「会計事務所向けERP」と検索しても、出てくる製品が自分の事務所の業務用なのか、顧問先の一般企業向けなのか判然とせず、比較の土台がそろわないと感じていませんか。顧問先の記帳代行・申告・顧問先管理を一元化したい会計事務所と、顧問先である一般企業の会計・経営管理を統合したい担当者とでは、同じキーワードでも探しているものが異なります。
検討を始める前にこの2種類を切り分けておくと、各製品のレビューや料金が自分の判断材料として読めるようになります。そのうえで、顧問先管理や申告ソフト連携、所員の工数・案件採算といった会計事務所ならではの観点で比べると、候補を絞り込みやすくなります。
本記事では、会計事務所向けのERP・基幹システムを「会計事務所が自所の業務に使うタイプ」と「顧問先=一般企業が会計・経営管理に使うタイプ」の2つに整理し、合計14サービスを横並びで比較します。
「会計事務所向け」という言葉の二義性を解きほぐし、顧問先管理・申告連携・工数採算・事務所規模別の料金といった選定観点とレビューの読み方までまとめました。自所に合う候補を2〜3本に絞り込む材料としてご活用ください。
また、自所の業務や顧問先の状況に合うサービスを最短で見つけられるよう、30秒で終わる選定診断ツールも用意しています。あわせてご利用ください。
目次
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会計事務所向けERP・基幹システムとは(本記事の対象範囲)
はじめに、本記事が扱う「会計事務所向けERP・基幹システム」の範囲を整理します。この言葉は2通りの意味で使われており、どちらを探しているかで見るべき製品が変わります。
ERP(Enterprise Resource Planning、統合基幹業務システム)は、会計・販売・購買・在庫・人事などの基幹業務を1つの基盤に統合し、データを一元管理する仕組みです。会計事務所の文脈では、このERPが「事務所自身の業務を回すためのもの」と「顧問先企業が使うもの」の2つの文脈で語られます。
会計事務所向けERPでできること
会計事務所が自所の業務に使うタイプでは、顧問先ごとの記帳・決算・申告書作成から、顧問先管理、申告期限の進捗管理、所員の工数や案件採算の把握、顧問先とのデータ授受までを一元的に扱えます。紙やExcel、個別ソフトに分かれていた業務を1つの基盤に集約し、転記の手間や属人化を減らして月次決算や申告のスピードと正確性を高めます。
一方、顧問先である一般企業が使うタイプでは、自社の会計・販売・購買・在庫・人事などを統合し、経営状況をリアルタイムに把握できます。会計事務所にとっては、顧問先に薦める製品の候補として、またデータ連携による記帳・確認作業の効率化という観点で関わる対象になります。
「会計事務所向け」と銘打つ2種類の製品の違い
製品比較サイトで「会計事務所向けERP」として並ぶ製品には、性格の異なる2種類が混在しています。検討の最初に、自分がどちらを探しているかを確認しておくと迷いません。

