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IoT機器のセキュリティ事故・被害事例まとめ|乗っ取り・踏み台化の原因と対策

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業務で使うネットワークカメラやルーター、複合機といったIoT機器を狙った攻撃による被害が、海外の大規模攻撃だけでなく、国内の病院・自治体・学校でも現実に起きています。多くは特別な標的型攻撃ではなく、初期パスワードの放置やソフトの更新漏れといった、どの企業にもありがちな穴から始まっています。

本記事では、実際に起きたIoT機器のセキュリティ事故・被害事例を、発生年・対象機器・被害の規模・原因とともに整理し、なぜ狙われるのか、自社でどう防げばよいかまでを解説します。

万一、IoT機器を入り口に個人データが漏えいした場合の、個人情報保護委員会への報告義務の流れも取り上げます。自社のカメラやルーター、複合機が同じリスクを抱えていないかを点検する材料としてご活用ください。

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実際に起きたIoT機器のセキュリティ事故・被害事例

はじめに、公的機関が公表している具体的な事故・被害事例を一覧で確認します。発生年・対象となった機器や業種・何が起きたか・被害の規模・原因を並べると、どの事例も身近な機器と基本的な原因から始まっていることが分かります。

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事例国交省 河川監視カメラへの不正アクセス小学校・保育所のネットワークカメラへのマルウェア感染大阪急性期・総合医療センターのランサム被害家庭用ルーターの踏み台悪用つるぎ町立半田病院のランサム被害約25万台のルーターによる大規模DDoS研究機関への無許可機器経由の侵入DNSサービスへの大規模DDoSトルコの石油パイプライン爆発
発生年2023年2023年2022年2022年2021年2021年2018年2016年2008年
対象機器・業種簡易型河川監視カメラ(国の管理インフラ)教育・保育施設のネットワークカメラ医療機関のネットワーク機器個人宅の家庭用ルーター医療機関のネットワーク機器ルーター(海外中心)米国の研究機関のネットワークDNSサービス事業者(海外)重要インフラ(監視カメラ)
何が起きたか不正アクセスを受け、機器で大量の通信が発生したマルウェアに感染し、第三者が映像を閲覧できる状態になっていた(NICTが観測)ランサムウェアに感染し、診療業務に支障が生じた企業への攻撃の踏み台として悪用されたとみられるランサムウェアに感染し、通常の医療業務が継続できなくなった乗っ取られたルーターを踏み台に大規模なDDoS攻撃が行われた無許可で接続された小型機器を踏み台に内部へ侵入され、情報が窃取されたマルウェアに感染したIoT機器による大規模DDoSでDNSサービスが停止した監視カメラの通信ソフトの脆弱性を突かれて侵入された
規模・影響337台を運用停止し、全機器を交換複数の施設で確認システム再構築に約2カ月警視庁が捜査する事案に発展通常診療の再開に2カ月以上約25万台のルーター約10カ月間気づかれなかった感染したIoT機器 約10万台パイプラインの爆発に至ったとされる
原因通信ポートの開放・パスワード設定の不備推測されやすいID・パスワードなどの設定不備感染経路はVPN機器の可能性が高いとされる手口の詳細は非公表感染経路はVPN機器の可能性が高いとされる手口の詳細は非公表管理外の機器が無許可で接続されていたデフォルトのID・パスワードのまま使用機器の通信ソフトの脆弱性

※上記は公的機関の公表資料にもとづく事例です。各事例の詳細は下記の出典を参照してください。

出典・参考資料(3件)

国内で起きたルーター・ネットワークカメラの乗っ取り事例

国内では、総務省・NICT・ICT-ISACが運営するNOTICEが、ルーターとネットワークカメラの乗っ取り事例を公表しています。身近な業種・機関で、現実に業務が止まる被害が起きています。

医療機関では、2021年10月に徳島県のつるぎ町立半田病院がランサムウェアに感染し、通常の医療業務が継続できない状況に陥りました。通常診療の再開には2カ月以上を要しています。約1年後の2022年10月には、大阪急性期・総合医療センターも同様の被害を受け、システムの再構築に約2カ月を要しました。いずれも感染経路はVPN(仮想私設網)機器の可能性が高いとされています。

