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【専門家コラム】誹謗中傷・風評対策の業者にどこまで頼んでよいか|非弁行為と逆SEOの法的リスク、契約で確かめること

誹謗中傷・風評対策の 業者に どこまで頼んでよいかのサムネイル画像

口コミサイトや検索結果の悪評に悩むと、「削除申請の代行」「逆SEO」「サジェスト対策」「成果報酬」をうたう対策会社の提案が目に入ります。依頼する前に確かめたいのは、その業務が、弁護士でない者が報酬を得て法律事務を扱うことを禁じる弁護士法72条に違反する「非弁行為」にあたらないか、その手法が違法や規約違反で、依頼した自社に責任が返ってこないか、契約条件が妥当かの三点です。特定の業者を評価するのではなく、業者から提案を受けたときに自社で点検できるよう、確認点を整理します。

執筆者
高瀬亜富 弁護士

弁護士法人内田・鮫島法律事務所 パートナー弁護士

高瀬 亜富

弁護士、公認不正検査士(CFE)。専修大学法科大学院客員教授、デジタルハリウッド大学特任准教授。著作権、商標、不正競争防止法などの知的財産関連法務の他、システム開発紛争、生成AIに関する法律問題などのIT関連法務を幅広く扱う。
本コラムは執筆者の専門的知見に基づく寄稿です。
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1 弁護士法72条に触れるおそれがあることの境目

弁護士法72条は、弁護士や弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定、代理、和解その他の法律事務を取り扱うことを業とすることを禁じています。弁護士でない者がこれに違反する行為を「非弁行為」ということがあります。

裁判例としては、弁護士法72条違反を理由に削除代行業者に報酬の返還を命じたものがあります(東京地判平成29年2月20日平成28年(ワ)第299号)。事案は、医師が、論文捏造に関与したとする記事の削除を、「誹謗中傷クリーニング」を掲げる会社(弁護士法人ではありません)に依頼し、削除に成功した分の代金として計49万8750円を支払ったというものです。

会社が行ったのは、各サイトの通報フォームに、削除対象のURLと削除を求める理由を入力して、運営者に削除を依頼することでした。裁判所は、会社側の「通報フォームに入力しただけで、法律事務にあたらない」という主張を退け、弁護士法72条違反を認めました。

そのうえで、会社に代金49万8750円の返還を命じました。他方、依頼者が求めた慰謝料等1100万円は、依頼者が自ら依頼して契約を結んだことなどを理由に、認められませんでした。

この事案で問題となった入力代行等については、裁判例の数は多くはなく、当局の整理もありませんが、以下のように考えることができると思います。

  • プラットフォームの通報フォームへの入力代行:業者が、依頼者に代わってフォームに入力・送信するなら(申請が依頼者名義でも同じです)、上記の裁判例が「入力しただけ」という会社側の主張を退けていることからすると、72条に触れるおそれが高いと考えます。これに対し、依頼者自身が内容を決めてフォームに入力・送信し、業者は操作方法を説明するだけで、入力にも送信にも関与しないなら、リスクは低くなるでしょう。
  • 送信防止措置依頼書※1の作成・送付:作成は法的判断を伴う鑑定的な作業になりえます。業者名で送付すれば、代理に近づきます。
  • サイト運営者との交渉:違法性を主張し、削除や対応を求める交渉は、典型的な法律事務であり、弁護士法72条に違反するものと考えられます。
  • 「弁護士と連携」をうたった案件紹介:弁護士法27条は、弁護士が72条に違反する者から事件の周旋を受けたり、自己の名義を利用させたりすることを禁じ、弁護士職務基本規程にも、提携の禁止や紹介料の授受の禁止があります。業者が弁護士に案件を紹介し、対価を受け取る仕組みは、非弁提携にあたるおそれがあります。
※1
  • ※1 ここでの送信防止措置依頼書とは、ネット上の情報によって権利を侵害された者が、サイト運営者やプロバイダに対し、その情報の送信を防止する措置(削除など)を求める書面を想定しています(情報流通プラットフォーム対処法〔旧プロバイダ責任制限法〕の枠組みで用いられる)。通常、侵害された権利、侵害情報のURL、権利侵害にあたる理由などを記載する。

業者が非弁行為をしていた場合、契約は無効と判断される可能性があり、支払った報酬は不当利得として返還を求められる余地があります。上記の裁判例は、まさにその結論でした。ただし、返還を請求しても、業者が応じなかったり、資力が乏しかったりすることは珍しくありません。実際に払ってしまった後で争うより、契約前に確かめるほうが確実です。

一方、対策会社が適法にできることも少なくありません。投稿やサイトの監視(モニタリング)、検索結果の調査と報告、プラットフォームの規約に基づく本人名義の申請の支援、自社サイトでの正しい情報発信の支援、弁護士への相談先の案内などです。

依頼の是非や依頼先を決める際には、対策会社のサービスが弁護士法72条に違反しないか確認することをお勧めします。

2 逆SEO・サジェスト対策を頼んだ会社に返ってくるリスク

風評対策の手法には、自社サイトでの情報発信や削除請求などもありますが、ここでは逆SEO・サジェスト対策に関するリスクを取り上げます。これらは検索結果や検索候補を人為的に操作するもので、手法が不透明なまま依頼されやすく、違法や規約違反になると、責任が依頼した自社に返ってくるおそれが特に大きいからです。