- ①会計事務所が自所の業務に使う統合システム:税理士・会計事務所が、顧問先の記帳代行・決算・申告・顧問先管理を回すための製品。税務申告ソフトや巡回監査支援、顧問先とのデータ授受の仕組みを備えるのが特徴です。
- ②顧問先=一般企業が会計・経営管理に使う統合/会計ERP:中小〜中堅の一般企業が、自社の会計を軸に基幹業務を統合するための製品。会計事務所は、顧問先への推奨やデータ連携の観点で見ることになります。
本記事では、この2種類をタイプ①・タイプ②として分けて比較します。自所の業務システムを探している場合はタイプ①を、顧問先に薦める会計ERPを探している場合はタイプ②を中心に読み進めてください。会計事務所向けに限らずERP全般を企業規模・提供形態・費用で広く比較したい場合は、以下の記事で主要20製品を横並びで確認できます。
会計事務所向けERP・基幹システムの選び方(比較軸)
ここからは、会計事務所向けERP・基幹システムを選ぶときの比較軸を解説します。会計事務所ならではの業務に沿った軸と、どのERPでも共通して確認したい基本条件に分けて整理します。
会計事務所の業務にどこまで沿うかで選ぶ(事務所固有の比較軸)
タイプ①の事務所自身用システムを選ぶ場合、最も重要なのが「自所の顧問業務にどこまで沿うか」です。次の観点を自所の業務フローに当てはめて確認すると、過不足のない製品を見極めやすくなります。
顧問先管理・顧客管理機能
顧問先が増えるほど、担当者の割り当て・契約内容・報酬・接触履歴の管理が煩雑になります。顧問先台帳や担当者別の割り当て、報酬請求の管理まで扱えるかを確認しておくとよいでしょう。所員が複数いる事務所では、誰がどの顧問先を担当しているかを一覧で把握でき、引き継ぎ時に履歴をたどれる仕組みがあると、属人化を防げます。
申告ソフト・税務ソフトとの連携
会計データから決算・税務申告書の作成、電子申告(e-Tax/eLTAX)までをどこまで一気通貫で行えるかは、事務所の処理量を大きく左右します。法人税・消費税・所得税・相続税など、自所が扱う税目の申告に対応しているか、会計と申告がデータ連携して二重入力が発生しないかは、重点的に見極めたい点です。会計と申告が別製品の場合は、その間の連携方法(データ取り込みの形式・手間)まで見ておくと安心です。
顧問先ごとの進捗・期限管理
申告期限や決算スケジュールを顧問先ごとに抱える会計事務所では、期限の管理漏れが信用に直結します。顧問先別に月次決算・申告の進捗や期限を可視化し、遅延や未着手を検知できる機能があるかどうかの確認が欠かせません。繁忙期に所員全員の進捗を一画面で把握できると、業務の平準化や所内でのフォローがしやすくなります。
所員の工数・案件採算の可視化
顧問料が据え置きのまま作業量が増えると、気づかないうちに採算が悪化します。顧問先別・所員別の作業時間を記録し、顧問料に対する採算を把握できるかも確認したいところです。どの顧問先にどれだけ工数がかかっているかが見えると、料金改定や業務分担の見直しの判断材料になります。所員数の多い事務所ほど、この可視化の有無が経営に効いてきます。
顧問先とのデータ授受・共有のしやすさ
顧問先から証憑や仕訳データを受け取り、資料や月次レポートを返す往復は、事務所業務の中でも手間がかかる部分です。顧問先が使う会計ソフトの種類を問わずデータを取り込めるか、証憑や資料を安全に共有できるかが、比較の分かれ目になります。顧問先が自計化(自社で記帳)している場合は、そのデータをスムーズに取り込めるかどうかで、事務所側のチェック作業の負担が変わります。
どのERPでも確認したい基本条件で選ぶ(提供形態・法令対応)
事務所固有の軸に加えて、提供形態や法令対応といった基本条件も押さえておきます。これらはタイプ②の顧問先向け会計ERPを選ぶ際にも共通する観点です。
クラウド型かオンプレミス型か
クラウド型は自社サーバーが不要で、テレワークや複数拠点からの利用、ソフトの自動更新に強みがあります。オンプレミス型は自社環境で運用するためカスタマイズの自由度が高く、既存の運用方針に合わせやすい反面、サーバー管理やバージョンアップの手間が伴います。
会計事務所向け製品では、ソフトやデータを利用者のPC側に置いて動かす形態や、動作環境がWindows限定の製品もあるため、自所の端末環境やリモート体制に合うかを確かめておくことが大切です。
複数拠点やテレワークで自所を回したい場合は、クラウドで利用でき、OSや端末の制約が少ない製品かどうかが実質的な絞り込みの分かれ目になります。比較表の「提供形態」欄で各製品の前提を確認してください。
電子帳簿保存法・インボイスなど法改正への対応
会計・税務に関わる法改正に製品が追従しているかは、会計事務所にとって見落とせない条件です。電子帳簿保存法(正式名称「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」)は、国税関係帳簿書類の電子保存を「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3区分で定めており、とくに電子取引データの保存は要件を満たした対応が求められます。
また、2023年(令和5年)10月1日から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、一定の記載事項を満たした適格請求書と帳簿の保存が仕入税額控除の要件となります。製品が適格請求書の発行・保存や、電子取引データの保存要件にどこまで対応しているかは、必ず押さえておきたい点です。要件の細部は改正が重なっているため、最新の対応状況は各製品と国税庁の公式情報で確かめるのが確実です。
料金・課金方式も製品選びの大きな分かれ目になるため、次章「料金相場」でまとめて解説します。選び方の段階では、自所の規模や所員数に見合う料金体系かという視点を持っておくとよいでしょう。
出典・参考資料は以下の通りです。
出典・参考資料(3件)
- 出典:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第一条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025)
- 出典:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm)
- 出典:No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm)
ここまでの選び方の軸を踏まえ、自所や顧問先の状況に合う候補を診断で絞り込めます。いくつかの質問に答えるだけで、条件に合うサービスが表示されます。
自所の業務や顧問先の状況に合うサービスを、まずは資料で具体的に確かめてみましょう。
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【比較表】会計事務所向けERP・基幹システムを横並び比較
ここからは、本記事で取り上げる14サービスをタイプ別に比較します。タイプ①(会計事務所が自所の業務に使う統合システム)とタイプ②(顧問先=一般企業が会計・経営管理に使う統合/会計ERP)に分け、提供形態・カバー範囲・料金などを横並びで確認できるようにしました。
タイプ①:会計事務所が自所の業務に使う統合システムの比較表
| サービス名 | TKCシステム | JDL IBEXクラウド組曲Major | ACELINK NX-Pro | エプソンの財務会計 会計事務所向けプラン (旧・財務顧問R4) |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態(クラウド・オンプレ) | クラウド(OMSクラウド等) | クラウド(SaaS) ※ソフト・データはPCに保持(日本語版Windows 11のみ) | クラウド(MJS DX Cloud) オンプレミスとの両対応の案内あり | オンプレミス型(インストール型) 顧問先とのデータ共有等はクラウドオプション |
| 事務所業務のカバー(記帳・決算・申告・顧問先管理) | 記帳〜決算・各税目の申告・電子申告(e-TAX1000)・顧問先管理(OMSクラウド)まで対応 巡回監査支援・継続MAS(経営助言)も提供 | 財務(記帳)〜決算・各税目の申告・電子申告・年末調整/給与・顧問先管理(顧問先Panel)まで対応 | 会計(会計大将)〜決算・各税目の申告・電子申告・顧問先管理・報酬請求まで対応 AI-OCR・AI仕訳に対応 | 記帳(AI-OCR)・決算・消費税申告書・監査支援に対応 法人税等の申告や報酬請求は別製品と連携 |