医療機関の被害は、業務が止まるだけにとどまりません。電子カルテや検査・治療に使う機器が使えなくなれば、診療の遅れが患者の安全に直接かかわります。半田病院ではランサムウェアで電子カルテなどが暗号化され、新規患者の受け入れを一時的に停止しました。

VPN機器やネットワーク機器も、インターネットにつながる機器としてIoTセキュリティの対象に含まれます。カメラやルーターだけでなく、こうした機器の設定やファームウェアの管理も同じ考え方で見直す必要があります。

自治体が管理するインフラでも被害が出ています。2023年1月、国土交通省所管の河川情報提供システムの簡易型河川監視カメラで大量の通信が発生しました。これを受けて337台の機器の運用を停止し、全機器の交換・通信ポートの閉塞・パスワードの再設定という対策が行われています。

学校でも、小学校・保育所などのネットワークカメラがマルウェアに感染し、第三者が映像を閲覧できる状態になっていたことがNICTの観測で判明しています。

家庭用の機器も無関係ではありません。2022年には、都内の個人宅の家庭用ルーターが、企業への攻撃の踏み台として悪用されたとみられ、警視庁が捜査する事案が起きています。自社のルーターが知らないうちに他社への攻撃に使われれば、加害者側として扱われるおそれもあります。

出典・参考資料(2件)

海外・大規模な事例

海外では、IoT機器を大量に乗っ取って大規模な攻撃に悪用する事例が報告されています。IPAの教育資料によると、2016年にはDNSサービスを提供する企業が大規模なDDoS(分散型サービス妨害)攻撃を受けました。

このときは、デフォルトのユーザー・パスワードのまま使われていたIoT機器約10万台がマルウェアに感染しました。大量のデータを送信させられた結果、DNSサービスが停止しています。このマルウェアは「Mirai」と呼ばれています。

Miraiは、インターネット上の機器を次々に探しては工場出荷時のままのID・パスワードを自動で試して乗っ取り、感染した機器を一つの「ボットネット(乗っ取られた機器の集団)」にまとめます。そのうえで多数の機器にいっせいに通信を出させることで、1台ずつでは不可能な規模の攻撃を成立させる仕組みです。

2016年にはMiraiに感染した機器による攻撃が相次ぎました。同年9月には、セキュリティ情報サイトが当時最大級となる毎秒約620ギガビットの通信を浴びて停止しています。

侵入の入り口は、意外な機器であることもあります。2018年には、米国の研究機関で、無許可で接続された小型機器を踏み台に内部ネットワークへ侵入され、約10カ月間気づかれないまま情報が窃取されました。さかのぼって2008年には、トルコの石油パイプラインで、監視カメラの通信ソフトの脆弱性を突かれて侵入される事件も起きています。

出典・参考資料(1件)

被害の規模を数字で見る

個別の事例だけでなく、IoT機器を狙った攻撃がどれだけ増えているかは統計にも表れています。総務省の『令和7年版 情報通信白書』によると、NICTが運用する大規模サイバー攻撃観測網(NICTER)が2024年に観測したサイバー攻撃関連通信は約6,862億パケットに上りました。これは2015年(約632億パケット)と比べて10.86倍の増加です。

そのうちIoT機器を狙った通信が最も多く、2023年と同様にサイバー攻撃関連通信全体の約3割を占めています。カメラやルーターといった身近な機器が、2024年の時点でも日常的に攻撃の対象になっていることを示す数字です。

出典・参考資料(1件)

なぜIoT機器は狙われるのか(事故の原因)

これらの事例を見ると、高度な未知の手口よりも、機器の初期設定や運用のすきを突かれているケースが目立ちます。IoT機器が攻撃の標的になりやすい背景には、主に次の5つの原因があります。

  • 出荷時の初期ID・パスワードのまま使っている(カメラ・ルーター・複合機に多い。大手メーカーの初期パスワードはインターネットで検索すればすぐに分かってしまう)
  • ファームウェア(機器を制御するソフト)が更新されず、公表済みの脆弱性が残ったままになっている
  • 管理画面や機器がインターネットに直接つながっている、または不要な通信ポートが開いたままになっている
  • サポートが終了した古い機器を、更新されないまま使い続けている
  • そもそもIoT機器が資産台帳の管理対象から漏れ、誰が・どこに・どんな状態で設置したかを把握できていない

