでなく、要件定義から移行までを支援する導入支援サービスを活用する選択肢もあります。

ここでは、刷新先の具体的なイメージをつかむために、代表的なクラウドERPと導入支援サービスを紹介します。まだ言葉の意味や自社の状況を整理している段階であれば、ここから先は刷新を具体的に検討するときの参考として読み進めてください。製品ごとの機能・料金を横断的に比較したい場合は、ERPの比較記事もあわせて参考にしてください。

刷新先として検討したいクラウドERP・導入支援サービス

ここからは、レガシーシステムの刷新先として検討しやすいクラウドERPと導入支援サービスを紹介します。まずは下記の比較表で2つのサービスの位置づけを確認し、続けて個別に解説します。

← 横にスクロールできます →
サービス名Oracle NetSuiteOdoo導入・開発・業務統合支援
提供形態統合型クラウドERP(SaaS製品)OSS ERP「Odoo」の導入支援サービス
(クラウド/オンプレミス/ハイブリッドを選択可)
主な対象規模中堅〜大企業
海外展開・グループ経営企業
中小企業が中心
特徴会計・販売・購買・在庫・CRMを単一基盤に統合。200か国以上・44,000社以上に導入され、27以上の言語・190以上の通貨に対応し海外拠点も一元管理80種類以上のアプリから必要なものだけ選んで導入。要件定義から運用まで一貫支援し、日本・ベトナムのハイブリッド体制でコストを抑えやすく、スモールスタートに向く
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る

1. Oracle NetSuite(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuiteのウェブサイト

Oracle NetSuiteは、財務会計から販売・購買・在庫管理、営業支援(SFA)、CRMまでを一つにまとめた統合型のクラウドERPです。

もともと、業務ごとにシステムが分かれてデータが分断される課題を解決するために生まれた製品で、あらゆる業務を一つの基盤で一元管理し、経営者がリアルタイムに数字を把握できる設計になっています。25年以上にわたり提供され、現在は200か国以上・44,000社以上の企業に導入されています。

27以上の言語と190以上の通貨に対応しているため、海外拠点を含めて一つの基盤で扱える点も特徴です。職務分掌や監査証跡といった内部統制の仕組みも業務システムの中に組み込まれており、オンプレミスの基幹システムを刷新し、データが分断された状態から一元管理へ移行したい企業に向いています。

2. Odoo導入・開発・業務統合支援(株式会社マルウェブ)

株式会社マルウェブのOdoo導入・開発・業務統合支援サービスのウェブサイト

株式会社マルウェブのOdoo導入・開発・業務統合支援は、ベルギー発のオープンソースERP「Odoo」の導入を、要件定義から運用まで一貫して支援するサービスです。Odooは販売・会計・在庫・CRMからWebサイト制作まで80種類以上のアプリが用意されており、自社で使うものだけを選んで導入できるため、スモールスタートでの刷新に向いています。

マルウェブは、まず要件定義とフィット&ギャップ分析で現状の業務フローを可視化してから導入を進め、開発・外部システム連携・データ移行・研修・運用後の保守までを一貫してサポートします。

Odoo社のラーニングパートナーとして契約しており、日本とベトナムのハイブリッド体制でコストを抑えやすい点も特徴です。コスト面から大規模ERPの導入が難しい中小企業が、分断されたシステムを段階的に統合したい場合の選択肢になります。

まとめ

レガシーシステムとは、単に古いシステムのことではなく、中身がブラックボックス化して自社で改修できず、経営・事業の足かせになっているシステムを指します。放置すれば、保守コストの増大やサポート終了のリスク、人材不足が重なり、経済産業省は「2025年の崖」として年間最大12兆円の経済損失の可能性を警告しています。

脱却には、モダナイゼーション・マイグレーション・クラウド移行といった手法があり、現状システムの可視化から段階的に進めるのが定石です。刷新先としては、データの分断を解消できるクラウドERPが有力な選択肢になります。まずは自社のシステムがレガシー化していないかを確認し、社内で説明できる材料をそろえることから始めてみてください。

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よくあるご質問(FAQ)

Q. レガシーシステムとは何ですか?

A. レガシーシステムとは、技術の老朽化やブラックボックス化によって自社で改修できず、経営・事業の足かせになっているシステムを指します。単に「古いシステム」という意味ではなく、中身が不可視で変化に対応できない状態かどうかが本質的な線引きです。経済産業省の「DXレポート」(2018年)も、技術面と経営面の2つの側面からレガシーシステムを定義しています。

Q. レガシーシステムは日本語で何といいますか?

A. レガシーシステムは、日本語で「旧型のシステム」や「遺産システム」と表現されます。「legacy(レガシー)」は英語で「遺産」を意味する言葉で、過去に構築され現在も使われ続けている、老朽化・複雑化が進んだシステムを指します。ただし実務では、単に古いだけでなく、中身がブラックボックス化して刷新しにくくなった状態を問題視する言葉として使われます。

Q. レガシーシステムが多い業界はどこですか?

A. レガシーシステムは、製造業・流通業・金融業や保険業など、基幹システムを長年使い続けてきた業界で特に多く見られます。安定稼働を重視するあまり、刷新が後回しにされやすいことが背景にあります。ただし特定業界に限った問題ではなく、経済産業省が2025年にまとめた調査では、ユーザー企業全体の61%が依然レガシーシステムを保有し、大企業ではその割合が74%に上るとされています。

Q. 「2025年の崖」とは何ですか?

A. 「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年の「DXレポート」で示した、レガシーシステムを放置した場合に2025年以降で最大年間12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じ得るという警告です。

複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残ったままだと、IT人材の引退やサポート終了などのリスクが重なるとされています。これは「最大」「年間」「2025年以降」という条件つきの試算ですが、刷新を検討する根拠としてよく引用されます。

Q. レガシーシステムの脱却にはどの手法を選べばよいですか?

A. レガシーシステムの脱却手法は、現行システムの状態と、刷新で何を実現したいかに応じて、モダナイゼーション・マイグレーション・クラウド移行から選びます。

動作環境の老朽化やサポート終了が主な課題ならマイグレーション、運用負荷の軽減や他システムとの連携を重視するならクラウド移行が向いています。注意したいのは、コストの安さだけで単純なリホスト(基盤だけの載せ替え)を選ぶと、ブラックボックス化が解消されないまま再びレガシー化しかねない点です。

Q. レガシーシステムの刷新にはどのくらいの費用がかかりますか?

A. レガシーシステムの刷新費用は、対象システムの規模・現状の複雑さ・選ぶ手法によって大きく変わるため、一律の相場を示すことは困難です。重要なのは、刷新費用を「現行システムを使い続ける保守・運用コストやリスク」と比べて判断することです。

初期費用の安さだけで手法を選ぶと移行後に再びレガシー化して割高になることもあるため、運用・拡張まで含めた総額で比較し、具体的な金額は候補となる製品や導入支援会社の資料で確認するのが確実です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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