| 顧問先とのデータ授受 | 顧問先の自計化会計(FXクラウド等)と連携し巡回監査で確認 | JDLデータセンター経由で授受 顧問先の会計ソフトを問わず取込可(財務の利用が前提) | 顧問先連動製品(かんたんクラウド等)経由 ※連動には別製品の契約が前提 | 顧問先も「エプソンの財務会計」利用時にクラウドで会計データ・証憑を共有 ※データの同時入力は不可 |
| 料金 | 要お問い合わせ(公式に記載なし) | 財務が年額75,000円〜(税抜)の積み上げ式 初期費用・バージョンアップ料は不要 | 要お問い合わせ(機能・規模により変動) | 基本ライセンス年額60,000円〜(税別・基本2ユーザー) 導入費用0円・法令改正対応の追加料金なし |
| 無料体験・資料 | 資料ダウンロードあり(無料体験の記載なし) | 無料トライアルの導線あり(製品ページ) | 3か月間の無料おためし(MJS未利用の税理士・会計士等が対象) | 1か月無料の体験版あり |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は2026年10月時点の各社公式情報に基づく一般的な情報です。実際の機能搭載の有無や提供形態(標準・オプション等)、最新の料金は各社の最新情報をご確認ください。
タイプ②:顧問先=一般企業が会計・経営管理に使う統合/会計ERPの比較表
| サービス名 | Oracle NetSuite | freee 統合型ERP | マネーフォワード クラウドERP | OBIC7(オービックセブン) | GRANDIT | PROACTIVE(プロアクティブ) | SuperStream-NX | SmileWorks(スマイルワークス) | PCAクラウド会計 | キャムマックス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド/オンプレミス | クラウド/オンプレミス(パートナー経由) | SaaS/オンプレミス/IaaS | クラウド/オンプレミス | クラウド(SaaS) | クラウド(オンプレ版あり) | クラウド(SaaS) |
| 主な対象規模 | 中堅〜大企業・海外展開企業 | 中小・成長企業 | IPO準備・中堅〜上場企業 | 中堅〜大企業 | 中堅〜大企業 | 年商100億円以上の中堅〜大企業 | 中堅〜大企業・上場企業 | 中小企業(小さく始めて段階拡張) | 中小〜中堅企業 | 中小企業(有形商材) |
| カバー範囲(会計+連携モジュール) | 会計・財務 受発注・在庫・調達・CRM・プロジェクト管理(連結・多通貨) | 会計・請求 工数・案件・経費・給与・人事労務(無形商材向け) | 会計・請求・経費・債権債務 人事労務・勤怠・給与(モジュール選択式) | 会計・管理会計・連結 販売・生産・人事給与(コンポーネント型) | 経理・資産・経費・債権債務 販売・購買・在庫・生産・人事給与 | 会計・管理会計 販売・生産・人事給与(建設業向けも) | 財務・管理会計・債権債務・固定資産・グループ経営管理・人事給与 (制度連結は連携製品) | 会計 販売・仕入・在庫・給与・経費・勤怠(案件別収支管理) | 会計中心(財務会計) 給与・販売など他のPCAシリーズと同一基盤で連携 | 財務会計+販売・購買・在庫・生産(有形商材向け) |
| 料金 | 要問い合わせ(個別見積り) | 要問い合わせ(freee販売スタンダードプランが必須) | 要問い合わせ(導入支援費用あり) | 要問い合わせ(個別見積り) | 要問い合わせ(パートナー見積り) | 初期費用2,000万円〜(公式FAQ目安) 月額は基本料金+ユーザー数従量 | 要問い合わせ | 月額5,000円〜(販売ERP) 標準プランは最初のモジュール10,000円〜(税別) | 月額16,200円〜(会計)/19,200円(会計hyper)、初期費用0円(税抜) | 初期費用100,000円/月額70,000円+1ライセンス20,000円〜(税抜) |
| 無料トライアル・資料 | 要問い合わせ | 無料お試し・無料相談あり | 共通の1ヶ月無料トライアルあり(会計Plus全機能は対象外) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | トライアル環境あり(対象機能は要問い合わせ) | 要問い合わせ | 申込月の翌月末まで無料(公式表記は最大2ヶ月) | 2ヶ月無料体験 | 60日間無料トライアル |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る |
※上記は2026年10月時点の各社公式情報に基づく一般的な情報です。実際の料金・対象規模・カバー範囲・無料トライアルの条件は各社の最新情報をご確認ください。
会計事務所向けERP・基幹システムの料金相場(課金方式と相場)
続いて、料金の考え方を整理します。会計事務所向け製品は課金の仕組みが製品ごとに異なり、同じ「月額いくら」でも前提が違うため、相場を読むには課金方式の理解が欠かせません。
課金方式の主な3タイプ
会計事務所向けERP・基幹システムの料金は、主に次の3つの考え方で設計されています。
- 利用人数(ライセンス数)による課金:所員数や同時利用ユーザー数に応じて費用が決まる方式。少人数の事務所ほど抑えやすく、規模拡大に合わせて増やせます。台数無制限のプランを設ける製品もあります。
- 機能・モジュール単位の課金:財務・申告・給与などの機能ごとに費用が積み上がる方式。必要な業務だけを選んで導入でき、扱う税目や業務範囲が広い事務所ほど総額が上がります。
- 顧問先数・処理件数による課金:製品によっては、管理する顧問先数や処理量に連動して費用が変わる場合もあります。顧問先が多い成長事務所では、この部分が総額に影響することがあります。
相場感と見積もりの考え方
タイプ①の事務所向けシステムでは、財務機能で年額数万円から、申告や給与などの機能を加えると税目・業務ごとに積み上がる構成が一般的です。初期費用やバージョンアップ料が不要な製品もある一方、料金を公開せず「要お問い合わせ」とする製品も多く、会員制度を前提とするものもあります。構成次第で総額が変わるため、自所で使う機能を洗い出したうえで見積もりを取るのが確実です。
タイプ②の顧問先向け会計ERPでは、月額制のクラウドサービスで小規模向けの手頃なプランから、中堅企業向けに個別見積もりとなる製品まで幅があります。顧問先に薦める場合は、顧問先の規模と必要な機能に見合うプランがあるか、将来の拡張に対応できるかを確認するとよいでしょう。いずれのタイプも、正確な費用は各サービスの最新の料金情報で確認してください。
会計事務所向けERP・基幹システムの導入メリットと注意点
ここでは、導入で得られる効果と、導入・運用でつまずきやすい点の両面を確認します。期待と不安の両方を具体的に押さえておくと、導入後のギャップを減らせます。
会計事務所がERP・基幹システムを導入するメリット
最大のメリットは、分散していた業務とデータの一元化です。記帳・決算・申告・顧問先管理・請求が1つの基盤でつながると、転記や二重入力が減り、入力ミスや確認漏れを防げます。
顧問先ごとの進捗や所員の工数が可視化されれば、繁忙期の業務の平準化や、採算に見合った顧問料の見直しといった経営判断にもつながります。顧問先とのデータ授受がクラウドで完結すれば、往復のやり取りにかかる時間も短縮できます。担当者が代わっても履歴をたどれるため、特定の所員に業務が集中する属人化の解消にも役立ちます。
導入・運用で注意すべきポイント
一方で、導入にあたっては事前に見込んでおきたい負担もあります。既存データの移行では、過去の顧問先データや仕訳をどこまで引き継ぐかで作業量が変わるため、移行範囲と手順を早めに確認しておきます。
新しいシステムは所内に定着するまで時間がかかります。操作研修やサポート体制を確認し、繁忙期を避けて切り替え時期を計画すると混乱を抑えられます。顧問先の会計ソフトや既存の申告ソフトとの連携可否も、導入前に確かめておきたい点です。料金が機能単位で積み上がる製品では、必要な業務を洗い出さずに契約すると想定より高くなるため、見積もり時に構成を精査しておきましょう。
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会計事務所向けERP・基幹システムのサービス個別紹介
ここからは、各サービスの概要と特徴を、会計事務所の業務への適合という観点でタイプ別に紹介します。まずは会計事務所が自所の業務に使うタイプ①から見ていきます。
タイプ①:会計事務所が自所の顧問業務に使う統合システム
顧問先の記帳代行・決算・申告・顧問先管理を事務所側で一元的に回すための製品群です。税務申告や巡回監査支援、顧問先とのデータ授受の仕組みを備えるのが特徴です。
1. TKCシステム(株式会社TKC)