実際に、河川監視カメラの事例では通信ポートの開放とパスワード設定の不備が、海外の大規模なDDoS攻撃ではデフォルトID・パスワードの放置が原因として挙がっています。事例の多くは、この5つのいずれかに当てはまります。

「社内の機器は気づかれていないから大丈夫」とは限りません。インターネットにつながった機器を検索できる「Shodan(ショーダン)」のようなサービスを使えば、第三者でも公開状態の機器を一覧で見つけられます。自社の機器がインターネットから見える状態になっていないかは、攻撃側も同じ方法で探せると考えて点検しておく必要があります。

こうした点は、総務省・経済産業省などがまとめた「IoTセキュリティガイドライン ver1.0」でも、利用者が気をつけるべき事項として示されています。ただし、同ガイドラインは関係者が取り組むべき対策の認識を促す指針であり、一律に具体的な対策の実施を義務づけるものではないとされています。

出典・参考資料(1件)

これらの原因は、公表された事例だけにとどまりません。企業のネットワーク内部を実際に診断している現場でも、同じ問題が繰り返し見つかっています。リモートで脆弱性診断を手がける株式会社SYNCHROの北口氏は、診断でよく見つかる問題について次のように話します。

北口氏
株式会社SYNCHRO 取締役CMO
北口氏
独自インタビューより

たとえば、先ほど申し上げた複合機、コピー機です。工場出荷時の初期パスワードのまま使われているお客様がほとんどでして、大手メーカーの初期IDパスワードはインターネットで検索すればすぐ出てきてしまいます。そのままにしておくと、万が一ウイルスが内部に入り込んだ際に、簡単に遠隔操作で乗っ取られてしまうリスクがあります。それから、ネットワーク機器やサーバーの管理者権限の問題もあります。一般ユーザー権限と管理者権限を分けて使うことはご存じの通りですが、実際に管理者権限でログインを試してみると、簡単に入れてしまうケースもあります。

ここで挙げた原因は、IoT機器が抱える脆弱性の入り口でもあります。機器ごとにどんな脆弱性があり、どの穴から優先して塞いでいくべきかを種類別に整理した記事もあります。自社の機器のどこから手をつけるか見極めたい方はあわせてご覧ください。

今すぐできるIoTセキュリティの基本対策

原因の多くは、特別な製品を導入しなくても、運用の見直しで塞げます。事例で原因となった点に対応する、今すぐ着手できる基本対策は次の5つです。

IoT機器が狙われる5つの原因と、それぞれに対応する基本対策を左右に並べた対応図。初期ID・パスワードの放置には推測されにくいパスワードへの変更と使い回しの禁止、ファームウェアの未更新には自動更新による最新化、ネット直結・不要ポートの開放には不要ポートの閉鎖と管理画面を直接さらさないこと、サポート終了機器の継続使用には更新を受けられる機器への置き換え、資産台帳からの漏れにはすべてのIoT機器を台帳に載せ設置場所と状態を把握することが対応する。
  • 出荷時の初期パスワードを、推測されにくいものに変更する。機器ごとに別のパスワードを設定し、他の機器やサービスと使い回さない
  • ファームウェアを最新の状態に保つ。自動更新を有効にし、メーカーが公表する更新情報を定期的に確認する
  • 不要な通信ポートを閉じ、管理画面をインターネットに直接さらさない
  • サポートが終了した機器は使い続けず、更新を受けられる機器に置き換える
  • カメラ・ルーター・複合機を含むすべてのIoT機器を資産台帳に載せ、設置場所と状態を把握できるようにする

このうち初期パスワードの変更とファームウェアの更新は、IoTセキュリティガイドラインでも基本として示されています。同ガイドラインは「機器を初めて使う際には、IDやパスワードの設定を適切に行う」「取扱説明書等の手順に従って、自分でアップデートを実施してみる」と記しています。NOTICEも、推測されにくいID・パスワードの設定と常に最新のファームウェアへの更新を繰り返し呼びかけています。