逆SEOとは、悪い評判が載ったページを検索結果の下のほうに押しやるために、別のページを大量に作ったり、リンクを集めたりして、検索順位に働きかける手法です。

サジェスト対策は、検索窓に出る「候補の言葉」を操作しようとするものです。具体的には、「社名+良い言葉」を多数の人やプログラムに繰り返し検索させ、検索回数を水増しして、良い候補を表示させ、悪い言葉の候補を押し出します。その言葉を含む記事やSNS投稿を大量に作り、よく使われている言葉に見せかける方法もあります。どちらも、やり方によって「何に違反するのか」と「依頼した会社に何が返ってくるのか」が大きく変わります。以下、手法ごとにリスクなどを整理した表を掲載しますので、参考にしてください。

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手法触れうる法律・ルール依頼した会社に返ってくること
自社のサイトやSNSで、正しい情報を発信する通常は問題ありません基本的に安全です。ただし、中身の薄いページを大量に作ると、Googleのスパムポリシー(大規模なコンテンツの不正使用)違反とされ、順位が下がることがあります。※2
お金を払って、他のサイトから自社サイトへのリンクを大量に貼ってもらう。他のサイトに、自社を宣伝する記事を大量に投稿するGoogleのスパムポリシー(リンクスパムなど)自社サイトの順位が下がったり、検索結果から外されたりします。悪評の対策のつもりが、自社サイト全体の評価を落とします。
投稿者や、悪評を載せたサイトをおとしめる記事を作る名誉毀損(民法709条)。競合相手なら、不正競争防止法の信用毀損(2条1項21号)損害賠償を求められるおそれがあります。業者が書いた記事でも、手法を知って依頼した自社が責任を問われることがあります。
検索回数を水増しして、検索候補を操作する(サジェスト操作)。多数の人に検索させる方式と、プログラムで自動検索させる方式がある検索エンジンの利用規約違反(特に自動検索)。自動化した方式では、偽計業務妨害(刑法233条)も問題になりうる規約違反として対策を受けます。悪質な場合は、刑事責任を問われるおそれもあります。
広告と分からない形で、口コミや記事を投稿する景品表示法5条3号(不当表示の禁止)。広告であることを隠した表示は、いわゆるステマ表示として禁止されています※3行政から措置命令(景品表示法7条1項)を受けるおそれがあります。
※2 ※3

この表から、押さえておきたい点が3つあります。

  • 業者がやったことでも、自社が責任を負うことがあります。「業者に任せただけ」という説明は通りにくく、手法を知って依頼していれば、業者と一緒に損害賠償責任を負う(共同不法行為、民法719条)可能性があります。
  • 本当のことを書いても、名誉毀損になることがあります。名誉毀損は、内容が真実であっても、公益を図る目的などの要件を満たさなければ違法性が否定されません。
  • 法律違反でなくても、検索エンジンの規約違反に対する制裁(順位の低下や検索結果からの除外)を受けることがあります。これは、業者ではなく、リンクや記事の対象となった自社のサイトに向けられます。順位が下がれば、自社の集客に直接響きます。

3 契約前に確かめるべき成果報酬・解約の条件

対策会社の料金は成果報酬型であることが多く、何をもって成果とするかをめぐる紛争が起きやすいため、契約条件を取り上げます。成果報酬型の契約では、「成果」の定義が最も重要です。次の点を、契約書か見積書で確認します。

  • 成果の定義:「削除」「非表示」「検索順位の低下」のどれか。順位の場合は、どのキーワードで、どの端末や地域、ログイン状態で測るのか、何位以下になれば成果とするのかを決めます。
  • 継続日数:何日続けば成果とみなすのか。一時的に表示されなくなっただけで成果とする条項は、紛争になりがちです。
  • 再表示の扱い:成果の後に再び表示されたとき、無償で再対応するのか、返金するのか、保証期間は何日か。
  • 固定費:成果報酬のほかに、月額の固定費や着手金がないか。成果が出なかったときに戻る費用と、戻らない費用の区分。
  • 最低契約期間と中途解約:6か月や12か月の縛り、解約時に残期間の報酬を全額請求する条項の有無、自動更新の条件。業務が準委任契約と評価されれば、民法651条により、いつでも解除できるのが原則ですが、最低契約期間や違約金の特約で排除されていることが多くなっています。
  • 手法と再委託:手法の開示義務、違法な手法を用いないという表明保証、再委託先の管理。

事業者どうしの契約では、消費者契約法も、特定商取引法のクーリング・オフも、原則として使えません。消費者契約法は、事業として契約する者を「消費者」に含めません。特定商取引法も、営業のために締結する取引を適用除外としています(26条1項1号)。よって、契約書に解約に関する条項がない限り、一度締結してしまった契約を解約することは容易ではないと考えるべきです。

そのため、紛争化しやすい条項は契約前に確認・交渉しておく必要があります。紛争化しやすい条項の例としては、上記のような「成果」に関する定め、返金不可の定め、解約時の高額な違約金の定め、遠方の裁判所を管轄とする合意などがあります。契約を締結する前に、成果が出なかった場合に支払済みの着手金や月額費用が戻るのか、解約に関する規定はあるか(解約条件はどうなっているか)などを確認することをお勧めします。

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