株式会社TKCが会計事務所向けに提供するシステム群で、税理士・公認会計士で構成するユーザー団体「TKC全国会」を通じて利用されます。電子申告(e-TAX1000)、法人・所得・相続など各税目の申告書作成(TPS1000ほか)、グループ通算、年末調整、巡回監査支援、経営助言の継続MAS、事務所管理のOMSクラウドまでを扱います。
顧問先を毎月訪問する巡回監査を支援し、月次決算と電子申告の完了後には会計帳簿作成の適時性(会社法第432条)を示す記帳適時性証明書を発行できます。ただしこの証明書の発行対象はTKC会員の関与先に限られ、月次の遵守状況は36カ月分まで確認できます。
事務所管理のOMSクラウドでは、税理士業務処理簿の自動作成や顧問先ごとの進捗管理、KPIによる目標管理に対応します。料金は公式サイトに記載がなく、要お問い合わせです。TKCシステムで法人税の電子申告を行う企業は65万社を超えるとされます(2026年10月の創業60周年に関する公式発表による)。
2. JDL IBEXクラウド組曲Major(株式会社日本デジタル研究所)

会計事務所専用の財務・税務ソフト群で、株式会社日本デジタル研究所(JDL)がSaaS方式で提供しています。申込時には税理士登録番号の入力が必須で、事業会社や個人事業主が直接契約する製品ではありません。
財務を基盤に、法人税・消費税・所得税・相続税の申告書作成、電子申告、年末調整・給与、相続税の財産評価までをデータ連動で処理します。顧問先とのデータ授受はJDLデータセンター経由で行い、顧問先が使う会計ソフトの種類を問わず取り込める点(財務システムの利用が前提)も特徴です。
提供方式はSaaSですが、ソフトとデータは利用者のPCに置いて動かすため、動作環境は日本語版Windows 11に限られ、ARM版WindowsやMac上のWindows、クラウドPCには対応しません。料金は機能ごとの積み上げ式で、財務システムが年額75,000円(税抜)、これに申告や給与などの機能を加えて総額が決まります。初期費用とバージョンアップ料は不要です。
3. ACELINK NX-Pro(株式会社ミロク情報サービス)