出典・参考資料(2件)

カメラなどウイルス対策ソフトを入れられない機器を守る仕組み

基本対策ですきを減らしても、ネットワークカメラや複合機、制御機器のように、ウイルス対策ソフトやEDR(端末に導入して監視するソフト)を入れられない機器は社内に残ります。乗っ取り・踏み台化・内部拡散の多くはこうした機器から広がるため、機器にソフトを入れずに守る仕組みが必要になります。

有効なのは次の2つのアプローチです。1つは、ネットワークを流れる通信そのものを保存・分析し、外部からの侵入や内部の不審な通信・水平移動(ネットワーク内部での感染の広がり)を検知する仕組みです。もう1つは、ネットワークの内側まで届く脆弱性診断で、初期パスワードの放置や設定の不備といった穴を定期的に点検する仕組みです。

以下では、こうした考え方を実現するサービスの例として、通信を監視するタイプと内部を診断するタイプを1つずつ紹介します。

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サービス名Network BlackboxKATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ
守り方のアプローチ通信を監視して気づく・調べる
(ネットワークを流れる通信そのものを保存・分析し、脅威を検知するNDR)
穴を点検して塞ぐ
(ネットワーク内部まで届く脆弱性診断で設定の不備を定期点検する予防+隔離バックアップによる復旧)
主に見る対象ネットワークを流れる全パケット(通信そのもの)サーバー・ネットワーク機器・複合機・PCなど接続端末の設定・脆弱性
導入方式ミラーリング方式
(監視対象の機器にソフトを入れない)
ステルス回線でリモート接続
(IPv6+暗号化。訪問不要で内部を診断)
主な効果外部からの侵入・踏み台化・内部拡散など、ネットワークに痕跡が残る不審な通信の検知と、保存したパケットをさかのぼる事後調査複合機の初期パスワード放置や管理者権限の設定不備など、事例と同じ原因になりやすい穴の発見と、対策の進め方の案内
運用・サポート検知・保存が中心。EDR・SIEMとSyslog/REST APIで連携して補完する位置づけ月次(年12回)の診断と相談会で伴走。対策の実装はユーザー主体(希望時は別料金でSYNCHROに委託可)
提供形態公表なし予防(脆弱性診断)・復旧(バックアップ)・補償(サイバー保険)の統合パッケージ
料金の目安要問い合わせ年額90万円〜150万円
(100ノード以下の目安)
詳細情報公式資料を見るオンライン相談を予約

Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackbox の公式サイト

Network Blackboxは、ネットワークを流れる全パケット(通信そのもの)を欠損なく収集・保存するNDR(Network Detection and Response)製品です。保存したパケットから脅威を検知・分析します。ミラーリング方式で導入するため監視対象の機器にソフトを入れる必要がなく、ネットワークカメラや制御機器のようにEDRを入れられない機器の通信も対象にできます。

検知は、既知の攻撃を見つけるシグネチャベースの検知に加え、ネットワーク上のユーザー行為を記録して異常を見つける検出や、送受信データを復元して調べるコンテンツ分析を併用します。

保存したパケットは後から検索できるため、侵入・踏み台化・内部拡散といったネットワークに痕跡が残る事象を、発生後にさかのぼって調べられる点が特徴です。EDRやSIEM(ログを集約して分析する仕組み)とはSyslog・REST APIで連携し、置き換えではなく補完する位置づけで使えます。

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージ(株式会社SYNCHRO)

KATABAMI サイバーセキュリティ対策パッケージの公式サイト

KATABAMIは、株式会社SYNCHROが提供する、脆弱性診断「KATABAMI VDP」とバックアップ「KATABAMI CRA」のパッケージです。国産のセキュリティ技術「ステルス回線」(IPv6アドレスと暗号化を組み合わせ、インターネット上に見えない専用の通信経路をつくる仕組み)を使っています。

ステルス回線を通じてリモートでネットワークの内側まで診断できるため、従来は専門家の訪問が必要だったオフィス内のサーバー・ネットワーク機器・複合機の脆弱性診断を、外部から実施できます。