税理士・公認会計士・税理士法人向けの統合業務パッケージで、株式会社ミロク情報サービス(MJS)が開発・販売しています。公式の製品ページでは、約8,400の会計事務所が利用するとされています(基準日は非公表)。
事務所管理・会計(会計大将)・給与・申告(法人税/消費税/所得税/相続税/贈与税)・顧問先連動の5領域で構成され、会計大将の仕訳から消費税申告書までを同一製品群で作成できます。紙や画像から仕訳を生成するAI-OCRや、銀行・クレジットカード明細からのAI仕訳に対応し、仕訳ミスや漏れを検知するAI監査支援はオプションで提供されます。
提供形態は、Microsoft Azure上の専用サーバーを使うクラウド(MJS DX Cloud)が中心で、製品一覧ではオンプレミスとの両対応も案内されています。料金は導入する機能や事業規模によって変わり、公式では非公開のため要お問い合わせです。MJSのシステム未利用の税理士・公認会計士・税理士法人は、利用開始から3か月間の無料トライアルを利用できます。
4. エプソンの財務会計 会計事務所向けプラン(エプソン販売株式会社)

会計事務所向けの財務会計ソフトで、従来の「財務顧問R4」からリニューアルした現行製品です。エプソン販売株式会社(セイコーエプソングループ)がepson.jpで直販するほか、サポート特約店経由でも購入できます(特約店ではサポート内容が異なります)。
記帳から決算書・キャッシュフロー計算書の作成、消費税申告書の作成までを扱い、異常な取引・残高や仕訳の重複、不正な消費税区分を自動チェックする監査支援機能を備えます。顧問先が同じ「エプソンの財務会計」を使っていればクラウド経由で会計データや証憑を共有できますが、顧問先とのデータの同時入力はできないと公式に明記されています。
会計事務所向けのプロフェッショナルは年額サブスクリプション型で、基本ライセンスが年額60,000円(税別・基本2ユーザー)、3〜29名は1ライセンスあたり10,000円の追加、30名以上は人数無制限のフリーライセンスが年額339,000円です。導入費用は0円で法令改正対応の追加料金もかからず、1か月無料の体験版も用意されています。
タイプ②:顧問先=一般企業が会計・経営管理に使う統合/会計ERP
会計事務所の典型的な顧問先である中小〜中堅企業が、自社の会計を軸に基幹業務を統合するための製品群です。顧問先への推奨や、データ連携による記帳・確認作業の効率化という観点で見ていきます。
顧問先のなかには、販売・在庫・人事まで統合するERPは必要とせず、まずは記帳・決算をクラウド会計ソフトで効率化したい段階の企業も少なくありません。顧問先に薦める会計ソフトを規模・タイプ別に比較したい場合は、以下の記事が参考になります。
【2026年】クラウド会計ソフト比較15選|規模・タイプ別の選び方と料金を解説
クラウド会計ソフトの導入を検討するとき、「製品が多すぎて自社に合うものが分からない」「インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しているか不安」「手入力やExcelでの記帳から早く脱却したい」といった悩みに突き当たる担当者は少なくありません。 選…
5. Oracle NetSuite(日本オラクル株式会社)

米国で開発され、2016年に Oracle が買収した統合型クラウドERPです。日本では日本オラクル株式会社が提供・サポートし、会計・財務管理を中核に、受発注・在庫・CRMなどを単一のデータベース上で連携させます。
仕訳から決算、連結決算、多通貨会計までを1つの会計モジュール群でカバーし、複数子会社の連結や190以上の通貨に対応します(OneWorld)。公式サイトでは200か国以上で利用されていると記載しており、中堅〜大企業・海外展開企業・IPO準備やM&A後のグループ統合を主な対象としています。
海外子会社や複数拠点の連結管理が必要になったとき、有力な選択肢となります。ただしインボイス制度・電子帳簿保存法への対応には追加の「Japan Localization SuiteApp」が前提となるため、国内の会計・税務要件は事前に確認しておきたい点です。料金は公式非公開で、個別見積りとなります。
提供元の日本オラクルは、顧問先が導入に踏み切る典型的な場面を次のように説明しています。
大きく三つのパターンがあります。一つ目は、古くなったオンプレミスのシステムを刷新したいというケース。二つ目は、事業が成長してきて、バラバラだったシステムや業務のやり方を標準化したいというケース。三つ目は、M&Aのあとにグループ全体のシステムを統合して、データを可視化したいというケースです。決め手という意味では、やはり経営者の方が「今見たい数字が、今すぐ見られるかどうか」を重視されます。
6. freee 統合型ERP(freee株式会社)

「クラウド会計 freee」を提供する freee株式会社が、2023年8月に開始した中小・成長企業向けの統合型クラウドERPです。会計・請求・工数管理・案件管理・経費・給与・人事労務を1つのプラットフォームで扱えます。
提供開始時点では IT・コンサル・広告など無形商材を扱う受託型・請負型ビジネスを対象とし、プロジェクト単位の予実管理や案件別の売上・原価分析ができます。「1名様からでも利用できる」とされ、事例に挙がる企業規模は従業員20人以下から150人以上まで幅があります。
すでにクラウド会計 freee を使う顧問先のステップアップ先として連続性があります。利用には「freee販売スタンダードプラン」が必要で、統合型ERP単体の料金は公式ページに記載がありません。在庫を持つ有形商材への対応状況は公式で確認できていないため、業種によっては問い合わせが必要です。
7. マネーフォワード クラウドERP(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウドERPは、会計・請求・経費・債権債務・人事労務・勤怠・給与などのモジュールを必要なぶんだけ組み合わせて使うコンポーネント型のクラウドERPです。提供元は株式会社マネーフォワードで、1つのモジュールから導入し、事業の成長に合わせて構成を変えられます。
公式ページはIPO準備・中堅〜上場企業向けと明記しており、導入事例の規模は従業員およそ51〜1,000名です。電子帳簿保存法・インボイス制度に対応(JIIMA認証)し、ワークフローやアクセス管理・ログ管理などの内部統制機能を備え、最短1ヶ月で導入できるとしています。
中小企業向けの通常版「マネーフォワード クラウド」を使う顧問先が、上場準備などで機能を広げたいときの発展先にあたります。料金は要問い合わせで、初期設定の導入支援費用が発生します。モジュール間の連携に加え、他社のSFA/CRM・販売管理・銀行などとも連携できます。
8. OBIC7(株式会社オービック)

株式会社オービックが自社開発・直接販売する統合業務ソフトウェアです。会計・人事給与・販売・生産などの業務システムを必要な部門から組み合わせて導入できるコンポーネント型のERPで、シリーズ累計の導入は29,000社を超えるとしています。
会計情報ソリューションは、管理会計・予算統制・連結会計・グループ管理会計・業績分析を備え、全伝票でワークフロー承認を利用できます。外貨取引の仕訳入力や、海外子会社からのWeb連結入力(多言語・多通貨)にも対応します。
国内の商慣習や内部統制(J-SOX)への対応を想定した設計で、基幹システムを刷新する中堅〜上場企業の顧問先に向いています。コンサルティングから導入・運用サポートまでを自社のエンジニアが一貫して担う体制が特徴です。料金は個別見積りで、公式サイトに金額の記載はありません。
9. GRANDIT(インフォコム株式会社)

GRANDIT(グランディット)は、複数のIT企業が参加するコンソーシアム方式で開発された国産の統合型ERPです。開発・保守はインフォコム株式会社が担い、国内70社以上のパートナーが導入・カスタマイズを手がけます。導入実績は公式で1,500社以上とされています。
販売・調達在庫・製造、経理・資産・経費、債権債務、人事給与などのモジュールを備え、グループ展開・経営分析・電子帳簿保存法対応・内部統制・多通貨にも対応します。経費では部門別・プロジェクト別の管理会計への配賦ができます。
自社の業務に合わせて基幹システムを作り込みたい中堅〜大企業の顧問先に適した方式です。業種別・個別要件のカスタマイズや導入・保守はパートナー経由が基本となります。料金は公式に記載がないため、各パートナーへの確認が必要です。
10. PROACTIVE(SCSK株式会社)

PROACTIVE(プロアクティブ)は、住友商事グループのシステムインテグレーターであるSCSK株式会社が1993年から提供する国産の統合型ERPです。会計・人事給与・販売管理・生産管理などの基幹業務をカバーし、導入実績は累計7,500社を超えるとしています。
公式FAQは対象を「年商100億円以上の中堅企業から大企業向け」と明記しています。管理会計では仮想組織によるセグメント別の予算管理や、BIツール連携でのドリルスルー分析ができ、SaaS・オンプレミス・IaaSを業務領域ごとに組み合わせる導入にも対応します。
年商100億円規模へと成長した顧問先が、基幹システムを刷新するときに検討対象となります。初期費用の目安は公式FAQで2,000万円からとされ、月額は基本料金にユーザー数の従量課金を加える方式です。インボイス制度・電子帳簿保存法に対応しています。
11. SuperStream-NX(キヤノンITソリューションズ株式会社)

SuperStream-NX(スーパーストリーム)は、1995年の発売以来、日本の会計制度・税制改正への対応を重ねてきた国産の統合型バックオフィス基盤です。現在はキヤノングループのキヤノンITソリューションズ株式会社が提供し、財務会計・管理会計を中核に、支払・経費精算、債権管理、固定資産、グループ経営管理、人事給与をモジュール群として扱えます。
中堅〜大企業・上場企業を主な対象とし、導入は11,000社以上(公式表記)。日本基準・IFRSの双方に対応し、制度連結はアライアンス製品「BTrex連結会計」との連携で対応し、管理連結はグループ経営管理ソリューションでカバーする構成です。
上場準備や連結決算の高度化に取り組む顧問先に適した基盤です。オンプレミスとクラウド(SuperStream-NX Cloud)から提供形態を選べ、導入・運用は多数の販売パートナーが担います。料金は公式に記載がなく、要問い合わせです。
12. SmileWorks(株式会社スマイルワークス)

株式会社スマイルワークスが提供する中小企業向けの統合型クラウドERPです。販売・仕入・在庫・財務会計・給与計算・経費・勤怠・ワークフローを1つのシステムに統合し、各業務の入力から会計仕訳までを自動で連動させる設計になっています。
会計機能(会計ワークス)は単体製品ではなく、販売・購買・給与のデータから自動で仕訳を生成します。売上・仕入・経費・社内工数を案件単位で集計するプロジェクト別収支管理を標準で備え、電子帳簿保存法のJIIMA認証(会計ワークス)やインボイス制度に対応しています。
会計を他の業務と一体で回したい中小規模の顧問先に向きます。月額5,000円の販売ERPプランから、機能をモジュール単位で追加できる構成で、小さく始めて段階的に広げられます。標準プランでは最初のモジュールが月額10,000円、2つ目以降は各7,000円(いずれも税別)です。
13. PCAクラウド会計(ピー・シー・エー株式会社)