複合機の初期パスワードの放置や管理者権限の設定不備といった、本記事の事例と同じ原因になりやすい穴を検出し、パスワードの変更や権限設定の見直しといった対策の進め方まで案内します。毎月の定点観測で伴走する点も特徴です。料金は診断する端末台数(ノード数)と頻度で変動し、100ノード以下の場合は年額90万円から150万円が目安とされています。

今回はカメラや複合機のようにソフトを入れられない機器を守る仕組みを取り上げましたが、社内で守るべき対象は端末・ネットワーク・ID・データ・監視運用と幅広く、それぞれ適した製品の種類が異なります。自社がどのタイプから検討すべきかを対象別に整理したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

事故が起きてしまったときの対応(当局への報告・法的義務)

対策を講じても被害をゼロにはできません。万一、IoT機器を入り口に個人データが漏えいした、あるいはそのおそれが生じた場合には、企業には個人情報保護法にもとづく対応が求められます。あらかじめ流れを押さえておくことで、いざというときに慌てずに動けます。

個人情報保護委員会への報告(速報・確報)

個人情報保護法第26条は、取り扱う個人データについて個人の権利利益を害するおそれが大きい事態が生じたときに、個人情報保護委員会へ報告することを義務づけています。報告は「速報」と「確報」の2段階です。

速報は、同法施行規則第8条第1項により、事態を知った後「速やかに」行います。この「速やか」の目安について、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は次のように示しています。

「速やか」の日数の目安については、個別の事案によるものの、個人情報取扱事業者が当該事態を知った時点から概ね 3~5 日以内である。

出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)3-5-3-3|個人情報保護委員会

確報は、同施行規則第8条第2項により、事態を知った日から原則30日以内に報告します。ただし、不正アクセスなど不正の目的によって行われたおそれがある行為による漏えい等の場合は、60日以内と定められています。

前項の場合において、個人情報取扱事業者は、当該事態を知った日から三十日以内(当該事態が前条第三号に定めるものである場合にあっては、六十日以内)に、当該事態に関する前項各号に定める事項を報告しなければならない。

出典:個人情報の保護に関する法律施行規則 第8条第2項|e-Gov法令検索

IoT機器の乗っ取りやランサムウェアによる被害は、施行規則第7条第3号の「不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えい等」に当たることが多く、その場合の確報は60日以内が基本となります。

出典・参考資料(3件)

本人への通知と相談先

委員会への報告とは別に、個人情報保護法第26条第2項は、漏えい等が生じた旨を本人へ通知することも義務づけています。通知の時期は、施行規則第10条により「当該事態の状況に応じて速やかに」とされています。本人への通知が困難な場合は、公表など本人の権利利益を保護するための代替措置をとることでも差し支えないとされています。

技術的な対応や捜査については、警察のサイバー犯罪相談窓口のほか、IPAやJPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)が相談を受け付けています。被害の封じ込めと並行して、これらの窓口に早めに相談することが望ましいとされています。

出典・参考資料(2件)

ここでは当局への報告と本人通知という法的義務を中心に取り上げましたが、実際の現場では、被害の検知から封じ込め、原因調査、報告までを順序立てて進める必要があります。検知・初動の具体的な手順ややってはいけないことは、次の記事で実務の流れに沿ってまとめています。

まとめ

IoT機器の事故は、海外の大規模攻撃だけでなく、国内の病院・自治体・学校でも現実に起きています。その多くは、初期パスワードの放置やファームウェアの更新漏れ、資産管理からの抜け落ちといった基本的な原因から始まっています。

まずは自社のカメラ・ルーター・複合機を棚卸しし、初期パスワードの変更やファームウェアの更新といった基本対策を実施することが出発点です。そのうえで、ウイルス対策ソフトを入れられない機器は、通信を監視して不審な動きを検知する仕組みや、ネットワーク内部まで届く脆弱性診断で守るとよいでしょう。あわせて、万一のときの個人情報保護委員会への報告の流れを押さえておけば、被害が起きても落ち着いて対応できます。

よくある質問(FAQ)