PCAクラウド会計は、業務全体を統合するERPではなく、財務会計に軸足を置いた製品です。ピー・シー・エー株式会社が、会計・給与・販売などを束ねる基幹業務クラウド「PCAクラウド」の一つとして提供しており、日常の伝票入力から元帳・試算表・決算書、経営分析帳票までを作成できます。
中小企業向けの標準グレードと、グループ企業管理・セグメント管理・部門の階層管理に対応する中堅企業向けの「hyper」に分かれます。仕訳の承認機能や予算管理を備え、電子帳簿保存法のJIIMA認証を取得、消費税申告書のe-Tax送信にも対応します。
会計を中心に据えたい顧問先や、複数子会社の会計データを1契約で管理したい企業に向きます。月額は会計16,200円〜・会計hyper19,200円(税抜)で、2ヶ月の無料体験があります。給与・販売など他のPCAシリーズと同一基盤で連携できます。
提供元のピー・シー・エーは、グループ会社の会計データをクラウドでまとめた顧問先企業の導入例を次のように説明しています。

関西最大手の業務用パンメーカーであるオリエンタルベーカリー様の事例をご紹介します。同社はグループ企業を含めたバックオフィスの効率化を目指し、『PCAクラウド』を中心としたシステム刷新を実施されました。導入前は、グループ企業のデータ集計や確認作業に膨大な時間がかかり、月次決算が大幅に遅れていました。経営状況をリアルタイムに把握できないことが課題だったのです。導入後は、グループ全体の会計データをクラウドでリアルタイムに一元化・連携したことで、月次決算の期間を11日間短縮することに成功しました。これにより月初7営業日以内にグループ全体の正確な経営状況を可視化できるようになりました。
14. キャムマックス(株式会社キャム)

キャムマックスは、株式会社キャムが提供する中小企業向けのクラウドERPです。製造業・卸売業・小売業など有形商材を扱う事業者を対象に、販売管理・購買管理・在庫管理・生産管理・財務会計を1つのシステムで一元管理します。
EC・卸・実店舗など複数チャネルの受注を集約し、見積から入金までを一気通貫で扱えます。財務会計は自動仕訳や経費精算を備え、売上・入金・仕入などの仕訳データを出力して各種会計ソフトに取り込めます(freeeへの自動仕訳CSV連携にも対応)。
在庫を持つ有形商材ビジネスの顧問先が、販売・在庫を会計とつなげて管理したいときの選択肢です。初期費用は100,000円、月額は基本料金70,000円に1ライセンス20,000円を加えた構成が最小(いずれも税抜)で、60日間の無料トライアルがあります。
導入事務所のレビュー・満足度の見方(口コミで裏取りするには)
製品を絞り込んだら、導入経験者のレビューや満足度で裏取りをしたくなります。業種や事務所規模で絞り込めるレビュー情報を使うと、自所に近い立場の利用者の評価を探せます。ここでは、そうしたレビューを自所の判断に生かすための読み解き方を整理します。
第一に、評価が自所と近い立場の利用者によるものかを見極めることが重要です。同じ製品でも、事務所が自所業務に使った評価と、一般企業が自社会計に使った評価では着眼点が異なります。レビュー投稿者の業種・事務所規模・利用機能が自所に近いほど、参考になります。
第二に、満足度スコアの平均値だけでなく、低評価の具体的な理由にも目を通しましょう。とくに申告ソフト連携・顧問先とのデータ授受・顧問先管理といった事務所固有の機能への不満は、自所の運用に直結します。良い評価と悪い評価の両方を、自所の業務課題に当てはめて読むのが肝心です。
第三に、レビューの件数と時点にも注意が必要です。件数が少ない製品の平均スコアは振れやすく、古いレビューは法改正対応や機能改善の前の評価である可能性があります。最終的には、レビューで候補を絞ったうえで、資料請求や無料トライアル、本記事の選定診断で自所の業務に合うかを実際に確かめるのが確実です。
まとめ
会計事務所向けERP・基幹システムは、「会計事務所が自所の業務に使うタイプ」と「顧問先=一般企業が会計・経営管理に使うタイプ」の2種類に分かれます。まず自分がどちらを探しているかを切り分けることが、比較の出発点です。
自所の業務に使う場合は、顧問先管理・申告ソフト連携・進捗/期限管理・工数と採算の可視化・顧問先とのデータ授受という事務所固有の軸で比べます。顧問先に薦める会計ERPを探す場合は、顧問先の規模と必要な機能に見合うかが判断の軸になります。いずれも提供形態・法令対応・料金体系という基本条件を押さえ、レビューで裏取りしたうえで、資料請求や診断ツールで自所に合う候補を絞り込んでください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 会計事務所向けERPとは何ですか?
A. 会計事務所向けERPとは、会計・販売・購買などの基幹業務を1つの基盤に統合するERPのうち、会計事務所の業務や、その顧問先企業の会計・経営管理で使われる製品の総称です。会計事務所の文脈では「事務所自身が顧問先の記帳・申告・顧問先管理を回すために使うもの」と「顧問先=一般企業が自社の会計・経営管理に使うもの」の2通りで語られ、どちらを指すかで見るべき製品が変わります。
Q. 会計事務所向けERPの「事務所自身が使うタイプ」と「顧問先が使うタイプ」は何が違いますか?
A. 会計事務所向けERPは、①会計事務所が自所の顧問業務(記帳代行・決算・申告・顧問先管理)を回すためのタイプと、②顧問先=一般企業が自社の会計・経営管理を統合するためのタイプに分かれます。
①は税務申告ソフトや巡回監査支援、顧問先とのデータ授受の仕組みを備えるのが特徴で、②は会計を軸に販売・購買・在庫・人事まで統合する汎用ERPです。自所の業務システムを探すなら①を、顧問先に薦める会計ERPを探すなら②を中心に比較するとよいでしょう。
Q. 会計事務所向けERPはクラウド型とオンプレミス型のどちらを選べばよいですか?
A. 会計事務所向けERPのクラウド型とオンプレミス型のどちらが向くかは、テレワークや複数拠点での利用・ソフトの自動更新を重視するならクラウド型、カスタマイズの自由度や既存の運用方針への適合を重視するならオンプレミス型が目安です。
会計事務所向け製品には、ソフトやデータを利用者のPC側に置いて動かす形態や、動作環境がWindows限定の製品もあります。自所の端末環境やリモート体制に合うかを確認しておくと安心です。
Q. 会計事務所向けERPは申告ソフト・税務ソフトと連携できますか?
A. 会計事務所向けERPの申告・税務ソフト連携は、会計と申告を同一製品群でデータ連動させて二重入力をなくせる製品もあれば、会計と申告が別製品で間の取り込みに手間がかかる製品もあり、対応は製品ごとに異なります。
法人税・消費税・所得税・相続税など自所が扱う税目の申告に対応しているか、電子申告(e-Tax/eLTAX)までカバーするか、会計データが申告へそのまま流れるかを確認しましょう。会計と申告が分かれている場合は、データ取り込みの形式や手間まで見ておくとよいでしょう。
Q. 会計事務所向けERPの料金相場は、事務所規模・所員数でどう変わりますか?
A. 会計事務所向けERPの料金は、利用人数(ライセンス数)・機能やモジュール単位・顧問先数や処理件数のいずれかで課金されるのが一般的で、所員数や扱う業務範囲が広い事務所ほど総額が上がります。
タイプ①の事務所向けシステムは財務機能で年額数万円からで、申告や給与などの機能を加えると積み上がります。料金を公開せず「要お問い合わせ」とする製品も多いため、自所で使う機能を洗い出したうえで見積もりを取り、正確な費用は各サービスの最新の料金情報で確認してください。
Q. 会計事務所向けERPは電子帳簿保存法やインボイス制度に対応していますか?
A. 会計事務所向けERPの法令対応は製品によって差があり、電子帳簿保存法の電子取引データ保存や、インボイス制度の適格請求書の発行・保存にどこまで対応しているかは、製品ごとに確認が必要です。
電子帳簿保存法は国税関係帳簿書類の電子保存を「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3区分で定めており、とくに電子取引データの保存は要件を満たす対応が求められます。要件は改正が重なっているため、最新の対応状況は各製品と国税庁の公式情報で確かめるのが確実です。
Q. 会計事務所向けERPで顧問先とのデータ授受はどのように行いますか?
A. 会計事務所向けERPでの顧問先とのデータ授受は、ベンダーのデータセンターやクラウドを経由して証憑・仕訳データをやり取りする方式が中心で、顧問先が使う会計ソフトの種類を問わず取り込める製品もあります。
顧問先が自計化している場合は、そのデータをスムーズに取り込めるかどうかで、事務所側のチェック作業の負担が変わります。製品によっては顧問先が同じ製品を使っている場合に限ってクラウド共有できるものもあるため、顧問先の利用ソフトを踏まえて連携方法を確認しておくとよいでしょう。
Q. 一人税理士や小規模な会計事務所でも、会計事務所向けERPを導入する意味はありますか?
A. 一人税理士や小規模事務所でも、顧問先の増加で記帳・申告・顧問先管理が属人化・煩雑化しているなら、会計事務所向けERPで業務を一元化する意味はあります。利用人数に応じた課金で少人数ほど費用を抑えられる製品や、財務機能から小さく始めて段階的に広げられる製品もあります。まずは自所の業務で手間になっている部分を洗い出し、その範囲をカバーする製品から検討すると、過剰投資を避けられます。
Q. 会計事務所向けERPの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 会計事務所向けERPの導入期間は製品や事務所の規模によって幅があり、クラウド型で小さく始める場合は比較的短期間で、既存データの移行範囲が広い場合や大規模な事務所ほど長くかかります。期間を左右する主な要因は、過去の顧問先データや仕訳をどこまで引き継ぐかという移行範囲と、所員が使いこなすまでの定着期間です。繁忙期を避けて切り替え時期を計画すると、移行時の混乱を抑えられます。
Q. 会計事務所向けERPは無料トライアルや資料請求で試せますか?
A. 会計事務所向けERPには、無料トライアルや体験版を用意している製品が多く、資料請求で機能・料金・対応業務を事前に確認できます。レビューや比較で候補を2〜3本に絞ったうえで、無料トライアルで自所の業務フローに合うかを実際に確かめるのが確実です。本記事の選定診断ツールや資料の一括請求も、候補を効率的に絞り込む材料として活用してください。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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