Q. IoTセキュリティとは何ですか?

A. IoTセキュリティとは、ネットワークにつながるカメラ・ルーター・複合機・各種センサーなどのIoT機器を、乗っ取りや不正アクセス、踏み台化といった攻撃から守るための対策の総称です。

パソコンやサーバーと違ってウイルス対策ソフトを入れにくい機器が多いため、初期パスワードやファームウェアの管理、通信の監視といった、機器の性質に合った守り方が必要になります。

Q. IoT機器の中で特に狙われやすいのはどれですか?

A. IoT機器のなかでも、インターネットに直接つながるネットワークカメラとルーターが特に狙われやすい機器です。

実際の事故でも、乗っ取られて映像を第三者に閲覧されたカメラや、踏み台や大規模なDDoS攻撃に悪用されたルーターの事例が目立ち、このほか複合機・制御機器・VPN機器も侵入の入り口になっています。狙われる主な原因は出荷時の初期ID・パスワードの放置やファームウェアの更新漏れで、機器の種類そのものよりも「設定と運用のすき」が標的になりやすさを決めます。

Q. 中小企業のIoT機器も攻撃の標的になりますか?

A. IoT機器を狙う攻撃の多くは、企業の規模や知名度を問わず、脆弱な機器を自動的に探して無差別に行われます。

初期パスワードのまま使われている機器やインターネットに直結した機器は、規模に関係なく乗っ取りの対象になります。実際に個人宅の家庭用ルーターが企業への攻撃の踏み台にされた事例もあり、専任のセキュリティ担当を置けない中小企業こそ、初期パスワードの変更やファームウェアの更新といった基本的な設定の見直しが重要です。

Q. IoT機器が乗っ取られると自社にどんな被害が及びますか?

A. IoT機器が乗っ取られると、自社の情報漏えいや業務停止だけでなく、他社への攻撃の踏み台として悪用され、加害者側として扱われるおそれがあります。

実際に都内の個人宅のルーターが企業への攻撃の踏み台に使われ、警視庁が捜査する事案が起きています。このほか、カメラ映像の不正閲覧、ランサムウェア感染による診療・業務の停止、社内ネットワークへの侵入と感染の拡大(水平移動)といった被害も確認されています。

Q. IoTセキュリティ対策はまず何から始めればよいですか?

A. IoTセキュリティ対策は、まず自社のカメラ・ルーター・複合機を棚卸しし、初期パスワードの変更とファームウェアの更新から始めるのが基本です。

事故の多くはこの2点の放置が原因で、特別な製品を導入しなくても運用の見直しだけで塞げます。あわせて、不要な通信ポートを閉じる、管理画面をインターネットに直接さらさない、サポートが終了した機器を更新を受けられる機器に置き換える、といった対応を進めるとよいでしょう。

Q. ウイルス対策ソフトを入れられないカメラや複合機はどう守ればよいですか?

A. ウイルス対策ソフトやEDRを入れられないカメラや複合機は、機器そのものではなくネットワーク側で守るのが基本です。通信を監視して不審な動きを検知する仕組みと、ネットワーク内部まで届く脆弱性診断が有効です。

前者はネットワークを流れる通信を保存・分析して、外部からの侵入や内部での感染拡大を検知するもの(NDR)です。後者は初期パスワードの放置や設定の不備といった穴を定期的に点検するもので、いずれも監視対象の機器にソフトを入れずに守れる点が特徴です。

Q. IoT機器から個人情報が漏えいした場合、何日以内に報告が必要ですか?

A. IoT機器から個人データが漏えいし、個人の権利利益を害するおそれが大きい事態が生じたとします。この場合、個人情報保護委員会への報告は、速報を事態を知った後「速やかに」(目安は概ね3〜5日以内)、確報を原則30日以内に行う必要があります。

ただし、IoT機器の乗っ取りやランサムウェアのように不正アクセスなど不正の目的で行われたおそれがある行為による漏えいの場合は、確報は60日以内が基本です。委員会への報告とは別に、漏えいが生じた旨を本人へ通知することも、状況に応じて速やかに行うことが義務づけられています。

出典・参考資料(3件)

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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